JP2003302846A5 - - Google Patents
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Description
【書類名】 明細書
【発明の名称】 画像形成装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーを担持する像担持体と、前記像担持体と形成する転写領域ニップ部に挿入された転写材に前記像担持体上のトナーを転写させる転写部材と、前記転写部材に電圧を印加する電圧印加手段と、前記電圧印加手段から出力される電流値を検知する電流検知回路と、を有する画像形成装置において、
前記ニップ部に転写材が挿入されている状態の前記電流検知回路の電流検知結果と転写材の幅の情報に基づいて、前記電圧印加手段の出力電圧を決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ニップ部に転写材がない状態で前記転写部材の抵抗を検知する抵抗検知手段と、を有する画像形成装置において、
前記印加電圧決定のためのしきい値を、前記転写部材の抵抗検知結果と、転写材の幅の情報の少なくとも一方の情報に基づいて変更することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ニップ部に転写材が挿入されている状態の前記電流検知回路の電流検知結果は前記ニップ部に転写材が挿入されてから一定時間後の前記電流検知回路の電流検知結果であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記転写材の幅は給紙口情報に基づいて認識することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は転写方式の画像形成装置に関する。
【0002】
より詳しくは、電子写真感光体や静電記録誘電体等の像担持体上に形成担持させたトナー像を転写材に転写するために転写材の裏側に接触する転写部材を備えた複写機・プリンタのような画像形成装置に関するものである。
【0003】
【従来の技術】
転写方式の画像形成装置において、像担持体に形成担持させたトナー像を転写材に転写させる転写手段としては、非接触タイプであるコロナ帯電器を用いた転写手段との対比においてオゾンの発生がない等のことから、像担持体と圧接ニップ部を形成し該圧接ニップ部に挿入された転写材に像担持体上のトナー像を転写させる転写部材を有する接触式転写手段、特には接触転写部材としてローラ体(転写ローラ)を用いたローラ転写方式がさらに転写材搬送安定性に優れる等の利点を有していて主流となっている。
【0004】
ローラ転写方式は、接触転写部材として、抵抗を1×106 〜1×1010Ωに調整した中抵抗弾性層を有する導電性弾性ローラ(以下、転写ローラと記す)を用い、これを像担持体(以下、感光ドラムと記す)上に当接させ、該感光ドラムと該転写ローラによって形成される圧接ニップ部(以下、転写ニップ部と記す)で転写材を挟持搬送させながら、転写ローラに転写バイアスを印加することで転写材にトナー像とは逆極性の電荷を付与して感光ドラム上のトナー像を転写材上に転写させるものである。
【0005】
上記の転写ローラは、ゴム・スポンジなどにカーボンなどの無機導電性粒子を分散させたり、界面活性剤などを練り込んだイオン導電性のゴムなどを用いるなど、抵抗値を適宜調整した弾性層を有するローラであり、この転写ローラの抵抗値が製造時のばらつき、温湿度、長期使用(耐久)による抵抗値変化などで1桁以上変化することは周知のことである。
【0006】
このように抵抗変化する転写ローラに対し、常に最適な電流を流すためには「定電流印加方式」で転写ローラに対して転写電圧を印加することが考えられるが、この場合は、装置の最大通紙幅よりも幅の狭い小サイズ転写材が通紙使用されて転写ニップ部においてその長手に関して感光ドラムと転写ローラが直接接触する非通紙領域部ができたときに、ここへ集中的に電流が流れて転写材への電流供給が不足し、転写不良が発生するという問題があった。
【0007】
そのため、多くの画像形成装置では転写材サイズによらず適正電流を流すために「定電圧印加方式」を行っている。定電圧印加方式では製造条件や環境によって変化する転写ローラの抵抗値に対し適正な電流を流すために、転写動作以前に、通紙時に転写ローラへ流す一定電流値を転写ローラに流し、そのときに発生する電圧を保持して転写時に印加するバイアス制御方式(ATCV制御方式:Active Transfer Voltage Control )や、通紙前にある一定電流値を転写ローラに流し、そのときの発生電圧をあらかじめ決められた制御式に入れて算出した電圧を転写時に印加するバイアス制御方式(PTVC制御方式:Programable Transfer Voltage Control)などによって通紙以前の転写の系のインピーダンスを検知し、適正範囲の電流が流れるような転写電圧を印加している。
【0008】
特にPTVC制御方式は、ハードウェア構成の回路からなり、印加できるバイアス値が数個しかもてないATVC方式に比べて、より精密なバイアス制御が行え、また電圧制御のためのハードウェア回路を必要としないため、コスト的にも有利な電圧制御方式である。
【0009】
このPTVC制御方式をいま少し詳しく説明すると、プリント前の非通紙時に感光ドラム表面を帯電させた状態で一定電流値を目標にPWM信号(パルス幅変調信号:Pulse Width Modulation)を段階的あげて転写ローラに電圧を印加し、目標電流値に到達した電圧値をVt0としてホールドする。そのVt0値と、あらかじめ制御回路のCPU内にメモリしておいた転写出力テーブルとから、前記Vt0値に適した印字時の転写電圧Vtを決定し、印字時にはその転写電圧Vtに対応したPWM信号を出力して転写ローラにVtを印加する制御方式である。
【0010】
このように、一定電流値に対する各転写ローラの発生電圧Vt0を参照して印字時の転写電圧Vtを決定することで、転写ローラの抵抗値に応じて最適電圧を印字時に印加することができ、広い範囲の抵抗値の転写ローラで良好な画像を得ることができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような従来の転写電圧制御法には以下に示すような問題があった。
【0012】
即ち、従来のATVC方式、PTVC方式といった転写電圧制御法は、転写ニップ部内に転写材がない状態で一定電流値を転写ローラに流し、その時の発生電圧から転写時に印加する転写電圧を決定している。このように非通紙時に転写の系全体のインピーダンスを検知することで転写ローラの抵抗値が変化してもそれに応じた適正転写バイアスを印加できるようにしている。
【0013】
しかし、転写材の抵抗値が高い場合、または低い場合などあらかじめ想定している転写材抵抗値から大幅に抵抗値がずれた転写材を使用した場合、印字中に流したい転写電流が適正転写電流値の範囲からずれることがある。
【0014】
このように転写材のインピーダンスが大きく変化する場合、転写電流に過不足が生じ、画像不良が発生してしまうという問題があった。特に、近年の画像形成装置の世界的普及により、印字に使用される転写材の種類が増加するのに伴って、転写材の抵抗も多種多様化し、環境・転写材種類を問わず良好な画像を得るのが難しくなってきている。
【0015】
また、高速化が進むにつれて、転写材の抵抗によって最適な転写電流値がまったく異なるという問題も発生しており、様々な転写材に対応できる転写制御方式の開発が求められている。
【0016】
これに対し、特殊紙モードを設け、ユーザーに転写材種を指定してもらうことで転写電圧制御を最適化することも考えられるが、ユーザーに煩わしい手間を強いることになり、あまり好ましくない。
【0017】
また、転写材が転写ニップ部に存在する状態で決められた電圧を印加し、その時の転写電流を測定して転写材抵抗を推定し、目標電流値に転写電流がなるように転写電圧を補正する方法が提案されているが、この方法だと最適転写電流が異なる転写材に対し、異なる電流値を与えることができず、特に転写材種ごとに必要電流の異なる高速機に対応するためには限界があった。
【0018】
そこで本発明は、接触式転写手段を用いた転写式の画像形成装置において、上記のようなユーザーが指定操作する特殊紙モードを設けるようなことなしに、幅広い抵抗範囲の転写材に対応し抵抗値の異なる転写材に対し適正な転写電圧を与え、転写材の抵抗値によらず良好な画像を得るための転写制御方式の提供を目的とする。また、高速化に対応することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明は下記の構成を特徴とする画像形成装置である。
【0020】
トナーを担持する像担持体と、前記像担持体と形成する転写領域ニップ部に挿入された転写材に前記像担持体上のトナーを転写させる転写部材と、前記転写部材に電圧を印加する電圧印加手段と、前記電圧印加手段から出力される電流値を検知する電流検知回路と、を有する画像形成装置において、前記ニップ部に転写材が挿入されている状態の前記電流検知回路の電流検知結果と転写材の幅の情報に基づいて、前記電圧印加手段の出力電圧を決定することを特徴とする画像形成装置。
【0021】
【0022】
〈作 用〉
すなわち本発明は、前述の問題に対し、PTVC制御により転写電圧を決定する転写制御方式に加えて、転写材先端からPTVC検知結果に応じた転写電圧を転写材に与えて転写材先端が像担持体と転写部材との圧接ニップ部である転写ニップ部に挿入されてから一定時間後の転写電流値をモニタして、前記転写材先端での転写電流モニタ結果と給紙口情報から、あらかじめ抵抗値の異なる転写材に対して最適化された複数の転写電圧値から最適な印加電圧を決定して印字中に定電圧印加することで、いずれの抵抗値の転写材でも良好な画像を得るものである。
【0023】
さらに、転写部材抵抗検知結果、紙サイズ情報等を参照することで、より最適な転写電圧設定を行うものである。
【0024】
【発明の実施の形態】
〈実施例1〉(図1〜図8)
(1)画像形成装置例
図1は画像形成装置の一例の概略構成模型図である。本例の画像形成装置は、転写式電子写真プロセスを用いた、両面印字機能(両面プリント機能)を有する、反転現像方式のレーザープリンタである。
【0025】
1は像担持体たる感光ドラムであり、OPC、アモルファスSi等の感光材料をアルミニウムやニッケル等のシリンダ状の基板上に形成して構成されており、不図示の駆動手段により矢示の時計方向に所定の周速度で回転駆動される。
【0026】
2は回転する感光ドラム1の周囲を所定の極性・電位に一様に帯電処理する一次帯電手段であり、本例では帯電ローラを使用した接触帯電装置である。本例では、感光ドラム1の表面はこの帯電ローラ2によってネガトナーと同極性の負に一様に帯電され、暗部電位Vdとなる。
【0027】
3は画像情報露光手段としてのレーザービームスキャナーである。このスキャナー3は、半導体レーザー、ポリゴンミラー、F−θレンズ等を有してなり、不図示のホスト装置から送られてきた画像情報の時系列電気デジタル画素信号に応じてON/OFF制御されたレーザービームLを出射して反射ミラー3aを介して感光ドラム1の一様帯電表面を走査露光し、静電潜像を形成する。即ち、このスキャナー3によって像露光された感光ドラム1面の露光された部分は電位の絶対値が小さくなり、明部電位Vlとなって露光されなかった感光ドラム面部分の暗部電位Vdとの電位コントラストによって静電潜像が形成される。
【0028】
4はネガトナーを用いた反転現像装置であり、感光ドラム1上の静電潜像をトナー像として反転現像する。4aは回転現像スリーブであり、トナーが薄層コートされており、このトナーは負に帯電している。現像スリーブ4aには、感光ドラム1の暗部電位Vdと明部電位Vlとの間のバイアス電圧Vb(|Vd|>|Vb|>|Vl|)が不図示の外部電源によって与えられているので、現像スリーブ4a上のトナーは、感光ドラム1の明部電位Vlの部分にのみ転移して静電潜像が顕像化される(反転現像)。
【0029】
現像方法としては、ジャンピング現像法、2成分現像法等が用いられ、イメージ露光と反転現像との組み合わせで用いられることが多い。
【0030】
5は弾性層を有する回転体形状の接触転写部材としての転写ローラである。感光ドラム1に対して加圧接触させて転写ニップ部Nを形成させてあり、不図示の駆動手段により感光ドラム1の回転に順方向の矢示の反時計方向に感光ドラム1の回転周速にほぼ対応した所定の周速度で回転駆動される。
【0031】
22は第1の給紙口としての給紙カセット部であり、カセット内に転写材Pを積載収納させてある。
【0032】
24は第2の給紙口としての手差し給紙トレイ部(マルチ・パーパス・トレイ)である。
【0033】
不図示の選択指定手段でカセット給紙モードが選択指定されているときには、給紙カセット部22に積載収納されている転写材Pが所定の給紙制御タイミングで給紙ローラ21により一枚分離給送される。
【0034】
また手差し給紙モードが選択指定されているときには手差し給紙トレイ部24に積載セットの転写材Pが所定の給紙制御タイミングで給紙ローラ23により一枚分離給送される。
【0035】
給紙カセット部22または手差し給紙トレイ部24から給送された転写材Pはプレフィードセンサ21aで待機した後に、レジストローラ11、レジストセンサ11a、転写前ガイド10を介して転写ニップ部N(画像形成部)に所定の制御タイミングにて給紙される。即ち、転写材Pは、レジストセンサ11aによって、感光ドラム1の表面に形成されたトナー像と同期取りされて転写ニップ部Nに供給される。
【0036】
転写ニップ部Nに供給された転写材Pは感光ドラム1と転写ローラ5との間に挟持されて感光ドラム1と転写ローラ5の回転により搬送される。転写材Pが転写ニップ部Nを挟持搬送されていく間において、転写材Pの裏側に接触している転写ローラ5に対して転写用高圧電源(転写高圧トランス、転写高圧回路)34から所定の制御タイミングにて所定の制御転写バイアスが印加される。これにより、転写材Pにトナー像とは逆極性の電荷が付与されて感光ドラム1上のトナー像が転写材P上に順次に転写されていく。
【0037】
転写ニップ部Nにおいてトナー像の転写を受け、転写ニップ部Nを通過した転写材Pは、感光ドラム1の面から分離され、シートパス(ガイド部材)12を通って定着装置13へ搬送される。8は除電針である。定着装置13は本例のものは加熱フィルムユニット13aと加圧ローラ13bの圧接からなる所謂フィルム加熱方式の定着装置であり、トナー像を保持した転写材Pは加熱フィルムユニット13aと加圧ローラ13bの圧接部である定着ニップ部nで挟持搬送されて加熱・加圧を受けることでトナー像が転写材P上に定着され永久画像となる。
【0038】
片面印字モードが選択指定されている場合は、定着装置13を出た転写材Pは搬送路B1側に進路案内されて片面印字物として機外に排出される。
【0039】
両面印字モード(自動両面印字)が選択指定されている場合は、定着装置13を出た1面目印字済み(画像形成済み)の転写材Pは第3の給紙口としての自動両面給紙ユニット50内に搬送され、スイッチバック搬送路B2を経由することで反転され、循環搬送路B3を通り、再給紙ローラ25、再給紙センサ25aを経由して転写ニップ部Nに再給紙されて、反転された転写材Pの2面目に対する印字行程へと入る。
【0040】
そして転写ニップ部Nにて2面目に対するトナー像の転写を受けた転写材Pは、感光ドラム1の面から分離され、シートパス12を通って再び定着装置13へ搬送されて、2面目に対するトナー像の定着処理を受け、搬送路B1側に進路案内されて両面印字物として機外に排出される。
【0041】
一方、転写材Pに対するトナー像転写後の感光ドラム1の表面はクリーニング装置6により転写残留トナーの除去を受けて清掃されて繰り返して作像に供される。本例のクリーニング装置6はブレードクリーニング装置であり、6aはそのクリーニングブレードである。
【0042】
(2)転写ローラ5
接触転写部材としての転写ローラ5は、鉄、SUS等の芯金5a上にEPDM、シリコーン、NBR、ウレタン等のゴムを用いたソリッド状(充填肉質)、または発泡スポンジ状の中抵抗弾性層5bを形成したゴムローラで、ローラ硬度25〜70度(AskerC/総荷重9.8N(1kg) 荷重時、以下同じ)、抵抗値106 〜1010Ωの範囲のものを使用する。転写ローラ5の弾性体層5bは、一次加硫後に2次加硫し、その後表面を研磨して外径形状を所望の寸法としたものを用いる。
【0043】
本例で使用した転写ローラ5は、φ6mmのFeの芯金5a上に、8×107[Ω]NBR系のイオン導電性ソリッドゴムからなる弾性層(中抵抗弾性層)5bを形成し、ローラ硬度60度、外径をφ16mm、ゴム部長手寸法を218mmとしたソリッドの導電性・弾性ローラである。
【0044】
転写ローラ5は図2のように芯金5aの両端部をそれぞれ軸受け部材5c・5cで回転自由に軸受け支持させてある。軸受け部材5c・5cはそれぞれ不図示のガイド部材により感光ドラム1に対して接近方向・離れ方向にスライド移動自由に保持させた可動部材であり、この可動の軸受け部材5c・5cをそれぞれ加圧ばね5d・5dにより感光ドラム1に対して接近方向に移動付勢することで転写ローラ5を感光ドラム1に対して弾性層5bの弾性に抗して圧接させて所定幅の転写ニップ部Nを形成させてある。Gは転写ローラ5の芯金5aの一方の端部に固着させた駆動ギアであり、駆動ギアGに不図示の駆動手段から回転力が伝達されて転写ローラ5が感光ドラム1の回転に順方向で、感光ドラム1の回転周速度とほぼ同じ周速度で回転駆動される。
【0045】
図3は転写ローラ5の抵抗測定法を示す図である。即ちアルミシリンダー71へ総圧9.8N(1000g(片側500g))で転写ローラ5を当接させて回転させ、任意の電圧(たとえば+2.0kV)を直流高圧電源72より転写ローラ5の芯金5aに印加したときに抵抗74の両端に発生する電圧値の最大値、最小値を電圧計73で読みとる。読みとった電圧値から回路中に流れる電圧値の平均値を求め、転写ローラの抵抗値を算出したものである。測定環境は通常環境N/N:23℃・60%である。
【0046】
(3)転写バイアス制御
本実施例では、PTVCによる転写ローラ5のインピーダンス検知結果と転写材を介した転写電流検知結果によって印字中の転写電圧を決定する転写バイアス制御系において、あらかじめ複数の転写材種に対応した2本以上の制御式を用意し、給紙口情報、すなわち本実施例の場合は転写ニップ部Nに対する転写材Pの給紙が
・第1の給紙口としての給紙カセット部22からなされるのか
・第2の給紙口としての手差し給紙トレイ部24からなされるのか
・第3の給紙口としての自動両面給紙ユニット50からなされるのか
によって制御式切り分けのしきい値を決定し、転写材を介した転写電流検知の結果を前記しきい値と比較して、前記複数の制御式を切り替えて転写電圧を決定する例を示す。
【0047】
a)PTVC制御方法
本実施例のPTVC制御方法を図4を用いて詳細に説明する。9は転写バイアスを制御するCPUで、OUT端子より所望の転写出力電圧に対応したパルス幅を持つPWM信号を出力する。実際にはパルス幅に対応した転写出力テーブル(不図示)をCPU9内にメモリしておく。このPWM信号はローパスフィルタ(Low Pass Filter) 14によりDC化され、アンプ15により増幅されて転写出力電圧Vtとなる。このとき流れた電流値Itに対応した信号がCPU9のIN端子に入力され、CPU9内で検知するという流れになっている。
【0048】
本実施例では、転写高圧電源34に流れる電流値を電流検出回路34aで検出し、A/Dコンバータ31でデジタル変換した値(以降、「転写AD値」と表記する)をCPU9へ入力して、転写ローラ5に流れる電流値を判断している。
【0049】
「定電圧制御」をしたい場合には、あらかじめCPU9内に設定されたPWMと転写出力対応テーブルから判断し、所望の電圧値に対応したパルス幅のPWM信号を出力する。
【0050】
また、「定電流制御」したい場合は、CPU9からのPWM信号のパルス幅を徐々に上げていき、CPUのIN端子に入ってくる信号が所望の電流値(一定電流値)に対応した値になるまで続けられ、その後電流値変化に伴って、電圧(パルス幅)を追従させて定電流制御を行う。
【0051】
b)転写制御のアルゴリズム
図5に本実施例の転写制御のアルゴリズムを示す。
【0052】
ホストコンピュータからプリント信号を受け、感光ドラム1の帯電が終了した時点で、まず感光ドラム1と転写ローラ5が直接当接した状態でPTVC検知を一度行う(Step1)。
【0053】
PTVC検知は、転写用高圧電源34からの出力電圧を徐々に上昇させて、あらかじめ設定された一定電流値に転写電流が到達した時の電圧値をVt0としてホールドしている。
【0054】
ここでの検知結果に基づき、あらかじめCPU9内に格納されている転写制御式1により転写時に印加する転写電圧の第1の目標値Vt1を決定する(Step2)。
【0055】
Vt1=αVt0+β・・・式1
Vt0:PTVC検知時に、所定の検知電流を転写ローラに流したとき
に発生する発生電圧
α及びβ:転写の系によってあらかじめ設定する常数
Vt1決定後、画像形成のための準備が終了した時点で印字動作を開始し、感光ドラム1上のトナー像と同期をとって転写材Pを転写ニップ部Nに給送する。転写材Pの先端が転写ニップ部Nに入ると同時に、前述の初期転写目標値Vt1を定電圧印加し(Step3)、初期転写目標値Vt1印加開始から一定時間後に転写電流を1回モニタして、その時に検出した転写AD値をCPU9に記録する(Step4)。
【0056】
転写AD値の検知タイミングは、転写電圧Vt1印加後から転写電流がある程度落ち着くポイントで、なおかつトナーの有無の影響をなくすために、先端余白内で行うのが望ましい。本実施例では、プロセススピード120mm/secで印字する画像形成装置を用い、転写材先端から40msec後に転写AD値のモニタを行った。この場合、転写AD値のモニタポイントは、転写材先端から約4.8mmのポイントとなり、先端余白を5mm程度とれば、転写材のインピーダンスの違いによる転写電流変化を安定してモニタすることができる。
【0057】
次に、転写ニップ部Nに対する転写材給紙口情報により、制御式を切り分けるための転写AD値のしきい値を決定し(Step5)、前記転写AD値をここで設定したしきい値と比較して転写電圧をVtを決定し(Step5)、ここで決定した転写電圧Vtを転写ローラに定電圧印加(Step6)して、転写材後端まで一定電圧で転写を行う。
【0058】
前記初期転写目標電圧Vt1は式1に示したように、転写ローラ抵抗値の検知結果に応じた電圧を印加している。これは、転写材先端で転写材電流検知する際に印加する電圧が一定値の場合、転写ローラ抵抗によって、転写材先端で流れる電流値が異なることによる画像上の不具合を防止するためである。たとえば、転写ローラ抵抗値が低い場合、Vt1が一定値だと転写材先端で過剰な電流が感光ドラム1に流れて、濃度ムラが発生し、逆に転写ローラ抵抗値が高い場合は、Vt1から転写に必要な電圧まで高圧を立ち上げる場合の電圧差が大きくなるために、必要電流が流れるまでに時間がかかり、転写材先端で電流不足となって爆発や転写不良が発生してしまうためである。
【0059】
本例のように、Vt1をVt0に応じて変化させることで、前述の不具合が防止でき、また、転写材のインピーダンスをほぼ同一の転写電流で安定して検知できる
というメリットがある。
【0060】
前記初期転写目標電圧Vt1は、その転写行程に必要な電圧まで転写電圧を短時間で立ち上げるために、普通紙の転写に最低限必要な転写電圧を印加するのが望ましい。
【0061】
図6は、抵抗値の異なる転写材を通紙したときの、転写材先端での転写電流値(AD値)の変化を示した図である。本実施例では、PTVC検知結果に基づいて決定される通紙時の転写電圧初期目標値Vt1を、普通紙で最適な電流が流れる値に設定しているため、普通紙に印字した場合はラインAに示すように目標電流値とほぼ同一の転写電流(AD値)が得られる。
【0062】
これに対し、高抵抗紙を印字した場合は、転写材の抵抗が高い分だけ転写ローラに流れる電流値がラインBに示すように△Idownだけ降下している。
【0063】
従って、転写材先端が転写ニップ部Nに到達してから、転写材抵抗値による転写電流の降下の差が分かる任意の時間T1後に転写電流値(AD値)をモニタすることで、転写材抵抗値の高低を検出することができる。
【0064】
図7に、普通紙、高抵抗紙の片面、および自動両面印字時の最適転写電圧範囲の関係を示す。横軸はPTVCによる転写ローラの抵抗検知結果、縦軸は転写時の印加電圧である。
【0065】
図7の(1)に示した細い実線丸1・丸2は普通紙1面目印字時の画像マージンを表すラインである。普通紙1面印字の場合、転写電圧が小さすぎると転写に必要な十分な転写電流を転写材に与えることができず、転写不良が発生する。転写電圧が逆に高すぎると、感光ドラムに対し過剰な電流が流れて、そのときに感光ドラム上の電位低下が画像に現れる突き抜けが発生する。この転写不良のライン丸1と突き抜けのライン丸2で囲まれた範囲に転写電圧制御を設定すると普通紙1面目印字時に良好な画像が得られる。
【0066】
同じく図7の(1)に示した点線丸3・丸4は高抵抗紙1面目印字時の画像マージンで、1面目印字に比べて転写材抵抗が高い分必要な制御電圧が高くなり、また転写材抵抗が高い分爆発防止に必要な電流が多くなる分マージンが狭くなっていることがわかる。
【0067】
両者丸1・丸2と丸3・丸4のマージンの重なる部分(斜線部分)が普通紙、高抵抗紙共に良好な画像が得られる制御領域であり、この場合、ラインAに示すような転写制御を行えば、普通紙1面目、高抵抗紙1面目ともに良好な画像を得ることができる。
【0068】
2面目印字の場合は転写低電圧側は爆発によって、高電圧側は白スジという現象でマージンがきまる。白スジは、転写ローラに高い電圧がかかった場合、転写ニップの前後で放電が発生し、その放電によって感光ドラム上(あるいは転写材上)のトナーの極性が反転することで転写不良(または再転写される)現象で、転写材抵抗が高く、転写電圧が高いほど発生しやすい。爆発は感光ドラム上の明部電位Vlと暗部電位Vdの電位差に対し、転写電流が暗部電位Vdにより多く流れるためにできる転写電荷の不均一により、実際にトナー像が乗る明部電位Vl部からVd部に対しトナーが飛び散る現象で、抵抗の高い紙ほど、転写ニップ内の転写材上での水平方向の電荷の移動がおきにくく、発生が顕著になる現象である。
【0069】
図7の(2)に示した細い点線丸5・丸6は普通紙2面目の画像マージンを示すラインである。2面目印字の場合、1面目印字時に一度定着装置13を通り、転写材中の水分が蒸発して紙が高抵抗化するため爆発防止に必要な電流があがり、普通紙1面目に比べると最適転写マージン領域が全体的に高電圧側にシフトしている。普通紙の2面目印字の場合、転写ローラが高抵抗側の場合は高電圧がかかるために白スジによって転写マージンの上限が決まり、転写ローラが低抵抗側の場合は過剰な電流が流れやすくなって突き抜けによって転写マージンの上限が決まる。
【0070】
同じく図7の(2)に示した細い実線丸7・丸8は高抵抗紙2面目の画像マージンを示すラインで、普通紙2面よりもさらに転写材抵抗が高いために、爆発防止に必要なで制御電圧が高くなり、その影響で放電による白スジが発生しやすくなるために転写最適マージンそのものも狭くなっていることがわかり、普通紙2面目の転写最適マージン領域丸5・丸6とのオーバーラップ領域(図中の斜線で囲まれた部分)がほとんど消滅していることがわかる。
【0071】
このように、極端に抵抗の異なる転写材抵抗に対しては、同一の転写制御式で画質を満足することが難しい。この場合、図7の(2)に示すラインB、ラインCのように、普通紙と高抵抗紙で別々の制御式を設定する必要がある。
【0072】
図8は、本実施例の画像形成装置を使い、普通紙(体積抵抗率:1×1011Ω・cm)、および高抵抗紙(体積抵抗率:1×1013Ω・cm)に対し、プロセススピード120mm/secで片面印字、および自動両面印字を行った場合の転写材先端での転写AD値の検知結果を示す。
【0073】
なお、環境は高湿環境(湿度85%RH)、常湿環境(湿度60%RH)、低湿環境(湿度15%RH)の各環境を使用し、AD値は転写材先端から40msec後に1回モニタし、結果は環境毎にプロットしてある。ここで示したAD値は、転写電流6Aの時にAD値が160となるように、0から255までの256段階に比例換算した値である。
【0074】
また、転写電圧は、6μAの一定電流値でPTVC検知を行った時の発生電圧とあらかじめCPU9内に納めた下記制御式2を元に算出した値を印加している。
【0075】
Vt1=0.7×Vt0+700・・・式2(単位はすべて[V])
図8に示したように、普通紙よりも高抵抗紙の方が転写AD値が小さいことがわかる。また、環境湿度に関しては、湿度が高く転写材がすぐに吸湿する高湿環境ほど転写AD値は大きく、同一転写材では、湿度が高いほどAD値が大きいという傾向が現れている。このように転写材が低抵抗化している場合、転写材上で適度の電荷の移動が起きるため、爆発が発生しにくく、逆に転写材を介して感光ドラムへ電流が流れやすい為に突き抜け等の画像問題が発生しやすい。このような状態の転写材に対しては、突き抜けを防止する方向に(転写電流弱めに)転写電圧制御を設定すると良い。
【0076】
逆に、低湿環境や高抵抗紙ではAD値が低くなることがわかる。このAD値の低下は特に転写材抵抗が高い高抵抗紙で顕著で、このよぅな状態の転写材では、転写ニップ内での電荷の移動がおきにくく、爆発が発生しやすくなる。逆にこのような状態の転写材では転写材を介して感光ドラムに流れる電流が少ないため突き抜けは発生しにくく、AD値が大きな状態とは逆に、爆発を防止するために電流を多めに流す転写電圧制御を設定すると良い。
【0077】
本発明では、前記転写制御を切り分けるためのしきい値を転写材が給紙された給紙口を参照して決定している。
【0078】
これは、低湿度環境で転写材先端でのAD値検知結果を元に転写材種を切り分ける場合、もともと転写材が吸湿していないために、1面目印字と2面目印字の転写材のインピーダンス変化が少なく、印字面の切り分けや転写材抵抗値の切り分けが困難であるためである。また、同じ2面目印字でも自動両面印字と手差し両面印字では、1面目印字後に2面目印字に入るまでの時間に差があり、常湿環境などではその間に転写材が吸湿する影響で最適電圧が異なるが、このときに転写AD値の差は小さく、切り分けするのが難しいためである。
【0079】
表1に、本例で示した画像形成装置を用い、常湿環境で普通紙、高抵抗紙を1面および両面印字した場合の転写AD値と、転写マージン電流を示す。
【0080】
【表1】
【0081】
表1に示すように、普通紙も高抵抗紙も1面目印字時よりも、一度定着装置13を通過し転写材の水分が蒸発している2面目印字の方が、転写AD値は全般的に低くなっており、転写材が高抵抗になる2面目の方が転写電流が少なく爆発が発生しやすい。このため、2面目は1面目よりも高い電圧を与える必要がある。また、高抵抗紙は、1面2面とも更に高い電圧を必要とすることがわかる。
【0082】
さらに、表1に示したように、自動両面2面目と手差し2面印字では、1面印字後に2面目が印字にはいる時間が自動両面印字の方が早く、1面目印字後の転写材が機内を通過して外気にさらされずに2面目印字に供される関係で、自動両面2面印字の方が手差し2面印字時よりも爆発防止のために必要な転写電流が多いことがわかる。それに対し、両者の転写材先端での転写AD値の差は小さく、両者を見分けるのは難しい。また、低湿環境では転写材抵抗による転写AD値差が小さく、印字面の見分けが難しいことがわかる。
【0083】
また、本発明では画像の有無による転写電流の変化をなくすために、転写材余白で転写AD値の検知を行っている。しかし、この検知タイミングでは転写電流が完全に飴和しない状態で転写AD値の検知を行うことになるため、ソフト上の転写材先端と実際の転写材先端の搬送速度のばらつきよるずれ、CPU内のタイマーカウントの誤差による検知時間のタイミングのずれなどによって前記転写AD値はある程度ばらつきを持って検知されてしまう。
【0084】
そのために誤検知される可能性もある。
【0085】
したがって、いずれの条件下でも最適な転写制御式決定を行うために、本発明では給紙口情報により印字面を推定し、その印字面に応じて転写制御式切り分けのしきい値を決定することでより転写材抵抗の切り分け精度をあげている。
【0086】
本実施例では次に示す式3、式4、式5のように、3つの制御式を用意した。式3、式4、式5から算出される転写電圧の関係は、Vt1l <Vt1m <Vt1h である。
【0087】
Vt1l =0.7×Vt0+800・・・式3
(普通紙1面目&高抵抗紙1面目用制御式、単位はすべて[V])
Vt1m =0.8×Vt0+900・・・式4
(普通紙2面目用制御式、単位はすべて[V])
Vt1h =0.8×Vt0+1100・・・式5
(高抵抗紙2面目用制御式、単位はすべて[V])
本実施例では、給紙口としてカセット給紙、手差し給紙、自動両面給紙という3つの給紙口を想定し、それぞれ、AD値のしきいを表2に示すように設定した。自動両面給紙口からの給紙の場合、印字面は2面目のみと特定し、主に転写材種を切り分けるためのしきい値設定となっており、カセット給紙は逆に1面印字のみと判断して、こちらも転写材種を切り分ける設定となっている。手差し給紙口からの給紙は、片面印字、手差し両面印字両方あると想定し、しきい値の設定を行っている。
【0088】
表2に、各給紙口の転写ADしきい値と、対応する転写制御式を示す。なお、本実施例で用いた画像形成装置は、AD=120が転写電流4.5μAに相当する。
【0089】
【表2】
【0090】
なお、ここで決定した転写電圧Vtは転写AD値検知後すぐに転写ローラに印加するが、高圧は約10msecで目標値まで立ち上がり、この転写バイアスの切り替えに起因する画像不良は発生しなかった。
【0091】
本実施例を適用した画像形成装置で、各環境で普通紙、高抵抗紙に印字を行ったが、いずれの場合も爆発も突き抜けもない良好な画像が得られた。
【0092】
なお、本例では転写制御式を3つ用意し、転写AD値のしきい値を給紙口に応じてそれぞれ一つ、もしくは二つずつもうけて制御式の選択を行ったが、あらかじめ設定する制御式は2本以上であればいくつ設定しても良い。その場合、制御式の設定数に応じた転写AD値のしきい値を設定しておく。
【0093】
以上説明したように、PTVC制御方式を用い、転写材先端で転写材抵抗検知を行った結果によって印字中の転写電圧を決定する系において、制御式の切り分けを行うしきい値を給紙口情報を参照して決定することで、転写材抵抗値と印字面の切り分け精度が上がり、それぞれの転写材、印字面に対し、良好な画像を得ることが可能となる。
【0094】
〈実施例2〉(図9・図10)
本実施例では、転写材先端が転写ニップ部Nに突入した際の転写電流をモニタして転写電圧を決定する画像形成装置において、転写中に印加する転写電圧を選択するためのしきいとなる転写AD値を、給紙口情報と転写ローラ抵抗検知結果を参照して変更する例を示す。
【0095】
転写AD値は、転写材Pの抵抗値状態によって変化することは前述の実施例で説明したとおりだが、この転写AD値は、図9に示すように転写部材である転写ローラ5の抵抗値に応じても変化する。
【0096】
図9は横軸がPTVCによる抵抗検知結果で、右に行けば行くほど転写ローラ抵抗値が高い状態を示し、それに対する普通紙2面と高抵抗紙2面の転写AD値をプロットしている。
【0097】
転写材Pの抵抗値の違いによって生じる転写電流の差は、非転写時の転写の系のインピーダンスに対する、転写材Pが入った場合の転写の系全体のインピーダンスの上昇率が高い場合に大きくなる。非転写時の転写の系全体のインピーダンスが低い場合、転写材Pの抵抗値差による転写電流の差は大きく、高抵抗紙使用時の転写AD値の降下量も大きくなる。逆に転写の系全体のインピーダンスが高い場合、転写材Pの抵抗値差による電流差も少なくなり、結果として高抵抗紙使用時の転写AD値の降下量は普通紙に対し小さくなる。
【0098】
このように、転写AD値の変化量は、転写ローラ5の抵抗値に応じても変化する。特に使用する転写ローラ5の抵抗値が環境変動などによって変動が激しい画像形成装置では、転写ローラ5の抵抗値変化を無視して転写AD値のしきい値を設定するのは難しくなってくる。
【0099】
このような転写構成の画像形成装置の場合、この差を考慮するために、転写電圧を決定するためのしきい値を、前記実施例1であげたように給紙口情報を参照するのに加え、PTVCの検知結果に応じて変更するとよい。
【0100】
これによって、転写ローラ5の抵抗値によらず、転写材抵抗値の切り分けができ、良好な画像を得ることができる。
【0101】
本実施例では、図10に示すように、転写ADのしきい値を転写ローラ抵抗検知結果と転写AD値の関数として設定する。
【0102】
前述の実施例1と同一構成の画像形成装置を用いてPTVCによる転写ローラ抵抗検知の結果Vt0と、普通紙、高抵抗紙の1面、2面目印字時の転写材先端での転写AD値の関係を高温環境(温度32.5℃)、常温環境(温度23℃)、低温環境(温度15℃)でそれぞれもとめ、表3に示す転写ADしきい式で転写制御を決定することにした。
【0103】
なお、ここで用いた画像形成装置は転写電圧の出力最大値が5kVのトランスを使用してぉり、Vt0は0.5kV〜4kVの範囲で検知される構成であり、表3に示した式の中ではVt0をトランスの最大電圧5kVを256分割したPWM値(PWM0と表記する)として表している。
【0104】
【表3】
【0105】
本実施例を適用した画像形成装置で、高温環境(温度32・5℃)、常温環境(温度23℃)、低温環境(温度15℃)で普通紙、高抵抗紙の片面、自動両面印字を行ったが、いずれの環境、印字面でも良好な画像が得られた。
【0106】
このように、転写材先端での転写電流検知によって転写制御を決定する系において、転写AD値による転写制御を決定するしきい値を転写ローラ抵抗検知結果を参照して決定することで、より転写材抵抗値の切り分け精度があがり、転写ローラ抵抗や環境によらず良好な画像が得られるようになる。
【0107】
〈実施例3〉(図11)
本実施例では、転写材先端が転写ニップ部Nに突入した際の転写電流をモニタして転写電圧を決定する画像形成装置において、転写中に印加する転写電圧を選択するためのしきいとなる転写AD値を、給紙口情報と、装置に通紙される転写材のサイズ情報を参照して変更する例を示す。
【0108】
本実施例では、転写ADしきい値を手差し給紙・カセット給紙・自動両面給紙の3つの給紙口と、A4/レター/リーガルサイズの大サイズ系と、B5/エグゼクティブなどの小サイズ系の2つの紙サイズ系統の組み合わせに対してそれぞれ設定した。
【0109】
図11に、同一抵抗値の転写材で、サイズ違いの転写材を印字した場合の転写AD値の差を示す。図11に示すように、幅210mmのA4サイズ紙と幅約216mmのレターサイズ紙では、転写材先端で流れる転写AD値がほとんど同一であるのに対し、幅182mmのB5サイズ紙や幅約184mmのエグゼクティブサイズ紙はいずれもA4サイズ紙、レターサイズ紙よりも転写AD値が大きくなっている。これはA4サイズ、レターサイズの転写材通紙中は、転写ローラ5の中抵抗弾性層部5bの長手ほぼ全域が転写材通紙域となるのに対し、B5サイズやエグゼクティブサイズの場合、通紙域の一部にしか転写材がないために転写ローラ弾性層部5bが感光ドラム1に直接当接している領域があり、その部分では転写ローラ5から感光ドラム1に対し転写電流が直接流れるためである。したがって、同一の転写材抵抗値の場合は、転写材幅が狭いほど転写AD値が大きくなる。
【0110】
したがって、狭幅の転写材Pを使用する場合は、最適な転写電圧を決定するためには紙サイズを考慮して転写ADのしきいを設定する必要がある。
【0111】
本実施例では転写材サイズの指定があった場合には、その転写材サイズ情報を参照して下の表3に示すようなしきい値設定で転写電圧を決定することにした。
【0112】
表4に示すように、本実施例では、転写材サイズによって転写ADしきい値を一律で20ずつシフトしている。
【0113】
なお、不定形サイズなどに対応するために、転写材幅を検知するセンサを転写材搬送経路中に設け、この転写材幅検知センサの検知結果に応じて転写ADしきい値を変更してもよい。
【0114】
また、前記実施例にあげた転写ローラ抵抗値検知結果と転写材サイズ情報の双方を参照して転写ADしきい値を設定してもよい。
【0115】
【表4】
【0116】
本例のように、転写材サイズ情報を参照することで、より転写材抵抗値の切り分け精度が上がり、いずれに転写材サイズでも良好な画像を得ることができる。
【0117】
〈その他〉
1)像担持体に対するトナー像の形成は、像担持体として電子写真感光体を用いた電子写真プロセスに限られるものではなく、その他、像担持体として静電記録誘電体を用いた静電記録プロセス、像担持体として磁気記録磁性体を用いた磁気記録プロセスなど、像担持体にトナー像を形成担持させる作像手法であればよい。
【0118】
2)接触転写部材はローラ体の形態に限られず、回転ベルト体の形態などであってもよい。
【0119】
3)本発明において、転写材には中間転写ベルトや中間転写ドラムのような中間転写材も含まれる。
【0120】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、PTVC制御により転写電圧を決定する転写制御方式に加えて、転写材先端からPTVC検知結果に応じた転写電圧を転写材に与えて転写材先端が転写ニップ部に挿入されてから一定時間後の転写電流値をモニタし、前記転写材先端での転写電流モニタ結果と給紙口情報から、あらかじめ抵抗値の異なる転写材に対して最適化された複数の転写電圧値から最適な印加電圧を決定して印字中に定電圧印加することで、いずれの抵抗値の転写材でも良好な画像を得ることが可能になる。
【0121】
さらに、転写ローラ抵抗検知結果、紙サイズ情報等を参照することで、より最適な転写電圧設定を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1における画像形成装置例の概略構成模型図
【図2】 転写ローラの構成説明図
【図3】 転写ローラ抵抗測定法の説明図
【図4】 PVTC制御の説明図
【図5】 実施例1の転写制御アルゴリズムのフローチャート
【図6】 転写材先端での転写電流の変化を解説する図
【図7】 各転写材種、印字面の画像マージンの関係を示す図
【図8】 環境、転写材種による転写AD値の関係を示す概略図
【図9】 実施例2における転写ローラ抵抗値と転写AD値の関係を示す図
【図10】 転写AD値設定を示す図
【図11】 実施例3における転写材サイズと転写AD値の関係を示す図
【符号の説明】
1‥‥感光ドラム、5‥‥転写ローラ、11a‥‥レジストセンサ、21a‥‥給紙センサ、21a‥‥給紙センサ、32‥‥DCコントローラ、34‥‥転写用高圧電源
【発明の名称】 画像形成装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーを担持する像担持体と、前記像担持体と形成する転写領域ニップ部に挿入された転写材に前記像担持体上のトナーを転写させる転写部材と、前記転写部材に電圧を印加する電圧印加手段と、前記電圧印加手段から出力される電流値を検知する電流検知回路と、を有する画像形成装置において、
前記ニップ部に転写材が挿入されている状態の前記電流検知回路の電流検知結果と転写材の幅の情報に基づいて、前記電圧印加手段の出力電圧を決定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ニップ部に転写材がない状態で前記転写部材の抵抗を検知する抵抗検知手段と、を有する画像形成装置において、
前記印加電圧決定のためのしきい値を、前記転写部材の抵抗検知結果と、転写材の幅の情報の少なくとも一方の情報に基づいて変更することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ニップ部に転写材が挿入されている状態の前記電流検知回路の電流検知結果は前記ニップ部に転写材が挿入されてから一定時間後の前記電流検知回路の電流検知結果であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記転写材の幅は給紙口情報に基づいて認識することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は転写方式の画像形成装置に関する。
【0002】
より詳しくは、電子写真感光体や静電記録誘電体等の像担持体上に形成担持させたトナー像を転写材に転写するために転写材の裏側に接触する転写部材を備えた複写機・プリンタのような画像形成装置に関するものである。
【0003】
【従来の技術】
転写方式の画像形成装置において、像担持体に形成担持させたトナー像を転写材に転写させる転写手段としては、非接触タイプであるコロナ帯電器を用いた転写手段との対比においてオゾンの発生がない等のことから、像担持体と圧接ニップ部を形成し該圧接ニップ部に挿入された転写材に像担持体上のトナー像を転写させる転写部材を有する接触式転写手段、特には接触転写部材としてローラ体(転写ローラ)を用いたローラ転写方式がさらに転写材搬送安定性に優れる等の利点を有していて主流となっている。
【0004】
ローラ転写方式は、接触転写部材として、抵抗を1×106 〜1×1010Ωに調整した中抵抗弾性層を有する導電性弾性ローラ(以下、転写ローラと記す)を用い、これを像担持体(以下、感光ドラムと記す)上に当接させ、該感光ドラムと該転写ローラによって形成される圧接ニップ部(以下、転写ニップ部と記す)で転写材を挟持搬送させながら、転写ローラに転写バイアスを印加することで転写材にトナー像とは逆極性の電荷を付与して感光ドラム上のトナー像を転写材上に転写させるものである。
【0005】
上記の転写ローラは、ゴム・スポンジなどにカーボンなどの無機導電性粒子を分散させたり、界面活性剤などを練り込んだイオン導電性のゴムなどを用いるなど、抵抗値を適宜調整した弾性層を有するローラであり、この転写ローラの抵抗値が製造時のばらつき、温湿度、長期使用(耐久)による抵抗値変化などで1桁以上変化することは周知のことである。
【0006】
このように抵抗変化する転写ローラに対し、常に最適な電流を流すためには「定電流印加方式」で転写ローラに対して転写電圧を印加することが考えられるが、この場合は、装置の最大通紙幅よりも幅の狭い小サイズ転写材が通紙使用されて転写ニップ部においてその長手に関して感光ドラムと転写ローラが直接接触する非通紙領域部ができたときに、ここへ集中的に電流が流れて転写材への電流供給が不足し、転写不良が発生するという問題があった。
【0007】
そのため、多くの画像形成装置では転写材サイズによらず適正電流を流すために「定電圧印加方式」を行っている。定電圧印加方式では製造条件や環境によって変化する転写ローラの抵抗値に対し適正な電流を流すために、転写動作以前に、通紙時に転写ローラへ流す一定電流値を転写ローラに流し、そのときに発生する電圧を保持して転写時に印加するバイアス制御方式(ATCV制御方式:Active Transfer Voltage Control )や、通紙前にある一定電流値を転写ローラに流し、そのときの発生電圧をあらかじめ決められた制御式に入れて算出した電圧を転写時に印加するバイアス制御方式(PTVC制御方式:Programable Transfer Voltage Control)などによって通紙以前の転写の系のインピーダンスを検知し、適正範囲の電流が流れるような転写電圧を印加している。
【0008】
特にPTVC制御方式は、ハードウェア構成の回路からなり、印加できるバイアス値が数個しかもてないATVC方式に比べて、より精密なバイアス制御が行え、また電圧制御のためのハードウェア回路を必要としないため、コスト的にも有利な電圧制御方式である。
【0009】
このPTVC制御方式をいま少し詳しく説明すると、プリント前の非通紙時に感光ドラム表面を帯電させた状態で一定電流値を目標にPWM信号(パルス幅変調信号:Pulse Width Modulation)を段階的あげて転写ローラに電圧を印加し、目標電流値に到達した電圧値をVt0としてホールドする。そのVt0値と、あらかじめ制御回路のCPU内にメモリしておいた転写出力テーブルとから、前記Vt0値に適した印字時の転写電圧Vtを決定し、印字時にはその転写電圧Vtに対応したPWM信号を出力して転写ローラにVtを印加する制御方式である。
【0010】
このように、一定電流値に対する各転写ローラの発生電圧Vt0を参照して印字時の転写電圧Vtを決定することで、転写ローラの抵抗値に応じて最適電圧を印字時に印加することができ、広い範囲の抵抗値の転写ローラで良好な画像を得ることができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような従来の転写電圧制御法には以下に示すような問題があった。
【0012】
即ち、従来のATVC方式、PTVC方式といった転写電圧制御法は、転写ニップ部内に転写材がない状態で一定電流値を転写ローラに流し、その時の発生電圧から転写時に印加する転写電圧を決定している。このように非通紙時に転写の系全体のインピーダンスを検知することで転写ローラの抵抗値が変化してもそれに応じた適正転写バイアスを印加できるようにしている。
【0013】
しかし、転写材の抵抗値が高い場合、または低い場合などあらかじめ想定している転写材抵抗値から大幅に抵抗値がずれた転写材を使用した場合、印字中に流したい転写電流が適正転写電流値の範囲からずれることがある。
【0014】
このように転写材のインピーダンスが大きく変化する場合、転写電流に過不足が生じ、画像不良が発生してしまうという問題があった。特に、近年の画像形成装置の世界的普及により、印字に使用される転写材の種類が増加するのに伴って、転写材の抵抗も多種多様化し、環境・転写材種類を問わず良好な画像を得るのが難しくなってきている。
【0015】
また、高速化が進むにつれて、転写材の抵抗によって最適な転写電流値がまったく異なるという問題も発生しており、様々な転写材に対応できる転写制御方式の開発が求められている。
【0016】
これに対し、特殊紙モードを設け、ユーザーに転写材種を指定してもらうことで転写電圧制御を最適化することも考えられるが、ユーザーに煩わしい手間を強いることになり、あまり好ましくない。
【0017】
また、転写材が転写ニップ部に存在する状態で決められた電圧を印加し、その時の転写電流を測定して転写材抵抗を推定し、目標電流値に転写電流がなるように転写電圧を補正する方法が提案されているが、この方法だと最適転写電流が異なる転写材に対し、異なる電流値を与えることができず、特に転写材種ごとに必要電流の異なる高速機に対応するためには限界があった。
【0018】
そこで本発明は、接触式転写手段を用いた転写式の画像形成装置において、上記のようなユーザーが指定操作する特殊紙モードを設けるようなことなしに、幅広い抵抗範囲の転写材に対応し抵抗値の異なる転写材に対し適正な転写電圧を与え、転写材の抵抗値によらず良好な画像を得るための転写制御方式の提供を目的とする。また、高速化に対応することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明は下記の構成を特徴とする画像形成装置である。
【0020】
トナーを担持する像担持体と、前記像担持体と形成する転写領域ニップ部に挿入された転写材に前記像担持体上のトナーを転写させる転写部材と、前記転写部材に電圧を印加する電圧印加手段と、前記電圧印加手段から出力される電流値を検知する電流検知回路と、を有する画像形成装置において、前記ニップ部に転写材が挿入されている状態の前記電流検知回路の電流検知結果と転写材の幅の情報に基づいて、前記電圧印加手段の出力電圧を決定することを特徴とする画像形成装置。
【0021】
【0022】
〈作 用〉
すなわち本発明は、前述の問題に対し、PTVC制御により転写電圧を決定する転写制御方式に加えて、転写材先端からPTVC検知結果に応じた転写電圧を転写材に与えて転写材先端が像担持体と転写部材との圧接ニップ部である転写ニップ部に挿入されてから一定時間後の転写電流値をモニタして、前記転写材先端での転写電流モニタ結果と給紙口情報から、あらかじめ抵抗値の異なる転写材に対して最適化された複数の転写電圧値から最適な印加電圧を決定して印字中に定電圧印加することで、いずれの抵抗値の転写材でも良好な画像を得るものである。
【0023】
さらに、転写部材抵抗検知結果、紙サイズ情報等を参照することで、より最適な転写電圧設定を行うものである。
【0024】
【発明の実施の形態】
〈実施例1〉(図1〜図8)
(1)画像形成装置例
図1は画像形成装置の一例の概略構成模型図である。本例の画像形成装置は、転写式電子写真プロセスを用いた、両面印字機能(両面プリント機能)を有する、反転現像方式のレーザープリンタである。
【0025】
1は像担持体たる感光ドラムであり、OPC、アモルファスSi等の感光材料をアルミニウムやニッケル等のシリンダ状の基板上に形成して構成されており、不図示の駆動手段により矢示の時計方向に所定の周速度で回転駆動される。
【0026】
2は回転する感光ドラム1の周囲を所定の極性・電位に一様に帯電処理する一次帯電手段であり、本例では帯電ローラを使用した接触帯電装置である。本例では、感光ドラム1の表面はこの帯電ローラ2によってネガトナーと同極性の負に一様に帯電され、暗部電位Vdとなる。
【0027】
3は画像情報露光手段としてのレーザービームスキャナーである。このスキャナー3は、半導体レーザー、ポリゴンミラー、F−θレンズ等を有してなり、不図示のホスト装置から送られてきた画像情報の時系列電気デジタル画素信号に応じてON/OFF制御されたレーザービームLを出射して反射ミラー3aを介して感光ドラム1の一様帯電表面を走査露光し、静電潜像を形成する。即ち、このスキャナー3によって像露光された感光ドラム1面の露光された部分は電位の絶対値が小さくなり、明部電位Vlとなって露光されなかった感光ドラム面部分の暗部電位Vdとの電位コントラストによって静電潜像が形成される。
【0028】
4はネガトナーを用いた反転現像装置であり、感光ドラム1上の静電潜像をトナー像として反転現像する。4aは回転現像スリーブであり、トナーが薄層コートされており、このトナーは負に帯電している。現像スリーブ4aには、感光ドラム1の暗部電位Vdと明部電位Vlとの間のバイアス電圧Vb(|Vd|>|Vb|>|Vl|)が不図示の外部電源によって与えられているので、現像スリーブ4a上のトナーは、感光ドラム1の明部電位Vlの部分にのみ転移して静電潜像が顕像化される(反転現像)。
【0029】
現像方法としては、ジャンピング現像法、2成分現像法等が用いられ、イメージ露光と反転現像との組み合わせで用いられることが多い。
【0030】
5は弾性層を有する回転体形状の接触転写部材としての転写ローラである。感光ドラム1に対して加圧接触させて転写ニップ部Nを形成させてあり、不図示の駆動手段により感光ドラム1の回転に順方向の矢示の反時計方向に感光ドラム1の回転周速にほぼ対応した所定の周速度で回転駆動される。
【0031】
22は第1の給紙口としての給紙カセット部であり、カセット内に転写材Pを積載収納させてある。
【0032】
24は第2の給紙口としての手差し給紙トレイ部(マルチ・パーパス・トレイ)である。
【0033】
不図示の選択指定手段でカセット給紙モードが選択指定されているときには、給紙カセット部22に積載収納されている転写材Pが所定の給紙制御タイミングで給紙ローラ21により一枚分離給送される。
【0034】
また手差し給紙モードが選択指定されているときには手差し給紙トレイ部24に積載セットの転写材Pが所定の給紙制御タイミングで給紙ローラ23により一枚分離給送される。
【0035】
給紙カセット部22または手差し給紙トレイ部24から給送された転写材Pはプレフィードセンサ21aで待機した後に、レジストローラ11、レジストセンサ11a、転写前ガイド10を介して転写ニップ部N(画像形成部)に所定の制御タイミングにて給紙される。即ち、転写材Pは、レジストセンサ11aによって、感光ドラム1の表面に形成されたトナー像と同期取りされて転写ニップ部Nに供給される。
【0036】
転写ニップ部Nに供給された転写材Pは感光ドラム1と転写ローラ5との間に挟持されて感光ドラム1と転写ローラ5の回転により搬送される。転写材Pが転写ニップ部Nを挟持搬送されていく間において、転写材Pの裏側に接触している転写ローラ5に対して転写用高圧電源(転写高圧トランス、転写高圧回路)34から所定の制御タイミングにて所定の制御転写バイアスが印加される。これにより、転写材Pにトナー像とは逆極性の電荷が付与されて感光ドラム1上のトナー像が転写材P上に順次に転写されていく。
【0037】
転写ニップ部Nにおいてトナー像の転写を受け、転写ニップ部Nを通過した転写材Pは、感光ドラム1の面から分離され、シートパス(ガイド部材)12を通って定着装置13へ搬送される。8は除電針である。定着装置13は本例のものは加熱フィルムユニット13aと加圧ローラ13bの圧接からなる所謂フィルム加熱方式の定着装置であり、トナー像を保持した転写材Pは加熱フィルムユニット13aと加圧ローラ13bの圧接部である定着ニップ部nで挟持搬送されて加熱・加圧を受けることでトナー像が転写材P上に定着され永久画像となる。
【0038】
片面印字モードが選択指定されている場合は、定着装置13を出た転写材Pは搬送路B1側に進路案内されて片面印字物として機外に排出される。
【0039】
両面印字モード(自動両面印字)が選択指定されている場合は、定着装置13を出た1面目印字済み(画像形成済み)の転写材Pは第3の給紙口としての自動両面給紙ユニット50内に搬送され、スイッチバック搬送路B2を経由することで反転され、循環搬送路B3を通り、再給紙ローラ25、再給紙センサ25aを経由して転写ニップ部Nに再給紙されて、反転された転写材Pの2面目に対する印字行程へと入る。
【0040】
そして転写ニップ部Nにて2面目に対するトナー像の転写を受けた転写材Pは、感光ドラム1の面から分離され、シートパス12を通って再び定着装置13へ搬送されて、2面目に対するトナー像の定着処理を受け、搬送路B1側に進路案内されて両面印字物として機外に排出される。
【0041】
一方、転写材Pに対するトナー像転写後の感光ドラム1の表面はクリーニング装置6により転写残留トナーの除去を受けて清掃されて繰り返して作像に供される。本例のクリーニング装置6はブレードクリーニング装置であり、6aはそのクリーニングブレードである。
【0042】
(2)転写ローラ5
接触転写部材としての転写ローラ5は、鉄、SUS等の芯金5a上にEPDM、シリコーン、NBR、ウレタン等のゴムを用いたソリッド状(充填肉質)、または発泡スポンジ状の中抵抗弾性層5bを形成したゴムローラで、ローラ硬度25〜70度(AskerC/総荷重9.8N(1kg) 荷重時、以下同じ)、抵抗値106 〜1010Ωの範囲のものを使用する。転写ローラ5の弾性体層5bは、一次加硫後に2次加硫し、その後表面を研磨して外径形状を所望の寸法としたものを用いる。
【0043】
本例で使用した転写ローラ5は、φ6mmのFeの芯金5a上に、8×107[Ω]NBR系のイオン導電性ソリッドゴムからなる弾性層(中抵抗弾性層)5bを形成し、ローラ硬度60度、外径をφ16mm、ゴム部長手寸法を218mmとしたソリッドの導電性・弾性ローラである。
【0044】
転写ローラ5は図2のように芯金5aの両端部をそれぞれ軸受け部材5c・5cで回転自由に軸受け支持させてある。軸受け部材5c・5cはそれぞれ不図示のガイド部材により感光ドラム1に対して接近方向・離れ方向にスライド移動自由に保持させた可動部材であり、この可動の軸受け部材5c・5cをそれぞれ加圧ばね5d・5dにより感光ドラム1に対して接近方向に移動付勢することで転写ローラ5を感光ドラム1に対して弾性層5bの弾性に抗して圧接させて所定幅の転写ニップ部Nを形成させてある。Gは転写ローラ5の芯金5aの一方の端部に固着させた駆動ギアであり、駆動ギアGに不図示の駆動手段から回転力が伝達されて転写ローラ5が感光ドラム1の回転に順方向で、感光ドラム1の回転周速度とほぼ同じ周速度で回転駆動される。
【0045】
図3は転写ローラ5の抵抗測定法を示す図である。即ちアルミシリンダー71へ総圧9.8N(1000g(片側500g))で転写ローラ5を当接させて回転させ、任意の電圧(たとえば+2.0kV)を直流高圧電源72より転写ローラ5の芯金5aに印加したときに抵抗74の両端に発生する電圧値の最大値、最小値を電圧計73で読みとる。読みとった電圧値から回路中に流れる電圧値の平均値を求め、転写ローラの抵抗値を算出したものである。測定環境は通常環境N/N:23℃・60%である。
【0046】
(3)転写バイアス制御
本実施例では、PTVCによる転写ローラ5のインピーダンス検知結果と転写材を介した転写電流検知結果によって印字中の転写電圧を決定する転写バイアス制御系において、あらかじめ複数の転写材種に対応した2本以上の制御式を用意し、給紙口情報、すなわち本実施例の場合は転写ニップ部Nに対する転写材Pの給紙が
・第1の給紙口としての給紙カセット部22からなされるのか
・第2の給紙口としての手差し給紙トレイ部24からなされるのか
・第3の給紙口としての自動両面給紙ユニット50からなされるのか
によって制御式切り分けのしきい値を決定し、転写材を介した転写電流検知の結果を前記しきい値と比較して、前記複数の制御式を切り替えて転写電圧を決定する例を示す。
【0047】
a)PTVC制御方法
本実施例のPTVC制御方法を図4を用いて詳細に説明する。9は転写バイアスを制御するCPUで、OUT端子より所望の転写出力電圧に対応したパルス幅を持つPWM信号を出力する。実際にはパルス幅に対応した転写出力テーブル(不図示)をCPU9内にメモリしておく。このPWM信号はローパスフィルタ(Low Pass Filter) 14によりDC化され、アンプ15により増幅されて転写出力電圧Vtとなる。このとき流れた電流値Itに対応した信号がCPU9のIN端子に入力され、CPU9内で検知するという流れになっている。
【0048】
本実施例では、転写高圧電源34に流れる電流値を電流検出回路34aで検出し、A/Dコンバータ31でデジタル変換した値(以降、「転写AD値」と表記する)をCPU9へ入力して、転写ローラ5に流れる電流値を判断している。
【0049】
「定電圧制御」をしたい場合には、あらかじめCPU9内に設定されたPWMと転写出力対応テーブルから判断し、所望の電圧値に対応したパルス幅のPWM信号を出力する。
【0050】
また、「定電流制御」したい場合は、CPU9からのPWM信号のパルス幅を徐々に上げていき、CPUのIN端子に入ってくる信号が所望の電流値(一定電流値)に対応した値になるまで続けられ、その後電流値変化に伴って、電圧(パルス幅)を追従させて定電流制御を行う。
【0051】
b)転写制御のアルゴリズム
図5に本実施例の転写制御のアルゴリズムを示す。
【0052】
ホストコンピュータからプリント信号を受け、感光ドラム1の帯電が終了した時点で、まず感光ドラム1と転写ローラ5が直接当接した状態でPTVC検知を一度行う(Step1)。
【0053】
PTVC検知は、転写用高圧電源34からの出力電圧を徐々に上昇させて、あらかじめ設定された一定電流値に転写電流が到達した時の電圧値をVt0としてホールドしている。
【0054】
ここでの検知結果に基づき、あらかじめCPU9内に格納されている転写制御式1により転写時に印加する転写電圧の第1の目標値Vt1を決定する(Step2)。
【0055】
Vt1=αVt0+β・・・式1
Vt0:PTVC検知時に、所定の検知電流を転写ローラに流したとき
に発生する発生電圧
α及びβ:転写の系によってあらかじめ設定する常数
Vt1決定後、画像形成のための準備が終了した時点で印字動作を開始し、感光ドラム1上のトナー像と同期をとって転写材Pを転写ニップ部Nに給送する。転写材Pの先端が転写ニップ部Nに入ると同時に、前述の初期転写目標値Vt1を定電圧印加し(Step3)、初期転写目標値Vt1印加開始から一定時間後に転写電流を1回モニタして、その時に検出した転写AD値をCPU9に記録する(Step4)。
【0056】
転写AD値の検知タイミングは、転写電圧Vt1印加後から転写電流がある程度落ち着くポイントで、なおかつトナーの有無の影響をなくすために、先端余白内で行うのが望ましい。本実施例では、プロセススピード120mm/secで印字する画像形成装置を用い、転写材先端から40msec後に転写AD値のモニタを行った。この場合、転写AD値のモニタポイントは、転写材先端から約4.8mmのポイントとなり、先端余白を5mm程度とれば、転写材のインピーダンスの違いによる転写電流変化を安定してモニタすることができる。
【0057】
次に、転写ニップ部Nに対する転写材給紙口情報により、制御式を切り分けるための転写AD値のしきい値を決定し(Step5)、前記転写AD値をここで設定したしきい値と比較して転写電圧をVtを決定し(Step5)、ここで決定した転写電圧Vtを転写ローラに定電圧印加(Step6)して、転写材後端まで一定電圧で転写を行う。
【0058】
前記初期転写目標電圧Vt1は式1に示したように、転写ローラ抵抗値の検知結果に応じた電圧を印加している。これは、転写材先端で転写材電流検知する際に印加する電圧が一定値の場合、転写ローラ抵抗によって、転写材先端で流れる電流値が異なることによる画像上の不具合を防止するためである。たとえば、転写ローラ抵抗値が低い場合、Vt1が一定値だと転写材先端で過剰な電流が感光ドラム1に流れて、濃度ムラが発生し、逆に転写ローラ抵抗値が高い場合は、Vt1から転写に必要な電圧まで高圧を立ち上げる場合の電圧差が大きくなるために、必要電流が流れるまでに時間がかかり、転写材先端で電流不足となって爆発や転写不良が発生してしまうためである。
【0059】
本例のように、Vt1をVt0に応じて変化させることで、前述の不具合が防止でき、また、転写材のインピーダンスをほぼ同一の転写電流で安定して検知できる
というメリットがある。
【0060】
前記初期転写目標電圧Vt1は、その転写行程に必要な電圧まで転写電圧を短時間で立ち上げるために、普通紙の転写に最低限必要な転写電圧を印加するのが望ましい。
【0061】
図6は、抵抗値の異なる転写材を通紙したときの、転写材先端での転写電流値(AD値)の変化を示した図である。本実施例では、PTVC検知結果に基づいて決定される通紙時の転写電圧初期目標値Vt1を、普通紙で最適な電流が流れる値に設定しているため、普通紙に印字した場合はラインAに示すように目標電流値とほぼ同一の転写電流(AD値)が得られる。
【0062】
これに対し、高抵抗紙を印字した場合は、転写材の抵抗が高い分だけ転写ローラに流れる電流値がラインBに示すように△Idownだけ降下している。
【0063】
従って、転写材先端が転写ニップ部Nに到達してから、転写材抵抗値による転写電流の降下の差が分かる任意の時間T1後に転写電流値(AD値)をモニタすることで、転写材抵抗値の高低を検出することができる。
【0064】
図7に、普通紙、高抵抗紙の片面、および自動両面印字時の最適転写電圧範囲の関係を示す。横軸はPTVCによる転写ローラの抵抗検知結果、縦軸は転写時の印加電圧である。
【0065】
図7の(1)に示した細い実線丸1・丸2は普通紙1面目印字時の画像マージンを表すラインである。普通紙1面印字の場合、転写電圧が小さすぎると転写に必要な十分な転写電流を転写材に与えることができず、転写不良が発生する。転写電圧が逆に高すぎると、感光ドラムに対し過剰な電流が流れて、そのときに感光ドラム上の電位低下が画像に現れる突き抜けが発生する。この転写不良のライン丸1と突き抜けのライン丸2で囲まれた範囲に転写電圧制御を設定すると普通紙1面目印字時に良好な画像が得られる。
【0066】
同じく図7の(1)に示した点線丸3・丸4は高抵抗紙1面目印字時の画像マージンで、1面目印字に比べて転写材抵抗が高い分必要な制御電圧が高くなり、また転写材抵抗が高い分爆発防止に必要な電流が多くなる分マージンが狭くなっていることがわかる。
【0067】
両者丸1・丸2と丸3・丸4のマージンの重なる部分(斜線部分)が普通紙、高抵抗紙共に良好な画像が得られる制御領域であり、この場合、ラインAに示すような転写制御を行えば、普通紙1面目、高抵抗紙1面目ともに良好な画像を得ることができる。
【0068】
2面目印字の場合は転写低電圧側は爆発によって、高電圧側は白スジという現象でマージンがきまる。白スジは、転写ローラに高い電圧がかかった場合、転写ニップの前後で放電が発生し、その放電によって感光ドラム上(あるいは転写材上)のトナーの極性が反転することで転写不良(または再転写される)現象で、転写材抵抗が高く、転写電圧が高いほど発生しやすい。爆発は感光ドラム上の明部電位Vlと暗部電位Vdの電位差に対し、転写電流が暗部電位Vdにより多く流れるためにできる転写電荷の不均一により、実際にトナー像が乗る明部電位Vl部からVd部に対しトナーが飛び散る現象で、抵抗の高い紙ほど、転写ニップ内の転写材上での水平方向の電荷の移動がおきにくく、発生が顕著になる現象である。
【0069】
図7の(2)に示した細い点線丸5・丸6は普通紙2面目の画像マージンを示すラインである。2面目印字の場合、1面目印字時に一度定着装置13を通り、転写材中の水分が蒸発して紙が高抵抗化するため爆発防止に必要な電流があがり、普通紙1面目に比べると最適転写マージン領域が全体的に高電圧側にシフトしている。普通紙の2面目印字の場合、転写ローラが高抵抗側の場合は高電圧がかかるために白スジによって転写マージンの上限が決まり、転写ローラが低抵抗側の場合は過剰な電流が流れやすくなって突き抜けによって転写マージンの上限が決まる。
【0070】
同じく図7の(2)に示した細い実線丸7・丸8は高抵抗紙2面目の画像マージンを示すラインで、普通紙2面よりもさらに転写材抵抗が高いために、爆発防止に必要なで制御電圧が高くなり、その影響で放電による白スジが発生しやすくなるために転写最適マージンそのものも狭くなっていることがわかり、普通紙2面目の転写最適マージン領域丸5・丸6とのオーバーラップ領域(図中の斜線で囲まれた部分)がほとんど消滅していることがわかる。
【0071】
このように、極端に抵抗の異なる転写材抵抗に対しては、同一の転写制御式で画質を満足することが難しい。この場合、図7の(2)に示すラインB、ラインCのように、普通紙と高抵抗紙で別々の制御式を設定する必要がある。
【0072】
図8は、本実施例の画像形成装置を使い、普通紙(体積抵抗率:1×1011Ω・cm)、および高抵抗紙(体積抵抗率:1×1013Ω・cm)に対し、プロセススピード120mm/secで片面印字、および自動両面印字を行った場合の転写材先端での転写AD値の検知結果を示す。
【0073】
なお、環境は高湿環境(湿度85%RH)、常湿環境(湿度60%RH)、低湿環境(湿度15%RH)の各環境を使用し、AD値は転写材先端から40msec後に1回モニタし、結果は環境毎にプロットしてある。ここで示したAD値は、転写電流6Aの時にAD値が160となるように、0から255までの256段階に比例換算した値である。
【0074】
また、転写電圧は、6μAの一定電流値でPTVC検知を行った時の発生電圧とあらかじめCPU9内に納めた下記制御式2を元に算出した値を印加している。
【0075】
Vt1=0.7×Vt0+700・・・式2(単位はすべて[V])
図8に示したように、普通紙よりも高抵抗紙の方が転写AD値が小さいことがわかる。また、環境湿度に関しては、湿度が高く転写材がすぐに吸湿する高湿環境ほど転写AD値は大きく、同一転写材では、湿度が高いほどAD値が大きいという傾向が現れている。このように転写材が低抵抗化している場合、転写材上で適度の電荷の移動が起きるため、爆発が発生しにくく、逆に転写材を介して感光ドラムへ電流が流れやすい為に突き抜け等の画像問題が発生しやすい。このような状態の転写材に対しては、突き抜けを防止する方向に(転写電流弱めに)転写電圧制御を設定すると良い。
【0076】
逆に、低湿環境や高抵抗紙ではAD値が低くなることがわかる。このAD値の低下は特に転写材抵抗が高い高抵抗紙で顕著で、このよぅな状態の転写材では、転写ニップ内での電荷の移動がおきにくく、爆発が発生しやすくなる。逆にこのような状態の転写材では転写材を介して感光ドラムに流れる電流が少ないため突き抜けは発生しにくく、AD値が大きな状態とは逆に、爆発を防止するために電流を多めに流す転写電圧制御を設定すると良い。
【0077】
本発明では、前記転写制御を切り分けるためのしきい値を転写材が給紙された給紙口を参照して決定している。
【0078】
これは、低湿度環境で転写材先端でのAD値検知結果を元に転写材種を切り分ける場合、もともと転写材が吸湿していないために、1面目印字と2面目印字の転写材のインピーダンス変化が少なく、印字面の切り分けや転写材抵抗値の切り分けが困難であるためである。また、同じ2面目印字でも自動両面印字と手差し両面印字では、1面目印字後に2面目印字に入るまでの時間に差があり、常湿環境などではその間に転写材が吸湿する影響で最適電圧が異なるが、このときに転写AD値の差は小さく、切り分けするのが難しいためである。
【0079】
表1に、本例で示した画像形成装置を用い、常湿環境で普通紙、高抵抗紙を1面および両面印字した場合の転写AD値と、転写マージン電流を示す。
【0080】
【表1】
【0081】
表1に示すように、普通紙も高抵抗紙も1面目印字時よりも、一度定着装置13を通過し転写材の水分が蒸発している2面目印字の方が、転写AD値は全般的に低くなっており、転写材が高抵抗になる2面目の方が転写電流が少なく爆発が発生しやすい。このため、2面目は1面目よりも高い電圧を与える必要がある。また、高抵抗紙は、1面2面とも更に高い電圧を必要とすることがわかる。
【0082】
さらに、表1に示したように、自動両面2面目と手差し2面印字では、1面印字後に2面目が印字にはいる時間が自動両面印字の方が早く、1面目印字後の転写材が機内を通過して外気にさらされずに2面目印字に供される関係で、自動両面2面印字の方が手差し2面印字時よりも爆発防止のために必要な転写電流が多いことがわかる。それに対し、両者の転写材先端での転写AD値の差は小さく、両者を見分けるのは難しい。また、低湿環境では転写材抵抗による転写AD値差が小さく、印字面の見分けが難しいことがわかる。
【0083】
また、本発明では画像の有無による転写電流の変化をなくすために、転写材余白で転写AD値の検知を行っている。しかし、この検知タイミングでは転写電流が完全に飴和しない状態で転写AD値の検知を行うことになるため、ソフト上の転写材先端と実際の転写材先端の搬送速度のばらつきよるずれ、CPU内のタイマーカウントの誤差による検知時間のタイミングのずれなどによって前記転写AD値はある程度ばらつきを持って検知されてしまう。
【0084】
そのために誤検知される可能性もある。
【0085】
したがって、いずれの条件下でも最適な転写制御式決定を行うために、本発明では給紙口情報により印字面を推定し、その印字面に応じて転写制御式切り分けのしきい値を決定することでより転写材抵抗の切り分け精度をあげている。
【0086】
本実施例では次に示す式3、式4、式5のように、3つの制御式を用意した。式3、式4、式5から算出される転写電圧の関係は、Vt1l <Vt1m <Vt1h である。
【0087】
Vt1l =0.7×Vt0+800・・・式3
(普通紙1面目&高抵抗紙1面目用制御式、単位はすべて[V])
Vt1m =0.8×Vt0+900・・・式4
(普通紙2面目用制御式、単位はすべて[V])
Vt1h =0.8×Vt0+1100・・・式5
(高抵抗紙2面目用制御式、単位はすべて[V])
本実施例では、給紙口としてカセット給紙、手差し給紙、自動両面給紙という3つの給紙口を想定し、それぞれ、AD値のしきいを表2に示すように設定した。自動両面給紙口からの給紙の場合、印字面は2面目のみと特定し、主に転写材種を切り分けるためのしきい値設定となっており、カセット給紙は逆に1面印字のみと判断して、こちらも転写材種を切り分ける設定となっている。手差し給紙口からの給紙は、片面印字、手差し両面印字両方あると想定し、しきい値の設定を行っている。
【0088】
表2に、各給紙口の転写ADしきい値と、対応する転写制御式を示す。なお、本実施例で用いた画像形成装置は、AD=120が転写電流4.5μAに相当する。
【0089】
【表2】
【0090】
なお、ここで決定した転写電圧Vtは転写AD値検知後すぐに転写ローラに印加するが、高圧は約10msecで目標値まで立ち上がり、この転写バイアスの切り替えに起因する画像不良は発生しなかった。
【0091】
本実施例を適用した画像形成装置で、各環境で普通紙、高抵抗紙に印字を行ったが、いずれの場合も爆発も突き抜けもない良好な画像が得られた。
【0092】
なお、本例では転写制御式を3つ用意し、転写AD値のしきい値を給紙口に応じてそれぞれ一つ、もしくは二つずつもうけて制御式の選択を行ったが、あらかじめ設定する制御式は2本以上であればいくつ設定しても良い。その場合、制御式の設定数に応じた転写AD値のしきい値を設定しておく。
【0093】
以上説明したように、PTVC制御方式を用い、転写材先端で転写材抵抗検知を行った結果によって印字中の転写電圧を決定する系において、制御式の切り分けを行うしきい値を給紙口情報を参照して決定することで、転写材抵抗値と印字面の切り分け精度が上がり、それぞれの転写材、印字面に対し、良好な画像を得ることが可能となる。
【0094】
〈実施例2〉(図9・図10)
本実施例では、転写材先端が転写ニップ部Nに突入した際の転写電流をモニタして転写電圧を決定する画像形成装置において、転写中に印加する転写電圧を選択するためのしきいとなる転写AD値を、給紙口情報と転写ローラ抵抗検知結果を参照して変更する例を示す。
【0095】
転写AD値は、転写材Pの抵抗値状態によって変化することは前述の実施例で説明したとおりだが、この転写AD値は、図9に示すように転写部材である転写ローラ5の抵抗値に応じても変化する。
【0096】
図9は横軸がPTVCによる抵抗検知結果で、右に行けば行くほど転写ローラ抵抗値が高い状態を示し、それに対する普通紙2面と高抵抗紙2面の転写AD値をプロットしている。
【0097】
転写材Pの抵抗値の違いによって生じる転写電流の差は、非転写時の転写の系のインピーダンスに対する、転写材Pが入った場合の転写の系全体のインピーダンスの上昇率が高い場合に大きくなる。非転写時の転写の系全体のインピーダンスが低い場合、転写材Pの抵抗値差による転写電流の差は大きく、高抵抗紙使用時の転写AD値の降下量も大きくなる。逆に転写の系全体のインピーダンスが高い場合、転写材Pの抵抗値差による電流差も少なくなり、結果として高抵抗紙使用時の転写AD値の降下量は普通紙に対し小さくなる。
【0098】
このように、転写AD値の変化量は、転写ローラ5の抵抗値に応じても変化する。特に使用する転写ローラ5の抵抗値が環境変動などによって変動が激しい画像形成装置では、転写ローラ5の抵抗値変化を無視して転写AD値のしきい値を設定するのは難しくなってくる。
【0099】
このような転写構成の画像形成装置の場合、この差を考慮するために、転写電圧を決定するためのしきい値を、前記実施例1であげたように給紙口情報を参照するのに加え、PTVCの検知結果に応じて変更するとよい。
【0100】
これによって、転写ローラ5の抵抗値によらず、転写材抵抗値の切り分けができ、良好な画像を得ることができる。
【0101】
本実施例では、図10に示すように、転写ADのしきい値を転写ローラ抵抗検知結果と転写AD値の関数として設定する。
【0102】
前述の実施例1と同一構成の画像形成装置を用いてPTVCによる転写ローラ抵抗検知の結果Vt0と、普通紙、高抵抗紙の1面、2面目印字時の転写材先端での転写AD値の関係を高温環境(温度32.5℃)、常温環境(温度23℃)、低温環境(温度15℃)でそれぞれもとめ、表3に示す転写ADしきい式で転写制御を決定することにした。
【0103】
なお、ここで用いた画像形成装置は転写電圧の出力最大値が5kVのトランスを使用してぉり、Vt0は0.5kV〜4kVの範囲で検知される構成であり、表3に示した式の中ではVt0をトランスの最大電圧5kVを256分割したPWM値(PWM0と表記する)として表している。
【0104】
【表3】
【0105】
本実施例を適用した画像形成装置で、高温環境(温度32・5℃)、常温環境(温度23℃)、低温環境(温度15℃)で普通紙、高抵抗紙の片面、自動両面印字を行ったが、いずれの環境、印字面でも良好な画像が得られた。
【0106】
このように、転写材先端での転写電流検知によって転写制御を決定する系において、転写AD値による転写制御を決定するしきい値を転写ローラ抵抗検知結果を参照して決定することで、より転写材抵抗値の切り分け精度があがり、転写ローラ抵抗や環境によらず良好な画像が得られるようになる。
【0107】
〈実施例3〉(図11)
本実施例では、転写材先端が転写ニップ部Nに突入した際の転写電流をモニタして転写電圧を決定する画像形成装置において、転写中に印加する転写電圧を選択するためのしきいとなる転写AD値を、給紙口情報と、装置に通紙される転写材のサイズ情報を参照して変更する例を示す。
【0108】
本実施例では、転写ADしきい値を手差し給紙・カセット給紙・自動両面給紙の3つの給紙口と、A4/レター/リーガルサイズの大サイズ系と、B5/エグゼクティブなどの小サイズ系の2つの紙サイズ系統の組み合わせに対してそれぞれ設定した。
【0109】
図11に、同一抵抗値の転写材で、サイズ違いの転写材を印字した場合の転写AD値の差を示す。図11に示すように、幅210mmのA4サイズ紙と幅約216mmのレターサイズ紙では、転写材先端で流れる転写AD値がほとんど同一であるのに対し、幅182mmのB5サイズ紙や幅約184mmのエグゼクティブサイズ紙はいずれもA4サイズ紙、レターサイズ紙よりも転写AD値が大きくなっている。これはA4サイズ、レターサイズの転写材通紙中は、転写ローラ5の中抵抗弾性層部5bの長手ほぼ全域が転写材通紙域となるのに対し、B5サイズやエグゼクティブサイズの場合、通紙域の一部にしか転写材がないために転写ローラ弾性層部5bが感光ドラム1に直接当接している領域があり、その部分では転写ローラ5から感光ドラム1に対し転写電流が直接流れるためである。したがって、同一の転写材抵抗値の場合は、転写材幅が狭いほど転写AD値が大きくなる。
【0110】
したがって、狭幅の転写材Pを使用する場合は、最適な転写電圧を決定するためには紙サイズを考慮して転写ADのしきいを設定する必要がある。
【0111】
本実施例では転写材サイズの指定があった場合には、その転写材サイズ情報を参照して下の表3に示すようなしきい値設定で転写電圧を決定することにした。
【0112】
表4に示すように、本実施例では、転写材サイズによって転写ADしきい値を一律で20ずつシフトしている。
【0113】
なお、不定形サイズなどに対応するために、転写材幅を検知するセンサを転写材搬送経路中に設け、この転写材幅検知センサの検知結果に応じて転写ADしきい値を変更してもよい。
【0114】
また、前記実施例にあげた転写ローラ抵抗値検知結果と転写材サイズ情報の双方を参照して転写ADしきい値を設定してもよい。
【0115】
【表4】
【0116】
本例のように、転写材サイズ情報を参照することで、より転写材抵抗値の切り分け精度が上がり、いずれに転写材サイズでも良好な画像を得ることができる。
【0117】
〈その他〉
1)像担持体に対するトナー像の形成は、像担持体として電子写真感光体を用いた電子写真プロセスに限られるものではなく、その他、像担持体として静電記録誘電体を用いた静電記録プロセス、像担持体として磁気記録磁性体を用いた磁気記録プロセスなど、像担持体にトナー像を形成担持させる作像手法であればよい。
【0118】
2)接触転写部材はローラ体の形態に限られず、回転ベルト体の形態などであってもよい。
【0119】
3)本発明において、転写材には中間転写ベルトや中間転写ドラムのような中間転写材も含まれる。
【0120】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、PTVC制御により転写電圧を決定する転写制御方式に加えて、転写材先端からPTVC検知結果に応じた転写電圧を転写材に与えて転写材先端が転写ニップ部に挿入されてから一定時間後の転写電流値をモニタし、前記転写材先端での転写電流モニタ結果と給紙口情報から、あらかじめ抵抗値の異なる転写材に対して最適化された複数の転写電圧値から最適な印加電圧を決定して印字中に定電圧印加することで、いずれの抵抗値の転写材でも良好な画像を得ることが可能になる。
【0121】
さらに、転写ローラ抵抗検知結果、紙サイズ情報等を参照することで、より最適な転写電圧設定を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1における画像形成装置例の概略構成模型図
【図2】 転写ローラの構成説明図
【図3】 転写ローラ抵抗測定法の説明図
【図4】 PVTC制御の説明図
【図5】 実施例1の転写制御アルゴリズムのフローチャート
【図6】 転写材先端での転写電流の変化を解説する図
【図7】 各転写材種、印字面の画像マージンの関係を示す図
【図8】 環境、転写材種による転写AD値の関係を示す概略図
【図9】 実施例2における転写ローラ抵抗値と転写AD値の関係を示す図
【図10】 転写AD値設定を示す図
【図11】 実施例3における転写材サイズと転写AD値の関係を示す図
【符号の説明】
1‥‥感光ドラム、5‥‥転写ローラ、11a‥‥レジストセンサ、21a‥‥給紙センサ、21a‥‥給紙センサ、32‥‥DCコントローラ、34‥‥転写用高圧電源
Claims (4)
- トナーを担持する像担持体と、前記像担持体と形成する転写領域ニップ部に挿入された転写材に前記像担持体上のトナーを転写させる転写部材と、前記転写部材に電圧を印加する電圧印加手段と、前記電圧印加手段から出力される電流値を検知する電流検知回路と、を有する画像形成装置において、
前記ニップ部に転写材が挿入されている状態の前記電流検知回路の電流検知結果と転写材の幅の情報に基づいて、前記電圧印加手段の出力電圧を決定することを特徴とする画像形成装置。 - 前記ニップ部に転写材がない状態で前記転写部材の抵抗を検知する抵抗検知手段と、を有する画像形成装置において、
前記印加電圧決定のためのしきい値を、前記転写部材の抵抗検知結果と、転写材の幅の情報の少なくとも一方の情報に基づいて変更することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。 - 前記ニップ部に転写材が挿入されている状態の前記電流検知回路の電流検知結果は前記ニップ部に転写材が挿入されてから一定時間後の前記電流検知回路の電流検知結果であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
- 前記転写材の幅は給紙口情報に基づいて認識することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
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