JP2019001282A - 車両の吸気構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】エンジンルーム内の高温の空気が吸気ダクトに取り込まれることを抑制する。【解決手段】吸気構造は、車体開口(6)の後方の空間12の上部を覆うカバー部材10と、カバー部材10の上に載置され、空気取入口21Aを形成する上流端を有する吸気ダクトモジュール23とを備える。カバー部材10の空気取入口21Aの開口方向には通気口50が形成されており、平面視における空気取入口21Aに沿う車幅方向について空気取入口21Aの中心Cを基準として、通気口50のエンジンルーム3の高温領域側(エンジン13側である右側)の開口面積が高温領域側と相反する側(左側)の開口面積よりも大きい。これにより、空気取入口21Aのエンジン13側には、エンジン13の高速運転時にも通気口50から十分な外気が供給され、エンジンルーム内の高温の空気が吸気ダクトモジュール23に取り込まれることが抑制される。【選択図】図1

Description

本開示は、内燃機関へ外気を供給する車両の吸気構造に関する。
吸気導入ダクトを介してエンジン側へ外気を取り入れるための車両の吸気構造として、外気導入ダクトの外気取入口が、ラジエータの上方に形成された外気流通領域の下流側(ラジエータの上方部分)にて、ラジエータを支持するラジコアアッパの下段部材の上に配置され、外気流通領域のラジエータよりも上流部分(前方部分)に、外気の流れをラジエータ方向に案内するエアガイドが設けられたものが公知である(特許文献1参照)。この吸気構造では、上方に向かって後方に傾斜する傾斜面がエアガイドの上部に設けられ、外気の通過を許容するスリットが傾斜面に形成されている。フロントバンパの上に形成されたラジエータグリルから外気流通領域に導入されてエアガイドに衝突した外気の一部が、スリットを通過して後方に流れることから、外気取入口がラジエータの上方部分に配置されていても外気導入ダクトが外気を取り込むことができる。
特開2005−343244号公報
特許文献1記載の吸気構造では、吸気量が大きくなる内燃機関の高速運転時に、エアガイド後方のエンジンルーム内の暖かい空気が外気取入口から吸気ダクトに取り込まれる。エンジンルーム内の空気の温度は、排気系や内燃機関等の熱源に近い部分で遠い部分よりも高い。ところが、特許文献1記載の吸気構造では、スリットが外気取入口の前方に概ね均等に形成されている。そのため、内燃機関の高速運転時にエンジンルーム内の比較的高温の空気が吸気ダクトに取り込まれやすい。
本発明は、このような背景に鑑み、エンジンルーム内の高温の空気が吸気ダクトに取り込まれることを抑制できる車両の吸気構造を提供することを課題とする。
このような課題を解決するために、本発明のある実施形態は、車両(1)の内燃機関(13)へ外気を供給する吸気構造であって、外気をエンジンルーム(3)に導入するために車体(2)の前部に形成された車体開口(6)と、前記エンジンルームの前部に配置されたラジエータ(11)の前面及び前記車体開口間の空間(12)の上部を覆うカバー部材(10)と、前記内燃機関に対して左右方向に偏倚した位置にて前記カバー部材の上に載置され、空気取入口(21A)を形成する上流端を有する吸気ダクト部材(23)とを備え、前記カバー部材における前記吸気ダクト部材の前記空気取入口の上流側(前側)には、当該カバー部材を貫通する通気口(50)が形成されており、平面視における前記空気取入口に沿う方向について前記空気取入口の中心(C)を基準として、前記通気口の前記エンジンルームの高温領域側の開口面積が前記通気口の前記高温領域側と相反する側の開口面積よりも大きいことを特徴とする。
この構成によれば、ラジエータの前面及び車体開口間の空間がカバー部材によって覆われることで、エンジンルームの美観が向上する上、エンジンルームの上部にてラジエータの前側の空間と後側の空間とが仕切られ、ラジエータの前側の低温の外気が通気口を介して吸気ダクト部材に供給される。また、カバー部材の上側の空気も吸気ダクト部材に供給され得るため、内燃機関の高速運転時に吸気が不足することがない、そして、通気口の高温領域側の開口面積が高温領域側と相反する側の面積よりも大きいことから、空気取入口の高温領域側には、内燃機関の高速運転時においても通気口から十分な外気が供給され、カバー部材上側の空気は、主に空気取入口の高温領域側と相反する側から吸気ダクト部材に取り込まれる。即ち、エンジンルーム内の高温の空気が吸気ダクト部材に取り込まれることが抑制される。
また、上記構成において、平面視において前記空気取入口(21A)の両端を結ぶ方向を吸気直交方向(車幅方向)とし、当該吸気直交方向のうち、前記吸気ダクト部材(23)に対して前記内燃機関(13)が偏倚する方向(右方)を第1方向とし、前記内燃機関に対して前記吸気ダクト部材が偏倚する方向(左方)を第2方向としたとき、平面視における前記吸気直交方向について前記空気取入口の中心(C)を基準として、前記通気口(50)の前記第1方向の側の開口面積が、前記第2方向の側の開口面積よりも大きいとよい。
この構成によれば、通気口の内燃機関側の開口面積が内燃機関側と相反する側の面積よりも大きいことから、エンジンルーム内のカバー部材上側の空気は主に空気取入口の内燃機関と相反する側から吸気ダクト部材に取り込まれる。即ち、エンジンルーム内の内燃機関によって暖められた高温の空気が吸気ダクト部材に取り込まれることが抑制される。また、平面視において空気取入口を形成する吸気ダクト部材の上流端が直線状でない場合にも、開口面積の設定基準が明確であり、エンジンルーム内の空気が吸気ダクト部材に取り込まれることが確実に抑制される。
また、上記構成において、前記通気口(50)が複数のスリット(51)からなるとよい。
この構成によれば、カバー部材による異物の分離促進と、通気口の開口面積確保との両立が可能である。
また、上記構成において、複数の前記スリットが、前記吸気直交方向(車幅方向)に略等間隔に配置され、前記第1方向(右方)の側ほど開口面積が大きくなるように形成されているとよい。
この構成によれば、カバー部材における互いに隣接するスリット間部分に所定値以上の幅を確保して当該部分の剛性を確保しつつ、通気口を、高温領域側である第1方向ほど開口面積が大きくなるように形成できる。
また、上記構成において、前記通気口(50)が前記ラジエータよりも前方に形成されているとよい。
この構成によれば、車体開口からエンジンルームに導入された低温の外気が、直接通気口を通ってカバー部材の上面側に取り込まれて吸気ダクト部材に吸引される。そのため、ラジエータによって温められた空気が吸気ダクト部材に取り込まれることが抑制される。
また、上記構成において、前記内燃機関(13)は、吸気ポートを後方に向け、排気ポートを前方に向けて横置きに前記エンジンルーム(3)に設けられているとよい。
この構成によれば、内燃機関の高温になる排気系が設けられる側のエンジンルーム内の空気が吸気ダクト部材に取り込まれることが抑制されるため、通気口の開口面積の設定による熱気取り込み抑制効果が大きい。
また、上記構成において、前記内燃機関(13)の前側にターボチャージャ(14)が設けられているとよい。
この構成によれば、高温になるターボチャージャ周辺のエンジンルーム内の空気が吸気ダクト部材に取り込まれることが抑制されるため、通気口の開口面積の設定による熱気取り込み抑制効果が大きい。
また、上記構成において、前記カバー部材(10)の前記通気口(50)が形成された部分には、後方に開放された凹部(10A)が形成されており、前記吸気ダクト部材(23)の上流端が当該凹部に配置されているとよい。
この構成によれば、吸気ダクト部材がカバー部材から上方へ突出することが抑制され、カバー部材の配置によるエンジンルーム内の機器配置スペースの縮小が抑制される。また、吸気ダクト部材による凹凸が小さくなるため、エンジンルームの美観も向上する。
また、上記構成において、前記吸気ダクト部材(23)は、前記カバー部材(10)のうち、平面視における前記空気取入口(21A)に沿う方向(車幅方向)において前記通気口(50)の両端部の外側の部分に固定される複数の固定部(46)を有しているとよい。
この構成によれば、吸気ダクト部材が強固にカバー部材に取り付けられる。そのため、吸気量が多いときでも吸気ダクト部材がばたつくことがなく、安定した吸気量が確保される。
このように本発明によれば、エンジンルーム内の高温の空気が取り込まれにくい車両の吸気構造を提供することができる。
実施形態に係る自動車の車体前部の平面図 図1中のII−II断面図 図1に示される吸気ダクトモジュールの取付構造を示す斜視図 図2中のIV矢視図
以下、図面を参照して、本発明を自動車1に適用した実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、自動車1の進行方向を基準として前後、左右の方向を用いる。上下方向は鉛直方向を基準とし、自動車1は水平面上にあるものとする。
図1は、実施形態に係る自動車1の車体前部の平面図であり、図2は、図1中のII−II断面図である。図1及び図2に示されるように、自動車1の車体2の前部にはエンジンルーム3が設けられている。エンジンルーム3は、開閉可能に設けられたエンジンフード4(図2参照)によって上方から覆われる。図1では、エンジンフード4が開かれた状態の車体2が示されており、エンジンルーム3内に配置される機器は適宜省略されている。
車体2の前部では、フロントバンパ5が左右に延在しており、フロントバンパ5の上方に上部車体開口6(図2)が形成され、フロントバンパ5の下方に図示外の下部車体開口が形成されている。上部車体開口6は、車体2における左右方向の中央に形成されており、その車幅方向の外側には左右のフロントライトが設けられる。上部車体開口6は、左右方向に延びる上下2本の開口6A、6Bからなり、上側の開口6Aにはメッシュ状のフロントアッパグリル9(図2)が取り付けられている。
エンジンフード4によって塞がれるエンジンルーム3の上部開口3Aの前部には、前後方向に所定の幅をもって上部開口3Aの前縁に沿って概ね左右方向に延在するカバー部材10が設けられている。カバー部材10は、エンジンルーム3の前部に配置されたラジエータ11の前面及び上部車体開口6の前縁間の空間12(エンジンルーム3の前部空間、図2参照)の上部を覆っている。
エンジンルーム3の後部右寄りの位置には、内燃機関からなるエンジン13が、吸気ポートを後方に向け、排気ポートを前方に向けた後方吸気・前方排気の姿勢で横置きに搭載されている。エンジン13の前側には、タービン及びコンプレッサを備えたターボチャージャ14が設けられており、ターボチャージャ14の下方には、上下に延在する触媒コンバータ15(図2参照)が設けられている。これらのターボチャージャ14、触媒コンバータ15、排気管、消音器等は、エンジン13の排気を外部に排出する排気装置16(排気系)をなす部材である。エンジン13の前面から排出された排気(既燃焼ガス)は、ターボチャージャ14及び触媒コンバータ15を流れ、エンジン13の下方を通って車体2の後部から大気に排出される。
また、エンジンルーム3内には、エンジン13へ外気を供給する吸気装置20(吸気系)が設けられている。吸気装置20は、空気取入口21Aを有するダクト部21にサイドブランチ22(22A、22B)が一体に形成された吸気ダクト部材である吸気ダクトモジュール23を上流端に備えている。吸気ダクトモジュール23は、カバー部材10の左側部分の上に載置され、カバー部材10に取り付けられている。
図1に示されるように、吸気ダクトモジュール23の後部下面には、概ね上下方向に延在する略長円断面形状の接続管24が接続されている。接続管24は、吸気ダクトモジュール23の下流側に設けられた可撓性を有する吸気ダクト部材であり、下流端である下端をエアクリーナ25に接続されている。エアクリーナ25は、箱形状をしており、エンジン13の左方にてエンジン13の前面よりも前方に配置されており、接続管24の下流端はエアクリーナ25の下部に接続されている。エアクリーナ25の上部の右側面には、エンジン13の前方にて左右方向に延在する上流側ダクト26が接続されている。上流側ダクト26の下流端である右端は、ターボチャージャ14のコンプレッサに接続されている。吸気ダクトモジュール23によって取り込まれ、上流側ダクト26からターボチャージャ14に供給された吸気(新気)は、コンプレッサによって加圧され、図示しない下流側ダクトを通ってエンジン13の後側に設けられた吸気マニホールドからエンジン13に供給される。
図2に示されるように、カバー部材10の後部の下方には、車体2の前方視で矩形の枠状をなすフロントバルクヘッドの上部クロスメンバ30が配置されている。上部クロスメンバ30は、鋼板をプレス加工によってL字状や溝状に形成した部材、或いは複数のそのような部材を接合してなる部材であり、左右方向に延在している。本実施形態では、上部クロスメンバ30は、2枚の鋼板(図示省略)を重ね合わせて形成され、上壁部及び後壁部を備えたL字状断面形状とされている。
ラジエータ11は、フロントバルクヘッドの内側に配置されるラジエータコア11Aと、ラジエータコア11Aの背面に取り付けられたラジエータファンと、ラジエータコア11Aを後方から覆うと共にラジエータファンに対応する排風口を形成するシュラウド11Bとを備えている。シュラウド11Bは、フロントバルクヘッド(上部クロスメンバ30)から若干後方に突出している。ラジエータ11は、車幅方向においてエンジンルーム3内の略中央に配置され、上部クロスメンバ30及び図示外の下部クロスメンバに支持される。即ち、上部クロスメンバ30はラジエータ11を支持するラジエータサポートアッパ部材である。
フロントバンパ5の後方には、左右方向に延在するバンパビーム31が配置されている。バンパビーム31は、エクステンション(図示省略)を介して両端を車体フレーム(図示省略)に結合されている。上部車体開口6の後方且つラジエータ11の前方には、グリルシャッター32が配置されている。グリルシャッター32は、矩形の枠部材33によって支持されており、吸気ダクトモジュール23に対応する部分は切り欠かれている。枠部材33の上部は上部クロスメンバ30に固定されている。枠部材33の上部には上部整流板34Aが取り付けられ、枠部材33の下部には下部整流板34Bが取り付けられている。上部整流板34Aは、枠部材33の上部から前方へ延出しており、下部整流板34Bは、枠部材33の下部から前方へ延出してバンパビーム31の上面に支持されている。上部整流板34A及び下部整流板34Bは、グリルシャッター32が開いているときに上部車体開口6から流入する外気をグリルシャッター32に導くための外気通路を両者の間に形成している。
カバー部材10の後部は、上部クロスメンバ30の上面に載置され、吸気ダクトモジュール23を固定するためのクリップ35(図1及び図3参照)によって上部クロスメンバ30に固定されている。カバー部材10の前部は、車体2(エンジンフード4の前方部分)の下面に固定された支持部材36によって支持されている。支持部材36は、概ね平坦な上面板部の下面に前後及び左右に延在する複数のウェブが格子状に一体形成されることで剛性を向上させた板状部材である。
図3は、図1に示される吸気ダクトモジュール23の取付構造を示す斜視図である。図1及び図3に示されるように、吸気ダクトモジュール23のダクト部21は、概ね前後方向に延在し、後方に向けて左方に傾斜する吸気通路を形成する。ダクト部21は、上下方向に薄い扁平断面形状を有し、前方に向けて拡開するファンネル(漏斗形状部)を前端に有している。平面視において、ダクト部21は前方に向けて拡開する台形状を呈しており、概ね前後方向に延在する左縁と、前方に向けて右方に傾斜する右縁とを有している。一方、空気取入口21Aを形成するダクト部21の前縁は左右方向に延在しており、空気取入口21Aは前方に向けて開放されている。
空気取入口21Aの開放方向は、空気取入口21Aの上流側における吸気の流れ方向であり、平面視における空気取入口21Aに沿う方向、具体的には平面視において空気取入口21Aの両端を結ぶ方向は、吸気の流れに直交する方向である。そこで、平面視における空気取入口21Aの両端を結ぶ方向を吸気直交方向という。本実施形態では、平面視における吸気直交方向は車幅方向である。また、吸気直交方向(車幅方向)のうち、吸気ダクトモジュール23に対してエンジン13が偏倚する方向(第1方向)が右方であり、エンジン13に対して吸気ダクトモジュール23が偏倚する方向(第2方向)が左方である。
サイドブランチ22は、吸気通路に連通するブランチ通路を形成する干渉型の消音器であり、ダクト部21の後部における左右の両側部に設けられた第1サイドブランチ部22A及び第2サイドブランチ部22Bを備えている。平面視において、第1サイドブランチ部22Aはダクト部21の後部にて左方に延出し、第2サイドブランチ部22Bはダクト部21の後部にて右方に延出しており、吸気ダクトモジュール23は後部が左右に拡幅するT字状を呈している。左側の第1サイドブランチ部22Aは、ダクト部21から左方に延出した後、下方に延出している。一方、右側の第2サイドブランチ部22Bは、ダクト部21から右方に延出するだけで、下方には延出していない。
吸気ダクトモジュール23は、互いに上下に分割された第1分割体41及び第2分割体42を組み立てて形成される。下側の第2分割体42は、比較的硬質の硬質樹脂材(例えば、PP(ポリプロピレン))により形成されている。下側の第2分割体42は、上方に向けて開放された凹状断面形状を有し、ダクト部21及びサイドブランチ22の下半をなす下側ハーフ43と、下側ハーフ43の左右の側縁部に一体形成されたフランジ44とを有している。下側ハーフ43の後部には、接続管24が接続するために下方に突出する接続管部45(図4参照)が一体形成されている。一方、上側の第1分割体41は、衝突時の歩行者保護の観点から、比較的軟質の軟質材(例えば、熱可塑性エラストマ)により形成されている。第1分割体41は、下方に向けて開放された凹状断面形状を有し、下側ハーフ43に対向配置されてダクト部21及びサイドブランチ22の上半部をなす上側ハーフである。
下側ハーフ43の両側部及び後部の上面には、上向きに突出する複数の係合爪43Aが一体形成されている。第1分割体41の両側部及び後部における係合爪43Aに対応する位置には、係合孔部41Aが形成されている。係合爪43Aが対応する係合孔部41Aに係合することにより、第1分割体41が第2分割体42に組み付けられ、ダクト部21及びサイドブランチ22が形成される。
フランジ44は、ダクト部21の左側縁から左方に延出する左側部44Aと、ダクト部21の右側縁から右方に延出する右側部44Bと、ダクト部21の前端よりも前方にて概ね左右方向に延在し、左側部44Aの前端と右側部44Bの前端とを連結する前方連結部44Cとを備えている。フランジ44の左側部44A及び右側部44Bの各前端及び各後端には、カバー部材10に固定される固定部46が形成されている。前側の2つの固定部46は、ダクト部21の前端よりも前方に配置され、後側の2つの固定部46は、ダクト部21の前端よりも後方に配置されている。これにより、吸気ダクトモジュール23が強固にカバー部材10に固定される。
カバー部材10の上面における左側部分には、後方に開放された凹部10Aが形成され、凹部10Aに吸気ダクトモジュール23が取り付けられている。凹部10Aの前縁は、平面視において、エンジンルーム3の上部開口3A(図2)に沿っており、車体2中心線側である右側が前方になる向きに傾斜している。凹部10Aの底部及び前壁部には、上下方向及び前後方向に延びる複数のスリット51が車幅方向に並んで形成されている。これらのスリット51は、凹部10A(カバー部材10の上側空間)とエンジンルーム3の前部(空間12)とを連通する通気口50をなす。吸気ダクトモジュール23は、ダクト部21の前部下半部が凹部10Aに受容され、且つダクト部21の上面がカバー部材10の上面から上方へ若干突出するように配置される。この状態において、吸気ダクトモジュール23のフランジ44は、カバー部材10における凹部10Aの周辺部分に重なっており、フランジ44の4つの固定部46がクリップ35によってカバー部材10或いは上部クロスメンバ30に固定されることにより、吸気ダクトモジュール23はダクト部21を後方から凹部10Aに突入させた態様でカバー部材10に固定される。
図2に示されるように、吸気ダクトモジュール23が凹部10Aに取り付けられた状態において、空気取入口21Aは凹部10Aの前壁部から後方へ所定距離だけ離間した位置に配置されている。この取り付け状態において、吸気ダクトモジュール23は上部クロスメンバ30の上を前後に延在して上部クロスメンバ30から前方に延出しており、上部クロスメンバ30やラジエータ11よりも前方にて空気取入口21Aを開放させている。
図4は、図2中のIV矢視図である。図1及び図4に示されるように、凹部10Aの前縁は、平面視(図1)において、エンジンルーム3の上部開口3A(図2)に沿っており、車体2中心線側である右側が前方になる向きに傾斜している。従って、ダクト部21の前縁の前方に存在する凹部10Aの底部は右側ほど前方まで延在している。カバー部材10は、正面視(図4)において、エンジンルーム3の上部開口3A(図2)に沿っており(即ち、エンジンフード4に沿っており)、車体2中心線側である右側が高くなる向きに傾斜している。一方、凹部10Aの底部は、左側が高くなる向きに傾斜している。従って、凹部10Aの深さ(前壁の高さ)は、右側ほど高くなっている。
複数のスリット51は、概ね同一の幅を有しており、左右方向に略等間隔(本実施形態では一定間隔)に形成されている。各スリット51は、凹部10Aの前壁の上端近傍から下方へ延び、底部の前部を延びて吸気ダクトモジュール23の前端位置まで形成されている。従って、スリット51の長さは右側のものほど長く、その開口面積は右側のものほど大きくなっている。即ち、通気口50は、複数のスリット51によって右側ほど開口面積が大きくなるように形成されている。
自動車1の吸気構造は以上のように構成されている。次に、このように構成された吸気構造の作用効果について説明する。
図1に示されるように、エンジンルーム3の前部に配置されたラジエータ11の前面及び上部車体開口6間の空間12がカバー部材10によって覆われているため、エンジンルーム3の美観が向上している上、エンジンルーム3の上部にてラジエータ11の前側の空間12と後側空間とが仕切られる。
カバー部材10における吸気ダクトモジュール23の空気取入口21Aの上流側である前側には、カバー部材10を貫通する通気口50が形成されている。よって、図2に矢印で示されるように、上部車体開口6からエンジンルーム3(ラジエータ11の前側の空間12)に導入された低温の外気は、通気口50を通ってカバー部材10の上に配置された空気取入口21Aから吸気ダクトモジュール23に取り込まれる。
この際、空気取入口21Aがカバー部材10の上に配置されているため、外気に含まれる水滴等の異物が空気取入口21Aから吸気ダクトモジュール23へ侵入することが抑制される。また、通気口50を通過する外気だけでなくカバー部材10上側の空気(エンジンルーム3内のラジエータ11の後側に連通する部分の空気)も空気取入口21Aから吸気ダクトモジュール23に供給され得るため、エンジン13の高速運転時に吸気が不足することがない。
図1及び図4に示されるように、平面視(図1)において空気取入口21Aに沿う車幅方向について空気取入口21Aの中心Cを基準として、通気口50は、エンジン13や排気装置16等の高温になる機器が配置された高温領域側である右側の開口面積が、高温領域側と相反する左側の開口面積よりも大きくなるように形成されている。そのため、空気取入口21Aの高温領域側には、エンジン13の高速運転時においても通気口50から十分な外気が供給され、カバー部材10上側の空気は、主に空気取入口21Aの高温領域側と相反する左側から吸気ダクトモジュール23に取り込まれる。即ち、エンジンルーム3内の高温の空気が吸気ダクトモジュール23に取り込まれることが抑制される。
また、平面視(図1)における空気取入口21Aの両端を結ぶ車幅方向について空気取入口21Aの中心Cを基準として、通気口50のエンジン13偏倚側である右側の開口面積は、通気口50のエンジン13偏倚側と相反する左側の開口面積よりも大きくなっている。そのため、エンジンルーム3内のカバー部材10上側の空気は主に空気取入口21Aのエンジン13と相反する側から吸気ダクトモジュール23に取り込まれる。即ち、エンジンルーム3内のエンジン13によって暖められた高温の空気が吸気ダクトモジュール23に取り込まれることが抑制される。
なお、本実施形態では、平面視において空気取入口21Aが直線状に現れており、通気口50の開口面積の設定基準が明確である。一方、平面視において空気取入口21Aが直線状に現れない場合、上記のように空気取入口21Aの両端を結ぶ方向を吸気直交方向(本実施形態では車幅方向)とすることにより、通気口50の開口面積の設定基準が明確になる。具体的には、吸気直交方向のうち、吸気ダクトモジュール23に対してエンジン13が偏倚する方向(本実施形態では右方)を第1方向とし、エンジン13に対して吸気ダクトモジュール23が偏倚する方向(本実施形態では左方)を第2方向とし、平面視における吸気直交方向について空気取入口21Aの中心Cを基準として、通気口50の第1方向の側である右側の開口面積が、第2方向の側である左側の開口面積よりも大きく設定されるとよい。これにより、平面視において空気取入口21Aを形成する吸気ダクトモジュール23の上流端が直線状でない場合でも、エンジンルーム3内の高温の空気が吸気ダクトモジュール23に取り込まれることが確実に抑制される。
本実施形態では、通気口50が複数のスリット51からなるため、カバー部材10による異物の分離促進と、通気口50の開口面積確保との両立が可能である。また、複数のスリット51が、車幅方向に略等間隔に配置され、右方の側ほど開口面積が大きくなるように形成されているため、カバー部材10における互いに隣接するスリット51間部分に所定値以上の幅を確保して当該部分の剛性を確保しつつ、通気口50を、高温領域側である右方ほど開口面積が大きくなるように形成できる。
図2に示されるように、通気口50はラジエータ11よりも前方に形成されているため、上部車体開口6からエンジンルーム3に導入された低温の外気が、直接通気口50を通ってカバー部材10の上面側に取り込まれて吸気ダクトモジュール23に吸引される。そのため、ラジエータ11によって温められた空気が吸気ダクトモジュール23に取り込まれることが抑制される。
エンジン13は、吸気ポートを後方に向け、排気ポートを前方に向けて横置きにエンジンルーム3に設けられている。これにより、エンジン13の高温になる排気装置16が設けられる側のエンジンルーム3内の空気が吸気ダクトモジュール23に取り込まれることが抑制されるため、通気口50の開口面積の設定による大きな熱気取り込み抑制効果が得られる。
また、エンジン13の前側にターボチャージャ14が設けられている。これによっても、高温になるターボチャージャ14周辺のエンジンルーム3内の空気が吸気ダクトモジュール23に取り込まれることが抑制されるため、通気口50の開口面積の設定による大きな熱気取り込み抑制効果が得られる。
カバー部材10の通気口50が形成された部分には、後方に開放された凹部10Aが形成されており、吸気ダクトモジュール23の上流端が凹部10Aに配置されている。そのため、吸気ダクトモジュール23がカバー部材10から上方へ突出することが抑制され、エンジンルーム3の機器配置スペースがカバー部材10によって小さくなることが抑制される。また、吸気ダクトモジュール23による凹凸が小さくなるため、エンジンルーム3の美観も向上する。
図1及び図3に示されるように、吸気ダクトモジュール23は、カバー部材10のうち、車幅方向において通気口50の両端部の外側部分に固定される複数の固定部46を有している。吸気ダクトモジュール23が強固にカバー部材10に取り付けられる。そのため、吸気量が多いときでも吸気ダクトモジュール23がばたつくことがなく、安定した吸気量が確保される。
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、一例として自動車用として吸気構造の説明を行ったが、鉄道車両などにも広く適用することができる。また、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、素材など、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。一方、上記実施形態に示した各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。
1 自動車
2 車体
3 エンジンルーム
6 上部車体開口
10 カバー部材
10A 凹部
11 ラジエータ
12 空間
13 エンジン
14 ターボチャージャ
21 ダクト部
21A 空気取入口
22 サイドブランチ
23 吸気ダクトモジュール(吸気ダクト部材)
44 フランジ
46 固定部
50 通気口
51 スリット
C 中心

Claims (9)

  1. 車両の内燃機関へ外気を供給する吸気構造であって、
    外気をエンジンルームに導入するために車体の前部に形成された車体開口と、
    前記エンジンルームの前部に配置されたラジエータの前面及び前記車体開口間の空間の上部を覆うカバー部材と、
    前記カバー部材の上に載置され、空気取入口を形成する上流端を有する吸気ダクト部材とを備え、
    前記カバー部材における前記吸気ダクト部材の前記空気取入口の上流側には、当該カバー部材を貫通する通気口が形成されており、
    平面視における前記空気取入口に沿う方向について前記空気取入口の中心を基準として、前記通気口の前記エンジンルームの高温領域側の開口面積が前記通気口の前記高温領域側と相反する側の開口面積よりも大きいことを特徴とする車両の吸気構造。
  2. 前記吸気ダクト部材が前記内燃機関に対して左右方向に偏倚した位置に配置されており、
    平面視において前記空気取入口の両端を結ぶ方向を吸気直交方向とし、当該吸気直交方向のうち、前記吸気ダクト部材に対して前記内燃機関が偏倚する方向を第1方向とし、前記内燃機関に対して前記吸気ダクト部材が偏倚する方向を第2方向としたとき、平面視における前記吸気直交方向について前記空気取入口の中心を基準として、前記通気口の前記第1方向の側の開口面積が、前記第2方向の側の開口面積よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の車両の吸気構造。
  3. 前記通気口が複数のスリットからなることを特徴とする請求項2に記載の車両の吸気構造。
  4. 複数の前記スリットが、前記吸気直交方向に略等間隔に配置され、前記第1方向の側ほど開口面積が大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項3に記載の車両の吸気構造。
  5. 前記通気口が前記ラジエータよりも前方に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の車両の吸気構造。
  6. 前記内燃機関は、吸気ポートを後方に向け、排気ポートを前方に向けて横置きに前記エンジンルームに設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の車両の吸気構造。
  7. 前記内燃機関の前側にターボチャージャが設けられていることを特徴とする請求項6に記載の車両の吸気構造。
  8. 前記カバー部材の前記通気口が形成された部分には、後方に開放された凹部が形成されており、前記吸気ダクト部材の前記上流端が当該凹部に配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の車両の吸気構造。
  9. 前記吸気ダクト部材は、前記カバー部材のうち、平面視における前記空気取入口に沿う方向において前記通気口の両端部の外側の部分に固定される複数の固定部を有していることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の車両の吸気構造。
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