エンジンルームでは、熱交換器への冷却用空気の確保に加え、エンジンへの燃焼用空気の確保が必要となる。燃焼用空気は、熱膨張によって充填効率が低下するため、比較的低温であることが好ましい。そのため、熱交換器やエンジンの熱によって昇温された空気が吸気装置に導入されることを避けるべく、吸気装置の入口(吸気入口)を通気口付近に配置する必要がある。しかしながら、通気口付近のスペースは限られているため、吸気装置及び熱交換器のためのダクトを、互いに干渉しないように配置するには工夫が必要になる。また、エンジンルーム内のスペースも限られているため、吸気装置及び熱交換器のためのダクトをエンジンルーム内にコンパクトに収容することが必要となる。
本発明は、以上の背景を鑑み、ミッドシップ車のエンジンルーム構造において、吸気装置及び熱交換器のためのダクトを効率良く配置することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明のミッドシップ車(1)のエンジンルーム構造は、車室(2)の後方に設けられたエンジンルーム(3)と、前記エンジンルームの前部における左右両側に設けられた左右一対の通気口(23L、23R)と、前記エンジンルーム内にクランク軸線(A)が左右に延びるように配置されたエンジン本体(31)と、前記エンジンルームの左右方向における一側かつ前記エンジン本体よりも前方に配置された吸気入口(41)を有し、前記エンジン本体に吸気を供給する吸気装置(33)と、前記吸気装置に設けられた過給機(43)と、前記吸気装置における前記過給機よりも下流側、かつ前記エンジン本体の左右方向における他側の側方に設けられ、前記過給機を通過した吸気を冷却するインタークーラー(44)と、前記エンジンルームの左右方向における他側かつ前記エンジン本体よりも前方に配置された冷却風入口(71)を有し、前記インタークーラーに冷却風を供給する冷却風ダクト(70)とを有することを特徴とする。
この構成によれば、左右一対の通気口が設けられ、エンジンルームの左右方向における一側に吸気入口が配置され、他側に冷却風入口が配置されているため、吸気入口を形成する吸気装置及び冷却風入口を形成する冷却風ダクトが互いに干渉することがない。また、インタークーラーがエンジン本体の左右方向における他側の側方に設けられ、吸気入口がエンジンルームの左右方向におけるインタークーラーが設けられた側と相反する一側、かつエンジン本体よりも前方に設けられているため、インタークーラーの通過によって昇温された空気が吸気入口から吸い込まれることが避けられる。また、インタークーラー及び冷却風入口が左右方向における他側に配置されているため、冷却風ダクトを短くすることができる。
また、上記発明において、前記吸気入口は左右方向における一側の前記通気口に近接して配置され、前記冷却風入口は左右方向における他側の前記通気口に近接して配置されているとよい。
この構成によれば、通気口からエンジンルームに入った直後の比較的低温の空気が、吸気入口及び冷却風入口のそれぞれに供給されるため、吸気の充填効率が向上すると共に、インタークーラーの冷却効率が向上する。
また、上記発明において、前記エンジン本体の左右方向における他側には、変速機(36)が設けられ、前記インタークーラーは、前記変速機の上方に配置されているとよい。
この構成によれば、エンジン本体の側方かつ変速機の上方に形成される空間にインタークーラーが配置され、エンジン本体、変速機、及びインタークーラーがコンパクトに配置される。
また、上記発明において、前記エンジン本体は、その後側部に形成された吸気ポート及び前側部に形成された排気ポートを有し、前記吸気装置は、前記吸気入口から、前記エンジン本体の前方を左右方向における他側に延び、前記エンジン本体の左右方向における他側の側方を後方に延び、前記エンジン本体の後方を左右方向における一側に延びて前記吸気ポートに到り、前記過給機は、前記吸気装置の前記エンジン本体の前方に配置された部分に設けられ、前記インタークーラーは、前記吸気装置の前記エンジン本体の左右方向における他側の側方に配置された部分に設けられているとよい。
この構成によれば、過給機及びインタークーラーが設けられた吸気装置をエンジン本体の周りにコンパクトに配置することができる。吸気装置はエンジンルームの左右方向における一側かつエンジン本体よりも前方に配置された吸気入口から過給機及びインタークーラーを順に通過して吸気ポートに到る必要があり、過給機は排気エネルギーを効率良く回収するために排気ポートの近傍に配置する必要がある。また、インタークーラーは冷却風ダクトを短くするためにエンジン本体の左右方向における他側の側方に配置される好ましい。そのため、吸気装置がエンジン本体の前方を通過した後、エンジン本体の左方を通過してエンジン本体の後側部に到達する配置にすることによって、吸気装置の吸気の経路長を短くすることができる。
また、上記発明において、前記インタークーラーは、左右に延びる上流側集合管(61)と、前記上流側集合管よりも後方において左右に延びる下流側集合管(62)と、前記上流側集合管及び前記下流側集合管間を前後に延びて接続する複数の放熱管(63)とを有し、前記上流側集合管の入口をなす集合管入口部(64)は、前記上流側集合管の左右方向における前記一側に接続され、下流側に進むにつれて左右方向における他側に進むように傾斜し、前記上流側集合管は、左右方向における前記一側から前記他側に進むにつれて左右方向に直交する断面積が減少するとよい。
この構成によれば、上流側集合管内の吸気の圧力分布が均一化され、各放熱管に流入する吸気量が均一化される。上流側集合管に対する集合管入口部の接続形態に起因して、集合管入口部から上流側集合管に流入する吸気は、左右方向における他側に向かう流れが強くなる。しかし、上流側集合管の左右方向に直交する断面積が、左右方向における一側から他側に進むにつれて減少するように構成されているため、上流側集合管内を一側から他側に向かう吸気の流れが抑制され、上流側集合管内の吸気の圧力分布が均一化され、各放熱管に流入する吸気量が均一化される。
また、上記発明において、前記冷却風ダクトは、前記冷却風入口から後方かつ左右方向における前記一側に延びる管状部(72)と、前記管状部の下流側に設けられ、複数の前記放熱管の上方を覆うように下方に向けて開口したフード部(73)とを有し、前記管状部は、前記フード部の左右方向における前記他側に接続され、下流側に進むにつれて左右方向における一側に進むように傾斜し、前記フード部は、左右方向における前記他側から前記一側に進むにつれて左右方向に直交する断面積が減少するとよい。
この構成によれば、フード部内の冷却風の左右方向における圧力分布が均一化され、フード部から放熱管に供給される冷却風の左右方向における圧力分布が均一化される。フード部に対する管状部の接続形態に起因して、管状部からフード部に流入する冷却風は、左右方向における一側に向かう流れが強くなる。しかし、フード部の左右方向に直交する断面積が、左右方向における他側から一側に進むにつれて減少するように構成されているため、フード内を他側から一側に向かう冷却風の流れが抑制され、フード部内の冷却風の左右方向における圧力分布が均一化される。
また、上記発明において、前記管状部は、前記フード部の左右方向における前記他側かつ前部に接続されているとよい。
この構成によれば、管状部からフード部の前部に冷却風が供給され、各放熱管のうちで温度が高い上流側部分に冷却風が主に供給される。これにより、放熱管での熱交換効率が向上する。
また、上記発明において、前記フード部は、左右方向における前記一側かつ前部に、内部空間の容積を縮小する絞り部(73B)を有するとよい。
この構成によれば、フード部の左右方向における一側かつ前部への冷却風の集中が抑制され、冷却風はフード内を後方に流れるようになる。これにより、冷却風は、各放熱管の外面を通過した後もエンジンルーム内を後方に流れるようになり、エンジンルームの前部に設けられた通気口からエンジンルームに流入する空気との衝突が避けられ、エンジンルーム内の空気の流れが円滑になる。
また、上記発明において、前記上流側集合管は前記下流側集合管よりも下方に配置され、複数の前記放熱管は後方に進むほど上方に進むように傾斜しているとよい。
この構成によれば、下方かつ後方に流れる冷却風の向きに対して、放熱管の延在方向がなす角度が90°に近付くため、各放熱管の間を通過するときの冷却風の流路長が短くなる。これにより、冷却風の圧損が低下し、冷却風が流れ易くなる。その結果、インタークーラーでの熱交換効率が向上する。
以上の構成によれば、ミッドシップ車のエンジンルーム構造において、吸気装置及び熱交換器のためのダクトを効率良く配置することができる。
以下、図面を参照して本発明をミッドシップ車に適用した実施形態を説明する。以下の説明では、車両の進行方向を前方とし、各方向を定めるものとする。
図1及び図2に示すように、ミッドシップ車である車両1は、前後方向における中央部に乗員が搭乗する車室2を有し、車室2の後方にエンジンルーム3を有している。
車室2は、車両1の左右両側部下部を前後に延在するサイドシル5、左右に延びて各サイドシル5を連結するクロスメンバ(不図示)、各サイドシル5の前端から上方に延びる一対のフロントピラー(不図示)、各サイドシル5の後端から上方に延びる一対のリヤピラー6、前後に延びてフロントピラー及びリヤピラー6の上端間を連結するルーフサイドレール7、左右に延びて両フロントピラーの上端間を連結するルーフフロントメンバ(不図示)、左右に延びて両リヤピラー6の上端間を連結するルーフリヤメンバ(不図示)等によって形成されている。
車室2の底部は、左右のサイドシル5間に設けられたフロアパネル(不図示)によって形成される。また、車室2の上部は、左右のルーフサイドレール7、ルーフフロントメンバ、及びルーフサイドレール7間に設けられたルーフパネル9によって形成される。車室2の側部は、サイドシル5、フロントピラー、リヤピラー6、及びルーフサイドレール7によって形成される搭乗口11を有する。搭乗口11には、開閉可能にドアパネル12が設けられている。
車室2の後部は、左右のリヤピラー6の下部間に設けられたパーティションパネル13によって形成されている。パーティションパネル13は、主面が前後を向く板状部材であり、車室2とエンジンルーム3とを区画する。パーティションパネル13はフロアパネルと一体に形成されてもよい。パーティションパネル13の上縁の左右方向における中央部は、下方に向けて切り欠かれ、リヤウインドウ(不図示)を形成している。
エンジンルーム3は、左右のサイドシル5のそれぞれの後端から後方に延びる左右のリヤフレーム15、各リヤフレーム15に結合された左右のリヤフェンダ16、左右のリヤフレーム15の後端間に掛け渡されたリヤパネル(不図示)等によって形成されている。リヤフェンダ16は、車両1の後部側部の外面を形成する板状部材である。エンジンルーム3の上部は、前エンジンフード18及び後エンジンフード19によって覆われている。
図2に示すように、前エンジンフード18は、左右のリヤピラー6の上部及びパーティションパネル13の上縁に沿うように配置された前縁から後方に延び、エンジンルーム3の前部上方を覆う。前エンジンフード18の左右側縁はリヤフェンダ16の上縁に沿って延在している。前エンジンフード18は、後方に進むにつれて高さが低くなるように、傾斜している。前エンジンフード18の左右方向における中央部は、下方に向けて凹んだ溝部21が形成されている。溝部21の前端は、リヤウインドウと対向するように配置されている。溝部21を形成する左右の壁部間には、左右方向に延在する複数の板片22が掛け渡されている。複数の板片22は、主面が上下を向いて互いに平行に配置され、ルーバーを構成している。
左右のリヤピラー6の外側面に配置された前エンジンフード18の前縁の左右両側部のそれぞれには通気口23L、23Rが形成されている。左側の通気口23L及び右側の通気口23Rは、前後に延び、前端が前方に向けて開口し、後端がエンジンルーム3に連通している。通気口23L、23Rは、前エンジンフード18の内面とリヤピラー6の外側面との間に形成されてもよく、前エンジンフード18のみによって形成されてもよい。エンジンルーム3の前部における左右両側に設けられた左右一対の通気口23L、23Rは、車両1が前進するときに、外気を取り込み、エンジンルーム3に供給する。このように、通気口23L、23Rを介して、エンジンルーム3には、その前部の左右両側から外気が取り込まれる。
後エンジンフード19は、前エンジンフード18の後方に配置され、エンジンルーム3の後部上方を開閉可能に覆う。
図2に示すように、エンジンルーム3の中央には、公知のレシプロエンジンであるエンジン30が配置されている。エンジン30は、シリンダブロック、シリンダヘッド、ヘッドカバー、オイルパン等を含むエンジン本体31と、エンジン本体31の燃焼室(不図示)に燃焼用空気(吸気)を供給する吸気装置33と、燃焼室で発生した排気ガスを排出する排気装置34とを有している。エンジン本体31は、クランク軸線A(シリンダ列)が左右に延びるように(左右方向と平行になるように)、エンジンルーム3内に横置きに配置されている。エンジン本体31は、左右のリヤフレーム15に結合されたエンジンマウント(不図示)に支持されているとよい。
エンジン本体31の左側部には、クランク軸(不図示)の回転を変速して伝達する変速機36が設けられている。変速機36は、エンジン本体31の高さに比べて低く形成されている。そのため、エンジン本体31の上部の左方、かつ変速機36の上方には空間が形成されている。
エンジン本体31は、前側部が排気側となり、後側部が吸気側となっている。エンジン本体31の前側面には、燃焼室から延びる排気ポート(不図示)の一端が開口している。エンジン本体31の後側面には、燃焼室から延びる吸気ポート(不図示)の一端が開口している。
吸気ポートには、吸気装置33が接続されている。吸気装置33は、一連の吸気通路を形成し、上流側から順に、吸気入口41、エアフィルタ42、過給機43(ターボチャージャ)のコンプレッサ43A、インタークーラー44、スロットルバルブ45、吸気マニホールド46を有している。
吸気入口41は、吸気装置33の上流端をなす開口であり、吸気装置33内への空気の取り入れ口を構成する。吸気入口41は、エンジンルーム3の右側部におけるエンジン本体31よりも前方、すなわちエンジンルーム3の右前部に配置されている。吸気入口41は、更に右側の通気口23Rに近接して配置されていることが好ましい。本実施形態では、吸気入口41は右側の通気口23Rの後方に近接して配置され、吸気入口41の開口が右側の通気口23R側を向いている。
吸気装置33は、エンジンルーム3の右前部に配置された吸気入口41から後方に延び、その後、左方かつ前方に屈曲してエンジン本体31の前側部の前方に延び、エンジン本体31の前側部の前方を左方に延び、その後、後方に屈曲してエンジン本体31の左側部の左方かつ変速機36の上方を後方に延び、その後、右方に屈曲してエンジン本体31の後側部の後方を右方に延びている。すなわち、吸気装置33は、平面視においてエンジン本体31の外周を囲むように配置されている。吸気装置33の下流端に設けられた吸気マニホールド46は、エンジン本体31の後側部に結合され、吸気ポートに連通している。
エアフィルタ42は、吸気入口41の後方かつエンジン本体31の右方に配置され、吸気装置33の吸気入口41から後方に延びる部分に設けられている。コンプレッサ43Aは、エンジン本体31の前側部の前方に配置され、吸気装置33のエンジン本体31の前側部の前方を左右に延びる部分に設けられている。インタークーラー44は、エンジン本体31の左側部の左方かつ変速機36の上方に配置され、吸気装置33の、エンジン本体31の左側部の左方かつ変速機36の上方を前後に延びる部分に設けられている。スロットルバルブ45は、エンジン本体31の後側部の後方に配置され、吸気装置33の、エンジン本体31の後側部の後方を左右に延びる部分に設けられている。
排気ポートには、排気装置34が接続されている。排気装置34は、一連の排気通路を形成し、上流側から順に、排気マニホールド51、過給機43のタービン43B、触媒コンバータ(不図示)、消音器(不図示)、排気出口(不図示)を有している。排気マニホールド51は、エンジン本体31の前側部に結合され、排気ポートに連通している。排気装置34は、エンジン本体31の前側部に配置された排気マニホールド51からエンジン本体31の前側部の前方を下方に延び、その後後方に屈曲してエンジン本体31の下方を潜って後方に延び、後端に排気出口を形成している。タービン43Bは、エンジン本体31の前側に配置され、排気装置34のエンジン本体31の前側部を上下に延在する部分に設けられている。また、タービン43Bとコンプレッサ43Aとは互いに同軸に配置されている。
図3〜図6に示すように、インタークーラー44は、上流側集合管61と、下流側集合管62と、上流側集合管61及び下流側集合管62間に掛け渡された複数の放熱管63とを有する。上流側集合管61及び下流側集合管62は、所定の距離をおいて互いに平行に延びている。複数の放熱管63は、上流側集合管61及び下流側集合管62と直交するように延び、上流側集合管61の長手方向にわたって互いに等間隔に配置されている。上流側集合管61、下流側集合管62、及び複数の放熱管63は、エンジン本体31の左側部の左方かつ変速機36の上方に配置されている。上流側集合管61及び下流側集合管62は、それぞれ左右方向に延びている。下流側集合管62は、上流側集合管61の後方かつ上方に配置されている。複数の放熱管63は、それぞれ前後に延び、上流側集合管61から下流側集合管62に後方に進むにつれて上方に進むように水平面に対して傾斜している。
上流側集合管61は、吸気の入口となる集合管入口部64を有する。集合管入口部64は、管状をなし、上流側集合管61の右端から前方かつ右方に突出している。集合管入口部64は、吸気装置33の一部をなす管部材66によってコンプレッサ43Aの出口と接続されている。上流側集合管61は、左端の前側部に後方に向けて凹んだ絞り部61Aを有する。絞り部61Aによって、上流側集合管61の左右方向(長手方向)に直交する流路の横断面は、右側から左側に進むほど小さくなっている。上流側集合管61の左右方向に直交する流路の横断面は、右側から左側にかけて漸減することが好ましい。
下流側集合管62は、吸気の出口となる集合管出口部68を有する。集合管出口部68は、管状をなし、下流側集合管62の右端から右方に突出している。集合管出口部68は、吸気装置33の一部をなす管部材69によってスロットルバルブ45の入口と接続されている。下流側集合管62は、左端の後側部に前方に向けて凹んだ絞り部62Aを有する。絞り部62Aによって下流側集合管62の左右方向(長手方向)に直交する流路の横断面は、左側から右側に進むほど大きくなっている。下流側集合管62の左右方向に直交する流路の横断面は、左側から右側にかけて漸増することが好ましい。
各放熱管63の横断面は、上下に長い長円に形成されている。各放熱管63の横断面は、上流側集合管61の左右方向に直交する横断面に対して十分に小さく設定されている。左右方向において隣り合う放熱管63の間には上下に貫通する冷却風の流路が形成されている。
図2に示すように、過給機43のコンプレッサ43Aを通過した吸気は、管部材66を介してインタークーラー44に流れる。インタークーラー44では、吸気は集合管入口部64、上流側集合管61、各放熱管63、下流側集合管62、集合管出口部68を順に通過する。吸気は、放熱管63を通過するときに、放熱管63の壁部と熱交換し、冷却される。放熱管63の壁部は、周囲の空気と熱交換し、放熱する。インタークーラー44を通過して冷却された吸気は管部材69を介してスロットルバルブ45に流れる。
図2〜図6に示すように、エンジンルーム3内の左側には、インタークーラー44に冷却風を供給する冷却風ダクト70が設けられている。冷却風ダクト70は、開口端である冷却風入口71が一端に形成された管状部72と、管状部72の他端に設けられたフード部73とを有し、一連の導風路を形成する。冷却風入口71は、エンジンルーム3の左側かつエンジン本体31よりも前方に配置されている。すなわち、吸気入口41が配置されたエンジンルーム3の右側と左右方向において相反する左側に配置されている。また、冷却風入口71は、更に左側の通気口23Lに近接して配置されていることが好ましい。本実施形態では、冷却風入口71は左側の通気口23Lの後方に近接して配置され、冷却風入口71の開口が左側の通気口23L側を向いている。
管状部72は、冷却風入口71から後方かつ右方に延び、その後右方に屈曲して右方に延びている。管状部72の下流側部分72Aは、ゴム等の可撓性部材から形成され、ベローズ状に形成されている。管状部72は、下流側部分72Aよりも上流側の部分においてボルト等の締結手段によってリヤフレーム15やリヤフェンダ16等の車体に結合されている。
フード部73は、下方に向けて開口した略直方体状の箱形に形成され、全ての放熱管63を上方から覆うように配置されている。また、フード部73は、更に上流側集合管61及び下流側集合管62も上方から覆うように配置されてもよい。フード部73はボルト等の締結部材によって上流側集合管61及び下流側集合管62に結合されている。
図3に示すように、フード部73における管状部72の下流側部分72Aとの接続部73Aは、フード部73の上面における前部左側に形成されている。接続部73Aは、開口が上方かつ左方を向くように形成されている。接続部73Aの内端(フード部73の内側に開口する端部)は、一部の放熱管63の上流側部分と対向している。接続部73Aに接続された管状部72の下流側部分72Aは、上流側から下流側に進むにつれて右方かつ下方に進むように傾斜している。
フード部73は、その前部右側に下方に向けて凹んだ絞り部73Bを有する。絞り部73Bによって、フード部73の前部右側における内側の高さ及び容積は、他の部分に対して小さくなっている。フード部73の前部左側及び後部における内側の高さ及び容積は、概ね等しく形成されている。
冷却風ダクト70は、冷却風入口71からエンジンルーム3の左前部の空気を取り入れ、管状部72を介してフード部73に冷却風を流す。フード部73に供給された冷却風は、各放熱管63の間を通過して下方に流れる。冷却風は各放熱管63の間を通過するときに、放熱管63の外面と熱交換し、放熱管63から熱を奪う。
本実施形態に係るミッドシップ車両1のエンジンルーム構造では、エンジンルーム3の前部の左側部に通気口23Lが設けられ、右側部に通気口23Rが設けられ、エンジンルーム3内の右側に吸気入口41が配置され、左側に冷却風入口71が配置されているため、吸気入口41及び冷却風入口71の干渉が避けられる。また、インタークーラー44がエンジン本体31の左側部の側方に設けられ、吸気入口41がエンジンルーム3内の右側かつエンジン本体31よりも前方に配置されているため、インタークーラー44を通過し、昇温された冷却風が吸気入口41から吸い込まれることが避けられる。また、インタークーラー44及び冷却風入口71が、共にエンジンルーム3内の左側に配置されているため、冷却風ダクト70を短くすることができる。
本実施形態では吸気入口41が右側の通気口23Rの後方に近接して配置されているため、エンジンルーム3内で比較的温度が低い空気を燃焼用空気として使用することができ、吸気の充填効率が向上する。また、冷却風入口71が左側の通気口23Lの後方に近接して配置されているため、エンジンルーム3内で比較的温度が低い空気をインタークーラー44の冷却用空気として使用することができ、インタークーラー44の冷却効率が向上する。
本実施形態では、エンジン本体31の左側部の側方かつ変速機36の上方に形成されるデッドスペースにインタークーラー44が配置されるため、エンジン本体31、変速機36、及びインタークーラー44が互いに近接してコンパクトに配置される。
本実施形態では、エンジン本体31の前側部を排気側とし、後側部を吸気側とし、吸気装置33が、エンジンルーム3の右前部に配置された吸気入口41から、エンジン本体31の前方を左方に延び、屈曲してエンジン本体31の左方を後方に延び、屈曲してエンジン本体31の後方を右方に延びて吸気ポートに到るように配置したため、過給機43及びインタークーラー44が設けられた吸気装置33をエンジン本体31の周りにコンパクトに配置することができる。過給機43は排気エネルギーを効率良く回収するために排気ポートの近傍に配置する必要がある。そのため、吸気装置33は、エンジン本体31の吸気側に到達する前にエンジン本体31の排気側を経由する必要がある。インタークーラー44は、冷却風ダクト70の経路長を短くするためにエンジンルーム3の左側に配置されることが好ましい。そのため、吸気装置33が、エンジン本体31の排気側(前側部)から、エンジン本体31の左方を通過してエンジン本体31の吸気側(後側部)に延びることによって、吸気装置33及び冷却風ダクト70の双方をコンパクトに形成することができる。なお、エンジン本体31の前側部を吸気側、後側部を排気側とした場合、吸気装置33はエンジンルーム3の前部に設けられた吸気入口41から、最初にエンジン本体31の後側部の排気側を経由した後にエンジン本体31の前側部に戻らなければならず、吸気装置33の経路長が長くなる。
また、本実施形態では、吸気装置33をエンジン本体31の周囲に配置するために、インタークーラー44では上流側集合管61に対する集合管入口部64の接続角が傾斜することになるが、上流側集合管61に絞り部61Aを設け、上流側集合管内の流路断面積を変化させたため、上流側集合管61内の吸気の圧力分布が均一化される。通常、左右に延びる上流側集合管61に対して、集合管入口部64が後方に進むにつれて左方に進むように傾斜して上流側集合管61に接続された場合、上流側集合管61の吸気の圧力分布は左側が右側に対して高くなり易い。本実施形態では、上流側集合管61は左側に絞り部61Aを有し、上流側集合管61の左右方向に直交する断面積が、右側から左側に進むにつれて小さくなるため、吸気が上流側集合管61内を左側に流れ難くなり、左側の圧力上昇が抑制され、圧力分布が均一化される。上流側集合管61内の吸気の圧力分布が均一化されることによって、各放熱管63を通過する吸気量が均一化され、冷却効率が向上する。
また、冷却風ダクト70では、フード部73に形成された絞り部73Bによって、フード部73内の冷却風の左右方向における圧力分布が均一化される。本実施形態では、管状部72がフード部73に対して、接続部73Aにおいて下方(下流側)に進むにつれて右方向に進むように接続されている。そのため、フード部73内の冷却風の圧力分布は右側が左側に対して高くなり易い。本実施形態では、フード部73が右前部に絞り部73Bを有し、フード部73の左右方向に直交する断面積が、左側から右側に進むにつれて小さくなるため、冷却風がフード部73内を右側に流れ難くなり、左側の圧力上昇が抑制され、左右方向における圧力分布が均一化される。これにより、各放熱管63の外面に供給される冷却風量が均一化され、冷却効率が向上する。
また、接続部73Aが、フード部73の前部に設けられているため、冷却風が放熱管63の上流側部分から供給され、放熱管63での熱交換効率が向上する。
また、フード部73は右前部に絞り部73Bを有するため、左前部に形成された接続部73Aからフード部73に流入した冷却風はフード部73内を後方に流れるようになる。そのため、冷却風は下方かつ後方を向く速度成分を有し、各放熱管63の外面を通過した後もエンジンルーム3内を後方に流れるようになる。これにより、エンジンルーム3の前部に設けられた通気口23L、23Rからエンジンルーム3に流入する空気との衝突が避けられ、エンジンルーム3内の空気の流れが円滑になる。なお、エンジンルーム3の空気は、後方及び下方に形成された開口から外部に排出される。
また、上記発明において、前記上流側集合管は前記下流側集合管よりも下方に配置され、複数の前記放熱管は後方に進むほど上方に進むように傾斜しているとよい。
この構成によれば、下方かつ後方を向く速度成分を有する冷却風に対して、放熱管63は後方に進むほど上方に進むように傾斜しているため、冷却風の向きと放熱管63の延在方向とがなす角度が90°に近付く。これにより、各放熱管63の間を通過するときの冷却風の流路長が短くなり、冷却風の圧損が低下し、冷却風が流れ易くなる。その結果、インタークーラー44での熱交換効率が向上する。
冷却風ダクト70は、管状部72の下流側部分72Aが可撓性を有しているため、インタークーラー44を介したエンジン本体31の振動が下流側部分72Aで遮断され、管状部72の上流側部分の振動が抑制される。
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、通気口23L、23Rは、前エンジンフード18に代えて、リヤフェンダ16に形成されてもよい。また、上記実施形態のエンジンルーム構造のレイアウトは、左右を逆転しても成立する。例えば、吸気入口41をエンジンルーム3の左前部に配置し、冷却風入口71をエンジンルーム3の右前部に配置し、インタークーラー44をエンジン本体31の右方に配置し、吸気装置33が吸気入口41からエンジン本体31の前方を右方に延び、エンジン本体31の右方を後方に延び、エンジン本体31の後方を左方に延びるように配置してもよい。この場合、変速機36がエンジン本体31の右方に配置されることが好ましい。