JP2018194230A - グロープラグ - Google Patents

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Abstract

【課題】発熱温度の高温化を確保しつつ、チューブを小径化したときのコイルの耐久性を確保できるグロープラグを提供すること。【解決手段】グロープラグは、チューブの内側に配置されるWやMoを主成分とするコイルを備え、チューブの先端から軸線方向の後端側に向かって2mmの位置におけるチューブの外径は3.5mm未満である。チューブは、Niを50wt%以上、Crを18〜30wt%、Alを1wt%以下およびMnを0.1〜0.5wt%含有する。軸線を含むチューブの断面における180μm×250μmの大きさの任意の10個の視野のうち、5μm以上の大きさの析出物が現出する視野は3個以下である。【選択図】図2

Description

本発明はグロープラグに関し、特に発熱温度を高温化できるグロープラグに関するものである。
従来より、金属製のチューブの内側にコイルが配置されたグロープラグが知られている(特許文献1及び2)。このグロープラグは、圧縮着火方式によるディーゼルエンジン等の内燃機関の補助熱源として用いられる。また、内燃機関の規制が厳格化される中、グロープラグは発熱温度の高温化が求められている。この要求に応えるため、特許文献3には、FeCrAl合金やNiCr合金よりも高融点のWやMoを主成分とする耐熱金属をコイルに用いる技術が開示されている。
特開2015−117930号公報 特開2015−155790号公報 国際公開第2014/206847号
しかしながら、WやMoを主成分とするコイルは酸化し易いので、チューブにクラックが生じると、そこからチューブ内に酸素が侵入してコイルが酸化し、コイルが早期に劣化するという問題点がある。特に、グロープラグを所定温度まで短時間で昇温させる性能(以下「急速昇温性」と称す)の向上のため、チューブの熱容量を小さくする目的でチューブの外径を小さくするにつれて、チューブのスウェージング加工時などにチューブにクラックが生じ易くなる傾向がある。
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、発熱温度の高温化を確保しつつ、チューブを小径化したときのコイルの耐久性を確保できるグロープラグを提供することを目的としている。
この目的を達成するために本発明のグロープラグは、軸線方向に延び、軸線方向の先端が閉じた金属製のチューブと、チューブの内側に配置され、チューブの先端側に接続されると共にWやMoを主成分とするコイルと、を備えている。チューブの先端から軸線方向の後端側に向かって2mmの位置におけるチューブの外径は3.5mm未満である。チューブは、Niを50wt%以上、Crを18〜30wt%、Alを1wt%以下およびMnを0.1〜0.5wt%含有する。軸線を含むチューブの断面における180μm×250μmの大きさの任意の10個の視野のうち、5μm以上の大きさの析出物が現出する視野は3個以下である。
請求項1記載のグロープラグによれば、WやMoを主成分とするコイルがチューブの内側に配置されるので、発熱温度の高温化を確保できる。また、請求項1記載のグロープラグによれば、チューブは、Niを50wt%以上、Crを18〜30wt%、Alを1wt%以下およびMnを0.1〜0.5wt%含有するので、チューブの耐酸化性および加工性を確保できる。さらに、請求項1記載のグロープラグによれば、軸線を含むチューブの断面における180μm×250μmの大きさの任意の10個の視野のうち、5μm以上の大きさの析出物が現出する視野は3個以下となるので、粒子径の大きな析出物が、チューブの成形時や加工時に割れの起点となるのを抑制できる。よって、先端から軸線方向の後端側に向かって2mmの位置における外径が3.5mm未満となるような、小径化したチューブであってもクラックを生じ難くできる。その結果、発熱温度の高温化を確保しつつ、チューブを小径化したときのコイルの耐久性を確保できる。
なお、「WやMoを主成分」とは、コイル材料の全体含有量に対するW又はMoの合計含有量が50wt%以上であることをいう。
また、請求項2記載のグロープラグによれば、チューブは、Siを0.2〜1.5wt%含有するので、請求項1の効果に加え、粒子径の大きな析出物の析出を抑制しつつチューブの耐酸化性を向上できる。
また、請求項3記載のグロープラグによれば、チューブは、Cを0.04wt%以下、Feを5〜15wt%含有するので、請求項1又は2の効果に加え、チューブの加工性を向上できる。
さらに、請求項4記載のグロープラグによれば、チューブは、先端から軸線方向の後端側に向かって2mmの位置を含む第1部と、第1部よりも後端側に位置し第1部よりも外径が大きい第2部と、を備えている。第2部の加工率(加工によって減少した断面積の原断面積に対する割合)を第1部の加工率より小さくできるので、スウェージング加工時に、第1部に比べて第2部にクラックを生じ難くできる。従って、請求項1から3のいずれかの効果に加え、軸線方向の全長に亘ってチューブの外径を3.5mm未満にする場合に比べて、チューブにクラックを生じ難くできる。
グロープラグの片側断面図である。 一部を拡大したグロープラグの断面図である。
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1及び図2を参照して本発明の一実施の形態におけるグロープラグ10について説明する。図1はグロープラグ10の片側断面図であり、図2は一部を拡大したグロープラグ10の断面図である。図1及び図2では、紙面下側をグロープラグ10の先端側、紙面上側をグロープラグ10の後端側という。
図1に示すようにグロープラグ10は中軸20、主体金具30、チューブ40及びコイル50を備えている。これらの部材はグロープラグ10の軸線Oに沿って組み付けられている。グロープラグ10は、ディーゼルエンジンを始めとする内燃機関(図示せず)の始動時などに用いられる補助熱源である。
中軸20は円柱形状の金属製の導体であり、コイル50に電力を供給するための部材である。中軸20は先端にコイル50が電気的に接続されている。中軸20は、後端が主体金具30から突出した状態で主体金具30に挿入されている。
中軸20は、本実施の形態では、後端に雄ねじからなる接続部21が形成されている。中軸20は、後端に、先端側から順に絶縁ゴム製のOリング22、合成樹脂製の筒状部材である絶縁体23、金属製の筒状部材であるリング24、金属製のナット25が組み付けられている。接続部21は、バッテリ等の電源から電力を供給するケーブルのコネクタ(図示せず)が接続される部位である。ナット25は、接続されたコネクタ(図示せず)を固定するための部材である。
主体金具30は炭素鋼等により形成される略円筒形状の部材である。主体金具30は、軸線Oに沿って軸孔31が貫通し、外周面にねじ部32が形成されている。主体金具30は、ねじ部32より後端側に工具係合部33が形成されている。軸孔31は中軸20が挿入される貫通孔である。軸孔31の内径は中軸20の外径より大きいので、中軸20と軸孔31との間に空隙が形成される。ねじ部32は、内燃機関(図示せず)に嵌まり合う雄ねじである。工具係合部33は、ねじ部32を内燃機関のねじ穴(図示せず)に嵌めたり外したりするときに用いる工具(図示せず)が関わり合う形状(例えば六角形)をなす部位である。
主体金具30は、軸孔31の後端側において、Oリング22及び絶縁体23を介して中軸20を保持する。絶縁体23にリング24が接した状態で中軸20にリング24が加締められることで、絶縁体23は軸方向の位置が固定される。絶縁体23によって主体金具30の後端側とリング24とが絶縁される。主体金具30は、軸孔31の先端側にチューブ40が固定されている。
チューブ40は先端41が閉じた金属製の筒状体である。チューブ40は軸孔31に圧入されることで、主体金具30に固定される。チューブ40は中軸20の先端側が挿入されている。チューブ40の内径は中軸20の外径より大きいので、中軸20とチューブ40との間に空隙が形成される。シール材42は、中軸20の先端側とチューブ40の後端との間に挟まれた円筒形状の絶縁部材である。シール材42は中軸20とチューブ40との間隔を維持し、中軸20とチューブ40との間を密閉する。
チューブ40は、先端41側の第1部43と、第1部43よりも後端側に位置する第2部44と、を備えている。第2部44の外径は第1部43の外径よりも大きい。コイル50は軸線Oに沿ってチューブ40に収容されている。絶縁粉末60はチューブ40に充填されている。
図2に示すようにチューブ40は、先端41から後端側に向かって2mmの位置45における外径Dが3.5mm未満に設定される。なお、位置45の近傍は、コイル50の発熱によって最も温度が高くなる部分である。位置45は第1部43の一部であり、第1部43は軸線O方向の全長に亘って同一の外径Dに設定される。一方、第2部44は、位置46よりも先端側の部分が、先端側へ向かうにつれて縮径している。
コイル50は螺旋状に形成されており、通電により発熱する。コイル50は、チューブ40の先端41側に接合された先端コイル51と、中軸20の先端に接合された後端コイル52とを備えている。先端コイル51は、先端が溶接によりチューブ40の先端41側に接合されている。先端コイル51の材料としては、W,Moを主成分とする高融点金属からなる。なお、これらの元素の単体、又は、これらの元素のいずれかを主成分とする合金を先端コイル51として用いることができる。
先端コイル51は、後端が溶接によって後端コイル52に接合されている。先端コイル51と後端コイル52との間に、溶接で溶けて溶接金属が固まった溶融部53が形成されている。溶融部53はチューブ40の第1部43の内側に位置し、位置46は溶融部53よりも後端側に位置する。
後端コイル52は、溶融部53を介して先端コイル51と直列に接続される。後端コイル52は、先端コイル51の抵抗比R1より小さい抵抗比R2をもつ導電材料で形成されている。なお、抵抗比R1,R2とは「コイルの20℃での抵抗値に対する1000℃での抵抗値の比」である。R1>R2なので、先端コイル51は後端コイル52に比べて高温での抵抗値が大きくなる。
後端コイル52の材料としては、例えばFeCrAl合金、NiCr合金などが挙げられる。後端コイル52は軸線Oに沿ってチューブ40に収容されており、後端が溶接により中軸20の先端に接合されている。中軸20は後端コイル52及び先端コイル51を介してチューブ40と電気的に接続されている。
グロープラグ10の接続部21と主体金具30との間に電圧Vを印加すると、先端コイル51の抵抗値R及び後端コイル52の抵抗値Rの和R+Rで電圧Vを除した電流Iが、コイル50に流れる。単位時間当たりの先端コイル51の発熱量はR・Iであり、単位時間当たりの後端コイル52の発熱量はR・Iである。
後端コイル52は先端コイル51の抵抗比R1よりも小さい抵抗比R2をもつので、コイル50の発熱による温度上昇に伴い、先端コイル51の抵抗値Rが後端コイル52の抵抗値Rよりも大きくなる。その結果、先端コイル51の単位時間当たりの発熱量R・Iを、後端コイル52の単位時間当たりの発熱量R・Iより大きくできる。
先端コイル51はW,Moを主成分とする高融点金属により形成されているので、所望する温度(例えば1000℃)まで第1部54の発熱温度Tを急速に昇温できる。なお、所望する温度(ここでは1000℃)に発熱温度Tが到達した後、グロープラグ10に印加する電圧Vを低下させることにより、発熱温度Tを安定時の飽和温度(例えば1100℃)にできる。
絶縁粉末60は電気絶縁性を有し、且つ、高温下で熱伝導性を有する粉末である。絶縁粉末60は、コイル50とチューブ40との間、中軸20とチューブ40との間、コイル50の内側に充填される。絶縁粉末60は、コイル50からチューブ40へ熱を移動させる機能、コイル50とチューブ40との短絡を防ぐ機能、コイル50を振動し難くして断線を防ぐ機能がある。絶縁粉末60としては、例えばMgO,Al等の酸化物粉末が挙げられる。MgO,Al等の酸化物粉末に加え、CaO,ZrO及びSiO,Si等の粉末を添加できる。
グロープラグ10は、例えば、次のようにして製造される。まず、所定の組成を有する抵抗発熱線をコイル状に加工し、先端コイル51及び後端コイル52をそれぞれ製造する。次いで、先端コイル51と後端コイル52との端部同士を溶接により接合し、コイル50とする。次いで、コイル50のうち後端コイル52を中軸20の先端に接合する。
一方、所定の組成を有する金属鋼管をチューブ40の最終寸法よりも大径に形成し、かつ、その先端を他の部分よりも減径させて、先端が開口した先窄まり状のチューブ前駆体を製造する。チューブ前駆体の内部に中軸20と一体となったコイル50を挿入し、チューブ前駆体の先窄まり状の開口部にコイル50の先端を配置する。チューブ前駆体の開口部とコイル50の先端部分とを溶接によって溶融し、チューブ前駆体の先端部分を閉塞し、内部にコイル50が収容されたヒータ前駆体を形成する。
次いで、ヒータ前駆体のチューブ40内に絶縁粉末60を充填した後、チューブ40の後端の開口部と中軸20との間にシール材42を挿入して、チューブ40を封止する。次に、チューブ40が所定の外径になるまでチューブ40にスウェージング加工を施す。スウェージング加工後のチューブ40を主体金具30の軸孔31に圧入固定し、中軸20の後端から主体金具30と中軸20との間にOリング22及び絶縁体23を嵌め込む。リング24で中軸20を加締めてグロープラグ10を得る。
チューブ40は、先端41から後端側に向かって2mmの位置45における外径Dが3.5mm未満に設定されるので、外径Dが3.5mm以上のチューブに比べて、先端41近傍(発熱温度が最も高い部分)の熱容量を小さくできる。その結果、外径の大きいチューブに比べて、グロープラグ10の急速昇温性に有利に作用する。また、内燃機関(図示せず)の燃焼室内に突出する部分の体積を小さくできるので、燃焼室内の気流を妨げ難くできる。
一方、チューブ40の外径Dが3.5mm未満に小さくなると、スウェージング加工時の加工率(加工によって減少した断面積の原断面積に対する割合)が大きくなるので、加工のときにチューブ40にクラックが生じ易くなる。チューブ40に割れが生じると、そこからチューブ内に酸素が侵入してコイル50が酸化する。W,Moを主成分とする高融点金属からなる先端コイル51は、FeCrAl合金、NiCr合金などからなる後端コイル52に比べて酸化し易いので、先端コイル51が早期に劣化して断線するおそれがある。
そこで、チューブ40は耐酸化性が要求されるのに加え、成形時やスウェージング加工時などにクラックが生じないようにするために、加工性(特に絞り加工性)が要求される。そのためチューブ40は、軸線Oを含むチューブ40の断面を鏡面研磨し、その研磨面を電子顕微鏡によって観察したときに、180μm×250μmの大きさの任意の10個の視野のうち、5μm以上の大きさの析出物が現出する視野が3個以下とされる。5μm以上の大きさの析出物が断面に多数現出すると、加工時にその析出物に応力が集中して割れの起点になり易いからである。
5μm以上の大きさの析出物としては、例えばCr窒化物やAl窒化物、Mn硫化物、Cr炭化物などの粗大な析出物が挙げられる。析出物の大きさは、電子顕微鏡による析出物の像を2本の平行線で挟んだときの平行線の最も広い間隔をいう。析出物の大きさは、チューブ前駆体やヒータ前駆体など熱処理の温度や時間、チューブ40の組成などを管理することによって制御される。
チューブ40の組成は、Niを50wt%以上、Crを18〜30wt%、Alを1wt%以下およびMnを0.1〜0.5wt%含有する。チューブ40は、さらにSiを0.2〜1.5wt%含有するのが好ましい。また、チューブ40は、Cを0.04wt%以下、Feを5〜15wt%含有するのが好ましい。
チューブ40はNiを50wt%以上含有することにより、チューブ40の耐熱性を確保できる。Crを18〜30wt%含有することにより、チューブ40の表面に形成されるCr酸化膜によりチューブ40の耐酸化性を確保できると共に、Cr窒化物やCr炭化物などの析出物を析出させ難くすることができる。Alの含有率を1wt%以下に抑えることにより、チューブ40を加工硬化させ難くすることができ、チューブ40の加工性を確保できる。Mnの含有率を0.1〜0.5wt%に抑えることにより、脱硫によりチューブ40の脆化を防ぐことができると共に、Mn硫化物などの析出物を析出させ難くできる。その結果、チューブ40の加工性を確保できる。
チューブ40は、加工性を確保するために含有率を抑えたAlの機能を補うために、Siを0.2〜1.5wt%含有する。これにより、チューブ40の耐酸化性を確保できると共に、Si化合物の析出物の析出を抑制できる。Cの含有率を0.04wt%以下に抑え、Feを5〜15wt%含有することにより、チューブ40の高温下における強度を向上させると共に加工性を確保できる。
チューブ40は、先端41から2mmの位置45を含む第1部43と、第1部43よりも後端側に位置し第1部43よりも外径が大きい第2部44と、を備え、第1部43の内側に先端コイル51が配置されている。第2部44に比べて外径の小さい第1部43の熱容量は第2部44の熱容量に比べて小さく、さらに第1部43はコイル50との距離も近いので、先端コイル51が配置された第1部43の急速昇温性に有利に働く。
また、第2部44の加工率を第1部43の加工率より小さくできるので、スウェージング加工時に、第1部43に比べて第2部44にクラックを生じ難くできる。よって、軸線O方向の全長に亘ってチューブ40の外径Dを3.5mm未満にする場合に比べて、チューブ40にクラックを生じ難くできる。
さらに、第1部43よりも外径の大きい第2部44が主体金具30の軸孔31に圧入されるので、主体金具30の軸孔31の直径を第1部43の外径に応じて小さくしなくても良い。また、中軸20の先端は第2部44に挿入されるので、中軸20の直径を第1部43の内径に応じて小さくしなくても良い。即ち、中軸20の外径や主体金具30の内径を第1部43の外径と無関係に設定できるので、中軸20や主体金具30の設計の自由度を確保できる。
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(サンプルの作成)
Mo又はWを主成分とする合金で作られた直径Φ0.20mmの線材を用いて種々の先端コイル51を作成した。同様に、NiCr合金で作られた線材を用いて後端コイル52を作成した。溶接により後端コイル52を先端コイル51に接合して、後端コイル52及び先端コイル51が直列に接続された種々のコイル50を作成した。
Cr,Fe,Si,Al,Mn及びC(不可避不純物を除いて残部はNi)が種々の比率で配合されたチューブ用金属鋼管を準備した。図1に示すグロープラグ10と同様の構造を有するグロープラグを前述のとおりに製造して、表1に示すサンプル1〜32におけるグロープラグを得た。サンプル1〜32は、チューブ40の先端41から軸線O方向の後端側に向かって2mmの位置45における外径Dを3.2mm,3.4mm又は3.5mmとした。サンプル1〜32は、0.2質量%のSi粉末を含有するMgO粉末を絶縁粉末60とした。
Figure 2018194230
サンプル1〜32のチューブ40の組成は、EPMAを用いたWDS分析により求めた。また、サンプル1〜32について、軸線Oを含むチューブ40の断面を鏡面研磨し、その研磨面を電子顕微鏡で観察して、180μm×250μmの大きさの任意の10視野に現れる析出物の大きさを測定した。析出物の像を2本の平行線で挟んだときの平行線の最も広い間隔を析出物の大きさとした。その10視野のうち、5μm以上の大きさの析出物が現出する視野がいくつあるかを調べ、その数を表1の「視野の数」の欄に記した。
サンプル1〜32(チューブ40の組成分析および析出物の大きさを調べたサンプルとは別のサンプル)について、耐久性および急速昇温性(昇温性)を評価した。また、サンプル1〜32を作成するためのチューブ用金属鋼管と組成が同じ板材について、加工性を評価した。なお、加工性を評価した板材は、金属鋼管がチューブに加工されるときに加えられる熱処理と同じ処理を施した。
(耐久性の評価)
電圧を印加してから2秒後のチューブ40の先端41付近の温度が1000℃になるように、各サンプルの接続部21と主体金具30との間に直流電圧を2秒間印加した。次いで、チューブ40の先端41付近の温度が1100℃に飽和する定格電圧を180秒間印加した後、電圧の印加を120秒間止めた。これを1サイクルとして繰り返し試験を行い、コイル50の断線の有無を調べた。
なお、チューブ40の先端41付近の温度は、各サンプルのチューブ40の先端41から軸線O方向に2mm離れたチューブ40の表面の位置45に接合したPR熱電対により測定した。PR熱電対の代わりに放射温度計を用いても良い。
評価は、20000サイクルを超えてもコイル50が断線しなかったサンプルは「A:特に優れている」、コイル50が断線したサイクル数が15000サイクルを超え20000サイクル以下のサンプルは「B:かなり優れている」、コイル50が断線したサイクル数が10000サイクルを超え15000サイクル以下のサンプルは「C:優れている」、コイル50が断線したサイクル数が10000サイクル以下のサンプルは「E:劣る」とした。結果を表1の耐久性の欄に記した。
(昇温性の評価)
突入電流が30Aを超えないように調整しながら、各サンプルの接続部21と主体金具30との間に直流電圧を印加し、電圧を印加してから2秒後のチューブ40の先端41付近の温度を測定した。チューブ40の先端41付近の温度は、各サンプルのチューブ40の先端41から軸線O方向に2mm離れたチューブ40の表面の位置45に接合したPR熱電対により測定した。PR熱電対の代わりに放射温度計を用いても良い。
評価は、温度が1000℃以上のサンプルは「C:優れている」、温度が1000℃未満のサンプルは「E:劣る」とした。「昇温性」の評価においてA及びBを設定していないのは、「耐久性」の評価項目の重要度を考慮した重み付けによる。結果を表1の昇温性の欄に記した。
(加工性の評価)
各サンプルのチューブ用金属鋼管と同じ組成の厚さ0.6mmの板材に深絞り加工を行い、外径Φ5.15mm、長さ40mmのチューブを100本作成した。評価は、成形された100本のチューブの全てにクラックが発生しなかったサンプルは「B:かなり優れている」、100本のチューブのうち1〜9本のチューブにクラックが発生したサンプルは「C:優れている」、100本のチューブのうち10〜19本のチューブにクラックが発生したサンプルは「D:良い」、100本のチューブのうち20本以上のチューブにクラックが発生したサンプルは「E:劣る」とした。「加工性」の評価においてAを設定していないのは、「耐久性」の評価項目の重要度を考慮した重み付けによる。結果を表1の加工性の欄に記した。
(総合評価)
耐久性、昇温性および加工性の評価を点数化するため、Aに3点、Bに2点、Cに1点、Dに0.5点、Eに0点を与え、合計点数を算出した。合計点数が6点以上を「A:特に優れている」、合計点数が5点を「B:かなり優れている」、合計点数が4点を「C:優れている」、合計点数が3点を「D:良い」、合計点数が3点未満を「E:劣る」と評価した。結果を表1の総合の欄に記した。
(結果)
耐久性の評価において、サンプル1〜6,8〜32はC以上の評価であったのに対し、サンプル7の評価はEであった。サンプル1〜6,8〜32はCrの含有率が18〜30wt%の範囲であったのに対し、サンプル7はCrの含有率が15wt%であった。その結果、サンプル7はチューブ40の耐酸化性が低く、酸化してチューブ40に穴があき、コイル50が酸化して早期に断線したものと推察される。
耐久性の評価において、サンプル1〜6,8〜21は評価がCであったのに対し、サンプル22〜32の評価はA又はBであった。サンプル22〜25,27〜32はSiの含有率が0.2〜1.5wt%の範囲であったのに対し、サンプル1〜6,8〜21はSiの含有率が0.1wt%であった。その結果、サンプル22〜25,27〜32は、サンプル1〜6,8〜21に比べてチューブ40の耐酸化性を高くできたので、コイル50が断線するまでのサイクル数を多くできたと推察される。
なお、サンプル26は耐久性の評価はBであったのにも関わらず、5μm以上の大きさの析出物が存在する視野が5つあり、加工性の評価がDであった。サンプル26はSiの含有率が2.0wt%だったので、チューブ40にSi化合物の析出物が多く析出し、この析出物が、絞り加工のときにクラックの起点になったと推察される。
耐久性の評価において、サンプル22〜26,29は評価がBであったのに対し、サンプル27,28,30〜32は評価がAであった。サンプル27,28,30〜32はFeの含有率が5〜15wt%の範囲であったのに対し、サンプル22〜26,29はFeの含有率が3wt%又は18wt%であった。その結果、サンプル27,28,30〜32は、サンプル22〜26,29に比べてチューブ40の高温強度を高くすることができ、さらに加工性を向上できたので、チューブ40の割れの発生を防ぎ、コイル50の酸化を抑制できたと推察される。
昇温性の評価において、サンプル4以外は評価がCであったのに対し、サンプル4は評価がEであった。サンプル4以外は、チューブ40の先端41から2mmの位置45における外径が3.2mm又は3.4mmであったのに対し、サンプル4はチューブ40の外径が3.5mmであった。この結果から、チューブ40の外径を3.5mm未満にすることにより、チューブ40の先端41近傍の熱容量を小さくできるので、グロープラグの急速昇温性を向上できると推察される。
加工性の評価において、サンプル1〜9,12,13,15,16,18〜20,22〜25,27〜32は評価がB又はCだったのに対し、サンプル10,11,14,17,21は評価がEであった。サンプル1〜9,12,13,15,16,18〜20,22〜25,27〜32は、5μm以上の大きさの析出物が存在する視野が3つ以下であったが、サンプル10,21は、5μm以上の大きさの析出物が存在する視野が4つ以上あった。サンプル10,21は5μm以上の大きさの析出物が多く析出し、この析出物が、絞り加工のときにクラックの起点になったと推察される。
サンプル1〜9,12,13,15,16,18〜20,22〜25,27〜32は、Alの含有率が1.0wt%以下だったのに対し、サンプル11はAlの含有率が1.1wt%であった。サンプル11はAlの影響で板材が加工硬化し、絞り加工性が低下したと推察される。
サンプル1〜9,12,13,15,16,18〜20,22〜25,27〜32は、Mnの含有率が0.1〜0.5wt%だったのに対し、サンプル14はMnの含有率が0.04wt%以下であり、サンプル17はMnの含有率が0.7wt%であった。サンプル14は脆化によって板材の加工性が低下し、サンプル17はMn硫化物などの析出物の析出によって加工性が低下したと推察される。
サンプル31,32は、Cの含有率が0.04wt%以下だったのに対し、サンプル1〜9,12,13,15,16,18〜20,22〜25,27〜30は、Cの含有率が0.05wt%であった。サンプル31,32は、Cの含有率が0.04wt%以下だったので、サンプル1〜9,12,13,15,16,18〜20,22〜25,27〜30に比べて加工性が向上したと推察される。
この実施例によれば、Niを50wt%以上、Crを18〜30wt%、Alを1wt%以下およびMnを0.1〜0.5wt%含有するチューブ40の内側にWやMoを主成分とするコイル50を配置し、軸線を含むチューブの断面における180μm×250μmの大きさの任意の10個の視野のうち、5μm以上の大きさの析出物が現出する視野を3個以下にすることにより、チューブ40の先端41から軸線方向の後端側に向かって2mmの位置における外径Dが3.5mm未満であるスパークプラグ10を安定して製造できることが明らかになった。コイル50の寿命を長時間確保できることも明らかになった。
以上、実施の形態および実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、チューブ40の形状は筒状である限り特に限定されず、軸線Oに直交する断面が円形状、楕円形状、多角形状等であってもよい。
上記実施の形態では、コイル50のうち先端側の先端コイル51はWやMoを主成分とするコイルであるが、コイル50のうち後端側の後端コイル52はFeCrAl合金、NiCr合金などで形成される場合について説明した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、後端コイル52を省略して、コイル50の全体をWやMoを主成分とすることは当然可能である。この場合も、発熱温度の高温化を確保しつつ、チューブを小径化したときのコイルの耐久性を確保できる。
10 グロープラグ
40 チューブ
41 先端
43 第1部
44 第2部
45 位置
51 先端コイル(コイル)
D 外径
O 軸線

Claims (4)

  1. 軸線方向に延び、前記軸線方向の先端が閉じた金属製のチューブと、
    前記チューブの内側に配置され、前記チューブの先端側に接続されると共にWやMoを主成分とするコイルと、を備えるグロープラグであって、
    前記チューブの前記先端から軸線方向の後端側に向かって2mmの位置における外径が3.5mm未満であり、
    前記チューブは、Niを50wt%以上、Crを18〜30wt%、Alを1wt%以下およびMnを0.1〜0.5wt%含有し、
    軸線を含む前記チューブの断面における180μm×250μmの大きさの任意の10個の視野のうち、5μm以上の大きさの析出物が現出する視野が3個以下であるグロープラグ。
  2. 前記チューブは、Siを0.2〜1.5wt%含有する請求項1記載のグロープラグ。
  3. 前記チューブは、Cを0.04wt%以下、Feを5〜15wt%含有する請求項1又は2記載のグロープラグ。
  4. 前記チューブは、前記先端から軸線方向の後端側に向かって2mmの前記位置を含む第1部と、
    前記第1部よりも後端側に位置し前記第1部よりも外径が大きい第2部と、を備える請求項1から3のいずれかに記載のグロープラグ。
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