JP7090570B2 - グロープラグ - Google Patents

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Description

本発明はグロープラグに関し、特に発熱体の破損を抑制できるグロープラグに関するものである。
筒状体の先端を閉塞する溶融部にコイル状の発熱体を接合したグロープラグが知られている。このグロープラグは、発熱体の発熱により筒状体が加熱される(例えば特許文献1)。
特開2016-3817号公報
グロープラグでは耐久性の向上が求められており、グロープラグの耐久性の向上には、発熱体の溶融による短絡や断線など(以下「破損」と称す)の抑制が必要である。具体的には、グロープラグの発熱時に、発熱体の先端部位が過剰な温度になることを抑制することで、発熱体の破損を抑制できる。
しかし、特許文献1のようなグロープラグでは、発熱時に、発熱体の先端部位の熱エネルギーに加えて、発熱体の中間部位からの熱エネルギーの影響により、発熱体の先端部位が過剰な温度となり、発熱体に破損が生じるおそれがある。
本発明はこの要求に応えるためになされたものであり、発熱体の破損を抑制できるグロープラグを提供することを目的としている。
この目的を達成するために本発明のグロープラグは、先端が溶融部にて閉塞された筒状体と、筒状体の内側に配置されたコイル状の発熱体と、を備えるものであり、発熱体は溶融部を介して筒状体と接合されており、グロープラグの軸線に沿うようにグロープラグを切断した軸線を含む切断面を見たときに、溶融部の外に配され、軸線を境にして一方側に配された発熱体の断面のうち最先端に位置する断面を第1発熱体断面とし、溶融部の外に配され、軸線を境にして他方側に配された発熱体の断面のうち最先端に位置する断面を第2発熱体断面とし、軸線を境にして一方側に配された発熱体の断面のうち第1発熱体断面の1つ後ろ側に位置する断面を第3発熱体断面とし、軸線を境にして他方側に配された発熱体の断面のうち第2発熱体断面の1つ後ろ側に位置する断面を第4発熱体断面とし、軸線を境にして一方側に配された発熱体の断面のうち第3発熱体断面の1つ後ろ側に位置する断面を第5発熱体断面とし、軸線を境にして他方側に配された発熱体の断面のうち第4発熱体断面の1つ後ろ側に位置する断面を第6発熱体断面とした場合に、第1発熱体断面の最後端と第3発熱体断面の最先端との間の軸線の方向における距離Aは、第3発熱体断面の最後端と第5発熱体断面の最先端との間の軸線の方向における距離Bより大きく、第2発熱体断面の最後端と第4発熱体断面の最先端との間の軸線の方向における距離Cは、第4発熱体断面の最後端と第6発熱体断面の最先端との間の軸線の方向における距離Dより大きい。
請求項1記載のグロープラグによれば、発熱体の第3発熱体断面および第4発熱体断面を構成する部位を、発熱体の第1発熱体断面および第2発熱体断面を構成する部位から後端側へ遠ざけられる。これにより発熱時に、第1発熱体断面および第2発熱体断面を構成する部位が、第3発熱体断面および第4発熱体断面を構成する部位から受ける熱エネルギーを減らすことができ、その結果、第1発熱体断面および第2発熱体断面を構成する部位が過剰な温度となることを抑制できる。さらに、第3発熱体断面および第4発熱体断面を構成する部位が、第1発熱体断面および第2発熱体断面を構成する部位から遠ざかると、第1発熱体断面および第2発熱体断面を構成する部位が加熱しなければならない筒状体の面積が相対的に大きくなるので、第1発熱体断面および第2発熱体断面を構成する部位が過剰な温度となることをさらに抑制できる。よって、発熱体の第1発熱体断面および第2発熱体断面を構成する部位の破損を抑制できる。
請求項2記載のグロープラグによれば、軸線を含む切断面において、第1発熱体断面の軸線の方向の長さEが第3発熱体断面の軸線の方向の長さFよりも小さい、及び/又は、第2発熱体断面の軸線の方向の長さGが第4発熱体断面の軸線の方向の長さHよりも小さい。これにより、発熱体の軸線方向の全長を長くすることなく、距離Aを距離Bより大きく、及び/又は、距離Cを距離Dより大きくすることができる。そのため、発熱体を筒状体のより先端側に配置できるので、請求項1の効果に加え、グロープラグの先端側での発熱を確保できる。
さらに、第1発熱体断面や第2発熱体断面を構成する部位の抵抗を、第3発熱体断面や第4発熱体断面を構成する部位の抵抗よりも大きくし易くできるので、第1発熱体断面や第2発熱体断面を構成する部位が発生する熱エネルギーを、第3発熱体断面や第4発熱体断面を構成する部位が発生する熱エネルギーよりも大きくし易くできる。その結果、筒状体の溶融部付近の昇温性能を確保できる。
請求項3記載のグロープラグによれば、軸線を含む切断面において、発熱体の軸線の方向の全長の半分の位置である中間位置よりも先端側の発熱体のピッチの平均値が、中間位置よりも後端側の発熱体のピッチの平均値よりも小さい。これにより発熱体の中間位置よりも先端側の部位の抵抗を、中間位置よりも後端側の部位の抵抗よりも大きくできる。その結果、発熱体の中間位置よりも先端側の部位が発生する熱エネルギーを、中間位置よりも後端側の部位が発生する熱エネルギーよりも大きくできる。その結果、請求項1又は2の効果に加え、グロープラグの先端側での発熱をより確保できる。
請求項4記載のグロープラグによれば、軸線を含む切断面において、第1発熱体断面を通り径方向に延びる直線が交わる筒状体の第1部位の平均厚さは、第3発熱体断面を通り径方向に延びる直線が交わる筒状体の第2部位の平均厚さよりも大きい。ここで、発熱体の発熱によって加熱される筒状体は、第2部位よりも先端側に位置する第1部位が、第2部位よりも高温になり易いので、第1部位が第2部位よりも酸化消耗し易い。従って、第1部位の平均厚さを第2部位の平均厚さよりも大きくすることにより、酸化消耗によって破損するまでの筒状体の寿命を長くできる。よって、請求項1から3のいずれかの効果に加え、筒状体の破損に起因する発熱体の劣化を抑制できる。
グロープラグの片側断面図である。 一部を拡大したグロープラグの断面図である。 グロープラグの軸線を含む断面図である。
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1から図3を参照して本発明の一実施の形態におけるグロープラグ10について説明する。図1はグロープラグ10の軸線Oを境にした片側断面図である。図2は一部を拡大したグロープラグ10の断面図であり、図3はグロープラグ10の軸線Oを含む断面図である。図2では、発熱体50は外形が図示されている。図2及び図3ではグロープラグ10の後端側の図示が省略されている。図1から図3では、紙面下側をグロープラグ10の先端側、紙面上側をグロープラグ10の後端側という。
図1に示すようにグロープラグ10は、筒状体40と、筒状体40の内側に配置されたコイル状の発熱体50と、を主に備えている。グロープラグ10は、ディーゼルエンジンを始めとする内燃機関(図示せず)の始動時などに用いられる補助熱源である。軸線Oは、筒状体40の外周面に対する中心軸である。
発熱体50に電力を供給する中軸20は、円柱形状の金属製(例えばステンレス鋼)の導体である。中軸20は軸線Oに沿って配置されている。中軸20の先端部に発熱体50が電気的に接続されている。中軸20は、後端部が主体金具30から突出した状態で主体金具30に挿入されている。中軸20は、本実施形態では、後端部に雄ねじからなる接続部21が形成されている。中軸20は、後端部に、先端側から順に絶縁ゴム製のOリング22、合成樹脂製の筒状部材である絶縁体23、金属製の筒状部材であるリング24、金属製のナット25が組み付けられている。接続部21は、バッテリ等の電源から電力を供給するケーブルのコネクタ(図示せず)が接続される部位である。ナット25は、接続されたコネクタ(図示せず)を固定するための部材である。
主体金具30は炭素鋼等により形成される略円筒形状の部材である。主体金具30は、軸線Oに沿って軸孔31が貫通し、外周面にねじ部32が形成されている。主体金具30は、ねじ部32よりも後端側に工具係合部33が形成されている。軸孔31は中軸20が挿入される貫通孔である。軸孔31の直径は中軸20の外径より大きいので、中軸20と軸孔31との間に空隙が形成される。ねじ部32は、内燃機関(図示せず)に嵌まり合う雄ねじである。工具係合部33は、ねじ部32を内燃機関のねじ穴(図示せず)に嵌めたり外したりするときに用いる工具(図示せず)が関わり合う形状(例えば六角形)をなす部位である。
主体金具30は、軸孔31の後端側において、Oリング22及び絶縁体23を介して中軸20を保持する。絶縁体23にリング24が接した状態で中軸20にリング24が加締められることで、絶縁体23は軸方向の位置が固定される。絶縁体23によって主体金具30の後端側とリング24とが絶縁される。主体金具30は、軸孔31の先端側に筒状体40が固定されている。
筒状体40は先端が閉じた金属製の部材である。筒状体40は軸孔31に圧入されることで主体金具30に固定される。筒状体40の材料は、例えばニッケル基合金、ステンレス鋼などの耐熱合金が挙げられる。筒状体40は中軸20の先端側が挿入されている。シール材34は、中軸20と筒状体40との間に挟まれた円筒形状の絶縁部材である。シール材34は中軸20と筒状体40との間隔を維持し、中軸20と筒状体40との間を密閉する。発熱体50は軸線Oに沿って筒状体40に収容されている。絶縁粉末70は筒状体40に充填されている。
図2に示すように筒状体40は、溶融部42によって、筒状の母材41の先端が塞がれている。溶融部42の組織は母材41の組織とは異なる。溶融部42の組織には柱状晶が含まれている。母材41の組織には、例えば繊維状組織や鍛造組織などが含まれている。母材41や溶融部42の組織は、切断面の電解エッチング処理などの公知の手段によって確認できる。本実施形態では、筒状体40の外径は、溶融部42を除き、軸線方向の全長に亘ってほぼ同一である。
発熱体50の先端部は溶融部42を介して筒状体40と接合されている。発熱体50は導体を螺旋状に巻いたコイルであり、軸線Oに沿って配置されている。発熱体50の後端部は溶接部60を介して後端コイル61と接合されている。後端コイル61は中軸20に接合されている。発熱体50の材質に制限はないが、例えばFe,Cr,Al,Ni,Mo,W及びCo等の金属、並びにこれらの元素のいずれかを主成分とする合金が挙げられる。後端コイル61の材質としては、例えば純Ni、Ni合金、Co合金などが挙げられる。後端コイル61を省略して、発熱体50を中軸20に直接接続することは当然可能である。
絶縁粉末70は電気絶縁性を有し、且つ、高温下で熱伝導性を有する粉末である。絶縁粉末70には、発熱体50から筒状体40へ熱を移動させる機能、発熱体50と筒状体40との短絡を防ぐ機能、発熱体50を振動し難くして断線を防ぐ機能がある。絶縁粉末70としては、例えばMgO、Al等の酸化物粉末が挙げられる。さらにCaO,ZrO及びSiO,Si等の粉末を添加できる。
グロープラグ10は、例えば次のようにして製造される。まず、所定の組成を有する抵抗発熱線をコイル状に加工し、発熱体50及び後端コイル61をそれぞれ製造する。溶接により溶接部60を形成して発熱体50と後端コイル61とを接合し、次いで、後端コイル61を中軸20に接合する。
一方、所定の組成を有する金属鋼管(母材41)を筒状体40の最終寸法よりも大径に形成し、かつ、その先端を他の部分よりも減径させて、先端が開口した先窄まり状の筒状前駆体を製造する。筒状前駆体の内部に中軸20と一体となった発熱体50及び後端コイル61を挿入し、筒状前駆体の先窄まり状の開口部に発熱体50の先端部を配置する。筒状前駆体の開口部を溶融して発熱体50の先端部が埋め込まれた溶融部42を形成し、筒状前駆体の先端を閉塞する。これにより筒状体40の溶融部42に発熱体50が接合されたヒータ前駆体が得られる。
次に、ヒータ前駆体の筒状体40内に絶縁粉末70を充填した後、筒状体40の後端の開口部と中軸20との間にシール材34を挿入して、筒状体40を封止する。次いで、筒状体40が所定の外径になるまで筒状体40にスウェージング加工を施す。スウェージング加工後の筒状体40を主体金具30の軸孔31に圧入固定し、中軸20の後端から主体金具30と中軸20との間にOリング22及び絶縁体23を嵌め込む。リング24で中軸20を加締めてグロープラグ10を得る。
図3に示すようにグロープラグ10の軸線Oを含む切断面には、軸線Oを境にして一方側(図3左側)に配された発熱体50の断面のうち溶融部42の外の最先端に位置する第1発熱体断面51、軸線Oを境にして他方側(図3右側)に配された発熱体50の断面のうち溶融部42の外の最先端に位置する第2発熱体断面52、軸線Oを境にして一方側に配された発熱体50の断面のうち第1発熱体断面51の1つ後ろ側に位置する第3発熱体断面53、軸線Oを境にして他方側に配された発熱体50の断面のうち第2発熱体断面52の1つ後ろ側に位置する第4発熱体断面54、軸線Oを境にして一方側に配された発熱体50の断面のうち第3発熱体断面53の1つ後ろ側に位置する第5発熱体断面55、及び、軸線Oを境にして他方側に配された発熱体50の断面のうち第4発熱体断面54の1つ後ろ側に位置する第6発熱体断面56が現出する。
グロープラグ10の切断面は、SEM等の顕微鏡を用いて観察される。発熱体50や筒状体40の断面は、画像解析ソフトを用い、視野内の画像を2値化処理して特定できる。第1発熱体断面51及び第2発熱体断面52は、溶融部42の外に断面の全体が現出する部位である。従って、溶融部42に発熱体50の断面の一部または全部が含まれる部位は、第1発熱体断面51及び第2発熱体断面52ではない。「溶融部42に発熱体50の断面の一部が含まれる」とは、発熱体50の断面と溶融部42の断面とが隣接していることを指す。
なお、グロープラグ10を観察する切断面としては、溶融部42に発熱体50の断面の一部が含まれる切断面よりも、溶融部42に発熱体50の一部が含まれずに、発熱体50の最先端として第1発熱体断面51及び第2発熱体断面52が現出している切断面が好ましい。さらに、グロープラグ10を観察する切断面としては、発熱体50と後端コイル61との溶接部60が現出しない切断面が好ましい。
第1発熱体断面51、第2発熱体断面52、第3発熱体断面53、第4発熱体断面54、第5発熱体断面55、及び、第6発熱体断面56は、軸線Oを境にして軸線Oの両側に現出する断面である。従って、軸線Oに交わる断面は、第1発熱体断面51、第2発熱体断面52、第3発熱体断面53、第4発熱体断面54、第5発熱体断面55、及び、第6発熱体断面56ではない。
本実施形態では、第1発熱体断面51は第2発熱体断面52よりも先端側に位置し、第2発熱体断面52は第3発熱体断面53よりも先端側に位置する。第3発熱体断面53は第4発熱体断面54よりも先端側に位置し、第4発熱体断面54は第5発熱体断面55よりも先端側に位置する。さらに、第5発熱体断面55は第6発熱体断面56よりも先端側に位置する。
第1発熱体断面51の最後端と第3発熱体断面53の最先端との間の軸線Oの方向における距離Aは、第3発熱体断面53の最後端と第5発熱体断面55の最先端との間の軸線Oの方向における距離Bより大きい(A>B)。さらに、第2発熱体断面52の最後端と第4発熱体断面54の最先端との間の軸線Oの方向における距離Cは、第4発熱体断面54の最後端と第6発熱体断面56の最先端との間の軸線Oの方向における距離Dより大きい(C>D)。先端側の巻線間の距離を調整した発熱体50を用いてヒータ前駆体を製造することにより、このようなグロープラグ10が得られる。
このようにすれば、第3発熱体断面53及び第4発熱体断面54を構成する導体を、第1発熱体断面51及び第2発熱体断面52を構成する導体から後端側へ遠ざけられる。これにより発熱時に、第1発熱体断面51及び第2発熱体断面52を構成する導体が、第3発熱体断面53及び第4発熱体断面54を構成する導体から受ける熱エネルギーを減らすことができる。よって、第1発熱体断面51及び第2発熱体断面52を構成する導体が過剰な温度となることを抑制できる。
さらに、第3発熱体断面53及び第4発熱体断面54を構成する導体が、第1発熱体断面51及び第2発熱体断面52を構成する導体から遠ざかると、第1発熱体断面51及び第2発熱体断面52を構成する導体が加熱しなければならない筒状体40の面積が相対的に大きくなる。これにより、第1発熱体断面51及び第2発熱体断面52を構成する導体の熱移動が促進されるので、第1発熱体断面51及び第2発熱体断面52を構成する導体が過剰な温度となることを抑制できる。よって、発熱体50の第1発熱体断面51及び第2発熱体断面52を構成する導体の溶融による破損(短絡や断線など)を抑制できる。
一方、発熱体50の導体間の距離がA>B且つC>Dであると、第3発熱体断面53及び第4発熱体断面54を構成する導体が、第1発熱体断面51及び第2発熱体断面52を構成する導体から遠ざかるだけでなく、発熱体50の軸線方向の全長が長くなるため、グロープラグ10の先端側での発熱が低下するおそれがある。なお、発熱体50の軸線方向の全長は、第1発熱体断面51の中心と、切断面に現出する発熱体50の複数の断面のうち最後端に位置する断面58の中心と、の間の軸線方向の距離L1+L2である。
そこで、第1発熱体断面51の軸線Oの方向の長さEを、第3発熱体断面53の軸線Oの方向の長さFよりも小さくする。これにより、発熱体50の軸線方向の全長を長くすることなく、距離Aを距離Bより大きくすることができる。
また、第2発熱体断面52の軸線Oの方向の長さGを、第4発熱体断面54の軸線Oの方向の長さHよりも小さくする。これにより、発熱体50の軸線方向の全長を長くすることなく、距離Cを距離Dより大きくすることができる。
よって、第1発熱体断面51及び第2発熱体断面52を構成する導体の破損を抑制しつつ、筒状体40のより先端側に発熱体50を配置し、グロープラグ10の先端側での発熱を確保できる。
さらに、第1発熱体断面51や第2発熱体断面52を構成する導体の抵抗を、第3発熱体断面53や第4発熱体断面54を構成する導体の抵抗よりも大きくし易くできるので、第1発熱体断面51や第2発熱体断面52を構成する導体が発生する熱エネルギーを、第3発熱体断面53や第4発熱体断面54を構成する導体が発生する熱エネルギーよりも大きくし易くできる。その結果、筒状体40の溶融部42付近の昇温性能を確保できる
なお、第1発熱体断面51、第2発熱体断面52、第3発熱体断面53及び第4発熱体断面54の軸線方向の長さは、発熱体50の各断面に外接する角が90°の四角形(長方形または正方形)を求めて算出する。発熱体50の断面に外接する四角形の対向する2辺は軸線Oに平行な線分であり、その2辺に垂直に交わる2辺は軸線Oに垂直な線分である。各断面の軸線方向の長さは、各断面に外接する四角形のうち軸線Oに平行な線分の長さである。発熱体50の断面の軸線方向の長さは、筒状体40に施すスウェージング加工の圧力によって調整できる。これに限られるものではなく、断面の軸線方向の長さを部分的に予め異ならせた発熱体50を用いても良い。
グロープラグ10は、軸線Oを含む切断面において、発熱体50の軸線方向の全長の半分の位置である中間位置57よりも先端側の発熱体50の断面のピッチP1の平均値が、中間位置57よりも後端側の発熱体50の断面のピッチP2の平均値よりも小さい。中間位置57は、発熱体50の軸線方向の全長の距離L1+L2の半分の位置である。中間位置57に発熱体50の断面が存在する場合と存在しない場合があるが、どちらでも構わない。
発熱体50の断面(第1発熱体断面51や断面58等)の中心は、断面の軸線方向の長さを求める場合と同様に、第1発熱体断面51や断面58に外接する角が90°の四角形(長方形または正方形)を求めて算出する。第1発熱体断面51や断面58に外接する四角形の対向する2辺は軸線Oに平行な線分であり、その2辺に垂直に交わる2辺は軸線Oに垂直な線分である。その四角形の対角線の交点を、発熱体50の断面の中心とする。
発熱体50のピッチP1,P2は、発熱体50の隣接する断面の中心間の軸線Oの方向の距離である。ピッチP1,P2は、軸線Oを境にして一方側(図3左側)に配された断面、及び、軸線Oを境にして他方側(図3右側)に配された断面についてそれぞれ求め、算術平均をとる。中間位置57に発熱体50の断面が存在する場合、その断面はピッチP1,P2の算出に使わない。なお、図3ではピッチP1,P2はそれぞれ1つのみが図示され、その他のピッチP1,P2の図示は省略されている。
中間位置57よりも先端側の発熱体50のピッチP1の平均値を、中間位置57よりも後端側の発熱体50のピッチP2の平均値よりも小さくすることにより、発熱体50の中間位置57よりも先端側の導体の抵抗を、中間位置57よりも後端側の導体の抵抗よりも大きくできる。その結果、中間位置57よりも先端側の導体が発生する熱エネルギーを、中間位置57よりも後端側の導体が発生する熱エネルギーよりも大きくできるので、グロープラグ10の先端側での発熱をより確保できる。
グロープラグ10は、第1発熱体断面51を通り径方向に延びる直線62が交わる筒状体40の第1部位43の平均厚さが、第3発熱体断面53を通り径方向に延びる直線63が交わる筒状体40の第2部位44の平均厚さよりも大きい。直線62,63は軸線Oに垂直な直線である。本実施形態では、筒状体40の母材41の内径を先端側に向かうにつれて縮径させ、筒状体40を肉厚にすることにより、第1部位43及び第2部位44が作られている。
第1部位43の平均厚さは、少なくとも、第1発熱体断面51の最先端を通る直線62が交わる第1部位43の厚さ、第1発熱体断面51の最後端を通る直線62が交わる第1部位43の厚さ、及び、第1発熱体断面51の中心を通る直線62が交わる第1部位43の厚さの3点の観測値の算術平均から求めることができる。観測値の数をさらに増やしても良い。
同様に第2部位44の平均厚さは、少なくとも、第3発熱体断面53の最先端を通る直線63が交わる第2部位44の厚さ、第3発熱体断面53の最後端を通る直線63が交わる第2部位44の厚さ、及び、第3発熱体断面53の中心を通る直線63が交わる第2部位44の厚さの3点の観測値の算術平均から求めることができる。観測値の数をさらに増やしても良い。
ここで、発熱体50の発熱によって加熱される筒状体40は、第2部位44よりも先端側に位置する第1部位43が、第2部位44よりも高温になり易いので、第1部位43が第2部位44よりも酸化消耗し易い。従って、第1部位43の平均厚さを第2部位44の平均厚さよりも大きくすることにより、酸化消耗によって破損するまでの筒状体40の寿命を長くできる。よって、筒状体40の破損に起因する発熱体50の劣化を抑制できる。
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(サンプルの製造)
Fe-Cr-Al合金製のコイル状の発熱体(発熱コイル)をNi基合金製の筒状体の内側に配置し、発熱体と筒状体とを接合し、発熱体と中軸とをNi製の後端コイルで接続したグロープラグのサンプルを作成した。サンプルは、筒状体の外径が3.2mm、発熱体の外径(コイル径)が1.5mm、第1発熱体断面および第2発熱体断面の軸線方向の長さが0.35mm、第3発熱体断面および第4発熱体断面の軸線方向の長さが0.40mmとなるように、発熱体を構成する導体の直径、スウェージング加工の条件などを設定した。
発熱体のピッチ、筒状体の肉厚などを異ならせて、発熱体の断面間の距離A,B,C,D、発熱体のピッチ比(発熱体の先端側のピッチP1の平均値/後端側のピッチP2の平均値)、筒状体の厚さ比(筒状体の第2部位の平均厚さ/第2部位の平均厚さ)が異なる、表1に示す種々のサンプル1~6を得た。サンプル1~6は距離A,B,C,D、発熱体のピッチ比、筒状体の厚さ比は異なるが、発熱体の巻き数、発熱体の展開長、発熱体の断面の軸線方向の長さ等のその他の要素は同一にした。
表1において、発熱体のピッチ比が1未満であるのは、発熱体の先端側のピッチP1が後端側のピッチP2より小さいことを示す。筒状体の厚さ比が1未満であるのは、第2部位が第1部位より薄いこと、即ち第1部位が第2部位より厚いことを示す。
なお、各サンプルの各種部位の寸法は、筒状体の温度測定および耐久試験(後述する)を行ったサンプルと同じ条件で製造した別のサンプルを、軸線を含む平面によって切断したときの切り口に現れる部位に基づいて測定した。
Figure 0007090570000001
(筒状体の温度測定)
各サンプルの中軸と主体金具との間に11Vの直流電圧を2秒間印加し、次いで中軸と主体金具との間に4.5Vの直流電圧を58秒間印加した後の筒状体の表面の温度を放射温度計で測定した。温度を測定した位置は、筒状体の先端から後端側へ2mm離れた位置、筒状体の先端から後端側へ3mm離れた位置、筒状体の先端から後端側へ4mm離れた位置の3か所であった。3か所の温度と、3つの温度の最大値と最低値との差(範囲)と、を表1に記した。
(耐久性の評価)
筒状体の表面が最も高温になる位置(例えばサンプル1では筒状体の先端から後端側へ3mm離れた位置、サンプル2では筒状体の先端から後端側へ4mm離れた位置)が、電圧を印加してから2秒後に1000℃になるように、各サンプルの中軸と主体金具との間に直流電圧を2秒間印加した後、その位置が1100℃になるように中軸と主体金具との間に直流電圧を180秒間印加した。その後、通電を止め、その位置に常温(25℃)の空気を120秒間当てて空冷するという操作を1サイクルとして通電-空冷を繰り返し、7000サイクルを各サンプルに加える耐久試験を大気中で行った。筒状体の表面の温度は放射温度計によって測定した。
評価は、耐久試験の7000サイクル経過時に異常(発熱体の断線)がなかったサンプルをA、5000サイクル以上7000サイクル未満で発熱体が断線したサンプルをB、3000サイクル以上5000サイクル未満で発熱体が断線したサンプルをC、3000サイクル未満で発熱体が断線したサンプルをDとした。結果は表1に記した。
表1に示すように、距離A>Bであり距離C>Dであるサンプル1~4は、筒状体の先端から後端側へ3mm離れた位置か4mm離れた位置が最高温度に到達し、5000サイクル未満では発熱体は断線しなかった。しかし、距離A<Bであり距離C<Dであるサンプル5,6は、筒状体の先端から後端側へ2mm離れた位置が最高温度に到達し、5000サイクル未満で発熱体が断線した。特にサンプル6に比べて距離A及び距離Cが短いサンプル5は、3000サイクル未満で発熱体が断線した。
サンプル5とサンプル6とを比較すると、サンプル5の方が2mmの位置の温度が高く、さらに範囲が大きかった。サンプル5はサンプル6に比べて距離A及び距離Cが短いので、発熱体を構成する導体が過剰な温度となり、サンプル6よりも早期に断線したと推察される。このことから、距離A及び距離Cは発熱体の耐久性に大きな影響を与えることがわかる。従って、距離A>Bかつ距離C>Dとすることにより、サンプル1~4は最高温度に到達した位置が筒状体の後端側へ移動し、その上、5000サイクル未満で発熱体が断線しなかったものと推察される。
サンプル1,2は7000サイクル経過時に異常(発熱体の断線)がなかったが、サンプル3は5000サイクル以上7000サイクル未満で発熱体が断線した。サンプル1,2は発熱体のピッチ比が1未満であるのに対し、サンプル3は発熱体のピッチ比が1以上であった。サンプル1,2とサンプル3とを比較すると、サンプル3の方が温度の最大値が大きく、さらに範囲が大きかった。サンプル3はサンプル1,2に比べて発熱体の後端側のピッチP2の平均値が先端側のピッチP1の平均値よりも大きいので、発熱体の発熱の中心が後端側にずれる。そのため、発熱体の先端側によって所定の温度に発熱する際に、より後端側で発熱し、その結果、サンプル1,2よりも早期に断線したと推察される。
サンプル4も5000サイクル以上7000サイクル未満で発熱体が断線した。サンプル1,2は筒状体の厚さ比が1未満であるのに対し、サンプル4は筒状体の厚さ比が1以上であった。サンプル4は筒状体の第1部位の厚さが第2部位の厚さ以下なので、第2部位よりも先端側に位置する第1部位の酸化消耗により、発熱体が露出し、発熱体を構成する導体の劣化が生じ、サンプル1,2よりも早期に断線したと推察される。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明はこの実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、筒状体40の形状は筒状である限り特に限定されず、軸線Oに直交する断面が円形状、楕円形状、多角形状等であってもよい。また、発熱体50の直径(コイル径)や線径、筒状体40の厚さや直径は、発熱体50や筒状体40の熱容量などを考慮して適宜設定できる。
実施形態では、第1発熱体断面51の軸線方向の長さEが第3発熱体断面53の軸線方向の長さFよりも小さく、且つ、第2発熱体断面52の軸線方向の長さGが第4発熱体断面54の軸線方向の長さHよりも小さい場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1発熱体断面51の軸線方向の長さEを第3発熱体断面53の軸線方向の長さFより小さくし、第2発熱体断面52の軸線方向の長さGを第4発熱体断面54の軸線方向の長さH以上にすることは当然可能である。
また、第1発熱体断面51の軸線方向の長さEを第3発熱体断面53の軸線方向の長さF以上にし、第2発熱体断面52の軸線方向の長さGを第4発熱体断面54の軸線方向の長さHより小さくすることは当然可能である。
実施形態では、溶融部41を除き、筒状体40の全長に亘って筒状体40の外径が同一である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、後端側へ向かうにつれて外径が大きくなる部位を筒状体40に設けることは当然可能である。
実施形態では、筒状体40の溶融部42付近に第1部位43を設け、その後端側に第2部位44を設けることで、筒状体40の溶融部42付近の肉厚を厚くする場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。溶融部41を除き、筒状体40の全長に亘って肉厚を同一にすることは当然可能である。また、筒状体40の溶融部42付近の肉厚を厚くするだけでなく、筒状体40の第2部位44よりも後端側の部位の肉厚も厚くすることは当然可能である。
10 グロープラグ
40 筒状体
42 溶融部
43 第1部位
44 第2部位
50 発熱体
51 第1発熱体断面
52 第2発熱体断面
53 第3発熱体断面
54 第4発熱体断面
55 第5発熱体断面
56 第6発熱体断面
57 中間位置
62,63 直線
O 軸線

Claims (4)

  1. 先端が溶融部にて閉塞された筒状体と、
    前記筒状体の内側に配置されたコイル状の発熱体と、を備えるグロープラグであって、
    前記発熱体は前記溶融部を介して前記筒状体と接合されており、
    前記グロープラグの軸線に沿うように前記グロープラグを切断した前記軸線を含む切断面を見たときに、
    前記溶融部の外に配され、前記軸線を境にして一方側に配された前記発熱体の断面のうち最先端に位置する断面を第1発熱体断面とし、
    前記溶融部の外に配され、前記軸線を境にして他方側に配された前記発熱体の断面のうち最先端に位置する断面を第2発熱体断面とし、
    前記軸線を境にして一方側に配された前記発熱体の断面のうち前記第1発熱体断面の1つ後ろ側に位置する断面を第3発熱体断面とし、
    前記軸線を境にして他方側に配された前記発熱体の断面のうち前記第2発熱体断面の1つ後ろ側に位置する断面を第4発熱体断面とし、
    前記軸線を境にして一方側に配された前記発熱体の断面のうち前記第3発熱体断面の1つ後ろ側に位置する断面を第5発熱体断面とし、
    前記軸線を境にして他方側に配された前記発熱体の断面のうち前記第4発熱体断面の1つ後ろ側に位置する断面を第6発熱体断面とした場合に、
    前記第1発熱体断面の最後端と前記第3発熱体断面の最先端との間の前記軸線の方向における距離Aは、前記第3発熱体断面の最後端と前記第5発熱体断面の最先端との間の前記軸線の方向における距離Bより大きく、
    前記第2発熱体断面の最後端と前記第4発熱体断面の最先端との間の前記軸線の方向における距離Cは、前記第4発熱体断面の最後端と前記第6発熱体断面の最先端との間の前記軸線の方向における距離Dより大きいグロープラグ。
  2. 前記切断面において、
    前記発熱体は、前記第1発熱体断面の前記軸線の方向の長さEが前記第3発熱体断面の前記軸線の方向の長さFよりも小さい、及び/又は、前記第2発熱体断面の前記軸線の方向の長さGが前記第4発熱体断面の前記軸線の方向の長さHよりも小さい請求項1記載のグロープラグ。
  3. 前記切断面において、
    前記発熱体は、前記発熱体の前記軸線の方向の全長の半分の位置である中間位置よりも先端側の前記発熱体のピッチの平均値が、前記中間位置よりも後端側の前記発熱体のピッチの平均値よりも小さい請求項1又は2に記載のグロープラグ。
  4. 前記切断面において、
    前記筒状体は、前記第1発熱体断面を通り径方向に延びる直線が交わる第1部位の平均厚さが、前記第3発熱体断面を通り前記径方向に延びる直線が交わる第2部位の平均厚さよりも大きい請求項1から3のいずれかに記載のグロープラグ。
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