ロータコアの軸方向端面をワッシャで押し付けた場合、当該押し付け力(軸力)に起因してロータコアの内部には、応力が発生する。ワッシャでの押し付け箇所と低剛性部とが近い場合には、当該低剛性部に応力が集中してしまい、低剛性部の劣化や破損を招く。そのため、従来は、略環状のワッシャは、その外周端が低剛性部に近づきすぎないように、小径とすることが多かった。しかし、ワッシャを小径とした場合、ワッシャとロータコアとの接触面積が小さくなり、ロータコア全体に十分な軸力を付与できない恐れがあった。
そこで、本明細書では、十分な軸力を確保しつつ、低剛性部にかかる応力を軽減できる回転電機のロータを開示する。
本明細書で開示する回転電機のロータは、中心に軸孔が形成された略環状のロータコアであって、貫通孔である磁石孔が複数、周方向に並んで形成されたロータコアと、前記磁石孔に配され、磁極を構成する複数の磁石と、前記ロータコアの軸孔に固着された回転軸と、前記ロータコアの軸方向端面に密着するワッシャであって、その外周端が前記磁石孔より径方向内側に位置するワッシャと、前記回転軸に螺合され、前記ワッシャを前記ロータコアに押し付けるナットと、を備え、前記ロータコアには、貫通孔を形成したことで局所的に剛性が低下した低剛性部が、周方向に間隔をあけて複数存在しており、前記ワッシャの外周形状は、回転中心から外周端までの距離が、周期的に変動する凹凸形状であり、前記ワッシャの外周端から前記低剛性部までの距離は、前記ワッシャの外周端から前記磁石孔までの距離よりも大きい、ことを特徴とする。
ワッシャの外周形状を、回転中心から外周端までの距離が、周期的に変動する凹凸形状にするとともに、ワッシャの外周端から低剛性部までの距離を、ワッシャの外周端から磁石孔までの距離よりも大きくすることで、低剛性部への応力集中を緩和しつつ、ロータコアの広範囲に軸力を付加できる。その結果、十分な軸力を確保しつつ、低剛性部にかかる応力を軽減できる。
前記ロータコアには、径方向外側に向かって広がるV字状に配されるとともに微小間隙部であるブリッジ部を介して周方向に隣接する一対の磁石孔が、周方向に、複数対、形成されており、前記低剛性部は、前記ブリッジ部であってもよい。
かかる構成とすることで、磁石がV字状配置されたロータにおいても、十分な軸力を確保しつつ、低剛性部にかかる応力を軽減できる。
また、前記ロータコアには、略周方向に長尺な磁石孔が、周方向に、複数、形成されており、前記低剛性部は、周方向に隣接する磁石孔間の間隙部であってもよい。
かかる構成とすることで、磁石がI字状に配されたロータにおいても、十分な軸力を確保しつつ、低剛性部にかかる応力を軽減できる。
また、前記ワッシャは、前記低剛性部と同一位相において、前記回転中心から外周端までの距離が、最小となるように配されていてもよい。
これにより、ワッシャの外周端から低剛性部までの距離が大きくなりやすくなり、低剛性部への応力の集中をより確実に緩和できる。
また、前記ロータコアには、周方向に隣接するとともに径方向外側に向かって広がるV字状に配された一対の磁石孔と、前記一対の磁石孔の間に形成された中間孔と、を含む貫通孔の組が、周方向に、複数組、形成されており、前記低剛性部は、前記磁石孔と前記中間孔との間の微小間隙部であるブリッジ部であってもよい。
かかる構成とすることで、中間孔が形成されたロータにおいても、十分な軸力を確保しつつ、低剛性部にかかる応力を軽減できる。
また、前記ワッシャは、前記中間孔と同一位相において、前記回転中心から外周端までの距離が、最小となるように配されていてもよい。
これにより、ワッシャの外周端から低剛性部までの距離が大きくなりやすくなり、低剛性部への応力の集中をより確実に緩和できる。
また、前記ワッシャの外周形状は、角部が丸まった歯車形であってもよい。
ワッシャの外周形状が、尖った角部を有さないことにより、応力の一極集中を防止できる。
また、前記ワッシャの内周面および前記回転軸の外周面の一方には、他方に向かって突出するキー突起が形成されており、前記ワッシャの内周面および前記回転軸の外周面の前記他方には、前記キー突起を受け入れるキー溝が形成されていてもよい。
かかる構成とすることで、ワッシャのロータコアに対する位相が確実に規制される。
本明細書で開示するロータによれば、ワッシャの外周形状を、回転中心から外周端までの距離が、周期的に変動する凹凸形状にするとともに、ワッシャの外周端から低剛性部までの距離を、ワッシャの外周端から磁石孔までの距離よりも大きくしている。低剛性部への応力集中を緩和しつつ、ロータコアの広範囲に軸力を付加できる。そして、その結果、十分な軸力を確保しつつ、低剛性部にかかる応力を軽減できる。
以下、回転電機のロータ10の構成について図面を参照して説明する。図1は、ロータ10の概略縦断面図である。図2は、ロータ10のY方向視図である。なお、図2では、ナット20については、その外形のみを二点鎖線で図示している。また、図3は、図2のA部拡大図である。
このロータ10は、回転電機、例えば、駆動源の一つとして電動車両に搭載される三相同期型回転電機等に用いられる。ロータ10は、ロータコア12と当該ロータコア12に埋め込まれる永久磁石14と、ロータ10に固着される回転軸16と、ロータコア12に軸力を付与するワッシャ18およびナット20と、を備えている。
ロータコア12は、その中央に軸孔が形成された略環状体である。ロータコア12は、複数の電磁鋼板(例えばケイ素鋼板等)を軸方向に積層してなる。ロータコア12の外周端近傍には、複数の磁石孔22が、周方向に間隔をあけて並んでいる。各磁石孔22は、軸方向に貫通しており、その内部には、ロータ10の磁極を構成する永久磁石14が配される。
本例において、永久磁石14は、V字状配置となっている。すなわち、一つの磁極15は、径方向外側に向かって広がるV字状に配された一対の永久磁石14で構成される。図2の例では、ロータ10は、8つの磁極15を構成する16個の永久磁石14を有している。各永久磁石14は、その断面形状が扁平な略長方形であり、その短軸方向(略ロータ径方向)に磁化されている。永久磁石14のうち、S磁極を構成する永久磁石14は、S極が、N磁極を構成する永久磁石14は、N極が、径方向外側になるように配されている。
V字状配置の永久磁石14を受け入れるため、磁石孔22も、V字状配置となっている。すなわち、ロータコア12には、径方向外側に向かって広がるV字状に配される一対の磁石孔22が、複数対(図示例では8対)、周方向に均等配置されている。この磁石孔22は、永久磁石14よりも長軸寸法が大きい略長方形となっている。したがって、永久磁石14を磁石孔22に挿入した際、当該永久磁石14の長軸方向両側には、空隙が形成される。この空隙は、一般に、フラックスバリアと呼ばれ、磁気的抵抗部として機能することで、ロータコアの磁気的特性を調整する。
また、同一磁極に属する二つの磁石孔22は、周方向に近接しており、両磁石孔22の間には、微小間隙部であるブリッジ部24が形成される。このブリッジ部24は、ロータコア12の中でも局所的に剛性が低下した低剛性部といえる。こうしたブリッジ部24(低剛性部)では、応力が集中しやすく、劣化や破損が生じやすい。そこで、ブリッジ部24への応力集中を緩和するために、ワッシャ18を特殊形状としているが、これについては、後述する。
なお、本例では、ブリッジ部24を、ロータコア12の一部としているが、当該ブリッジ部24は、ロータコア12を構成する積層鋼板とは、別部材で構成されてもよい。例えば、図4に示すように、一本に繋がった略V字の貫通孔23を形成するとともに、当該V字の谷部分に、図4において二点鎖線で示すようなブリッジ部材25を挿入するようにしてもよい。この場合、ブリッジ部材25の材質は、特に限定されないが、非磁性体であることが望ましい。
ロータコア12の軸孔には、回転軸16が挿通され、固着されている。回転軸16は、図示しない軸受を介して回転自在に軸支されており、ロータコア12と一体的に回転する。この回転軸16の途中には、径方向外側に張り出したフランジ26が形成されている。回転軸16に挿入されたロータコア12は、このフランジ26に押し当てられる。
また、回転軸16のうち、ロータコア12を挟んで、フランジ26の反対側付近の外周面には、雄ネジが形成されている。図1における太線は、雄ネジの形成箇所を示している。この雄ネジには、後述するように、ナット20が螺合される。なお、図面では、回転軸16を、中空の円筒状として図示しているが、回転軸16は、ロータコア12と同心に配され、断面円形の外周面を有するのであれば、その構成は、特に限定されない。したがって、回転軸16は、中実の丸棒状でもよいし、内部に冷媒流路が形成されてもよい。
ワッシャ18およびナット20は、フランジ26と協働して、ロータコア12の軸方向の動きを規制するとともに、ロータコア12に軸方向の圧縮力を付与する。ワッシャ18は、フランジ26と反対側の端部から、回転軸16に挿入され、ロータコア12の軸方向端面に当接する。ナット20は、同じく、フランジ26の反対側の端部から回転軸16に挿入され、回転軸16に形成された雄ネジに螺合される。そして、このナット20で締め付けることで、ロータコア12が、ワッシャ18とフランジ26で挟持され、軸方向の動きが規制されるとともに、軸方向の圧縮力(軸力)を受ける。
ここで、本明細書で開示するロータ10では、このロータコア12に付与する軸力を十分に確保しつつも、ロータコア12の局所的な劣化等を防止するために、ワッシャ18を特殊な形状としている。これについて、従来技術と比較して説明する。図9は、従来のロータ10の一例を示す図である。
ロータコア12に付与される軸力が低下すると、当然ながら、ロータコア12の固定力の低下を招く。また、軸力が低下すると、ロータコア12を構成する電磁鋼板間の隙間が大きくなり、当該隙間からの冷媒液の漏出等も招く。そのため、ロータコア12には、十分な軸力が付与されることが望まれる。
ロータコア12に付与する軸力を向上するためには、当然ながら、ナット20の締め付け力を増加させればよい。しかし、従来の構成では、ワッシャ18をナット20とほぼ同径の円環状としており、ワッシャ18は、ロータコア12の径方向内側1/3程度の面積でしか接触していなかった。そのため、ナット20の締め付け力を増加させた場合、当該径方向内側1/3程度の面積部分にのみ、大きな締め付け力(軸力)がかかることとなり、ロータコア12全体に十分な軸力を付与することは難しかった。
そこで、当然ながら、ワッシャ18の面積を増大させることも考えられる。ただし、磁気短絡防止や、永久磁石14の放熱等の観点から、ワッシャ18は、永久磁石14を覆わないことが望ましい。そこで、例えば、円環状のワッシャ18の外径を、図9において一点鎖線で示すように、磁石孔22の内周端近傍まで拡大させることも考えられる。かかる構成とすれば、ナット20の締め付け力を、広い面積に分散して伝達できるため、ロータコア12全体に、十分な軸力を付与することが可能となる。
しかし、円環状のワッシャ18の外径を単純に拡大した場合、局所的に剛性が低下したブリッジ部24の近傍に、力が付加されることになる。この場合、締め付け力の付与によりロータコア12内に生じる応力が、この剛性が低下したブリッジ部24に集中しやすくなる。その結果、ブリッジ部24の劣化や、破損といった別の問題を招く。
そこで、本明細書で開示するロータ10では、ワッシャ18を特殊な形状としている。すなわち、本例のワッシャ18の外周形状は、図2、図3に示すように、磁石孔22より径方向内側に位置するとともに、回転中心Oから外周端までの距離が、周方向に、周期的に変動する凹凸形状となっている。また、ワッシャ18は、図3に示すように、当該ワッシャ18の外周端からブリッジ部24までの距離D1が、当該ワッシャ18の外周端から磁石孔22までの距離D2以上となるような形状となっている。なお、ここで、距離D1、距離D2とは、いずれも、最短距離を意味する。例えば、「ワッシャ18の外周端から磁石孔22までの距離D2」とは、ワッシャ18の外周端と磁石孔22との間の間隙の幅が最も小さくなった箇所における当該間隙の幅を意味する。同様に、「ワッシャ18の外周端からブリッジ部24までの距離D1」とは、ワッシャ18の外周端と、ブリッジ部24との間の間隙の幅が最も小さくなった箇所における当該間隙の幅を意味する。
ワッシャ18の形状について、より具体的に説明すると、ワッシャ18の外周形状は、径方向外側に凸の円弧状である凸部18aと、径方向内側に凹の円弧状である凹部18bとが、周方向に交互に並ぶような、略花形、あるいは、角部が丸まった略歯車のような形状となっている。このワッシャ18の外周形状の凹凸の変動周期は、磁極15の配設ピッチ、または、低剛性部であるブリッジ部24の配設ピッチと同じである。本例では、磁極15およびブリッジ部24は、8つあり、その配設ピッチは、8/360=45度であるため、ワッシャ18の外周形状の凹凸は、45度の周期で変動している。
また、ワッシャ18は、回転中心からワッシャ18の外周端までの距離が最小となる凹部18bの中心点(以下「凹点19」という)が、ブリッジ部24と同一位相になるように、配されている。換言すれば、ワッシャ18は、凹点19と、ブリッジ部24とが、径方向に一直線に並ぶように配されている。
したがって、ワッシャ18の外周形状は、略V字状に配された磁石孔22の内周端を径方向内側にオフセットした線を繋げた形状に類似している。ただし、ワッシャ18は、V字に相当する箇所の広がり角度α1が、磁石孔22の当該箇所における広がり角度α2よりも小さく、磁石孔22よりも径方向内側に深いV字を形成している。その結果、ワッシャ18の外周端からブリッジ部24までの距離D1が、ワッシャ18の外周端から磁石孔22までの距離D2以上となる。
このように、ワッシャ18の外周端からブリッジ部24までの距離が大きくなることで、局所的に剛性が低下しているブリッジ部24近傍に力が付与されにくくなり、ブリッジ部24への応力の集中を緩和できる。そして、これにより、ブリッジ部24の劣化や損傷を効果的に抑制できる。一方で、ワッシャ18のうち、ブリッジ部24と位相がずれた箇所については、従来のロータ10よりも径方向外側に延びているため、ロータコア12の広範囲に軸力を付与できる。結果として、本例のワッシャ18によれば、ロータコア12に付与する軸力を十分に確保しつつも、ロータコア12の局所的な劣化等を防止することができる。
なお、ブリッジ部24への応力集中を緩和するためには、ワッシャ18の凹点19とブリッジ部24との位相を揃える必要がある。そのため、本明細書で開示するロータ10では、ワッシャ18とロータコア12の位相を揃えるために、ワッシャ18と回転軸16とをキー係合させている。すなわち、ワッシャ18の内周面に、径方向内側に突出するキー突起30を設けるとともに、回転軸16の外周面に、当該キー突起30を受け入れるキー溝32を設けている。そして、キー突起30が、キー溝32に嵌るようにワッシャ18を回転軸16に組み込むことで、ワッシャ18のロータコア12に対する位相が良好に規制される。
なお、本例では、ワッシャ18にキー突起30を、回転軸16にキー溝32を設けているが、これらの組み合わせは逆でもよい。すなわち、回転軸16にキー突起を、ワッシャ18にキー溝を設けてもよい。また、キー溝32、キー突起30の個数は、適宜、変更されてもよい。
次に、ロータ10の他の例について説明する。図5は、他のロータ10の一例を示す図である。また、図6は、図5のB部拡大図である。このロータ10は、一つの磁極15が、逆三角形状に配された三つの永久磁石14a,14b(以下、二種類の永久磁石14a,14bを区別しないときは、添え字を省略する。後述の磁石孔についても同じ)で構成されている。すなわち、一つの磁極15は、径方向外側に向かって広がるV字状に配された一対の永久磁石14aと、当該一対の永久磁石14の外周端の間に配される一つの永久磁石14bと、で構成される。
ロータコア12には、この永久磁石14を受け入れるための磁石孔22が形成されている。一対の磁石孔22aは、径方向外側に向かって広がるV字状に配されている。ただし、この二つの磁石孔22aは、周方向に近接しておらず、二つの磁石孔22aそれぞれの内周側端部の間には、中間孔28が形成されている。中間孔28は、ロータコア12を軸方向に貫通する貫通孔である。この中間孔28は、磁気抵抗部として機能しており、当該中間孔28を設けることで、磁束の流れが整えられる。ここで、図6から明らかな通り、中間孔28と磁石孔22aとの間には、局所的に剛性が低下した微小間隙部であるブリッジ部24が形成されている。
また、二つの磁石孔22aそれぞれの外周端の間には、周方向に延びる磁石孔22bが形成されている。この磁石孔22bの周方向両側には、一対の空隙孔29が形成されている。空隙孔29は、中間孔28と同様に、ロータコア12を軸方向に貫通する貫通孔であり、磁気抵抗部として機能する貫通孔である。この空隙孔29も、磁束の流れを整えるために設けられている。
図5、図6に示す例においても、ロータコア12の軸方向端面には、ワッシャ18が配され、当該ワッシャ18は、ナット20(図5、図6では図示せず)の締め付け力により、ロータコア12に押し当てられている。このワッシャ18は、図2に示した例と同様に、磁石孔22より径方向内側に位置するとともに、回転中心Oから外周端までの距離が、周方向に、周期的に変動する凹凸形状となっている。また、ワッシャ18は、図6に示すように、当該ワッシャ18の外周端からブリッジ部24までの距離D1が、当該ワッシャ18の外周端から磁石孔22までの距離D2以上となるような形状となっている。
具体的に説明すると、ワッシャ18の外周形状は、径方向外側に凸の円弧状である凸部18aと、径方向内側に凹の円弧状である凹部18bとが、周方向に交互に並ぶような、略花形、あるいは、角部が丸まった略歯車のような形状となっている。このワッシャ18の外周形状の凹凸の変動周期は、磁極15の配設ピッチと同じである。
また、ワッシャ18は、回転中心からワッシャ18の外周端までの距離が最小となる凹点19が、中間孔28の周方向中心と同一位相になるように、配されている。換言すれば、ワッシャ18は、凹点19と、中間孔28の周方向中心とが、径方向に一直線に並ぶように配されている。かかる構成とすることで、ブリッジ部24への応力の集中を緩和できる一方で、ロータコア12の広範囲に軸力を付与できる。
なお、図5、図6の例では、凹部18bを、径方向内側に凹の略円弧状としているが、当該凹部18bは、図7に示すように、略周方向に延びる直線状としてもよい。かかる構成とすれば、図5、図6の場合に比べて、ワッシャ18の外周端からブリッジ部24までの距離D1を大きくでき、ひいては、ブリッジ部24への応力集中をより緩和できる。
次に、ロータ10の他の例について説明する。図8は、他のロータ10の一例を示す図である。このロータ10は、一つの磁極15が、略周方向に長尺な、一つの永久磁石14で構成されている。図8の例では、ロータ10は、16個の磁極15、16個の永久磁石14を有している。
ロータコア12には、この永久磁石14を受け入れるための磁石孔22が形成されている。磁石孔22は、略周方向に長尺かつ扁平な略長方形であり、その長軸寸法は、永久磁石14の長軸寸法よりも大きくなっている。そして、周方向に隣接する二つの磁石孔22の間には、幅細の間隙部36が形成されている。この間隙部36は、上述したブリッジ部24と同様に、局所的に剛性が低下した低剛性部と言える。
かかるロータコア12に密着するワッシャ18は、図2に示すワッシャ18と同様に、磁石孔22より径方向内側に位置するとともに、回転中心Oから外周端までの距離が、周方向に、周期的に変動する凹凸形状となっている。また、ワッシャ18は、図8に示すように、その外周端から間隙部36までの距離D1が、その外周端から磁石孔22までの距離D2以上となるような形状となっている。
具体的に説明すると、ワッシャ18の外周形状は、径方向外側に凸の円弧状である凸部18aと、径方向内側に凹の円弧状である凹部18bとが、周方向に交互に並ぶような、略花形、あるいは、角部が丸まった星型のような形状となっている。このワッシャ18の外周形状の凹凸の変動周期は、磁極15の配設ピッチと同じである。
また、ワッシャ18は、回転中心Oからワッシャ18の外周端までの距離が最小となる凹部18bの周方向中心点(以下「凹点19」という)が、間隙部36と同一位相になるように、配されている。換言すれば、ワッシャ18は、凹点19と、間隙部36とが、径方向に一直線に並ぶように配されている。かかる構成とすることで、間隙部36への応力の集中を緩和できる一方で、ロータコア12の広範囲に軸力を付与できる。
以上の説明から明らかな通り、本明細書で開示するロータ10によれば、十分な軸力を確保しつつ、低剛性部にかかる応力を軽減できる。なお、本明細書で開示した構成は、一例であり、ワッシャの外周端から低剛性部までの距離が、ワッシャの外周端から磁石孔までの距離以上であれば、その他の構成は、適宜、変更されてもよい。例えば、上述の説明では、ワッシャ18は、全て、角部が丸まった略歯車形状となっているが、角部が尖った略歯車形状としてもよい。ただし、応力の一極集中を避けるためには、ワッシャ18の外周形状は、極力、尖った角のない形状であることが望ましい。