JP2018155149A - 内燃機関 - Google Patents

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Abstract

【課題】主燃焼室内に設けられた副室内で燃料噴射を行う内燃機関において、主燃焼室が過度にリーンな状態となることを防止する。【解決手段】内燃機関は、主燃焼室と、吸気開口部において主燃焼室につながる吸気ポートと、排気開口部において主燃焼室につながる排気ポートと、吸気開口部と排気開口部との間のシリンダヘッド上に設けられ、複数の連通孔を通して主燃焼室とつながる副室と、副室内に燃料を噴射する燃料噴射弁と、副室内で点火を行う点火プラグと、を備える。副室の位置において、タンブル流は、副室から見て第1側から第2側に向けて流れる。複数の連通孔は、副室の側壁のうち第1側に形成された第1連通孔と、第1連通孔とは異なる第2連通孔と、を含む。第1連通孔の径は、第2連通孔の径よりも大きい。【選択図】図6

Description

本発明は、主燃焼室内に設けられた副室内で燃料噴射を行う内燃機関に関する。
特許文献1は、主燃焼室と主燃焼室内に設けられた副室とを有する内燃機関を開示している。副室は、連通孔を通して主燃焼室につながっている。副室には燃料噴射弁と点火プラグが設けられており、副室において燃料噴射及び火花点火が行われる。副室内で発生した火炎は、連通孔を通して主燃焼室に噴き出す。
特許文献2も、主燃焼室と主燃焼室内に設けられた副室とを有する内燃機関を開示している。当該内燃機関では、燃料噴射弁は、吸気ポートあるいは主燃焼室に設けられる。圧縮工程において、主燃焼室内の混合気の一部が、連通孔を通して副室内に入る。副室内には点火プラグが設けられており、副室内で火花点火を行うことにより燃焼が開始する。副室内で発生した火炎は、連通孔を通して主燃焼室に噴き出す。
特開2015−21391号公報 特開2009−215973号公報
上記の特許文献1に開示された内燃機関では、燃料噴射弁及び点火プラグは副室内に設けられ、副室内で燃料噴射及び火花点火が行われる。そして、副室内で発生した火炎は主燃焼室に噴き出し、燃え拡がる。しかしながら、この時に主燃焼室が過度にリーンな状態であると、主燃焼室において火炎がうまく燃え拡がらず、燃焼安定性が低下する。
本発明の1つの目的は、主燃焼室内に設けられた副室内で燃料噴射を行う内燃機関において、主燃焼室が過度にリーンな状態となることを防止することができる技術を提供することにある。
第1の発明は、内燃機関を提供する。
その内燃機関は、
シリンダヘッドと前記シリンダヘッドに対向するピストンとの間に挟まれた主燃焼室と、
前記シリンダヘッド内に形成され、吸気開口部において前記主燃焼室につながる吸気ポートと、
前記シリンダヘッド内に形成され、排気開口部において前記主燃焼室につながる排気ポートと、
前記吸気開口部と前記排気開口部との間の前記シリンダヘッド上に設けられ、複数の連通孔を通して前記主燃焼室とつながる副室と、
前記副室内に燃料を噴射する燃料噴射弁と、
前記副室内で点火を行う点火プラグと
を備える。
前記副室の位置において、タンブル流は、前記副室から見て第1側から第2側に向けて流れる。
前記複数の連通孔は、
前記副室の側壁のうち前記第1側に形成された第1連通孔と、
前記第1連通孔とは異なる第2連通孔と
を含む。
前記第1連通孔の径は、前記第2連通孔の径よりも大きい。
第2の発明は、第1の発明において、更に次の特徴を有する。
前記第2連通孔は、前記副室の前記側壁のうち前記第2側に形成されている。
第3の発明は、第2の発明において、更に次の特徴を有する。
前記第1連通孔と前記第2連通孔は互いに対向している。
第4の発明は、第2又は第3の発明において、更に次の特徴を有する。
前記燃料噴射弁は、前記第1側の方向よりも前記第2側の方向に優先的に燃料を噴射する。
第5の発明は、第1から第4の発明のいずれかにおいて、更に次の特徴を有する。
前記吸気ポート及び前記主燃焼室には燃料噴射弁は設けられていない。
第6の発明は、第1から第5の発明のいずれかにおいて、更に次の特徴を有する。
吸気行程において、前記燃料噴射弁は、第1噴射量の燃料を前記副室に噴射する。
前記吸気行程の後、点火タイミングよりも前に、前記燃料噴射弁は、前記第1噴射量よりも少ない第2噴射量の燃料を前記副室に噴射する。
第7の発明は、第1から第6の発明のいずれかにおいて、更に次の特徴を有する。
前記複数の連通孔は、更に第3連通孔を含む。
前記第3連通孔は、前記燃料噴射弁から噴射された前記燃料が前記第3連通孔を通過して前記主燃焼室に直接入射するように設けられている。
第8の発明は、内燃機関を提供する。
その内燃機関は、
シリンダヘッドと前記シリンダヘッドに対向するピストンとの間に挟まれた主燃焼室と、
前記シリンダヘッド内に形成され、吸気開口部において前記主燃焼室につながる吸気ポートと、
前記シリンダヘッド内に形成され、排気開口部において前記主燃焼室につながる排気ポートと、
前記吸気開口部と前記排気開口部との間の前記シリンダヘッド上に設けられ、複数の連通孔を通して前記主燃焼室とつながる副室と、
前記副室内に燃料を噴射する燃料噴射弁と、
前記副室内で点火を行う点火プラグと
を備える。
前記複数の連通孔は、
前記副室の側壁のうち前記吸気開口部の側に形成された第1連通孔と、
前記第1連通孔とは異なる第2連通孔と
を含む。
前記第1連通孔の径は、前記第2連通孔の径よりも大きい。
第1の発明によれば、燃料噴射弁は副室内に設けられ、副室内で燃料噴射が行われる。副室の位置において、タンブル流は、副室から見て第1側から第2側に向けて流れる。そして、副室の側壁のうち第1側には、他の連通孔よりも大きい第1連通孔が形成されている。第1側に比較的大きい第1連通孔が形成されているため、タンブル流を効率的に副室内に取り込むことができる。第1連通孔を通してタンブル流が副室内に入ると、副室内の混合気は別の連通孔を通して主燃焼室に押し出される。つまり、タンブル流を利用することによって、副室内の混合気を主燃焼室に効率的に拡散させることが可能となる。これにより、主燃焼室が過度にリーンな状態となることが防止される。その結果、燃焼時に副室から主燃焼室に噴き出す火炎が、主燃焼室内において良好に燃え拡がる。すなわち、優れた燃焼安定性が得られる。
第2の発明によれば、第1連通孔から副室内に導入されたタンブル流は、第2側の第2連通孔を通って流れ出しやすくなる。すなわち、副室内部で、タンブル流の方向に沿うような流動がスムーズに形成されやすくなる。副室内でタンブル流の方向に沿うような流動が発生すると、副室内の混合気は、更に効率的に主燃焼室に拡散しやすくなる。
第3の発明によれば、第1側の第1連通孔と第2側の第2連通孔が互いに対向している。この場合、副室内の混合気を最も効率的に主燃焼室に拡散させることが可能となる。
第4の発明によれば、第1側から第2側の方に流れるタンブル流を考慮することによって、燃料噴射を効率的に実施することが可能となる。
第5の発明によれば、吸気ポート及び主燃焼室には燃料噴射弁は設けられていない。副室内の混合気を主燃焼室に効率的に拡散させることができるため、主燃焼室あるいは吸気ポートに燃料噴射弁を別途設置する必要がないのである。複数の燃料噴射弁のそれぞれを個別に制御する必要がないため、燃料噴射制御がシンプルになる。また、副室に1個の燃料噴射弁を設けるだけで十分なため、製造コストが削減される。
第6の発明によれば、点火タイミングの前に副室内にリッチな混合気を形成することが可能となる。これにより、副室における着火性が向上し、初期火炎を良好に発生させることが可能となる。
第7の発明によれば、燃料噴射弁から噴射された燃料が第3連通孔を通過して主燃焼室に直接入射する。第1連通孔と第3連通孔の両方を用いることによって、混合気及び燃料を更に効率的に主燃焼室に導くことが可能となる。
第8の発明によれば、燃料噴射弁は副室内に設けられ、副室内で燃料噴射が行われる。その副室の側壁のうち吸気側には、他の連通孔よりも大きい第1連通孔が形成されている。一般的に、副室近傍のタンブル流の方向は吸気側から排気側に向かう方向である。吸気側に比較的大きい第1連通孔が形成されているため、タンブル流を効率的に副室内に取り込むことができる。第1連通孔を通してタンブル流が副室内に入ると、副室内の混合気は別の連通孔を通して主燃焼室に押し出される。つまり、タンブル流を利用することによって、副室内の混合気を主燃焼室に効率的に拡散させることが可能となる。これにより、主燃焼室が過度にリーンな状態となることが防止される。その結果、燃焼時に副室から主燃焼室に噴き出す火炎が、主燃焼室内において良好に燃え拡がる。すなわち、優れた燃焼安定性が得られる。
本発明の第1の実施の形態に係る内燃機関の構成例を概略的に示す断面図である。 本発明の第1の実施の形態に係る内燃機関の構成例を概略的に示す平面図である。 本発明の第1の実施の形態に係る内燃機関における燃焼を説明するための概念図である。 本発明の第1の実施の形態に係る内燃機関の主燃焼室内のタンブル流を説明するための概念図である。 本発明の第1の実施の形態に係る内燃機関の副室の構成例を示す斜視図である。 本発明の第1の実施の形態に係る内燃機関の副室における燃料噴射及び燃料拡散を説明するための断面図である。 本発明の第1の実施の形態に係る内燃機関の副室における燃料噴射及び燃料拡散の他の例を説明するための断面図である。 本発明の第1の実施の形態に係る内燃機関における燃料噴射制御に関連する構成を示すブロック図である。 本発明の第1の実施の形態に係る内燃機関における燃料噴射制御の一例を示すタイミングチャートである。 本発明の第2の実施の形態に係る内燃機関の副室の構成例を示す斜視図である。 本発明の第2の実施の形態に係る内燃機関の副室における燃料噴射を説明するための概念図である。 本発明の第2の実施の形態に係る内燃機関の副室における燃料噴射を説明するための概念図である。 本発明の第3の実施の形態に係る内燃機関の副室における燃料噴射を説明するための概念図である。 本発明の第3の実施の形態に係る内燃機関の副室における燃料噴射を説明するための概念図である。
添付図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
1.第1の実施の形態
1−1.基本構成
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る内燃機関1の構成例を概略的に示す断面図である。内燃機関1は、主な構成として、主燃焼室10、吸気ポート30、排気ポート40、副室50、燃料噴射弁60、及び点火プラグ70を備えている。
主燃焼室10は、シリンダブロック20、ピストン22、及びシリンダヘッド23によって囲まれた空間である。より詳細には、シリンダブロック20は、主燃焼室10の側壁を形成する円筒状のシリンダライナ21(シリンダボア)を備えている。図中、円筒状のシリンダライナ21の中心軸は、符号“C”で示されている。ピストン22は、シリンダライナ21の軸方向に沿って往復移動可能なように配置されている。このピストン22の上面が、主燃焼室10の底面を形成している。シリンダヘッド23は、ピストン22と対向するようにシリンダブロック20上に設置されている。シリンダヘッド23の底面であるヘッド底面24が、主燃焼室10の上面を形成している。このように、ピストン22とシリンダヘッド23(ヘッド底面24)とは対向しており、主燃焼室10は、それらピストン22とシリンダヘッド23との間に挟まれている。
ここで、以下の説明において用いる座標系を定義する。「Z方向」は、ピストン22が移動する方向であり、中心軸Cと平行である。「XY平面」は、Z方向と直交する平面である。
吸気ポート30は、主燃焼室10に吸気ガスを供給する。より詳細には、吸気ポート30は、シリンダヘッド23内に形成されており、且つ、主燃焼室10につながっている。吸気ポート30の主燃焼室10に対する開口部は、吸気開口部31である。つまり、吸気ポート30は、吸気開口部31において主燃焼室10につながっている。吸気開口部31には、吸気バルブ32が開閉可能に設けられている。
排気ポート40は、主燃焼室10から排気ガスを排出する。より詳細には、排気ポート40は、シリンダヘッド23内に形成されており、且つ、主燃焼室10につながっている。排気ポート40の主燃焼室10に対する開口部は、排気開口部41である。つまり、排気ポート40は、排気開口部41において主燃焼室10につながっている。排気開口部41には、排気バルブ42が開閉可能に設けられている。
副室50は、主燃焼室10内に配置されている。より詳細には、図1に示されるように、副室50は、吸気開口部31と排気開口部41との間のシリンダヘッド23(ヘッド底面24)上に設けられている。副室50は、シリンダヘッド23から主燃焼室10の方に向けて突出しているが、上死点におけるピストン22とは干渉しない。更に、副室50は、主燃焼室10とつながる複数の連通孔51を有している。つまり、副室50は、複数の連通孔51を通して主燃焼室10とつながっている。
燃料噴射弁60は、副室50内に燃料を噴射するように設けられている。より詳細には、燃料噴射弁60は、副室50の上部(シリンダヘッド23側)に取り付けられている。図1に示される例では、燃料噴射弁60は、中心軸C近傍においてシリンダヘッド23から副室50に突出するように設けられている。
点火プラグ70は、副室50内で火花点火を行うことができるように設けられている。すなわち、本実施の形態に係る内燃機関1は、副室50内で火花点火を行い燃焼を開始する方式を採用している。
図2は、Z方向から見たときの、つまり、XY面における、吸気開口部31、排気開口部41、及び副室50の配置例を示している。
図2に示される配置例では、単一の主燃焼室10に対して、複数の吸気開口部31−1、31−2と複数の排気開口部41−1、41−2が設けられている。それら吸気開口部31−1、31−2及び排気開口部41−1、41−2は、主燃焼室10の中心軸Cの周りを囲むように配置されている。そして、副室50は、主燃焼室10の中心軸Cの近傍に配置されている。つまり、副室50は、吸気開口部31−1、31−2及び排気開口部41−1、41−2によって囲まれている。
尚、既出の図1は、図2中の線A−Aに沿った断面図に相当する。また、図2中の線B−Bは、吸気側と排気側とを区分する線である。線B−Bは、Y方向と平行であり、且つ、副室50の位置を通っている。この線B−B(副室50)から見て吸気開口部31−1、31−2が存在する側が、「吸気側」である。一方、線B−B(副室50)から見て排気開口部41−1、41−2が存在する側が、「排気側」である。
以上に説明された本実施の形態に係る内燃機関1における基本的な燃焼プロセスは、次の通りである。
吸気・圧縮行程において、燃料噴射弁60から副室50内に燃料が噴射され、副室50内で混合気が形成される。混合気の一部は、副室50の連通孔51を通して、主燃焼室10内に供給される。そして、所定の点火タイミングにおいて、点火プラグ70が副室50内で火花点火を行う。これにより、副室50内で燃焼が開始し、初期火炎が発生する。そして、副室50内で発生した火炎は、図3に示されるように、連通孔51を通して主燃焼室10に勢いよく噴き出す。副室50から連通孔51を通して主燃焼室10に噴き出す火炎は、ジェット80とも呼ばれる。高エネルギーのジェット80は主燃焼室10内で燃え拡がり、それにより主燃焼室10内で燃焼が進行する。
1−2.副室の構成
上述の通り、本実施の形態によれば、燃料噴射弁60及び点火プラグ70は副室50内に設けられ、副室50内で燃料噴射及び火花点火が行われる。そして、副室50内で発生した火炎はジェット80として主燃焼室10に噴き出し、燃え拡がる。このように副室50及びジェット80を利用することによって、全体としてリーンな燃焼を実現することが可能となる。
しかしながら、主燃焼室10が過度にリーンな状態であると、ジェット80がうまく燃え拡がらず、燃焼安定性が低下する。ジェット80を良好に成長させるためには、副室50だけでなく主燃焼室10内においても、ある程度の量の混合気を形成しておくことが必要である。ここで、副室50内の燃料噴射弁60とは別に、主燃焼室10あるいは吸気ポート30に燃料を噴射するための別の燃料噴射弁を設けることも考えられる。しかしながら、その場合、複数の燃料噴射弁のそれぞれを制御する必要があり、燃料噴射制御が複雑となる。更に、製造コストも増大する。そこで、本実施の形態では、副室50内の燃料噴射弁60だけを用い、燃料噴射弁60から副室50に噴射された燃料を主燃焼室10の方にもうまく分配することを考える。
特に、本実施の形態では、副室50内で形成される混合気を主燃焼室10の方に効率的に移動(拡散)させることを考える。そのために、本実施の形態では、副室50近傍の「タンブル流」が利用される。
図4は、主燃焼室10内のタンブル流FTを説明するための概念図である。図4のフォーマットは既出の図1のフォーマットと同じであるが、吸気バルブ32及び排気バルブ42の図示は省略されている。吸気工程において、吸気ポート30から主燃焼室10に吸気ガスが吸い込まれる。その結果、吸気開口部31付近には吸気流FIが発生し、また、主燃焼室10内にはタンブル流FTが発生する。図4に示される例では、主燃焼室10内の副室50近傍のタンブル流FTの方向は、吸気側から排気側に向かう方向である。
本実施の形態によれば、タンブル流FTを副室50内に取り込むことによって、副室50内の混合気を効率的に主燃焼室10の方に拡散させる。図4に示される例では、副室50近傍のタンブル流FTの方向は、吸気側から排気側に向かう方向である。そのようなタンブル流FTを副室50内に取り込むためには、副室50の吸気側に連通孔51が存在することが重要である。タンブル流FTを取り込むための吸気側の連通孔51は、以下「第1連通孔51i」と呼ばれる。
図5は、本実施の形態に係る副室50の構成例を示す斜視図である。副室50の側壁50sは、Z方向と平行であり、XY平面と直交している。この側壁50sに、複数の連通孔51が形成されている。複数の連通孔51は、上述の第1連通孔51iを含んでいる。吸気側から排気側に向けて流れるタンブル流FTを副室50内に取り込むために、第1連通孔51iは、副室50の側壁50sのうち吸気側に形成されている。
更に、図5に示されるように、第1連通孔51iは、他の連通孔51(第2連通孔)よりも大きい。その理由は、次の通りである。副室50内の混合気を効率的に主燃焼室10に送り出すためには、なるべく多くのタンブル流FTを副室50内に取り込むことが好適である。この観点から、第1連通孔51iは比較的大きく形成される。一方、火花点火後のジェット80の噴き出しの観点から言えば、連通孔51の径(サイズ)は小さい方が好ましい。連通孔51の径が大きくなるにつれ、その連通孔51を通して噴き出すジェット80の勢いが弱くなるからである。従って、本実施の形態によれば、第1連通孔51iは、その径(サイズ)が他の連通孔51の径よりも大きくなるように形成される。これにより、ジェット80の勢いを確保しつつ、タンブル流FTを効率的に副室50に取り込むことが可能となる。
図6は、本実施の形態に係る副室50における燃料噴射及び燃料拡散を説明するための断面図である。図6には、図5中の線D−Dに沿った副室50の断面構造、すなわち、第1連通孔51iを通る断面構造が概略的に示されている。主燃焼室10内のタンブル流FTは、第1連通孔51iを通して副室50内に導かれる。タンブル流FTが副室50内に入ると、その分だけ、副室50内のガスが別の連通孔51を通して主燃焼室10に押し出される。すなわち、副室50内で流動が発生する。このような状況において、燃料噴射弁60は副室50内に燃料を噴射する。燃料噴射弁60から噴射される燃料は、典型的には噴霧状であり、図中の符号“90”で表されている。噴霧燃料90と空気の混合気は、副室50内の流動に乗って、効率的に主燃焼室10に移動(拡散)する。
図5及び図6に示される例では、第1連通孔51i以外の連通孔51は、排気側連通孔51eも含んでいる。排気側連通孔51eは、副室50の側壁50sのうち排気側に形成されている。このような排気側連通孔51eが存在する場合、吸気側の第1連通孔51iから副室50内に導入されたタンブル流FTは、排気側連通孔51eを通って流れ出しやすくなる。すなわち、副室50内部で、タンブル流FTの方向に沿うような流動がスムーズに形成されやすくなる。副室50内でタンブル流FTの方向に沿うような流動が発生すると、副室50内の混合気は、更に効率的に主燃焼室10に移動(拡散)しやすくなり、好適である。特に、図5及び図6に示されるように第1連通孔51iと排気側連通孔51eが互いに対向している場合、副室50内の混合気を最も効率的に主燃焼室10に移動させることができる。
但し、排気側連通孔51eは必須ではない。例えば、図7に示されるように、第1連通孔51iと対向する位置に排気側連通孔51eが存在しなくてもよい。その場合であっても、第1連通孔51iを通してタンブル流FTが副室50内に入ると、副室50内の混合気は別の連通孔51を通して主燃焼室10に押し出される。すなわち、タンブル流FTを利用して副室50内の混合気を主燃焼室10に効率的に拡散させるという作用、効果は得られる。
また、副室50の位置におけるタンブル流FTの方向は、必ずしも図4の例で示された方向でなくてもよい。例えば、副室50の位置において、タンブル流FTは、排気側から吸気側に向けて流れてもよい。一般化すれば、副室50の位置において、タンブル流FTは、副室50から見て第1側から第2側に向けて流れる。第1連通孔51iは、副室50の側壁50sのうち第1側に形成されていればよい。
1−3.燃料噴射制御の例
次に、本実施の形態に係る内燃機関1における燃料噴射制御の一例を説明する。図8は、本実施の形態に係る燃料噴射制御に関連する構成を示すブロック図である。燃料噴射制御は、内燃機関1の制御装置100によって行われる。制御装置100は、プロセッサ、記憶装置、及び入出力インターフェースを備えるマイクロコンピュータであり、ECU(Electronic Control Unit)とも呼ばれる。この制御装置100が、燃料噴射弁60からの燃料噴射を制御する。
図9は、本実施の形態に係る燃料噴射制御の一例を示すタイミングチャートである。横軸はクランク角を表し、縦軸は燃料噴射弁60からの燃料噴射量を表している。本実施の形態によれば、制御装置100は、1エンジンサイクルにおいて燃料噴射を多段階で実施する。図9に示される例では、制御装置100は、1エンジンサイクルにおいて燃料噴射を2回実施する。
より詳細には、制御装置100は、吸気行程において、第1回目の燃料噴射を行う。第1回目の燃料噴射では、燃料噴射弁60は、第1噴射量の燃料を副室50に噴射する。これにより、噴霧燃料90と空気の混合気が副室50内で形成される。混合気の一部は、副室50の連通孔51を通して、主燃焼室10内に拡散する(図6、図7参照)。
その後、制御装置100は、圧縮行程において、第2回目の燃料噴射を行う。より詳細には、制御装置100は、点火タイミングSAの直前に第2回目の燃料噴射を行う。この第2回目の燃料噴射では、燃料噴射弁60は、第2噴射量の燃料を副室50に噴射する。第2噴射量は、微小量であり、第1回目の燃料噴射における第1噴射量よりも少ない。
尚、1エンジンサイクルにおける燃料噴射の回数は2回に限られない。1エンジンサイクルにおいて燃料噴射は3回以上実施されてもよい。いずれの場合であっても、制御装置100は、点火タイミングSAの直前に、最後の燃料噴射を行い、微少量の燃料を副室50に供給する。
このように、本実施の形態によれば、点火タイミングSAの直前に燃料噴射が行われ、微小量の燃料が副室50に供給される。その結果、副室50内にリッチな混合気が形成された状態で点火が行われることになる。すなわち、副室50における着火性が向上し、初期火炎を良好に発生させることが可能となる。このような燃料噴射制御が可能なのは、副室50内に燃料噴射弁60が設けられているからである。つまり、副室50内に燃料噴射弁60を設けることによって、副室50内にはリッチな混合気を形成し、全体としてはリーンな燃焼を実現することが可能となる。
1−4.効果
本実施の形態によれば、燃料噴射弁60は副室50内に設けられ、副室50内で燃料噴射が行われる。副室50の位置において、タンブル流FTは、副室50から見て第1側から第2側に向けて流れる。そして、副室50の側壁50sのうち第1側には、他の連通孔51よりも大きい第1連通孔51iが形成されている。第1側に比較的大きい第1連通孔51iが存在するため、タンブル流FTを効率的に副室50内に取り込むことができる。第1連通孔51iを通してタンブル流FTが副室50内に入ると、副室50内の混合気は別の連通孔51を通して主燃焼室10に押し出される。つまり、タンブル流FTを利用することによって、副室50内の混合気を主燃焼室10に効率的に拡散させることが可能となる。これにより、主燃焼室10が過度にリーンな状態となることが防止される。その結果、燃焼時に副室50から主燃焼室10に噴き出すジェット80が、主燃焼室10内において良好に燃え拡がる。すなわち、優れた燃焼安定性が得られる。
また、本実施の形態によれば、副室50内の混合気を主燃焼室10に効率的に拡散させることができるため、主燃焼室10あるいは吸気ポート30に燃料噴射弁を別途設置する必要はない。燃料噴射弁60を副室50だけに設け、その燃料噴射弁60から副室50に燃料を噴射するだけで、主燃焼室10にも混合気を良好に形成することが可能である。複数の燃料噴射弁のそれぞれを個別に制御する必要がないため、燃料噴射制御がシンプルになる。また、副室50に1個の燃料噴射弁60を設けるだけで十分なため、製造コストが削減される。
更に、本実施の形態によれば、副室50内に燃料噴射弁60が設けられているため、副室50内にリッチな混合気を形成することが可能となる。特に、点火タイミングSAの直前に燃料噴射を行うことによって、副室50内にリッチな混合気が形成された状態で点火を行うことが可能となる。これにより、副室50における着火性が向上し、初期火炎を良好に発生させることが可能となる。
2.第2の実施の形態
本発明の第2の実施の形態では、燃料噴射弁60から副室50に噴射された燃料が、少なくとも一部の連通孔51を通過して、主燃焼室10に直接入射する。燃料噴射弁60から噴射された燃料が直接通過する連通孔51は、以下「直噴連通孔51d」と呼ばれる。
図10は、本実施の形態に係る副室50の構成例を示す斜視図である。第1の実施の形態の場合と同様に、副室50の側壁50sには複数の連通孔51が形成されている。それら複数の連通孔51は、上述の第1連通孔51iに加えて、直噴連通孔51d(第3連通孔)も含んでいる。つまり、複数の連通孔51の一部が、直噴連通孔51dとして形成されている。図10に示される例では、直噴連通孔51dは、第1連通孔51iよりも下方(ピストン22側)に形成されている。
図11及び図12は、本実施の形態に係る副室50における燃料噴射を説明するための概念図である。より詳細には、図11は、燃料噴射弁60からの噴霧燃料90を、直噴連通孔51dの位置におけるXY断面と共に示している。図12は、図11中の線E−Eに沿った副室50の断面構造を概略的に示している。
図11及び図12に示されるように、直噴連通孔51dは、燃料噴射弁60からの噴霧燃料90が直噴連通孔51dを通過して主燃焼室10に直接入射するように設けられている。言い換えれば、直噴連通孔51dの位置は、噴霧燃料90の狙い方向と一致している。従って、副室50に噴射された噴霧燃料90を主燃焼室10に直接導くことが可能となる。典型的には、図9で示された第1回目の燃料噴射による噴霧燃料90が、直噴連通孔51dを通って主燃焼室10に直接供給される。
このように、本実施の形態によれば、複数の連通孔51の一部が、直噴連通孔51dとして形成される。直噴連通孔51dを設けることによって、燃料噴射弁60から副室50に噴射された燃料を主燃焼室10に直接供給することが可能となる。上記の第1連通孔51iと直噴連通孔51dの両方を用いることによって、混合気及び燃料を更に効率的に主燃焼室10に導くことが可能となる。
3.第3の実施の形態
図13及び図14は、本発明の第3の実施の形態に係る副室50における燃料噴射を説明するための概念図である。より詳細には、図13は、燃料噴射弁60からの噴霧燃料90を、直噴連通孔51dの位置におけるXY断面と共に示している。図14は、図13中の線F−Fに沿った副室50の断面構造を概略的に示している。
本実施の形態によれば、第1側から第2側の方に流れるタンブル流FTを考慮して、燃料噴射が効率的に行われる。より詳細には、燃料噴射弁60は、第1側の方向よりも第2側の方向に優先的に燃料を噴射する。言い換えれば、燃料噴射弁60は、第2側の方向に燃料噴射が集中するように、非対称的に燃料噴射を行う。
図14に示されるように、副室50内の第2側領域で形成された混合気は、第1側から第2側の方に流れるタンブル流FTによって、効率的に主燃焼室10に拡散する。また、第2側の直噴連通孔51dを直接通過した噴霧燃料90は、第1側から第2側の方に流れるタンブル流FTによって、効率的に主燃焼室10内に行き渡る。
このように、本実施の形態によれば、第1側から第2側の方に流れるタンブル流FTの方向を考慮することによって、燃料噴射を効率的に実施することが可能となる。
1 内燃機関
10 主燃焼室
20 シリンダブロック
21 シリンダライナ
22 ピストン
23 シリンダヘッド
24 ヘッド底面
30 吸気ポート
31、31−1、31−2 吸気開口部
32 吸気バルブ
40 排気ポート
41、41−1、41−2 排気開口部
42 排気バルブ
50 副室
50s 側壁
51 連通孔
51i 第1連通孔
51e 排気側連通孔
51d 直噴連通孔
60 燃料噴射弁
70 点火プラグ
80 ジェット
90 噴霧燃料
100 制御装置
FT タンブル流

Claims (8)

  1. シリンダヘッドと前記シリンダヘッドに対向するピストンとの間に挟まれた主燃焼室と、
    前記シリンダヘッド内に形成され、吸気開口部において前記主燃焼室につながる吸気ポートと、
    前記シリンダヘッド内に形成され、排気開口部において前記主燃焼室につながる排気ポートと、
    前記吸気開口部と前記排気開口部との間の前記シリンダヘッド上に設けられ、複数の連通孔を通して前記主燃焼室とつながる副室と、
    前記副室内に燃料を噴射する燃料噴射弁と、
    前記副室内で点火を行う点火プラグと
    を備え、
    前記副室の位置において、タンブル流は、前記副室から見て第1側から第2側に向けて流れ、
    前記複数の連通孔は、
    前記副室の側壁のうち前記第1側に形成された第1連通孔と、
    前記第1連通孔とは異なる第2連通孔と
    を含み、
    前記第1連通孔の径は、前記第2連通孔の径よりも大きい
    内燃機関。
  2. 請求項1に記載の内燃機関であって、
    前記第2連通孔は、前記副室の前記側壁のうち前記第2側に形成されている
    内燃機関。
  3. 請求項2に記載の内燃機関であって、
    前記第1連通孔と前記第2連通孔は互いに対向している
    内燃機関。
  4. 請求項2又は3に記載の内燃機関であって、
    前記燃料噴射弁は、前記第1側の方向よりも前記第2側の方向に優先的に燃料を噴射する
    内燃機関。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の内燃機関であって、
    前記吸気ポート及び前記主燃焼室には燃料噴射弁は設けられていない
    内燃機関。
  6. 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の内燃機関であって、
    吸気行程において、前記燃料噴射弁は、第1噴射量の燃料を前記副室に噴射し、
    前記吸気行程の後、点火タイミングよりも前に、前記燃料噴射弁は、前記第1噴射量よりも少ない第2噴射量の燃料を前記副室に噴射する
    内燃機関。
  7. 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の内燃機関であって、
    前記複数の連通孔は、更に第3連通孔を含み、
    前記第3連通孔は、前記燃料噴射弁から噴射された前記燃料が前記第3連通孔を通過して前記主燃焼室に直接入射するように設けられている
    内燃機関。
  8. シリンダヘッドと前記シリンダヘッドに対向するピストンとの間に挟まれた主燃焼室と、
    前記シリンダヘッド内に形成され、吸気開口部において前記主燃焼室につながる吸気ポートと、
    前記シリンダヘッド内に形成され、排気開口部において前記主燃焼室につながる排気ポートと、
    前記吸気開口部と前記排気開口部との間の前記シリンダヘッド上に設けられ、複数の連通孔を通して前記主燃焼室とつながる副室と、
    前記副室内に燃料を噴射する燃料噴射弁と、
    前記副室内で点火を行う点火プラグと
    を備え、
    前記複数の連通孔は、
    前記副室の側壁のうち前記吸気開口部の側に形成された第1連通孔と、
    前記第1連通孔とは異なる第2連通孔と
    を含み、
    前記第1連通孔の径は、前記第2連通孔の径よりも大きい
    内燃機関。
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