本発明の態様に係る湿式処理方法について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。なお、本発明の態様は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、多様な変更または改良を加えたものも含まれる。つまり、以下に記載した構成要素には、実質的に同一のもの、または、当業者が容易に想定できるものが含まれ、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態のデバイス製造システム(製造ライン)10の概略的な構成を示す概略構成図である。図1に示すデバイス製造システム10は、例えば、電子デバイスとしてのフレキシブル・ディスプレイを製造するライン(フレキシブル・ディスプレイ製造ライン)である。フレキシブル・ディスプレイとしては、例えば、有機ELディスプレイまたは液晶ディスプレイ等があるが、その他、透明フィルム上に導電性のメッシュパターン等を形成したタッチパネル、電子部品を実装するための多層化されたフレキシブル配線基板、フレキシブルな長尺センサー・シート等も、同様の製造ラインで作成可能である。このデバイス製造システム10は、可撓性のフィルム状のシート基板(以下、基板)Pをロール状に巻き回した供給用ロールFR1から、該基板Pが送り出され、送り出された基板Pに対して各種処理を連続的に施した後、処理後の基板Pを回収用ロールFR2で巻き取る、いわゆるロール・ツー・ロール(Roll to Roll)方式となっている。この基板Pは、基板Pの長手方向が長尺となり、幅方向が短尺となる帯状の形状を有する。基板Pは、長尺方向に沿って搬送される。第1の実施の形態のデバイス製造システム10では、供給用ロールFR1から送り出された基板Pが、少なくとも処理装置PR1、PR2、PR3、PR4、PR5を経て、回収用ロールFR2に巻き取られるまでの例を示している。
図1では、X方向、Y方向およびZ方向が直交する直交座標系となっている。X方向は、水平面内において、基板Pの搬送方向(長尺方向)であり、供給用ロールFR1および回収用ロールFR2を結ぶ方向である。Y方向は、水平面内においてX方向に直交する方向であり、基板Pの幅方向である。Z方向は、X方向とY方向とに直交する方向(鉛直方向)であり、−Z方向側が重力が働く方向側である。
この処理装置PR1は、供給用ロールFR1から搬送されてきた基板Pを搬送方向(+X方向)に搬送しつつ、基板Pに対してプラズマ表面処理の処理工程を行う表面処理装置である。この処理装置PR1によって、基板Pの表面が改質(活性化)され、感光性機能層の接着性が向上する。処理装置PR2は、処理装置PR1から搬送されてきた基板Pを搬送方向(+X方向)に搬送しつつ、感光性機能層の成膜処理の処理工程を行う成膜装置である。処理装置PR2は、基板Pの表面に感光性機能液を選択的または一様に塗布することで、基板Pの表面に感光性機能層(感光性薄膜)を選択的または一様に形成する。
この感光性機能層は、溶液として基板P上に塗布され、乾燥することによって層(膜)となる。感光性機能層の典型的なものはフォトレジストであるが、現像処理が不要な材料として、紫外線の照射を受けた部分の親撥液性が改質される感光性シランカップリング剤(SAM)、或いは紫外線の照射を受けた部分にメッキ還元基が露呈する感光性還元剤等がある。感光性機能層として感光性シランカップリング剤を用いる場合は、基板P上の紫外線で露光されたパターン部分が撥液性から親液性に改質される。そのため、親液性となった部分の上に導電性インク(銀や銅等の導電性ナノ粒子を含有するインク)や半導体材料を含有した液体等を選択塗布することで、パターン層を形成することができる。感光性機能層として、感光性還元剤を用いる場合は、基板P上の紫外線で露光されたパターン部分にメッキ還元基が露呈する。そのため、露光後、基板Pを直ちにパラジウムイオン等を含むメッキ液中に一定時間浸漬することで、パラジウムによるパターン層が形成(析出)される。このようなメッキ処理はアディティブ(additive)なプロセスであるが、その他、サブトラクティブ(subtractive)なプロセスとしてのエッチング処理を前提にしてもよい。その場合、処理装置PR3へ送られる基板Pは、母材をPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)等にし、その表面にアルミニウム(Al)や銅(Cu)等の金属性薄膜を全面または選択的に蒸着し、さらにその上にフォトレジストを積層したものであってもよい。図1においては、感光性機能層としてフォトレジストを採用した場合の構成を示している。
次の処理装置PR3は、処理装置PR2から送られてきた、表面に感光性機能層が形成された基板Pを搬送方向(+X方向)に搬送しつつ、露光処理の処理工程を行う露光装置である。処理装置PR3は、基板Pの表面(感光面)にディスプレイパネル用の回路または配線等のパターンに応じた光パターンを照射する。これにより、感光性機能層に前記パターンに対応した潜像(改質部)が形成される。基板Pは、搬送方向(+X方向)に沿って長尺であるので、処理装置PR3によって前記パターンが露光される露光領域は、基板Pの長尺方向に沿って所定の間隔をあけて複数設けられる。この露光領域に電子デバイスが形成されるので、露光領域は、デバイス形成領域でもある。なお、処理装置PR3は、国際公開第2013/146184号パンフレットに開示されているような、マスクを用いた露光装置であってもよく、マスクレスの直描方式の露光装置、いわゆるラスタースキャン方式の露光装置であってもよい。また、処理装置PR3は、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD:Digital Micromirror Device)を用いて所定のパターンを露光するマスクレス方式の露光装置であってもよい。
湿式処理装置としての処理装置PR4は、処理装置PR3から搬送されてきた基板Pを搬送方向(+X方向)に搬送しつつ、湿式処理の一種である現像処理の処理工程を行う現像装置である。これにより、感光性機能層に、潜像に応じた前記パターンが形成される。この現像処理は、現像液に基板Pの表面を浸すことで行われる。湿式処理装置としての処理装置PR5は、処理装置PR4から搬送されてきた基板Pを搬送方向(+X方向)に搬送しつつ、パターンが形成された感光性機能層をマスクとして湿式処理の一種であるエッチング処理の処理工程を行うエッチング装置である。これにより、基板P上にパターンが出現する。エッチング処理は、基板Pの表面をエッチング液に浸すことで行われる。なお、感光性機能層として、フォトレジストの代わりに感光性シランカップリング剤や感光性還元剤を用いる場合は、処理装置PR4は、現像処理の代わりに湿式処理の一種であるメッキ処理を行い、処理装置PR5は、エッチング処理の代わりに他の処理(例えば、洗浄処理、乾燥処理等)を行う。メッキ処理は、基板Pの表面をメッキ液に浸すことで行われる。フォトレジストの代わりに感光性シランカップリング剤や感光性還元剤を用いる場合は、処理装置PR4内に清浄処理部を設けることで、処理装置PR5自体を省いてもよい。
上位制御装置12は、デバイス製造システム10の各処理装置PR1〜PR5を制御する。この上位制御装置12は、コンピュータと、プログラムが記憶された記憶媒体とを含み、該コンピュータが記憶媒体に記憶されたプログラムを実行することで、本第1の実施の形態の上位制御装置12として機能する。
次に、デバイス製造システム10の処理対象となる基板Pについて説明する。基板Pは、例えば、樹脂フィルム、若しくは、ステンレス鋼等の金属または合金からなる箔(フォイル)等が用いられる。樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、および、酢酸ビニル樹脂のうち1または2以上を含んだものを用いてもよい。また、基板Pの厚みや剛性(ヤング率)は、搬送される際に、基板Pに座屈による折れ目や非可逆的なシワが生じないような範囲であればよい。電子デバイスとして、フレキシブルなディスプレイパネル、タッチパネル、カラーフィルター、電磁波防止フィルタ等を作る場合、厚みが25μm〜200μm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)等の樹脂シートが使われる。
基板Pは、例えば、処理装置PR1〜PR5で施される各種処理において受ける熱による変形量が実質的に無視できるように、熱膨張係数が顕著に大きくないものを選定することが望ましい。また、ベースとなる樹脂フィルムに、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ケイ素等の無機フィラーを混合すると、熱膨張係数を小さくすることもできる。また、基板Pは、フロート法等で製造された厚さ100μm程度の極薄ガラスの単層体であってもよいし、この極薄ガラスに上記の樹脂フィルム、またはアルミや銅等の金属層(箔)等を貼り合わせた積層体であってもよい。
ところで、基板Pの可撓性とは、基板Pに自重程度の力を加えてもせん断したり破断したりすることはなく、その基板Pを撓めることが可能な性質をいう。また、自重程度の力によって屈曲する性質も可撓性に含まれる。また、基板Pの材質、大きさ、厚さ、基板P上に成膜される層構造、温度、湿度等の環境等に応じて、可撓性の程度は変わる。いずれにしろ、本第1の実施の形態によるデバイス製造システム10内の搬送路に設けられる各種の搬送用のローラ、回転ドラム等の搬送方向転換用の部材に基板Pを正しく巻き付けた場合に、座屈して折り目がついたり、破損(破れや割れが発生)したりせずに、基板Pを滑らかに搬送できれば、可撓性の範囲といえる。
電子デバイスは、複数のパターン層(パターンが形成された層)が重ね合わされることで構成されており、デバイス製造システム10の少なくとも各処理装置PR1〜PR5を経て、1つのパターン層が生成される。そのため、電子デバイスを生成するために、図1に示すようなデバイス製造システム10の各処理装置PR1〜PR5の処理を少なくとも2回は経なければならない。そのため、基板Pが巻き取られた回収用ロールFR2を供給用ロールFR1として別のデバイス製造システム10に装着することで、パターン層を積層することができる。そのような動作を繰り返して、電子デバイスが形成される。そのため、処理後の基板Pは、複数の電子デバイスが所定の間隔をあけて基板Pの長尺方向に沿って連なった状態となる。つまり、基板Pは、多面取り用の基板となっている。
電子デバイスが連なった状態で形成された基板Pを回収した回収用ロールFR2は、図示しないダイシング装置に装着されてもよい。回収用ロールFR2が装着されたダイシング装置は、処理後の基板Pを電子デバイスごとに分割(ダイシング)することで、複数個の電子デバイスにする。基板Pの寸法は、例えば、幅方向(短尺となる方向)の寸法が10cm〜2m程度であり、長さ方向(長尺となる方向)の寸法が10m以上である。なお、基板Pの寸法は、上記した寸法に限定されない。
図2は、湿式処理装置として機能する処理装置PR4の構成図である。図2に示すように、処理装置PR4は、搬送機構20、液体保持機構22、24、調整部26、28および、乾燥装置29を備える。
搬送機構20は、処理装置PR3から送られてきた基板Pを処理装置PR5に向けて搬送方向(第1方向)に搬送する。この搬送機構20によって、処理装置PR4内で搬送される基板Pの搬送路が規定される。搬送機構20は、基板Pの搬送方向に沿って上流側(−X方向側)から順に、駆動ローラ(ニップローラ)R1、テンション調整ローラRT1、回転ドラムDR、テンション調整ローラRT2、および、駆動ローラ(ニップローラ)R2を備える。処理装置PR3から送られてきた基板Pは、駆動ローラR1およびテンション調整ローラRT1に長尺方向に沿って掛け渡された後、回転ドラムDRに案内される。駆動ローラR1は、処理装置PR3から送られてきた基板Pを回転ドラムDRに向けて搬送する。回転ドラムDRは、Y方向(基板Pの幅方向)に延びるとともに、重力が働く方向(Z方向)と交差した方向に延びた中心軸AXoと、中心軸AXoから一定半径の円筒状の外周面とを有し、外周面(円筒面)に倣って基板Pの一部を搬送方向(長尺方向)に湾曲させて支持しつつ、中心軸AXoを中心に回転して基板Pを搬送方向(+X方向)に搬送する。回転ドラムDRは、基板Pを重力が働く方向とは反対側(+Z方向側)の外周面で支持する。回転ドラムDRは、電子デバイスが形成される面(感光面が形成された側の面)とは反対側の面(裏面)側から基板Pを支持(密着保持)する。なお、回転ドラムDRは、重力が働く方向側の外周面で、基板Pを支持してもよい。回転ドラムDRのY方向の両端側には、中心軸AXo回りに回転ドラムDRが回転するようにベアリングで支持されたシャフトSftが設けられている。
回転ドラムDRから搬出された基板Pは、テンション調整ローラRT2および駆動ローラR2に長尺方向に沿って掛け渡された後、処理装置PR5に案内される。駆動ローラR2は、回転ドラムDRから送られた基板Pを処理装置PR5に向けて搬送する。テンション調整ローラRT1、RT2は、回転ドラムDRに巻き付けられて支持されている基板Pに、長尺方向に所定のテンションを与えている。図2において、テンション調整ローラRT1は+X方向に付勢され、テンション調整ローラRT2は−X方向に付勢されている。これにより、回転ドラムDRにかかる基板Pに付与される長尺方向のテンションを所定の範囲内に安定化させている。なお、駆動ローラR1、R2、および、回転ドラムDRは、上位制御装置12によって制御されて駆動するモータや減速機構等を備える回転駆動源(図示略)からの回転トルクが与えられることで回転する。
液体保持機構22、24は、回転ドラムDRの外周面に巻き付けられて支持されている基板Pの表面(感光面が形成された側の面)に、湿式処理を行うために液体(処理液)LQが搬送方向(第1方向)に関して所定長に亘って接触するように液体LQを保持する。液体保持機構22、24は、基板Pの少なくとも一部の領域の表面が液体LQに浸るように液体LQを保持する。液体保持機構22は、液体LQ1(現像液またはメッキ液)を保持することで、基板Pに対して現像処理またはメッキ処理を行うことができる。液体保持機構22より基板Pの搬送方向の下流側に配置されている液体保持機構24は、液体LQ2(洗浄用の液体、例えば、水)を保持することで、液体LQ1が付着した基板Pを洗浄することができる。この液体保持機構22、24は、回転ドラムDRの側方側(X方向側)で液体LQを保持する。本第1の実施の形態では、液体保持機構22は、回転ドラムDRの−X方向側で液体LQ1を保持し、液体保持機構24は、回転ドラムDRの+X方向側で液体LQ2を保持する。なお、回転ドラムDRは、少なくとも、液体保持機構22によって液体LQ1が保持される範囲から液体保持機構24によって液体LQ2が保持される範囲までの長さで基板Pを保持している。なお、液体保持機構22、24と回転ドラムDRとは、液体保持機構22、24と回転ドラムDRとの3次元的な位置関係を精度よく保つための図示しない支持機構によって支持されている。
調整部26、28は、液体保持機構22、24によって液体LQが保持される基板Pの搬送方向の長さ(基板Pの長尺方向に関する接液長)を調整するものである。乾燥装置29は、テンション調整ローラRT2と駆動ローラR2との間に設けられ、洗浄後の基板Pに付着している液体LQ2を除去する。例えば、乾燥装置29は、ドライエアー等の乾燥用エアー(温風)を基板Pの表面に吹き付けるブロワー、赤外線光源、セラミックヒーター等によって基板Pを乾燥させる。
図3は、液体保持機構22および調整部26の構成を示す図、図4は、液体保持機構22の断面図である。なお、液体保持機構22と液体保持機構24とは、保持する液体LQが異なるだけで、その構成は同一のものであることから、液体保持機構24の説明については省略する。同様に、調整部26と調整部28とは、扱う液体LQが異なるだけで、その構成は同一のものであることから、調整部28の説明についても省略する。
液体保持機構22には、回転ドラムDRによって外周面(曲面)に倣うように支持された基板Pの表面(または回転ドラムDRの外周面)に対して所定の隙間(ギャップ)WS1が形成されるように面(円筒面、曲面)CU1が設けられている。したがって、湾曲して支持された基板Pの曲率半径(または回転ドラムDRの外周面の半径)に対して、面CU1の曲率半径(回転ドラムDRの中心軸AXoから面CU1までの半径)は、隙間WS1分だけ大きく設定される。面CU1は、回転ドラムDRによって支持された基板Pの表面(または回転ドラムDRの外周面)と対向するように設けられている。この面CU1が形成されたY方向の幅は、少なくとも、基板P上のデバイス形成領域でもある露光領域のY方向の幅よりも広く設定されている。液体保持機構22は、面CU1と基板Pとの隙間WS1で液体LQ1を保持することが可能である。これにより、液体LQ1は、面CU1が形成された領域(所定領域)で保持されるので、この所定領域内で基板Pの表面が液体LQ1に浸される。また、液体LQ1は、面CU1と基板Pとの隙間WS1で保持されるので、液体保持機構22は、円筒状に湾曲した基板Pの表面(または回転ドラムDRの外周面)から径方向に所定の厚みとなるように液体LQ1を保持することが可能である。
液体保持機構22には、図3に示すように液体保持機構22が液体LQ1を保持する領域、つまり、面CU1が形成された所定領域を囲むようなシール部SEP(SEPa、SEPb、SEPc、SEPd)が設けられている。このシール部SEPによって、保持された液体LQ1が液体保持機構22から漏れないように液体LQ1をシールすることができる。つまり、シール部SEPは、所定領域外への液体LQ1の遺漏を防止する。シール部SEPは、詳細については後述するが、液体保持機構22の回転ドラムDRの周方向の両端部においてはY方向に直線的に延びたシール部SEPa、SEPbと、液体保持機構22のY方向の両端部においては、円筒状に湾曲した基板Pに倣って円弧状となるようにZ方向に延びたシール部SEPc、SEPdとで構成される。このとき、シール部SEPと基板Pの表面(または回転ドラムDRの外周面)との距離(隙間)WS2は、隙間WS1より小さく設定されている。シール部SEPaは、シール部SEPbに対して+Z方向側に設けられ、シール部SEPcは、シール部SEPdに対して−Y方向側に設けられている。
円筒状の面CU1は、曲率半径(中心軸AXoからの半径)が異なる2つの面CU1a、CU1bを有する。図4のように、面CU1bは、面CU1aに対して+Z方向側に設けられている。この面CU1aと基板Pの表面(または回転ドラムDRの外周面)との隙間WS1をWS1aで表し、面CU1bと基板Pの表面(または回転ドラムDRの外周面)との隙間WS1をWS1bで表す。隙間WS1bは、隙間WS1aより大きく設定されている。つまり、面CU1bは、面CU1aより、回転ドラムDRによって湾曲状に支持された基板Pの表面(回転ドラムDRの外周面)に対して奥まった位置に設けられており、面CU1bの曲率半径は、面CU1aより大きい。すなわち、面CU1aに設けられた凹部DEPの径方向の底面が面CU1bとなる。隙間WS1a、WS1bの寸法は、回転ドラムDRの外周面の周方向と中心軸AXoの延設方向(Y方向)との各々に関してそれぞれ一定とする。
液体保持機構22の凹部DEPには、隙間WS1に液体LQ1を供給する液体供給部SUPが複数設けられている。この複数の液体供給部SUPは、重力方向(Z方向)に関して、異なる位置に配置されている。複数の液体供給部SUPは、面CU1bに沿って円弧を描くように配置されている。液体供給部SUPは、Y方向に延びるパイプ状の中空部材で形成され、液体供給部SUPには、図3のように、Y方向に沿って複数のノズル(噴出口)SNが一定の間隔をあけて形成されている。液体供給部SUPに供給された液体LQ1は、複数のノズルSNから射出して隙間WS1に供給される。液体保持機構22には、複数の液体供給部SUPに対して重力が働く方向側(−Z方向側)に配置されて、液体保持機構22によって保持されている液体LQ1を回収する液体回収部DRPが設けられている。具体的には、面CU1aの−Z方向側と−Z方向側のシール部SEPbとの間に液体回収部DRPが設けられている。液体回収部DRPは、隙間WS1に存在する液体LQ1を回収する。この液体回収部DRPは、図4に示すようなY方向に沿って直線的に延びたスリット溝と、そのスリット溝中にY方向に一定の間隔をあけて複数設けられた回収孔(図示略)とで構成される。
調整部26は、複数の液体供給部SUPのうち、隙間WS1に液体LQ1を供給する液体供給部SUPを1つ選択する。つまり、隙間WS1に液体LQ1を供給する液体供給部SUPを切り換える。また、調整部26は、隙間WS1に供給する液体LQ1の流量、および、隙間WS1に存在する液体LQ1を回収する流量を制御する。調整部26は、液体LQ1を供給する液体供給装置26aと、液体供給装置26aから供給された液体LQ1をどの液体供給部SUPに流すかを切り換える切換弁26bと、液体LQ1を液体回収部DRPのスリット溝から吸引して回収する液体吸引装置26cと、液体供給装置26a、切換弁26b、および、液体吸引装置26cを制御する制御部26dとを有する。この制御部26dは、上位制御装置12によって制御される。複数の液体供給部SUPと切換弁26bとは図示しない連通路によって連通されており、液体吸引装置26cは、液体回収部DRPのスリット溝内の前記回収孔と図示しない連通路によって連通されている。制御部26dは、切換弁26bを制御することで、液体LQ1を供給する液体供給部SUPを切り換えることができる。また、制御部26dは、液体供給装置26aおよび液体吸引装置26cを制御することで、供給・回収する液体LQ1の流量を制御することもできる。なお、切換弁26bは、電磁式の三方弁を複数個組み合わせることで構成してもよい。
液体供給部SUPによって供給された液体LQ1は、重力にしたがって回転ドラムDRに支持された基板Pに沿って隙間WS1内を流れた後、液体回収部DRPによって回収される。これにより、現像処理またはメッキ処理によって液体(現像液やメッキ液等)LQ1の濃度・温度が低下した場合であっても、古い液体LQ1は回収されて新しい液体LQ1が供給されるので、液体保持機構22によって保持される液体LQ1の濃度・温度を所望の状態に保つことができ、湿式処理の精度が低下することを抑制できる。この液体保持機構22によって液体LQ1が酸素に触れる面積が小さくなるので、現像液、メッキ液等の液体LQ1の酸化を抑制することができ、湿式処理の精度低下を抑制することができる。液体保持機構22は、液体LQ1を狭い隙間WS1a、WS1bの空間で保持するので、現像処理またはメッキ処理を行う液体LQ1の量を少なくすることができ、コストを抑えることができる。一例として、狭い方の隙間WS1aの寸法は1mm〜数mm程度に設定され、広い方の隙間WS1bの寸法は、液体供給部SUPが設けられることから、数mm〜十数mm程度に設定される。なお、液体保持機構24の場合も同様に、洗浄によって液体LQ2が汚れた場合であっても、古い液体LQ2(汚染度の高い液体)を回収して新しい液体LQ2を供給するリフレッシュ・フローができるので、湿式処理の性能(精度)が低下することもなく、コストを抑えることができる。
基板Pの搬送方向(第1方向)に関して、液体保持機構22が保持する液体LQ1の所定長(接液距離、接液長)は、本第1の実施の形態では、実際に液体LQ1を供給している液体供給部SUPと液体回収部DRPとの距離に応じて決まる。したがって、調整部26は、重力が働く方向に関して異なる位置に配置された複数の液体供給部SUPの中から、液体LQ1を供給する液体供給部SUPを切り換えることで、液体保持機構22が保持する液体LQ1の所定長を調整することができる。例えば、液体LQ1を供給する液体供給部SUPを、最も−Z方向側に配置された液体供給部SUPに切り換えた場合は接液距離が最も短くなり、最も+Z方向側に配置された液体供給部SUPに切り換えた場合は接液距離が最も長くなる。この接液距離が変更されることで、基板Pの表面が液体LQ1に接触する時間も変わる。
さらに、調整部26は、搬送機構20による基板Pの搬送条件(搬送速度等)と、湿式処理の条件(例えば、湿式処理を行う処理時間、液体LQ1の濃度・温度等)との少なくとも一方に基づいて所定長(接液距離)を調整する。例えば、製造ラインの全体の最適化のために、基板Pの搬送速度が僅かに変更される場合、基板Pの表面が液体LQ1に接触している時間も変わってしまうので所定長(接液距離)を調整する。例えば、搬送速度が少し速くなった場合は、それに応じて接液距離が長くなるように設定する。また、搬送速度は変わらないが、湿式処理を行う時間(基板Pを液体LQ1に浸す時間)自体を変更する必要が生じた場合も、その変更に応じて所定長(接液距離)を調整する。また、隙間WS1に供給する液体LQ1の濃度・温度が比較的大きく変動する場合、変動の前後で同じ時間だけ湿式処理を行ってもその処理の効果が変わってしまうので、このような場合も所定長(接液距離)を調整する。例えば、液体LQ1の濃度・温度が高くなった場合はそれに応じて所定長(接液距離)を短くする。なお、基板Pの搬送条件と湿式処理の条件とは、互いに密接な関係を有する。例えば、液体LQ1の濃度・温度が低下すると、基板Pを液体LQ1に浸す時間を長くしなければならない。したがって、この場合は、基板Pの搬送速度を落とすか、所定長(接液距離)を長くする必要がある。但し、搬送速度を変化させる必要が生じたときは、製造ライン中の他の処理装置での基板Pの搬送速度の変更可能性も考慮して決めることになる。
以上のように、本第1の実施の形態では、Z方向に所定間隔で配置した複数の液体供給部SUPのうちのいずれか1つを選び、その選ばれた液体供給部SUPから液体LQ1を供給することで、所定長(接液距離)を変更する。したがって、設定された所定長(接液距離)を保つためには、1つの液体供給部SUPから供給される液体LQ1の流量と、液体回収部DRPから回収される液体LQ1の流量とが同じになるようにフロー制御される。なお、調整部26は、接液距離を調整する際に、液体供給装置26aが供給する液体LQ1の流量、および、液体吸引装置26cが吸引する液体LQ1の流量の少なくとも一方を、一時的に調整してもよい。例えば、接液距離を長くする場合には、液体LQ1を吸引する流量(回収流量)に対して供給する液体LQ1の流量(供給流量)を、所定時間の間だけ多くなるように調整した後に、供給流量と回収流量とが等しくなるように調整する。逆に、接液距離を短くする場合は、液体LQ1の回収流量に対して液体LQ1の供給流量を一時的に少なくした後に供給流量と回収流量とが等しくなるように調整する。
さて、シール部SEP(SEPa、SEPb、SEPc、SEPd)は、図3、図4に示すように、回転ドラムDRによって支持された基板Pの表面と対向する面(円筒面、曲面)CU2(CU2a、CU2b、CU2c、CU2d)と、その面CU2の一部に設けられて気体を供給する気体供給部(噴出口)ASおよび供給された気体を吸引する気体回収部(吸引口)VAとを有する(図4参照)。シール部SEPのうち、回転ドラムDRの周方向の−Z方向に位置するシール部SEPbの内側の端部(液体回収部DRP側の端部)EGは、Y方向に直線的に延びたナイフエッジのように鋭利なフィン状に形成されている。各シール部SEPの面CU2(CU2a、CU2b、CU2c、CU2d)と、回転ドラムDRによって支持されている基板Pの表面(または回転ドラムDRの外周面)とは一定の隙間(ギャップ)WS2を有する。隙間WS2は、隙間WS1に比べ極めて小さく、例えば、数μm〜数十μm程度に設定されている。気体供給部ASと気体回収部VAは、面CU2(CU2a、CU2b、CU2c、CU2d)に溝として刻設したものでもよいし、通気性のある多孔質セラミックスで構成してもよい。気体供給部ASと気体回収部VAとにより、面CU2と基板Pとの間に静圧気体層(気体層)が生成される。つまり、この気体供給部ASと気体回収部VAとにより、隙間WS2内では気体の圧力が高くなり、端部EGから隙間WS2への液体LQ1の侵入が防止される。これにより、シール部SEPa〜SEPdの各々は、エアベアリング方式またはベルヌイチャック方式によって、液体LQ1が液体保持機構22から漏れることを防止することができる。
また、基板Pの搬送速度は、5〜10mm/秒、早くても数十mm/secであるため、基板Pの表面の濡れ性が上がった場合(撥液性が低下した場合)であっても、シール部SEPa〜SEPdの面CU2a〜CU2dの各々を液体LQ1に対して高い撥液性にしておけば、液体LQ1の隙間WS2への浸入を抑えることができる。これにより、シール部SEPによって液体LQ1を隙間WS1内に捕捉し続けることができる。気体供給部ASは、気体(例えば、圧縮気体)を出力するポンプ等を有する図示しない気体供給装置に接続され、気体回収部VAは、気体を吸引する真空ポンプ等を有する図示しない気体吸引装置に接続されている。なお、気体供給部ASは、供給する気体として酸素以外の気体(例えば、窒素)を供給してもよい。気体供給部ASが窒素を供給することで、液体LQ1の酸化をより抑制することができる。また、シール部SEPは、静圧気体層を生成することで、エアベアリング方式またはベルヌイチャック方式によって液体LQ1が漏れることを防止したが、シール部SEPは、磁性流体シールであってもよい。
このように、本第1の実施の形態の処理装置PR4においては、回転ドラムDRの外周面(曲面)に倣うように支持された基板Pの表面に、液体LQが基板Pの搬送方向(第1方向)に関して所定の接液距離に亘って接触するように液体LQを保持する液体保持機構22、24と、搬送機構20による基板Pの搬送条件と湿式処理の条件との少なくとも一方に基づいて接液距離を調整する調整部26、28とを備える。これにより、液体LQが酸素に触れる面積が小さくなるので、液体LQの酸化を抑制することができ、湿式処理の性能低下を抑制することができる。また、液体LQを大量に保持することがなく、液体LQのランニングコストが削減される。
液体保持機構22、24は、重力が働く方向(Z方向)に関して異なる位置に設けられた複数の液体供給部SUPと、複数の液体供給部SUPより重力が働く方向側(−Z方向側)に設けられた液体回収部DRPとを備え、調整部26は、複数の液体供給部SUPの中から、液体LQを供給する液体供給部SUPを切り換えることで接液距離を調整する。これにより、基板Pの表面が液体LQに接触する時間を簡単に調整することができ、且つ、液体LQを大量に保持することなく、液体LQのランニングコストが削減される。
液体保持機構22、24は、液体保持機構22が液体LQを所定領域内で保持するために、所定領域外への液体LQの遺漏を防止するシール部SEP(SEPa〜SEPd)を備える。これにより、液体保持機構22、24は、所定領域内で液体LQを確実に保持することができる。
基板Pは、回転ドラムDRの外周面で支持され、液体保持機構22、24は、回転ドラムDRによって基板Pが湾曲して支持される領域において、基板Pの表面に接触し、回転ドラムDRの外周面(或いは基板Pの表面)から所定の厚みとなるように液体LQを搬送方向に関して所定長に亘って保持する。したがって、保持する液体LQの量を少なくすることができ、液体LQのランニングコストが低廉となる。
なお、湿式処理装置として機能する処理装置PR5も、処理装置PR4と同一の構成を有してもよい。この場合、液体保持機構22が保持する液体LQ1を処理装置PR5に適した液体(エッチング液)に代えればよい。また、処理装置PR4、PR5の中に、洗浄装置として機能する液体保持機構24および乾燥装置29を設けるようにしたが、液体保持機構24および乾燥装置29の少なくとも一方を設けなくてもよい。この場合は、基板Pを洗浄する洗浄装置や基板Pに付着している液体LQ2を乾燥させる乾燥装置を別の処理装置として別途設けるようにすればよい。また、処理装置PR4、PR5の中に、洗浄装置を設けない場合は、液体保持機構22を無くし、液体保持機構24のみを残してもよい。この場合は、液体保持機構24は、現像液、メッキ液、エッチング液等の洗浄用の液体以外の処理液を保持する。
本第1の実施の形態では、液体保持機構22においては、液体LQ1が重力にしたがって流れる方向とは反対側の方向に基板Pを搬送したが、液体LQ1が重力にしたがって流れる方向と同一方向に基板Pを搬送させてもよい。同様に、液体保持機構24においては、液体LQ2が重力にしたがって流れる方向に基板Pを搬送したが、液体LQ2が重力にしたがって流れる方向とは反対側の方向に基板Pを搬送させてもよい。また、同一の回転ドラムDRの回りに液体保持機構22、24の両方を配置するようにしたが、液体保持機構22が配置される回転ドラムDRと、液体保持機構24が配置される回転ドラムDRとを個別に設けてもよい。この場合は、液体保持機構22が配置される回転ドラムDRは、液体保持機構24が配置される回転ドラムDRより、基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)に設ける。
[第1の実施の形態の変形例]
上記第1の実施の形態は、以下のような変形も可能である。
(変形例1)上記第1の実施の形態では、液体保持機構22、24は、重力が働く方向に関して異なる位置に複数の液体供給部SUPを備えるようにした。しかしながら、変形例1では、液体保持機構22、24は、1つの液体供給部SUPを備え、1つの液体供給部SUPが、重力が働く方向(Z方向)に沿って移動する。液体保持機構22、24は、重力が働く方向に沿って液体供給部SUPが移動できるように、液体供給部SUPを支持する。
図5は、第1の実施の形態の変形例1における液体保持機構22および調整部26の構成を示す図である。なお、上記第1の実施の形態(図3、図4)と同様の構成については同一の符号を付し、異なる部分だけを説明する。また、液体保持機構22と液体保持機構24とは保持する液体が異なるだけで、その構成は同一のものであることから、液体保持機構24の説明については省略する。同様に、調整部26と調整部28とは、扱う液体LQが異なるだけで、その構成は同一のものであることから、調整部28の説明についても省略する。
液体保持機構22には、Y方向に直線的に配置されるパイプ状の液体供給部SUPの両端を、重力が働く方向に移動可能に支持するスライド溝部22aが設けられている。このスライド溝部22aは、面CU1bに沿って湾曲するように、凹部DEPのY方向の側壁に設けられ、液体供給部SUPは、このスライド溝部22aに沿ってZ方向に移動する。また、調整部26は、液体供給部SUPに液体LQ1を供給する液体供給装置26aと、液体回収部DRPからの液体LQ1を吸引する液体吸引装置26cと、液体供給部SUPをスライド溝部22aに沿ってZ方向に移動させるアクチュエータ(駆動部材)26eと、液体供給装置26a、液体吸引装置26c、アクチュエータ(駆動部材)26eを制御する制御部26fとを有する。制御部26fは、上位制御装置12によって制御される。この液体供給装置26aと液体供給部SUP、および、液体吸引装置26cと液体回収部DRPは、それぞれ図示しない連通路によって連通されている。
本変形例1では、液体LQ1を供給する液体供給部SUPと液体LQ1を回収する液体回収部DRPとの距離に応じて、基板Pの表面に液体が接触する搬送方向の所定長(接液距離)が決まる。したがって、調整部26の制御部26fが、アクチュエータ26eを制御して、液体供給部SUPのZ方向における位置(厳密には、周方向の位置)を変えることで、接液距離を調整することができる。このように、変形例1においても、液体を供給する液体供給部SUPのZ方向における位置を変えることで、上記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
(変形例2)上記第1の実施の形態では、面CU1に凹部DEPを設け、この凹部DEPに液体供給部SUPを設けるようにしたが、変形例2では、面CU1の内側に複数の液体供給部SUPを設けるようにしてもよい。したがって、本変形例2では、上記第1の実施の形態のように、凹部DEPを設ける必要がなく、液体LQを保持する所定領域においては、回転ドラムDRに支持された基板Pの表面(または回転ドラムDRの外周面)に対して形成された隙間WS1は、一定の距離(WS1a)となる。つまり、本変形例2では、面CU1bが設けられておらず、面CU1bが設けられていた領域も面CU1aが設けられている。なお、変形例2においても、複数の液体供給部SUPは、重力が働く方向(Z方向)に関して異なる位置に配置されている。
図6は、第1の実施の形態の変形例2における液体保持機構22の構成を示す図である。なお、上記実施の形態と同様の構成については同一の符号を付し、異なる部分だけを説明する。また、液体保持機構22と液体保持機構24とは保持する液体が異なるだけで、その構成は同一のものであることから、液体保持機構24の説明については省略する。同様に、調整部26と調整部28とは、扱う液体LQが異なるだけで、その構成は同一のものであることから、調整部28の説明についても省略する。
面CU1(CU1a)の内側に、複数の液体供給部SUP(ここでは液体保持機構22の面CU1a内に埋設された配管として機能する)が設けられ、面CU1(CU1a)には、各液体供給部SUPの噴出口(ノズル)SNaが複数形成されている。液体供給部SUPに供給された液体LQ1は、噴出口SNaから噴出して隙間WS1に供給される。これにより、上記第1の実施の形態のように、基板Pと対向する面CU1に段差(面CU1aと面CU1b)を設ける必要はない。したがって、液体保持機構22で保持される液体LQ1の量をさらに少なくすることができ、液体LQ1のランニングコストが低廉となる。なお、液体保持機構22が保持する液体LQの基板Pとの接液距離の調整は、上記第1の実施の形態のように、調整部26の制御部26dが、切換弁26bを制御することで、複数の液体供給部(配管)SUPのうち、液体LQを供給する液体供給部SUPを切り換えることで行われる。以上のように、本変形例2であっても、上記第1の実施の形態と同等の効果を得ることができる。
(変形例3)上記変形例2では、面CU1(CU1a)の内側に複数の液体供給部SUPを設けるようにしたが、変形例3においては、液体保持機構22、24は、面CU1(CU1a)の内側に、1つの液体供給部SUPを設け、重力が働く方向に関して異なる面CU1上の位置に複数の液体回収部DRP(回収用のスリット溝等)を設ける。なお、複数の液体回収部DRPは、液体供給部SUPより重力が働く方向側(−Z方向側)に設けられていることは言うまでもない。この変形例3の場合、1ヶ所の液体供給部SUPから供給された液体LQを、複数の液体回収部DRPのうちのいずれか1ヶ所の液体回収部DRP(スリット溝)で回収するように、液体吸引装置26cと複数の液体回収部DRPとの間に、図3に示した切換弁26bと同様の切換弁が設けられる。変形例3であっても、変形例2と同等の効果を得ることができる。
(変形例4)図7は、上記第1の実施の形態の変形例4における液体保持機構22の構成を示す図である。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成については同一の符号を付し、異なる部分だけを説明する。また、液体保持機構22と液体保持機構24とは保持する液体が異なるだけで、その構成は同一のものであることから、液体保持機構24の説明については省略する。変形例4の液体保持機構22では、図6と同様に、面CU1(CU1a)の内側であって、+Z方向の上方に1つの液体供給部SUP(配管)を埋設し、その液体供給部SUPから面CU1(CU1a)に向けてY方向に並んだ複数の噴出口(ノズル)SNaが形成されている。面CU1(CU1a)の重力が働く方向の下方には、1つの液体回収部DRP(回収用のスリット溝等)がY方向に延びて形成されている。したがって、本変形例4でも、液体保持機構22の液体LQ1を保持する面CU1(CU1a)と基板Pの表面(または回転ドラムDRの外周面)とが一定の隙間WS1(WS1a)で対向するように配置される。
さらに、本変形例4では、液体保持機構22の面CU1(CU1a)のY方向の略中央部に、面CU1(CU1a)の周方向に沿って、例えば9個の液体センサーMS1、MS2、MS3、・・・MS9が重力方向に沿って上から順番に所定の間隔で設けられている。この液体センサーMS1〜MS9は、隙間WS1(WS1a)内に保持される液体LQ1の液面のZ方向の位置(高さ位置)をモニターするもので、光電検出式や静電容量検出式のセンサーが使われる。液体供給部SUPから噴出口SNaを通して供給された液体LQ1の液面(界面)が、例えば、液体センサーMS3とMS4の間に位置している場合、下側の液体センサーMS4と基板Pとの間は、常時、液体LQ1が満たされた状態になり、その上側の液体センサーMS3と基板Pとの間は、空気と液体LQ1が混在する状態となる。そのため、液体センサーMS3の検出信号の出方と液体センサーMS4の検出信号の出方に差が生じ、その出方の違いから、液体LQ1の液面のZ方向の位置(高さ位置)を検知することができる。
本変形例4の場合、調整部26の制御部26dには、これらの液体センサーMS1〜MS9からの検出信号の出方を判別する判別回路が付加され、その判別結果から求めた液体LQ1の液面の高さ位置が所定の設定値から外れている場合、液体供給部SUPに供給される液体LQ1の流量や液体回収部DRPで回収される液体LQ1の流量を調整するように、液体供給装置26aや液体吸引装置26cがフィードバック制御される。本変形例4のように、液体保持機構22(24)の液体LQ1(LQ2)を保持する面CU1(CU1a)に液体センサーを設ける場合は、液体LQ1(LQ2)の液面の高さ、すなわち、搬送方向に関する液体LQ1(LQ2)の基板Pとの接液距離を常時モニターすることができるので、長期間に渡って湿式処理を安定稼動させることができる。さらに、液体保持機構22(24)のシール部SEPによる液体LQ1(LQ2)の保持が突発的に不良となって液体が漏れ出した場合も、それを直ちにモニターして液体供給を緊急停止することができるので、液体の漏れ出し量を最小に抑えることができる。本変形例4で説明した液体センサーMS1〜MS9は、先の第1の実施の形態、変形例1〜3のいずれの液体保持機構22(24)にも、同様に組み込むことができる。
(変形例5)上記変形例1においては、1つの液体供給部SUPを重力が働く方向(Z方向)に沿って移動させるようにしたが、変形例5では、1つの液体供給部SUPを固定し、1つの液体回収部DRPを重力が働く方向に沿って移動させてもよい。この場合であっても、上記変形例1と同等の効果を得ることができる。なお、液体回収部DRPは、液体供給部SUPよりも+Z方向側に移動することはない。つまり、液体供給部SUPの下方に液体回収部DRPが位置するという関係は変わらない。
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について説明する。図8は、第2の実施の形態における処理装置PR4、PR5の液体保持機構30、32と、基板Pを介して液体保持機構30、32と対向して設けられ、基板Pを平面状に支持する平面支持部34、36との構成を示す図である。つまり、上記第1の実施の形態では、回転ドラムDRで基板Pを支持し、支持された基板Pの表面が液体LQに接触するように液体LQを保持する液体保持機構22、24を備えるようにしたが、第2の実施の形態では、平面支持部34、36が基板Pを平面状に支持し、液体保持機構30、32が支持された基板Pの表面(−Z方向に向いた面)に液体LQが接触するように液体LQを保持する。液体保持機構30、32と平面支持部34、36とは、液体保持機構30、32と平面支持部34、36との3次元的な位置関係を精度よく保つための図示しない支持機構によって支持されている。なお、第2の実施の形態においては、第1の実施の形態と異なる部分のみを説明し、それ以外の構成(乾燥装置29等)については説明を省略する。また、上記第1の実施の形態と同一または同様の構成については同一の参照符号を用いて説明する場合がある。図8においては、液体保持機構30、32を断面で表している。
駆動ローラR10、テンション調整ローラRT10、駆動ローラR11は、基板Pを搬送する搬送機構40の一部を構成する。基板Pは、駆動ローラR10、テンション調整ローラRT10、駆動ローラR11の順で、長尺方向に沿って掛け渡されて、略V字状の形状を形成しながら、搬送方向に沿って搬送される。具体的には、Y方向に延びた回転軸を有する駆動ローラR10、R11は、X方向に離れるとともにZ方向に関して略同じ高さ位置に設けられ、テンション調整ローラRT10は、駆動ローラR10、R11の間であって、駆動ローラR10、R11に対して−Z方向の位置に設けられている。このテンション調整ローラRT10は、−Z方向に付勢されており、平面支持部34、36で支持されている基板Pに長尺方向に所定のテンションを与えている。この駆動ローラR10、R11は、上位制御装置12によって制御されて駆動するモータや減速機構等を備える回転駆動源(図示略)からの回転トルクが与えられることで回転するように構成される。しかしながら、搬送路中に設けられる他の駆動ローラや回転ドラムによって基板Pが搬送される場合、駆動ローラR10、R11は単なる自在回転ローラとしてもよい。
駆動ローラR10とテンション調整ローラRT10との間には、湿式処理されない基板Pの裏面を支持する平面支持部34が設けられ、テンション調整ローラRT10と駆動ローラR11との間には、湿式処理されない基板Pの裏面を支持する平面支持部36が設けられている。平面支持部34、36の基板Pを支持する側の平面34a、36aにはエアーを供給する微細な噴出孔が設けられ(図示略)、この噴出孔から基板Pの裏面に向けて気体を供給することで、平面支持部34、36は、基板Pと非接触(または低摩擦)の状態で基板Pを平面状に支持する。平面34a、36aに設けられる多数の微細な噴出孔の他に、気体を吸引する多数の微細な吸引孔を設けて、ベール・ヌイ方式のチャックを構成してもよい。なお、平面支持部34、36の基板Pを支持する側の平面34a、36aに複数の搬送用ローラを設け、平面支持部34、36は、基板Pと低摩擦の状態で基板Pを平面状に支持してもよい。この搬送用ローラは、基板Pと接触しながら、基板Pの搬送方向に回転することで、搬送される基板Pの裏面との接触摩擦を低減させている。
液体保持機構30、32は、平面支持部34、36によって支持されている基板Pの表面に、湿式処理を行うための液体LQが搬送方向(第1方向)に関して所定長(接液距離)に亘って接触するように液体LQを保持する。液体保持機構30、32は、基板Pの少なくとも一部の領域の表面が液体LQに接触するように液体LQを保持する。液体保持機構30は、液体LQ1(現像液、メッキ液、またはエッチング液)を保持することで、基板Pに対して現像処理、メッキ処理、または、エッチング処理を行うことができる。液体保持機構32は、液体LQ2(洗浄用の液体、例えば、水)を保持することで、液体LQが付着した基板Pを洗浄することができる。なお、液体保持機構30と液体保持機構32とは、保持する液体LQが異なるだけで、その構成は同一のものであることから、液体保持機構30について説明し、液体保持機構32の説明は省略する。
液体保持機構30には、平面支持部34によって平面34aに倣うように支持された基板Pの表面に対して所定の隙間(ギャップ)WS3が形成されるように面(平面)CU3が設けられている。面CU3は、平面支持部34によって支持された基板Pの表面と対向するように設けられている。この面CU3が形成されたY方向の幅は、少なくとも、基板P上のデバイス形成領域(露光領域)のY方向の幅よりも広く設定されている。液体保持機構30は、面CU3と基板Pとの隙間WS3で液体LQ1を保持することが可能である。これにより、液体LQ1は、面CU3が形成された領域(所定領域)で保持されるので、この所定領域内で基板Pの表面が液体LQ1に浸される。また、平面支持部34の平面34aと面CU3とは略平行となるように設けられているので、液体保持機構30は、基板Pの表面から垂直方向に所定の厚み(一定の厚み)となるように液体LQ1を保持することが可能である。つまり、所定の隙間WS3の長さは、一定である。
液体保持機構30には、液体保持機構30が液体LQ1を保持する領域、つまり、面CU3が形成された所定領域を囲むようにシール部SEPeが設けられている。このシール部SEPeによって、保持された液体LQ1が液体保持機構30から漏れないように液体LQ1を基板Pの表面上でシールすることができる。つまり、シール部SEPeは、所定領域外への液体LQ1の遺漏を防止する。詳しくは図示していないが、シール部SEPeは、液体保持機構30の基板Pの搬送方向の両端部においてはY方向に延びるように設けられ、液体保持機構30のY方向の両端部においては基板Pに搬送方向に沿って延びるように設けられ、全体として矩形の枠状に構成される。このシール部SEPeは、上記第1の実施の形態で説明したシール部SEP(SEPa、SEPb、SEPc、SEPd)と同様の構成を有する。つまり、シール部SEPeと基板Pとの表面との距離(隙間WS4)は、隙間WS3より小さく設定され、シール部SEPeの基板Pの表面と対向する面CU4には、気体供給部および気体回収部を構成するパッド部(図示略)が設けられている。
液体保持機構30には、隙間WS3に液体LQ1を供給する液体供給部SUPaが複数設けられている。この液体供給部SUPaは、重力方向(Z方向)に関して、異なる位置に配置されている。液体供給部SUPaの噴出口SNbは、面CU3に設けられている。この複数の液体供給部SUPaと、図3で示した調整部26の切換弁26bとは、図示しない複数の連通路によって連通されている。なお、図示しないが、Z方向に関して、異なる位置に配置された複数の液体供給部SUPa(噴出口SNb)の各々は、Y方向に沿って一定の間隔をあけて複数設けられてもよい。
また、複数の液体供給部SUPaより重力が働く方向側(−Z方向側)には、液体保持機構30によって保持されている液体LQ1を回収する液体回収部DRPaが設けられている。具体的には、面CU3の−Z方向側と−Z方向側のシール部SEPeとの間に液体回収部DRPaが設けられている。液体回収部DRPaは、隙間WS3に存在する液体LQ1を回収する。この液体回収部DRPaは、Y方向に沿って一定の間隔をあけて複数設けられている。液体回収部DRPaと、図3で示した調整部26の液体吸引装置26cとは、図示しない連通路によって接続されている。
液体供給部SUPaによって供給された液体LQ1は、重力にしたがって隙間WS3内を流れた後、液体回収部DRPaによって回収される。これにより、現像処理、メッキ処理、または、エッチング処理によって液体(現像液、メッキ液、エッチング液等)LQ1の濃度・温度が低下した場合であっても、古い液体LQ1は回収されて新しい液体LQ1が供給されるので、液体保持機構30によって保持される液体LQ1の濃度・温度を所望の状態に保つことができ、湿式処理の精度が低下することを抑制できる。この液体保持機構30によって液体LQ1が酸素に触れる面積が小さくなるので、現像液、メッキ液、エッチング液等の液体LQ1の酸化を抑制することができ、湿式処理の精度低下を抑制することができる。液体保持機構30は、液体LQ1を隙間WS3の空間で保持するので、現像処理、メッキ処理、または、エッチング処理を行う液体LQ1の量を少なくすることができ、コストを抑えることができる。なお、液体保持機構32の場合も同様に、洗浄によって液体LQ2が汚れた場合であっても、古い液体LQ2は回収されて新しい液体LQ2が供給されるので、湿式処理の精度が低下することもなく、コストを抑えることができる。
また、搬送方向(第1方向)に関して、液体保持機構30が保持する液体LQ1の基板Pの表面との接液長(接液距離)は、実際に液体LQ1が供給されている液体供給部SUPaと液体回収部DRPaとの距離に応じて決まる。したがって、調整部26は、重力が働く方向に関して異なる位置に配置された複数の液体供給部SUPaのうち、液体LQ1を供給する液体供給部SUPaを切り換えることで、液体保持機構30が保持する液体LQ1の接液長を調整することができる。調整部26は、搬送機構40による基板Pの搬送条件(搬送速度等)と、湿式処理の条件(例えば、湿式処理を行う処理時間、液体LQ1の濃度・温度等)との少なくとも一方に基づいて接液長を調整する。その際、複数の液体供給部SUPa(噴出口SNb)のうちの1つから流入する液体LQ1の流量と、液体回収部DRPaから排出される液体LQ1の流量とが等しくなるように調整することで、液体保持機構30の面CU3と基板Pの表面との間の空隙(隙間WS3)に保持される液体LQ1の液面高さは一定に保たれる。
このように、本第2の実施の形態においても、上記第1の実施の形態と同等の効果を得ることができる。なお、2つの液体保持機構30、32を設けるようにしたが、いずれか一方のみを設けるようにしてもよく、液体保持機構30、32が保持する液体LQの種類は、処理する内容によって適宜変更してもよい。また、液体保持機構30においては、液体LQ1が重力にしたがって流れる方向に基板Pを搬送したが、液体LQ1が重力にしたがって流れる方向とは反対側の方向に基板Pを搬送させてもよい。同様に、液体保持機構32においては、液体LQ2が重力にしたがって流れる方向とは反対側の方向に基板Pを搬送させたが、液体LQ2が重力にしたがって流れる方向に基板Pを搬送させてもよい。
[第2の実施の形態の変形例]
上記第2の実施の形態は、以下のような変形も可能である。
(変形例1)変形例1においては、図8に示した液体保持機構30、32に、図7で示した液体センサーMSnを設けて、液体LQ1(LQ2)の液面高さをモニターするようにした。図9、図10は、第2の実施の形態の変形例1による液体保持機構30の構成を示す。液体保持機構32の構成も同様なので、ここでは代表して液体保持機構30のみの構成を説明する。図9に示すように、この変形例1では、液体LQ1が供給される液体供給部SUPa(噴出口SNb)は、液体保持機構30の面CU3の上方(+Z方向)の1ヶ所に設けられる。また、ここでは、5つの液体センサーMS1〜MS5が面CU3の上方から下方にかけて離散的に設けられている。したがって、このような液体センサーMS1〜MS5を用いると、液体供給部SUPa(噴出口SNb)から供給される液体LQ1が、液体保持機構30の面CU3と基板Pの表面(被処理面)との間の空隙(隙間)WS3に注入されて、例えば、図9のように液体センサーMS2とMS3の間に液面LQPがきたことを検知することができる。その後、液体供給部SUPaからの液体LQ1の単位時間当りの流量と、液体回収部DRPaから排出される液体LQ1の単位時間当りの流量とが同じになるように制御する。これにより、液面LQPの高さ位置を液体センサーMS2とMS3の間に維持すること、すなわち、基板Pの表面が液体LQ1と接触する長尺方向の距離(接液長)を維持することができる。
図10は、図9に示した液体保持機構30の面CU3に設けられる液体センサーMS1〜MS5と液体供給部SUPaの噴出口SNbとの配置関係を示す図である。図10において、5つの液体センサーMS1〜MS5は、面CU3のY方向の中央部分に、Z方向に沿って離散的に配置され、液体供給部SUPaの噴出口SNbは、面CU3の上方でY方向の両端に近い位置の2ヶ所に配置されている。各噴出口SNbは、Y方向に細長いスロット状になっているが、複数の小孔をY方向に並べたものでもよい。さらに、面CU3上であって、各噴出口SNbの下側(−Z方向)には、複数の直線的なリム(土手)または溝で構成される液体誘導部LMaが形成されている。この液体誘導部LMaは、噴出口SNbから流入して面CU3に沿って下方に流れ落ちる液体LQ1が液面LQPに達するまでは、液面LQPよりも上方部分の液体センサーMSnに接触するのを防止するためのものである。
液体誘導部LMaは、最も上方の液体センサーMS1から最も下方の液体センサーMS5までの範囲に渡って設けられている。また、液体誘導部LMaを構成するリム(土手)や溝の凹凸量は、図8、図9中に示した隙間WS3よりは小さく、面CU3から1mm以下の寸法でよい。さらに、リム(土手)や溝のY方向の幅寸法と間隔寸法を1mm以下にすると、液体LQ1を液体誘導部LMaに沿って良好に捕捉することができる。但し、液体LQ1が水性の場合と油性(有機溶媒を含む)の場合とではその捕捉状態が異なるので、液体LQ1の種類に応じて、凹凸量、幅寸法、間隔寸法は適当な値に設定される。また、液体誘導部LMaのように噴出口SNbから流出する液体LQ1を捕捉する手段の他に、液体センサーMS1〜MS5のY方向の両側に、液体LQ1に対する撥液性が高い直線状のリム(土手)LMbを設けてもよい。このリムLMbは、隙間WS3の寸法よりは小さな量だけ面CU3に対して突出しており、液面LQPよりも上方に位置する液体センサーMSnに液体LQ1が回り込むことを抑制する。以上の変形例1における噴出口SNbの配置、複数の液体センサーMSnの配置、液体誘導部LMaやリムLMbの設置は、先の図7の液体保持機構22に対しても同様に適用できる。
なお、図9、図10の変形例1では、5個の液体センサー(液面センサー)MS1〜MS5を設けたが、液面LQPの高さ位置の変化を計測する分解能に応じて、その個数はいくつであってもよい。また、液体保持機構30の面CU3の上方の液体センサーMS1は、液体供給部SUPa(噴出口SNb)から注入される液体LQ1が過剰であること(オーバーフロー)を検知するためにも利用できる。さらに、液体保持機構30の面CU3の下方の液体センサーMS5は、液面LQPの急激な低下を検知して液体LQ1の偶発的な遺漏の警報(緊急停止指令)を発するためにも利用できる。
(変形例2)変形例2においては、液体保持機構30、32のメンテナンスが向上するように、液体保持機構30、32を取り付けるというものである。図11Aは、液体LQ1を保持するときの液体保持機構30の配置状態を示し、図11Bは、メンテナンス時の液体保持機構30の配置状態を示す。なお、液体保持機構30の取付構造と液体保持機構32の取付構造とは同一の構成を有することから、液体保持機構30に関してのみ説明する。
液体保持機構30は、液体保持機構30がテンション調整ローラRT10の回転軸AXrを中心に回転(回動)するように設けられている。具体的には、液体保持機構30は、テンション調整ローラRT10のシャフトSfrに取り付けられた支持部材50によって支持されており、この支持部材50は、シャフトSfrに対して回動可能である。したがって、支持部材50をシャフトSfrに対して回動させることで、液体保持機構30を、図11Aの配置状態と図11Bの配置状態とに切り換えることができる。現像処理、メッキ処理、または、エッチング処理等を行う場合は、液体保持機構30の面CU3が平面支持部34で支持された基板Pの表面に対して所定の隙間WS3が形成されるように液体保持機構30を配置する(図11Aの配置状態)。また、液体保持機構30のメンテナンス(清掃作業等)を行う場合は、液体保持機構30の面CU3が平面支持部34で支持された基板Pの表面に対して離間するように液体保持機構30を配置する(図11Bの配置状態)。液体保持機構30を図11Bの配置状態にすることで、基板P(平面支持部34)と液体保持機構30との間の空間が広くなり、液体供給部SUPa、液体回収部DRPa、および、シール部SEPe等へのアクセスが容易になり、点検、清掃、修理が行い易い。
(変形例3)上記第2の実施の形態では、液体保持機構30、32は、重力が働く方向に関して異なる位置に複数の液体供給部SUPaを備えるようにしたが、変形例3では、液体保持機構30、32は、面CU3の上方に1つの液体供給部SUPaを備え、重力が働く方向に関して異なる位置に複数の液体回収部DRPaを備えている。この複数の液体回収部DRPaは、液体供給部SUPaよりも−Z方向側に設けられている。液体LQを供給する液体供給部SUPaと液体LQを回収する液体回収部DRPaとの距離に応じて所定長の長さが決まるので、変形例3においても、調整部26が、複数の液体回収部DRPaのうち、液体LQを回収する液体回収部DRPaを切り換えることで、上記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。この液体LQを回収する液体回収部DRPaの切り換えは、上記第1の実施の形態の変形例3のように切換弁を制御することで行われる。この場合、複数の液体回収部DRPaは、前記切換弁を介装して液体吸引装置26cに接続されている。
(変形例4)上記第2の実施の形態では、平面支持部34、36で、基板Pを平面状に支持するようにしたが、上記第1の実施の形態のように、回転ドラムDRを用いて基板Pを曲面状(円筒面状)に支持してもよい。この場合は、液体保持機構30、32の面CU3は、回転ドラムDRによって支持された基板Pの表面に対して所定の隙間(一定の隙間)が形成されるように形成されている。つまり、面CU3は、湾曲して形成される。また、シール部SEPeの面CU4も回転ドラムDRの外周面に倣って湾曲している。
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態について説明する。図12は、第3の実施の形態の処理装置(湿式処理装置)PR4の構成を説明する図である。処理装置PR4は、搬送機構60、液体保持機構62、64、調整部66、68、および、乾燥装置70を備える。
搬送機構60は、処理装置PR3から送られてきた基板Pを処理装置PR5に向けて搬送方向に搬送する。搬送機構60は、基板Pの搬送方向に沿って上流側から順に、駆動ローラR20、テンション調整ローラRT20、湿式処理用の第1の回転ドラムDR1、ローラR21、湿式処理用の第2の回転ドラムDR2、ローラR22、および、駆動ローラR23を備える。前工程の処理装置PR3から送られてきた基板Pは、駆動ローラR20およびテンション調整ローラRT20に長尺方向に沿って掛け渡された後、回転ドラムDR1に案内される。駆動ローラR20は、処理装置PR3から送られてきた基板Pを回転ドラムDR1に向けて搬送する。
回転ドラムDR1は、上記第1の実施の形態で説明した回転ドラムDRと略同一の構成を有する。つまり、回転ドラムDRは、中心軸AXoと、中心軸AXoから一定半径の円筒状の外周面とを有し、外周面(円筒面)に倣って基板Pの一部を搬送方向(長尺方向)に湾曲させて支持しつつ、中心軸AXoを中心に回転して基板Pを搬送方向(+X方向)に搬送する。回転ドラムDR1は、重力が働く方向側(−Z方向側)で、裏面側から基板Pを支持する。
回転ドラムDR1から搬出された基板Pは、ローラR21に長尺方向に沿って掛け渡された後、回転ドラムDR2に案内される。この回転ドラムDR2も同様に、上記第1の実施の形態で説明した回転ドラムDRと略同一の構成を有する。回転ドラムDR2は、重力が働く方向側(−Z方向側)で、裏面側から基板Pを支持する。回転ドラムDR2から搬出された基板Pは、ローラR22および駆動ローラR23に長尺方向に沿って掛け渡された後、後工程の処理装置PR5に案内される。
テンション調整ローラRT20は、回転ドラムDRに巻き付けられて支持されている基板Pに、所定のテンションを与えている。テンション調整ローラRT20は、+X方向に付勢されるが、通常のローラでは基板Pの被処理面(湿式処理される面)と密接するため、外周面に多数の気体噴出孔を有するエアー・ターンバー等によって、非接触(若しくは低摩擦)状態で基板Pの搬送方向を折り曲げるような構成とするのがよい。ローラR22は、図12の構成では基板Pの被処理面(液体で濡れた面)と接触するような配置となる。そのため、ローラR22の外周面は液体によって影響されない材質で被覆されている。他の構成として、ローラR22を比較的柔らかいゴムローラとし、その外周面に一定の厚さのスポンジ等の液体吸収素材を被覆したものとしてもよい。駆動ローラR20、R23および、回転ドラムDR1、DR2は、上位制御装置12によって制御されて駆動するモータや減速機構等を備える回転駆動源(図示略)からの回転トルクが与えられることで回転する。
液体保持機構62、64は、回転ドラムDR1、DR2の重力が働く方向側(−Z方向側)に設けられている。液体保持機構62、64は、回転ドラムDR1、DR2の−Z方向側に巻き付けられている基板Pの表面に、湿式処理を行うための液体(処理液)LQが搬送方向(第1方向)に関して所定長(接液距離)に亘って湿式処理を行うための液体(処理液)LQを保持する。液体保持機構62は、回転ドラムDR1の−Z方向側で液体LQ1を保持し、液体保持機構64は、回転ドラムDR2の−Z方向側で液体LQ2を保持する。液体保持機構62、64は、基板Pの少なくとも一部の領域の表面が液体LQに接触するように液体LQを保持する。液体保持機構62は、液体LQ1(現像液またはメッキ液)を保持することで、基板Pに対して現像処理またはメッキ処理を行うことができる。液体保持機構62より基板Pの搬送方向の下流側に配置されている液体保持機構64は、液体LQ2(洗浄用の液体、例えば、水)を保持することで、液体LQ1が付着した基板Pを洗浄することができる。この液体保持機構62、64と回転ドラムDR1、DR2とは、液体保持機構62、64と回転ドラムDR1、DR2との3次元的な位置関係を精度よく保つための図示しない支持機構によって支持されている。なお、回転ドラムDR1、DR2は、液体保持機構62、64によって液体LQが保持される所定長(接液長)以上の長さで基板Pを支持している。
一例として、基板Pが回転ドラムDR1の外周面に密着して支持される搬送方向の長さは、回転ドラムDR1の外周の約180度に渡る範囲であり、液体保持機構62によって保持される液体LQ1と接触する基板Pの搬送方向の長さは、回転ドラムDR1の外周の約90〜120度に渡る範囲に設定される。以上の液体保持機構62、64は、保持する液体LQが異なるだけで、その構成は同一ものであることから、以下では液体保持機構62についてのみ説明する。また、液体保持機構62で保持される液体LQ1の基板Pの搬送方向における接液長を調整する調整部66と、液体保持機構64で保持される液体LQ2の基板Pの搬送方向における接液長を調整する調整部68とは、扱う液体LQが異なるだけでその構成は同一のものであるから、調整部66についてのみ説明する。
液体保持機構62は、回転ドラムDR1の下部全体を下(−Z方向側)から覆う箱状の形状、例えば、円筒状のドラム缶等をXY平面と平行な平面で切断して得られる略半円筒の形状を有する。液体保持機構62の上部には、回転ドラムDR1の外周面(湾曲)に倣うように支持された基板Pの表面(または回転ドラムDR1の外周面)に対して所定の隙間(ギャップ)WS5が形成されるように面(円筒面、曲面)CU5が設けられている。したがって、曲率中心を一致させた場合、湾曲して支持された基板Pの曲率半径(または回転ドラムDR1の外周面の曲率半径)に対して、面CU5の曲率半径は、隙間WS5分だけ大きく設定される。この面CU5は、回転ドラムDR1によって支持された基板Pの表面(または回転ドラムDR1の外周面)と対向するように設けられている。面CU5のY方向の幅は、少なくとも、回転ドラムDR1のY方向の幅よりも広く設定されている。液体保持機構62は、面CU5と基板Pとの隙間WS5で液体LQ1を保持することが可能である。これにより、液体LQ1は、面CU5が形成された所定領域で保持されるので、この所定領域内で基板Pの表面が液体LQ1に浸される。液体LQ1は、隙間WS5で保持されるので、液体保持機構62は、円筒状に湾曲した基板Pの表面(または回転ドラムDR1の外周面)から径方向に所定の厚み(一定の厚み)となるように液体LQ1を保持することが可能である。また、液体保持機構62は、回転ドラムDR1の下部全体を下(−Z方向側)から覆う略半円筒の形状を有するので、上記第1、第2の実施の形態、その変形例のようにシール部SEP(SEPa〜SEPe)を設けなくても、液体LQ1が液体保持機構62から漏れることはない。
液体保持機構62の上部であって、X方向の両端側にそれぞれ隙間WS5に液体LQ1を供給する液体供給部SUPbがそれぞれ設けられている。つまり、液体保持機構62の上部の−X方向側と+X方向側とに液体供給部SUPbが設けられている。そして半円筒の形状の液体保持機構62には、回転ドラムDR1の最下端部(最も−Z方向側)に、隙間WS5に存在する液体LQ1を回収する液体回収部DRPbが設けられている。この液体供給部SUPbの供給口、および液体回収部DRPbの回収口は、液体保持機構62の面CU5のY方向に沿って一定の間隔で複数設けてもよいし、1つのスリット状に形成されていてもよい。
調整部66は、液体保持機構62の液体供給部SUPbから供給される液体LQ1の流量と、液体保持機構62の液体回収部DRPbで回収される液体LQ1の流量とを調整(制御)することで、液体保持機構62によって保持される液体LQの基板Pとの接液長(接液距離)を調整する。調整部66は、供給するための液体LQ1を貯留する容器CA1と、回収された液体LQ1を受ける容器CA2と、液体保持機構62の液体供給部SUPbに供給する液体LQ1の流量を制御するとともに、液体保持機構62の液体回収部DRPbが回収する液体LQ1の流量を制御する流量制御装置FLCとを有する。流量制御装置FLCは、通常は、容器CA1に貯留された液体LQ1の液体保持機構62への供給流量と、液体保持機構62で保持された液体LQ1の容器CA2への回収流量とが等しくなるように制御する。これによって、液体保持機構62に保持される液体LQ1の液面高さが一定に保たれる。流量制御装置FLCは、上位制御装置12によって制御されるが、液体LQ1の温度を調整する機能を持たせてもよい。
液体供給部SUPbによって供給された液体LQ1は、重力にしたがって隙間WS5内を流れた後、液体回収部DRPbによって回収される。これにより、現像処理またはメッキ処理によって液体(現像液やメッキ液等)LQ1の濃度・温度が低下した場合であっても、古い液体LQ1は回収されて新しい液体LQ1が供給されるので、湿式処理の精度が低下することを抑制できる。この液体保持機構62によって液体LQ1が酸素に触れる面積が小さくなるので、現像液、メッキ液等の液体LQ1の酸化を抑制することができ、湿式処理の精度低下を抑制することができる。液体保持機構62は、液体LQ1を隙間WS5の空間で保持するので、液体LQ1の量を少なくすることができ、コストを抑えることができる。なお、液体保持機構64の場合も同様に、洗浄によって液体LQ2が汚れた場合であっても、古い液体LQ2は回収されて新しい液体LQ2が供給されるので、湿式処理の精度が低下することもなく、コストを抑えることができる。
液体保持機構62は、供給された液体LQを回転ドラムDRの下方(−Z方向)から保持する箱状の形状(本第3の実施の形態では、略半円筒の形状)を有する。したがって、液体供給部SUPbから供給された液体LQの流量、および、液体回収部DRPbで回収される液体LQの流量に応じて、液体保持機構62、64で保持される液体LQの液面の高さが変わる。これにより、液体保持機構62が隙間WS5で保持する液体LQ1の搬送方向に関する接液長を調整することができる。例えば、接液長を短縮したい場合は、隙間WS5に供給される液体LQの流量に対して、回収される液体LQの流量を所定時間の間だけ多くし、接液長を伸長したい場合は、隙間WS5に供給される液体LQの流量に対して、回収される液体LQの流量を所定時間の間だけ少なくする。調整部66は、搬送機構60による基板Pの搬送条件(搬送速度等)と、湿式処理の条件(例えば、湿式処理を行う処理時間、液体LQ1の濃度・温度等)との少なくとも一方に基づいて接液長を調整する。
乾燥装置70は、ローラR22から駆動ローラR23に向かって搬送される基板Pに対して、洗浄後の基板Pに付着している液体LQ2を除去する。乾燥装置70は、例えば、ドライエアー等の乾燥用エアーを基板Pの表面に吹き付けることで液体LQ2を乾燥させる。図12においては、駆動ローラR23を乾燥装置70内に設けるようにしたが、乾燥装置70を、ローラR22と駆動ローラR23との間に設けるようにしてもよい。
このように、本第3の実施の形態においても、上記第1の実施の形態と同等の効果を得ることができるとともに、液体の遺漏を防止するためのシール部SEPが不要となり、液体保持機構の構成が簡素になるといった利点がある。なお、2つの液体保持機構62、64を設けるようにしたが、いずれか一方のみを設けるようにしてもよく、液体保持機構62、64が保持する液体LQの種類は、処理する内容によって適宜変更してもよい。また、湿式処理装置として機能する処理装置PR5も、図12で示す処理装置PR4と同一の構成を有してもよい。この場合は、液体保持機構62が保持する液体LQ1を、処理装置PR5に適した液体(エッチング液)に代えればよい。
[第4の実施の形態]
次に、第4の実施の形態について説明する。図13は、第4の実施の形態における処理装置PR4、PR5の液体保持機構80および調整部82の構成を示す図、図14は、図13を−Y方向側からみた液体保持機構80の簡略側面図、図15は、図14のXV−XV線一部断面図である。第1の実施の形態(変形例も含む)の液体保持機構22、24、第3の実施の形態の液体保持機構62、64を、第4の実施の形態の液体保持機構80に置き換えることができる。なお、第4の実施の形態においても、上記第1の実施の形態と異なる部分のみについて説明する。
第4の実施の形態においては、比較的に大きな直径(例えば直径20〜100cm)の回転ドラムDRが設けられ、その回転ドラムDRの外周面DRaのY方向(中心軸AXoの方向)の両端側には、基板Pを支持する外周面DRaよりも径が大きいフランジ部FRが全周に亘って設けられている。この一対のフランジ部FRは、液体保持機構80の一部を構成する。回転ドラムDRは、上記第1の実施の形態で説明した回転ドラムDRと同一の構成を有する。回転ドラムDRとフランジ部FRとは、一体的に設けられており、回転ドラムDRが中心軸AXo回りに回転すると、それに応じてフランジ部FRも一緒に中心軸AXo回りに回転する。回転ドラムDRは、Y方向の両端部に設けられたフランジ部FRの内側であって、回転ドラムDRの重力が働く方向側(−Z方向側)で回転ドラムDRの外周面に倣うように裏面側から基板Pを支持する。回転ドラムDRの外周面DRaの半径と、フランジ部FRの外周面FRaの半径との差分、すなわち、フランジ部FRの外周面DRaからの径方向の段差量は、保持する液体の容量を少なくするとともに、保持された液体に適度な流動性を与えるために、例えば、1mm〜数mm程度に設定される。また、フランジ部FRのY方向の幅は、数mm〜十数mm程度に設定され、その外周面FRaは高い撥液性となるように表面処理されている。
液体保持機構80は、フランジ部FRの他に、可動ローラR30、R31と、ローラR32と、テンション調整ローラRT30、RT31と、液体保持ベルトBTと、可動ローラR30、R31を回転ドラムDRのフランジ部FRの外周面FRaに沿って移動させるための可動部材84、86とを備える。環状の液体保持ベルトBTは、可動ローラR30、R31、ローラR32、および、テンション調整ローラRT30、RT31に掛け渡されている。図14に示すように、液体保持ベルトBTは、可動ローラR30、R31、および、ローラR32と、一対のフランジ部FRの外周面FRaとで挟持されている。また、テンション調整ローラRT30、RT31は、可動ローラR30、R31、ローラR32に掛け渡された液体保持ベルトBTが弛まないように、液体保持ベルトBTに長尺方向に所定のテンションを与えている。このテンション調整ローラRT30、RT31は、−Z方向に付勢されている。これにより、液体保持ベルトBTは、液体保持ベルトBTの搬送方向からみて、可動ローラR30、ローラR32、可動ローラR31の範囲内で、Y方向の両端部に設けられたフランジ部FRの外周面FRaと密着しながら巻き付けられた状態となる。回転ドラムDRの重力が働く方向側で、液体保持ベルトBTがフランジ部FRの外周面FRaに密着しながら巻き付けられるように、可動ローラR30、R31、ローラR32、および、テンション調整ローラRT30、RT31は、配置されている。
フランジ部FRは、回転ドラムDRの外周面DRaから径方向に一定の厚みを有するように形成されている。したがって、図15に示すように、回転ドラムDRによって支持された基板Pの表面(または回転ドラムDRの外周面DRa)と一対のフランジ部FRの外周面FRaに巻き付けられた液体保持ベルトBTとの間に所定の隙間WS6が形成される。この隙間WS6は、液体を所定の厚み(一定の厚み)で保持する空間となる。この一対のフランジ部FRの外周面FRaに密着して巻き付けられた液体保持ベルトBTの基板Pと対向する面をCU6と呼ぶ。この面CU6は、フランジ部FRの外周面FRaの円弧状の曲面に倣って湾曲している。図15においては、液体保持ベルトBTのみを断面で表している。
液体保持機構80は、フランジ部FRの外周面FRaに巻き付けられた液体保持ベルトBTの面CU6と回転ドラムDRによって支持されている基板Pの表面との隙間WS6で液体LQを保持することが可能となる。これにより、液体保持機構80は、回転ドラムDRの重力が働く方向側で、回転ドラムDRによって支持された基板Pの表面に、液体LQが基板Pの搬送方向に関して所定長に亘って接触するように液体LQを保持することができる。液体LQは、液体保持ベルトBTが一対のフランジ部FRの外周面FRaに巻き付けられる長さで保持されるので、液体LQが保持される周方向(基板Pの搬送方向)の長さは、可動ローラR30、R31間の距離に応じて決まる。なお、フランジ部FRは、液体保持機構80によって保持される液体LQがY方向に漏れ出すことを防止する土手(シール部材)として機能している。
図13に示すように、可動ローラR30は、可動部材84の先端側の軸受部84Aに回転可能に支持され、可動ローラR31は、可動部材86の先端側の軸受部86Aに回転可能に支持されている。また、可動部材84、86の他端側は、回転ドラムDRのシャフトSftに対して回動可能にシャフトSftに取り付けられている。可動部材84、86が、回転ドラムDRのシャフトSftを中心にして回動することで、可動ローラR30、R31は、フランジ部FRの外周面FRaに沿って旋回(公転)移動する。さらに、可動ローラR30の軸受部84Aは、可動部材84上を回転ドラムDRの径方向に微動可能に構成されるとともに、中心軸AXoに向かうようにバネ部材等で常時付勢されている。これにより、液体保持ベルトBTは、可動ローラR30の外周面によってフランジ部FRの外周面FRaに良好に密着される。同様に、可動ローラR31の軸受部86Aも中心軸AXoに向かうようにバネ部材等で常時付勢され、液体保持ベルトBTは、可動ローラR31の外周面によってフランジ部FRの外周面FRaに良好に密着される。なお、ローラR32も、回転ドラムDRの中心軸AXoの方向に向かうようにバネ部材等によって常時付勢されている。
以上の構成において、例えば、図13、図14の状態から可動ローラR30、R31が外周面FRaに沿って−Z方向側に移動すると、可動ローラR30、R31間のX方向の距離(周方向の間隔)が小さくなり、液体保持ベルトBTがフランジ部FRの外周面FRaに巻き付けられる長さが短くなる。それによって、液体保持機構80が保持することが可能な液体LQの搬送方向の長さは短くなる。逆に、可動ローラR30、R31が外周面FRaに沿って+Z方向に移動すると、可動ローラR30、R31間のX方向の距離(周方向の間隔)が大きくなるので、液体保持機構80が保持することが可能な液体LQの搬送方向に関する長さは長くなる。
なお、図14に示すように回転ドラムDRの中心軸AXoから−Z方向側に延びるZ軸と平行な線を便宜上基準線Pocとし、可動部材84の基準線Pocに対する回動角度をθ1で表し、可動部材86の基準線Pocに対する回動角度をθ2とで表すとすると、可動部材84、86は、通常のモードではθ1=θ2となるように回動する。つまり、基準線Pocに対して対称となるように可動部材84、86は回動可能である。また、可動部材84、86は、回動角度θ1、θ2が90度以下の角度の範囲で回動する。つまり、可動ローラR30、R31は、可動部材84、86の回動によって、回転ドラムDRの中心軸AXoよりも+Z方向側に移動することはない。
可動部材84には、液体LQを隙間WS6に供給する液体供給部SUPcが設けられており、可動部材86には、液体保持機構80の隙間WS6に保持されている液体LQを回収する液体回収部DRPcが設けられている。この液体供給部SUPcは、可動部材84が回転ドラムDRのシャフトSftに対して回動することで、可動ローラR30と一緒にフランジ部FRの外周面FRaに沿って旋回移動する。また、液体回収部DRPcは、可動部材86が回転ドラムDRのシャフトSftに対して回動することで、可動ローラR31と一緒にフランジ部FRの外周面FRaに沿って旋回移動する。これにより、可動ローラR30、R31のZ方向の位置に応じて、液体保持機構80の隙間WS6中に保持される液体LQの液面高さも変わり、基板Pの搬送方向に関する液体LQとの接液長も変わることになる。
調整部82は、液体供給部SUPcに液体LQを供給する液体供給装置82aと、液体回収部DRPcからの液体LQを吸引して回収する液体吸引装置82bと、可動部材84、86を回転ドラムDRのシャフトSftに対して回動させるアクチュエータ82cと、液体供給装置82a、液体吸引装置82b、および、アクチュエータ82cを制御するCPU等を含む制御部82dとを有する。この制御部82dは、上位制御装置12によって制御される。この調整部82は、搬送機構(20、40、60等)による基板Pの搬送条件(搬送速度等)と、湿式処理の条件(例えば、湿式処理を行う処理時間、液体LQ1の濃度・温度等)との少なくとも一方に基づいて、アクチュエータ82cを制御して接液長を調整する。なお、調整部82は、接液長を調整する際に、液体供給装置82aが供給する液体LQの流量、および、液体吸引装置82bが吸引する液体LQの流量の少なくとも一方を所定の時間の間だけ調整してもよい。
図14に示すように、液体供給部SUPcの液体LQを吐出する先端の開口部は、Y方向に細長く延びたスリット状に形成され、可動ローラR30で折り曲げられる液体保持ベルトBTの面CU6と基板P(回転ドラムDRの外周面DRa)との間の隙間WS6内に配置される。同様に、隙間WS6内の液体LQを回収する液体回収部DRPcの先端の開口部は、Y方向に細長く延びたスリット状に形成され、可動ローラR31で折り曲げられる液体保持ベルトBTの面CU6と基板P(回転ドラムDRの外周面DRa)との間の隙間WS6内に配置される。隙間WS6が狭い場合は、液体供給部SUPcおよび液体回収部DRPcの先端部に、多数の毛細管(注射針、可撓性のある極細チューブ等)をY方向に並べて設けることで液体LQを供給/回収することができる。
また、可動部材84の基準線Pocに対する回動角度θ1と可動部材86の基準線Pocに対する回動角度θ2とを、通常モードでのθ1=θ2の状態から、回動角度θ1の方が僅かに大きいθ1>θ2の状態に設定してもよい。この場合、可動ローラR30のZ方向の高さ位置に対して、可動ローラR31のZ方向の高さ位置が若干低くなるため、隙間WS6内に貯留される液体LQは、液体回収部DRPc側では液体保持ベルトBTの可動ローラR31で折り返された部分からオーバーフローする傾向になる。したがって、そのオーバーフローによる液体LQの漏れ出しが生じないように、液体回収部DRPcによる液体の回収流量が調整部82によって制御される。
以上のように、隙間WS6内に貯留される液体LQによって、現像処理、メッキ処理、エッチング処理、または、洗浄処理が行われるが、本第4の実施の形態においても、液体LQ1(現像液、メッキ液やエッチング液)の濃度・温度が低下した場合、または、液体LQ2(純水等の洗浄液)が洗浄により汚れた場合は、古い液体LQ1、LQ2は回収されて新しい液体LQ1、LQ2が供給されるので、湿式処理の精度が低下することを抑制することができる。この液体保持機構80によって液体LQ1が酸素に触れる面積が小さくなるので、現像液やメッキ液等の酸化を抑制することができ、湿式処理の精度低下を抑制することができる。液体保持機構80は、液体LQ(LQ1、LQ2)を隙間WS6の空間で保持するので、液体LQの量を少なくすることができ、コストを抑えることができる。
液体LQは、液体保持ベルトBTが一対のフランジ部FRの外周面FRaに巻き付けられる長さで保持されるので、可動ローラR30、R31の位置に応じて液体LQが基板Pの搬送方向に関して保持される長さが変わる。したがって、調整部82は、可動部材84、86を回転ドラムDRのシャフトSftに対して回動させることで、可動ローラR30、R31の位置を変えて、液体LQの基板Pとの接液長を調整することができる。このように、本第4の実施の形態においても、上記第1の実施の形態と同等の効果を得ることができる。
[第5の実施の形態]
次に、第5の実施の形態について説明する。図16は、第5の実施の形態における処理装置PR5(液体を用いた洗浄処理装置)の液体保持機構90の構成を示す図である。液体保持機構90の基本的な構成は、先の図12に示した液体保持機構64(または62)と同様であり、回転ドラムDRのシャフトSftよりも−Z方向側の外周面DRaに沿って、円筒状の内面(曲面)CU7を有する液体保持パット部91が設けられる。回転ドラムDRに支持される基板Pの表面(または回転ドラムDRの外周面DRa)と、液体保持パット部91の内面(面)CU7との隙間WS7は、回転ドラムDRの下半分の周方向に沿って、略一定となるように設定されている。隙間WS7内には、液体保持パット部91の左右の高い位置に設けられた液体供給部SUPdから供給される液体LQ2(純水等の洗浄液)が貯留される。隙間WS7内の液体LQ2は、液体保持パット部91の内面CU7の最も低い位置に設けられた液体回収部DRPdを介して回収される。液体保持パット部91内に貯留される液体LQ2の液面LQa(大気との界面)は、ここでは、液体供給部SUPdの面(内面)CU7に形成される供給口よりも下の位置に留まるように調整される。
さらに、第5の実施の形態による液体保持機構90の液体保持パット部91には、内面CU7の周方向およびY方向(中心軸AXoの方向)に沿って複数の固体光源(半導体レーザ、LED等)92が埋設され、基板Pに向けて洗浄用の紫外線を照射する。すなわち、液体保持機構90は、隙間WS7に満たされる液体LQ2(洗浄液)を介して、固体光源92からの紫外線を基板Pの表面に照射することで、洗浄効果を高めることができる。前工程において基板Pの表面に付着した不要な有機物(有機系の溶剤)や異物(エッチング時の金属粒子、メッキ時のメッキ核の残渣等)は、基板Pの表面に接する洗浄液を所定の流速で流すことで除去可能であるが、基板Pの表面に付着した微細な有機物は同時に紫外線を照射すると剥がれ易くなる。
図17は、図16中の液体保持機構90の液体保持パット部91と回転ドラムDRとをXVII−XVII線矢視で破断した部分断面図である。図17のように、回転ドラムDRは、シャフトSftがY方向に貫通して設けられた中空構造となっており、外周面DRaの内部には、回転ドラムDRの温度を制御して液体LQ2や基板Pの温度を調整する温調ユニット93A、93Bが設けられる。温調ユニット93A、93Bは、例えば、電熱線、赤外線光源、セラミックヒーター、ペルチェ素子等である。基板Pの厚みは数百μm以下であるので、基板Pが回転ドラムDRの外周面DRaに密着保持されると、基板Pの温度は直ちに回転ドラムDRの温度と同じになる。さらに、基板Pの表面(回転ドラムDRの外周面DRa)と液体保持パット部91の内面CU7との間の隙間WS7、および、回転ドラムDRのY方向の端面DRbと液体保持パット部91のY方向の側壁部との隙間WS7’を数mm程度以下にすると、液体保持パット部91内に貯留される液体LQ2も回転ドラムDRの温度に直ちに馴染ませることができる。
複数の固体光源92は、液体保持パット部91の内面CU7に設けられた貫通穴91Bに埋設されるが、そのままだと、貫通穴91B内の固体光源92の周囲に液体LQ2が溜まって、汚染物質が析出する場合がある。さらに、貫通穴91Bを固体光源92で封止するような構造であっても、その封止が不完全だった場合に液体LQ2が液体保持パット部91の外側に染み出したりする虞がある。そこで、本第5の実施の形態では、液体保持パット部91の内面CU7に形成される多数の貫通穴91Bの上に、0.1mm程度の極薄ガラス基板(極薄のガラス板)95を設け、貫通穴91Bへの液体LQ2の進入を防止する。極薄ガラス基板95は、可撓性を有するので、液体保持パット部91の内面CU7に沿って密着させて貼り付けることができる。
多数の固体光源92は、例えば、波長400nmよりも短い紫外線光を、連続的または間欠的に投射する。固体光源92の発光波長は、洗浄効果が得られるように設定されるが、発光波長が300nm以下の場合は、固体光源92を間欠的にパルス発光させることで、高輝度な紫外線光が得られる。本第5の実施の形態の固体光源92は、高輝度な紫外線ビームを出力する気体レーザ光源(エキシマ)やファイバーレーザ光源等からのビームを、多数の光ファイバーの入射端に導光し、個々の光ファイバーの射出端を貫通穴91Bの各々の位置(極薄ガラス基板95の内側)に配置した光照射ユニットに置き換えてもよい。
以上の第5の実施の形態では、液体LQ2を純水等の洗浄液とした洗浄プロセスに適用するものとしたが、その他の液体によって基板Pの表面を化学的に処理する場合に、特定波長の光エネルギーを投射して化学的な反応を誘導、または促進させることができるプロセスにも適用可能である。例えば、基板Pの表面に塗布されたメッキ還元材の層を紫外線でパターニング露光した後に、基板Pの表面をパラジウムイオン等を含むメッキ液に浸して無電解メッキを行う場合、液体保持機構90の液体保持パット部91で保持される液体をメッキ液にして、固体光源92または光照射ユニットからの特定波長の光エネルギーを、メッキ液を介して基板P上に照射すると、メッキ核の析出が促進される。なお、特定波長は紫外域には限定されず、可視域や赤外域の波長であってもよい。
[第6の実施の形態]
次に、図18を参照して第6の実施の形態による湿式処理装置の液体保持機構の構成を説明する。本第6の実施の形態による湿式処理装置では、基板Pは被処理面を上側にして、XY面と平行にX方向(長尺方向)に水平に搬送される。そのため、図18では図示を省略してあるが、先の図8や図9に示したような平面支持部34、36が基板Pの下面側(−Z方向側)に設けられ、基板Pの被処理面が水平になるように基板Pを支持する。本第6の実施の形態では、基板Pの被処理面と対向するように配置された液体保持機構100が設けられる。この液体保持機構100の下面側(基板Pと対向する面側)には、液体供給部SUPfから供給される液体LQを重力に抗して保持可能であるとともに、透過することができるスポンジ材、ブラシ、グラスウール、多孔質セラミック等による液捕捉部101AがX方向に分割されて設けられている。この液捕捉部101Aの下面は、隙間WS8で基板Pの表面と略平行になるように形成される。各液捕捉部101Aは、液体保持機構100の内側の空間101B内に設けられた複数の仕切り板101Cによって、XY面内で複数の領域に区分けされて設けられる。
液体供給部SUPfからの液体LQは、液体保持機構100の天井板部分の内部に形成された流路101Dを介して、複数の仕切り板101CでX方向に仕切られた複数の空間101Bの各々に供給される。液体LQは、複数の空間101B内に一時的に貯留されたのち、液捕捉部101Aを通って隙間WS8内に満たされる。液体保持機構100は、液体LQの粘性に応じて異なるが、隙間WS8が数mm以下、好ましくは1mm以下となるように、Z方向の高さ位置が調整可能となっている。液体保持機構100の下面側には、基板Pの被処理面と対向して液捕捉部101Aの周囲を取り囲むような矩形状の枠部100Aが設けられ、枠部100Aの基板Pと対向する面には、隙間WS8から漏れ出してくる液体LQを回収する回収口(または回収溝)100Bが形成されている。回収口(または回収溝)100Bからの液体LQは液体回収部DRPfを介して回収される。枠部100Aの下面と基板Pの被処理面との間隔は、図18では隙間WS8よりも僅かに大きく示したが、隙間WS8と同じにしてもよいし、隙間WS8よりも僅かに小さくしてもよい。
図18の液体保持機構100では、基板Pが液捕捉部101Aの下方を通る間、隙間WS8に満たされる液体LQで基板Pの被処理面は一様に接液して液処理が行われる。したがって、液捕捉部101Aの下方空間からX方向に抜け出した基板Pの表面部分には、残留した液体LQの液層(液膜)が残り、湿った状態になる。その場合、液捕捉部101Aの下方空間から抜け出した基板Pの表面部分を、そのまま搬送し続けると、残留した液体LQの液層(液膜)による化学的な反応が進む場合がある。液体LQが現像液であると、基板P上に残留した液体LQの液層(液膜)によって、現像によるレジスト層の食刻がオーバー気味になったり、残留した液体LQの液層のムラによって現像ムラとなったりするおそれがある。そこで、図18に示した液体保持機構100と同様の液体保持機構100’を、基板Pの搬送方向に沿った下流側に隣接して設け、上流側の液体保持機構100で使用する液体LQは、現像液、メッキ液、エッチング液等の化学的な処理を施す液体LQ1とし、下流側の液体保持機構100’で使用する液体LQは、基板P上に残留した液体LQ1を除去する洗浄液(純水等)LQ2とすることができる。これによって、化学的な処理時間や処理状態を正確に維持することが可能となる。このような機能は、先の各実施の形態、および各変形例のいずれにおいても同様に適用され得る。
また、図18の液体保持機構100では、液体保持機構100の天井板部分の流路101Dを介して、仕切り板101CでX方向に仕切られた複数の空間101Bの各々に同時に液体LQが供給されるように示したが、流路101Dに切換弁(選択弁)機構を設け、複数の空間101Bのうちの選択された1つまたは幾つかの空間101Bのみに液体LQを供給するようにし、その液体が供給される空間101Bに対応した特定の液捕捉部101Aのみから隙間WS8に液体LQを供給するようにしてもよい。例えば、図18では複数の空間101Bは8つであり、そのうち、+X方向の右側に並んだ4つの空間101Bだけに液体LQを供給するように制御すると、基板Pの被処理面の液体LQとの接液長は約半分となる。したがって、複数の空間101Bのうちの液体LQを供給する空間101Bを選択することによって、基板Pの搬送速度を大きく変えられない場合であっても、基板Pの液体LQとの接液長を容易に調整できるようになり、液体処理の自由度、正確さが向上する。このように、本第6の実施の形態では、基板Pの搬送方向(X方向)に沿って分割された複数の液捕捉部101Aのうちで液体LQを供給する液捕捉部101Aを、流路101Dの切換え機構、または複数の空間101Bごとに個別に接続される配管(パイプ)による個別の液体供給機構が、液体の基板Pとの接液長を調整する調整部となっている。
本第6の実施の形態でも、液体保持機構100の液捕捉部101Aの下面の面積部分で、液体LQがmmオーダーの薄い液層状態となって基板Pの表面に接触するため、液体LQの使用量が抑えられるとともに、液体LQの空気との接触面積も少なくすることができるため、液体LQの劣化(酸化等)を抑えることができる。また、液体保持機構100の液捕捉部101Aによって設定される隙間WS8のX方向の全長(Laとする)は有限であり、基板PのX方向の搬送速度(Vxとする)を一定とする場合、隙間WS8での基板Pの最大の接液時間は、La/Vxとなり、それ以上の接液時間を得ることができない。そのような場合は、図18に示す液体保持機構100をX方向に隣接して複数配置すれば、接液時間を倍増させることができる。さらに、本第6の実施の形態による液体保持機構100の全体を円筒状に湾曲させて、複数の液捕捉部101Aの下面全体をX方向に関して一定の曲率の円筒状(曲面状)に形成し、回転ドラムDRの外周面に支持された基板Pの被処理面に液体保持機構100を対向配置する構成にした場合も、同様に液体処理することができる。
なお、複数の液捕捉部101Aの下方側(−Z方向側)に、複数の液捕捉部101Aの下面と接触するように、極薄の板(例えば、金属板)を設けるようにしてよい。液捕捉部101Aは、スポンジ材、ブラシ等の形状が変形しやすい柔軟な素材で構成されているため、液捕捉部101Aの下面と基板Pの表面との隙間(距離)WS8が変化しやすいが、極薄の金属板を設けることで、隙間WS8の厚み(長さ)を一定に保つことができる。この場合、液捕捉部101Aからの液体LQが隙間WS8に供給されるように、この極薄の金属板には、微細なメッシュ若しくは微細な複数の孔が形成されている。