JP2018084100A - 免震建物 - Google Patents
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Abstract
Description
半導体製造工場や精密機械工場等のような、わずかな振動が生産効率や製品の性質に影響を及ぼす嫌振装置が設置されている建物においても、免震装置が備えられている場合が多い。嫌振装置は一般的に高額であり、また、嫌振装置が設置された建物においては付加価値が高い製品を生産していることが多い。したがって、免震装置を設けることにより、地震に起因する嫌振装置の損傷や、操業の停止によって、多大な損害を被ることを防止している。特許文献1には、剛すべり支承を用いた、多数の嫌振機器が配置された構造物を免震化する、免震構造が開示されている。
特許文献3には、図12に示されるような免震建物110が開示されている。免震建物110においては、上部構造部111と下部構造部112との間に、それぞれの柱113位置に合わせて、免震ゴム支承として構成された免震装置116が介在されている。上部構造部111の床部114は、スパンの中間で、支持装置115を介して下部構造部112に支持されている。支持装置115は、下部構造部112に固定された金属製すべり受け部115aと、上部構造部111に固定された金属製すべり体115bとが、すべり受け部115a上にすべり体115bが当接する状態に設置されることにより、すべり支承として構成されている。
また、上記のように、特許文献1、2に開示されている免震構造においては剛すべり支承を使用しているため、嫌振装置の設置される床の上下振動を有効に吸収させることができない。
更に、各免震装置の上部に上部構造部の柱が設けられる構造であるため、上部構造部の柱間を容易に長スパン化することができない。
特許文献3に開示されている免震建物110においては、柱113間の床部114を支持装置115によって支持させることにより、長スパン化を実現しようとしている。しかし、支持装置115は剛すべり支承であり、特許文献1、2と同様に、建物外からの振動を十分に遮断することが難しく、また、床部114の上下振動を有効に吸収させることができない。
上記のような構成によれば、上部構造部の建物内部柱の下方、及び、建物外周柱と建物内部柱との間の柱軸力が作用しないスパンの中間の床部または梁部の下方に設けられている免震装置は、第1及び第2弾性すべり支承体である。これらの弾性すべり支承体は、積層ゴムを備えるすべり体がすべり板に対して摺動することにより、すべり支承としての機能とともに、積層ゴムとしての機能を併せ持つ。また、建物外周柱の下方には、積層ゴム支承体が設けられている。積層ゴム支承体と、第1及び第2弾性すべり支承体の各々の積層ゴムが、地震発生時に微小変形段階から水平荷重を負担するために、すべり体がすべり始める瞬間に発生する衝撃加速度を小さくできる。したがって、建物外からの振動を遮断し、嫌振機器への影響を効果的に低減することができる。
また、建物内部柱が設置されておらず、柱軸力が作用しない床梁部分に設けられている第2弾性すべり支承体の摩擦係数は、建物内部柱の柱脚部に設けられている第1弾性すべり支承体の摩擦係数より小さくなっている。すなわち、本願発明では、柱軸力が作用しない床梁部分に設ける第2弾性すべり支承体は、柱直下に設置する積層ゴム支承体や第1弾性すべり支承体に比べて、常時荷重として作用する鉛直軸力は小さく、建物内部柱に作用する水平荷重より低い水平荷重ですべり体がすべり始めるように設定することで、上部構造部の重量を積層ゴム支承体と、第1弾性すべり支承体、及び第2弾性すべり支承体に其々分担させることを特徴とする。このように、積層ゴム支承体と各弾性すべり支承体に加わる上部構造部の重量に応じて、地震発生時に生じる水平荷重を分散させており、地震時には摩擦係数の小さなすべり支承から順にすべり出す構造となっているため、すべり出す際の水平荷重が分散され、上部構造部のすべり出す瞬間の衝撃加速度を更に低減させることができる。したがって、建物外からの振動を遮断し、嫌振機器への影響を更に効果的に低減することができる。
また、本発明の免震建物においては、柱間の床梁部分の下面に免震装置を設置し、床梁部分の支持スパンを従来より短くすることで、床部の振動抑制効果のバラツキを少なくし、効率良く床部の振動抑制を図ることができる。また、積層ゴム支承体と、複数種類の弾性すべり支承体を組み合わせることで、平常時に生じる微振動に対しては免震効果を発揮させずに高い剛性にて微振動を抑制することにより嫌振機器の安定的な運転を確保することができ、かつ地震時には、すべり等により免震効果を発揮して嫌振機器類や構造物に発生する被害を防止することができる。
また、上部構造部の、建物内部柱が設置されていない床梁部分の下方に第2弾性すべり支承体を設置することで、上部構造部の柱間のスパン長を短くでき、かつ床部の断面積を増大させることなく床部の剛性を増大させることができるために、床部の上下振動を抑えることができる。よって、大型の免震装置を使用しなくても、複数の汎用的なサイズの免震装置を配置することで、長スパン柱梁架構を有する建物を免震化できる。
上記のような構成によれば、第1、及び第2の弾性すべり支承体の上面に、免震装置の高さ調整用部材としてコンクリート充填鋼管柱を配置することで、一般に積層ゴム支承体より免震層高さが低い弾性すべり支承体が設置される免震層であっても、積層ゴム支承体に合わせた所定の高さを確保することができる。また、鋼板で下端が塞がれたコンクリート充填鋼管柱は、鋼管内部と上部構造部を形成するコンクリートを同時に打設可能であり、かつ弾性すべり支承体の上面に強度と剛性に優れたコンクリート充填鋼管柱を設置することで、コンクリート充填鋼管柱と上部構造部との間にコンクリート打継面を設けることなく、弾性すべり支承体を挟んで上部構造部、及び下部構造部を強固に連結できる。また、コンクリート充填鋼管柱の上端が上部構造部に設置されていることで、上部構造部に作用する水平力は、上部構造部の内部にまで設置された高剛性のコンクリート充填鋼管柱を介して、弾性すべり支承体に作用させることができる。
また、別の態様2では、下部構造部や上部構造部に設置されたベースプレート、及び免震装置に取り付けられた各フランジを貫通させたボルトに、前記下部構造部または前記上部構造部に埋設された一方端に鉄筋が取り付けられた高ナットが結合され、免震装置が前記下部構造部または前記上部構造部に固定されている。
上記の態様1、態様2では、前記ベースプレート及び各フランジの貫通孔は前記ボルトの外径より大きく、該貫通孔と前記ボルトとの間に隙間が形成されていることを特徴とする。
上記のような構成によれば、地震発生時に、積層ゴム支承体に上向きに引張荷重が作用した際には、ベースプレートと各フランジを貫通した貫通孔とボルトとの間に隙間が設けられていることで、下部構造部または上部構造部に取り付けられたベースプレートと各フランジの鋼板高さ部分のボルト本体が伸び、引張抵抗するために、積層ゴム部分に引張力が加わるのを防止することができる。
また、引張抵抗するボルトは、下部構造部または上部構造部に埋設させた袋ナット、または埋設側に鉄筋が取り付けられた高ナットと締結させており、積層ゴム支承体を確実に下部構造部、及び上部構造部に固着させておくことができる。
また、本発明の免震建物は、積層ゴム支承体と、第1、及び第2弾性すべり支承体による3種類の免震装置で免震層を構成するとともに、其々に積層ゴム部が設けられているために、積層ゴム部の径や積層厚さを変更することで、常時荷重においては、床部の積載機器等に基づく固有振動数から建物本体の固有周期をずらして共振応答を防止できる。
また、地震発生時は、弾性すべり支承体にすべりが生じるとともに、積層ゴム部分が変形することにより、上部構造部に対する免震効果を発揮することができる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して構成を説明する。また、本発明の免震構造による力と水平変形量の関係を模式図により説明する。
図2は、免震層4の部分立面図である。本実施形態では、上部構造部3と下部構造部2Aとの間に、後に詳説する、積層ゴム支承体6と、第1弾性すべり支承体7、及び第2弾性すべり支承体8を配置して免震層4を設けている。図2(a)は、上部構造部3の梁部18下面18aに第2弾性すべり支承体8を設置した場合であり、図2(b)は、上部構造部3の床部15下面15aに第2弾性すべり支承体8を設置した場合である。
図2(a)、(b)の双方において、積層ゴム支承体6は、建物外壁に接する建物の最外縁の柱である、建物外周柱10の下方にて、建物外周柱10と接合されている大梁19下面19aに設けられている。第1弾性すべり支承体7は、建物外周柱10よりも建物の内側に設けられている建物内部柱12の、下方側の大梁19下面19aに設けられている。また、第2弾性すべり支承体8は、建物外周柱10と建物内部柱12の間の下方側で、図2(a)においては床部15を支持する梁部18下面18aに、図2(b)においては床部15下面15aに、それぞれ接合されて設けられている。
図3は、図1のA−A部分(免震層4の高さ位置)での免震層4の平面図である。図3では、建物平面の長手方向がX方向で、短手方向がY方向である。また、図4は、図3に示すY1通りのX1〜X10までの建物外周柱10を含む縦断面図である。図5は、図3に示すY3通りのX1〜X10までの建物内部柱12を含む縦断面図である。図4、図5にて、建物高さ方向はZ表示している。図6は、図3に示すX2通りのY1〜Y8までの縦断面図である。図6において、Y1部分とY8部分には建物外周柱10は存在するが、Y2〜Y7の範囲には、建物内部柱12は設置されていなく、無柱空間Scとなっている。
図3においては、説明を簡単にするため、免震層4には位置しない建物外周柱10、建物内部柱12も併せて、対応する位置に、矩形により示している。
建物外周柱10は、図3中に黒塗りした矩形で示されるように、建物外壁に接する建物の最外縁の柱である。建物内部柱12は、図3中に白抜きした矩形で示されるように、建物外周柱10よりも建物の内側に設けられている柱である。小さな丸印は柱が設けられていない床部位置を示す。
建物外周柱10と、建物内部柱12は、基本的には、同程度の間隔を空けて設けられているが、例えば、図3のY3通りの縦断面である図5に示されるように、建物外周柱10と建物内部柱12の間の位置X2、X9には、柱が設けられておらず、柱間の間隔が他よりも長くなることで、無柱空間Scが形成されている。このようにして、長スパン柱梁架構が、図3に示される小さな丸印の柱無し部分を跨ぐように、建物外周柱10と建物内部柱12との間に形成されている。
上部基礎2Bの上には、床スラブ14が形成され、上部基礎2Bと床スラブ14によって床部15が形成されることにより、免震建物1の一階の床は、床梁形式として施工されている。また、建物外周柱10同士の間には、図4に示されるように、複数階に亘って同一構面内にブレース16が配置されている。本実施形態においては、ブレース16は角型鋼管であるが、鉄骨等、他の種類のブレースでも構わない。
免震装置5は、積層ゴム支承体6、第1弾性すべり支承体7、及び、第2弾性すべり支承体8を備えている。具体的には、建物外周柱10の下方に積層ゴム支承体6が、建物内部柱12の下方に第1弾性すべり支承体7が、及び、柱が設けられていない床部15下面に第1弾性すべり支承体8が、それぞれ設けられている。
図7に、積層ゴム支承体6の縦断面模式図を示す。積層ゴム支承体6は、複数の鋼板6dがゴム6eを挟んで積層された積層ゴム部6cが、フランジ6a、6bによって挟まれた構造で、下部構造部2Aと、上部構造部3に設けられた上部フーチング30の間に設置されている。
積層ゴム支承体6と下部フーチング20は、下部フーチング20に埋設された袋ナット23、または一方端にアンカー鉄筋(鉄筋)24が取り付けられた高ナット27に、ベースプレート21及びフランジ6aを貫通させたボルト25を締付し、結合されている。また、ベースプレート21及びフランジ6aに形成された貫通孔はボルト25の外径より大きく、貫通孔とボルト25との間には、隙間26が形成されている。ここでいう、積層ゴム支承体6と下部フーチング20を結合させる方法としては、図7には袋ナット23と高ナット27を其々示したが、袋ナット23のみ、または高ナット27のみであってもよい。
また、積層ゴム支承体6と上部フーチング30は、前述による下部フーチング20と同様、上部フーチング30に埋設された袋ナット23、または高ナット27に、ベースプレート21及びフランジ6bを貫通させたボルト25を締付し、結合されている。
下部フーチング20に設けられているベースプレート21の下面の、袋ナット23や高ナット27よりも内側の位置には、アンカースタッド22が接合されている。アンカースタッド22、袋ナット23、高ナット27、及び、アンカー鉄筋24は、高流動コンクリート20bに埋設されている。上部フーチング30においても同様に、ベースプレート21の上面にアンカースタッド22が接合されている。
この状態で、フランジ6a、6bの各々は、水平方向に積層ゴム部6cから突出した部分において、下部フーチング20に埋設された袋ナット23及び高ナット27と、上部フーチング30に埋設された袋ナット23及び高ナット27の各々に対し、フランジ6a、6bの各々を挟んで取付ボルト25を螺合させることにより固定されている。
上記のように、ベースプレート21及び各フランジ6a、6bに形成させた貫通孔の孔径は、ボルト25の外径より例えば5mm程大きく、貫通孔とボルト25の外周面との間には、例えば2.5mm程度の隙間26が形成されている。貫通孔とボルト25間の隙間26は、積層ゴム支承体6に圧縮軸力が作用する段階においては、ボルト25下面がフランジ6a、6bの表面と接合して固着されているが、積層ゴム支承体6に引張軸力が作用する段階では、ベースプレート21とフランジ6a、6bを貫通する貫通孔26の高さ部分において、ボルト25本体が延び、引張抵抗するために、積層ゴム支承体6に引張力が加わることを防止できる。
図8に、第1弾性すべり支承体7の縦断面模式図を示す。第1弾性すべり支承体7は、積層ゴム部7cと、すべり板7gを備えている。積層ゴム部7cは、複数の鋼板7dがゴム7eを挟んで積層されることにより、積層ゴムとして形成されている。積層ゴム部7cの上面には、上フランジ7bが接合されている。積層ゴム部7cの下面には、すべり材部7fが接合されている。
すべり板7gの下面には、補強板7aが接合されている。
以下に説明するように、補強板7aが下部構造部2Aに形成された下部フーチング40に、上フランジ7bが上部基礎2Bに形成された上部フーチング50に接合されることにより、第1弾性すべり支承体7は設けられる。この際に、すべり材部7fとすべり板7gは、互いに対向して圧接されるように設けられている。このような構造により、第1弾性すべり支承体7は、免震建物1に水平方向の地震力が加わると、まず積層ゴム部7cの積層ゴムが変形し、すべり材部7fとすべり板7gの摩擦限界を超えるとすべりが生じて、積層ゴム部7cがすべり板7gの上を移動することにより、地震力に対応する。このように、第1弾性すべり支承体7は、すべり支承としての機能と、積層ゴムとしての機能を併せ持っている。
第1弾性すべり支承体7の摩擦係数は、例えば0.04〜0.09程度である。
下部フーチング40の上面にはベースプレート41が設けられている。ベースプレート41の下面の外周近傍には、袋ナット46が接合されている。ベースプレート41の下面の、袋ナット46よりも内側の位置には、アンカースタッド42が接合されている。アンカースタッド42と袋ナット46は、高流動コンクリート40bに埋設されている。
上部基礎2Bの、第1弾性すべり支承体7が設置される位置には、上部基礎2Bの下面から下方に突出するように、鉄筋50aと高流動コンクリート50bにより上部フーチング50が形成されている。後述のように上部フーチング50には積層ゴム部7cが接合されるが、積層ゴム部7cの積層ゴムの径は、積層ゴム支承体6の径よりも小さいため、上部フーチング50は、積層ゴム支承体6が接合されている上部フーチング30よりも小さく形成されている。
上部フーチング50の下面には、上面にアンカースタッド52が接合されたベースプレート51が設けられている。アンカースタッド52は、高流動コンクリート50bに埋設されている。ベースプレート51には、積層ゴム支承体6と第1弾性すべり支承体7の高さの差を調整するために、コンクリート充填鋼管柱を構成する鋼管柱57が、ベースプレート51から下方に延在するように接合されている。鋼管柱57の内部には、高流動コンクリート50bが充填されている。
鋼管柱57の下端には、上面にアンカースタッド52が接合されたベースプレート(鋼板)58が接合されている。ベースプレート58に接合されたアンカースタッド52は、鋼管柱57内の高流動コンクリート50bに埋設されている。このように、鋼管柱57はベースプレート58で下端が塞がれて、その上端部は上部構造部3内に設置されている。
この状態で、補強板7aは、その外周近傍の位置において、下部フーチング40に埋設された袋ナット46に対し、補強板7aを挟んで取付ボルト45を螺合させることにより固定されている。
また、上フランジ7bは、水平方向に積層ゴム部7cから突出した部分において、ベースプレート58に対し、上フランジ7bを挟んで取付ボルト55を取付ナット59に螺合させることにより固定されている。
第2弾性すべり支承体8は、構造的には、図8を用いて説明した第1弾性すべり支承体7と同様に構成されている。第2弾性すべり支承体8は、第1弾性すべり支承体7より摩擦係数が小さなすべり支承を有している点が、第1弾性すべり支承体7とは異なっている。これにより、無柱空間Scに設けられている第2弾性すべり支承体8においては、建物内部柱12に作用する水平荷重より低い水平荷重が作用した場合であっても、すべり体がすべり始めるように調整されている。第2弾性すべり支承体8の摩擦係数は、例えば0.01〜0.04程度である。
なお、本実施形態において、図3中に白抜きした矩形で示される建物内部柱12であっても、例えば、Y4、Y5通りとX5、X6通りで囲まれた部分Nの上層階に、床が設置されていない吹抜け空間が設けられている場合等には、柱が負担する建物重量が小さくなるために、建物内部柱12の下方に、第1弾性すべり支承体7の代わりに、第2弾性すべり支承体8を設けてもよい。
図9は、本発明による免震建物を構成する免震構造の水平荷重と水平変形量の関係を、耐震構造(非免震)と、従来の免震構造とを比較して示したグラフである。
図9中、線90は本発明の免震建物を構成する免震構造、線91は第1弾性すべり支承体のみを用いた免震構造、線92は第2弾性すべり支承体のみを用いた免震構造、線93は積層ゴム支承体のみを用いた免震構造(従来の免震構造)、線94は積層ゴム支承体、弾性すべり支承、及び、剛すべり支承を用いた免震構造、線95は耐震構造(非免震)の場合を、各々示している。
本発明の免震構造(線90)は、微小変形レベルにおいては高剛性を示し、ある所定の水平荷重時に水平変形量が増大する第1、第2弾性すべり支承体(線91、92)と、従来型の積層ゴム支承体(線93)と、を其々組み合わせることで、微小変形レベルから水平荷重と水平変形量の関係は緩やかな勾配を有し、水平変形量が増大するに伴い、積層ゴム支承体(従来の免震構造)の水平荷重と水平変形量に漸近することがわかる。よって、本発明の免震構造を備えた免震建物においては、複数の異なる免震装置を組み合わせることで、建物に作用する水平荷重と水平変形量の関係をコントロールできる。
また、建物内部柱12が設置されておらず、柱軸力が作用しない床梁部分に設けられている第2弾性すべり支承体8の摩擦係数は、建物内部柱12の柱脚部に設けられている第1弾性すべり支承体7の摩擦係数より小さくなっている。すなわち、柱軸力が作用しない床梁部分に設けられる第2弾性すべり支承体8は、柱直下に設置する積層ゴム支承体6や第1弾性すべり支承体7に比べて、常時荷重として作用する鉛直軸力は小さく、建物内部柱12に作用する水平荷重より低い水平荷重ですべり体がすべり始めるように設定することで、上部構造部3の重量が、積層ゴム支承体6と、第1弾性すべり支承体7、及び第2弾性すべり支承体8に其々分担されている。このように、積層ゴム支承体6と各弾性すべり支承体7、8に加わる上部構造部3の重量に応じて、地震発生時に生じる水平荷重を分散させており、地震時には摩擦係数の小さなすべり支承から順にすべり出す構造となっているため、すべり出す際の水平荷重が分散され、上部構造部3のすべり出す瞬間の衝撃加速度を更に低減させることができる。したがって、建物外からの振動を遮断し、嫌振機器への影響を更に効果的に低減することができる。
また、積層ゴム支承体6、第1及び第2弾性すべり支承体7、8には、積層ゴム部分が設けられており、剛性の異なる複数種類の積層ゴムを組み合わせることで、構造物の固有周期を容易に調整することができる。また、積層ゴム部分が変形することによる履歴減衰効果によって、上部構造部の振動を抑制することができる。
例えば、平常時に生じる微振動に対しては免震効果を発揮させずに高い剛性にて微振動を抑制することにより嫌振機器の安定的な運転を確保することができ、かつ地震時には、すべり等により免震効果を発揮して嫌振機器類や構造物に発生する被害を防止することができる。
また、高軸力が加わる積層ゴム支承体6が支える建物外周柱10同士の間にブレース16が配置され、建物外周柱10とブレース16によって上部構造部3に作用する水平荷重の負担割合を増やすことで、地震時に建物外周柱10に引き抜き力が生じないようにするとともに、建物外周柱10と接合する柱梁架構を長スパン化することが可能となる。
また、図5を用いて説明したように、本実施形態においては、第2弾性すべり支承体8を設けるための下部フーチング60、上部フーチング70は、第1弾性すべり支承体7を設けるための下部フーチング40、上部フーチング50よりも、小さくなるように形成されている。これにより、更に効果的に、施工コストを低減することが可能となる。
また、ベースプレート58で下端が塞がれた鋼管柱57は、鋼管内部と上部構造部3を形成するコンクリートを同時に打設可能であり、かつ第1、及び第2の弾性すべり支承体7、8の上面に強度と剛性に優れたコンクリート充填鋼管柱57を設置することで、コンクリート充填鋼管柱57と上部構造部3との間にコンクリート打継面を設けることなく、第1、及び第2の弾性すべり支承体7、8を挟んで上部構造部3、及び下部構造部2Aを強固に連結できる。また、コンクリート充填鋼管柱57の上端が上部構造部3に設置されていることで、上部構造部3に作用する水平力は、上部構造部3の内部にまで設置された高剛性のコンクリート充填鋼管柱57を介して、第1、及び第2の弾性すべり支承体7、8に作用させることができる。
これにより、地震発生時に、積層ゴム支承体6に上向きに引張荷重が作用した際には、ベースプレート21と各フランジ6a、6bを貫通した貫通孔とボルト25との間に隙間26が設けられていることで、下部構造部2Aまたは上部構造部3に取り付けられたベースプレート21と各フランジ6a、6bの鋼板高さ部分のボルト25本体が伸び、引張抵抗するために、積層ゴム部分に引張力が加わるのを防止することができる。
また、引張抵抗するボルト25は、下部構造部2Aまたは上部構造部3に埋設させた袋ナット23、または埋設側にアンカー鉄筋24が取り付けられた高ナット27と締結させており、積層ゴム支承体6を確実に下部構造部2A、及び上部構造部3に固着させておくことができる。
次に、図10を用いて、上記実施形態として示した免震建物1の変形例を説明する。本変形例の免震建物80は、上記実施形態における免震建物1とは、免震層84が建物の中間階に設けられた中間階免震構造となっている点が異なっている。
より詳細には、本変形例の免震建物80においては、基礎87に下部構造部柱88が立設され、下部構造部柱88間に下部構造部梁89が架設されて、一階86を含む下部構造部82が施工されている。免震装置85が、下部構造部柱88の柱頭部上に設けられ、免震装置85の上に、上部構造部83が施工されることにより、下部構造部82と上部構造部83の間に免震層84が形成されている。免震装置85は、上記実施形態と同様に、積層ゴム支承体、第1弾性すべり支承体、及び、第2弾性すべり支承体を備えており、これらの免震装置85は、上記実施形態と同様に配置されている。
また、上記変形例においては、免震層84は一階86の上に設けられていたが、他の階層の上に設けられても構わない。
2 基礎 23 袋ナット
2A 下部構造部 24 アンカー鉄筋(鉄筋)
3 上部構造部 25 ボルト
4 免震層 26 隙間
5 免震装置 27 高ナット
6 積層ゴム支承体 57 鋼管柱(コンクリート充填鋼管柱)
6a、6b フランジ 58 ベースプレート(鋼板)
7 第1弾性すべり支承体 80 免震建物
7b 上フランジ 82 下部構造部
8 第2弾性すべり支承体 83 上部構造部
10 建物外周柱 84 免震層
12 建物内部柱 85 免震装置
13 梁 86 一階
15 床部 87 基礎
15a 下面 Sc 無柱空間
18 梁部
18a 下面
Claims (3)
- 上部構造部と下部構造部の間に免震装置が設置された免震建物であって、
前記免震装置は、前記上部構造部の建物外周柱の下方に積層ゴム支承体が設けられ、かつ前記上部構造部の建物内部柱の下方に第1の弾性すべり支承体が設けられるとともに、前記建物外周柱と前記建物内部柱との間の床部、または梁部の下面に、前記第1の弾性すべり支承体より摩擦係数が小さなすべり支承体を備えた第2の弾性すべり支承体が配置されており、
前記上部構造部の重量を前記積層ゴム支承体と、前記第1の弾性すべり支承体、及び前記第2の弾性すべり支承体に其々分担させることを特徴とする免震建物。 - 前記第1の弾性すべり支承体およびまたは前記第2の弾性すべり支承体の其々の上フランジの上面には、鋼板で下端が塞がれたコンクリート充填鋼管柱が設置され、該コンクリート充填鋼管柱の上端部が前記上部構造部内に設置されることを特徴とする請求項1に記載の免震建物。
- 前記積層ゴム支承体と前記下部構造部及び前記上部構造部は、前記下部構造部または前記上部構造部に埋設された袋ナット、または一方端に鉄筋が取り付けられた高ナットに、ベースプレート及び各フランジを貫通させたボルトを締付し、結合されており、前記ベースプレート及び各フランジの貫通孔は前記ボルトの外径より大きく、該貫通孔と前記ボルトとの間に隙間が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の免震建物。
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