JP7266468B2 - 免震構造 - Google Patents

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Description

本発明は、免震構造に関する。
下記特許文献1には、地震エネルギーを吸収するプラグ部が内挿された滑り式積層板支承の構成が示されている。
特開2008-261490号公報(図4)
上記特許文献1の滑り式積層板支承を用いると、プラグ部によって地震エネルギーを吸収しつつ(減衰性能)、平滑部材が摺動することで上部に載置される構造体に入力される地震エネルギーを抑制できる(免震性能)。しかし、例えば大規模の地震により平滑部材が摺動したときに十分な減衰性能を発揮することが難しい。
本発明は上記事実を考慮して、地震の規模に関わらず減衰性能と免震性能とを発揮できる免震構造を提供することを目的とする。
請求項1の免震構造は、下部構造体と、前記下部構造体に載置された第1免震装置及び第2免震装置と、前記第1免震装置及び前記第2免震装置に支持された上部構造体と、前記下部構造体と前記上部構造体とが相対変位して前記下部構造体又は前記上部構造体が当たった際に前記下部構造体又は前記上部構造体から押圧され変形し振動を減衰する衝突緩衝材と、を有し、前記第1免震装置は、外力によって変形して振動を減衰する第1支承部と、前記第1支承部を滑り変位させる滑り機構と、を備え前記第2免震装置は、外力によって変形して振動を減衰する第2支承部を備え、滑り機構を備えない。
請求項1の免震構造においては、第1免震装置と第2免震装置とが併用されている。地震時の水平力により、上部構造体は下部構造体に対して相対変位する。このとき、第1免震装置の第1支承部及び第2免震装置の第2支承部が変形しつつ振動を減衰する。すなわち、通常の地震時に免震性能及び減衰性能を発揮する。
また、第1免震装置の第1支承部は滑り機構によって滑り変位する。一方、第2免震装置は滑り機構を備えないため、外力が大きくなっても第2支承部が変形を続けて振動を減衰する。これにより、大きな地震においても、免震性能及び減衰性能を発揮することができる。
さらに、外力が大きくなって、下部構造体又は上部構造体が衝突緩衝材に当ると、この衝突緩衝材が、下部構造体又は前記上部構造体から押圧され変形して振動を減衰する。これにより、減衰性能をさらに高めることができる。
請求項2の免震構造は、請求項1の免震構造において、前記衝突緩衝材は塑性変形して振動を減衰する。
請求項3の免震構造は、下部構造体と、前記下部構造体に載置された免震装置と、
前記免震装置に支持された上部構造体と、前記下部構造体と前記上部構造体とが相対変位して前記下部構造体又は前記上部構造体が当たった際に前記下部構造体又は前記上部構造体から押圧され変形し振動を減衰する衝突緩衝材と、を有し、前記免震装置は、外力によって変形して振動を減衰する第1支承部と、前記第1支承部を滑り変位させる滑り機構と、を備えた第1免震装置と、外力によって変形して振動を減衰する第2支承部を備え、滑り機構を備えない第2免震装置と、を有し、前記衝突緩衝材は、前記第1支承部が滑り変位を開始後に前記下部構造体又は前記上部構造体と当接する。
請求項3の免震構造においては、第1支承部が滑り変位を開始する前には、衝突緩衝材は下部構造体又は上部構造体から押圧されない。このため、第1支承部の変形が妨げられず、第1支承部の減衰性能を十分に発揮することができる。
請求項4の免震構造は、請求項3の免震構造において、前記第2支承部は、前記衝突緩衝材が所定値以上変形すると破断する。
請求項4の免震構造においては、衝突緩衝材の変形量が所定値未満の場合、第2支承部が破断しない。このため、第2支承部の弾性復元力により、地震後に下部構造体と上部構造体との相対位置を復元し易い。
また、衝突緩衝材の変形量が所定値以上の場合、第2支承部が破断する。このため、第2支承部の減衰性能を最大限に発揮することができる。
本発明に係る免震構造によると、地震の規模に関わらず減衰性能と免震性能とを発揮できる。
(A)は本発明の実施形態に係る免震構造において上部構造体が下部構造体に対して相対移動する前の状態を示した立面図であり、(B)は上部構造体が下部構造体に対して相対移動して第1免震装置及び第2免震装置が変形している状態を示した立面図であり、(C)は第1免震装置が滑動して第2免震装置が変形している状態を示した立面図であり、(D)は衝突緩衝材が変形している状態を示した立面図である。 本発明の実施形態に係る免震構造を示す平面図である。 本発明の実施形態に係る免震構造における減衰性能を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態に係る免震構造について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。なお、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。また、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
(建物)
本発明の実施形態に係る免震構造は、一例として、図1(A)に示す建物10に適用される。建物10は、下部構造体20の上部に免震装置40、50を介して上部構造体30が載置された、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄骨造の免震構造物である。なお、「鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄骨造」とは、柱梁架構が鉄筋コンクリート製、鉄骨鉄筋コンクリート製又は鉄骨製であることを示している。
(第1免震装置)
免震装置40は、本発明における第1免震装置の一例であり、制振機構としての鉛プラグ42と、免震機構としての積層ゴム44、滑り材46及び滑り板48を備えている。
鉛プラグ42は、外力(地震時に作用する水平力)によって塑性変形して、振動エネルギーを吸収し、振動を減衰することができる(換言すると、鉛プラグ42によって振動の減衰力が生じる)。鉛プラグ42は、積層ゴム44の中心部に配置されている。
積層ゴム44は、天然ゴムを主材料としたゴム板と鋼板とを交互に積み重ね、これらを加硫接着して形成される。積層ゴム44は略円柱形状とされており、常時は上部構造体30の荷重を支持している。積層ゴム44は、外力(地震時に作用する水平力)によってゴム板が弾性変形し、下部構造体20から上部構造体30へ地震エネルギーが入力されることを抑制する。
積層ゴム44の上端部は鋼製のフランジ49に固定されている。フランジ49は上部構造体30にアンカーボルト等を用いて固定されている。
滑り材46は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)材等を用いて形成され、積層ゴム44の下端部に固定されている。また、滑り材46は、滑り板48の上面に非固定で配置されている。
滑り板48は、ステンレス板等によって形成され、上面が略水平になるように下部構造体20に固定されている。滑り材46と滑り板48との摩擦係数は適宜変更することができる。本実施形態における摩擦係数の設定方法については後述する。
なお、免震装置40において、鉛プラグ42及び積層ゴム44は本発明における第1支承部の一例であり、滑り材46及び滑り板48は本発明における滑り機構の一例である。
また、本実施形態においては滑り板48を下部構造体20に固定しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。すなわち、滑り板48は上部構造体30に固定してもよい。この場合、上述した免震装置40と上下を入れ替えて、フランジ49を下部構造体に固定するものとする。
(第2免震装置)
免震装置50は、本発明における第2免震装置の一例であり、制振機構としての鉛プラグ52と、免震機構としての積層ゴム54、フランジ56及びフランジ58を備えている。
鉛プラグ52は、鉛プラグ42と同様に、外力(地震時に作用する水平力)によって塑性変形して、振動エネルギーを吸収し、振動を減衰することができる。鉛プラグ52は、積層ゴム54の中心部に配置される。
積層ゴム54は、積層ゴム44と同様に、天然ゴムを主材料としたゴム板と鋼板とを交互に積み重ね、加硫接着して形成される。積層ゴム54は略円柱形状とされており、常時は上部構造体30の荷重を支持している。積層ゴム54は、外力(地震時に作用する水平力)によってゴム板が弾性変形し、下部構造体20から上部構造体30へ地震エネルギーが入力されることを抑制する。
積層ゴム54の上下端部は、それぞれ鋼製のフランジ58、56に固定されている。フランジ58は上部構造体30にアンカーボルト等を用いて固定され、フランジ56は下部構造体20にアンカーボルト等を用いて固定されている。
なお、免震装置50において、鉛プラグ52及び積層ゴム54は、本発明における第2支承部の一例である。
(衝突緩衝材)
下部構造体20には、H型鋼で形成された鉄骨支柱70が設置されている。鉄骨支柱70は、下端部が下部構造体20における梁22のスパン中央部に埋設され、当該梁から上方へ突出している。また、鉄骨支柱70は、強軸方向(ウェブ72の延設方向)が梁の延設方向に沿うように配置されている。さらに、鉄骨支柱70には、フランジ74間に補剛プレート76が設けられている。
鉄骨支柱70の両フランジ74において、補剛プレート76で補剛された部分の両外側面には、衝突緩衝材として防舷材80が台座82を介して取り付けられている。防舷材80は、フランジ74から鉄骨支柱70の側方へ向かって縮径する略中空円錐形状のゴム支承であり、圧縮方向(ウェブ72の延設方向)及びせん断方向(フランジ74の延設方向)の力の入力に対して抵抗力を発揮できる。
上部構造体30の梁32には、コンクリートで形成された反力体90が設置されている。反力体90は、梁32及びフーチング34と一体的に形成された固定部92と、固定部92から下方へ突出した押圧部94と、を備えている。固定部92及び押圧部94は一体的に形成されている。
反力体90は、鉄骨支柱70の両側に、防舷材80と対向して配置されている。このため、地震時に下部構造体20と上部構造体30とが相対変位した際、鉄骨支柱70の両フランジ74に取り付けられた2つの防舷材80が、交互に反力体90と接触することができる。防舷材80は、反力体90と接触した際、反力体90から押圧され変形し振動を減衰することができる。
なお、本実施形態においては鉄骨支柱70及び防舷材80が下部構造体20に設けられ、反力体90が上部構造体30に設けられているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば、鉄骨支柱70及び防舷材80を上部構造体30に設け、反力体90を下部構造体20に設けてもよい。
(免震構造の配置)
図2には、上記で説明した免震装置40、50、鉄骨支柱70及び防舷材80の配置の一例が平面図で示されている。なお、本実施形態においては、免震装置として、免震装置40、50に加えて、鉛プラグを備えない(制振機構を備えない)滑り免震装置60が設けられているが、本発明において免震装置60は必ずしも設ける必要はない。
免震装置40、50、60は、上部構造体30の下部において、上部構造体30の柱の直下に格子点状に配置されている。なお、免震装置40、50、60は、上部構造体30の重量バランス等に応じて適宜配置(位置及び数量)を調整することができるが、本実施形態においては、一例として、免震装置60の周囲に免震装置40が配置され、免震装置40の周囲に免震装置50が配置されている。すなわち、地震時に引き抜き力が発生し易い建物10の外周部に、免震装置50が配置されている。このため、建物10の外周部に免震装置40や免震装置60が配置されている場合と比較して、引き抜き力に対する耐力が向上する。なお、引き抜き力に耐力をさらに向上させるために、免震装置50の積層ゴム54としては、高強度積層ゴム(HSR:High Strength Rubber Bearing)等を用いてもよい。
また、複数設けられた鉄骨支柱70のうち、一部は、両フランジ74(図1参照)に固定された防舷材80の配置がX方向に沿うように設けられている。また、他の一部は、両フランジ74に固定された防舷材80の配置がY方向に沿うように設けられている。X方向、Y方向は、互いに略直交する方向であり、下部構造体20の梁22(図1参照)及び上部構造体30の梁32の延設方向である。
また、反力体90は、それぞれの防舷材80と対向するように設けられている。このため、下部構造体20と上部構造体30とがX方向だけでなくY方向に相対変位した場合にも、防舷材80が反力体90と接触する。
なお、図1(A)~(D)においては、免震装置40、50、防舷材80を互いに隣接して図示している。これらの図は本発明における主要な構成要素の概略を示すものであり、図2との整合性は考慮しない。すなわち、上述したように、免震装置40、50、防舷材80の配置は特に限定されるものではなく、適宜調整することができる。
(作用・効果)
本発明の実施形態に係る免震構造による減衰性能及び免震性能について、図1(B)~(D)及び図3を用いて説明する。
図1(B)には、地震時に建物10に作用する外力P1によって、上部構造体30が下部構造体20に対して距離X1だけ相対変位した状態が示されている。
地震時に建物10に作用する外力が外力P1未満の状態では、上部構造体30の下部構造体20に対する相対変位量は、距離X1未満となる。このとき、免震装置40における積層ゴム44及び免震装置50における積層ゴム54がせん断変形する。これにより、上部構造体30に入力される振動及び地震エネルギーが抑制される。すなわち、免震性能が発揮される。
また、積層ゴム44、54の変形に伴って、鉛プラグ42、52が塑性変形する。これにより、地震エネルギーが熱エネルギーに変換され、振動が減衰する。すなわち、減衰性能が発揮される。
なお、図3には、免震装置40による減衰性能について、外力によって鉛プラグ42の内部に発生するせん断応力(内部応力)と変形量(上部構造体30の下部構造体20に対する相対変位量)との関係が点線T1で示されている。また、免震装置50による減衰性能について、外力によって鉛プラグ52の内部に発生するせん断応力(内部応力)と変形量(上部構造体30の下部構造体20に対する相対変位量)との関係が一点鎖線T2で示されている。
さらに、図3には、防舷材80による減衰性能について、外力によって防舷材80の内部に発生する圧縮応力(内部応力)と変形量(上部構造体30の下部構造体20に対する相対変位量)との関係が二点鎖線T3で示されている。
またさらに、本発明の実施形態に係る免震構造(免震装置40、50、防舷材80の組合わせ)による減衰性能について、建物10に作用する地震力(地震力によって生じる免震装置40、50、防舷材80の内部応力の和)と変形量(上部構造体30の下部構造体20に対する相対変位量)との関係が実線T4で示されている。減衰性能(地震エネルギーの吸収量)は、この実線T4を積分することにより算出することができる。
図3に示すように、上部構造体30の下部構造体20に対する相対変位量が距離X1未満の状態では、免震装置40における積層ゴム44及び免震装置50における積層ゴム54が何れも減衰性能を発揮する。
次に、図1(C)には、地震時に建物10に作用する外力P2によって、上部構造体30が下部構造体20に対して距離X2だけ相対変位した状態が示されている。外力P2は、外力P1より大きな外力である。外力P2が作用し、相対変位量が距離X2となったとき、防舷材80が反力体90と当接する(当る)。
外力がP1以上の状態においては、免震装置40における滑り材46が滑り板48の上を滑動する。すなわち、地震時の外力P1によって免震装置40に入力される分力P4(図3参照)以上の力によって、滑り材46が滑り板48の上を滑動するように、滑り材46と滑り板48との間の静止摩擦係数が調整されている。これにより、上部構造体30に入力される振動及び地震エネルギーが抑制される。すなわち、免震性能が発揮される。
一方、免震装置50における積層ゴム54は、外力がP1以上の状態においてもせん断変形する。これにより、上部構造体30に入力される振動及び地震エネルギーが抑制される。すなわち、免震装置50によっても免震性能が発揮される。
また、積層ゴム54の変形に伴って、鉛プラグ52が塑性変形する。これにより、地震エネルギーが熱エネルギーに変換され、振動が減衰する。すなわち、減衰性能が発揮される。
次に、図1(D)には、地震時に建物10に作用する外力P3によって、上部構造体30が下部構造体20に対して距離X3だけ相対変位した状態が示されている。外力P3は、外力P2より大きな外力である。外力P3が作用し、相対変位量が距離X3となったとき(防舷材80の変形量が所定値(X3-X2)以上となったとき)、免震装置50の鉛プラグ52が破断する(塑性限界)。このとき、防舷材80は変形を続けている。
外力がP2以上の状態においては、免震装置40における滑り材46が滑り板48の上を滑動する。これにより、上部構造体30に入力される振動及び地震エネルギーが抑制される。すなわち、免震性能が発揮される。
一方、免震装置50における積層ゴム54は、外力がP2以上の状態においてもせん断変形する。これにより、上部構造体30に入力される振動及び地震エネルギーが抑制される。すなわち、免震装置50によっても免震性能が発揮される。
また、積層ゴム54の変形に伴って、鉛プラグ52が塑性変形する。これにより、地震エネルギーが熱エネルギーに変換され、振動が減衰する。すなわち、減衰性能が発揮される。
さらに、防舷材80が反力体90から押圧され、塑性変形する。これにより、地震エネルギーが熱エネルギーに変換され、振動が減衰する。すなわち、防舷材80によっても減衰性能が発揮される。
なお、免震装置40における滑り材46が滑り板48の上を滑動し始める変位(距離X1)及び防舷材80が反力体90と当接する変位(距離X2)は、任意の値を設定することができる。換言すると、免震装置40における滑り材46が滑り板48の上を滑動し始める地震力(外力P1)と、防舷材80が反力体90と当接する地震力(外力P2)は、任意の値を設定することができる。
本実施形態においては、図3に示すように、中規模程度の地震動である「地震動レベル1」(変位L1)及び大規模の地震動である「地震動レベル2」(変位L2)を超える規模の地震動(外力P1、免震装置40に作用する外力は分力P4)において、滑り材46が滑り板48の上を滑動し始めるようにしている。
これにより、「地震動レベル2」程度の地震においては、免震装置40、50双方の免震性能及び減衰性能を発揮させることができる(図1(B))。また、「地震動レベル2」を超える規模の地震動においては、免震装置40、50による免震性能を発揮しつつ、免震装置50による減衰性能を発揮することができる(図1(C))。
また、「地震動レベル2」より大きい想定外の地震動である「地震動レベル3」(変位L3)を超える規模の地震動において、防舷材80が反力体90と当接するようにしている。これにより、「地震動レベル3」を超える規模の地震動においては、免震装置40、50による免震性能を発揮しつつ、免震装置50及び防舷材80による減衰性能を発揮することができる(図1(D))。
なお、図1(B)~(D)に示すように、滑り材46が滑り板48の上を滑動し始める前には、防舷材80は反力体90から押圧されない。すなわち、免震装置40における鉛プラグ42が十分に変形して減衰性能を発揮した後、滑り材46が滑り板48の上を滑動し始め、防舷材80が反力体90と当接して、反力体90から押圧される。このため、本実施形態においては、鉛プラグ42の減衰性能を十分に発揮することができる。
また、本実施形態においては、外力P3が作用し、相対変位量が距離X3となったとき、免震装置50の鉛プラグ52が破断する。このとき、防舷材80は変形を続けている。これにより、鉛プラグ52の減衰性能を十分に発揮することができる。
なお、本実施形態においては、鉛プラグ52が破断する場合について説明したが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば鉛プラグ52が破断する前に、上部構造体30が建物10の周囲に設けた擁壁(不図示)に当接するものとしてもよい。すなわち、上部構造体30の下部構造体20に対する相対変位量が免震クリアランスの限界に達した段階においても、鉛プラグ52による減衰性能を発揮させてもよい。これにより、擁壁に対する上部構造体30の衝突の勢いを低減できる。
防舷材80についても、鉛プラグ52と同様に、適宜破断強度を設定できる。一例として、防舷材80は、鉛プラグ52が破断する前に破断させてもよい。別の一例として、防舷材80は、鉛プラグ52が破断した後に破断させてもよい。また別の一例として、防舷材80が破断する前に、上部構造体30が建物10の周囲に設けた擁壁(不図示)に当接するものとしてもよい。
さらに、防舷材80を破断させる場合、防舷材80の破断後に、鉄骨支柱70が降伏(弾性限界)及び破断(塑性限界)させてもよい。これにより鉄骨支柱70によっても減衰性能を発揮することができる。
また、図3においては、点線T1が一点鎖線T2の上方に描かれている。すなわち、免震装置40における鉛プラグ42の剛性が免震装置50における鉛プラグ52の剛性より大きく、鉛プラグ42に発生する内部応力が鉛プラグ52に発生する内部応力より大きいものとして描かれているが、本発明の実施形態はこれに限らない。
例えば鉛プラグ42の剛性を鉛プラグ52の剛性より大きくしてもよいし、それぞれの剛性を等しくしてもよい。なお、鉛プラグ42、52の剛性は、鉛プラグ42、52を形成する素材自体の剛性を調整することや、免震装置40、50の設置個数を調整することで変更できる。
また、本実施形態においては、免震装置40、50の減衰性能を鉛プラグ42、52によって発揮しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば、鉛プラグ42、52に代えて又は加えて、積層ゴム44、54を構成するゴムを高減衰ゴムによって形成しても、免震装置40、50に減衰性能を付与することができる。このように、本発明は様々な態様で実施することができる。
20 下部構造体
30 上部構造体
40 免震装置(第1免震装置)
50 免震装置(第2免震装置)
80 防舷材(衝突緩衝材)
42 鉛プラグ(第1支承部)
44 積層ゴム(第1支承部)
46 滑り材(滑り機構)
48 滑り板(滑り機構)
52 鉛プラグ(第2支承部)
54 積層ゴム(第2支承部)

Claims (4)

  1. 下部構造体と、
    前記下部構造体に載置された第1免震装置及び第2免震装置と、
    前記第1免震装置及び前記第2免震装置に支持された上部構造体と、
    前記下部構造体と前記上部構造体とが相対変位して前記下部構造体又は前記上部構造体が当たった際に前記下部構造体又は前記上部構造体から押圧され変形し振動を減衰する衝突緩衝材と、を有し、
    前記第1免震装置は、外力によって変形して振動を減衰する第1支承部と、前記第1支承部を滑り変位させる滑り機構と、を備え
    前記第2免震装置は、外力によって変形して振動を減衰する第2支承部を備え、滑り機構を備えない、
    免震構造。
  2. 前記衝突緩衝材は塑性変形して振動を減衰する、
    請求項1に記載の免震構造。
  3. 下部構造体と、
    前記下部構造体に載置された免震装置と、
    前記免震装置に支持された上部構造体と、
    前記下部構造体と前記上部構造体とが相対変位して前記下部構造体又は前記上部構造体が当たった際に前記下部構造体又は前記上部構造体から押圧され変形し振動を減衰する衝突緩衝材と、を有し、
    前記免震装置は、
    外力によって変形して振動を減衰する第1支承部と、前記第1支承部を滑り変位させる滑り機構と、を備えた第1免震装置と、
    外力によって変形して振動を減衰する第2支承部を備え、滑り機構を備えない第2免震装置と、を有し、
    前記衝突緩衝材は、前記第1支承部が滑り変位を開始後に前記下部構造体又は前記上部構造体と当接する、免震構造。
  4. 前記第2支承部は、前記衝突緩衝材が所定値以上変形すると破断する、請求項3に記載の免震構造。
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