JP2018070332A - 紙送りロール - Google Patents

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雅彦 高島
和宏 土井
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和宏 土井
淳洋 河野
Atsuhiro Kawano
淳洋 河野
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Abstract

【課題】紙粉の付着および搬送音の両方を抑えられる紙送りロールを提供する。
【解決手段】軸体12と、軸体12の外周に形成された弾性体層14と、を備え、弾性体層14が、ヒドリンゴムを含む発泡体であり、弾性体層14の径方向内側に、発泡セル16同士が連なってなる空洞部18を有する紙送りロール10とする。弾性体層14の径方向内側における発泡セル16の平均径が、径方向外側における発泡セル16の平均径よりも大きいことが好ましい。弾性体層14の外周面14bに発泡セル16が開口してなる凹部20bを有することが好ましい。
【選択図】図2

Description

本発明は、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器において好適に用いられる紙送りロールに関するものである。
紙送りロールは、軸体と軸体の外周に形成された弾性体層とを有している。弾性体層の材料としては、エチレンプロピレンジエンゴムや熱硬化性ポリウレタンなどが用いられている。
特開2015−27899号公報
熱硬化性ポリウレタンは、単体では硬度が高く摩擦係数が低い。このため、紙送りロールの弾性体層の材料として用いるために、可塑剤を配合することがある。しかし、可塑剤を配合しても、エチレンプロピレンジエンゴムに比べて依然硬度が高く、紙送り時の音(搬送音)が大きいことがある。一方、エチレンプロピレンジエンゴムは、単体では電気抵抗が高く静電気により紙粉が付着しやすい。このため、導電剤を配合することがある。しかし、紙粉の付着を抑えるほどに電気抵抗を下げるためには、カーボンなどの電子導電剤を一定量配合する必要がある。そうすると、硬度の上昇によって紙送り時の音が大きいことがある。また、紙送り時の音が抑えられる程度の配合量では、十分に紙粉の付着を抑えることができない。
本発明が解決しようとする課題は、紙粉の付着および搬送音の両方を抑えられる紙送りロールを提供することにある。
上記課題を解決するため本発明に係る紙送りロールは、軸体と、前記軸体の外周に形成された弾性体層と、を備え、前記弾性体層が、ヒドリンゴムを含む発泡体であり、前記弾性体層の径方向内側に、発泡セル同士が連なってなる空洞部を有することを要旨とするものである。
前記弾性体層の径方向内側における発泡セルの平均径は、径方向外側における発泡セルの平均径よりも大きいことが好ましい。前記ヒドリンゴムは、植物由来のエピクロルヒドリンを含むことが好ましい。前記弾性体層の外周面に、発泡セルが開口してなる凹部を有することが好ましい。前記弾性体層の内周面に、発泡セルが開口してなる凹部を有することが好ましい。
本発明に係る紙送りロールによれば、弾性体層がヒドリンゴムを含む発泡体であり、弾性体層の径方向内側に発泡セル同士が連なってなる空洞部を有することから、紙粉の付着および搬送音の両方を抑えることができる。
弾性体層の径方向内側における発泡セルの平均径が径方向外側における発泡セルの平均径よりも大きいと、搬送音を抑える効果により優れる。ヒドリンゴムが植物由来のエピクロルヒドリンを含むと、紙粉の付着を抑える効果により優れる。弾性体層の外周面に発泡セルが開口してなる凹部を有すると、凹部内に紙粉を掻き取ることができる。これによっても、弾性体層の外周面に紙粉が付着するのを抑えることができる。
本発明の一実施形態に係る紙送りロールの外観模式図(a)と、そのA−A線断面図(b)である。 図1に示す紙送りロールの表面近傍の断面拡大模式図であり、(a)は弾性体層の外周面に発泡セルが開口しているものであり、(b)は弾性体層の外周面に発泡セルが開口していないものである。 実施例1の紙送りロールの弾性体層の断面拡大写真であり、(a)は内側部分であり、(b)は外側部分である。
本発明に係る紙送りロール(以下、単に紙送りロールということがある。)について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る紙送りロールの外観模式図(a)と、そのA−A線断面図(b)である。図2は、図1に示す紙送りロールの表面近傍の断面拡大模式図である。
紙送りロール10は、軸体12と、軸体12の外周に形成された弾性体層14と、を備える。弾性体層14は、紙送りロール10の表面に現れる層(最外層)となっている。弾性体層14は、チューブ状(筒状)である。
弾性体層14は、ヒドリンゴムを含む組成物で構成されている。ヒドリンゴムはイオン導電性を有しているため、弾性体層14の低電気抵抗化を図ることができ、弾性体層14の表面残留電荷を低く抑えて紙粉の付着を抑えることができる。弾性体層14を構成する組成物は、ポリマー成分がヒドリンゴムのみからなるものであってもよいし、ヒドリンゴム以外に他のポリマー成分を含んでいてもよい。弾性体層14の低電気抵抗化などの観点から、ポリマー成分がヒドリンゴムのみからなるものがより好ましい。
ヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリンの単独重合体(CO)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル二元共重合体(GCO)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)などを挙げることができる。これらのうちでは、エチレンオキサイドを共重合成分として含むECO、GECOは、エチレンオキサイドを共重合成分として含まないものと比べて低抵抗体が得られやすい点でより好ましい。また、アリルグリシジルエーテルを共重合成分として含むGCO、GECOは、二重結合を有するため、アリルグリシジルエーテルを共重合成分として含まないものと比べて耐ヘタリ性(弾性回復性)を向上できる点でより好ましい。
ヒドリンゴムは、植物由来のエピクロルヒドリンを含むものであってもよい。すなわち、重合成分としてのエピクロルヒドリンの一部または全部が植物由来のエピクロルヒドリンからなるものであってもよい。ヒドリンゴムが植物由来のエピクロルヒドリンを含むと、表面残留電荷を低く抑えて紙粉の付着を抑える効果により優れる。また、天然由来の再生可能原料を用いるので、カーボンニュートラルの観点から環境にやさしいものとすることができる。
弾性体層14は、ヒドリンゴムを含む発泡体である。これにより、低硬度を確保し、紙送り時の音(搬送音)を抑えやすくすることができる。そして、弾性体層14の径方向内側には、発泡セル16同士が連なってなる空洞部18を有する。弾性体層14の径方向内側の発泡セル16は、いわゆる連泡タイプとなっている。これにより吸音性に優れ、紙送り時の音(搬送音)を抑えることができる。また、へたりをより抑えることができる(弾性回復性により優れる)。弾性体層14の径方向内側とは、弾性体層14の内周面14aから径方向に厚みの1/2の範囲をいう。この範囲において、弾性体層14は、発泡セル16同士が連なってなる空洞部18を有する。一方、弾性体層14の径方向外側には、発泡セル16同士が連なってなる空洞部18を有していてもよいし(連泡タイプ)、有していなくてもよい(独泡タイプ)。図2(a)(b)のように、弾性体層14の径方向外側の発泡セル16がいわゆる連泡タイプであると、発泡セル16が開口する外周面14bから内部に紙粉をためられるので、紙粉の掻き取り性が向上し、弾性体層14の外周面14bに紙粉が付着するのをより抑えることができる。また、へたりをより抑えることができる。弾性体層14の径方向外側の発泡セル16がいわゆる独泡タイプであると、弾性体層14の強度により優れる。
弾性体層14の径方向内側における発泡セル16の平均径は、径方向外側における発泡セル16の平均径よりも大きいことが好ましい。これにより、吸音性が向上し、紙送り時の音(搬送音)をより一層抑えることができる。また、径方向外側における発泡セル16の平均径が径方向内側における発泡セル16の平均径よりも小さいことで、発泡セル16が開口する外周面14bによる紙粉の掻き取り性に優れる。径方向内側における発泡セル16の平均径は、弾性体層14の任意の5箇所の断面のそれぞれにおいて任意の3つの発泡セル16の各最大径(直径)を測定し、15点の平均によって表すことができる。径方向外側における発泡セル16の平均径についても同様である。
弾性体層14の径方向内側における発泡セル16の平均径は、100〜600μmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは100〜300μmの範囲内である。これにより、吸音性が向上し、紙送り時の音(搬送音)をより一層抑えることができる。また、弾性体層14の強度を確保することができる。一方、弾性体層14の径方向外側における発泡セル16の平均径は、20〜300μmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは20〜100μmの範囲内である。これにより、発泡セル16が開口する外周面14bによる紙粉の掻き取り性に優れる。また、弾性体層14の強度を確保することができる。
弾性体層14の外周面14bには、図2(a)のように発泡セル16が開口していてもよいし、図2(b)のように発泡セル16が開口していなくてもよい。好ましくは、弾性体層14の外周面14bに発泡セル16が開口しているものである。図2(a)のように、弾性体層14の外周面14bに発泡セル16が開口してなる凹部20bを有すると、凹部20b内に紙粉を掻き取ることができる。これによっても、弾性体層14の外周面14bに紙粉が付着するのを抑えることができる。成形方法にもよるが、図2(b)のように弾性体層14の外周面14bに薄皮14cが形成され、発泡セル16が開口していないものは、外周面14bを薄く削ることにより、図2(a)のように弾性体層14の外周面14bに発泡セル16を開口させることができる。
弾性体層14の内周面14aには、図2(a)(b)のように発泡セル16が開口していてもよいし、発泡セル16が開口していなくてもよい。弾性体層14の内周面14aに発泡セル16が開口してなる凹部20aを有するものは、弾性体層14の径方向内側に比較的大きい径の発泡セル16を形成しやすい。つまり、弾性体層14の径方向内側における発泡セル16の平均径を径方向外側における発泡セル16の平均径よりも大きくしやすい。また、弾性体層14の径方向内側の発泡セル16を連泡タイプのものとし、弾性体層14の径方向内側に発泡セル16同士が連なってなる空洞部18を形成しやすい。
弾性体層14は、ヒドリンゴムを含む形成用組成物を用い、成形型による成形や押出成形などによって形成することができる。例えば、軸体12をロール成形金型の中空部に同軸的に設置し、未架橋の形成用組成物を注入して、加熱・硬化(架橋)させた後、脱型するか、あるいは、軸体12の表面に未架橋の形成用組成物を押出成形するなどにより、軸体12の外周に弾性体層14を形成することができる。
弾性体層14の径方向内側に発泡セル16同士が連なってなる空洞部18を有する構成、弾性体層14の径方向内側における発泡セル16の平均径が径方向外側における発泡セル16の平均径よりも大きい構成、弾性体層14の内周面14aに発泡セル16が開口してなる凹部20aを有する構成とするには、例えば発泡剤から発生したガスが弾性体層14の径方向内側から抜けるように調整するとよい。弾性体層14の外周面14bには薄皮14cが形成されやすく、弾性体層14の外周面14bには発泡セル16が開口していないものが得られやすいが、弾性体層14の外周面14bに発泡セル16を開口させるには、例えば成形後に弾性体層14の外周面14bを削ればよい。
例えば押出による成形では、次のようにするとよい。まず、外周面に接着剤を塗布していない金属製の芯材とともにヒドリンゴムを含む形成用組成物を同時に押出しし、芯材の外周上に(接して)未加硫・未発泡の発泡性ゴム層を形成する。次に、得られた複合体を加圧条件下で加熱し、未発泡の状態を維持しつつ外周面側だけ加硫を進行させ、外周面全体に加硫された薄皮(スキン層)を形成する。このとき、金属製の芯材を有するため、外周面からの熱伝導によって複合体の加硫が進行する。したがって、径方向の外側から内側に向かって徐々に加硫が進行する。このような傾斜材料において、次に、芯材を外してゴムチューブとし、常圧下で加熱することにより、架硫・発泡を進行させる。傾斜材料であるため、径方向の外側から内側に向かって徐々に発泡セルが大きくなる。また、内周面は開放系であり未加硫の状態であったため、内周面には発泡セルが開口する。一方、外周面は加硫された状態であったため、発泡セルが形成されず、外周面には発泡セルが開口しない。
加圧条件下での加硫は、特に限定されるものではないが、0.5〜2.0MPaの加圧条件下で、100〜200℃の温度条件下、1〜20分程度の加熱を行うことが好ましい。常圧条件下での加硫は、特に限定されるものではないが、100〜200℃の温度条件下、10〜60分程度の加熱を行うことが好ましい。
架橋前のヒドリンゴムは通常ミラブルゴムであるため、発泡体とするためには基本的に発泡剤を用いる。したがって、上記形成用組成物には、架橋前のヒドリンゴムに加え、架橋剤、発泡剤などが含まれる。
発泡剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾカルボンアミド、N,N’−ジニトロペンタメチレンテトラミン(DPT)、炭酸水素カリウム、尿素、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)などが挙げられる。発泡剤の含有量は、形成用組成物における未架橋(架橋前)のヒドリンゴム100質量部に対し、5〜20質量部の範囲内とすることが好ましい。
発泡助剤としては、尿素系発泡助剤、金属酸化物系発泡助剤、金属石鹸系発泡助剤、サリチル酸系発泡助剤などが挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられ、発泡剤の種類に応じて最適なものが選択される。金属酸化物系発泡助剤としては、例えば、酸化亜鉛(II)などが挙げられる。金属石鹸系発泡助剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウムなどが挙げられる。サリチル酸系発泡助剤としては、例えば、サリチル酸が挙げられる。発泡助剤の含有量は、形成用組成物における未架橋のヒドリンゴム100質量部に対し、5〜20質量部の範囲内とすることが好ましい。
架橋剤としては、硫黄架橋剤、過酸化物架橋剤、脱塩素架橋剤を挙げることができる。これらの架橋剤は、単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。
硫黄架橋剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄、塩化硫黄、チウラム系加硫促進剤、高分子多硫化物などの従来より公知の硫黄架橋剤を挙げることができる。
過酸化物架橋剤としては、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ケトンパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、ジアシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイドなどの従来より公知の過酸化物架橋剤を挙げることができる。
脱塩素架橋剤としては、ジチオカーボネート化合物を挙げることができる。より具体的には、キノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、6−イソプロピルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、5,8−ジメチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネートなどを挙げることができる。
架橋剤の配合量としては、ブリードしにくいなどの観点から、未架橋のヒドリンゴム100質量部に対して、好ましくは0.1〜2質量部の範囲内、より好ましくは0.3〜1.8質量部の範囲内、さらに好ましくは0.5〜1.5質量部の範囲内である。
架橋剤として脱塩素架橋剤を用いる場合には、脱塩素架橋促進剤を併用しても良い。脱塩素架橋促進剤としては、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(以下、DBUと略称する。)もしくはその弱酸塩を挙げることができる。脱塩素架橋促進剤は、DBUの形態として用いても良いが、その取り扱い面から、その弱酸塩の形態として用いることが好ましい。DBUの弱酸塩としては、炭酸塩、ステアリン酸塩、2−エチルヘキシル酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩、フェノール樹脂塩、2−メルカプトベンゾチアゾール塩、2−メルカプトベンズイミダゾール塩などを挙げることができる。
脱塩素架橋促進剤の含有量としては、ブリードしにくいなどの観点から、未架橋のヒドリンゴム100質量部に対して、0.1〜2質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.3〜1.8質量部の範囲内、さらに好ましくは0.5〜1.5質量部の範囲内である。
弾性体層14を構成する組成物および弾性体層14は、低電気抵抗化の観点から、導電剤を含んでいてもよいが、硬度の上昇による紙送り時の音(搬送音)を抑えるなどの観点から、カーボンなどの電子導電剤をなるべく含まないことが好ましい。カーボンなどの電子導電剤は、硬度の上昇に大きく影響しない範囲であれば組成物中に含まれていてもよいが、カーボンなどの電子導電剤を含まないことがより好ましい。一方、硬度の上昇に与える影響が小さいことから、イオン導電剤は含んでいてもよい。また、含んでいなくてもよい。電子導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、c−TiO、c−ZnO、c−SnO(c−は、導電性を意味する。)などが挙げられる。イオン導電剤としては、4級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤などが挙げられる。
弾性体層14を構成する組成物および弾性体層14は、必要に応じて、各種添加剤を適宜添加しても良い。添加剤としては、滑剤、加硫促進剤、老化防止剤、光安定剤、粘度調整剤、加工助剤、難燃剤、可塑剤、充填剤、分散剤、消泡剤、顔料、離型剤などを挙げることができる。
弾性体層14は、上記組成物を用いることにより、所定の体積抵抗率に調整することができる。紙粉の付着を抑えるなどの観点から、弾性体層14の体積抵抗率は、10〜1010Ω・cm、10〜10Ω・cm、10〜10Ω・cmの範囲などに設定すればよい。
また、弾性体層14は、上記組成物を用いることにより、表面残留電荷を所定の範囲にすることができる。紙粉の付着を抑えるなどの観点から、弾性体層14の表面残留電荷は、0〜20Vの範囲とすることが好ましい。より好ましくは0〜10Vの範囲である。
弾性体層14の硬度は、所定の範囲に設定することができる。低硬度化による紙送り時の音を抑える効果に優れる、優れた強度を確保できるなどの観点から、30〜60°の範囲とすることが好ましい。より好ましくは30〜50°の範囲である。所定の低硬度にするには、電子導電剤を含まないことが好ましい。弾性体層14の硬度は、(JIS-A硬度)により測定することができる。
弾性体層14の厚みは、特に限定されるものではなく、用途などに応じて0.1〜10mmの範囲内などで適宜設定すればよい。
軸体12は、導電性を有するものであれば特に限定されない。具体的には、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属製の中実体、中空体からなる芯金などを例示することができる。軸体12の表面には、必要に応じて、接着剤、プライマーなどを塗布しても良い。つまり、弾性体層14は、接着剤層(プライマー層)を介して軸体12に接着されていてもよい。接着剤、プライマーなどには、必要に応じて導電化を行なっても良い。
以上の構成の紙送りロール10によれば、弾性体層14がヒドリンゴムを含む発泡体であり、弾性体層14の径方向内側に発泡セル16同士が連なってなる空洞部18を有することから、紙粉の付着および搬送音の両方を抑えることができる。
本発明に係る紙送りロールの構成としては、図1に示す構成に限定されるものではない。例えば、図1に示す紙送りロール10において、軸体12と弾性体層14との間に他の弾性体層を備えた構成であってもよい。
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。
(実施例1)
<弾性体層用組成物の調製>
エピクロルヒドリンゴム(ECO<1>)[日本ゼオン製「HydrinT3106」]100質量部と、加硫剤として硫黄[鶴見化学工業(株)製]0.5質量部と、加硫助剤として酸化亜鉛2種[三井金属工業(株)製]5.0質量部及びハイドロタルサイト[協和化学工業(株)製、商品名「DHT4A」]10.0質量部、加硫促進剤A[三新化学工業(株)製、商品名「サンセラーCZ」]1.0質量部、加硫促進剤B[大内新興化学工業(株)製、商品名「アクセルTBT」]1.0質量部、発泡剤としてアゾジカルボンアミド[三協化成製、商品名「セルマルクRUB」]10.0質量部と、をニーダーで混練することにより、ヒドリンゴム系の弾性体層用組成物を得た。
<紙送りロールの作製>
シリンダ径40φの押出成形部とクロスタイプのヘッドを有した押出成形装置を用い、外周面に接着剤が塗布されていない芯材(φ6、SUS304製)と共にヒドリンゴム系の弾性体層用組成物を同時に押出しし、芯材の外周面上に未加硫・未発泡の発泡性ゴム層を有する複合体を得た。次いで、得られた複合体を加圧オーブン内に載置し、オーブン内を1MPaまで加圧した後、150℃まで加熱して15分間、加熱処理を行なった。加圧下で加熱することにより、未加硫・未発泡の発泡性ゴム層の内部においては発泡が抑制される一方、その外周面付近においては加硫を進行させることで、表面に薄皮を形成した。この加熱処理により、発泡性ゴム層は半加硫・未発泡の状態となった。加熱処理後の複合体表面を目視で観察したところ、外周面全体にわたって発泡セルは見当たらず、薄皮(スキン層)が形成されていることが認められた。次いで、オーブン内の圧力を常圧まで減圧し、複合体から芯材を除去した。得られたゴムチューブ(半加硫・未発泡状態の発泡性ゴム層)に対して、オーブン内にて、常圧下、150℃で30分間、加熱処理を施した。この加熱処理により、発泡性ゴム層の発泡・加硫を行った。この加熱処理により、発泡性ゴム層は加硫・発泡の状態となった。このようにして得られた、ヒドリンゴムを含む発泡体からなるゴムチューブ(厚み3mm)に軸体を挿入し、紙送りロールを得た。得られた弾性体層の外周表面の研磨は行わなかった。
<弾性体層の構造>
得られた紙送りロールの弾性体層について、外周面、内周面を目視にて観察した。また、径方向の断面をキーエンス社製レーザー顕微鏡による写真にて観察した。レーザー顕微鏡写真を図3に示す。図3(a)は、弾性体層の径方向内側のレーザー顕微鏡写真であり、図3(b)は、弾性体層の径方向外側のレーザー顕微鏡写真である。これらは同じ倍率で撮影されたものである。得られた弾性体層の外周面には全体にわたって薄皮(スキン層)が形成されており、弾性体層の外周面には全体にわたって発泡セルが開口してなる凹部が形成されていない。弾性体層の内周面には全体にわたって発泡セルが開口してなる凹部が形成されている。図3(a)に示すように、弾性体層の径方向内側には、発泡セル同士が連なってなる空洞部を有している。図3(b)に示すように、弾性体層の径方向外側には、発泡セル同士が連なってなる空洞部を有していない。図3(a)(b)から、弾性体層の径方向内側における発泡セルの平均径が径方向外側における発泡セルの平均径よりも大きくなっている。
(実施例2)
弾性体層用組成物の調製において、エピクロルヒドリンゴム(ECO)として植物由来のエピクロルヒドリンを含む以下のものを用いた以外は実施例1と同様にして、紙送りロールを作製した。得られた弾性体層の外周表面の研磨は行わなかった。弾性体層の構造は、実施例1と同様であった。
・エピクロルヒドリンゴム(ECO<2>):ダイソー製、商品名「エピクロマーCG102」
(実施例3)
得られた弾性体層の外周表面の研磨を行い(研磨した厚み100μm)、弾性体層の外周面に全体にわたって発泡セルが開口してなる凹部を有するものとした以外は実施例2と同様にして、紙送りロールを作製した。弾性体層の外周面以外の構造は、実施例1と同様であった。
(実施例4)
弾性体層用組成物の調製において、イオン導電剤(テトラメチルアンモニウムパークロレート)を0.3質量部配合した以外は実施例3と同様にして、紙送りロールを作製した。実施例3と同様、得られた弾性体層の外周表面の研磨を行い(研磨した厚み100μm)、弾性体層の外周面に全体にわたって発泡セルが開口してなる凹部を有するものとした。弾性体層の外周面以外の構造は、実施例1と同様であった。
(比較例1)
<弾性体層用組成物の調製>
ポリオール(三井化学ポリウレタン(株)製、「EP828」)90質量部と、破泡剤(三井化学ポリウレタン(株)製、「POP31−28」)10質量部と、アミン系触媒(花王(株)製、「カオライザーNo.31」)1質量部と、アミン系触媒(東ソー(株)製、「トヨキャットHX35」)0.3質量部と、錫系触媒(ジブチル錫ジラウレート)0.1質量部と、シリコーン系整泡剤(GE東芝シリコーン(株)製「L5309」)3質量部と、水2質量部と、イソシアネート(住化バイエルウレタン(株)製、「スミジュールVT80」)26.9質量部と、をプラネタリーミキサーで混練することにより、ウレタン系の弾性体層用組成物を得た。
<紙送りロールの作製>
芯金(直径6mm)をパイプ状成形金型の型内にセットし、ウレタン系の弾性体層用組成物をその型内に注入し、90℃×30分間の条件にて発泡硬化させ、ウレタン系の発泡体からなる弾性体層(厚み3mm)を形成した。これにより紙送りロールを得た。得られた弾性体層の外周表面の研磨は行わなかった。弾性体層の構造は、実施例1と同様であった。
(比較例2)
<弾性体層用組成物の調製>
エチレン−プロピレン−ジエンゴム(三井化学(株)製、「EPT4045」)100質量部と、酸化亜鉛2種(三井金属工業(株)製)5質量部と、ステアリン酸(花王(株)製、「ルーナックS−30」)1質量部と、プロセスオイル(出光興産(株)製、「ダイアナプロセスPW−380」)30質量部と、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(発泡剤)15質量部と、硫黄(鶴見化学工業(株)製)1質量部と、ジベンゾチアジルジスルフィド(加硫促進剤)(大内新興化学工業(株)製、「ノクセラーDM−P」)2質量部と、テトラメチルチウラムモノサルファイド(加硫促進剤)(大内新興化学工業(株)製、「ノクセラーTS」)1質量部と、をニーダーで混練することにより、EPDM系の弾性体層用組成物を得た。
<紙送りロールの作製>
芯金をパイプ状成形金型の型内にセットし、EPDM系の弾性体層用組成物をその型内に注入した後、160℃で40分間加熱することにより、弾性体層用組成物を加硫・硬化・発泡させて、EPDM系の発泡体からなる弾性体層(厚み3mm)を形成した。これにより紙送りロールを得た。得られた弾性体層の外周表面の研磨は行わなかった。弾性体層の構造は、実施例1と同様であった。
(比較例3)
弾性体層用組成物の調製において、電子導電剤としてカーボンブラック(ライオン社製「ケッチェンEC300J」)15質量部を配合した以外は比較例2と同様にして、紙送りロールを作製した。得られた弾性体層の外周表面の研磨は行わなかった。弾性体層の構造は、実施例1と同様であった。
(比較例4)
弾性体層用組成物の調製において発泡剤を配合せず、発泡体としなかった以外は実施例1と同様にして、紙送りロールを作製した。得られた弾性体層の外周表面の研磨は行わなかった。
(比較例5)
アゾジカルボンアミドに代えてマイクロカプセル(松本油脂製薬製「マイクロスフェアーF60」15質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、弾性体層用組成物を調製した。そして、パイプ状成形金型を用い、比較例2と同様にして、紙送りロールを作製した。得られた弾性体層の外周表面の研磨は行わなかった。弾性体層の径方向内側(内周面から径方向に厚みの1/2の範囲)には、発泡セル同士が連なってなる空洞部を有していない。
得られた各紙送りロールについて、紙粉付着性、紙送り時の音(搬送音)の評価を行った。
(紙粉付着性)
紙送りロールを23℃×53%RHの環境下、回転数70rpmで周方向に回転させながら、コロトロン(直流電源使用)の芯部と弾性体層の表面との距離10mmとして100μA(定電流)のコロナ電流を印加し、弾性体層の表面を帯電させた。次いで、帯電位置から回転方向に90度回転した位置において表面電位計のプローブと弾性体層の表面との距離1mmとして弾性体層の表面の表面電位を軸方向の中央部にて1点測定した。この値を弾性体層の表面の表面残留電荷とした。軸体およびコロトロンは接地されている。紙粉付着性は、表面残留電荷の値から評価した。表面残留電荷が15V未満であった場合を特に良好「◎」、表面残留電荷が15V以上20V未満であった場合を良好「○」、表面残留電荷が20V以上150V未満であった場合をやや劣る「△」、表面残留電荷が150V以上であった場合を劣る「×」とした。
(搬送音)
紙送りロールをキヤノン(株)製、「imageRUNNER ADVANCE C5051」)における紙送りロールとして組み込んだ。23℃×53%RHの環境下にて普通紙を300,000枚通紙し、搬送音の発生を調べた。動作時に騒音の発生源となる駆動機構音は発生するが、組み込んだ紙送りロールに起因する不快音が全く聞こえない場合を特に良好「◎」、その不快音がかすかに聞こえるものの許容範囲である場合を良好「○」、その不快音が許容できない大きさで時折聞こえる場合をやや劣る「△」、その不快音が許容できない大きさで頻繁に聞こえる場合を劣る「×」とした。
(硬度)
弾性体層表面のJIS−A硬度を測定した。硬度が60°以下の場合を低硬度「○」、硬度が60°超70°以下の場合を中硬度「△」、硬度が70°超の場合を高硬度「×」とした。
(体積抵抗)
初期の抵抗値として、紙送りロールの抵抗測定を行った。測定はN/N環境(23℃、RH50%)において、紙送りロールを両端部に荷重500gで芯金端部より200Vの直流電圧を印加し、回転速度30rpmでの1分間のロール抵抗値を測定した。
比較例1は、単体では硬度が高く摩擦係数が低い熱硬化性ポリウレタンを弾性体層のポリマーに用いているため、搬送音が十分には抑えられない。また、表面残留電荷がやや大きいため、紙粉の付着を抑える効果が小さい。比較例2は、単体では高抵抗のEPDMを弾性体層のポリマーに用いている。このため、表面残留電荷が大きく紙粉の付着が抑えられない。このEPDMにカーボンなどの電子導電剤を配合すると(比較例3)、表面残留電荷が小さくなり紙粉の付着はやや抑えられるが、硬くなって搬送音が抑えられない。比較例4は、ヒドリンゴムを弾性体層のポリマーに用いているが、非発泡であるため、搬送音が抑えられない。比較例5は、弾性体層がヒドリンゴムを含む発泡体であるが、弾性体層の径方向外側(該周面から径方向に厚みの1/2の範囲)に発泡セル同士が連なってなる空洞部を有していない(独泡である)。このため、搬送音が抑えられない。
これに対し、実施例は、弾性体層がヒドリンゴムを含む発泡体であり、弾性体層の径方向外側(該周面から径方向に厚みの1/2の範囲)に発泡セル同士が連なってなる空洞部を有している(連泡である)。このため、表面残留電荷が小さく紙粉の付着が抑えられる。また、搬送音も抑えられる。そして、実施例1,2から、ヒドリンゴムが植物由来のエピクロルヒドリンを含むことで、さらに表面残留電荷が小さくなり、紙粉の付着がさらに抑えられることがわかる。また、実施例2,3から、弾性体層の外周面に発泡セルが開口してなる凹部を有することで、搬送音がさらに抑えられることがわかる。また、実施例2,4から、イオン導電剤を配合していなくても表面残留電荷が十分に小さく抑えられるので、イオン導電剤を配合していなくても紙粉の付着が抑えられることがわかる。
以上、本発明の実施形態・実施例について説明したが、本発明は上記実施形態・実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
10 紙送りロール
12 軸体
14 弾性体層
14a 弾性体層の内周面
14b 弾性体層の外周面
14c 薄皮(スキン層)
16 発泡セル
18 空洞部
20a 内周面の凹部
20b 外周面の凹部

Claims (5)

  1. 軸体と、前記軸体の外周に形成された弾性体層と、を備え、
    前記弾性体層が、ヒドリンゴムを含む発泡体であり、前記弾性体層の径方向内側に、発泡セル同士が連なってなる空洞部を有することを特徴とする紙送りロール。
  2. 前記弾性体層の径方向内側における発泡セルの平均径が、径方向外側における発泡セルの平均径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の紙送りロール。
  3. 前記ヒドリンゴムが、植物由来のエピクロルヒドリンを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の紙送りロール。
  4. 前記弾性体層の外周面に、発泡セルが開口してなる凹部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の紙送りロール。
  5. 前記弾性体層の内周面に、発泡セルが開口してなる凹部を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の紙送りロール。
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