JP4796175B2 - 紙送りローラ - Google Patents
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Description
しかし前記ローラは、通紙枚数が多くなると摩耗によって表面が平滑になり、摩擦係数が大きく低下して紙送りの不良を生じやすくなるという問題がある。また、摩擦係数が低下したゴムローラの表面を紙がすべることによっていわゆる「鳴き」と呼ばれる現象を生じやすくなるという問題もある。
しかしこのいずれの特許文献に記載のものも、ローラの外周面を構成する外層は従来の単層構造のゴムローラと同様に非多孔質のゴムからなるため、通紙枚数が多くなると摩耗によって表面が平滑になって摩擦係数が大きく低下することには変わりはなく、前記摩擦係数の低下による紙送りの不良が生じるのを確実に防止することはできない。
多孔質体からなる外層は、摩耗しても内部に存在する空隙が次々と表面に露出するため、従来の非多孔質の外層のように表面が平滑化して摩擦係数が大きく低下することはない。そのため、摩擦係数の低下による紙送りの不良が生じるのをある程度は抑制することができる。
そのため外層および内層の厚み、および両層の厚みの比率を厳密にコントロールするのは容易ではなく、ばらつきを生じやすい。そしてばらつきを生じると、2層構造とし、内層のセル径を大きくして前記内層を軟らかくしたことによる、先に説明した紙との接触面積を大きくして紙送りの不良が生じるのを防止したり、鳴きを防止したりする効果にもばらつきを生じやすいという問題がある。
すなわち特許文献5では、紙送りローラの全体のアスカーC型硬さをC23〜C37とするのが好ましいとしているが、全体をこのように軟らかくした場合、外層のゴム硬さも同等程度にしかできない。そのため外層の厚みにもよるが、前記外層が早期に摩耗して失われてしまって短期間で良好な紙送りができなくなるという問題を生じる。
前記本発明の紙送りローラにおいては、外層を多孔質体によって形成することで、摩耗しても内部に存在する空隙が次々に表面に露出して初期の表面状態を維持し、前記表面が平滑化して摩擦係数が大きく低下するのを防止できる。しかも前記外層を、EPDMを含み、アスカーC型硬さがC40以上の多孔質体によって形成しているため、その耐摩耗性を向上して早期に摩耗して失われてしまうことも防止できる。
さらにブチルゴムは、特に室温(5〜35℃)域での振動吸収性能に優れるため、紙との摩擦によって鳴きが生じるのをより一層確実に防止できる。
そのため本発明によれば、紙送りの不良や鳴き等の問題を生じにくく、これまでより長期間に亘って良好な紙送りを維持できる紙送りローラを提供できる。
また前記両層は、外層の内径を内層の外径より小さく形成して、前記外層内に内層を圧入することで互いに固定されているのが好ましい。これにより、両層の径差と弾性力によって前記両層を互いに固定することができ、使用材料および工程数を少なくできる。
図1を参照して、この例の紙送りローラ1は、筒状の外層2と、前記外層2内に嵌め合わされた筒状の内層3と、前記内層3の中心の通孔4に挿通されたシャフト5とを含んでいる。前記外層2の外周面6は、紙と接触する紙送りローラ1の表面とされている。
前記外層2は、EPDMを含み、(社)日本ゴム協会標準規格SRIS 0101「膨張ゴムの物理試験方法」に規定された測定方法により、温度23±1℃、湿度55±1%の環境下での測定によって求められるアスカーC型硬さがC40以上、C70以下の多孔質体によって形成される。
また外層2がEPDMを含む多孔質体に限定されるのは、当該EPDMが耐摩耗性等に優れるためである。
また内層3がブチルゴムからなる多孔質体に限定されるのは、当該ブチルゴムが、特に室温(5〜35℃)域での振動吸収性能に優れ、紙との摩擦によって鳴きが生じるのをより一層確実に防止できるためである。
前記外層2および内層3はそれぞれ別個に筒状に形成し、外層2内に内層3を嵌め合わせることで両層を積層して紙送りローラ1を構成するのが好ましい。これにより両層の厚みの比率を厳密にコントロールして、前記紙送りの不良や鳴き等を防止する効果にばらつきが生じるのを抑制し、常に一定の効果を有する紙送りローラを提供できる。
ただし外層2と内層2とは、接着剤によって接着して互いに固定してもよい。
前記両層をそれぞれ別個に多孔質体からなる筒状に形成するためには、従来公知の種々の方法が採用できる。例えば素材としてのゴムを必要に応じて各種の添加剤と混練したのち筒状に成形し、さらに加硫して両層を形成するにあたり、その任意の時点、例えば加硫と同時に、前記ゴムにあらかじめ添加しておいた発泡剤を発泡させることで、多孔質体からなる筒状の外層2、および内層3を別個に形成できる。また、ゴムにあらかじめ添加しておいた食塩等の水溶性粒子を加硫後に溶出させることでも前記外層2、内層3を形成できる。
前記熱可塑性エラストマとしては、例えばポリエステル系熱可塑性エラストマ、スチレン系熱可塑性エラストマ、ウレタン系熱可塑性エラストマ等が挙げられる。また熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等の軟質樹脂が挙げられる。
かかる外層のアスカーC型硬さを前記範囲内に調整するためには、前記各成分の種類や配合割合等、また熱可塑性エラストマにおいてはハードセグメントおよびソフトセグメントを形成するブロックの種類や長さ、あるいは両セグメントの比率等を調整すればよい。
前記外層2、内層3は、外層2が薄く内層3が厚いのが、紙送りローラ1の全体での柔軟性を高めて鳴きを防止するためには効果的であるが、外層2が薄すぎて摩耗によって短期間で失われてしまうのはよくない。そのため外層2と内層3の、紙送りローラ1の径方向の厚みの比(外層)/(内層)は、外層2に内層3を嵌め合わせる前の個別の筒体において(外層)/(内層)=50/50よりも内層3の割合が大きいのが好ましく、特に(外層)/(内層)=50/50〜20/80であるのがさらに好ましい。
外層2の厚みが前記範囲未満では、前記外層2が摩耗によって短期間で失われて内層3が露出するおそれがある。また前記範囲を超える場合には、紙送りローラ1の全体での柔軟性を高めて鳴きを防止する効果が十分に得られないおそれがある。
紙送りローラ1の外周面6、すなわち外層2の表面に露出した空隙の開口の、前記表面の単位面積あたりに占める割合(開口の面積占有率)は10%以上、40%以下であるのが好ましい。
また面積占有率が40%を超える場合には、紙送りローラ1の紙との接触面積が小さくなって、紙送りの不良を生じやすくなるおそれがある。
表1に示す各成分を170℃×20分間プレス加硫して、内径φ20、外径φ25、長さ65mmの多孔質体からなる筒状体(コット)を得た。次いでこの筒状体を、円筒研削盤を用いて外径φ24に研磨したのち長さ30mmにカットして、前記多孔質体からなる筒状の外層Iを作製した。前記外層IのアスカーC型硬さを、先に説明したSRIS 0101「膨張ゴムの物理試験方法」に規定された測定方法により、温度23±1℃、湿度55±1%の環境下で測定したところC37であった。
表1に示すようにパラフィンオイルの量を20質量部としたこと以外は外層Iと同様にして、同寸法の多孔質体からなる筒状の外層IIを作製した。前記外層IIのアスカーC型硬さを同様にして測定したところC40であった。
〈外層IIIの作製〉
表1に示すように酸化珪素の量を15質量部とし、パラフィンオイルを配合せず、かつ熱膨張性マイクロカプセルの量を5.5質量部としたこと以外は外層Iと同様にして、同寸法の多孔質体からなる筒状の外層IIIを作製した。前記外層IIIのアスカーC型硬さを同様にして測定したところC50であった。
(エラストマ)
EPDM:住友化学(株)製のエスプレン(登録商標)670F
(補強剤、充填剤)
酸化珪素:東ソー・シリカ(株)製のNipsil(登録商標)VN3
炭酸カルシウム:備北粉化工業(株)製のBF300
酸化チタン:チタン工業(株)製の商品名クロノスKR380
カーボンブラック:東海カーボン(株)製の商品名シースト3
(オイル)
パラフィンオイル:出光興産(株)製のダイアナ(登録商標)プロセスオイルPW-380
(加硫系添加剤)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
ステアリン酸:日油(株)製の商品名つばき
粉末硫黄:鶴見化学工業(株)製
TET:テトラエチルチウラムジスルフィド〔大内新興化学工業(株)製のノクセラー(登録商標)TET〕
DM:ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド〔大内新興化学工業(株)製のノクセラー(登録商標)DM〕
(発泡剤)
熱膨張性マイクロカプセル:松本油脂製薬(株)のマツモト マイクロスフェアー(登録商標)F170D
〈外層IVの作製〉
表2に示す各成分のうち熱膨張性マイクロカプセルを除く各成分を、2軸押出機〔アイペック社製のHTM38〕を用いて180℃で混練してEPDMを動的架橋させたのちペレット化して熱可塑性エラストマ組成物のペレットを得た。
熱可塑性エラストマ:ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)−ポリスチレン〔(株)クラレ製のセプトン(登録商標)4077〕
熱可塑性樹脂:ポリプロピレン〔日本ポリプロ(株)製のノバテック(登録商標)PP BC6〕
樹脂架橋剤:臭素化アルキルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂〔田岡化学工業(株)製のタッキロール(登録商標)250−III〕
〈外層Vの作製〉
表3に示す各成分を170℃×20分間プレス加硫して、内径φ20、外径φ25、長さ65mmの多孔質体からなる筒状体(コット)を得た。次いでこの筒状体を、円筒研削盤を用いて外径φ24に研磨したのち長さ30mmにカットして、前記多孔質体からなる筒状の外層Vを作製した。前記外層VのアスカーC型硬さを同様にして測定したところC70であった。
表3に示すように熱膨張性マイクロカプセルの量を2質量部としたこと以外は外層Vと同様にして、同寸法の多孔質体からなる筒状の外層VIを作製した。前記外層VIのアスカーC型硬さを同様にして測定したところC73であった。
EPDM:住友化学(株)製のエスプレン(登録商標)505A
また他の成分は外層Iで使用したものと同じとした。
〈内層Aの作製〉
表4に示す各成分を、ゴム混練装置より筒状に押出成形したのち加硫缶内で160℃×30分間加硫させるとともに化学発泡剤を発泡させ、ついで通孔に外径φ14の加工用のシャフトを圧入し、円筒研削盤を用いて外径φ21に研磨したのち長さ30mmにカットして、多孔質体からなる筒状の内層Aを作製した。前記内層AのアスカーC型硬さを同様にして測定したところC7であった。
表4に示すようにパラフィンオイルの量を45質量部としたこと以外は内層Aと同様にして、同寸法の多孔質体からなる筒状の内層Bを作製した。前記内層BのアスカーC型硬さを同様にして測定したところC10であった。
〈内層Cの作製〉
表4に示すようにパラフィンオイルを配合せず、かつ化学発泡剤の量を3.5質量部としたこと以外は内層Aと同様にして同寸法の多孔質体からなる筒状の内層Cを作製した。前記内層CのアスカーC型硬さを同様にして測定したところC30であった。
ブチルゴム:エクソンモービル社製のブチル268
TBT−N:テトラブチルチウラムジスルフィド〔大内新興化学工業(株)製のノクセラー(登録商標)TBT−N〕
化学発泡剤:永和化成工業(株)製のネオセルボン(登録商標)N#1000SW
また他の成分は外層Iで使用したものと同じとした。
表5に示す各成分を、ゴム混練装置より筒状に押出成形したのち加硫缶内で160℃×30分間加硫させるとともに熱膨張性マイクロカプセルを熱膨張させ、ついで通孔に外径φ14の加工用のシャフトを圧入し、円筒研削盤を用いて外径φ21に研磨したのち長さ30mmにカットして、多孔質体からなる筒状の内層Dを作製した。前記内層DのアスカーC型硬さを同様にして測定したところC40であった。
表5に示すように熱膨張性マイクロカプセルの量を5.5質量部としたこと以外は内層Dと同様にして同寸法の多孔質体からなる筒状の内層Eを作製した。前記内層EのアスカーC型硬さを同様にして測定したところC43であった。
〈実施例1〉
前記内層Cの通孔にφ14の樹脂製のシャフト(専用樹脂コア)を圧入したのち、前記内層Cを外層II内に圧入して紙送りローラを製造した。
〈実施例2〜4、比較例1、2〉
前記内層Cと、表6に示す外層とを組み合わせたこと以外は実施例1と同様にして紙送りローラを製造した。
前記内層Bの通孔にφ14の樹脂製のシャフト(専用樹脂コア)を圧入したのち、前記内層Bを外層III内に圧入して紙送りローラを製造した。
〈比較例3〜5〉
前記外層IIIと、表7に示す内層とを組み合わせたこと以外は実施例5と同様にして紙送りローラを製造した。
〈摩擦係数試験および通紙状況評価〉
各実施例、比較例の紙送りローラを、テフロン(登録商標)板の上に載置した幅60mm×長さ120mmの紙〔キヤノン(株)製のGF−500〕の上に340gfの鉛直荷重をかけながら圧接させた状態で、前記紙送りローラを周速度105mm/秒で回転させた際に、前記紙に加わる搬送力Fを、ロードセルを用いて測定して、式(1):
摩擦係数=F/340 (1)
により摩擦係数を求めた。測定は紙送りローラの製造直後(初期)と、前記紙送りローラを日本ヒューレットパッカード(株)製のレーザープリンタHP Laser Jet 4300nに組み込んで前記と同じ紙〔キヤノン(株)製のGF−500〕を5万枚通紙した後(耐久後)に実施した。またこの通紙時の通紙状況を観察して、途中で紙送りの不良が生じたものを×、5万枚の通紙をしても紙送りの不良が生じなかったものを○と評価した。また途中で紙送りの不良が生じたものは耐久後の摩擦係数を測定できなかったため摩擦係数の欄に×を記した。
各実施例、比較例の紙送りローラを、前記と同じレーザープリンタに装着して同じ紙〔キヤノン(株)製のGF−500〕を1000枚通紙した際に鳴きが生じたものを×、生じなかったものを○と評価した。
以上の結果を表6、7に示す。
2 外層
3 内層
4 通孔
5 シャフト
6 外周面
Claims (4)
- 紙送りローラであって、内層と、前記内層の外周に積層されて前記紙送りローラの外周面を構成する外層とを含み、前記内層は、ブチルゴムからなり、アスカーC型硬さがC10以上、C40以下の多孔質体、前記外層は、エチレン−プロピレン−ジエンゴムを含み、アスカーC型硬さがC40以上、C70以下の多孔質体からなり、前記内層は前記外層よりもゴム硬さが小さいことを特徴とする紙送りローラ。
- あらかじめ筒状に形成した外層内に、別に形成した内層を嵌め合わせることで、前記両層が積層されている請求項1に記載の紙送りローラ。
- 外層の内径を内層の外径より小さく形成して、前記外層内に内層が圧入されている請求項2に記載の紙送りローラ。
- 内層と外層とが接着剤によって接着されている請求項1に記載の紙送りローラ。
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