JP2018058327A - フィルムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】搬送中のシワの発生やトリミング不良を軽減することができるフィルムの製造方法の提供。
【解決手段】走行中のフィルムの幅方向両端部を切断除去する工程(切除工程1)と、切断除去されたフィルム2の切断部位4を幅方向端部側に折る工程(折り畳み工程3)とを、この順に有する、フィルム12の製造方法。切除工程1及び折り畳み工程1がテンター8の出口とテンターの下流に位置する最初のロール9との間に位置、好ましくは、中間製品ロールから最終製品ロールを得る工程の途中である、フィルムの製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、搬送中のシワの発生やトリミング不良を軽減することができる、フィルムの製造方法に関する。
フィルムは、主に溶融状態あるいは溶液状態のポリマを口金よりシート状に吐出し、これを冷却固化した後、所望の厚さになるように長手方向及び/又は幅方向に延伸することにより得られる。得られたフィルムは、複数のロール群を介して搬送され、巻き取りロールにロール状に巻き取られて中間製品ロールとなる。一般的に、フィルムを幅方向に延伸する装置としてはテンターを用いることが多く、テンターにおいては、フィルムの両端部をクリップで把持し、加熱処理を施しながらフィルムを幅方向に延伸する。
テンターでフィルムを幅方向に延伸する場合、フィルムの両端部にはクリップによって把持されたことによる変形が生じる(以下、クリップによって把持されたことによる変形部分を製膜エッジということがある。)。製膜エッジを有するフィルムを前記ロール群に介すと、幅方向の密着性が不均一となって搬送中にシワが発生し、その結果、中間製品ロールの外観不良や巻き取り不良を来たすことがある。
中間製品ロールの外観不良や巻き取り不良を軽減するために、中間製品ロールを得る前に製膜エッジを切断除去することが試みられている。また、製膜エッジを切断除去する過程においては、切断刃の摩耗や搬送による振動により切断部位の切断面に切り損じが発生する。また、製膜エッジは、不要なフィルムであるため可能な限り幅を狭くすることが好ましいが、製膜エッジは中間製品ロールに巻かれるフィルムに比べて強度が低く、切断除去後に切り損じが生じた箇所を起点として破断してしまうことがある(以下、切断除去後に製膜エッジが破断することを、製膜エッジのトリミング不良ということがある。)。
製膜エッジのトリミング不良が発生することなく中間製品ロールを得ることができたとしても、中間製品ロールの幅方向両端部には、上述の切り損じが残存している。中間製品ロールから最終製品ロールを得るには、通常、中間製品ロールよりフィルムを巻き出し、所望の幅になるように長手方向と平行な方向に切断するスリット工程を経て1本又は複数本のロールに再度巻き取る。このとき、中間製品ロールに巻かれたフィルムの幅方向両端部における切り損じが最終製品ロールに含まれるのを防ぐため、通常、このスリット工程においても幅方向両端部のフィルムを切断除去することが必要となる。スリット工程において切断除去される幅方向両端部のフィルム(以下、スリットエッジということがある。)も、前述の製膜エッジと同様に不要なフィルムであるため可能な限り幅を狭くすることが好ましいが、スリットエッジも最終製品ロールに巻かれるフィルムに比べて強度が低く、切り損じ部分を起点として破断してしまうことがある(以下、スリットエッジが破断することを、スリットエッジのトリミング不良ということがある。)。
このような製膜エッジやスリットエッジのトリミング不良が発生すると、必然的にフィルムの製膜やスリットを停止することとなる。
そのため、搬送中のシワの発生やトリミング不良を軽減するために、搬送条件の調節が必要となる。特許文献1には製膜エッジをロール群に介し搬送する際、ロールの巻き角度を調節して搬送中のシワやトリミング不良を軽減する方法が、特許文献2には搬送ロールにエキスパンダーロールを使用して搬送中のシワを抑制する方法が開示されている。
特開2016−55629号公報 特開2010−162740号公報
特許文献1や2に記載の方法では、製膜エッジを有した状態で複数のロール群を介すため、ロールとフィルムの密着性が不均一となり、搬送中に発生するシワの軽減効果も不十分である。特許文献2に記載の方法では、エキスパンダーロール等を使用する場合、フィルムの幅方向に張力を与えてフィルムを幅方向に滑らせる作用を利用するため、キズが発生することがある。
そこで本発明は、係る従来技術の欠点を解消し、搬送中のシワの発生及びトリミング不良を軽減することができるフィルムの製造方法を提供することをその課題とする。
上記課題を解決するための本発明は、以下である。
(1) 走行中のフィルムの幅方向両端部を切断除去する工程(切除工程1)と、切断除去されたフィルムの切断部位を幅方向端部側に折る工程(折り畳み工程1)とを、この順に有することを特徴とする、フィルムの製造方法。
(2) 前記切除工程1及び前記折り畳み工程1が、テンターの出口とテンターの下流に位置する最初のロールとの間に位置することを特徴とする、(1)に記載のフィルムの製造方法。
(3) 前記切除工程1及び前記折り畳み工程1が、中間製品ロールから最終製品ロールを得る工程の途中に位置することを特徴とする、(1)に記載のフィルムの製造方法。
(4) 中間製品ロール及び前記折り畳み工程1よりも下流に、さらに走行中のフィルムの幅方向両端部を切断除去する工程(切除工程2)と、切断除去されたフィルムを幅方向中央側に折る工程(折り畳み工程2)とを、この順に有することを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載のフィルムの製造方法。
(5) 前記折り畳み工程1、及び折り畳み工程2の少なくとも一方の工程にて折り畳まれたフィルムを回収する回収工程を有することを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載のフィルムの製造方法。
(6) フィルムの厚みが100μm以下であることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載のフィルムの製造方法。
本発明の製造方法によれば、搬送中のフィルムにおけるシワの発生及びトリミング不良を軽減することができる、フィルムの製造方法を提供することができる。
本発明のフィルムの製造方法における切除工程1及び折り畳み工程1の一例を表す上面図である。 本発明のフィルムの製造方法における切除工程1及び折り畳み工程1の一例を表す側面図である。 本発明のフィルムの製造方法における切除工程2及び折り畳み工程2の一例を表す上面図である。 本発明のフィルムの製造方法における切除工程2及び折り畳み工程2の一例を表す側面図である。 クラッシャーの一例を表す模式図である。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明のフィルムの製造方法は、フィルムの製造方法であって、走行中のフィルムの幅方向両端部を切断除去する工程(切除工程1)と、切断除去されたフィルムの切断部位を幅方向端部側に折る工程(折り畳み工程1)とを、この順に有することを特徴とする。
本発明のフィルムの製造方法は、走行中のフィルムの幅方向両端部を切断除去する工程(切除工程1)と、切断除去されたフィルムの切断部位を幅方向端部側に折る工程(折り畳み工程1)とを、この順に有することが重要である。本発明のフィルムの製造方法は、切除工程1を有することにより、中間製品ロールとしては不要であり、かつシワの発生原因となる幅方向両端部のフィルムを切断除去することができる。また、切除工程1における切断は長手方向と平行に行うのが理想であるが、フィルムの搬送状態により長手方向からずれることもある。このようなずれが生じると、その部分を起点として切断除去されたフィルムが破れることがある。折り畳み工程1を有することにより、ずれが生じた部分が幅方向端部側に折り畳まれるため、切断除去されたフィルムがこの部分を起点として破断するのを軽減することができる。従って、このような態様とすることにより、搬送中のフィルムにおけるシワの発生、及びトリミング不良を軽減することができる。なお、長手方向とはフィルムの走行方向をいい、幅方向とはフィルム面と平行かつ長手方向と垂直な方向をいう。
切除工程1の一例としては、例えば、フィルムを幅方向に延伸する装置としてテンターを用いる場合において、テンターを通過した後にフィルムの幅方向両端部を切除する工程が挙げられる。テンターは通常、フィルムの幅方向両端部をクリップで把持して加熱処理を施しながらフィルムを延伸するが、このときフィルムの幅方向両端部にはクリップの把持に起因する変形が生じる。このような変形が生じた部位は製品として用いることができないだけでなく、シワの原因にもなるため、中間製品ロールを得る前に切除する。切除工程1における切断手段は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、例えば、刃物やレーザー光線等を好適に用いることができる。刃物は直刃の片刃及び両刃、丸刃の片刃及び両刃のいずれであってもよく、その材質は、切断能や耐久性の観点から、ステンレス、超硬刃、及びセラミック等であることが好ましい。
折り畳み工程1の一例について、図1、2を用いて説明する。刃物1により切断除去されたフィルム2は、折り畳みガイド3(図1にのみ表示)によりその切断部位4(図1にのみ表示)が幅方向端部側に折り畳まれる。このとき、切断除去されたフィルム2の切断部位4を幅方向端部側に折り畳むため、折り畳みガイド3はフィルム面と平行な方向から観察したときの位置が切断部位4よりも幅方向端部側となるように配置する。なお、折り畳む回数は複数回であってもよく、その場合は複数の折り畳みガイド3を設置することとなる。さらに、切断除去されたフィルム2が折り畳みガイド3とストッパー5の間を通過する態様としてもよい。このような態様とすることにより、切断除去されたフィルム2が走行中に幅方向端部側にシフトのするのを軽減することができるため、折り畳み工程1が安定する。切断除去されたフィルム2は折り畳みガイド3を通過した後、フィルムの両端部に配置されたエッジガイドロール6によって、フィルムの長手方向とは異なる方向に搬送され、回収装置7(図2にのみ表示)にて回収される。
なお、切除工程1及び折り畳み工程1の位置関係は、順序が維持されていれば本発明の効果を損なわない限り特に制限されない。フィルムを製造する際の中間製品ロールに巻かれるフィルムの熱影響による平面性不良の軽減や、日常の点検やメンテナンスの容易性、シワの発生等を考慮して、適宜切除工程1及び折り畳み工程1を配置することができる。中でも、本発明のフィルムの製造方法においては、中間製品ロールに巻かれるフィルムにおけるシワの発生を軽減する観点から、切除工程1及び折り畳み工程1が、テンターの出口とテンターの下流に位置する最初のロールとの間に位置することが好ましい。図1に示す例においては、テンター8の下流に位置する最初の搬送ロール9よりも上流に切除工程1及び折り畳み工程1が位置する。このような態様とすることにより、クリップ10の把持に起因する変形11(図1にのみ表示)を有さない中間製品ロールに巻かれるフィルム12のみがテンター8の下流に位置する最初の搬送ロール9を通過することとなるため、シワの発生を軽減できる。また、切除工程1と折り畳み工程1を近接させることにより、点検やメンテナンスが容易となる。
また、本発明のフィルムの製造方法においては、切除工程1及び折り畳み工程1が、中間製品ロールから最終製品ロールを得る工程の途中に位置することも好ましい。中間製品ロールとは、最終製品ロールとなる前に、製品となるフィルムが巻かれたロールをいう。最終製品ロールはこの中間製品ロールに巻かれたフィルムを巻き出して、任意の幅に切断しながら再度巻き取ることにより得ることができる。このとき、1本の中間製品ロールから得られる最終製品ロールは1本であっても複数本であってもよい。本発明のフィルムの製造方法において中間製品ロールを巻き取る際には、巻き姿向上やフィルム面の擦れに伴うキズの発生を軽減するため、幅方向両端部付近にナール加工を施すことがある。このナール加工部分は最終製品ロールには不要な部分であるため、中間製品ロールから最終製品ロールを得る過程で、切断除去することが好ましい。切除工程1及び折り畳み工程1が、中間製品ロールから最終製品ロールを得る工程の途中に位置することにより、搬送中の最終製品となるフィルムにおけるシワの発生、及びトリミング不良を軽減することができる。
そして、本発明のフィルムの製造方法においては、中間製品ロール及び折り畳み工程1よりも下流に、さらに走行中のフィルムの幅方向両端部を切断除去する工程(切除工程2)と、切断除去されたフィルムを幅方向中央側に折る工程(折り畳み工程2)とを、この順に有することも好ましい。切除工程1により不要な部分を切除した後のフィルムは、通常、幅方向両端部の形状が切断除去されたフィルムの切断部位(幅方向内側)と同様の形状となる。すなわち、切除工程1による切除が長手方向とからずれると、切除工程1により不要な部分を切除した後のフィルムの幅方向両端部にも、このようなずれが反映されることとなる。切除工程1に由来するずれが生じた部分は最終製品ロールには不要な部分であり、これを除去するために、中間製品ロール及び折り畳み工程1よりも下流に、さらに走行中のフィルムの幅方向両端部を切除する工程(切除工程2)を有することが好ましい。また、切除工程2で切断除去されたフィルムは、通常、生産効率の観点から幅方向の長さが短くなるため、切除工程1に由来するずれを起点として破断しやすいため、この段階でもトリミング不良が発生しやすくなる。切除工程2で切断除去されたフィルムを幅方向中央側に折る工程(折り畳み工程2)を有することにより、切除工程1に由来するずれが生じた部分が幅方向中央側に折り畳まれるため、切断除去されたフィルムがこの部分を起点として破断しにくくなり、トリミング不良の発生頻度が軽減される。
すなわち、中間製品ロール及び折り畳み工程1よりも下流に、切除工程2と折り畳み工程2とを、この順に有することにより、最終製品ロールの品質を向上させること、及びトリミング不良の発生を軽減することができる。
切除工程2及び折り畳み工程2の一例について図3、4を用いて説明する。図3、4は中間製品ロールから巻き出したフィルムを所望の幅に切断して最終製品ロールとして巻き取る段階(スリット工程)において、切除工程2及び折り畳み工程2を備える態様を示している。中間製品ロール13より巻き出されたフィルムはスリット搬送ロール14を介して刃物1を備える溝付きロール15へ搬送され、刃物1によって切断される。切除工程2における刃物は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、切除工程1と同様のもの好適に用いることができる。切断除去されたフィルム2は、折り畳みガイド3により、その幅方向端部16(図3にのみ表示)が幅方向中央側に折り畳まれる。このとき、切断除去されたフィルム2の幅方向端部16を幅方向中央側に折り畳むため、折り畳みガイド3はフィルム面と平行な方向から観察したときの位置が幅方向端部16よりも幅方向中央側となるように配置する。なお、折り畳む回数は複数回であってもよく、その場合は複数の折り畳みガイド3を設置することとなる。さらに、切断除去されたフィルム2が折り畳みガイド3とストッパー5(図3にのみ表示)の間を通過する態様としてもよい。このような態様とすることにより、切断除去されたフィルム2が走行中に幅方向中央側にシフトのするのを軽減することができるため、折り畳み工程2が安定する。
なお、切除工程2においては、溝付きロール15を使用することや、スリット搬送ロール14の位置を調節して張力制御することにより、切断時のずれを限りなく小さくすることができるが、トリミング不良を最大限に軽減する観点から、切断除去されたフィルム2をさらに幅方向端部側に折り畳む折り畳みガイド3(図3、4には表示していない。)を追加してもよい。
切断除去されたフィルム2は折り畳みガイド3を通過した後、フィルムの両端部に配置されたエッジガイドロール6によって、フィルムの長手方向とは異なる方向に搬送され、回収装置7(図4にのみ表示)にて回収される。なお、切除工程2及び折り畳み工程2の位置関係は、順序が維持されていれば本発明の効果を損なわない限り特に制限されない。
切断除去されたフィルム2が除去されたフィルムは、所望の幅になるように長手方向と平行に切断(図3においては2等分)された後、複数のスリット搬送ロール14を介して搬送され、コンタクトロール17に密着しながら巻き取られて最終製品ロール18となる。
本発明のフィルムの製造方法は、不要となったフィルムを原料として再利用するために、折り畳み工程にて折り畳まれたフィルムを回収する回収工程を有することが好ましい。回収工程は本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、例えば、折り畳まれたフィルムを再度巻き取って回収する工程や、折り畳まれたフィルムを裁断又は粉砕し、その裁断物又は粉砕物を回収する工程等を好ましく採用することができる。中でも、原料としての再利用の容易性の観点から、折り畳まれたフィルムを裁断又は粉砕し、その裁断物又は粉砕物を回収する工程を用いることがより好ましい。このような工程を実現するための装置として、クラッシャーと呼ばれる装置を用いることができる。
図5に、クラッシャーの一例の概略図を示す。ガイドロール6により走行方向を変えた切断除去されたフィルム2は、クラッシャー19に投入される。クラッシャー19において、切断除去されたフィルム2は2つのニップロール20により圧着、搬送されて2つの裁断ロール21によって裁断される。
本発明のフィルムの製造方法は、本発明の効果を最大限に発揮する観点から、フィルムの厚みが100μm以下であることが好ましい。ここでいうフィルムの厚みは、中間製品ロールに巻かれるフィルムの厚みをいう。フィルムの厚みが100μmを超える場合は、切断除去されたフィルムの強度が比較的高く、トリミング不良自体が生じにくい。そのため、本発明を用いなくてもトリミング不良の発生頻度が低く抑えられることがある。上記観点から、本発明のフィルムの製造方法におけるフィルムの厚みは小さければ小さいほど好ましく、その下限は特に制限されないが、生産可能性の観点から0.5μmが現実的である。本発明の効果を最大限に発揮する観点から、フィルムの厚みは、0.5μm以上50μm以下が好ましく、5μm以上30μm以下がより好ましい。
本発明のフィルムの製造方法におけるフィルムは、本発明の効果を損なわない限りフィルムを構成する熱可塑性樹脂の種類や配合比については特に制限されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、脂環族ポリオレフィン樹脂、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチルサクシネート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンジフェニルレートなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、3フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン樹脂などのフッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリグリコール酸樹脂、及びポリ乳酸樹脂などを単独で又は組み合わせて用いることができる。また、本発明の効果を損なわない限り、酸化防止剤、帯電防止剤など公知の各種添加剤を含むこともできる。
次に、本発明のフィルムの製造方法を、一例を挙げて説明する。但し、本発明は以下の態様に限定されるものではない。
まず、熱可塑性樹脂を含むペレットを押出機の原料投入部に供給し、熱可塑性樹脂の融点以上の温度に加熱して溶融ポリマを得る。次いで、ギヤポンプ等で押出量を調節して溶融ポリマを押出し、フィルター等を介して異物やゲル化物などを取り除き、ダイにて目的の形状に成形して吐出させる。なお、押出機は、1台であっても複数台であってもよく、複数台の押出機を用いる場合は、フィルターを通過した溶融ポリマをダイではなく積層装置に送り込む。積層装置としては、マルチマニホールドダイやフィードブロックやスタティックミキサー等を用いることができ、また、これらを任意に組み合わせることもできる。
ダイや積層装置から吐出された溶融ポリマのシートを、キャスティングドラム等の冷却体上で冷却固化し、キャスティングフィルムを得る。この際、溶融ポリマのシートを急冷固化させるため、溶融ポリマを冷却体に密着させることが好ましい。溶融ポリマを冷却体に密着させる方法は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、例えば、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて静電気力により溶融ポリマを冷却体に密着させる方法、スリット状、スポット状、又は面状のノズルでエアーを吹き付けて溶融ポリマを冷却体に密着させる方法、及びニップロールにて溶融ポリマを冷却体に密着させる方法等を好ましく用いることができる。
このようにして得られたキャスティングフィルムは、延伸方向に分子配向を持たせるため、必要に応じて一軸又は二軸延伸することが好ましい。一軸延伸とは、一方向(例えば、長手方向)にのみ延伸することをいい、二軸延伸とは、直交する二方向(例えば、長手方向および幅方向)に延伸することをいう。
また、二軸延伸を行う場合は、逐次に二方向に延伸(逐次二軸延伸)しても良いし、同時に二方向に延伸(同時二軸延伸)してもよい。また、長手方向及び/又は幅方向に再延伸を行ってもよい。
一軸延伸又は逐次二軸延伸においては、通常、ロールの周速差により長手方向の延伸を行う。長手方向の延伸は1段階で行っても、複数本のロール対を使用して多段階に行ってもよい。長手方向の延伸の倍率は、本発明の効果を損なわない限り、熱可塑性樹脂の種類やフィルムの用途に応じて任意に選択することができるが、2〜15倍が好ましい。例えば、熱可塑性樹脂組成物全体を100質量%としたときに、ポリエチレンテレフタレートを50質量%より多く100質量%以下含む場合には、2〜7倍が特に好ましい。
また、延伸時のフィルム温度は、本発明の効果を損なわない限り、熱可塑性樹脂の種類やフィルムの用途に応じて任意に選択することができるが、フィルムを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上ガラス転移温度+100℃以下であることが好ましい。延伸時のフィルム温度は、放射温度計にて測定することができ、放射温度計としては、例えば、キーエンス社製放射温度計(IT2−80)を用いることができる。
なお、フィルムを構成する熱可塑性樹脂が、ガラス転移温度の異なる複数の熱可塑性樹脂である場合、ガラス転移温度の最も高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度を、フィルムを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度とする。後述の幅方向の延伸においても同様である。
このようにして得られた一軸配向フィルムに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの性質を向上させる層を、インラインコーティングにより形成してもよい。
逐次二軸延伸においては、一軸配向フィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに搬送して、幅方向に延伸する。幅方向の延伸の倍率は、本発明の効果を損なわない限り、熱可塑性樹脂の種類やフィルムの用途に応じて任意に選択することができるが、2〜15倍が好ましい。例えば、熱可塑性樹脂組成物全体を100質量%としたときに、ポリエチレンテレフタレートを50質量%より多く100質量%以下含む場合には、2〜7倍が特に好ましい。
また、延伸温度は、本発明の効果を損なわない限り、熱可塑性樹脂の種類やフィルムの用途に応じて任意に選択することができるが、フィルムを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上ガラス転移温度+120℃以下であることが好ましい。ここで延伸温度とは、テンター中の延伸を行うゾーンにおける空気の温度をいう。こうして得られる把持されたフィルムの両端部はクリップによる変形が生じていることから、テンターから出たフィルムの両端部を切断する。両端部が切断されたフィルムは幅方向の張力が解放されるため、幅方向には熱伸縮挙動、長手方向には工程張力による伸びが発生し、さらには、テンターから出た際の空気の流れの影響を受けるため、フィルムの平面性が著しく損なわれる工程でもある。そのため、テンターの出口でフィルム表面温度が50℃以上100℃以下であることと、テンター出口からクリップ把持解放以前の位置に、両端部のフィルムを切断する工程、すなわち切除工程1を有することが、中間製品ロールに巻かれるフィルムの平面性不良やシワの発生を抑制するには好ましい方法である。テンター出口からクリップ把持解放以前の位置とは、幅方向に延伸されたフィルムが外気にさらされた後から、フィルムが構造的な安定状態を得るまでに、長手方向、幅方向、ともに物理的な拘束状態を続けられる位置である。この位置に切除工程1を有する利点は、一つは、クリップに把持されて変形した両端部のフィルムが残った状態で、外気に触れ冷却されると、中間製品ロールに巻かれるフィルムの両端部近傍の冷却が妨げられ、冷却による伸縮挙動にバラツキを生じさせ、平面性が悪化することがあるからである。そのため、フィルムが冷却される前に切除工程1により、両端部のフィルムを切り離すことが好ましい。もう一つは、クリップ把持解放後の中間製品ロールに巻かれるフィルムについて、長手方向への張力コントロールが均一に行われるため、中間製品ロールに巻かれるフィルムは平面性が良好で、その後のロール群に介す際の搬送シワの発生を抑制することができるためである。
こうして得られた切り離された両端部のフィルムは折り畳み工程1へ搬送され、切断部位が幅方向両端部側へと折り畳まれる。折り畳まれたフィルムは任意の方法により回収される。折り畳まれたフィルムは、ロール状に巻き取る工程により回収してもよいが、設置場所のスペースやロール状に巻き取ったロールを定期的に交換する必要があるがために、再生原料として使用すること、ならびに生産性を考慮すると前述のクラッシャーに送り、裁断した後に回収することが好ましい。また、これと同時に得られた中間製品ロールに巻かれるフィルムは、複数のロール群を介しながら、任意でフィルムが所望の厚みになっているかの測定や、フィルムの表面かつ内部の異物等の欠陥を検査し、ロール状に巻き取られ中間製品ロールとなる。
その後、得られた中間製品ロールよりフィルムを巻き出して搬送し、切除工程2により幅方向両端部を切断除去する。最終製品ロールに巻かれるフィルムは、複数のロール群を介して搬送した後、コンタクトロールにより幅方向全体に均一の圧力をかけながら巻き取られる。こうして、巻姿が良好な最終製品ロールを得ることができる。このとき、最終製品ロールは1本であっても複数本であってもよい。最終製品ロールの本数は、得られた中間製品ロールの幅や目的とする最終製品ロールの幅に応じて、適宜決定すればよい。
同時に、切除工程2において切断除去されたフィルムは折り畳み工程2へ搬送され、その幅方向端部が幅方向中央側へと折り畳まれる。折り畳まれたフィルムは任意の方法により回収される。折り畳まれたフィルムは、切除工程1において切断除去されたフィルムと同様に、前述のクラッシャーで裁断した後に回収することが好ましい。
本発明のフィルムの製造方法は、搬送中のシワの発生やトリミング不良を軽減することができるものであり、本発明で得られた熱可塑性樹脂フィルムは、シワが少ない高品質なものであるため、加工用途や光学用途等に好適に用いることができる。
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。
[測定及び評価方法]
実施例中に示す測定や評価は次に示す方法及び条件で行った。
(1)トリミング不良回数(中間製品ロール前)
フィルムの幅が2.5mになるように延伸し、幅方向両端部から中央にかけて250mmとなる位置で両端部を切断し、切り離された両端部をクラッシャーへと搬送させた。この状態で1日製膜し、トリミング不良の回数を記録した。
(2)トリミング不良回数(中間製品ロール後)
フィルムの幅2.0mの中間製品ロールよりフィルムを巻き出し、幅方向両端部から中央にかけて250mmとなる位置で両端部を切断し、再度巻き取ることによりフィルム幅1.5mの最終製品ロールを得た。なお、切り離された両端部はクラッシャーへと搬送させた。この条件で中間製品ロールを10本スリットし、トリミング不良が発生した本数を記録した。
(3)フィルムの厚み
ソニー・プレシジョン・テクノロジー株式会社製のデジタルマイクロメーターμメイトM−30を用いて測定した。得られた中間製品ロールより巻き出したフィルムを幅方向に11等分するように10個の測定点を定め、これらの測定点におけるフィルムの厚みを測定し、その平均値をフィルム厚みとした。なお、測定点は全て、幅方向と平行な1本の直線上に位置するように定めた。
(実施例1)
二軸押出機で樹脂ペレットを溶融混練し、得られた溶融物を、短管を通して口金からシート状に吐出させた。吐出させた溶融物を、表面温度25℃のキャスティングドラムに静電印加にて密着させて急冷固化し、キャスティングフィルムとした。その後、キャスティングフィルムを85〜98℃に加熱したロール群に導き長手方向に3.3倍に延伸し、一軸配向フィルムを得た。続いて一軸配向フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内に導き、130℃に加熱された雰囲気中で幅方向の長さ2.5m、厚み20μmになるように幅方向に3.5倍に延伸し、テンター内で210℃の熱固定を行い、130℃で徐冷後、テンター出口からクリップ把持解放以前の位置で幅方向両端部から中央にかけて250mmとなる位置で両端部を切断し、テンター下流に位置する最初のロールに搬送される前に切り離した幅方向両端部の切断部位を幅方向端部側へと折り畳み量が20%以上50%以下の範囲となるように折り畳み、裁断工程へと搬送させた。それと同時にフィルムの幅方向両端部を切断除去されたフィルムはテンター下流に位置する最初のロールへと導き、その後は複数のロール群を介し、ロール状に巻き取って中間製品ロールを得た。ここで、折り畳み量とは、切り離した幅方向端部のフィルムの幅方向の長さに対する、折り畳んだフィルムの幅方向の長さの割合をいう。この状態で1日製膜し、裁断工程へと搬送される幅方向両端部のフィルムのトリミング不良回数を記録した。その評価結果を表1に示す。
(実施例2、3)
フィルムの厚みを表1に記載のとおりとした以外は実施例1と同様に製膜し、中間製品ロールを得て、トリミング不良回数を記録した。その評価結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例1と同様に中間製品ロールを製造し、トリミング不良回数を記録した。その評価結果を表1に示す。さらに、得られた中間製品ロールよりフィルムを巻き出し、複数のロール群を介して搬送させ、フィルム幅が1.5mになるように幅方向端部から中央にかけて250mmとなる位置で両端部を切断して最終製品ロールを得た。切断除去したフィルムは、折り畳み量が5%以上40%以下の範囲となるように幅方向端部を中央部側へと折り畳んだ後、裁断工程へと搬送してトリミング不良の有無を評価した。ここでの折り畳み量とは、折り畳んだ幅方向の長さの割合をいう。同様の評価を10本の中間製品ロールについて行い、トリミング不良が発生した中間製品ロールの本数を記録した。その評価結果を表1に示す。
(実施例5)
中間製品ロールよりフィルムを巻き出して切断した後に、折り畳みを行わなかった以外は実施例4と同様にトリミング不良の評価を行った。その評価結果を表1に示す。
(比較例1〜3)
折り畳みを行わなかった以外は実施例1〜3と同様に製膜し、中間製品ロールを得て、トリミング不良回数を記録した。これらを順に比較例1〜3とし、その評価結果を表1に示す。なお、製膜の時間には、トリミング不良により運転が停止してから再開するまでの時間も含むものとした。
本発明により、搬送中のシワの発生やトリミング不良を軽減することができるフィルムの製造方法を提供することができる。本発明で得られた熱可塑性樹脂フィルムは、シワが少ない高品質なものであるため、加工用途や光学用途等に好適に用いることができる。
1 刃物
2 切断除去されたフィルム
3 折り畳みガイド
4 切断部位
5 ストッパー
6 エッジガイドロール
7 回収装置
8 テンター
9 搬送ロール
10 クリップ
11 把持に起因する変形
12 中間製品ロールに巻かれるフィルム
13 中間製品ロール
14 スリット搬送ロール
15 溝付きロール
16 切断除去されたフィルムの幅方向端部
17 コンタクトロール
18 最終製品ロール
19 クラッシャー
20 ニップロール
21 裁断ロール

Claims (6)

  1. 走行中のフィルムの幅方向両端部を切断除去する工程(切除工程1)と、切断除去されたフィルムの切断部位を幅方向端部側に折る工程(折り畳み工程1)とを、この順に有することを特徴とする、フィルムの製造方法。
  2. 前記切除工程1及び前記折り畳み工程1が、テンターの出口とテンターの下流に位置する最初のロールとの間に位置することを特徴とする、請求項1に記載のフィルムの製造方法。
  3. 前記切除工程1及び前記折り畳み工程1が、中間製品ロールから最終製品ロールを得る工程の途中に位置することを特徴とする、請求項1に記載のフィルムの製造方法。
  4. 中間製品ロール及び前記折り畳み工程1よりも下流に、さらに走行中のフィルムの幅方向両端部を切断除去する工程(切除工程2)と、切断除去されたフィルムを幅方向中央側に折る工程(折り畳み工程2)とを、この順に有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のフィルムの製造方法。
  5. 前記折り畳み工程1、及び折り畳み工程2の少なくとも一方の工程にて折り畳まれたフィルムを回収する回収工程を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のフィルムの製造方法。
  6. フィルムの厚みが100μm以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のフィルムの製造方法。
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