JP2018049782A - 金属材、セパレータ、セル、および燃料電池 - Google Patents

金属材、セパレータ、セル、および燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】経済性に優れ接触抵抗が低い金属材を提供する。【解決手段】金属製の基材と、前記基材上に形成されたチタン酸化物層とを備える、金属材。前記チタン酸化物層は、F:0.05〜4at%、ならびにNb、V、およびTaからなる群から選択される1種または2種以上:0.1〜3at%を含有する。前記基材は、Nb:0〜6質量%を含有するチタンまたはチタン合金を含んでもよい。この金属材は、たとえば、燃料電池のセパレータに用いることができる。【選択図】図2

Description

本発明は、表面に導電性を有するチタン酸化物層を備える金属材、この金属材を備える燃料電池用セパレータ、このセパレータを備えるセル、およびこのセルを複数個備える燃料電池に関する。
導電性を有する材料として金属材は、様々な用途に使用されている。そのような用途の1つとして、たとえば、燃料電池のセパレータを挙げることができる。燃料電池は、水素と酸素との結合反応の際に発生するエネルギーを利用して発電する。燃料電池には、固体電解質形、溶融炭酸塩形、リン酸形、および固体高分子形などの種類がある。
たとえば、固体高分子形燃料電池のセパレータに求められる主な機能は、次の通りである。
(1)燃料ガス、または酸化性ガスを、電池面内に均一に供給する「流路」としての機能
(2)カソード側で生成した水を、反応後の空気、酸素といったキャリアガスとともに、燃料電池から効率的に系外に排出する「流路」としての機能
(3)電極膜(アノード、カソード)と接触して電気の通り道となり、さらに、隣接する2つの単セル間の電気的「コネクタ」となる機能
(4)隣り合うセル間で、一方のセルのアノード室と隣接するセルのカソード室との「隔壁」としての機能
(5)冷却水の流通路を持つセパレータを備える水冷型燃料電池では、冷却水流路と隣接するセルとの「隔壁」としての機能
固体高分子形燃料電池に用いられるセパレータの材料は、このような機能を果たすことができるものである必要がある。セパレータには、黒鉛基板または炭素粉末を用いた炭素系材料が用いられることもある。しかし、近年では、セパレータに金属系材料が用いられることが多い。これは、金属系材料が金属特有の性質として加工性に優れることと関係している。すなわち、平板状の金属材を所望のセパレータ形状に加工することは容易である。また、金属材料を用いることにより、セパレータの厚みを薄くすることができ、セパレータの軽量化が図れる。金属系材料としては、チタン、ステンレス、炭素鋼などが用いられる。これらの金属系材料からなるセパレータは、プレス加工により成形される。
燃料電池用セパレータには高い導電性が求められる。セパレータの導電性が低いと、燃料電池の発電効率が低くなるからである。チタンは高い導電性を有するが、その表面には、抵抗値が高いチタン酸化物(TiO)が形成される。これにより、そのチタン材の接触抵抗は高くなる。他の金属でも、表面に酸化物が形成されることにより、接触抵抗は高くなる。
このため、表面に酸化物が形成された、セパレータ用金属材の接触抵抗を低減する試みがなされている。そのような試みとして、たとえば、金属材の表面に貴金属を担持させてこの貴金属により導電性を維持すること(特許文献1および2)、5価の金属を導入することにより導電性が高いチタン酸化物を形成すること(特許文献3)等が挙げられる。
特開2003−105523号公報 特開2006−190643号公報 特開2015−224368号公報
しかし、特許文献1および2の貴金属を用いる方法は、貴金属が高価であるため、経済的に不利である。また、これらの方法では、貴金属の脱落によって導電性が劣化するという問題がある。特許文献3の技術では、基材の表面を酸化させてチタン酸化物を形成するため、基材が5価金属を含有しTiを主成分とする材料であることが必須であるという制約がある。
そこで、本発明の目的は、経済性に優れ接触抵抗が低い金属材を提供することである。本発明の他の目的は、経済性に優れ接触抵抗が低い燃料電池用セパレータを提供することである。本発明のさらに他の目的は、経済性に優れ、発電効率が高いセルおよび燃料電池を提供することである。
本発明の実施形態の金属材は、
金属製の基材と、前記基材上に形成されたチタン酸化物層とを備え、
前記チタン酸化物層は、
F:0.05〜4at%、ならびに
Nb、V、およびTaからなる群から選択される1種または2種以上:0.1〜3at%を含有する、金属材である。
本発明の燃料電池用セパレータは、上記金属材を備える。
本発明の燃料電池用セルは、上記セパレータを備える。
本発明の燃料電池は、上記セルを複数個備える。
本発明の金属材およびセパレータは、チタン酸化物層が高い導電性を有するので、接触抵抗が低い。したがって、これらの金属材およびセパレータは、接触抵抗を低減するために貴金属を担持させる必要がないので、経済性に優れる。基材は、Tiを主成分とするものに限られず、また、必ずしも5価金属を含有する必要はない。
本発明のセルおよび燃料電池は、上記セパレータを備えているので、経済性に優れ、発電効率が高い。
図1は、チタン合金材の接触抵抗を測定する装置の構成を示す図である。 図2は、チタン酸化物層の表面について測定したF1sのXPSスペクトルを示す図である。
以下、本発明の一実施形態に係る金属材について、詳細に説明する。
〈金属材〉
本発明の実施形態の金属材は、金属製の基材と、基材上に形成されるチタン酸化物層とを備える。
一般に、金属材の表面に生成する酸化皮膜は、導電性が低い(抵抗が高い)か、実質的に導電性を有さない。このため、このような金属材の接触抵抗は高い。これに対して、本発明の金属材では、チタン酸化物層は高い導電性を有する。このため、本発明の金属材の接触抵抗は低い。
〈基材〉
基材は、金属製であり、金属元素を主成分とする。金属元素以外の元素の含有量は、49質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。導電性を高くするためには、基材において、金属元素以外の元素(たとえば、O(酸素))の含有量は、少ないほど好ましい。基材を構成する金属元素の種類は、特に、制限されない。基材は、実質的に1種類の金属元素のみを含有してもよく、たとえば、不純物を除き、Ti、Pt、またはAlからなるものであってもよい。また、基材は、複数種類の金属元素を含有してもよく、たとえば、Ti合金、ステンレス鋼、Al合金等の合金(不純物を含む。)からなるものであってもよい。
Ti、およびTi合金は、耐食性に優れ、軽量であるという利点を有する。このため、腐食耐性が高く軽量であることが要求される用途、たとえば、燃料電池のセパレータの用途では、基材は、Ti(純チタン)、またはTi合金を含むことが好ましい。Ti合金は、0〜6質量%のNbを含有することが好ましい。Nbを含有することにより、Ti合金の導電性、耐食性、および機械的強度が高くなる。しかし、Nbの含有量が6質量%を超えると、導電性および曲げ加工性が低下する。Nbの含有量は、0.1〜6質量%であることが好ましい。この場合、耐食性、導電性、曲げ加工性、および強度のいずれも、純チタンを上回る。これらの効果を十分に得るためには、Nbの含有量は、0.5〜6質量%であることがより好ましい。
基材は、金属製であることにより導電性を有する。基材の電気抵抗率は、2×10−4Ω・cm(20℃)以下であることが好ましく、1×10−4Ω・cm(20℃)以下であることがより好ましい。
〈チタン酸化物層〉
チタン酸化物層は、F:0.05〜4at%と、Nb、V、およびTaからなる群から選択される1種または2種以上(以下、「Nb等」という。):0.1〜3at%とを含有する。ただし、チタン酸化物層がC(炭素)を含有する場合は、各元素の含有量は、Cを除いた原子百分率(at%)とする(以下、同様)。Tiの含有量は、たとえば、25at%以上である。酸素の含有量は、たとえば、50at%以上である。チタン酸化物層は、上記以外の元素、たとえば、Pt、Ru等の貴金属を含有してもよい。
F(ふっ素)は、酸化チタン(TiO)のO(酸素)の一部を置換していると考えられる。Nb等は、酸化チタンのTiの一部を置換していると考えられる。いずれの置換も余剰電子を生成させる。この余剰電子は、チタン酸化物層に高い導電性を付与する。Fの含有量が4at%以下であるときは、Fの大部分は酸化チタンの結晶内に存在すると考えられる。この場合は、Fが存在しない場合に比して、チタン酸化物層の耐食性は高くなる。
Fの含有量が0.05at%未満である場合は、Fによりチタン酸化物層の導電性を高くする効果が十分には得られない。Fの含有量が4at%を超えると、チタン酸化物層の導電性を高くする効果が低下し、また、基材が腐食することがある。Fの含有量が高すぎると、酸化チタンの結晶外に存在するFが増えるので、このFにより基材が腐食するものと考えられる。Fの含有量が4at%以下であっても、Fの含有量が多いほど、チタン酸化物層の厚みが不均一になり、平滑度も低下する傾向がある。Fの含有量は、好ましくは、0.1〜2.5at%であり、より好ましくは、0.2〜1.5at%である。
Nb等の含有量が0.1%未満である場合は、Nb等によりチタン酸化物層の導電性を高くする効果が十分には得られない。Nb等の含有量が3at%を超えると、チタン酸化物層の導電性を高くする効果が急激に低下し、また、原料コストが無視できない程度に増大する。Nb等の含有量は、好ましくは、0.2〜2.1at%であり、より好ましくは、1.0〜2.1at%である。
チタン酸化物層のFの含有量およびNb等の含有量は、いずれも、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)により、チタン酸化物層の表面から数十nmの深さまでの平均値として求めることができる。
チタン酸化物層の厚みは、好ましくは、3〜100nmである。チタン酸化物層の厚みが3nm未満であると、チタン酸化物層が損傷した場合に、基材が露出しやすくなる。基材が露出すると、その露出部で基材の酸化または腐食が生じ、金属材の接触抵抗が増大する。たとえば、この金属材を固体高分子形燃料電池のセパレータに用いた場合、チタン酸化物層は、燃料電池のセル内で、電極を構成するカーボン繊維と接触する。この接触により、チタン酸化物層が損傷して、基材が露出することがある。この場合、露出部には、酸化または腐食によって、不所望のTiOが形成される。TiOの電気抵抗は高いので、これによっても、セパレータの接触抵抗は増大する。
チタン酸化物層の厚みが100nmを超えると、チタン酸化物層自体の電気抵抗が高くなる。また、基材の上にチタン酸化物層を形成した後、この金属材をプレス加工により所望の形状に成形する場合、チタン酸化物層の厚みが100nmを超えると、プレス時にチタン酸化物層が基材から剥離しやすくなる。
〈本発明の金属材を製造するための方法〉
本発明の金属材は、たとえば、基材の表面に、Ti、O、F、およびNb等を含有する予備形成層を形成する予備形成工程と、この予備形成層が形成された基材を熱処理する熱処理工程とを含む方法により製造することができる。熱処理工程は、酸素分圧が1000Paより高い高酸素分圧雰囲気中で熱処理する工程と、酸素分圧が1Pa以下である低酸素分圧雰囲気中で熱処理する工程との少なくとも一方を含む。これら両方の熱処理を実施する場合、第1の熱処理として、高酸素分圧雰囲気中で熱処理を行った後、第2の熱処理として、低酸素分圧雰囲気中で熱処理を行うことが好ましい。
熱処理工程により、予備形成層は、上述のチタン酸化物層となる。この際、酸化チタンのO(酸素)がFに置換され、酸化チタンのTiがNb等に置換される。これにより、チタン酸化物層に高い導電性が与えられる。熱処理工程により得られるチタン酸化物層において、Fの含有量が0.05〜4at%になり、Nb等の含有量が0.1〜3at%になるように、予備形成工程で予備形成層の成分比を調製する。
基材が、Nb等を含有する場合は、予備形成層は、必ずしも、Nb等を含有しなくてもよい。この場合は、熱処理工程を実施したときに、基材中のNb等が予備形成層へと拡散して、Nb等を含有するチタン酸化物層が得られる。
予備形成工程では、たとえば、ゾルゲルコーティング法、蒸着法、電解酸化、またはイオン注入法により、予備形成層を形成することができる。また、これらの方法に代えて、FおよびNb等を導入したTiOを導電性フィラーとしてポリマー中に分散させた導電性塗膜を、予備形成層として形成してもよい。この場合、ポリマーは、結着材を含んでもよい。以上の予備形成層の形成方法のうち、ゾルゲルコーティング法が好ましい。熱処理工程後に得られるチタン酸化物層のFの含有量およびNb等の含有量を制御しやすいからである。
高酸素分圧雰囲気は、大気雰囲気であってもよい。高酸素分圧雰囲気で熱処理を行うことにより、予備形成層は酸化される。ゾルゲルコーティング法によって形成された予備形成層を高酸素分圧雰囲気中で熱処理すると、原料中の有機物が分解されて除去されやすくなる。この場合、加熱温度は、たとえば、100〜800℃、好ましくは200〜600℃とすることができ、加熱時間は、たとえば、1分〜2時間とすることができる。
低酸素分圧雰囲気は、真空(減圧)雰囲気であってもよく、不活性ガス雰囲気であってもよい。低酸素分圧雰囲気で熱処理することにより、予備形成層およびチタン酸化物層は還元され、チタン酸化物に酸素欠損が生じる。これによっても、チタン酸化物層の導電性が高くなるものと考えられる。低酸素分圧雰囲気での熱処理では、加熱温度は、たとえば、200〜600℃とし、加熱時間は、たとえば、30分〜12時間とすることができる。
基材は、表面に酸化皮膜が形成されていないものを用いることが好ましい。しかし、基材が、Ti、Ti合金、Al、Al合金、またはステンレスを含む場合等は、自然酸化皮膜を完全に除去することは困難である。このような場合は、予備形成工程で、表面に酸化皮膜が形成された基材の上に予備形成層を形成してもよい。酸化皮膜の厚みが十分に薄く(たとえば、10nm以下)、ゾルゲルコーティング法により予備形成層を形成する場合は、酸化皮膜の上に予備形成層を形成しても、熱処理工程後の金属材の接触抵抗は十分に低くなる。これは、ゾルゲルコーティング法で用いる溶液がFを含有することにより、酸化皮膜の一部または全部を溶解(エッチング)するためであると考えられる。
〈燃料電池用セパレータ〉
本発明のセパレータは、上記金属材を備える。このセパレータは、プレス成形により所望の形状に形成されたものとすることができる。燃料電池が、たとえば、固体高分子形燃料電池である場合、セパレータは、燃料ガスおよび酸化性ガスの流路となる溝がプレス成形により形成されたものとすることができる。この場合、基材を所望の形状にプレス成形した後、基材の上にチタン酸化物層を形成してもよく、基材の上にチタン酸化物層を形成した後、この金属材をプレス成形してもよい。
〈燃料電池用セルおよび燃料電池〉
本発明の燃料電池用セルは、上記セパレータを備える。燃料電池が、たとえば、固体高分子形燃料電池である場合は、セルは、セパレータ、アノード、カソード、および固体高分子電解質膜が所定の順序で積層された公知の構造を有するものとすることができる。本発明の燃料電池は、上記セルを複数個備える。複数個のセルは、互いに積層され電気的に直列に接続されたものとすることができる。
本発明の効果を確認するため、以下の方法により金属材の試料を作製し、評価した。
1.試料の作製
表1に、試料の作製条件を示す。
基材として、Pt製のもの、Ti製のもの、およびTi合金製のものを用意した。Ptは実質的に酸化しないので、チタン酸化物層を形成しなくても、十分に低い接触抵抗が維持される。本試験でPt製の基材を用いたのは、チタン酸化物層の抵抗値を正確に評価するためである。
Ti合金は、6質量%のNbを含有するものであった。Pt製の基材は、市販品であり、厚みが0.3mmの板であった。Ti製およびTi合金製の基材は、原料を溶解および鋳造後、圧延により厚みが1mmの板に仕上げたものであった。いずれの試料の平面形状も、一辺が4cmの正方形であった。
これらの基材の上に、以下の条件によるゾルゲルコーティング法により、Ti、Nb等、O、およびFを含有する予備形成層を形成した。ただし、一部の実施例では、予備形成層は、Nb等およびFの少なくとも一方を含有しなかった。
まず、Ti源としてチタンテトラブトキシド(TBOT)と、Nb源、Ta源、またはV源となる有機化合物とを、無水エタノールに溶解させたもの(以下、「A液」という。)を用意した。Nb源となる有機化合物として、ニオブエトキシドを用いた。Ta源となる有機化合物として、タンタルエトキシドを用いた。V源となる有機化合物として、バナジウムエトキシドを用いた。
A液中のTiとNb等との比は、形成するべきチタン酸化物層におけるTiとNbとの比となるようにした。たとえば、原子比でTi0.94Nb0.061.970.03の組成を有するチタン酸化物層を形成する場合は、0.94当量のTiを含むTBOTと0.06当量のNbを含むニオブエトキシドとを含有するように、A液を調製した。
また、無水エタノールにふっ化アンモニウムを溶かした後、酢酸と水とを適量加え、さらに濃塩酸を加えた液(以下、「B液」という。)を用意した。A液中のTiおよびNb等の量に対するB液中のFの量の比は、形成するべきチタン酸化物層におけるTiおよびNb等の量に対するFの量の比より多くなるように調整した。たとえば、原子比でTi0.94Nb0.061.970.03の組成を有するチタン酸化物層を形成する場合は、A液中のTiおよびNbの合計1当量に対して、Fが0.045当量となるようにB液を調整した。これは、原料中のFの一部は、チタン酸化物層中に取り込まれないことによる。
続いて、A液を攪拌しながら、滴下ロートを用いてA液に対してB液を2時間かけて滴下することで、透明なコーティング液を作製した。一部の実施例では、ふっ化アンモニウムを含まないB液を添加したA液をコーティング液とした。また、別の一部の実施例では、TBOTのみを無水エタノールに溶解させたものをコーティング液とした。
このコーティング液を、ディップコート法により基材に塗布した。ここで、基材に塗布されたコーティング液が予備形成層である。Ti製またはTi合金製の基材にコーティング液を塗布する場合は、予め硝ふっ酸処理を施した基材を用いた。一部の試料については、ディップコートを行う際、コーティング液のTiおよびNbの濃度、コーティング液に浸漬した基材を引き上げる速度、およびコーティングの回数の少なくともいずれかを変更して、予備形成層の厚みを異ならせた。これは、形成するチタン酸化物層の厚みを異ならせるためであった。
得られた試料を、100℃で2時間乾燥させた後、第1の熱処理(表1に、「熱処理1」と記す。)として、大気雰囲気中で所定の温度で1時間熱処理した。これにより、予備形成層の有機物を分解および蒸発させた。上記所定の温度は、Pt製の基材を用いた場合は500℃とし、TiまたはTi合金製の基材を用いた場合は200℃とした。TiまたはTi合金製の基材を用いた場合にPt製の基材を用いた場合より温度を低くした理由は、TiまたはTi合金製の基材を大気中500℃で加熱すると、基材の表面が無視できない程度に酸化するからである。
続いて、一部の試料に対して、第2の熱処理(表1に、「熱処理2」と記す。)として、酸素分圧が0.1Pa以下の減圧雰囲気下で、400℃、2時間の熱処理を施した。これにより、基材と、基材の表面に形成されたチタン酸化物層とを備える金属材の試料を得た。
得られた試料について、チタン酸化物層の厚みを測定し、組成を分析した。厚みは、アルゴンスパッタリングしながらXPS分析を行う深さ分析により測定した。組成は、XPSにより、チタン酸化物層において表面から数十nmの深さまでの領域の分析値の平均として求めた。表1に、チタン酸化物層の厚みおよび組成を示す。組成は、Cを除いた成分百分率で示している。
得られた試料について、接触抵抗を測定した。図1は、試料の接触抵抗を測定する装置の構成を示す図である。この装置を用い、各試料の接触抵抗を測定した。図1を参照して、まず、作製した試料11を、燃料電池用のガス拡散層として使用される1対のカーボンペーパー(東レ(株)製 TGP−H−90)12で挟み込み、これを金めっきした1対の電極13で挟んだ。各カーボンペーパー12の面積は、1cmであった。
次に、この1対の金めっき電極13の間に荷重を加えて、10kgf/cm(9.81×10Pa)の圧力を生じさせた。この状態で、1対の金めっき電極13間に一定の電流を流して、このとき生じるカーボンペーパー12と試料11との間の電圧降下を測定した。この結果に基づいて抵抗値を求めた。得られた抵抗値は、試料11の両面の接触抵抗を合算した値となるため、これを2で除して、試料11の片面あたりの接触抵抗値とした。表1に、接触抵抗の測定値を示す。
本発明の要件を満たす金属材(本発明例)の接触抵抗は、いずれも25mΩ・cm以下と低かった。一方、本発明の要件を満たさない金属材(比較例)の接触抵抗は、いずれも25mΩ・cm超と高かった。
試験番号1〜9の試料は、いずれも、Pt製の基材を備え、製造工程で、第1の熱処理を施した後、第2の熱処理は施さなかった。試験番号2の試料は、チタン酸化物層がNb等を含有しない点で本発明の要件を満たさなかった。試験番号3の試料は、Fを含有しない点で本発明の要件を満たさなかった。試験番号4の試料は、Nb等およびFを含有しない点で本発明の要件を満たさなかった。
試験番号1および2の試料と試験番号3および4の試料とを対比すると、チタン酸化物層がFを含有することにより、金属材の接触抵抗が低減することがわかる。試験番号1の試料と試験番号3の試料とを対比すると、チタン酸化物層がFに加えてNbを含有することにより、金属材の接触抵抗がさらに低減することがわかる。チタン酸化物層に対するFの導入およびNbの導入が、いずれも余剰電子を増やして、抵抗を低減するものと考えられる。
図2は、試験番号1および3の試料のチタン酸化物層表面について測定したF1sのXPSスペクトルを示す図である。試験番号1の試料では、684eV付近にピークが現れている。これは、Fが、Tiと結合している、すなわち、酸化チタンの結晶中に存在することを示す。一方、試験番号3の試料では、チタン酸化物層はFを含有しないので、このようなピークは現れていない。
試験番号5の試料は、チタン酸化物層のFの含有量が本発明として規定する範囲を下回る点で本発明の要件を満たさなかった。試験番号9の試料は、チタン酸化物層のFの含有量が本発明として規定する範囲を超える点で本発明の要件を満たさなかった。試験番号6〜8の試料と試験番号5および9の試料とを対比すると、Fの含有量が本発明として規定する範囲より低い場合および高い場合のいずれも、接触抵抗が高くなることがわかる。試験番号9の試料では、チタン酸化物層の厚みは不均一であった。
試験番号10〜18の試料は、いずれも、Pt製の基材を備え、製造工程で、第1の熱処理を施した後、第2の熱処理は施した。試験番号1の試料と試験番号10〜12の試料とを対比すると、第1および第2の熱処理を施すことにより、第1の熱処理のみを施した場合に比して、接触抵抗が低減することがわかる。チタン酸化物層の厚みが85nm程度以下であれば、第1および第2の熱処理を施すことにより、十分低い接触抵抗が得られる。
試験番号14の試料は、チタン酸化物層のNbの含有量が本発明として規定する範囲を下回る点で本発明の要件を満たさなかった。試験番号16の試料は、チタン酸化物層のNbの含有量が本発明として規定する範囲を超える点で本発明の要件を満たさなかった。これらの試料の接触抵抗は、いずれも、本発明例の試料の接触抵抗より高かった。
以上の試料で、Nb等(Nb、V、およびTaからなる群から選択される1種または2種以上)として、Nbを採用した。これに対して、試験番号17および18の試料では、チタン酸化物層は、Nbは含有せずに、TaおよびVをそれぞれ含有した。これらの試料でも、チタン酸化物層がNbを含有する試料と同様に、接触抵抗は低かった。
試験番号19〜25の試料は、いずれも、製造工程で、第1の熱処理を施した後、第2の熱処理を施した。試験番号19および25の試料では、Ti製の基材を用いた。試験番号20〜24の試料では、6質量%のNbを含有するTi合金製の基材を用いた。
試験番号20の試料では、製造時に、予備形成層はNbを含有していなかったが、チタン酸化物層はNbを含有した。これは、基材に含有されるNbが熱処理時に予備形成層(チタン酸化物層)に拡散したことによると考えられる。
試験番号25の試料は、チタン酸化物層がNb等を含有しない点で本発明の要件を満たさなかった。
本発明例である試験番号19〜24の試料は、Pt製の基材を用いた本発明例の試料(試験番号1、6〜8、10〜13、15、17、および18)に比して、チタン酸化物層が同等の厚みを有するもので比較すると、接触抵抗はやや高かったが、実用上は十分に低かった。試験番号19〜24の試料を作製する際、予備形成層を形成する前の基材の表面には酸化皮膜が形成されていたことが予想される。コーティング液がFを含有することにより、この酸化皮膜の少なくとも一部は、コーティング液が接触しているときに溶解(エッチング)されたものと推定される。
試験番号19の試料と試験番号21の試料とは、概ね同じ厚みおよび組成を有する。一方、試験番号19の試料では基材がNbを含有しないのに対して、試験番号21の試料では基材がNbを含有するという差違がある。これらの試料を対比すると、基材がNbを含有することにより、接触抵抗が大幅に低くなることがわかる。試験番号21の試料の接触抵抗は、Pt製の基材を用いた試料で同等の条件で作製されたものとほぼ同じであるといえる。
これは、以下の理由によると推察される。試験番号19の試料、および試験番号21の試料では、いずれも、用いた基材の表面に酸化皮膜が形成されており、コーティング液に接した後にも、酸化皮膜の一部は残存した。試験番号21の試料では、基材がNbを含有することにより、酸化皮膜の導電性は高かった。一方、試験番号19の試料では、基材がNbを含有しないことにより、酸化皮膜の導電性は低かった。
この本発明の金属材は、たとえば、燃料電池のセパレータ、電気分解用の電極(たとえば、水の電気分解用の電極)等に利用することができる。
11:試料(金属材)

Claims (5)

  1. 金属製の基材と、前記基材上に形成されたチタン酸化物層とを備え、
    前記チタン酸化物層は、
    F:0.05〜4at%、ならびに
    Nb、V、およびTaからなる群から選択される1種または2種以上:0.1〜3at%を含有する、金属材。
  2. 請求項1に記載の金属材であって、
    前記基材は、Nb:0〜6質量%を含有するチタンまたはチタン合金を含む、金属材。
  3. 請求項1または2に記載の金属材を備える、固体高分子形燃料電池用セパレータ。
  4. 請求項3に記載のセパレータを備える、固体高分子形燃料電池用セル。
  5. 請求項4に記載のセルを複数個備える、固体高分子形燃料電池。
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