JP2018048086A - フルオレン骨格を有するアルコール化合物の結晶およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】芳香族炭化水素類を包接していない、下記式(1)で表されるアルコール化合物の結晶の製造方法を提供すること。【解決手段】以下、(i)、(ii)及び(iii)の工程をこの順で含む製造方法とすることにより、前記課題が解決可能であることを見出した。(i)上記式(1)で表されるアルコール化合物、芳香族炭化水素類及びメタノールを含む溶液を調製する工程。(ii)前記溶液から25℃以上で前記アルコール化合物の結晶を析出させ、析出した結晶を分離取得する工程。(iii)前記結晶を100℃以上とする工程。【化1】【選択図】なし

Description

本発明は、光学レンズや光学フィルムに代表される光学部材を構成する樹脂(光学樹脂)を形成するモノマーとして好適で、加工性、生産性に優れた新規なフルオレン骨格を有するアルコールの結晶多形体およびその製造方法に関する。
フルオレン骨格を有するアルコールを原料モノマーとするポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタン、エポキシなどの樹脂材料は、光学特性、耐熱性等に優れることから、近年、光学レンズや光学シートなどの新たな光学材料として注目されている。この中でも以下式(1)
Figure 2018048086
で表される構造を有するアルコール化合物は、該アルコール化合物から製造される樹脂が屈折率等の光学特性、耐熱性、耐水性、耐薬品性、電気特性、機械特性、溶解性等の諸特性に優れることから、特に光学樹脂の原材料として着目されている(例えば特許文献1〜4)。
上記式(1)で表されるアルコール化合物の製造方法としては、塩基触媒存在下、以下式(2)
Figure 2018048086
で表されるフェノール化合物とエチレンオキサイドとを反応させる方法が知られている(特許文献2)。しかしながら、該方法で得られる上記式(1)で表されるアルコール化合物はその純度が低く、エチレンオキサイドが3分子以上付加した化合物(以下、多量体と称することもある)が多量に副生し、目的とする上記式(1)で表されるアルコール化合物を高純度で得ることは困難である。
一方、上記式(1)で表されるアルコール化合物の改良製法として、酸触媒及びチオール類存在下、以下式(3)
Figure 2018048086
で表されるアルコール化合物と9−フルオレノンとを反応させ上記式(1)で表されるアルコール化合物を得る方法が提案され(特許文献3)、また、該製法による着色の問題を改善する手法として、酸触媒及び9―フルオレノン類100重量部に対して3重量部以上のチオール類存在下、上記式(3)で表されるアルコール化合物と9―フルオレノンとを反応させ上記式(1)で表されるアルコール化合物を得る方法が提案されている(特許文献4)。
しかしながら、該方法でもその着色改善は十分ではなく、また、反応時に多量のチオール類を必要とすることから、生成物からチオール類を完全に除去することが困難であり、該アルコール化合物から樹脂を製造する際、チオール類に由来する硫黄分が樹脂の更なる着色を引き起こすといった問題がある。
また、本願発明者らが上記特許文献2及び4に記載される方法を追試したところ、得られる上記式(1)で表されるアルコール化合物の結晶は、反応や反応後の取り出し操作(晶析操作)で使用した溶媒(芳香族炭化水素類)が取り込まれた、包接体であることが判明した。
特開平07―149881号公報 特開2001−122828号公報 特開2001−206863号公報 特開2009−256342号公報
本発明の目的は、芳香族炭化水素類を包接していない、上記式(1)で表されるアルコール化合物の結晶を製造することにある。
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、上記式(1)で表されるアルコール化合物を特定条件下で晶析、乾燥することにより、芳香族炭化水素類を包接していない、上記式(1)で表されるアルコール化合物の結晶が製造可能であることを見出した。具体的には以下の発明を含む。
〔1〕
示差走査熱量分析により得られる吸熱ピークを148〜151℃の範囲に有し、更に165〜200℃の範囲に少なくとも一つの吸熱ピークを有する、以下式(1)で表されるアルコール化合物の結晶。

Figure 2018048086
〔2〕
赤外スペクトルにおいて、1153±2(cm−1)のピークを実質的に有さない、〔1〕記載のアルコール化合物の結晶。
〔3〕
上記式(1)で表されるアルコールを95重量%以上含み、かつ芳香族炭化水素類の含量が1重量%以下である、〔1〕または〔2〕記載のアルコール化合物の結晶。
〔4〕
嵩密度が0.3〜0.6g/cmである、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のアルコール化合物の結晶。
〔5〕
上記式(1)で表されるアルコール12gを、純度99重量%以上のN,N−ジメチルホルムアミド30mLに溶解させた溶液の黄色度(YI値)が10以下となる、〔1〕〜〔4〕いずれかに記載のアルコール化合物の結晶。
〔6〕
以下、(i)、(ii)及び(iii)の工程をこの順で含む、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のアルコール化合物の結晶の製造方法。
(i)
上記式(1)で表されるアルコール化合物、芳香族炭化水素類及びメタノールを含む溶液を調製する工程。
(ii)
前記溶液から25℃以上で前記アルコール化合物の結晶を析出させ、析出した結晶を分離取得する工程。
(iii)
前記結晶を100℃以上とする工程。
本発明によれば、芳香族炭化水素類を包接していない、上記式(1)で表されるアルコール化合物の結晶が提供可能となる。結晶が芳香族炭化水素類を包接している場合、該結晶を樹脂原料として使用すると、該結晶の溶融中に包接されていた芳香族炭化水素類が放出されるため、放出された芳香族炭化水素類を安全に系外へと除去する必要があったり、包接されている芳香族炭化水素類の影響で、得られる樹脂の品質が一定とならない等の問題を引き起こすことがある。更には、芳香族炭化水素類を包接した上記式(1)で表されるアルコール化合物を保管や輸送する際、芳香族炭化水素類を包接していない結晶に比べ、より厳密な防災上の対策も必要となる。
また、本発明の上記式(1)で表されるアルコール化合物の結晶は、高純度、低着色といった特徴の他、嵩密度が高く、かつ溶融開始温度が低いという特徴を兼ね備えることから、そのまま溶融し樹脂原料として使用する場合、溶融に要するエネルギー量を削減することが可能になると同時に、上記式(1)で表されるアルコール化合物の製造、使用、輸送等を効率よく実施することが可能であることから、特に工業的規模でポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタン、エポキシ等の各種樹脂材料を製造、使用する際に好適な結晶であると言える。
実施例1で得られた結晶(本発明の結晶)の示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図である。 実施例2で得られた結晶(本発明の結晶)の示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図である。 実施例3で得られた結晶(本発明の結晶)の示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図である。 比較例1で得られた結晶(包接体)の示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図である。 参考例1で得られた結晶の示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図である。 参考例2で得られた結晶の示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図である。 実施例1で得られた結晶(本発明の結晶)の赤外スペクトル(IR)を示す図である。 比較例1で得られた結晶の赤外スペクトル(IR)を示す図である。
<本発明の上記式(1)で表されるアルコール化合物の結晶>
本発明の結晶は、示差走査熱量分析によって得られる吸熱ピークを148〜151℃の範囲に有し、更に165〜200℃の範囲に少なくとも一つの吸熱ピークを有することを特徴とし、148〜151℃の範囲における吸熱ピークと165〜200℃の範囲における吸熱ピークとの両方を有していれば、結晶の嵩密度が向上し、かつ溶融開始温度が低下する。なお、公知の芳香族炭化水素を包接する結晶(以下、包接体と称することもある)は、165〜200℃の範囲に吸熱ピークを有さない。
165〜200℃の範囲における吸熱ピークは通常1ピークであるが、2ピーク以上となってもよい。また、165〜200℃の範囲における吸熱ピークは通常、(i)167〜170℃、(ii)170〜176℃、(iii)190〜196℃からなる群から選ばれる少なくとも一つのピークとして観測される。
本発明の結晶の溶融開始温度は、通常148℃〜165℃、好ましくは148〜155℃となる。一方、後述する参考例にて示す、148〜151℃の範囲における吸熱ピークを有さず、約195℃にのみ吸熱ピークを有する、包接体でない結晶の溶融開始温度は約195℃である。従って、本発明の結晶は、前述の結晶と比べ溶融開始温度が35〜45℃も低く、結晶の溶融に必要とされるエネルギーが大幅に削減されることとなる。溶融開始温度は、試験管に温度計及び本発明の結晶を入れ、昇温していくことによって結晶の溶融開始温度を測定する方法、キャピラリー管に結晶を入れ、それをオイルバスに浸漬し、オイルバスの温度を徐々に昇温することによって、結晶の溶融が開始した際の温度を溶融開始温度とする方法、リアルビュー示差走査熱量測定等により測定することができる。
本発明の結晶の嵩密度は0.3〜0.6g/cmである。一方、後述する参考例にて示す、165〜200℃の範囲における吸熱ピークを有さず、約148〜151℃にのみ吸熱ピークを有する、包接体でない結晶の嵩密度は0.2〜0.4g/cmであることから、本発明の結晶は前述の結晶に対し約1.5倍の嵩密度の改善がみられる。即ち、本発明の結晶は、該結晶の製造時は勿論、輸送・保管・使用時においても大幅な容積効率の改善に資するものである。嵩密度は例えば、メスシリンダー等容積が測定可能な容器へ本発明の結晶を入れ、投入された結晶の体積と重量から算出することができる。
本発明の結晶は結晶中に芳香族炭化水素類を包接していないとの特徴を有する。従って、公知の包接体(芳香族炭化水素類を包接する上記式(1)で表されるアルコール化合物)中の芳香族炭化水素類の含量は3〜6重量%であるのに対し、本発明の結晶に含まれる芳香族炭化水素類の含量は通常1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、更に好ましくは0.1重量%以下とすることができる。また、後述する本発明の結晶の製造方法によれば、101.3kPaにおける沸点が150℃以下の有機溶媒の含有量を通常1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、更に好ましくは0.1重量%以下とすることも可能である。そのため、芳香族炭化水素類等、包接されているゲスト分子が問題となる分野、例えば医農薬用の原料(中間体)としても好適に用いることができる。
本発明の結晶が芳香族炭化水素類を包接しているか否かは、赤外スペクトルにおいて包接体特有の1153±2(cm−1)のピークを有するか否かで判断することが出来る。1153±2(cm−1)のピークを実質的に有していなければ、芳香族炭化水素類を包接する結晶でないと判断することが出来る。なお、本発明における「実質的に含まない」とは、1151〜1155(cm−1)の範囲にピークを殆ど、または全く検出されないことを意味する。一方、芳香族炭化水素類を包接する結晶でなければ、前述した範囲のピークの代わりに1148±2(cm−1)の範囲にピークを有する。赤外スペクトルは、後述する条件にてフーリエ変換赤外分光光度計を用いて測定することが可能である。
更には、TG−DTA(示差熱・熱重量同時測定)分析、X線回折、NMR分析や、得られた結晶を、包接していると思われる芳香族炭化水素類の沸点以上となる条件で重量変化がない程度に十分に乾燥させた後、得られた結晶をガスクロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィーを用いて分析し、包接している芳香族炭化水素類に相当するピークがあるか否かを確認する等の方法により、上記式(1)で表されるアルコール化合物の結晶が芳香族炭化水素類を包接しているか否かを判断することも可能である。特にTG−DTA分析を用いる方法では、測定サンプルを一定の速度で昇温した際の重量変化と、それに伴う吸熱・発熱挙動を測定でき、重量変化と吸熱(又は発熱)挙動とが同時に観測された時点で、包接していた芳香族炭化水素類が放出されたと判断することも可能となる。
<上記式(1)で表されるアルコール化合物の結晶の製造方法>
上記した特徴を有する、本発明の上記式(1)で表されるアルコール化合物の結晶は、以下(i)、(ii)及び(iii)の工程により製造される。
(i)
上記式(1)で表されるアルコール化合物、芳香族炭化水素類及びメタノールを含む溶液(晶析溶液)を調製する工程(以下、晶析溶液調製工程と称することもある)。
(ii)
前記溶液から25℃以上で前記アルコール化合物の結晶を析出させ、析出した結晶を分離取得する工程(以下、晶析工程と称することもある)。
(iii)
前記結晶を100℃以上とする工程。(以下、加熱工程と称することもある)。
以下、上記(i)(ii)及び(iii)の工程について詳述する。
本発明の原料として使用される、上記式(1)で表されるアルコール化合物は、前述した特許文献等、公知の方法で製造したものを用いることもできるが、多量体副生の抑制や色相向上の観点から、下記する方法にて上記式(1)で表されるアルコール化合物を製造することが好ましい。下記する方法にて上記式(1)で表されるアルコール化合物を製造することにより、上述した特徴の他、以下(a)及び/又は(b)の特徴を兼ね備える、上記式(1)で表されるアルコール化合物が製造可能となる。
(a)後述する方法により決定されるHPLC純度が通常90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上。
(b)後述する方法で測定するYI値が通常10以下、好ましくは7以下。
本発明の好ましい実施形態である、上記式(1)で表されるアルコール化合物の製造法は、グリコールジエーテル及び炭素数5〜12の環状ケトンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物存在下、上記式(2)で表されるフェノール化合物とエチレンカーボネートとを反応させることを特徴とする。
上記式(2)で表されるフェノール化合物は市販品を用いてもよく、また、酸触媒存在下、フルオレノンと2-フェニルフェノールとを反応させて製造することもできる。
本発明で使用されるグリコールジエーテルは、以下式(4)
−O(CHCHO)−R (4)
(式中、R及びRはそれぞれ同一又は異なって、分岐を有してもよい炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは1〜4の整数を表す。)
で表される構造を有する。このようなグリコールジエーテルとしては、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等が例示される。
本発明で使用される炭素数5〜12の環状ケトンとしては、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロデカノン、シクロウンデカノン等が例示され、これら環状ケトンの中でも入手性や取扱性の良さからシクロペンタノン、シクロヘキサノンが好適に用いられる。
これら化合物は1種、あるいは必要に応じて2種以上混合して使用してもよく、その使用量は、多量体生成抑制の観点から、上記式(2)で表されるフェノール化合物1重量倍に対し通常、0.05〜3重量倍、好ましくは0.08〜1重量倍である。
エチレンカーボネートの使用量は、上記式(2)で表されるフェノール化合物1モルに対し通常、2〜10モル、好ましくは2〜4モルである。
上記式(2)で表されるフェノール化合物とエチレンカーボネートとを反応させるに際し、必要に応じ塩基性化合物存在下にて反応を行う。かかる塩基性化合物としては、炭酸塩類、炭酸水素塩類、水酸化物類、有機塩基類等が例示される。より具体的には、炭酸塩類として炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム等が、炭酸水素塩類として炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム等が、水酸化物類として水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が、有機塩基類としてトリエチルアミン、ジメチルアミノピリジン、トリフェニルホスフィン、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムクロリド等が例示される。これら塩基性化合物の中でも取扱性の良さの点から炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、トリフェニルホスフィンが好適に使用される。これら塩基性化合物を使用する際の使用量は、上記式(2)で表されるフェノール化合物1モルに対し、通常0.01〜1.0モル、好ましくは0.03〜0.2モルである。
本発明において、前記のグリコールジエーテルや炭素数5〜12の環状ケトンの他、必要に応じ不活性な有機溶媒を併用することができる。かかる不活性な有機溶媒としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、ハロゲン化脂肪族炭化水素類、エーテル類、エステル類、脂肪族ニトリル類、アミド類、スルホキシド類等が例示される。より具体的には、ケトン類としてアセトン、メチルエチルケトン、ブチルメチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノン、2−オクタノン等が、芳香族炭化水素類としてトルエン、キシレン、メシチレン等が、ハロゲン化芳香族炭化水素類としてクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等が、脂肪族炭化水素類としてペンタン、ヘキサン、ヘプタン等が、ハロゲン化脂肪族炭化水素類としてジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等が、エーテル類としてジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジフェニルエーテル等が、エステル類として酢酸エチル、酢酸ブチル等が、脂肪族ニトリル類としてアセトニトリル等が、アミド類としてN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等が、スルホキシド類としてジメチルスルホキシド等が例示される。これら不活性な有機溶媒の中でも入手性や取扱性の良さから、101.3kPaにおける沸点が110℃以上の芳香族炭化水素類、ケトン類又はエーテル類が好適に用いられる。これら有機溶媒は1種類、あるいは必要に応じ2種類以上混合して使用してもよい。これら有機溶媒を併用する際の使用量は、上記式(2)で表されるフェノール化合物1重量倍に対し、通常0.1〜5重量倍、好ましくは0.5〜3重量倍である。
上記式(2)で表されるフェノール化合物とエチレンカーボネートとの反応は、通常30〜150℃、好ましくは100〜130℃で実施される。
こうして得られた上記式(1)で表されるアルコール化合物を含む反応液は、そのまま濃縮乾固した後、晶析溶液調製工程に供してもよく、水洗・吸着処理等の後処理や、晶析・カラム精製等を実施してもよい。また、下記する水洗工程及び/又は濃縮工程を実施した後、本発明の晶析溶液調製工程に供することが、目的とする上記式(1)で表されるアルコール化合物の純度をより向上させることが可能である点で好ましい。以下、水洗工程及び濃縮工程について詳述する。
水洗工程は得られた反応液に、反応で使用した、上記式(2)で表されるフェノール化合物1重量倍に対し0.1〜10重量倍、好ましくは0.5〜5重量倍の水を添加し、60〜95℃、好ましくは75〜90℃で撹拌し、その後静置、水層を分離することによって実施される。水洗温度を60℃以上とすることにより、静置時の分液速度がより速くなり、95℃以下とすることにより、水洗時の上記式(1)で表されるアルコール化合物の分解を抑制することが可能となる。
水洗工程は必要に応じて複数回実施してもよい。また、水洗工程実施に際し、水と併せて塩基や酸を添加することにより、副生成物を分解し、水層へと除去することもできる。
続いて濃縮工程について詳述する。濃縮工程は、水洗工程終了後、あるいは水洗工程を実施していない反応液を常圧、あるいは減圧下にて、前記反応工程で使用したグリコールジエーテルや炭素数5〜12の環状ケトン、あるいは、更に不活性な有機溶媒の一部又は全部を系外へと除去することにより実施される。
<晶析溶液調製工程>
本発明の晶析溶液調製工程で使用可能な芳香族炭化水素類としてはトルエン、キシレン、メシチレン等が例示される。また、芳香族炭化水素類のみを用いた場合、得られる上記式(1)で表されるアルコール化合物が芳香族炭化水素類を包接する為、メタノールを併用する必要がある。
晶析溶液中の芳香族炭化水素類とメタノールの比率は、例えば、重量基準で、芳香族炭化水素類:メタノール=1:0.3〜1:5、好ましくは1:0.5〜1:3である。メタノールの比率を芳香族炭化水素類に対し0.3重量倍以上とすることにより、より確実に芳香族炭化水素類を含む包接体となることを抑制することが可能となり、5重量倍以下とすることにより、上記式(1)で表されるアルコール化合物を溶解しやすくなる。また、上記式(1)で表されるアルコール化合物の純度や色相を改善させやすいことからも好ましい。これら比率は、晶析溶液調製工程に先立ち、芳香族炭化水素類やメタノールの含量をガスクロマトグラフィーで定量した後、上記比率となるように芳香族炭化水素類及びメタノールを適宜添加することにより調製することができる。
晶析溶液中には、芳香族炭化水素類、メタノール以外に他の溶媒を含んでいてもよい。含んでいてもよい溶媒として例えば、上述した反応で使用したグリコールジエーテル及び/又は炭素数5〜12の環状ケトンの他、脂肪族炭化水素類(例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン等)、鎖状ケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)等が挙げられる。他の溶媒を含む場合のその溶媒量は、晶析溶液中の芳香族炭化水素類とメタノールとの合計量に対し通常0.5重量倍以下、好ましくは0.3重量倍以下である。
晶析溶液に含まれる溶媒の総量は、晶析溶液に含まれる上記式(1)で表されるアルコール化合物1重量倍に対し通常0.5〜20重量倍、好ましくは1〜10重量倍である。
晶析溶液に含まれる不純物の含量にもよるが、晶析溶液中の水分量によっては、結晶状の上記式(1)で表されるアルコール化合物が得られない場合がある。また、結晶状の上記式(1)で表されるアルコール化合物が得られる場合であっても、純度や色相が十分に向上しない場合があるため、晶析溶液中の水分は通常5重量%以下、好ましくは1重量%以下とする。晶析溶液中の水分を5重量%以下とする方法として例えば、メタノールを添加する前に、芳香族炭化水素溶媒を添加し、常圧あるいは減圧下、芳香族炭化水素溶媒による共沸脱水操作を実施した後、水分を含まないメタノールを添加する方法が挙げられる。
<晶析工程>
次いで晶析工程について詳述する。上記の方法により調製された晶析溶液は通常、40℃以上、晶析溶液の沸点以下の温度まで加熱し結晶を完溶させた後冷却し、25℃以上、好ましくは25〜60℃、更に好ましくは40〜50℃で結晶を析出させる。25℃より低い温度で結晶を析出させた場合、本発明の結晶が得られず、一部又は全部が芳香族炭化水素類を包接した結晶となる。また、60℃より高い温度で結晶を析出させる場合、溶媒の沸点に近いことから、安全面で問題となる場合が生じる。前述した温度範囲で結晶を析出させる方法として、結晶が析出するまで上記温度範囲となるよう晶析溶液の温度を保持する方法、上記温度範囲で種晶を接種する方法等が例示される。また、結晶析出後、一定時間同温度で保持し結晶を成長させる操作を実施しても良い。結晶析出後、必要に応じ更に冷却を行い、析出した結晶を分離する。分離した結晶は、下記する加熱工程を実施する前に、晶析工程で用いた溶媒(メタノール等)を常法により除去しても良い。
<加熱工程>
加熱工程は、得られた結晶を100℃以上、結晶の融点以下、好ましくは130℃以下とする(加熱する)ことによって実施され、100℃以上で保温する時間を調整することにより、148〜151℃の範囲における吸熱ピークを有する結晶と165〜200℃の範囲における吸熱ピークを有する結晶の比率を適宜調整することができる。なお、本発明で言う結晶の温度とは、乾燥に用いる装置の内部に温度計を内挿し、該温度計に結晶が接している際に観測される温度である。
加熱工程に供する結晶は晶析工程で用いた溶媒を含んでいても良く、加熱工程を実施する際、同時に結晶に含まれる溶媒を除去することも可能である。加熱工程を実施する際に同時に結晶に含まれる晶析工程で用いた溶媒を除去する際は、減圧下とすることにより、加熱工程実施時、効率的に結晶から晶析工程で用いた溶媒を除去可能であることから好ましい。また、加熱工程を実施する際、結晶中にメタノールが含まれている場合、より効率的に本発明の結晶を得ることができる。
こうして得られた本発明の結晶は必要に応じ、吸着、水蒸気蒸留、再結晶などの通常の精製操作を繰り返し行うこともできるが、このような操作を実施しなくとも十分に高純度であり、また、結晶中に芳香族炭化水素等のゲスト分子を包接していない為、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタン、エポキシなどの樹脂材料として好適に用いられることは勿論のこと、包接しているゲスト分子が問題となる分野、例えば医農薬用の原料(中間体)としても好適に用いることができる。
以下に実施例等を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに何ら限定されるものではない。例中、各種測定は下記の方法で実施した。なお、以下実施例・比較例に記載した各成分の生成率(残存率)及び純度は下記条件で測定したHPLCの面積百分率値(反応液中の溶媒及びゲスト分子のピークは除いた修正面積百分率値)である。また、以下実施例・比較例における「多量体」とは上記式(1)で表されるアルコール化合物にエチレンカーボネートが更に1分子以上反応した化合物類のことを示す。
(1)HPLC純度
装置 :島津製作所製 LC−2010A、
カラム:SUMIPAX ODS A−211(5μm、4.6mmφ×250mm)、
移動相:純水/アセトニトリル(アセトニトリル30%→100%)、
流量 :1.0ml/min、カラム温度:40℃、検出波長:UV 254nm。
(2)残存溶媒量の分析
溶媒の残存量、または上記式(1)で表されるアルコール化合物に包接されているゲスト分子(芳香族炭化水素類等)の含量については下記条件に基づくガスクロマトグラフィーにより定量を行った。
装置 :島津製作所製 GC−2014、
カラム:DB−1(0.25μm、0.25mmID×30m)、
昇温:40℃(10分保持)→20℃/min→300℃(20分保持)、
Inj温度:200℃、Det温度:300℃、スプリット比 1:10、
キャリアー:窒素55.0kPa(一定)、
サンプル調製方法:十分に乾燥させた上記式(1)で表されるアルコール化合物の結晶100mgを10mlメスフラスコに量り取り、そこへあらかじめ調製していた1,2−ジメトキシエタンのアセトニトリル溶液(1,2−ジメトキシエタン400mgをアセトニトリル200mlに溶解したもの)をホールピペットで5ml加え、アセトニトリルでメスアップさせ溶解したものを試料溶液とした。
一方、残存量(包接量)を測定したい溶媒10mgを10mlメスフラスコに量り取り、上述と同量の1,2−ジメトキシエタンのアセトニトリル溶液を加え、アセトニトリルでメスアップさせ溶解したものを標準溶液とした。
試料溶液及び標準溶液を上述の条件にて分析し、得られた各成分のピーク面積をデータ処理装置で求め、各成分の含量(重量%)を算出した(内部標準法)。
(3)示差走査熱量測定(DSC)
上記式(1)で表されるアルコール化合物の結晶5mgをアルミパンに精密に秤取し、示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社:DSC7020)を用い、酸化アルミニウムを対照として下記操作条件で測定した。
(操作条件)
昇温速度:10℃/min、
測定範囲:30−250℃、
雰囲気 :開放、窒素40ml/min。
(4)YI値
上記式(1)で表されるアルコール化合物の結晶12gを、純度99重量%以上のN,N―ジメチルホルムアミド30mlに溶解させ、以下の条件で得られたN,N―ジメチルホルムアミド溶液のYI値(黄変度)を測定した。
装置 :色差計(日本電色工業社製,SE6000)、
使用セル:光路長33mm 石英セル。
なお、測定に使用するN,N−ジメチルホルムアミド自身の着色が測定値に影響を与えないよう、事前にN,N−ジメチルホルムアミドの色相を測定して補正した。(ブランク測定)。
上述のブランク測定を実施したうえで、サンプルを測定した値を本発明におけるYI値とする。
(5)水分値
晶析溶液中の水分値はJIS−K0068に準拠した方法(カールフィッシャー容量滴定法)にて測定した。
(6)嵩密度
下記実施例等で得られた結晶を10mlのメスシリンダーに5mlまで入れ、メスシリンダーに入った結晶の重量から嵩密度を算出した。
(7)溶融開始温度
下記実施例等で得られた結晶約1gを試験管に入れ、該試験管を約130℃のシリコンオイルが入ったオイルバスに入れ10分間静置した後、オイルバスを十分に撹拌しながら130℃より徐々に昇温し、試験管に入った結晶の溶融が始まった際のオイルバスの温度を結晶の溶融開始温度とした。
(8)赤外分光スペクトル
上記(1)で表されるフルオレン骨格を有するアルコールの結晶をDuraSamplIR2にてダイヤモンド結晶に密着させ、FT−IR分光光度計(島津製作所製:IRTracer−100)を用いて下記の条件で測定した。
測定方法 :1回反射ATR法
分解能 :4cm−1
積算回数 :16
<実施例1>
攪拌器、加熱冷却器、および温度計を備えたガラス製反応器に、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン(上記式(2)で表されるフェノール化合物)150g(0.298mol)、炭酸カリウム3.4g(0.025mol)、エチレンカーボネート60.1g(0.682mol)、トルエン225g、およびトリエチレングリコールジメチルエーテル15gを仕込み、115℃まで昇温し、同温度で8時間撹拌後、HPLCにて原料が消失していることを確認した。反応終了時点の多量体の生成率は約1%であった。
得られた反応液を90℃まで冷却した後、水225gを加え、80〜85℃で30分間撹拌し、静置後、水層を分離した。同じ操作を3回繰り返した後、得られた有機溶媒層を濃縮することで溶媒を除去し、濃縮物を得た。得られた濃縮物にトルエン49g、メタノール188gを添加し晶析溶液を得た。得られた晶析溶液中の水分は0.1%であった。
得られた晶析溶液を65℃まで昇温し、同温度で1時間撹拌して結晶を完溶させた後、0.1℃/分で冷却することにより45℃で結晶を析出させ、析出後、同温度で2時間撹拌した。撹拌後、更に22℃まで冷却した後、濾過し、上記式(1)で表されるアルコール化合物を含む結晶を得た。得られた結晶を15時間、内圧1.3kPaの減圧下、結晶温度を100〜102℃とした後、上記式(1)で表されるアルコール化合物の結晶を得た。
得られた上記式(1)で表されるアルコール化合物の結晶の各分析値は以下の通り。
得られた結晶の重さ:139g(収率:79%)
HPLC純度:98.4%(多量体含量:0.9%)
トルエン含量:0.03重量%
赤外スペクトル:1148(cm−1)にピークを有する一方、1153±2(cm−1)にはピークを有さなかった。
101.3kPaにおける沸点が150℃以下の有機溶媒の含有量:0.25重量%
YI値:1.0
嵩密度:0.5g/cm
DSC吸熱ピーク:150℃、195℃
溶融開始温度:150℃
実施例1で得られた結晶のDSCチャートを図1に、IRスペクトルを図7に示す。
<実施例2>
攪拌器、加熱冷却器、および温度計を備えたガラス製反応器に、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン150g(0.298mol)、炭酸カリウム3.4g(0.025mol)、エチレンカーボネート60.1g(0.682mol)、トルエン225g、およびジエチレングリコールジメチルエーテル150gを仕込み、115℃まで昇温し、同温度で13時間撹拌後、HPLCにて原料が消失していることを確認した。反応終了時点の多量体の生成率は約0.5%であった。
得られた反応液を85℃まで冷却した後、水225gを加え、80〜85℃で30分間撹拌し、静置後、水層を分離した。同じ操作を3回繰り返した後、得られた有機溶媒層を一部濃縮し、上記式(1)で表されるアルコール化合物、トルエン及びジエチレングリコールジメチルエーテルを含む溶液を得た。
該溶液にトルエン54g、メタノール84gを添加し晶析溶液を得た。得られた晶析溶液中の水分は0.1%であり、該溶液中に含まれるトルエンは173g、メタノールは84g、ジエチレングリコールジメチルエーテルは61gであった。
得られた晶析溶液を65℃まで昇温し、同温度で1時間撹拌して結晶を完溶させた後、0.1℃/分で冷却し50℃とした時点で、実施例1で得られた結晶0.01gを種晶として添加した所、結晶が析出した。その後、同温度で1時間撹拌した。撹拌後、更に25℃まで冷却した後、濾過し、上記式(1)で表されるアルコール化合物を含む結晶を得た。得られた結晶を8時間、内圧1.1kPaの減圧下、結晶温度を107〜111℃とした後、上記式(1)で表されるアルコール化合物の結晶を得た。
得られた上記式(1)で表されるアルコール化合物の結晶の各分析値は以下の通り。
得られた結晶の重さ:139g(収率:79%)
HPLC純度:98.5%(多量体含量:0.8%)
トルエン含量:0.03重量%
赤外スペクトル:1148(cm−1)にピークを有する一方、1153±2(cm−1)にはピークを有さなかった。
101.3kPaにおける沸点が150℃以下の有機溶媒の含有量:0.25重量%
YI値:1.0
嵩密度:0.6g/cm
DSC吸熱ピーク:149℃、195℃
溶融開始温度:149℃
実施例2で得られた結晶のDSCチャートを図2に示す。
<実施例3>
攪拌器、加熱冷却器、および温度計を備えたガラス製反応器に、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン150g(0.298mol)、炭酸カリウム3.4g(0.025mol)、エチレンカーボネート60.1g(0.682mol)、トルエン225g、およびジエチレングリコールジメチルエーテル150gを仕込み、115℃まで昇温し、同温度で13時間撹拌後、HPLCにて原料が消失していることを確認した。反応終了時点の多量体の生成率は約0.5%であった。
得られた反応液を85℃まで冷却した後、水225gを加え、80〜85℃で30分間撹拌し、静置後、水層を分離した。同じ操作を3回繰り返した後、得られた有機溶媒層を一部濃縮し、上記式(1)で表されるアルコール化合物、トルエン及びジエチレングリコールジメチルエーテルを含む溶液を得た。
該溶液にトルエン54g、メタノール84gを添加し晶析溶液を得た。得られた晶析溶液中の水分は0.1%であり、該溶液中に含まれるトルエンは173g、メタノールは84g、ジエチレングリコールジメチルエーテルは61gであった。
得られた晶析溶液を65℃まで昇温し、同温度で1時間撹拌して結晶を完溶させた後、0.1℃/分で冷却し50℃とした時点で、実施例1で得られた結晶0.01gを種晶として添加した所、結晶が析出した。その後、同温度で1時間撹拌した。撹拌後、更に25℃まで冷却した後、濾過し、上記式(1)で表されるアルコール化合物を含む結晶を得た。得られた結晶を11時間、内圧1.1kPaの減圧下、結晶温度を100〜103℃とした後、上記式(1)で表されるアルコール化合物の結晶を得た。
得られた上記式(1)で表されるアルコール化合物の結晶の各分析値は以下の通り。
得られた結晶の重さ:141g(収率:80%)
HPLC純度:98.5%(多量体含量:0.8%)
トルエン含量:0.02重量%
赤外スペクトル:1148(cm−1)にピークを有する一方、1153±2(cm−1)にはピークを有さなかった。
101.3kPaにおける沸点が150℃以下の有機溶媒の含有量:0.10重量%
YI値:1.2
嵩密度:0.5g/cm
DSC吸熱ピーク:150℃、168℃、174℃、195℃
溶融開始温度:150℃
実施例3で得られた結晶のDSCチャートを図3に示す。
<参考例1>
攪拌器、加熱冷却器、および温度計を備えたガラス製反応器に、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン150g(0.298mol)、炭酸カリウム3.4g(0.025mol)、エチレンカーボネート60.1g(0.682mol)、トルエン225g、およびトリエチレングリコールジメチルエーテル15gを仕込み、115℃まで昇温し、同温度で8時間撹拌後、HPLCにて原料が消失していることを確認した。反応終了時点の多量体の生成率は約1%であった。
得られた反応液を90℃まで冷却した後、水225gを加え、80〜85℃で30分間撹拌し、静置後、水層を分離した。同じ操作を3回繰り返した後、得られた有機溶媒層を濃縮することで溶媒を除去し、濃縮物を得た。得られた濃縮物にトルエン49g、メタノール188gを添加し晶析溶液を得た。得られた晶析溶液中の水分は0.1%であった。
得られた晶析溶液を65℃まで昇温し、同温度で1時間撹拌して結晶を完溶させた後、0.1℃/分で冷却することにより45℃で結晶を析出させ、析出後、同温度で2時間撹拌した。撹拌後、更に22℃まで冷却した後、濾過し、上記式(1)で表されるアルコール化合物を含む結晶を得た。得られた結晶を15時間、内圧1.3kPaの減圧下、結晶温度88℃〜90℃とした後、上記式(1)で表されるアルコール化合物の結晶を得た。
得られた上記式(1)で表されるアルコール化合物の結晶の各分析値は以下の通り。
得られた結晶の重さ:139g(収率:79%)
HPLC純度:98.2%(多量体含量:0.8%)
トルエン含量:0.03重量%
赤外スペクトル:1148(cm−1)にピークを有する一方、1153±2(cm−1)にはピークを有さなかった。
101.3kPaにおける沸点が150℃以下の有機溶媒の含有量:0.25重量%
YI値:0.7
嵩密度:0.2g/cm
DSC吸熱ピーク:150℃
溶融開始温度:150℃
参考例1で得られた結晶のDSCチャートを図5に示す。
<実施例4>
参考例1で得られた結晶をフラスコに入れ、常圧で72時間、結晶温度を125℃とした。加熱後、得られた上記式(1)で表されるアルコール化合物の結晶の各分析値は以下の通り。
HPLC純度:98.1%(多量体含量:0.8%)
赤外スペクトル:1148(cm−1)にピークを有する一方、1153±2(cm−1)にはピークを有さなかった。
YI値:1.1
嵩密度:0.5g/cm
DSC吸熱ピーク:148℃、195℃
溶融開始温度:148℃
<比較例1>
攪拌器、加熱冷却器、および温度計を備えたガラス製反応器に、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン40.0g(0.0800mol)、エチレンカーボネート16.1g(0.183mol)、炭酸カリウム0.8g(0.006mol)およびトルエン40.0gを仕込み、110℃で11時間撹拌し、HPLCにて原料ピークが1%以下であることを確認した。また、反応液中には、多量体が約3%副生していることを確認した。
得られた反応液を85℃まで冷却した後、水68gを加え、80〜85℃で30分間撹拌し、静置後、水層を分離した。同じ操作を3回繰り返した後、得られた有機溶媒層をディーンスターク装置を用いて還流下で脱水し、上記式(1)で表されるアルコール化合物が溶解した晶析溶液を得た。該晶析溶液中の水分は0.1%であった。
得られた晶析溶液を0.3℃/分で冷却した所、65℃で結晶が析出し、同温度で2時間撹拌した。更に26℃まで冷却した後、濾過し、結晶を得た。得られた結晶を、12時間、内圧1.1kPaの減圧下、結晶温度を110℃〜112℃とした後、上記式(1)で表されるアルコール化合物の結晶を得た。
得られた上記式(1)で表されるアルコール化合物の結晶の各分析値は以下の通り。
得られた結晶の重さ:39.4g(収率:84%)
HPLC純度:97.2%(多量体含量:2.6%)
トルエン含量:4.1重量%
赤外スペクトル:1153(cm−1)にピークを有した。
DSC吸熱ピーク:151℃
比較例1で得られた結晶のDSCチャートを図4に、IRスペクトルを図8に示す。
<比較例2>
晶析工程においてメタノールの代わりにエタノールを使用する以外は実施例1と同様の操作を行い、上記式(1)で表されるアルコール化合物の結晶を得た。得られた結晶の各分析値は以下の通り。
得られた結晶の重さ:130g(収率:74%)
HPLC純度:97.8%(多量体含量:0.8%)
トルエン含量:4.0重量%
赤外スペクトル:1153(cm−1)にピークを有した。
DSC吸熱ピーク:150℃
<比較例3〜6>
実施例1と同様に反応、後処理を行い濃縮物を得た。得られた濃縮物を4等分し、下記表2に示す比率となるよう各溶媒をそれぞれ添加した後は実施例1記載の方法と同様に後処理を行い、上記式(1)で表されるアルコール化合物の結晶を得た。各結晶の各分析値を以下表2に示す。なお、表2における各溶媒の添加量はそれぞれの濃縮物に含まれる上記式(1)で表されるアルコール化合物に対する比率(重量倍)である。
Figure 2018048086
上記表1に示す通り、上記式(1)で表されるアルコール化合物は芳香族炭化水素類と包接体を形成し、キシレンを単独で用いた場合や、メタノール以外の溶媒を混合し晶析させても芳香族炭化水素類を包接したままであることが判明した。
<比較例7>
実施例2と同様に反応、後処理を行なった後、溶媒を除去することで濃縮物171gを得た。得られた濃縮物にトルエン228g、メタノール114gを添加後65℃まで昇温し、同温度で1時間撹拌することにより結晶を完溶させた。その後、1.5℃/分で冷却することにより21℃で結晶を析出させ、同温度で2時間撹拌した。その後、濾過し、上記式(1)で表されるアルコール化合物を含む結晶を得た。
得られた結晶を3時間、内圧1.1kPaの減圧下、結晶温度を68℃〜73℃としたが、トルエンが4重量%含まれていた。そこで更に10時間、結晶温度を110℃〜112℃で保持したが、トルエンの含量は4重量%のままであった。
<比較例8>
9−フルオレノンの使用量を9.0gとして特開2009−256342号の実施例2記載の方法を追試した所、上記式(1)で表されるアルコール化合物13.5g(純度74.7%)を得た。得られた上記式(1)で表されるアルコール化合物の結晶の各分析値は以下の通り。
トルエン含量:3.0重量%
YI値:83
DSC吸熱ピーク:126℃
赤外スペクトル:1153(cm−1)にピークを有した。
<参考例2>
攪拌器、加熱冷却器、および温度計を備えたガラス製反応器に、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン138g(0.275mol)、炭酸カリウム3.1g(0.022mol)、エチレンカーボネート50.8g(0.577mol)、メチルイソブチルケトン(以下、MIBKと称することもある)138gを仕込み、120℃まで昇温し、同温度で9時間撹拌後、HPLCにて原料が消失していることを確認した。
得られた反応液を80℃まで冷却した後、MIBK276g、水207gを加え、70〜75℃で2時間撹拌し、静置後、水層を分離した。同じ操作を3回繰り返した後、MIBK55g、ヘプタン198gを添加し、晶析溶液を得た。
得られた晶析溶液を105℃まで昇温し、30分間撹拌して結晶を完溶させた後、該晶析溶液を0.1℃/分で冷却することにより95℃で結晶を析出させ、同温度で2時間撹拌した。その後、25℃まで冷却、濾過し、結晶を得た。得られた結晶を10時間、内圧1.3kPaの減圧下、結晶温度100〜105℃で保持した後、上記式(1)で表されるアルコール化合物の結晶を得た。
得られた上記式(1)で表されるアルコール化合物の結晶の各分析値は以下の通り。
得られた結晶の重さ:127g(収率:78%)
HPLC純度:98.5%
赤外スペクトル:1148(cm−1)にピークを有する一方、1153±2(cm−1)にはピークを有さなかった。
101.3kPaにおける沸点が150℃以下の有機溶媒の含有量(MIBK及びヘプタンの含有量を含む):0.07重量%
YI値:7.0
嵩密度:0.6g/cm
DSC吸熱ピーク:195℃
溶融開始温度:195℃
参考例2で得られた結晶のDSCチャートを図6に示す。
<参考例3>
参考例2で得られた結晶をフラスコに入れ、常圧で15時間、結晶温度を105〜110℃で保持した。加熱後、得られた上記式(1)で表されるアルコール化合物の結晶の各分析値は以下の通り。
YI値:7.0
嵩密度:0.6g/cm
DSC吸熱ピーク:195℃
溶融開始温度:195℃

Claims (6)

  1. 示差走査熱量分析により得られる吸熱ピークを148〜151℃の範囲に有し、更に165〜200℃の範囲に少なくとも一つの吸熱ピークを有する、以下式(1)で表されるアルコール化合物の結晶。

    Figure 2018048086
  2. 赤外スペクトルにおいて、1153±2(cm−1)のピークを実質的に有さない、請求項1記載のアルコール化合物の結晶。
  3. 上記式(1)で表されるアルコールを95重量%以上含み、かつ芳香族炭化水素類の含量が1重量%以下である、請求項1又は2記載のアルコール化合物の結晶。
  4. 嵩密度が0.3〜0.6g/cmである、請求項1〜3いずれか1項記載のアルコール化合物の結晶。
  5. 上記式(1)で表されるアルコール12gを、純度99重量%以上のN,N−ジメチルホルムアミド30mLに溶解させた溶液の黄色度(YI値)が10以下となる、請求項1〜4いずれか1項記載のアルコール化合物の結晶。
  6. 以下、(i)、(ii)及び(iii)の工程をこの順で含む、請求項1〜5いずれか一項記載のアルコール化合物の結晶の製造方法。
    (i)
    上記式(1)で表されるアルコール化合物、芳香族炭化水素類及びメタノールを含む溶液を調製する工程。
    (ii)
    前記溶液から25℃以上で前記アルコール化合物の結晶を析出させ、析出した結晶を分離取得する工程。
    (iii)
    前記結晶を100℃以上とする工程。
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