JP7379770B2 - ビスフルオレン化合物の結晶体 - Google Patents

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Description

本発明は、示差走査熱量分析による特定の吸熱ピークを有する9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンの結晶体および、その結晶体の製造方法に関する。
従来、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン等のフルオレン骨格を有する化合物群は、耐熱性や光学特性等において優れていることから、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性合成樹脂原料、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂原料、酸化防止剤原料、感熱記録体原料、感光性レジスト原料などの用途で用いられている。中でも、以下化学式(1)で表される化学構造を有する9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンから製造される樹脂は、光学特性に優れるとして着目されている(例えば、特許文献1、2等)。
上記化学式(1)で表される9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンの製造方法としては、下記反応式に示すように、化学式(2)で示される9-フルオレノンと化学式(3)で示されるアルコール類とを反応させて、目的物を得る方法が知られている(特許文献3)。
また、上記化学式(1)で表される9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンを含む反応液中に、芳香族炭化水素類とメタノールとを添加して析出した結晶を分離後、結晶を60℃以上にしてメタノールを除去する方法が知られている(特許文献4)。晶析により得られた結晶は、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンとメタノールとの包接体であり、包接されたメタノールを除去するためには、加温によるエネルギーと時間が不可欠である。
上記化学式(1)で表される9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンとトルエンとの包接体と、特定の溶媒とを、溶解することなく混合させることにより、トルエンを除去する方法が知られている(特許文献5)が、得られる結晶はほとんど高融点であるため、融解や溶解させるためにエネルギーや時間が多く必要である。また、使用する溶媒によっては低融点の結晶が得られるが、当該結晶は、包接体を形成しているため、包接体から溶媒を除去するためのエネルギーが必要であるほか、嵩密度も低い。
高嵩密度の上記化学式(1)で表される9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンの結晶の製造方法が知られている(特許文献6)が、得られた結晶は包接体であり、加熱により当該包接体から結晶を保持したまま溶媒が除去できないか、あるいは除去できる場合でも包接体から溶媒を除去するためのエネルギーが必要であるという問題があった。
包接体ではない上記化学式(1)で表される9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンを得る製造方法も知られている(特許文献7)が、最も高融点の結晶は、融解して使用する場合は多くのエネルギーが必要である。また、低融点の結晶を得るには、極めて速い速度で冷却する必要があり、商業スケールでの実施は困難であるか、特殊な装置が必要なため、工業的規模での適用は容易ではない。そのほか、低融点の結晶は色相が悪く、光学用途への使用に問題があるほか、晶析に使用する溶媒の残存量が多いという問題もあった。
9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン等のフルオレン骨格を有する化合物群は、反応溶媒や精製に使用する溶媒との間で包接体を形成することが知られている一方で、包接された溶媒を除去するためには高温と多大な時間を要するために、工業的規模で適用することは困難であるほか、溶媒が包接されたフルオレン骨格を有する化合物は、エポキシ樹脂、ポリエステル等の製造原料やその他の用途において工業的に使用するには問題があることも知られている。
特開2011-074222号公報 特開2011-168722号公報 特開2001-206863号公報 特開2017-200900号公報 特開2018-076245号公報 中国特許出願公開第106349030号明細書 特開2017-200901号公報
本発明は、上述した事情を背景としてなされたものであって、示差走査熱量分析による特定の吸熱ピークを有する9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンの結晶体および、その結晶体の製造方法の提供を課題とする。
本発明者らは、上述の課題解決のために鋭意検討した結果、特定の溶媒を用いて晶析することにより、示差走査熱量分析による特定の吸熱ピークを有する9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンの結晶体が得られることを見出し、本発明を完成した。
本発明は以下の通りである。
1.示差走査熱量分析による吸熱ピークを158℃以上161℃未満の温度範囲に少なくとも1つ有することを特徴とする、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンの結晶体。
2.包接体ではないことを特徴とする、1.に記載の結晶体。
3.アセトニトリルを用いて晶析する工程を含むことを特徴とする、1.または2.に記載の結晶体の製造方法。
4.さらに、晶析により得られた結晶を45℃以上であって融点より低い温度条件下において乾燥する工程を含むことを特徴とする、3.に記載の製造方法。
本発明によれば、示差走査熱量分析による特定の吸熱ピークを有し、包接体ではない9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンの結晶体および、その結晶体の製造方法が提供可能である。
9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンが有機溶媒等の化合物を包接している場合は、当該包接体と、例えば(メタ)アクリル酸等とを反応させる際に、包接している有機溶媒等の化合物が反応を阻害し、反応が進行しないという問題が発生する。また、当該包接体を溶融し樹脂原料として使用する際も、溶融中に発生する包接した有機溶媒等の化合物に由来する蒸気を反応装置から除去する必要があるほか、残存する有機溶媒等の化合物により目的とする樹脂の品質が低下する等の問題もあった。さらに、包接する有機溶媒等の化合物の引火点や発火点によっては、当該包接体の輸送や保管時における防災上の懸念もあった。
前述のとおり、示差走査熱量分析による吸熱ピークを158℃以上161℃未満の温度範囲に少なくとも1つ有し、包接体ではない9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンの結晶体は、未だ知られていない。しかも、従来の包接結晶から有機溶媒を除去するより、はるかに低い熱量により包接した有機溶媒を除去できるため、製造における消費エネルギーを抑えることができる。
すなわち、示差走査熱量分析による特定の吸熱ピークを有し、包接体ではない9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンの新規な結晶体とその製造方法の提供は、樹脂原料等の工業的な使用において非常に有用である。
実施例1の乾燥工程における付着溶媒を除去して得られたアセトニトリル包接体の示差熱・熱重量分析(DTG)曲線を示す図である。 実施例1の乾燥工程により得られた包接体ではない結晶(本発明の結晶体)の示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図である。 実施例2で得られた結晶体(本発明の結晶体)の示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図である。 実施例2における付着溶媒を除去して得られた結晶の示差熱・熱重量分析(DTG)曲線を示す図である。 比較例1により得られた結晶の示差熱・熱重量分析(DTG)曲線を示す図である。 比較例2により得られた結晶の示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図である。 比較例3により得られた結晶の示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図である。 比較例4により得られた結晶の示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図である。 比較例6により得られた結晶の示差熱・熱重量分析(DTG)曲線を示す図である。 比較例7の乾燥前の結晶の示差熱・熱重量分析(DTG)曲線を示す図である。 比較例7の乾燥後の結晶の示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンは下記化学式(1)で表される化合物である。
<合成方法について>
本発明における、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンの合成方法については、特に制限はなく、例えば、前述の特許文献3に記載された公知製造方法を適用できる。
下記反応式に示す、化学式(2)で示される9-フルオレノンと化学式(3)で示されるアルコール類との反応について説明する。
化学式(2)で示される9-フルオレノンに対する化学式(3)で示されるアルコール類の仕込みモル比は、理論値(2.0)以上であれば、特に限定されるものではないが、通常2~20倍モル量の範囲、好ましくは3~10倍モル量の範囲で用いられる。
反応に際して、酸触媒を使用することができる。使用する酸触媒は特に制限されず、公知の酸触媒を使用することができる。具体的な酸触媒としては、例えば、塩酸、塩化水素ガス、60~98%硫酸、85%リン酸等の無機酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、蟻酸、トリクロロ酢酸またはトリフルオロ酢酸等の有機酸、ヘテロポリ酸等の固体酸等を挙げることができる。好ましくは リンタングステン酸等のヘテロポリ酸である。このような酸触媒の好適な使用量は反応条件によって異なるが、例えば、リンタングステン酸等のヘテロポリ酸の場合は、9-フルオレノン100重量部に対して、1~70重量部の範囲、好ましくは、5~40重量部の範囲、より好ましくは10~30重量部の範囲で用いられる。
反応に際して、酸触媒と共に必要に応じてチオール類等の助触媒を使用してもよい。使用により反応速度を加速させることができる。このようなチオール類としては、アルキルメルカプタン類やメルカプトカルボン酸類が挙げられ、好ましくは、炭素数1~12のアルキルメルカプタン類や炭素数1~12のメルカプトカルボン酸類である。炭素数1~12のアルキルメルカプタン類としては、例えば、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン等やそれらのナトリウム塩等のようなアルカリ金属塩が挙げられ、炭素数1~12のメルカプトカルボン酸類としては、例えば、チオ酢酸、β-メルカプトプロピオン酸等が挙げられる。また、これらは単独または2種類以上の組み合わせで使用できる。助触媒としてのチオール類の使用量は、原料の9-フルオレノンに対し通常1~30モル%の範囲、好ましくは2~10モル%の範囲で用いられる。
反応に際して反応溶媒は使用しなくてもよいが、工業的生産時の操作性や反応速度の向上などの理由で使用してもよい。反応溶媒としては、反応温度において反応器から留出せず、反応に不活性であれば特に制限はないが、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等の低級脂肪族アルコール、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素等の有機溶媒や水またはこれらの混合物が挙げられる。これらのうち、芳香族炭化水素が好ましく用いられる。
反応温度は、使用する酸触媒の種類により異なるが、酸触媒としてリンタングステン酸等のヘテロポリ酸を使用する場合は、通常20~200℃、好ましくは40~170℃、さらに好ましくは50~120℃の範囲である。反応圧力は、使用する有機溶媒の沸点によっては、反応温度が前記範囲内になるように加圧または減圧下で行ってもよく、生成する水を除去しながら反応を行ってもよい。
反応時間は、使用する酸触媒の種類や、反応温度等の反応条件により異なるが、通常1~30時間程度で終了する。
反応の終点は、液体クロマトグラフィーまたはガスクロマトグラフィー分析にて確認することができる。未反応の9-フルオレノンが消失し、目的物の増加が認められなくなった時点を反応の終点とするのが好ましい。
<反応の後処理について>
このような反応の終了後に、公知の後処理方法を適用することができる。例えば、反応終了液に、酸触媒を中和するために、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液等のアルカリ水溶液を加える。中和した反応混合液を静置し、必要に応じて水と分離する溶媒を加えて、水層を分離除去する。必要に応じて得られた油層に蒸留水を加え、撹拌して水洗した後、水層を分離除去する操作を1回乃至複数回繰り返し行い中和塩を除去し、得られた油層をそのまま冷却して結晶が析出すれば、析出した結晶を分離して粗結晶を得ることができる。また、得られた油層から溶媒や余剰の上記化学式(3)で示されるアルコール類を、蒸留により除去して、得られた残渣に芳香族炭化水素等の溶媒を加えて均一の溶液とし、冷却して析出した結晶を分離して粗結晶を得てもよい。この粗結晶や前記残渣は、本発明の晶析する工程を経ることにより、示差走査熱量分析による吸熱ピークを158℃以上161℃未満の温度範囲に少なくとも1つ有し、包接体ではない9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンの結晶体を得ることができる。
<晶析する工程について>
本発明の製造方法は、アセトニトリルを用いて晶析する工程(以下、晶析工程ともいう。)を含むことを特徴とするものである。ここで、使用可能なアセトニトリルとしては、特に限定されることなく、一般的に市販されているアセトニトリルを使用することができる。
晶析工程に使用するアセトニトリルの量は、反応の後処理により得られた残渣または粗結晶に含まれる9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレン100重量部に対して、150~600重量部が好ましく、200~500重量部がより好ましく、250~400重量部がさらに好ましく、中でも、300~350重量部が最も好ましい。使用するアセトニトリルの量が多いと、得られる結晶量が低下してしまい、少ないと目的物の純度が低下し好ましくない。さらに、使用するアセトニトリルの量が少ないと、晶析工程に使用する反応後処理工程により得られた残渣または粗結晶に含まれる溶媒、例えば、トルエン等の芳香族炭化水素を包接する9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンが増加してしまうため好ましくない。
本発明の晶析工程においては、アセトニトリル以外の溶媒を使用すると、示差走査熱量分析による吸熱ピークを158℃以上161℃未満の温度範囲に少なくとも1つ有し、包接体ではない9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンの結晶体を得ることができないために、好ましくない。
本発明の晶析工程では、使用する反応後処理後の残渣または粗結晶に、アセトニトリルを添加し、常圧または加圧下でアセトニトリルの沸点以下まで加温して完溶させて均一な溶液とした後、冷却して析出する結晶を得ることができる。加温して均一な溶液とした後、冷却する場合には、1時間あたり1~10℃、好ましくは1時間あたり3~7℃で、冷却して結晶を析出させる。結晶を析出させる温度としては、40~58℃の温度範囲が好ましく、45~55℃の温度範囲がより好ましく、中でも50℃程度の温度が結晶析出温度としては適している。また、結晶を析出させる際には、種晶を使用しても良い。結晶が析出開始した後は、0~5時間同温度で保持し、前記冷却速度で、0~40℃、好ましくは10~35℃、より好ましくは20~30℃まで冷却して、0~3時間同温度で保持した後、析出した結晶を濾過操作等により分離することが好ましい。
<乾燥する工程について>
乾燥する工程(以下、乾燥工程ともいう。)を実施することにより、本発明の晶析工程において使用したアセトニトリルを完全に除去することができる。本発明の乾燥工程は、晶析工程により得られた結晶を、45℃以上であって融点より低い温度条件下で実施することができるが、70℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、100℃以上が特に好ましい。また、その他の条件等によっては熱により結晶の色相が悪化する可能性もあるため、150℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。45℃より低い温度では、晶析工程において使用したアセトニトリルを除去できないか、除去できたとしても非常に多くの時間が必要となり好ましくない。
乾燥工程を実施する際は常圧でも減圧下でも良いが、工業的に実施する場合には、減圧下において実施する方がより効率的に、晶析工程において使用したアセトニトリルを除去できることからも好適である。その他、乾燥工程は、窒素等の不活性ガス雰囲気中で行うことがより好ましい。
<本発明の結晶体>
本発明の9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンの結晶体は、示差走査熱量分析による吸熱ピークを158℃以上161℃未満の温度範囲に少なくとも1つ有することを特徴とする。示差走査熱量分析による吸熱ピークは、159℃以上161℃未満の温度範囲がより好ましく、160℃以上161℃未満の温度範囲がさらに好ましい。さらに、本発明の9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンの結晶体は包接体ではない、すなわち、有機溶媒等の化合物を包接しない結晶体である。
本発明における、有機溶媒等の化合物を包接しない結晶体としては、残存する有機溶媒の含量が1重量%以下である結晶体が好ましく、0.5重量%以下である結晶体がより好ましく、0.3重量%以下である結晶体がさらに好ましく、0.1重量%以下が特に好ましい。また、本発明における、有機溶媒等の化合物を包接しない結晶体は、ゆるみ嵩密度が0.35~0.45g/cmの範囲であることが好ましい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
分析方法は以下の通りである。
<分析方法>
1.示差走査熱量分析(DSC)
結晶体5mgをアルミパンに秤量し、示差走査熱量測定装置((株)島津製作所製:DSC-60)を用いて、酸化アルミニウムを対照として下記操作条件により測定した。
(操作条件)
昇温速度:10℃/分
測定温度範囲:30~200℃
測定雰囲気:開放、窒素50mL/分
2.示差熱・熱重量分析(DTG)
結晶体8mgをアルミパンに秤量し、示差熱・熱重量分析装置((株)島津製作所製:DTG-60A)を用いて、下記操作条件により測定した。
(操作条件)
昇温速度:10℃/分
測定温度範囲:30~300℃
測定雰囲気:開放、窒素50mL/分
3.HS-GC(残存溶媒分析)
「HS-GC」とは、気相部分(ヘッドスペース、HS)をガスクロマトグラフ(GC)に導入して分析する手法である。バイアルに封入された試料を一定時間保温することで気相と試料を平衡状態として気相部分を分析することにより、結晶中に残存する溶媒量を測定した。具体的には、結晶体0.5gを秤量し、そこにN-メチルピロリドンを精秤しながら添加して全体を10gにする。この溶液をHS用バイアルに約3gを秤量して、漏れないようにクランプして下記条件で測定した。
(GC分析条件)
装置:(株)島津製作所製:GC-2010plus
カラム:TC-1 60m×0.25mmΦ、膜厚0.25μm
検出器:FID
INJ温度:300℃、FID温度:310℃
昇温条件:40℃(25分)→20℃/分→300℃(5分)
カラム線速度:19.9cm/秒
(HS分析条件)
機器:TurboMatrix HS 40(パーキンエルマー社)
キャリアガス圧:154kPa
バイアル加熱温度:100℃
注入時間:0.05分
4.ゆるみ嵩密度
多機能型粉体物性測定器マルチテスター(MT―1001型/(株)セイシン企業製)を用い、容量20cmの測定用セルに、空気の隙間ができないように篩を通して結晶を静かに投入し、前記測定用セルが結晶で充填した時のセル内の結晶の重量a(g)を測定し、下記計算式よりゆるみ嵩密度を算出した。
[計算式]
ゆるみ嵩密度(g/cm)=結晶体の重量a(g)÷20cm
5.粉末X線回析(XRD)分析
結晶体0.1gをガラス試験板の試料充填部に充填し、下記粉末X線回析装置を用いて、下記条件により測定した。
装置:(株)リガク製:SmartLab
X線源:CuKα
スキャン軸:2θ/θ
モード:連続
測定範囲:2θ=5°~70°
ステップ:0.01°
スピード計測時間:2θ=2°/min
IS:1/2
RS:20.00mm
出力:40kV-30mA
6.粒度分布
結晶0.1gに、分散溶媒として水0.1g、分散剤(中性洗剤)一滴を加えて混合し、これを装置に投入し、超音波処理(3分)後、測定した。
装置:(株)島津製作所製:SALD-2200
測定方式:レーザー回析方式
7.YI値(黄色度)
結晶2.0gを、純度99重量%以上の1,4ジオキサン18.0gに溶解させ、以下の条件で得られた1,4-ジオキサン溶液のYI値(黄色度)を測定した。
装置:色差計(日本電色工業社製,ZE6000)
使用セル:ガラス試験管(直径24mm)
なお、測定に使用する1,4-ジオキサン自身の着色が測定値に影響を与えないよう、事前に1,4-ジオキサンの色相を測定して補正した。(ブランク測定)。このブランク測定を実施したうえで、サンプルを測定した値を本発明におけるYI値(黄色度)とした。
<合成例>
9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンの合成
温度計、撹拌機、冷却管を備えた1リットル4つ口フラスコ内を窒素置換し、9-フルオレノン76.3g(0.423モル)、化学式(3)で示されるアルコール類907.0g(4.24モル)、リンタングステン酸13.7g、トルエン388.7gを仕込み、反応温度100℃、圧力42kPaにおいて、反応生成水を除去しながら反応を行った。液体クロマトグラフィー分析により原料消失を確認し、反応終了とした。反応液を80℃にまで冷却し、トルエン339.1g、15%水酸化ナトリウム水溶液26.69g、蒸留水250gを加えて反応液を中和して静置し、水層を除去した。得られた油層に蒸留水250gを加えて撹拌後静置し、水層を除去する水洗操作を4回実施した。得られた油層から、蒸留により溶媒等の低沸点物質と未反応の化学式(3)で示されるアルコール類を取り除いた後、残渣をトルエン1500gで溶解した。このトルエン溶液を25℃にまで冷却し、析出した結晶を濾過し、目的物のトルエン包接体232.0g(高速液体クロマトグラフィー分析による純度98.0%、トルエン5重量%包接)を得た。
<実施例1>
(晶析工程)
温度計、撹拌機、冷却管を備えた200ミリリットル4つ口フラスコに、上記「合成例」で得られた白色結晶10gとアセトニトリル30gを入れて、60℃で溶解後、1時間あたり5℃の速度で冷却すると、50℃付近で結晶が析出した。その後、同じ冷却速度でさらに25℃まで冷却して、析出した結晶を濾過した。
(乾燥工程)
晶析工程により得られた結晶を、温度20℃、1.2kPaで2時間乾燥させた。得られた結晶は、HS-GC分析により残存溶媒がトルエン0.05重量%、アセトニトリル3.6重量%であった。さらに、同一条件でこの結晶を4時間乾燥したが、残存溶媒の含有量に変化はなかった。このことから、晶析工程で得られた結晶は、アセトニトリル包接体であることが明らかになった。このアセトニトリル包接体について示差熱・熱重量分析(DTG)を行った結果、包接するアセトニトリルを除去する熱量は約40J/gであることが確認された。このアセトニトリル包接体の示差熱・熱重量分析(DTG)曲線を示す図を図1に示す。
このアセトニトリル包接体を温度100℃、圧力1.2kPaの環境で4時間乾燥し、包接体ではない結晶9.0gが得られた。
(分析結果)
乾燥工程により得られた結晶は、高速液体クロマトグラフィー分析による純度が98.7%であり、HS-GC分析により残存溶媒がトルエン0.05重量%、アセトニトリル0.2重量%であることが確認できた。
上記分析を行った、包接体ではない結晶の示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図を図2に示す。
<実施例2>
(晶析工程)
温度計、撹拌機、冷却管を備えた1リットル四つ口フラスコに、上記「合成例」で得られた白色結晶208.7gとアセトニトリル626.1gを入れて60℃で溶解後、1時間あたり5℃の冷却速度で冷却し、実施例1で得られた種結晶概略0.1gを55℃で添加したところ、50℃で析出結晶の増加を確認できた。同じ冷却速度で25℃まで冷却し、25℃で2時間保持し、析出した結晶を濾別した。
(乾燥工程)
晶析工程により得られた結晶を、温度20℃、圧力1.2kPaの環境で2時間乾燥させた。得られた結晶は、HS-GC分析により残存溶媒がトルエン0.08重量%、アセトニトリル3.7重量%であった。さらに、同一条件でこの結晶を2時間乾燥したが、残存溶媒の含有量に変化はなかった。このことから、晶析工程により得られた結晶は、アセトニトリル包接体であることが明らかとなった。このアセトニトリル包接体について示差熱・熱重量分析(DTG)を行った結果、包接するアセトニトリルを除去する熱量は約94J/gであることが確認された。
アセトニトリル包接体を、温度100℃、圧力1.2kPaの環境で14時間乾燥させることにより、包接体ではない結晶156.6gが得られた。
(分析結果)
乾燥工程により得られた結晶は、高速液体クロマトグラフィー分析による純度が98.8%であり、HS-GC分析により残存溶媒がトルエン0.08重量%、アセトニトリル0.003重量%であること、さらに、示差走査熱量分析による吸熱ピークトップ温度は160℃、YI値(黄色度)は、0.47、ゆるみ嵩密度0.4g/cmであることが確認できた。また、得られた結晶のメディアン径(D50)は34.0μm、モード径は39.6μmであった。
上記分析を行った、包接体ではない結晶の示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図を図3に示す。また、上記付着溶媒を除去して得られた結晶の示差熱・熱重量分析(DTG)曲線を示す図を図4に示し、粉末X線の主なピーク(5%を超える相対積分強度を有するもの)を表1に列挙する。
これらの分析により、得られた結晶体は、示差走査熱量分析による吸熱ピークを158℃以上161℃未満の温度範囲に少なくとも1つ有する結晶体であり、さらには、包接体ではない結晶体であることが明らかとなった。
<比較例1>
上記特許文献4の実施例1に記載された製造方法について、追試験を行った。
詳しくは、撹拌機、冷却管、および温度計を備えた1リットル4つ口フラスコ内を窒素置換し、9,9’-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン75g(0.149mol)、炭酸カリウム1.7g、エチレンカーボネート30.05g(0.341mol)、トルエン112.5g、およびメチルトリグライム7.5gを仕込み、110℃まで昇温し、同温度で16時間撹拌後、高速液体クロマトグラフィー(以下HPLC)測定にて原料が消失していることを確認した。
その後、水3.07g添加し、100℃で5時間加水分解を行った。
得られた反応液を90℃まで冷却した後、水113gを加え、80~85℃で30分撹拌し、静置後、水層を分離した。同じ水洗操作を3回繰り返した後、得られた有機溶媒層から溶媒を除去し、濃縮物を得た。得られた濃縮物にトルエン92g、メタノール348gを添加し晶析溶液を得た。得られた晶析溶液を65℃まで昇温し、同温度で1時間撹拌して結晶を完溶させた後、1分あたり0.1℃で冷却することにより50℃で結晶を析出させ、同温度で2時間撹拌した。更に22℃まで冷却した後、濾過し結晶を得た。
得られた結晶を1.3kPaの減圧下、55℃で3時間乾燥した後、結晶の一部をHS-GCで分析した。その結果、晶析工程で用いた溶媒であるメタノールを3.5重量%含有していることが確認された。更に同条件で3時間乾燥を継続し分析しても、メタノールの含有量が4重量%と減少しなかった。この結晶から、包接した溶媒を除去するのに必要な熱量をDTGで測定した結果、約875J/gであった。この結晶を内圧1.3kPaの減圧下、内温を90℃に昇温し、更に3時間乾燥した。メタノールの含有量が0.02重量%となった為、乾燥終了とした。
得られた結晶の示差熱・熱重量分析(DTG)曲線を示す図を図5に、各分析値を下記に示す。
得られた結晶の重さ:77.9g(収率:88%)
HPLC純度:98.6%
トルエン含量:0.01重量%
メタノール含量:0.02重量%
比較例2の結果より、メタノール包接体からメタノールを除去するためには、概略900J/g程度のエネルギーが必要であることが確認された。
また、得られた結晶のメディアン径(D50)は18.5μm、モード径は21.2μmであった。
上記特許文献5の比較例1、実施例8、12、17、19、20に記載された製造方法について、追試験を行った。
<参考例1>
(特許文献5の比較例1)
撹拌器、加熱冷却器、および温度計を備えた1リットル4つ口フラスコ内を窒素置換し、9,9’-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン60g(0.119mol)、炭酸カリウム1.2g、エチレンカーボネート24.15g(0.274mol)、およびトルエン60gを仕込み、110℃で34時間撹拌した。次いで水4.86g添加し、100℃で11時間反応(加水分解)を行った。得られた反応液を85℃まで冷却した後、トルエン30gと水102gを加え、80~85℃で30分撹拌し、静置後、水層を分離した。同じ水洗操作を3回繰り返した後、得られた有機溶媒層からディーンスターク装置を用いて還流下で水を除去し、冷却により75℃で結晶が析出し、同温度で2時間撹拌した。更に26℃まで冷却した後、濾過し結晶を得た。得られた結晶を、12時間、内圧1.1kPaの減圧下、110℃~112℃で乾燥した。
得られた結晶を上述した方法により分析した結果、トルエン包接体であることを確認した。
得られた結晶の分析結果を下記に示す。
得られた結晶の重さ:68.5g
HPLC純度:97.5%
トルエン(ゲスト分子)含量:4.46重量%
<比較例2>
(特許文献5の実施例8:イソブチルケトン)
上記参考例2で得られたトルエン包接体の結晶5gとジイソブチルケトン25gを撹拌子の入った試験管に入れ、100℃で5時間撹拌し、そのまま冷却せずに濾過した。その後、窒素気流中で2時間乾燥した。
得られた結晶の示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図を図6に、各分析値を下記に示す。
HPLC純度:98.40%
トルエン(ゲスト分子)含量:検出限界以下(HS-GC)
融点:192℃
ゆるみ嵩密度:0.31g/cm
なお、上記ゆるみ嵩密度は、試験管での簡易試験によるデータである。
比較例3の結果より、上記特許文献5の実施例8により得られる結晶は、融点が192℃と高融点結晶であることが、さらに、ゆるみ嵩密度は0.31g/cmと低いことも確認された。
<比較例3>(特許文献5の実施例12:ヘプタン)
上記参考例2で得られたトルエン包接体の結晶5gとへプタン25gを撹拌子の入った試験管に入れ、100℃で2時間撹拌し、そのまま冷却せずに濾過した。その後、窒素気流中で2時間乾燥した。
得られた結晶の示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図を図7に、各分析値を下記に示す。
HPLC純度:98.74%
トルエン(ゲスト分子)含量:検出限界以下(HS-GC)
融点:191℃
ゆるみ嵩密度:0.38g/cm
なお、上記ゆるみ嵩密度は、試験管での簡易試験によるデータである。
比較例4の結果より、上記特許文献5の実施例12により得られる結晶は、融点が191℃と高融点結晶であることが確認された。
<比較例4>
(特許文献5の実施例17:ジブチルエーテル)
上記参考例2で得られたトルエン包接体の結晶5gとジブチルエーテル25gを撹拌子の入った試験管に入れ、100℃で5時間撹拌し、そのまま冷却せずに濾過した。その後、窒素気流中で2時間乾燥した。
得られた結晶の示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図を図8に、各分析値を下記に示す。
HPLC純度:97.88%
トルエン(ゲスト分子)含量:検出限界以下(HS-GC)
融点:192℃
ゆるみ嵩密度:0.35g/cm
なお、上記ゆるみ嵩密度は、試験管での簡易試験によるデータである。
比較例5の結果より、上記特許文献5の実施例17により得られる結晶は、融点が192℃と高融点結晶であることが確認された。
<比較例5>
温度計、撹拌機、冷却管を備えた500ミリリットル4つ口フラスコを窒素置換し、そこに、上記「合成例」で得られたトルエン包接体14.1g(YI値0.80)とメチルイソブチルケトン60gとへプタン24gを仕込み、100℃まで昇温し、30分間撹拌して結晶をすべて溶解させた。得られた溶液を1分間あたり0.8℃の速度で冷却することにより65℃で結晶が析出した。同温度で2時間撹拌後、20℃ まで冷却し、ろ過を行った。得られた結晶を1.3kPaの減圧下、90℃で3時間乾燥し、下記品質の結晶10.6gを得た。
HPLC純度:99.3%
残存トルエン:112ppm
残存メチルイソブチルケトン:1680ppm
残存へプタン:321ppm
YI値:1.26(10%ジオキサン溶液)
DSC融解吸熱最大温度:171℃
上記特許文献6の実施例1、2に記載された製造方法について、追試験を行った。
<比較例6>
(特許文献6の実施例1)
温度計、撹拌機、冷却管を備えた1リットル4つ口フラスコ内を窒素置換し、9-フルオレノン18.0g(0.1モル)、2-[(2-フェニル)フェノキシ]エタノール53.5g(0.25モル)、3-メルカプトプロピオン酸1g、トルエン60mLを仕込み、65℃で溶解させてから、98%硫酸25mLを1時間かけて滴下した。その後65℃で6時間撹拌して反応させた。反応終了後、水酸化ナトリウム溶液を加えて中和し、さらに、トルエン100g、水50g加えて撹拌し、静置後、水層を除去した。得られた有機層に水60gを加えて撹拌して静置後、水層を除去する操作を4回実施した。
洗浄した有機層を10℃/時間で冷却して晶析し、25℃で15時間撹拌後、濾過して9,9-ビス[3-フェニル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンの粗生成物を得た。
この粗生成物20.2gをトルエン60.6gで溶解後、冷却して晶析を行い、25℃で濾過し、9,9-ビス[3-フェニル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンの結晶を得た。その後、80℃、1.3kPaで6時間乾燥して結晶11gを得た。(収率19.0%)
結晶をHPLCで分析した結果、その純度は92.8%であった。
得られた結晶の示差熱・熱重量分析(DTG)曲線を示す図を図9に示す。
図9より、融点以上の温度において結晶重量が減少していることから、上記特許文献6の実施例1により得られる結晶は、トルエン包接体であることが明らかとなった。
<比較例7>
(特許文献6の実施例2)
上記比較例8の結晶10gをエタノール60gで溶解後、冷却して晶析を行い、25℃で濾過し、結晶を得た。25℃、1.3kPaで3時間乾燥した後、HS-GCで分析した結果、エタノールの含有量が6.0重量%であった。この結晶について示差熱・熱重量分析(DTG)を行った結果、包接するエタノールを除去する熱量は約147J/gであることが確認された。この結晶の示差熱・熱重量分析(DTG)曲線を示す図を図10に示す。
さらに、この結晶を80℃、1.3kPaで6時間乾燥した結果、エタノールの含有量が0.14重量%の結晶6.9gが得られた。(収率69%)
得られた結晶の示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図を図11に、各分析値を下記に示す。
HPLC純度:94.5%
エタノール含量:0.14重量%(HS-GC)
トルエン含量:検出限界以下(HS-GC)
融点:132℃
ゆるみ嵩密度:0.33g/cm
なお、上記ゆるみ嵩密度は、試験管での簡易試験によるデータである。また、HPLC純度が特許文献6に記載された数値より低いのは、実施例6には、硫酸滴下温度等の詳細が説明されていないので、反応条件が完全に一致していないことも理由として考えられる。
また、得られた結晶のメディアン径(D50)は20.7μm、モード径は26.1μmであった。得られた結晶は、本発明の結晶混合体に比べて粒子径が非常に細かく、また、上記「比較例2」のメタノール包接体から得られた結晶に比べて流動性が向上した様子は確認されなかった。
比較例9の結果より、エタノール包接体からエタノールを除去するためには、概略150J/g程度のエネルギーが必要であることが、さらに、包接体からエタノールを除去した結晶の融点は132℃であることが確認された。

Claims (4)

  1. 示差走査熱量分析による吸熱ピークを158℃以上161℃未満の温度範囲に少なくとも1つ有し、残存する有機溶媒の含量が0.1重量%以下であり、かつ、ゆるみ嵩密度が0.35~0.45g/cm の範囲であることを特徴とする、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンの結晶体。
  2. 包接体ではないことを特徴とする、請求項1に記載の結晶体。
  3. アセトニトリルを用いて晶析する工程を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の結晶体の製造方法。
  4. さらに、晶析により得られた結晶を45℃以上であって融点より低い温度条件下において乾燥する工程を含むことを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
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