JP7170374B2 - フルオレン骨格を有するビスフェノール化合物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光学レンズ、光学フィルム等の光学部材を構成する樹脂(光学樹脂)の原料モノマーとして有用なフルオレン骨格を有するビスフェノール化合物の新規な製造方法に関する。
フルオレン骨格を有するビスフェノール化合物を原料モノマーとするポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタン、エポキシなどの樹脂は、光学特性や耐熱性等に優れることから、近年、光学レンズや光学フィルム等の光学部材を構成する樹脂(光学樹脂)として注目されている。特に、以下式(1):
Figure 0007170374000001
で表される化合物は、該化合物及びその誘導体から製造される樹脂が、光学特性(屈折率等)、耐熱性、耐水性、耐薬品性、電気特性、機械特性、溶解性等の諸特性に優れることから、前記光学樹脂の原料モノマーとして注目されている(例えば特許文献1、2)。
特開2002-47227号公報 特開2003-221352号公報
上記特許文献1及び2は、上記式(1)で表される化合物を含むフルオレン骨格を有するビスフェノール化合物の製造方法に係る発明であり、着色度合いが少なく透明性に優れた該化合物を提供することを目的とする発明であるが、本願発明者らがこれら文献の実施例に記載されている上記式(1)で表される化合物の製造方法を追試したところ、反応後の後処理(水洗工程)で結晶が析出し、後処理を継続できないことが判明した。
本発明の目的は、着色が低減された上記式(1)で表される化合物の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、上記式(1)で表される化合物を特定の溶媒を用いて晶析することにより、前記課題が解決可能であることを見出した。具体的には以下の発明を含む。
[1]
以下式(1):
Figure 0007170374000002
で表される化合物を、分岐を有してもよい炭素数5~9の脂肪族ケトン類を含む溶媒を用いて晶析する工程を含む、上記式(1)で表される化合物の製造方法。
[2]
脂肪族ケトン類が、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-オクタノン、3-オクタノン、4-オクタノン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-メチルシクロヘキサノン、3-メチルシクロヘキサノン及び4-メチルシクロヘキサノンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]に記載の製造方法。
[3]
脂肪族ケトン類の使用量が、以下式(1):
Figure 0007170374000003
で表される化合物1重量部に対し4~10重量部である、[1]又は[2]に記載の製造方法。
本発明によれば、着色が低減された上記式(1)で表される化合物の製造方法が提供可能となる。特に、反応終了後の反応液に特定の溶媒を添加し、晶析するだけで、着色が大幅に低減された上記式(1)で表される化合物を収率良く得ることが可能となる。
本発明に使用可能な分岐を有してもよい炭素数5~9の脂肪族ケトン類としては、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-オクタノン、3-オクタノン、4-オクタノン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-メチルシクロヘキサノン、3-メチルヘキサノン又は4-シクロヘキサノン等が例示され、これら脂肪族ケトン類の中でも、経済性の観点から2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、シクロヘキサノン、2-メチルシクロヘキサノン、3-メチルシクロヘキサノン又は4-メチルシクロヘキサノンが好ましく、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、メチルイソブチルケトン又はメチルイソアミルケトンがより好ましい。これら脂肪族ケトン類は単独で使用してもよいし、必要に応じ2種以上併用してもよい。また、必要に応じ分岐を有してもよい炭素数炭素数5~9の脂肪族ケトン類以外の有機溶媒(以下、他の有機溶媒と称することがある)を併用してもよい。なお、他の有機溶媒として炭素数3または4の脂肪族ケトン類を併用してもよいが、分岐を有してもよい炭素数5~9の脂肪族ケトン類の代わりに炭素数3または4の脂肪族ケトン類を用いた場合、着色が低減された上記式(1)で表される化合物が得られない。
分岐を有してもよい炭素数5~9の脂肪族ケトン類の使用量は、上記式(1)で表される化合物1重量部に対し、通常4~10重量部、経済性の観点から、好ましくは4~8重量部である。他の有機溶媒を併用する場合、かかる有機溶媒の使用量は、分岐を有してもよい炭素数5~9の脂肪族ケトン類1重量部に対し、通常0.01~2重量部、好ましくは0.1~1重量部である。
本発明の具体的実施方法としては、上記式(1)で表される化合物の結晶に分岐を有してもよい炭素数5~9の脂肪族ケトン類を添加し、該ケトン類の沸点以下の温度で上記式(1)で表される化合物を溶解させ晶析溶液を得、得られた晶析溶液を冷却して上記式(1)で表される化合物の結晶を析出させた後、得られた結晶をろ別する方法、又は、無機酸又は有機酸存在下、フルオレノンとo-フェニルフェノールとを反応させ上記式(1)で表される化合物を含む反応液を得、該反応液に、分岐を有してもよい炭素数5~9の脂肪族ケトン類を添加し、該ケトン類の沸点以下の温度で上記式(1)で表される化合物を溶解させて晶析溶液を得、得られた晶析溶液を冷却して上記式(1)で表される化合物結晶を析出させた後、得られた結晶をろ別する方法が例示される。これら具体的実施方法の中でも、上記式(1)で表される化合物を含む反応液に分岐を有してもよい炭素数5~9の脂肪族ケトン類を添加する方が効率よく上記式(1)で表される化合物を得ることが可能となることから好ましい。また、反応液を使用する場合、中和、水洗、分液、濃縮等を行い、反応に用いた酸等を除去した後に本発明を実施してもよい。
上記式(1)で表される化合物の結晶をろ別する温度は、上記式(1)で表される化合物の結晶が析出した温度より、通常5℃以上低い温度、好ましくは10℃以上低い温度である。かかる温度とすることにより、より収率よく上記式(1)で表される化合物を得ることができる。
ろ別した結晶は更に、分岐を有してもよい炭素数5~9の脂肪族ケトン類等を用いて洗浄してもよく、必要に応じ乾燥を行ってもよい。また、更に吸着、水蒸気蒸留、再結晶などの通常の精製操作を行ってもよい。
以下、実施例等を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、例中、各種測定は下記の方法で実施した。また、以下実施例及び比較例に記載した各成分の転化率及び純度は下記条件で測定したHPLCの面積百分率値である。
(1)HPLC分析
装置 :島津製作所製 LC-2010A、
カラム:SUMIPAX ODS A-211(5μm、4.6mmφ×250mm)、
移動相:純水/アセトニトリル(アセトニトリル30%→100%)、
流量 :1.0ml/min、カラム温度:40℃、検出波長:UV 254nm。
(2)YI値
上記式(1)で表されるアルコール化合物の結晶1gを10mlメスフラスコに量り取り、純度99重量%以上のジグライムで定溶後溶解させ、以下の条件で得られたジグライム溶液のYI値(黄色度)を測定した。
装置 :色差計(日本電色工業社製,SE6000)、
使用セル:光路長10mm 石英セル。
なお、測定に使用するジグライム自身の着色が測定値に影響を与えないよう、事前にジグライムの色相を測定して補正した。(ブランク測定)。前記ブランク測定を実施したうえで、サンプルを測定した値を本発明におけるYI値とする。
<製造例1>
攪拌器、加熱冷却器、および温度計を備えたガラス製反応器に、9-フルオレノン160g(0.89mol)、98%硫酸262g、ドデカンチオール8.8g、o-フェニルフェノール907gを加え、80℃まで昇温し、同温度で5時間撹拌後、HPLCにて9-フルオレノンの転化率が99%であることを確認した。得られた上記式(1)で表される化合物を含む反応液は1325gであった。
<実施例1>
製造例1で得られた反応液167gに、水192g、水酸化ナトリウム26gを添加し室温で1時間撹拌した後、メチルイソブチルケトン280gを添加し、85℃まで昇温し同温度で1時間撹拌した後、0.2℃/分で冷却して22℃とした。22℃で結晶をろ別し、得られた結晶を内圧2kPaの減圧下、内温90℃で8時間乾燥させ、上記式(1)で表される化合物の結晶を得た。得られた結晶の重さは42g(収率75%)、純度は98.3%、YI値は1.0であった。
<実施例2>
メチルイソブチルケトンの使用量を280gから400gに変更する以外は実施例1と同様に行い、上記式(1)で表される化合物の結晶を得た。得られた結晶の重さは38g(収率68%)、純度は98.4%、YI値は0.9であった。
<実施例3>
製造例1で得られた反応液167gに、水192g、水酸化ナトリウム26gを添加し、室温で1時間撹拌した後、メチルイソブチルケトン370gを添加し、85℃でまで昇温し、同温度で1時間撹拌し、静置後、水層を分離した。得られた有機層に水96gを加え、80~85℃で30分撹拌し、静置後、水層を分離した。同じ操作を3回繰り返した後、得られた有機層を濃縮することでメチルイソブチルケトン及びo-フェニルフェノールを除去し、濃縮物を得た。得られた濃縮物にメチルイソブチルケトン400gを添加し、115℃まで昇温し、同温度で1時間撹拌した後、0.2℃/分で冷却して25℃とした。25℃で結晶をろ別し、得られた結晶を内圧2kPaの減圧下、内温90℃で8時間乾燥させ、上記式(1)で表される化合物の結晶を得た。得られた結晶の重さは45g(収率80%)、純度は99.6%、YI値は0.5であった。
<実施例4>
メチルイソブチルケトンを2-ヘプタノンに変更する以外は実施例1と同様に行い、上記式(1)で表される化合物の結晶を得た。得られた結晶の重さは40g(収率71%)、純度は98.2%、YI値は1.1であった。
<比較例1>
メチルイソブチルケトンをトルエンに変更する以外は実施例1と同様に行い、上記式(1)で表される化合物の結晶を得た。得られた結晶の重さは47g(収率85%)、純度は96.2%、YI値は2.4であった。
<比較例2>
メチルイソブチルケトンをシクロペンチルメチルエーテルに変更する以外は実施例2と同様に行い、上記式(1)で表される化合物の結晶を得た。得られた結晶の重さは23g(収率42%)、純度は98.5%、YI値は0.8であった。
<製造例2>
攪拌器、加熱冷却器、および温度計を備えたガラス製反応器に、9-フルオレノン160g(0.89mol)、35%塩酸902g、ドデカンチオール8.8g、o-フェニルフェノール907gを加え、80℃まで昇温し、同温度で26時間撹拌後、HPLCにて9-フルオレノンの転化率が99%であることを確認した。得られた上記式(1)で表される化合物を含む反応液は1950gであった。
<実施例5>
製造例2で得られた反応液247gに水317g、水酸化ナトリウム43gを添加し室温で1時間撹拌した後、メチルイソブチルケトン280gを添加し、85℃まで昇温し、同温度で1時間撹拌した後、0.2℃/分で冷却し21℃とした。21℃で結晶をろ別し、得られた結晶を内圧2kPaの減圧下、内温90℃で8時間乾燥させ、上記式(1)で表される化合物の結晶を得た。得られた結晶の重さは39g(収率70%)、純度は97.8%、YI値は1.2であった。
<比較例3>
メチルイソブチルケトンをトルエンに変更する以外は実施例5と同様に行い、上記式(1)で表される化合物の結晶を得た。得られた結晶の重さは44g(収率79%)、純度は95.7%、YI値は2.8であった。
<参考例1>
スケールを1/3.5とする以外は特開2003-221352号実施例3に記載される方法と同様の方法により9-フルオレノンとo-フェニルフェノールとを反応させ上記式(1)で表される化合物を含む反応液を得た。得られた反応液にトルエン86g、水23gを加えたが結晶が溶解せず、結晶を溶解させるため還流温度(内温86℃)まで昇温し10時間撹拌を継続したが、結晶は完溶せず、分液操作を実施することができなかった。

Claims (3)

  1. 以下式(1):
    Figure 0007170374000004
    で表される化合物を、分岐を有してもよい炭素数5~9の脂肪族ケトン類を含む溶媒を用いて晶析する工程を含む、上記式(1)で表される化合物の製造方法。
  2. 脂肪族ケトン類が、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-オクタノン、3-オクタノン、4-オクタノン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-メチルシクロヘキサノン、3-メチルシクロヘキサノン及び4-メチルシクロヘキサノンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 脂肪族ケトン類の使用量が、以下式(1):
    Figure 0007170374000005
    で表される化合物1重量部に対し4~10重量部である、請求項1又は2に記載の製造方法。
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