JP2018041108A - ポリビニルアルコール系重合体フィルムおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】光透過率が高い場合やより強度の高いバックライトを用いた場合であっても色斑が低減された偏光フィルム等の光学フィルムを製造することのできるPVAフィルムを提供すること。【解決手段】フィルムの面内における配向軸をフィルムの幅方向に20mmピッチで測定した際に、隣接する2つの測定位置における配向軸同士がなす角度(但し0〜90°の範囲内にある)が、全ての隣接する2つの測定位置において2.3°以下であるPVAフィルムであって、前記配向軸の測定位置のうちの少なくとも1つにおける配向軸とポリビニルアルコール系重合体フィルムの長さ方向とがなす角度(但し0〜90°の範囲内にある)が45〜90°である、PVAフィルム。当該PVAフィルムにおいて、全ての隣接する2つの測定位置における前記角度の平均値は0.6°以下であることが好ましい。【選択図】なし
Description
本発明は、ポリビニルアルコール系重合体フィルム(以下、「ポリビニルアルコール系重合体」を「PVA」と略記することがある)とその製造方法、当該PVAフィルムから製造した偏光フィルム等の光学フィルム、および、当該光学フィルムの製造方法に関する。
光の透過および遮蔽機能を有する偏光板は、光のスイッチング機能を有する液晶などとともに液晶表示装置(LCD)の重要な構成要素である。この液晶表示装置の適用分野も、開発初期の頃の電卓および腕時計などの小型機器から、ノートパソコン、液晶モニター、液晶カラープロジェクター、液晶テレビ、車載用ナビゲーションシステム、携帯電話、屋内外で用いられる計測機器などの広い範囲に拡がっており、特に液晶モニターや液晶テレビなどでは大画面化が進んでいる。
偏光板は、通常、ロール状に巻かれた長尺のPVAフィルムを巻き出して一軸延伸した後にヨウ素や二色性染料を用いて染色する方法、巻き出されたPVAフィルムを染色して一軸延伸した後にホウ素化合物で固定処理を行う方法、前記いずれかの方法において染色と同時に固定処理を行う方法などによって偏光フィルムを製造し、それにより得られた偏光フィルムの片面または両面に三酢酸セルロースフィルムや酢酸・酪酸セルロースフィルム等の保護膜を貼り合わせることによって工業的に製造される。
これまで、偏光フィルムの光学的性能の向上、広幅の偏光フィルムの取得、偏光フィルムの生産性の向上などに関する様々な技術が知られている。例えば、光軸の乱れの少ない偏光フィルムを製造できるものとして、複屈折率楕円体の長軸のフィルムの長さ方向に対する傾き角度の絶対値の最大値および傾き角度の局所的変化率がそれぞれ特定の範囲にあるPVAフィルムが知られている(特許文献1参照)。また、偏光フィルムの色斑やPVAフィルムの延伸時における皺の発生を防止できるものとして、フィルムの幅方向に1cm離れた2点間のレタデーション差が特定の範囲にあるPVAフィルムが知られている(特許文献2参照)。さらに、大面積においても均一な光学性能を有する偏光フィルムを製造できるものとして、フィルムの幅方向の1mm当たりの厚み変動が特定の範囲にある特定のPVAフィルムが知られている(特許文献3参照)。
また、PVAフィルムの膨潤時における皺の発生や偏光フィルムの長手方向に存在するスジ状の染色斑を低減できるものとして、フィルムの膜幅方向全体にわたる光学軸の傾きがフィルムの長手方向に対して45〜135°である特定のPVAフィルム(特許文献4参照)、高い偏光性能を有する偏光フィルムを製造できるものとして、流れ方向と光軸とがなす角度が70〜110°の範囲にあり、幅方向の中央部における厚さ方向のレタデーションが15〜90nmである特定のPVAフィルム(特許文献5参照)、および、一軸延伸工程におけるネックインが低減されてより広幅な偏光フィルムを製造できるとともに高い偏光性能を示す偏光フィルムが得られるものとして、偏光フィルムを製造する際に一軸延伸されるべき方向と光軸とがなす角度が0〜20°の範囲にあり、レタデーションが50〜150nmの範囲にある特定のPVAフィルム(特許文献6参照)がそれぞれ知られている。
さらに、均一な延伸が可能で延伸したときに微細なクラックやボイドの発生が抑制された延伸フィルムを与えるものとして、特定のスキン層/コア層/スキン層からなるPVAフィルムが知られている(特許文献7参照)。特許文献7には、PVAを含む揮発分率50〜90質量%の製膜原液を第1乾燥ロールで加熱すると同時に第1乾燥ロールに接触していないPVA膜面に所定の条件下で熱風を吹き付け、揮発分率が15〜30質量%になった時点でPVA膜を第1乾燥ロールから剥離して第2乾燥ロールに接触させて乾燥し、その際に、第1乾燥ロールの周速(S1)と第2乾燥ロールの周速(S2)の比(S2/S1)を1.000〜1.100にするPVAフィルムの製造方法が記載されている。
ところで、従来はLCDの画面輝度の向上を目的として主にバックライトの強度向上が図られてきたため、偏光板や偏光フィルムに対しては強光下においても色斑が少ないことが重要であった。ところが近年では消費電力の低減がより強く求められてきていることから、LCDにおいて、バックライトの強度が低い場合であっても高い画面輝度を維持できることが重要となってきた。それを達成するための手段としては、偏光フィルムの厚みをより薄くしたり染色の程度を弱めたりするなどして偏光フィルムひいては偏光板における光透過率を向上させることが考えられる。しかしながら、従来のPVAフィルムを用いて光透過率が向上した偏光板を製造すると、光透過率が低い偏光板において従来問題とされ改善が試みられてきた色斑とは異なる種類の色斑が目立ってきて問題となることが分かった。またこの色斑は、光透過率が従来程度の偏光板であっても、より強度の高いバックライトを用いた場合にも同じように目立ってくることも分かった。
そこで本発明は、光透過率が高い場合やより強度の高いバックライトを用いた場合であっても色斑が低減された偏光フィルム等の光学フィルムを製造することのできるPVAフィルム、およびそのようなPVAフィルムを生産性よく円滑に連続して製造することのできるPVAフィルムの製造方法を提供することを目的とする。また本発明は、上記PVAフィルムを用いて製造した偏光フィルム等の光学フィルム、および当該光学フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成すべく本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、PVAフィルムの面内における配向軸をフィルムの幅方向に20mmピッチで測定した際に隣接する2つの測定位置における配向軸同士がなす角度が全ての隣接する2つの測定位置において特定数値以下にある従来にないPVAフィルムを原反として用いると、光透過率が高い場合やより強度の高いバックライトを用いた場合であっても色斑が低減された偏光フィルムが得られることを見出した。また、全ての隣接する2つの測定位置における当該角度の平均値が小さいPVAフィルムを用いた場合には、上記色斑がより低減されることを見出した。
そして本発明者らは、PVAを含む製膜原液を3個以上の乾燥ロールを備える製膜装置の第1乾燥ロール上に吐出した後、当該3個以上の乾燥ロールで順次乾燥して製膜し、その際に、第1乾燥ロールより剥離するときのPVA膜の揮発分率を20〜40質量%にし、第1乾燥ロールの周速に対する第2乾燥ロールの周速の比を特定の数値範囲にし、第2乾燥ロールまたはそれより下流側の乾燥ロールのうちPVA膜の揮発分率が20質量%になったときの乾燥ロール(第x乾燥ロール)からPVA膜の揮発分率が10質量%になったときの乾燥ロール(第y乾燥ロール)までの間において隣接する2つの乾燥ロール間の周速の比のそれぞれを特定の数値範囲にすることによって、色斑が低減された偏光フィルムを与えることのできる前記PVAフィルムを生産性よく円滑に連続して製造できることを見出した。
本発明者らは上記の知見に基づいてさらに検討を重ねて本発明を完成させた。すなわち、本発明は、
[1]フィルムの面内における配向軸をフィルムの幅方向に20mmピッチで測定した際に、隣接する2つの測定位置における配向軸同士がなす角度(但し0〜90°の範囲内にある)が、全ての隣接する2つの測定位置において2.3°以下であるPVAフィルムであって、前記配向軸の測定位置のうちの少なくとも1つにおける配向軸とポリビニルアルコール系重合体フィルムの長さ方向とがなす角度(但し0〜90°の範囲内にある)が45〜90°である、PVAフィルム、
[2]全ての隣接する2つの測定位置における前記角度の平均値が0.6°以下である、上記[1]のPVAフィルム、
[3]前記配向軸の測定位置におけるレタデーション値が、全ての測定位置において5〜100nmである、上記[1]または[2]のPVAフィルム、
[4]幅が2m以上である、上記[1]〜[3]のいずれか1つのPVAフィルム、
[5]上記[1]〜[4]のいずれか1つのPVAフィルムから製造した光学フィルム、
[6]偏光フィルムである、上記[5]の光学フィルム、
に関する。
[1]フィルムの面内における配向軸をフィルムの幅方向に20mmピッチで測定した際に、隣接する2つの測定位置における配向軸同士がなす角度(但し0〜90°の範囲内にある)が、全ての隣接する2つの測定位置において2.3°以下であるPVAフィルムであって、前記配向軸の測定位置のうちの少なくとも1つにおける配向軸とポリビニルアルコール系重合体フィルムの長さ方向とがなす角度(但し0〜90°の範囲内にある)が45〜90°である、PVAフィルム、
[2]全ての隣接する2つの測定位置における前記角度の平均値が0.6°以下である、上記[1]のPVAフィルム、
[3]前記配向軸の測定位置におけるレタデーション値が、全ての測定位置において5〜100nmである、上記[1]または[2]のPVAフィルム、
[4]幅が2m以上である、上記[1]〜[3]のいずれか1つのPVAフィルム、
[5]上記[1]〜[4]のいずれか1つのPVAフィルムから製造した光学フィルム、
[6]偏光フィルムである、上記[5]の光学フィルム、
に関する。
本発明のPVAフィルムを原反として用いれば、光透過率が高い場合やより強度の高いバックライトを用いた場合であっても色斑が低減された偏光フィルム等の光学フィルムを製造することができる。また、本発明のPVAフィルムの製造方法によって、上記した優れた特性を有する本発明のPVAフィルムを生産性よく円滑に連続して製造することができる。さらに本発明の光学フィルムは従来問題とされた色斑とは異なる種類の色斑が低減されている。
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明のPVAフィルムは、フィルムの面内における配向軸をフィルムの幅方向に20mmピッチで測定した際に、隣接する2つの測定位置における配向軸同士がなす角度(但し0〜90°の範囲内にある)が、全ての隣接する2つの測定位置において2.3°以下である。すなわち、全ての隣接する2つの測定位置における前記角度の最大値をΔZmaxとすると、本発明のPVAフィルムは当該ΔZmaxが2.3°以下である。従来のPVAフィルムはΔZmaxが高く、それを用いて製造した偏光フィルムひいては偏光板では、特に光透過率が高い場合やより強度の高いバックライトを用いた場合に従来問題とされ改善が試みられてきた色斑とは異なる種類の色斑が目立ってくるという問題があった。これに対して本発明のPVAフィルムはΔZmaxが2.3°以下であり、従来のPVAフィルムと異なっている。このような本発明のPVAフィルムを原反として用いれば、光透過率が高い場合やより強度の高いバックライトを用いた場合であっても色斑が低減された偏光フィルム等の光学フィルムを製造することができる。なお、特許文献1には、複屈折率楕円体の長軸のフィルムの長さ方向に対する傾き角度の絶対値の最大値が5度以下であり、かつ傾き角度の局所的変化率(任意の5cm幅の範囲内における光軸の傾き角度)が1度以下であるPVAフィルムが記載されているが、たとえ特許文献1のように傾き角度の局所的変化率を1度以下にしたとしても、特許文献1によっては、フィルムの面内における配向軸をフィルムの幅方向に20mmピッチで測定した際における全ての隣接する2つの測定位置における配向軸同士がなす角度の最大値(ΔZmax)が上記範囲にあるPVAフィルムを得ることができず、少なくともこの点において、本発明のPVAフィルムは、特許文献1に記載されたPVAフィルムと異なっている。
本発明のPVAフィルムは、フィルムの面内における配向軸をフィルムの幅方向に20mmピッチで測定した際に、隣接する2つの測定位置における配向軸同士がなす角度(但し0〜90°の範囲内にある)が、全ての隣接する2つの測定位置において2.3°以下である。すなわち、全ての隣接する2つの測定位置における前記角度の最大値をΔZmaxとすると、本発明のPVAフィルムは当該ΔZmaxが2.3°以下である。従来のPVAフィルムはΔZmaxが高く、それを用いて製造した偏光フィルムひいては偏光板では、特に光透過率が高い場合やより強度の高いバックライトを用いた場合に従来問題とされ改善が試みられてきた色斑とは異なる種類の色斑が目立ってくるという問題があった。これに対して本発明のPVAフィルムはΔZmaxが2.3°以下であり、従来のPVAフィルムと異なっている。このような本発明のPVAフィルムを原反として用いれば、光透過率が高い場合やより強度の高いバックライトを用いた場合であっても色斑が低減された偏光フィルム等の光学フィルムを製造することができる。なお、特許文献1には、複屈折率楕円体の長軸のフィルムの長さ方向に対する傾き角度の絶対値の最大値が5度以下であり、かつ傾き角度の局所的変化率(任意の5cm幅の範囲内における光軸の傾き角度)が1度以下であるPVAフィルムが記載されているが、たとえ特許文献1のように傾き角度の局所的変化率を1度以下にしたとしても、特許文献1によっては、フィルムの面内における配向軸をフィルムの幅方向に20mmピッチで測定した際における全ての隣接する2つの測定位置における配向軸同士がなす角度の最大値(ΔZmax)が上記範囲にあるPVAフィルムを得ることができず、少なくともこの点において、本発明のPVAフィルムは、特許文献1に記載されたPVAフィルムと異なっている。
ΔZmaxが2.3°を超えると、得られる光学フィルムにおいて色斑が問題となる。光学フィルムにおける色斑の観点からΔZmaxは2.2°以下であることが好ましく、2.0°以下であることがより好ましく、1.9°以下であることがさらに好ましく、1.8°以下であることが特に好ましい。なお、ΔZmaxがあまりに小さいPVAフィルムはその製造において生産性が低下する場合があることから、ΔZmaxは、例えば0.3°以上である。
フィルムの面内における配向軸とはフィルムの面内における遅相軸を意味し、配向軸の測定位置におけるPVA分子の配向の状態などによって定まる。当該配向軸は複屈折測定装置やセルギャップ測定装置などを用いてフィルム面に対して垂直な方向(フィルムの厚み方向)に進行する光(例えば、波長590nmの光)に基づき測定することができ、具体的には、実施例において後述する方法により測定することができる。
本発明では、フィルムの幅方向に20mmピッチとなるように定めた複数の位置を上記配向軸の測定位置とする。ここでフィルムの幅方向とは、フィルムの長さ方向と垂直なフィルムの面内における方向(TD)である。長尺のPVAフィルムを原反として用いて偏光フィルム等の光学フィルムを製造する場合には、通常、長尺のPVAフィルムの長さ方向(機械流れ方向;MD)に一軸延伸される。そのため、通常、フィルムの長さ方向は偏光フィルム等の光学フィルムを製造する際にPVAフィルムが一軸延伸されるべき方向と一致し、この長さ方向と垂直なフィルムの面内における方向が幅方向となる。なお長尺でないPVAフィルムの場合には、偏光フィルム等の光学フィルムを製造する際に一軸延伸されるべき方向をフィルムの長さ方向とし、これと垂直なフィルムの面内における方向を幅方向とすればよい。
本発明では、配向軸の測定ピッチがフィルムの幅方向に20mmピッチであることが重要である。測定ピッチをこれよりも大きくすると、隣接する2つの測定位置における配向軸同士がなす角度の最大値を低減したとしても、本発明において問題とする種類の色斑の低減には繋がらなくなる。逆に測定ピッチをこれよりも小さくして隣接する2つの測定位置における配向軸同士がなす角度の最大値を低減したとしても、測定ピッチを20mmピッチとしたときのΔZmaxが本発明の規定に対応する範囲内になるとは限らず、測定ピッチを20mmピッチとしたときのΔZmaxが本発明の規定に対応する範囲から外れた場合には、やはり上記色斑を低減することができない。
配向軸の測定位置の決定方法に特に制限はないが、例えば、フィルムの幅方向中央部に測定位置を1つ定め、この測定位置から幅方向両端部に向かってそれぞれ20mmピッチで測定位置を順次定めていけばよい。なお、幅方向両端部から幅方向中央部に向かってそれぞれ20mm未満の領域は測定位置として除外することができる。例えば、幅2020mmのPVAフィルムについて上記の決定方法に従って測定位置を定める場合で説明すると、まず、幅方向中央部に測定位置を1つ定める。次いで、この測定位置からまず幅方向の一方の端部に向かって20mmピッチで順次測定位置を定めていくが、50点目は幅方向の一方の端部からの距離が10mmであって、上記した幅方向両端部から幅方向中央部に向かって20mm未満の領域に位置するため測定位置から除外し、最終的に49点の測定位置を定める。同様に、幅方向中央部の測定位置から幅方向の他方の端部に向かって49点の測定位置を定める。このようにして定めた合計99点(1点+49点+49点)を配向軸の測定位置とすることができる。
そして、ΔZmaxを求めるには、各測定位置において測定された配向軸から、隣接する2つの測定位置における配向軸同士がなす角度を、全ての隣接する2つの測定位置についてそれぞれ求め、そのうちの最大値をΔZmaxとする。例えば、99点の測定位置を定めた上記の例では、隣接する2つの測定位置における配向軸同士がなす角度は98個求めることができ、この98個の中の最大値をΔZmaxとする。なお本明細書において、隣接する2つの測定位置における配向軸同士がなす角度は0〜90°の範囲内にあるものとする。すなわち、2つの配向軸の向きが平行である場合には当該角度は0°になり、垂直である場合には当該角度は90°になり、これら以外の場合には鋭角側の角度が配向軸同士がなす角度になる。
本発明のPVAフィルムでは、上記のようにして得られた隣接する2つの測定位置における配向軸同士がなす角度について、全ての隣接する2つの測定位置における当該角度の平均値(ΔZave)が0.6°以下であることが好ましく、0.58°以下であることがより好ましく、0.56°以下であることがさらに好ましい。一方、ΔZaveの下限は特に限定されないが、ΔZaveがあまりに小さいPVAフィルムはその製造において生産性が低下する場合があることから、ΔZaveは0.01°以上であることが好ましく、0.05°以上であることがより好ましく、0.1°以上であることがさらに好ましい。
本発明のPVAフィルムでは、前記配向軸の測定位置におけるレタデーション値が、全ての測定位置において5〜100nmの範囲内であることが好ましい。このような条件を満たすPVAフィルムは延伸性が向上するとともに偏光フィルムを製造した際にその偏光性能が向上する。PVAフィルムの延伸性および偏光フィルムの偏光性能の観点から、前記配向軸の測定位置におけるレタデーション値は、全ての測定位置において、10nm以上であることがより好ましく、15nm以上であることがさらに好ましく、20nm以上であることが特に好ましい。また、PVAフィルムの延伸性の観点から、前記配向軸の測定位置におけるレタデーション値は、全ての測定位置において、70nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。
本発明のPVAフィルムでは、前記配向軸の測定位置のうちの少なくとも1つにおける配向軸とPVAフィルムの長さ方向とがなす角度(但し0〜90°の範囲内にある)が45〜90°であることが好ましい。このような条件を満たすPVAフィルムは延伸性が向上するとともに偏光フィルムを製造した際にその偏光性能が向上する。PVAフィルムの延伸性および偏光フィルムの偏光性能の観点から、前記配向軸の測定位置のうちの少なくとも1つにおける配向軸とPVAフィルムの長さ方向とがなす角度が、70〜90°であることがより好ましく、80〜90°であることがさらに好ましい。
本発明のPVAフィルムにおいて、上記したΔZmax、ΔZave、レタデーション値および配向軸とPVAフィルムの長さ方向とがなす角度の各説明は、任意に設定したフィルムの幅方向の1直線上において該当すればよいが、均一な光学フィルムを連続して円滑に製造することができることなどからフィルムの長さ方向の物性にばらつきのないことが好ましく、そのため上記各説明は、フィルムの長さ方向の50%以上において該当することが好ましく、80%以上において該当することがより好ましく、95%以上において該当することがさらに好ましい。なお、長尺のPVAフィルムを連続的に製造する場合などにおいて、その長さ方向の物性は通常あまり変動しないため、任意に設定したフィルムの幅方向の1直線上において上記各説明が該当すれば、通常は、当該フィルムのどの幅方向の1直線上においても上記各説明が該当するようになる。
本発明のPVAフィルムの厚みは特に制限されないが、あまりに厚すぎると偏光フィルム等の光学フィルムを製造する際の乾燥が速やかに行われにくくなり、一方、あまりに薄すぎると光学フィルムを製造する際の一軸延伸時にフィルムの破断が生じやすくなることから、5〜150μmの範囲内であることが好ましく、20〜120μmの範囲内であることがより好ましく、50〜80μmの範囲内であることがさらに好ましい。
本発明のPVAフィルムの幅は特に制限されないが、近年、液晶テレビやモニターが大画面化しているので、それらに有効に用い得るようにするために、2m以上であることが好ましく、4m以上であることがより好ましい。また、現実的な生産機で偏光フィルム等の光学フィルムを製造する場合に、フィルムの幅があまりに広すぎると均一な一軸延伸が困難になることがあるので、PVAフィルムの幅は8m以下であることが好ましい。
本発明のPVAフィルムの長さは特に制限されないが、より均一なPVAフィルムを連続して円滑に製造することができると共に、それを用いて光学フィルムを製造する場合などにおいても連続して使用することができることから、5〜50,000mの範囲内であることが好ましく、100〜20,000mの範囲内であることがより好ましい。
本発明のPVAフィルムを形成するPVAとしては、ビニルエステルを重合して得られるポリビニルエステル系重合体をけん化することにより製造されたものを使用することができる。ビニルエステルとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル等を挙げることができる。上記のビニルエステルの中でも、入手容易性、コスト、PVAの製造の容易性などの観点から、酢酸ビニルが好ましい。
上記のポリビニルエステル系重合体は、単量体として1種または2種以上のビニルエステルのみを用いて得られたものが好ましく、単量体として1種のビニルエステルのみを用いて得られたものがより好ましいが、1種または2種以上のビニルエステルと、これと共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。
このようなビニルエステルと共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン;プロピレン、1−ブテン、イソブテン等の炭素数3〜30のオレフィン(α−オレフィン等);アクリル酸またはその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸またはその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸エステル;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸またはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンまたはその塩、N−メチロールアクリルアミドまたはその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸またはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンまたはその塩、N−メチロールメタクリルアミドまたはその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン等のN−ビニルアミド;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸またはその塩、エステルもしくは酸無水物;イタコン酸またはその塩、エステルもしくは酸無水物;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニルなどを挙げることができる。上記のポリビニルエステル系重合体は、これらの他の単量体の1種または2種以上に由来する構造単位を有することができる。
上記のポリビニルエステル系重合体に占める上記他の単量体に由来する構造単位の割合は、ポリビニルエステル系重合体を構成する全構造単位のモル数に基づいて、15モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましい。
上記のPVAは1種または2種以上のグラフト共重合可能な単量体によって変性されたものであってもよい。当該グラフト共重合可能な単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸またはその誘導体;不飽和スルホン酸またはその誘導体;炭素数2〜30のα−オレフィンなどが挙げられる。PVAにおけるグラフト共重合可能な単量体に由来する構造単位の割合は、PVAを構成する全構造単位のモル数に基づいて、5モル%以下であることが好ましい。
上記のPVAは、その水酸基の一部が架橋されていてもよいし架橋されていなくてもよい。また上記のPVAは、その水酸基の一部がアセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等のアルデヒド化合物などと反応してアセタール構造を形成していてもよいし、これらの化合物と反応せずアセタール構造を形成していなくてもよい。
PVAの重合度は特に制限されないが、フィルム強度や得られる光学フィルムの耐久性などの観点から、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、1,500以上であることがさらに好ましく、2,000以上であることが特に好ましい。一方、重合度が高すぎると製造コストの上昇や製膜時における工程通過性の不良に繋がる傾向があることから、PVAの重合度は10,000以下であることが好ましく、9,000以下であることがより好ましく、8,000以下であることがさらに好ましく、7,000以下であることが特に好ましい。なお、本明細書でいうPVAの重合度はJIS K6726−1994の記載に準じて測定される平均重合度を意味する。
PVAのけん化度は特に制限されないが、得られるPVAフィルムから製造される光学フィルムの光学性能や耐久性などの観点から、PVAのけん化度は95モル%以上であることが好ましく、98モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることがさらに好ましく、99.2モル%以上であることが特に好ましい。なお、本明細書におけるPVAのけん化度とは、PVAが有する、けん化によってビニルアルコール単位に変換され得る構造単位(典型的にはビニルエステル単位)とビニルアルコール単位との合計モル数に対して当該ビニルアルコール単位のモル数が占める割合(モル%)をいう。PVAのけん化度はJIS K6726−1994の記載に準じて測定することができる。
本発明のPVAフィルムを形成するPVAとしては、1種のPVAを単独で用いてもよいし、変性の種類や変性率、重合度、けん化度などが互いに異なる2種以上のPVAを併用してもよい。但し、光学フィルムを製造する際の原反として用いる場合のように本発明のPVAフィルムに優れた二次加工性が求められる場合などにおいて、PVAフィルムが、カルボキシル基、スルホン酸基等の酸性官能基を有するPVA;酸無水物基を有するPVA;アミノ基等の塩基性官能基を有するPVA;これらの中和物など、架橋反応を促進させる官能基を有するPVAを含むと、PVA分子間の架橋反応によってPVAフィルムの二次加工性が低下することがある。そのため、上記のような場合においてPVAフィルムは、酸性官能基を有するPVA、酸無水物基を有するPVA、塩基性官能基を有するPVAおよびこれらの中和物のいずれも含まないことが好ましく、PVAとして、ビニルエステルのみを単量体に用いて得られたポリビニルエステル系重合体をけん化することにより製造されたPVA、および/または、ビニルエステルとエチレンおよび/または炭素数3〜30のオレフィンのみを単量体に用いて得られたポリビニルエステル系重合体をけん化することにより製造されたPVAのみを含むことがより好ましく、PVAとして、ビニルエステルのみを単量体に用いて得られたポリビニルエステル系重合体をけん化することにより製造されたPVA、および/または、ビニルエステルとエチレンのみを単量体に用いて得られたポリビニルエステル系重合体をけん化することにより製造されたPVAのみを含むことがさらに好ましい。
本発明のPVAフィルムの製法は特に限定されないが、本発明のPVAフィルムは、
(a)回転軸が互いに平行な3個以上の乾燥ロールを備える製膜装置を使用し、当該乾燥ロールのうち最上流側に位置する第1乾燥ロール上にPVAを含む製膜原液を膜状に吐出して部分乾燥した後にそれに続く乾燥ロールでさらに乾燥して製膜し;その際に、
(b)第1乾燥ロールより剥離するときのPVA膜の揮発分率を20〜40質量%にし;
(c)第1乾燥ロールの周速(S1)に対する第2乾燥ロールの周速(S2)の比(S2/S1)を1.015〜1.050にし;
(d)第2乾燥ロールまたはそれより下流側の乾燥ロールのうちPVA膜の揮発分率が20質量%になったときの乾燥ロール(第x乾燥ロール)から、PVA膜の揮発分率が10質量%になったときの乾燥ロール(第y乾燥ロール)までの間において、隣接する2つの乾燥ロールのうちの上流側の乾燥ロールの周速(Sn)に対する下流側の乾燥ロールの周速(Sn+1)の比(Sn+1/Sn)をいずれも0.992〜0.999にする;
工程を含む本発明の製造方法によって、生産性よく円滑に連続して製造することができる。
(a)回転軸が互いに平行な3個以上の乾燥ロールを備える製膜装置を使用し、当該乾燥ロールのうち最上流側に位置する第1乾燥ロール上にPVAを含む製膜原液を膜状に吐出して部分乾燥した後にそれに続く乾燥ロールでさらに乾燥して製膜し;その際に、
(b)第1乾燥ロールより剥離するときのPVA膜の揮発分率を20〜40質量%にし;
(c)第1乾燥ロールの周速(S1)に対する第2乾燥ロールの周速(S2)の比(S2/S1)を1.015〜1.050にし;
(d)第2乾燥ロールまたはそれより下流側の乾燥ロールのうちPVA膜の揮発分率が20質量%になったときの乾燥ロール(第x乾燥ロール)から、PVA膜の揮発分率が10質量%になったときの乾燥ロール(第y乾燥ロール)までの間において、隣接する2つの乾燥ロールのうちの上流側の乾燥ロールの周速(Sn)に対する下流側の乾燥ロールの周速(Sn+1)の比(Sn+1/Sn)をいずれも0.992〜0.999にする;
工程を含む本発明の製造方法によって、生産性よく円滑に連続して製造することができる。
本発明を何ら限定するものではないが、本発明のPVAフィルムの製造方法によればPVA膜の揮発分率が20質量%〜10質量%にある状態の全体にわたり隣接する2つの乾燥ロール間の周速の比が1.000未満である特定の範囲に設定されるため、これにより、得られるPVAフィルムにおいて幅方向の均一性が向上して、本発明のPVAフィルムが生産性よく円滑に連続して製造されるものと考えられる。
上記した本発明のPVAフィルムの製造方法について以下により具体的に説明する。
PVAを含む製膜原液は、PVAを液体媒体と混合して溶液にしたり、液体媒体などを含むPVAチップを溶融して溶融液にしたりすることによって調製することができる。PVAの液体媒体への溶解や、液体媒体などを含むPVAチップの溶融は、撹拌式混合装置、溶融押出機などを使用して行うことができる。その際に用いる液体媒体としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどを挙げることができ、これらの液体媒体は1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも水、ジメチルスルホキシド、または両者の混合物が好ましく用いられ、特に水がより好ましく用いられる。
PVAを含む製膜原液は、PVAを液体媒体と混合して溶液にしたり、液体媒体などを含むPVAチップを溶融して溶融液にしたりすることによって調製することができる。PVAの液体媒体への溶解や、液体媒体などを含むPVAチップの溶融は、撹拌式混合装置、溶融押出機などを使用して行うことができる。その際に用いる液体媒体としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどを挙げることができ、これらの液体媒体は1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも水、ジメチルスルホキシド、または両者の混合物が好ましく用いられ、特に水がより好ましく用いられる。
PVAの液体媒体への溶解や溶融の促進、フィルム製造時の工程通過性の向上、得られるPVAフィルムの延伸性向上などの点から、製膜原液は可塑剤を含むことが好ましい。可塑剤を含む製膜原液を用いることにより可塑剤を含むPVAフィルムが得られる。可塑剤としては多価アルコールが好ましく用いられ、例えば、エチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパンなどを挙げることができる。可塑剤は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。これらの中でも延伸性の向上効果に優れる点から、グリセリン、ジグリセリンおよびエチレングリコールのうちの1種または2種以上が好ましく使用される。
可塑剤の含有量は、PVA100質量部に対して0〜30質量部であることが好ましく、3〜25質量部であることがより好ましく、5〜20質量部であることが特に好ましい。可塑剤の含有量がPVA100質量部に対して30質量部以下であることにより、得られるPVAフィルムの取り扱い性が向上する。
PVAフィルムを製造する際の乾燥ロールからの剥離性の向上、得られるPVAフィルムの取り扱い性などの点から、製膜原液は界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤を含む製膜原液を用いることにより界面活性剤を含むPVAフィルムが得られる。界面活性剤の種類としては特に限定はないが、アニオン性界面活性剤またはノニオン性界面活性剤が好ましく用いられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸カリウム等のカルボン酸型、オクチルサルフェート等の硫酸エステル型、ドデシルベンゼンスルホネート等のスルホン酸型のアニオン性界面活性剤が好適である。
また、ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル型、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル型、ポリオキシエチレンラウレート等のアルキルエステル型、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル等のアルキルアミン型、ポリオキシエチレンラウリン酸アミド等のアルキルアミド型、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル等のポリプロピレングリコールエーテル型、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド型、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル等のアリルフェニルエーテル型のノニオン性界面活性剤が好適である。
これらの界面活性剤は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸カリウム等のカルボン酸型、オクチルサルフェート等の硫酸エステル型、ドデシルベンゼンスルホネート等のスルホン酸型のアニオン性界面活性剤が好適である。
また、ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル型、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル型、ポリオキシエチレンラウレート等のアルキルエステル型、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル等のアルキルアミン型、ポリオキシエチレンラウリン酸アミド等のアルキルアミド型、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル等のポリプロピレングリコールエーテル型、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド型、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル等のアリルフェニルエーテル型のノニオン性界面活性剤が好適である。
これらの界面活性剤は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の含有量は、PVA100質量部に対して0.01〜1質量部であることが好ましく、0.02〜0.5質量部であることがより好ましく、0.05〜0.3質量部であることがさらに好ましい。界面活性剤の含有量がPVA100質量部に対して0.01質量部以上であることにより、延伸性や染色性が向上する。また、界面活性剤の含有量がPVA100質量部に対して1質量部以下であることにより、PVAフィルムの取り扱い性が向上する。
製膜原液は、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、相溶化剤、ブロッキング防止剤、難燃剤、帯電防止剤、滑剤、分散剤、流動化剤、抗菌剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
PVAフィルムの製造に用いる製膜原液の揮発分率は50〜90質量%の範囲内であることが好ましく、55〜80質量%の範囲内であることがより好ましい。揮発分率が50質量%以上であることにより、粘度が過度に高くなるのを抑制でき製膜性が向上する。一方、揮発分率が90質量%以下であることにより、得られるPVAフィルムの厚み均一性が向上する。なお、本明細書でいう製膜原液の揮発分率とは、下記の式[i]により求めた揮発分率をいう。
A={(Wa−Wb)/Wa}×100 [i]
[式中、Aは製膜原液の揮発分率(質量%)、Waは製膜原液の質量(g)、WbはWa(g)の製膜原液を105℃の電熱乾燥機中で16時間乾燥した後の質量(g)を示す。]
A={(Wa−Wb)/Wa}×100 [i]
[式中、Aは製膜原液の揮発分率(質量%)、Waは製膜原液の質量(g)、WbはWa(g)の製膜原液を105℃の電熱乾燥機中で16時間乾燥した後の質量(g)を示す。]
PVAフィルムの製造に用いる、回転軸が互いに平行な3個以上の乾燥ロールを備える製膜装置では、乾燥ロールの数は4個以上であることが好ましく、5〜30個であることがより好ましい。なお、上記乾燥ロールのうち最上流側に位置するものを第1乾燥ロールと称し、残りの乾燥ロールについては、第1乾燥ロールから下流側に向かって順番に、第2乾燥ロール、第3乾燥ロール、第4乾燥ロール、・・・と称する。乾燥ロールは、例えば、ニッケル、クロム、銅、鉄、ステンレススチールなどの金属から形成されていることが好ましく、特にロール表面が腐食しにくく、しかも鏡面光沢を有する金属材料から形成されていることがより好ましい。また、乾燥ロールの耐久性を高めるために、ニッケル層、クロム層、ニッケル/クロム合金層などを単層または2層以上組み合わせてメッキした乾燥ロールを用いることがより好ましい。
本発明で使用する製膜装置は、必要に応じて、乾燥ロールに続いて、熱風炉式の熱風乾燥装置、熱処理装置、調湿装置などを有していてもよい。
製膜装置の第1乾燥ロール上に上記製膜原液を膜状に吐出するに当っては、例えば、T型スリットダイ、ホッパープレート、I−ダイ、リップコーターダイなどの既知の膜状吐出装置(膜状流延装置)を使用して、製膜原液を第1乾燥ロール上に膜状に吐出(流延)する。
第1乾燥ロール上に膜状に吐出したPVAを含む液を第1乾燥ロール上で乾燥することによって、それに含まれる揮発性成分の一部を除去(部分乾燥)し、PVA膜の揮発分率が20〜40質量%になった時点で第1乾燥ロールから剥離する。
第1乾燥ロール上に膜状に吐出したPVAを含む液を第1乾燥ロール上で乾燥することによって、それに含まれる揮発性成分の一部を除去(部分乾燥)し、PVA膜の揮発分率が20〜40質量%になった時点で第1乾燥ロールから剥離する。
第1乾燥ロールから剥離する際のPVA膜の揮発分率が20質量%未満であると、得られるPVAフィルムのΔZmaxが本発明の規定に対応する範囲からはずれやすい。第1乾燥ロールから剥離する際のPVA膜の揮発分率は21質量%以上であることが好ましく、22質量%以上であることがより好ましく、23質量%以上であることがさらに好ましい。一方、第1乾燥ロールから剥離する際のPVA膜の揮発分率が40質量%を超えると、第1乾燥ロールからの剥離性が悪化し、フィルムの幅方向の均一性が損なわれ、得られるPVAフィルムのΔZmaxが本発明の規定に対応する範囲からはずれやすい。第1乾燥ロールから剥離する際のPVA膜の揮発分率は30質量%以下であることが好ましく、28質量%以下であることがより好ましく、27質量%以下であることがさらに好ましい。
ここで、本明細書でいうPVA膜またはPVAフィルムの揮発分率とは、下記の式[ii]により求めた揮発分率をいう。
B={(Wc−Wd)/Wc}×100 [ii]
[式中、BはPVA膜またはPVAフィルムの揮発分率(質量%)、WcはPVA膜またはPVAフィルムから採取したサンプルの質量(g)、Wdは前記サンプルWc(g)を温度50℃、圧力0.1kPa以下の真空乾燥機中に入れて4時間乾燥した時の質量(g)を示す。]
B={(Wc−Wd)/Wc}×100 [ii]
[式中、BはPVA膜またはPVAフィルムの揮発分率(質量%)、WcはPVA膜またはPVAフィルムから採取したサンプルの質量(g)、Wdは前記サンプルWc(g)を温度50℃、圧力0.1kPa以下の真空乾燥機中に入れて4時間乾燥した時の質量(g)を示す。]
PVA、グリセリンなどの多価アルコール(可塑剤)、界面活性剤および水を用いて調製した製膜原液から形成されるPVA膜またはPVAフィルムでは、前記した「温度50℃、圧力0.1kPa以下で4時間」という条件下で乾燥したときには主として水のみが揮発し、水以外の他の成分の殆どは揮発せずにPVA膜またはPVAフィルム中に残留するので、PVA膜またはPVAフィルムの揮発分率は、PVA膜またはPVAフィルム中に含まれている水分量(水分率)を測定することにより求めることができる。
第1乾燥ロール上での乾燥に当っては、乾燥の均一性、乾燥速度などの点から、第1乾燥ロールの表面温度は80〜120℃であることが好ましく、85〜105℃であることがより好ましく、93〜99℃であることがさらに好ましい。第1乾燥ロールの表面温度が120℃以下であることによりフィルムの発泡をより効果的に抑制することができ、一方、80℃以上であることにより第1乾燥ロール上での乾燥効率が向上する。
第1乾燥ロールの周速(S1)は、乾燥の均一性、乾燥速度およびPVAフィルムの生産性などの点から、8〜25m/分であることが好ましく、10〜23m/分であることがより好ましく、12〜22m/分であることがさらに好ましい。
膜状に吐出したPVAを含む製膜原液の第1乾燥ロール上での部分乾燥は、第1乾燥ロールからの熱のみによって行ってもよいが、第1乾燥ロールで加熱すると同時に第1乾燥ロールに接触していない膜面(以下「第1乾燥ロール非接触面」といい、これとは反対の第1乾燥ロールに接触する側の膜面は「第1乾燥ロール接触面」ということがある)に熱風を吹き付けて、PVA膜の両面から熱を与えて乾燥を行うことが、乾燥の均一性、乾燥速度などの点から好ましい。
第1乾燥ロール上にあるPVA膜の第1乾燥ロール非接触面に熱風を吹き付けるに当っては、第1乾燥ロール非接触面の全領域に対して風速1〜10m/秒の熱風を吹き付けることが好ましく、風速2〜8m/秒の熱風を吹き付けることがより好ましく、風速3〜8m/秒の熱風を吹き付けることがさらに好ましい。
第1乾燥ロール非接触面に吹き付ける熱風の風速が小さすぎると、第1乾燥ロール上での乾燥時に水蒸気などの結露が発生し、その水滴がPVA膜に滴下して最終的に得られるPVAフィルムにおける欠陥が生じやすくなる。一方、第1乾燥ロール非接触面に吹き付ける熱風の風速が大きすぎると、最終的に得られるPVAフィルムに厚み斑が発生し、それに伴って染色斑などのトラブルが発生しやすくなる。
第1乾燥ロール上にあるPVA膜の第1乾燥ロール非接触面に熱風を吹き付けるに当っては、第1乾燥ロール非接触面の全領域に対して風速1〜10m/秒の熱風を吹き付けることが好ましく、風速2〜8m/秒の熱風を吹き付けることがより好ましく、風速3〜8m/秒の熱風を吹き付けることがさらに好ましい。
第1乾燥ロール非接触面に吹き付ける熱風の風速が小さすぎると、第1乾燥ロール上での乾燥時に水蒸気などの結露が発生し、その水滴がPVA膜に滴下して最終的に得られるPVAフィルムにおける欠陥が生じやすくなる。一方、第1乾燥ロール非接触面に吹き付ける熱風の風速が大きすぎると、最終的に得られるPVAフィルムに厚み斑が発生し、それに伴って染色斑などのトラブルが発生しやすくなる。
PVAの第1乾燥ロール非接触面に吹き付ける熱風の温度は、乾燥効率、乾燥の均一性などの点から、50〜150℃であることが好ましく、70〜120℃であることがより好ましく、80〜95℃であることがさらに好ましい。またPVA膜の第1乾燥ロール非接触面に吹き付ける熱風の露点温度は10〜15℃であることが好ましい。PVA膜の第1乾燥ロール非接触面に吹き付ける熱風の温度が低すぎると、乾燥効率、乾燥の均一性などが低下しやすく、一方、高すぎると発泡が生じやすくなる。
PVA膜の第1乾燥ロール非接触面に熱風を吹き付けるための方式は特に制限されず、風速が均一で且つ温度が均一な熱風をPVA膜の第1乾燥ロール非接触面、好ましくはその全体に均一に吹き付け得る方式のいずれもが採用でき、そのうちでもノズル方式、整流板方式またはそれらの組み合わせなどが好ましく採用される。PVA膜の第1乾燥ロール非接触面への熱風の吹き付け方向は、第1乾燥ロール非接触面に対向する方向であっても、PVA膜の第1乾燥ロール非接触面の円周形状にほぼ沿った方向(第1乾燥ロールのロール表面の円周にほぼ沿った方向)であっても、またはそれ以外の方向であってもよい。
また、第1乾燥ロール上でのPVA膜の乾燥時に、乾燥によってPVA膜から発生した揮発分と吹き付けた後の熱風を排気することが好ましい。排気の方法は特に制限されないが、PVA膜の第1乾燥ロール非接触面に吹き付ける熱風の風速斑および温度斑が生じない排気方法を採用することが好ましい。
第1乾燥ロール上で揮発分率20〜40質量%にまで乾燥したPVA膜を第1乾燥ロールから剥離し、今度は第2乾燥ロール以降の乾燥ロールでさらに乾燥する。第2乾燥ロール上でPVA膜を乾燥するに際しては、PVA膜の第1乾燥ロール非接触面を第2乾燥ロールに対向させて乾燥するのが好ましい。
第1乾燥ロールの周速(S1)に対する第2乾燥ロールの周速(S2)の比(S2/S1)は、1.015〜1.050の範囲内であり、1.020〜1.048の範囲内であることが好ましく、1.023〜1.046の範囲内であることがより好ましく、1.025〜1.045の範囲内であることがさらに好ましい。比(S2/S1)が1.020未満であると、第1乾燥ロールからのPVA膜の剥離性が悪化しフィルムの幅方向の均一性が損なわれるなどして、得られるPVAフィルムのΔZmaxが本発明の規定に対応する範囲からはずれやすい。また、比(S2/S1)が1.050を超える場合も、第1乾燥ロールと第2乾燥ロールとの間でPVA膜にかかる張力の斑が拡大するなどして、得られるPVAフィルムのΔZmaxが本発明の規定に対応する範囲からはずれやすい。
第2乾燥ロールが後述する第x乾燥ロールよりも上流側に位置する場合において、第2乾燥ロールから第x乾燥ロールの直前の乾燥ロール(第(x−1)乾燥ロール)までの間に存在する全ての乾燥ロール(第2乾燥ロールおよび第(x−1)乾燥ロールを含む)の表面温度は、80℃以上であることが好ましく、83℃以上であることがより好ましく、85℃以上であることがさらに好ましい。また、これらの乾燥ロールの表面温度は、95℃以下であることが好ましく、92℃以下であることがより好ましく、90℃以下であることがさらに好ましい。これらの乾燥ロールの表面温度を上記範囲とすることにより、適度な乾燥速度を維持しつつ乾燥の均一性を向上させることができる。
第2乾燥ロールまたはそれより下流側の乾燥ロールのうちPVA膜の揮発分率が20質量%になったときの乾燥ロールを第x乾燥ロールと称し、PVA膜の揮発分率が10質量%になったときの乾燥ロールを第y乾燥ロールと称した際に、第x乾燥ロールから第y乾燥ロールまでの間において、隣接する2つの乾燥ロールのうちの上流側の乾燥ロールの周速(Sn)に対する下流側の乾燥ロールの周速(Sn+1)の比(Sn+1/Sn)は、いずれも0.992〜0.999の範囲内であることが必要である。すなわち、例えば、第x乾燥ロールが第5乾燥ロールであって第y乾燥ロールが第8乾燥ロールである場合には、第5乾燥ロールの周速(S5)に対する第6乾燥ロールの周速(S6)の比(S6/S5)、第6乾燥ロールの周速(S6)に対する第7乾燥ロールの周速(S7)の比(S7/S6)、第7乾燥ロールの周速(S7)に対する第8乾燥ロールの周速(S8)の比(S8/S7)のいずれもが0.992〜0.999の範囲内であることが必要である。当該比(Sn+1/Sn)のうちの一部または全部が上記本発明の規定から外れると幅方向の均一性が失われて目的のPVAフィルムを得ることが困難になる。幅方向の均一性の観点から、当該比(Sn+1/Sn)はいずれも、0.993以上であることが好ましく、0.994以上であることがより好ましく、0.995以上であることがさらに好ましい。また同様に幅方向の均一性の観点から、当該比(Sn+1/Sn)はいずれも0.998以下であることが好ましい。なお、通常は乾燥ロール上でPVA膜の揮発分率が低下するが、隣接する2つの乾燥ロール間で揮発分率が20質量%または10質量%になった場合には、そのうちの下流側の乾燥ロールを、それぞれ、第x乾燥ロールまたは第y乾燥ロールと称することとする。また、第1乾燥ロールより剥離するときのPVA膜の揮発分率が20質量%である場合には第2乾燥ロールを第x乾燥ロールと称することとする。
第x乾燥ロールの周速(Sx)に対する第y乾燥ロールの周速(Sy)の比(Sy/Sx)は、幅方向の均一性をより一層向上させることができることから、0.940〜0.990の範囲内であることが好ましく、0.955〜0.985の範囲内であることがより好ましく、0.960〜0.980の範囲内であることがさらに好ましい。
第x乾燥ロールから第y乾燥ロールまでの間に存在する乾燥ロールの数は幅方向の均一性をより一層向上させることができることから第x乾燥ロールおよび第y乾燥ロールを含めて、4個以上であることが好ましく、6個以上であることがより好ましく、8個以上であることがさらに好ましく、また、20個以下であることが好ましい。
第x乾燥ロールから第y乾燥ロールまでの間に存在する全ての乾燥ロール(第x乾燥ロールおよび第y乾燥ロールを含む)の表面温度は、60℃以上であることが好ましく、62℃以上であることがより好ましく、65℃以上であることがさらに好ましい。また、これらの乾燥ロールの表面温度は、85℃以下であることが好ましく、82℃以下であることがより好ましく、80℃以下であることがさらに好ましい。これらの乾燥ロールの表面温度を上記範囲とすることにより、幅方向の均一性をより一層向上させることができる。
第y乾燥ロールで乾燥されたPVA膜を後続の乾燥ロールでさらに乾燥すればより揮発分率の低いPVAフィルムが得られる。第y乾燥ロールより下流側の乾燥ロールの表面温度は60〜85℃の範囲内であることが好ましく、62〜82℃の範囲内であることがより好ましく、65〜80℃の範囲内であることがさらに好ましいが、最終乾燥ロール、または最終に近い乾燥ロールと最終乾燥ロールとは、その表面温度を高くして熱処理ロールとして用いてもよい。乾燥ロールを熱処理ロールとして用いる場合、その表面温度は90〜140℃の範囲内であることが好ましく、95〜130℃の範囲内であることがより好ましい。
第1乾燥ロールから最終乾燥ロールに至る過程において、各乾燥ロールに対するPVA膜の向きは特に制限されないが、PVA膜をより均一に乾燥することができることから、PVA膜の任意の部分における表面と裏面とが、第1乾燥ロールから最終乾燥ロールまでの各乾燥ロールに交互に対向するように乾燥するのが好ましい。
第1乾燥ロールの周速(S1)に対する最終乾燥ロールの周速(SL)の比(SL/S1)は特に制限されないが、0.900〜1.100の範囲内であることが好ましく、0.950〜1.050の範囲内であることがより好ましく、0.980〜1.020の範囲内であることがさらに好ましく、0.990〜1.010の範囲内であることが特に好ましい。また、隣接する2つの乾燥ロール間の周速の比のうち、上記説明以外のものについては、上流側の乾燥ロールの周速に対する下流側の乾燥ロールの周速の比として、例えば、0.980〜1.020の範囲内、さらには0.990〜1.010の範囲内とすることができる。
上記の乾燥処理により得られたPVAフィルムは、必要に応じて、調湿処理などを行い、所定の長さでロール状に巻き取ることにより本発明のPVAフィルムを得ることができる。また、ロール状に巻き取る前、ロール状にある段階およびロールから巻き出した後のうちのいずれか1つまたは複数の段階で、当該PVAフィルムの幅方向両端部(耳)を切断・除去してもよい。
上記した一連の処理によって最終的に得られるPVAフィルムの揮発分率は1〜5質量%の範囲内にあることが好ましく、2〜4質量%の範囲内にあることがより好ましい。
上記した一連の処理によって最終的に得られるPVAフィルムの揮発分率は1〜5質量%の範囲内にあることが好ましく、2〜4質量%の範囲内にあることがより好ましい。
本発明のPVAフィルムの用途に特に制限はないが、光透過率が高い場合やより強度の高いバックライトを用いた場合であっても色斑が低減された偏光フィルム等の光学フィルムを製造することができることから、光学フィルムを製造する際の原反として用いることが好ましい。光学フィルムとしては、偏光フィルムの他、位相差フィルムなどが挙げられる。これらの光学フィルムは、本発明のPVAフィルムを用いて一軸延伸する工程を有する製造方法により製造することができる。
より具体的には、本発明のPVAフィルムを原反として用いて偏光フィルムを製造するには、例えば、本発明のPVAフィルムを用いて染色、一軸延伸、固定処理、乾燥処理、さらに必要に応じて熱処理を行えばよい。染色と一軸延伸の順序は特に限定されず、一軸延伸の前に染色を行ってもよいし、一軸延伸と同時に染色を行ってもよいし、または一軸延伸の後に染色を行ってもよい。また、一軸延伸、染色などの工程は複数回繰り返してもよい。
PVAフィルムの染色に用いる染料としては、ヨウ素または二色性有機染料(例えば、DirectBlack 17、19、154;DirectBrown 44、106、195、210、223;DirectRed 2、23、28、31、37、39、79、81、240、242、247;DirectBlue 1、15、22、78、90、98、151、168、202、236、249、270;DirectViolet 9、12、51、98;DirectGreen 1、85;DirectYellow 8、12、44、86、87;DirectOrange 26、39、106、107などの二色性染料)などが使用できる。これらの染料は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。染色は、通常、PVAフィルムを上記染料を含有する溶液中に浸漬させることにより行うことができるが、その処理条件や処理方法は特に制限されない。
PVAフィルムの一軸延伸は、湿式延伸法または乾熱延伸法のいずれで行ってもよい。湿式延伸法により一軸延伸する場合は、ホウ酸を含む温水中で一軸延伸してもよいし、前記した染料を含有する溶液中や後記固定処理浴中で一軸延伸してもよいし、吸水後のPVAフィルムを用いて空気中で一軸延伸してもよいし、その他の方法で一軸延伸してもよい。一軸延伸処理の際の延伸温度は特に限定されないが、PVAフィルムを温水中で延伸(湿式延伸)する場合は好ましくは30〜90℃、より好ましくは40〜70℃、さらに好ましくは45〜65℃の温度が採用され、乾熱延伸する場合は50〜180℃の温度が好ましく採用される。また、一軸延伸の延伸倍率(多段で一軸延伸を行う場合は合計の延伸倍率)は、偏光性能の点からフィルムが切断する直前までできるだけ延伸することが好ましく、具体的には4倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましく、5.5倍以上であることがさらに好ましい。延伸倍率の上限はフィルムが破断しない限り特に制限はないが、均一な延伸を行うためには8.0倍以下であることが好ましい。なお、本明細書における延伸倍率は延伸前のフィルムの長さに基づくものであり、延伸をしていない状態が延伸倍率1倍に相当する。
延伸後のフィルム(偏光フィルム)の厚みは、5〜35μm、特に20〜30μmであることが好ましい。
延伸後のフィルム(偏光フィルム)の厚みは、5〜35μm、特に20〜30μmであることが好ましい。
長尺のPVAフィルムを一軸延伸する場合における一軸延伸の方向に特に制限はなく、長さ方向への一軸延伸や横一軸延伸を採用することができるが、偏光性能により優れる偏光フィルムが得られることから長さ方向への一軸延伸が好ましい。長さ方向への一軸延伸は、互いに平行な複数のロールを備える延伸装置を使用して、各ロール間の周速を変えることにより行うことができる。一方、横一軸延伸はテンター型延伸機を用いて行うことができる。
偏光フィルムの製造に当っては、一軸延伸されたフィルムへの染料の吸着を強固にするために、固定処理を行うことが好ましい。固定処理としては、ホウ酸、硼砂等のホウ素化合物を添加した固定処理浴中にフィルムを浸漬する方法が挙げられる。その際に、必要に応じて固定処理浴中にヨウ素化合物を添加してもよい。
一軸延伸、または一軸延伸と固定処理を行ったフィルムを次いで乾燥処理(熱処理)するのが好ましい。乾燥処理(熱処理)の温度は30〜150℃の範囲内、特に50〜140℃の範囲内であることが好ましい。乾燥処理(熱処理)の温度が低すぎると、得られる偏光フィルムの寸法安定性が低下しやすくなり、一方、高すぎると染料の分解などに伴う偏光性能の低下が発生しやすくなる。
以上のようにして得られた偏光フィルムの両面または片面に、光学的に透明で、かつ機械的強度を有する保護膜を貼り合わせて偏光板にすることができる。その場合の保護膜としては、三酢酸セルロース(TAC)フィルム、酢酸・酪酸セルロース(CAB)フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系フィルムなどが使用される。また、保護膜を貼り合わせるための接着剤としては、PVA系接着剤やウレタン系接着剤などが挙げられ、そのうちでもPVA系接着剤が好ましい。
以上のようにして得られた偏光板は、アクリル系などの粘着剤を被覆した後、ガラス基板に貼り合わせて液晶表示装置の部品として使用することができる。偏光板をガラス基板に貼り合わせる際に、位相差フィルム、視野角向上フィルム、輝度向上フィルムなどを貼り合わせてもよい。
以上のようにして得られた偏光板は、アクリル系などの粘着剤を被覆した後、ガラス基板に貼り合わせて液晶表示装置の部品として使用することができる。偏光板をガラス基板に貼り合わせる際に、位相差フィルム、視野角向上フィルム、輝度向上フィルムなどを貼り合わせてもよい。
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
以下の実施例および比較例において、PVAフィルムのΔZmax、ΔZave、レタデーション値および配向軸とPVAフィルムの長さ方向とがなす角度ならびに偏光フィルムの色斑および偏光性能の各測定ないし評価結果は以下の方法により求めた。
以下の実施例および比較例において、PVAフィルムのΔZmax、ΔZave、レタデーション値および配向軸とPVAフィルムの長さ方向とがなす角度ならびに偏光フィルムの色斑および偏光性能の各測定ないし評価結果は以下の方法により求めた。
(1)PVAフィルムのΔZ max 、ΔZ ave 、レタデーション値および配向軸とPVAフィルムの長さ方向とがなす角度
以下の各実施例または比較例で得られた長尺のPVAフィルムの長さ方向(MD)の任意の位置から、PVAフィルムの長さ方向(MD)に40mmの長さを有する全幅長(3m)のテープ状のサンプルを採取した。このテープ状のサンプルについて、フィルムの幅方向中央部に測定位置を1つ定め、この測定位置から幅方向両端部に向かってそれぞれ20mmピッチで測定位置(それぞれ74点)を順次定めた。なお、フィルムの幅方向両端部から幅方向中央部に向かってそれぞれ20mm未満の領域に位置したそれぞれ75点目は測定位置から除外した。また、各測定位置は、テープ状のサンプルの機械流れ方向の中央部(機械流れ方向両端部からそれぞれ20mmの位置)に定めた。
そして、各測定位置(合計149点)でフィルムの面内における配向軸およびレタデーション値を、王子計測機器株式会社製「KOBRA−WFD」を用いてフィルム面に対して垂直な方向に進行する波長590nmの光に基づき測定し、各測定位置における配向軸のデータから上記ΔZmaxおよびΔZaveを求めるとともに、各測定位置におけるレタデーション値のデータからその最小値と最大値を求めた。また、上記フィルムの幅方向中央部の測定位置における配向軸とPVAフィルムの長さ方向(MD)とがなす角度を求めた。
以下の各実施例または比較例で得られた長尺のPVAフィルムの長さ方向(MD)の任意の位置から、PVAフィルムの長さ方向(MD)に40mmの長さを有する全幅長(3m)のテープ状のサンプルを採取した。このテープ状のサンプルについて、フィルムの幅方向中央部に測定位置を1つ定め、この測定位置から幅方向両端部に向かってそれぞれ20mmピッチで測定位置(それぞれ74点)を順次定めた。なお、フィルムの幅方向両端部から幅方向中央部に向かってそれぞれ20mm未満の領域に位置したそれぞれ75点目は測定位置から除外した。また、各測定位置は、テープ状のサンプルの機械流れ方向の中央部(機械流れ方向両端部からそれぞれ20mmの位置)に定めた。
そして、各測定位置(合計149点)でフィルムの面内における配向軸およびレタデーション値を、王子計測機器株式会社製「KOBRA−WFD」を用いてフィルム面に対して垂直な方向に進行する波長590nmの光に基づき測定し、各測定位置における配向軸のデータから上記ΔZmaxおよびΔZaveを求めるとともに、各測定位置におけるレタデーション値のデータからその最小値と最大値を求めた。また、上記フィルムの幅方向中央部の測定位置における配向軸とPVAフィルムの長さ方向(MD)とがなす角度を求めた。
(2)偏光フィルムの色斑
暗室内で観察用偏光板(透過率が43%程度の偏光フィルムを用いたもの)を面光源(バックライト)上に載置し、その上にこの観察用偏光板に対してクロスニコルとなるように作製した偏光フィルムを載置した。次に、バックライトから観察用偏光板を介して偏光フィルムに光を照射(光度15,000cd)し、偏光フィルム真上より1mの位置から偏光フィルムを目視によって観察し、以下の判定基準に基づく官能評価によって偏光フィルムの色斑の評価を行った。
○:色斑が認められないか、または認められたとしても実用上問題ないレベルである
×:実用上問題となるレベルの色斑が認められた
なお、後述する「(2)偏光フィルムの製造 (i)」の製造条件によれば、44%以上の高い透過率を有する偏光フィルムが得られやすいが、このような高い透過率を有する偏光フィルムを用いて上記の方法を採用することにより、本発明において問題とする色斑の有無ないし程度を明確に評価することができる。
暗室内で観察用偏光板(透過率が43%程度の偏光フィルムを用いたもの)を面光源(バックライト)上に載置し、その上にこの観察用偏光板に対してクロスニコルとなるように作製した偏光フィルムを載置した。次に、バックライトから観察用偏光板を介して偏光フィルムに光を照射(光度15,000cd)し、偏光フィルム真上より1mの位置から偏光フィルムを目視によって観察し、以下の判定基準に基づく官能評価によって偏光フィルムの色斑の評価を行った。
○:色斑が認められないか、または認められたとしても実用上問題ないレベルである
×:実用上問題となるレベルの色斑が認められた
なお、後述する「(2)偏光フィルムの製造 (i)」の製造条件によれば、44%以上の高い透過率を有する偏光フィルムが得られやすいが、このような高い透過率を有する偏光フィルムを用いて上記の方法を採用することにより、本発明において問題とする色斑の有無ないし程度を明確に評価することができる。
(3)偏光フィルムの偏光性能
(a)透過率(Y)の測定
以下の各実施例または比較例で得られた偏光フィルムの幅方向中央部から、長さ方向4cm×幅方向4cmの正方形のサンプルを2枚採取した。1枚のサンプルについて、長さ方向を測定装置に対して45°傾けた場合の光の透過率と−45°傾けた場合の光の透過率とを測定して、それらの平均値(Y1)(%)を求めた。もう1枚のサンプルについても、同様に、45°傾けた場合の光の透過率と−45°傾けた場合の光の透過率とを測定して、それらの平均値(Y2)(%)を求めた。なお上記透過率の測定には、日立製作所製の分光光度計「U−4100」(積分球付属)を用いた。また上記透過率の測定は、JIS Z8722(物体色の測定方法)に準拠した方法で行い、C光源を用いて、2°視野の可視光領域の視感度補正を行った。
上記の方法で求めたY1とY2とを以下の式[iii]で平均して偏光フィルムの透過率(Y)(%)とした。
透過率(Y)=(Y1+Y2)/2 [iii]
(a)透過率(Y)の測定
以下の各実施例または比較例で得られた偏光フィルムの幅方向中央部から、長さ方向4cm×幅方向4cmの正方形のサンプルを2枚採取した。1枚のサンプルについて、長さ方向を測定装置に対して45°傾けた場合の光の透過率と−45°傾けた場合の光の透過率とを測定して、それらの平均値(Y1)(%)を求めた。もう1枚のサンプルについても、同様に、45°傾けた場合の光の透過率と−45°傾けた場合の光の透過率とを測定して、それらの平均値(Y2)(%)を求めた。なお上記透過率の測定には、日立製作所製の分光光度計「U−4100」(積分球付属)を用いた。また上記透過率の測定は、JIS Z8722(物体色の測定方法)に準拠した方法で行い、C光源を用いて、2°視野の可視光領域の視感度補正を行った。
上記の方法で求めたY1とY2とを以下の式[iii]で平均して偏光フィルムの透過率(Y)(%)とした。
透過率(Y)=(Y1+Y2)/2 [iii]
(b)偏光度(V)の測定
上記の「(a)透過率(Y)の測定」において採取した偏光フィルムのサンプル2枚を、それらの長さ方向が平行になるように重ねた場合の光の透過率(Y‖)(%)、および、それらの長さ方向が直交するように重ねた場合の光の透過率(Y⊥)(%)を測定した。なおY‖およびY⊥は、上記の「(a)透過率(Y)の測定」と同様の方法で求めた。これらのY‖およびY⊥から、以下の式[iv]によって偏光度(V)(%)を求めた。
偏光度(V)={(Y‖−Y⊥)/(Y‖+Y⊥)}1/2×100 [iv]
上記の「(a)透過率(Y)の測定」において採取した偏光フィルムのサンプル2枚を、それらの長さ方向が平行になるように重ねた場合の光の透過率(Y‖)(%)、および、それらの長さ方向が直交するように重ねた場合の光の透過率(Y⊥)(%)を測定した。なおY‖およびY⊥は、上記の「(a)透過率(Y)の測定」と同様の方法で求めた。これらのY‖およびY⊥から、以下の式[iv]によって偏光度(V)(%)を求めた。
偏光度(V)={(Y‖−Y⊥)/(Y‖+Y⊥)}1/2×100 [iv]
《実施例1》
(1)PVAフィルムの製造
(i)PVA(酢酸ビニルの単独重合体のけん化物、重合度2,400、けん化度99.9モル%)100質量部、グリセリン12質量部、ラウリン酸ジエタノールアミド0.1質量部および水からなる揮発分率66質量%の製膜原液を用い、回転軸が互いに平行な20個の乾燥ロールを備える製膜装置によって、厚み75μm、幅3m、長さ10,000m、揮発分率3質量%の長尺のPVAフィルムを連続的に製膜した。
(1)PVAフィルムの製造
(i)PVA(酢酸ビニルの単独重合体のけん化物、重合度2,400、けん化度99.9モル%)100質量部、グリセリン12質量部、ラウリン酸ジエタノールアミド0.1質量部および水からなる揮発分率66質量%の製膜原液を用い、回転軸が互いに平行な20個の乾燥ロールを備える製膜装置によって、厚み75μm、幅3m、長さ10,000m、揮発分率3質量%の長尺のPVAフィルムを連続的に製膜した。
具体的には、上記の製膜原液をT型スリットダイから第1乾燥ロール(表面温度93℃、周速(S1)13.6m/分)上に膜状に吐出し、第1乾燥ロール上で、第1乾燥ロール非接触面の全体に熱風(温度90℃、露点温度10℃)を5m/秒の風速で均一に吹き付けながらPVA膜の揮発分率が25質量%になるまで乾燥し、次いで第1乾燥ロールから剥離して(第1乾燥ロールより剥離するときの揮発分率は25質量%)、PVA膜の第1乾燥ロール接触面と第1乾燥ロール非接触面とが各乾燥ロールに交互に対向するように、第2乾燥ロール以降の乾燥ロールで乾燥を行い、さらに幅方向両端部(耳)を切断・除去した後、ロール状に巻き取って、上記のPVAフィルムを得た。
なお、上記の製膜において、第x乾燥ロールは第5乾燥ロールであり、第y乾燥ロールは第13乾燥ロールであった。また、比(S2/S1)は1.040であり、第x乾燥ロールから第y乾燥ロールまでの間において隣接する2つの乾燥ロール間の周速の比(Sn+1/Sn)は0.995(最小値)〜0.998(最大値)であり、比(Sy/Sx)は0.973であり、比(SL/S1)は1.007であった。また、第2乾燥ロールから第(x−1)乾燥ロールまでの間に存在する全ての乾燥ロールの表面温度は85℃(最小値)〜90℃(最大値)であり、第x乾燥ロールから第y乾燥ロールまでの間に存在する全ての乾燥ロールの表面温度は67℃(最小値)〜75℃(最大値)であった。
なお、上記の製膜において、第x乾燥ロールは第5乾燥ロールであり、第y乾燥ロールは第13乾燥ロールであった。また、比(S2/S1)は1.040であり、第x乾燥ロールから第y乾燥ロールまでの間において隣接する2つの乾燥ロール間の周速の比(Sn+1/Sn)は0.995(最小値)〜0.998(最大値)であり、比(Sy/Sx)は0.973であり、比(SL/S1)は1.007であった。また、第2乾燥ロールから第(x−1)乾燥ロールまでの間に存在する全ての乾燥ロールの表面温度は85℃(最小値)〜90℃(最大値)であり、第x乾燥ロールから第y乾燥ロールまでの間に存在する全ての乾燥ロールの表面温度は67℃(最小値)〜75℃(最大値)であった。
得られたPVAフィルムについて、上記した方法によりΔZmax、ΔZave、レタデーション値および配向軸とPVAフィルムの長さ方向とがなす角度を求めた。結果を表1に示した。
(2)偏光フィルムの製造
(i)上記(1)で得られたPVAフィルムの幅方向(TD)の中央部から長さ方向12cm×幅方向20cmの長方形の試験片を採取し、当該試験片の長さ方向の両端を、延伸部分のサイズが長さ方向10cm×幅方向20cmとなるように延伸治具に固定し、温度30℃の水中に38秒間浸漬している間に24cm/分の延伸速度で元の長さの2.2倍に長さ方向に一軸延伸(1段目延伸)した後、ヨウ素を0.03質量%およびヨウ化カリウムを3質量%の濃度で含有する温度30℃のヨウ素/ヨウ化カリウム水溶液中に60秒間浸漬している間に24cm/分の延伸速度で元の長さの3.3倍まで長さ方向に一軸延伸(2段目延伸)し、次いでホウ酸を3質量%およびヨウ化カリウムを3質量%の濃度で含有する温度30℃のホウ酸/ヨウ化カリウム水溶液中に約20秒間浸漬している間に24cm/分の延伸速度で元の長さの3.6倍まで長さ方向に一軸延伸(3段目延伸)し、続いてホウ酸を4質量%およびヨウ化カリウムを約5質量%の濃度で含有する温度60℃のホウ酸/ヨウ化カリウム水溶液中に浸漬しながら24cm/分の延伸速度で限界延伸倍率の直前の延伸倍率(予め同様の操作を行って求めたフィルム破断時の延伸倍率を限界延伸倍率とし、これよりも0.2倍低い延伸倍率を採用した)まで長さ方向に一軸延伸(4段目延伸)した後、ヨウ化カリウムを3質量%の濃度で含有するヨウ化カリウム水溶液中に10秒間浸漬して固定処理を行い、その後60℃の乾燥機で4分間乾燥して、偏光フィルム(厚み28μm)を製造した。
当該偏光フィルムについて、上記した方法により色斑の評価を行った。結果を表1に示した。
(i)上記(1)で得られたPVAフィルムの幅方向(TD)の中央部から長さ方向12cm×幅方向20cmの長方形の試験片を採取し、当該試験片の長さ方向の両端を、延伸部分のサイズが長さ方向10cm×幅方向20cmとなるように延伸治具に固定し、温度30℃の水中に38秒間浸漬している間に24cm/分の延伸速度で元の長さの2.2倍に長さ方向に一軸延伸(1段目延伸)した後、ヨウ素を0.03質量%およびヨウ化カリウムを3質量%の濃度で含有する温度30℃のヨウ素/ヨウ化カリウム水溶液中に60秒間浸漬している間に24cm/分の延伸速度で元の長さの3.3倍まで長さ方向に一軸延伸(2段目延伸)し、次いでホウ酸を3質量%およびヨウ化カリウムを3質量%の濃度で含有する温度30℃のホウ酸/ヨウ化カリウム水溶液中に約20秒間浸漬している間に24cm/分の延伸速度で元の長さの3.6倍まで長さ方向に一軸延伸(3段目延伸)し、続いてホウ酸を4質量%およびヨウ化カリウムを約5質量%の濃度で含有する温度60℃のホウ酸/ヨウ化カリウム水溶液中に浸漬しながら24cm/分の延伸速度で限界延伸倍率の直前の延伸倍率(予め同様の操作を行って求めたフィルム破断時の延伸倍率を限界延伸倍率とし、これよりも0.2倍低い延伸倍率を採用した)まで長さ方向に一軸延伸(4段目延伸)した後、ヨウ化カリウムを3質量%の濃度で含有するヨウ化カリウム水溶液中に10秒間浸漬して固定処理を行い、その後60℃の乾燥機で4分間乾燥して、偏光フィルム(厚み28μm)を製造した。
当該偏光フィルムについて、上記した方法により色斑の評価を行った。結果を表1に示した。
(ii)上記(i)において、2段目延伸時の「温度30℃のヨウ素/ヨウ化カリウム水溶液」中への浸漬時間を60秒間から、75秒間、90秒間、105秒間または120秒間に変えたこと以外は上記(i)と同じ操作を行って、透過率の異なる4枚の偏光フィルム(厚み28μm)を製造した。
(iii)上記(i)および(ii)において得られた透過率(Y)の異なる5枚の偏光フィルムのそれぞれについて、上記した方法にしたがって透過率(Y)および偏光度(V)を求め、横軸を透過率(Y)および縦軸を偏光度(V)とするグラフにこの5点をプロットした。そして当該5点の近似曲線をグラフ上にひいて、当該近似曲線から、透過率(Y)が44.25%であるときの偏光度(V)の値を求めた。結果を表1に示した。
《実施例2および比較例1〜5》
PVAフィルムの製造条件を表1のようにしたこと以外は実施例1と同様にしてPVAフィルムを製膜するとともに実施例1と同様にして偏光フィルムを製造した。結果を表1に示した。
PVAフィルムの製造条件を表1のようにしたこと以外は実施例1と同様にしてPVAフィルムを製膜するとともに実施例1と同様にして偏光フィルムを製造した。結果を表1に示した。
Claims (6)
- フィルムの面内における配向軸をフィルムの幅方向に20mmピッチで測定した際に、隣接する2つの測定位置における配向軸同士がなす角度(但し0〜90°の範囲内にある)が、全ての隣接する2つの測定位置において2.3°以下であるポリビニルアルコール系重合体フィルムであって、前記配向軸の測定位置のうちの少なくとも1つにおける配向軸とポリビニルアルコール系重合体フィルムの長さ方向とがなす角度(但し0〜90°の範囲内にある)が45〜90°である、ポリビニルアルコール系重合体フィルム。
- 全ての隣接する2つの測定位置における前記角度の平均値が0.6°以下である、請求項1に記載のポリビニルアルコール系重合体フィルム。
- 前記配向軸の測定位置におけるレタデーション値が、全ての測定位置において5〜100nmである、請求項1または2に記載のポリビニルアルコール系重合体フィルム。
- 幅が2m以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリビニルアルコール系重
合体フィルム。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリビニルアルコール系重合体フィルムから製造した光学フィルム。
- 偏光フィルムである、請求項5に記載の光学フィルム。
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