JP6290285B2 - ポリビニルアルコール系フィルム、偏光膜及び偏光板 - Google Patents

ポリビニルアルコール系フィルム、偏光膜及び偏光板 Download PDF

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本発明は、ポリビニルアルコール系フィルムに関し、更に詳しくは、優れた染色性を有するポリビニルアルコール系フィルムであり、高偏光度で、かつ色ムラの少ない偏光膜を得ることができるポリビニルアルコール系フィルム、及び該ポリビニルアルコール系フィルムを用いた偏光膜、偏光板に関するものである。
従来より、ポリビニルアルコール系フィルムは、透明性に優れたフィルムとして多くの用途に利用されており、その有用な用途の一つに偏光膜が挙げられる。かかる偏光膜は液晶ディスプレイの基本構成要素として用いられており、近年では高品位で高信頼性の要求される機器へとその使用が拡大されている。
このような中、液晶テレビや多機能携帯端末などの画面の高輝度化、高精細化、大面積化、薄型化に伴い、光学特性に優れた偏光膜が要求されている。具体的には、更なる偏光度の向上や色ムラの解消である。
一般的に、ポリビニルアルコール系フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液から連続キャスト法により製造される。具体的には、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を、キャストドラムやエンドレスベルトなどのキャスト型に流涎し、得られたフィルムをキャスト型から剥離後、ニップロールなどを用いて流れ方向(MD方向)に搬送しながら、熱ロールやフローティングドライヤーを用いて乾燥することにより製造される。かかる搬送工程において、フィルムには、流れ方向(MD方向)に引っ張られるため、ポリビニルアルコール系高分子はMD方向に配向しやすく、フィルムの配向軸(遅相軸)はMD方向を向くことが多い。MD方向への配向が大きすぎると、ポリビニルアルコール系フィルムの面内位相差が増大し、最終的に、偏光膜の偏光性能が低下することになる。逆に、フィルムの幅方向(TD方向)には、ポアソン比に依存した収縮応力と脱水による収縮応力が発生するため、かかるTD方向への応力を利用すれば、ポリビニルアルコール系高分子をある程度TD方向に配向させることも可能である。この場合、配向軸はMD方向とTD方向の間を向くことになり、かつ面内位相差は低減される傾向にある。なお配向軸は光学軸とも呼ばれている。
一方、一般的に、偏光膜は、その原反であるポリビニルアルコール系フィルムを、水(温水を含む)で膨潤させた後、ヨウ素などの二色性染料で染色し、延伸することにより製造される。かかる延伸工程は、染色後のフィルムを流れ方向(MD方向)に延伸して、フィルム中の二色性染料を高度に配向させる工程であるが、偏光膜の偏光性能を向上させるためには、原反となるポリビニルアルコール系フィルムがMD方向に良好な延伸性を有する必要がある。
なお、偏光膜製造の順序として、延伸と染色が逆のケースも実施されている。すなわち、原反であるポリビニルアルコール系フィルムを、水(温水を含む)で膨潤させた後、延伸し、ヨウ素などの二色性染料で染色するケースであるが、かかるケースにおいても、偏光膜の偏光性能を向上させるためには、ポリビニルアルコール系フィルムが、MD方向に良好な延伸性を有する必要がある。
さらに、近年、偏光膜の薄型化のために、ポリビニルアルコール系フィルムも薄型化されている。従来、厚さ60μm程度だったものが、現在は厚さ45μm程度になり、近い将来には30μm以下になると予想される。かかる薄型フィルムは、偏光膜を製造する際の延伸によって破断してしまう等の生産性の問題があった。
延伸性を改良する手法として、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムの製膜時にキャストドラムの速度と最終的なフィルム巻き取り速度との比を特定する手法(例えば、特許文献1参照)、キャストドラムで製膜後にフィルムを浮遊させて乾燥する手法(例えば、特許文献2参照)、ポリビニルアルコール系フィルムの乾燥工程における引っ張り具合を制御する手法(例えば、特許文献3参照)が提案されている。また、面内位相差を低減したポリビニルアルコール系フィルムが提案されている(例えば、特許文献4、5参照)。また、光学軸の傾き(配向角)が特定範囲のポリビニルアルコール系フィルムが提案されている(例えば、特許文献6参照)。
特開2001−315141号公報 特開2001−315142号公報 特開2002−79531号公報 特開2006−291173号公報 特開2007−137042号公報 国際公開WO2009/028141号
しかしながら、上記特許文献の手法をもってしても、偏光膜製造時の延伸性を改良するには不充分である。
上記特許文献1は、ポリビニルアルコール系フィルムを製造する時のMD方向への延伸度合い(引っ張り具合)を特定したものであるが、TD方向への延伸も考慮しなければ、ポリビニルアルコール系フィルムの面内位相差を低減できず、かつ偏光膜製造時の延伸性を改良するには不十分である。一般的に、MD方向に延伸されたポリビニルアルコール系フィルムを、偏光膜製造時にMD方向に延伸するのは困難である。すなわち、MD方向に配向したポリビニルアルコール系高分子を、更にMD方向に引っ張るのは、分子鎖を無理やり引き伸ばすことになり困難である。逆に、TD方向に配向したポリビニルアルコール系高分子を、MD方向に引っ張るのは比較的容易である。ただし、TD方向への高分子配向が均一でなければ、偏光膜製造時に均一にMD方向に延伸できない。特許文献1には、ポリビニルアルコール系フィルム製造時に、MD方向にそれほど延伸しない例(引っ張らない例)もあるが、上述したポアソン比に依存した収縮応力と脱水による収縮応力だけでは、TD方向への高分子配向を充分に均一化できないという問題がある。すなわち、TD方向にもある程度延伸するか、少なくとも幅方向を固定しなければ、高分子のTD方向への均一な配向状態は得られない。
上記特許文献2の開示技術では、製膜後のフィルムを均一に乾燥できるものの、高分子の配向までは制御できず、偏光膜製造時の延伸性を改良するには不十分である。
上記特許文献3の開示技術では、フィルムの膜厚を均一にできるものの、高分子の配向までは制御できず、偏光膜製造時の延伸性を改良するには不十分である。
上記特許文献4や5の開示技術では、フィルムの面内位相差を低減できるものの、高分子をランダムに配向させているだけであり、均一な配向状態で面内位相差を低減しなければ、偏光膜製造時の延伸性を改良するには不十分である。
上記特許文献6の開示技術は、フィルムの幅方向の配向角を測定した時に、配向角が長手方向に対して45〜135°のポリビニルアルコール系フィルムであるが、全方位の半分を占めるほど角度範囲が広く、高分子の配向を制御しているとは言い難い。実施例における配向角の範囲は、最も狭いもので54°もあり、配向角のふれが大きなものである。これほど大きくふれると、延伸性が幅方向でふれることになり、得られる偏光膜に色ムラが発生する傾向にある。また、本開示技術は、乾燥ロールの周速比で配向角を制御するものであるが、かかる製造方法は長手方向でフィルムの特性が変動しやすく、全長にわたって、配向角が上記範囲内なのか、また延伸性が一定なのか不明である(実施例において、フィルム長の記載は無く、測定は長手方向の一ヶ所のみである。)。更に、実施例におけるフィルムの厚さは75μmであり、近年の薄型化要望に対応するのは困難である。
そこで、本発明ではこのような背景下において、偏光膜製造時の延伸性に優れ、高い偏光性能を有しかつ色ムラの少ない偏光膜を得ることができるポリビニルアルコール系フィルム、特に薄型偏光膜の製造時にも破断が生じないポリビニルアルコール系フィルムを提供すること、更にはかかるポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光膜、および偏光板、並びにポリビニルアルコール系フィルムの製造方法を提供することを目的とするものである。
しかるに、本発明者等はかかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、厚さ5〜30μm、幅2m以上、長さ2km以上であるポリビニルアルコール系フィルムであって、配向軸(遅相軸)と幅方向(TD方向)の交差角θ(°)、及び交差角θのふれΔθ(°)が特定範囲にあるポリビニルアルコール系フィルムが、偏光膜製造時の延伸性に優れ、薄型偏光膜を歩留りよく製造できるものであり、かかるポリビニルアルコール系フィルムを用いて得られる偏光膜は、高い偏光性能を有し、かつ色ムラの少ない偏光膜となることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の要旨は、厚さ5〜30μm、幅2m以上、長さ2km以上であるポリビニルアルコール系フィルムであって、配向軸(遅相軸)と幅方向(TD方向)の交差角θ(°)が20°以下、かつ交差角θのふれΔθ(°)が、10°以下であることを特徴とするポリビニルアルコール系フィルムである。
また、本発明は、前記ポリビニルアルコール系フィルムを用いて得られる偏光膜、ならびに偏光膜の少なくとも片面に保護膜を設けてなる偏光板も提供するものである。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、偏光膜製造時の延伸性に優れ、薄型の偏光膜を製造する場合でも破断が生じず、高い偏光性能を示し、かつ色ムラの少ない偏光膜を提供することができる。
なお、本発明は、偏光膜製造時の延伸性が、フィルム内のポリビニルアルコール系高分子の配向状態に依存するため、配向軸を制御することにより延伸性を改良するものである。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、厚さ5〜30μm、幅2m以上、長さ2km以上であるポリビアルコール系フィルムであって、配向軸(遅相軸)と幅方向(TD方向)の交差角θ(°)が20°以下、かつ交差角θのふれΔθ(°)が、10°以下であることを特徴とするポリビニルアルコール系フィルムである。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムの厚さは5〜30μmであり、偏光膜の薄型化の点で、殊に好ましくは5〜20μmである。かかるポリビニルアルコール系フィルムの厚さは、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液中の樹脂濃度、キャスト型への吐出量(吐出速度)、延伸倍率などにより調整される。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムの幅は2m以上であり、好ましくは、破断回避の点で、2〜6mである。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムの長さは2km以上であり、好ましくは、大面積化の点で、3km以上、殊に好ましくは、輸送重量の点で、3〜50kmである。
本発明においては、配向軸(遅相軸)と幅方向(TD方向)の交差角θ(°)は20°以下であることが必要であり、好ましくは15°以下、特に好ましくは10°以下、更に好ましくは5°以下、殊に好ましくは2°以下である。かかる交差角θ(°)が、上限値を超えると、偏光膜製造時のMD方向への延伸性が低下し、本発明の目的を達成することができない。なお、通常、交差角θ(°)の下限値は0°である。
更に、本発明においては、交差角θのふれΔθ(°)が、10°以下であることが必要であり、特に好ましくは5°以下、更に好ましくは3°以下である。かかる交差角θのふれΔθ(°)が大きすぎると、偏光膜に色ムラが生じ、本発明の目的を達成することができない。なお、通常、交差角θのふれΔθ(°)の下限値は0°である。
本発明においては、複屈折ΔNxyが0.001以下であることが好ましく、特に好ましくは0.0008以下、更に好ましくは0.0006以下、殊に好ましくは0.0005以下である。かかる複屈折ΔNxyが大きすぎると、偏光膜に色ムラが発生しやすい傾向がある。
なお、ここでいうΔNxyは、幅方向(TD方向)の屈折率をnx、流れ方向(MD方向)の屈折率をnyとした場合に、|nx−ny|で算出される数値であり、フィルムの厚さd(nm)との積(|nx−ny|×d)が面内位相差(nm)である。
以下、本発明のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法について説明する。本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、キャスト法や溶融押出し法で製造されるが、本発明においては、透明性、厚み精度、表面平滑性などの点から、キャスト法が好ましく、特に好ましくは、生産性の点から、連続キャスト法である。
連続キャスト法とは、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を、T型スリットダイから、回転するキャストドラム、エンドレスベルト、樹脂フィルムなどのキャスト型に吐出及び流涎して製膜する手法である。得られたフィルムは、キャスト型から剥離した後、流れ方向(MD方向)に搬送しながら、連続的に熱ロールなどで乾燥し、最終的にロールに巻き取られて製品(ポリビニルアルコール系フィルム)となる。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法は、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を連続キャスト法により製膜し、得られたフィルムをキャスト型から剥離後、流れ方向(MD方向)に搬送しながら、連続的に乾燥及び延伸するものであり、連続的な乾燥に加えて、連続的な延伸をも行うことを特徴とする。かかる延伸は、流れ方向(MD方向)に行ってもよいし、幅方向(TD方向)に行ってもよい。
本発明において、上述した交差角θ(°)、交差角θのふれΔθ(°)、及び複屈折ΔNxyを制御する手法としては、ポリビニルアルコール系樹脂の化学構造を調節する手法、水溶液の乾燥条件を調節する手法、キャスト型から剥離されたフィルムを幅方向(TD方向)に延伸する手法などが挙げられるが、本発明においては、交差角θ(°)の精密制御の点で、幅方向(TD方向)に延伸する手法が好ましい。
幅方向(TD方向)に延伸する場合、フィルムを流れ方向(MD方向)に搬送しながら、幅方向(TD方向)に連続的に延伸する。かかる延伸工程は1回でもよいし、逐次的または断続的に複数回行われてもよい。また、かかる延伸工程は、フィルムの乾燥工程前、乾燥工程中、及び/または乾燥工程後に行われてもよい。
流れ方向(MD方向)への搬送と、幅方向(TD方向)への延伸を同時に行なう手法は、特に限定されないが、例えば、フィルムの幅方向両端部を複数のクリップで挟持して、搬送及び延伸を同時に行なうことが好ましい。かかる場合、それぞれの端部でのクリップの配置は、ピッチ200mm以下であることが好ましく、特に好ましくはピッチ100mm以下、更に好ましくはピッチ50mm以下である。
かかるクリップのピッチが広すぎると、フィルムにたわみが生じたり、交差角θのふれΔθ(°)が増大する傾向がある。また、クリップの挟持位置(クリップの先端部)は、フィルム端から100mm以下が好ましい。クリップの挟持位置(先端部)が、フィルム幅方向中心部に位置しすぎると、破棄するフィルム端部が増大し、製品幅が狭くなる傾向にある。
流れ方向(MD方向)への搬送速度は、5〜30m/分であることが好ましく、特に好ましくは7〜25m/分、更に好ましくは8〜20m/分である。かかる搬送速度が遅すぎると生産性が低下する傾向があり、速すぎると交差角θのふれΔθ(°)が増大する傾向がある。
本発明における幅方向(TD方向)の延伸倍率は、1.05〜1.3倍であることが好ましく、特に好ましくは1.05〜1.25倍、更に好ましくは1.1〜1.2倍である。幅方向(TD方向)の延伸倍率が高すぎても、低すぎても、交差角θのふれΔθ(°)が増大する傾向がある。
かかる幅方向(TD方向)の延伸は、1段階で行なう必要は無く、総延伸倍率が上記延伸倍率の範囲になるように複数段階で行ってもよい(逐次延伸とも呼ばれる)。例えば、1段階目の延伸を行った後、幅方向(TD方向)を固定した単純な搬送を行い、2段階目以降の延伸を行ってもよい。特に、薄型フィルムの場合は、単純な幅固定の搬送工程を挿入することにより、フィルムの応力緩和がなされ、破断を回避することが可能になる。
幅固定の搬送工程を挿入する場合、固定幅を、1段階目の延伸後の幅よりも狭めることも可能である。延伸直後のフィルムは応力緩和のために収縮しやすく、脱水に伴う収縮も起きるため、固定幅をこれらの収縮幅まで狭めることが可能である。ただし、収縮幅以上に狭めると、フィルムにたわみが生じるため好ましくない。
本発明の好ましい一形態として、フィルムの幅方向(TD方向)に、一時的に1.3倍を超えて延伸した後、最終的な幅方向(TD方向)の延伸倍率が1.05〜1.3倍になるよう寸法収縮させる手法を用いてもよい。かかる場合の寸法収縮の手法としては、フィルムの応力緩和や乾燥(脱水)を利用することが挙げられる。
本発明において、幅方向(TD方向)の延伸は、50〜150℃で行なうことが好ましい。かかる延伸温度は、特に好ましくは60〜140℃、更に好ましくは70〜130℃である。かかる延伸温度が低すぎても高すぎても、交差角θのふれΔθ(°)が増大する傾向がある。逐次延伸を行なう場合、延伸温度は、各延伸段階で変更してもよい。
本発明において、幅方向(TD方向)の延伸時の延伸時間は、2〜60秒が好ましく、特に好ましくは5〜45秒、更に好ましくは10〜30秒である。かかる延伸時間が短すぎると、フィルムに破断が生じやすい傾向があり、逆に、長すぎると、設備負荷が増大する傾向にある。逐次延伸を行なう場合、かかる延伸時間は、各延伸段階で変更してもよい。
本発明において、幅方向(TD方向)の延伸前のフィルムの含水率は、0.5〜15%であることが好ましく、特に好ましくは1〜13%、更に好ましくは2〜12%である。かかる含水率が低すぎても高すぎても、目的とする高分子の配向、すなわち目的とする交差角θ(°)の発現が困難となる傾向にある。
かかる含水率を調整するためには、フィルムの含水率が高すぎる場合は、幅方向(TD方向)への延伸前にフィルムを乾燥することが好ましく、逆に、フィルムの含水率が低すぎる場合は、幅方向(TD方向)への延伸前に調湿することが好ましい。より好ましくは、含水率が上記範囲となるように乾燥工程の条件を調整することである。
かかる乾燥は、加熱ロールや赤外線ヒーターなどを使用し公知の手法で行なうことができるが、本発明においては複数の加熱ロールで行なうことが好ましく、特に好ましくは、加熱ロールの温度が40〜150℃であり、更に好ましくは50〜140℃である。また、含水率の調整のため、幅方向(TD方向)への延伸前に、調湿エリアを設けてもよい。
本発明において、流れ方向(MD方向)へは特段延伸する必要は無く、フィルムがたわまない程度の引っ張り張力で搬送されれば充分である。当然のことながら、幅方向(TD方向)への延伸により、流れ方向(MD方向)にはポアソン比に依存したネックインが起こるし、乾燥中は流れ方向(MD方向)にも脱水収縮が生じる。これらの収縮ために、搬送ロールや加熱ロールの回転速度が一定でも、流れ方向(MD方向)に適度な張力が得られ、特許文献1や特許文献6の様な煩雑な回転速度の制御は不要である。製造的な観点から、フィルムの流れ方向(MD方向)の寸法は一定であることが好ましく、特に好ましくは、幅方向(TD方向)への延伸工程において、流れ方向(MD方向)の寸法変化率は0.8〜1.2であり、特に好ましくは0.9〜1.1である。
本発明においては、幅方向(TD方向)への延伸を施した後、必要に応じて、フローティングドライヤーなどで熱処理を行ってもよい。かかる熱処理の温度は、60〜200℃であることが好ましく、特に好ましくは70〜150℃である。
かかる熱処理温度が、低すぎると、寸法安定性が低下しやすい傾向があり、逆に、高すぎても、偏光膜製造時の延伸性が低下する傾向がある。
また、熱処理時間は1〜60秒間であることが好ましく、特に好ましくは5〜30秒間である。熱処理時間が、短すぎると、寸法安定性が低下する傾向があり、逆に、長すぎると、偏光膜製造時の延伸性が低下する傾向がある。
以下、本発明で使用されるポリビニルアルコール樹脂、及びポリビニルアルコール樹脂水溶液に関して説明する。
本発明において、ポリビニルアルコール系フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂としては、通常、未変性のポリビニルアルコール系樹脂、即ち、酢酸ビニルを重合して得られるポリ酢酸ビニルをケン化して製造される樹脂が用いられる。必要に応じて、酢酸ビニルと、少量(通常、10モル%以下、好ましくは5モル%以下)の酢酸ビニルと共重合可能な成分との共重合体をケン化して得られる樹脂を用いることもできる。酢酸ビニルと共重合可能な成分としては、例えば、不飽和カルボン酸(例えば、塩、エステル、アミド、ニトリル等を含む)、炭素数2〜30のオレフィン類(例えば、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン等)、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等が挙げられる。また、ケン化後の水酸基を化学修飾して得られる変性ポリビニルアルコール系樹脂を用いることもできる。
また、ポリビニルアルコール系樹脂として、側鎖に1,2−ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂を用いることもできる。かかる側鎖に1,2−ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、(i)酢酸ビニルと3,4−ジアセトキシ−1−ブテンとの共重合体をケン化する方法、(ii)酢酸ビニルとビニルエチレンカーボネートとの共重合体をケン化及び脱炭酸する方法、(iii)酢酸ビニルと2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソランとの共重合体をケン化及び脱ケタール化する方法、(iv)酢酸ビニルとグリセリンモノアリルエーテルとの共重合体をケン化する方法、等により得られる。
ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量は、10万〜30万であることが好ましく、特に好ましくは11万〜28万、更に好ましくは12万〜26万である。かかる重量平均分子量が小さすぎるとポリビニルアルコール系樹脂を光学フィルムとする場合に充分な光学性能が得られにくい傾向があり、大きすぎるとポリビニルアルコール系フィルムを偏光膜製造時の延伸が困難となる傾向がある。なお、上記ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量は、GPC−MALS法により測定される重量平均分子量である。
本発明で用いるポリビニルアルコール系樹脂の平均ケン化度は、通常98モル%以上であることが好ましく、特に好ましくは99モル%以上、更に好ましくは99.5モル%以上、殊に好ましくは99.8モル%以上である。平均ケン化度が小さすぎるとポリビニルアルコール系フィルムを偏光膜とする場合に充分な光学性能が得られない傾向がある。
ここで、本発明における平均ケン化度は、JIS K 6726に準じて測定されるものである。
本発明に用いるポリビニルアルコール系樹脂として、変性種、変性量、重量平均分子量、平均ケン化度などの異なる2種以上のものを併用してもよい。
上記ポリビニルアルコール系樹脂を用いて、製膜原液となるポリビニルアルコール系樹脂水溶液を調液する。通常、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の樹脂濃度は5〜70重量%、好ましくは10〜60重量%である。
ポリビニルアルコール系樹脂水溶液には、ポリビニルアルコール系樹脂以外に、必要に応じて、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパンなどの一般的に使用される可塑剤や、ノニオン性、アニオン性、および/またはカチオン性の界面活性剤を含有させることが、製膜性の点より好ましい。
ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液は、必要に応じて添加剤などを配合された後、押出機で溶融混練され、T型スリットダイよりキャスト型表面に吐出及び流涎され、製膜される。
このようにして得られるポリビニルアルコール系樹脂水溶液の樹脂濃度は、15〜60重量%であることが好ましく、特に好ましくは17〜55重量%、更に好ましくは20〜50重量%である。かかる水溶液の樹脂濃度が低すぎると乾燥負荷が大きくなるため生産能力が低下する傾向があり、高すぎると粘度が高くなりすぎて均一な溶解ができにくくなる傾向がある。
次に、得られたポリビニルアルコール系樹脂水溶液は、脱泡処理される。脱泡方法としては、静置脱泡や多軸押出機による脱泡などの方法があげられる。多軸押出機としては、ベントを有した多軸押出機であれば、とくに限定されないが、通常はベントを有した2軸押出機が用いられる。
脱泡処理ののち、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液は、一定量ずつT型スリットダイに導入され、回転するキャストドラム上に吐出及び流延されて、キャスト法により製膜される。
T型スリットダイ出口のポリビニルアルコール系樹脂水溶液の樹脂温度は、80〜100℃であることが好ましく、特に好ましくは85〜98℃である。
かかるポリビニルアルコール系樹脂水溶液の樹脂温度が低すぎると流動不良となる傾向があり、高すぎると発泡する傾向がある。
かかるポリビニルアルコール系樹脂水溶液の粘度は、吐出時に50〜200Pa・sであることが好ましく、特に好ましくは70〜150Pa・sである。
かかる水溶液の粘度が、低すぎると流動不良となる傾向があり、高すぎると流涎が困難となる傾向がある。
T型スリットダイからキャストドラムに吐出されるポリビニルアルコール系樹脂水溶液の吐出速度は、0.2〜5m/分であることが好ましく、特に好ましくは0.4〜4m/分、更に好ましくは0.6〜3m/分である。
かかる吐出速度が遅すぎると生産性が低下する傾向があり、速すぎると流涎が困難となる傾向がある。
かかるキャストドラムの直径は、好ましくは2〜5m、特に好ましくは2.4〜4.5m、更に好ましくは2.8〜4mである。
かかる直径が小さすぎると乾燥長が不足し速度が出にくい傾向があり、大きすぎると輸送性が低下する傾向がある。
かかるキャストドラムの幅は、好ましくは4m以上であり、特に好ましくは4.5m以上、更に好ましくは5m以上、殊に好ましくは5〜6mである。
キャストドラムの幅が小さすぎると生産性が低下する傾向がある。
かかるキャストドラムの回転速度は、3〜50m/分であることが好ましく、特に好ましくは4〜40m/分、更に好ましくは5〜35m/分である。
かかる回転速度が遅すぎると生産性が低下する傾向があり、速すぎると乾燥が不十分となる傾向がある。
かかるキャストドラムの表面温度は、40〜99℃であることが好ましく、特に好ましくは60〜95℃である。
かかる表面温度が低すぎると乾燥不良となる傾向があり、高すぎると発泡してしまう傾向がある。
かくして、本発明のポリビニルアルコール系フィルムが得られる。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、延伸性に優れるため、偏光膜用の原反として特に好ましく用いられる。
以下、本発明のポリビニルアルコール系フィルムを用いて得られる偏光膜の製造方法について説明する。
本発明の偏光膜は、上記ポリビニルアルコール系フィルムを、ロールから巻き出して水平方向に移送し、膨潤、染色、ホウ酸架橋、延伸、洗浄、乾燥などの工程を経て製造される。
膨潤工程は、染色工程の前に施される。膨潤工程により、ポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れを洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色ムラなどを防止する効果もある。膨潤工程において、処理液としては、通常、水が用いられる。当該処理液は、主成分が水であれば、ヨウ化化合物、界面活性剤等の添加物、アルコール等が少量入っていてもよい。膨潤浴の温度は、通常10〜45℃程度であり、膨潤浴への浸漬時間は、通常0.1〜10分間程度である。
染色工程は、フィルムにヨウ素または二色性染料を含有する液体を接触させることによって行なわれる。通常は、ヨウ素−ヨウ化カリウムの水溶液が用いられ、ヨウ素の濃度は0.1〜2g/L、ヨウ化カリウムの濃度は1〜100g/Lが適当である。染色時間は30〜500秒程度が実用的である。処理浴の温度は5〜50℃が好ましい。水溶液には、水溶媒以外に水と相溶性のある有機溶媒を少量含有させてもよい。
ホウ酸架橋工程は、ホウ酸やホウ砂などのホウ素化合物を使用して行われる。ホウ素化合物は水溶液または水−有機溶媒混合液の形で濃度10〜100g/L程度で用いられ、液中にはヨウ化カリウムを共存させるのが、偏光性能の安定化の点で好ましい。処理時の温度は30〜70℃程度、処理時間は0.1〜20分程度が好ましく、また必要に応じて処理中に延伸操作を行なってもよい。
延伸工程は、一軸方向に3〜10倍、好ましくは3.5〜6倍延伸することが好ましい。この際、延伸方向の直角方向にも若干の延伸(幅方向の収縮を防止する程度、またはそれ以上の延伸)を行なっても差し支えない。延伸時の温度は、40〜170℃が好ましい。さらに、延伸倍率は最終的に前記範囲に設定されればよく、延伸操作は一段階のみならず、製造工程の任意の範囲の段階に実施すればよい。
洗浄工程は、例えば、水やヨウ化カリウム等のヨウ化物水溶液にポリビニルアルコール系フィルムを浸漬することにより行われ、フィルムの表面に発生する析出物を除去することができる。ヨウ化カリウム水溶液を用いる場合のヨウ化カリウム濃度は1〜80g/L程度でよい。洗浄処理時の温度は、通常、5〜50℃、好ましくは10〜45℃である。処理時間は、通常、1〜300秒間、好ましくは10〜240秒間である。なお、水洗浄とヨウ化カリウム水溶液による洗浄は、適宜組み合わせて行ってもよい。
乾燥工程は、大気中で40〜80℃で1〜10分間行えばよい。
また、偏光膜の偏光度は、好ましくは99.5%以上、より好ましくは99.8%以上である。偏光度が低すぎると液晶ディスプレイにおけるコントラストを確保することができなくなる傾向がある。
なお、偏光度は、一般的に2枚の偏光膜を、その配向方向が同一方向になるように重ね合わせた状態で、波長λにおいて測定した光線透過率(H11)と、2枚の偏光膜を、配向方向が互いに直交する方向になる様に重ね合わせた状態で、波長λにおいて測定した光線透過率(H1)より、下式にしたがって算出される。
〔(H11−H1)/(H11+H1)〕1/2
さらに、本発明の偏光膜の単体透過率は、好ましくは42%以上である。かかる単体透過率が低すぎると液晶ディスプレイの高輝度化を達成できなくなる傾向がある。
単体透過率は、分光光度計を用いて偏光膜単体の光線透過率を測定して得られる値である。
かくして、本発明の偏光膜が得られるが、本発明の偏光膜は、色ムラが少なく、偏光性能に優れた偏光板を製造するのに好適である。
以下、本発明の偏光板の製造方法について説明する。
本発明の偏光膜は、その片面または両面に、接着剤を介して、光学的に等方性な樹脂フィルムを保護フィルムとして貼合されて偏光板となる。保護フィルムとしては、たとえば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリアリーレンエステル、ポリ−4−メチルペンテン、ポリフェニレンオキサイドなどのフィルムまたはシートがあげられる。
貼合方法は、公知の手法で行われるが、例えば、液状の接着剤組成物を、偏光膜、保護フィルム、あるいはその両方に均一に塗布した後、両者を貼り合わせて圧着し、加熱や活性エネルギー線を照射することで行われる。
また、偏光膜には、薄膜化を目的として、上記保護フィルムの代わりに、その片面または両面にウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレア樹脂などの硬化性樹脂を塗布し、硬化して偏光板とすることもできる。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光膜は、偏光性能に優れており、携帯情報端末機、パソコン、テレビ、プロジェクター、サイネージ、電子卓上計算機、電子時計、ワープロ、電子ペーパー、ゲーム機、ビデオ、カメラ、フォトアルバム、温度計、オーディオ、自動車や機械類の計器類などの液晶表示装置、サングラス、防眩メガネ、立体メガネ、ウェアラブルディスプレイ、表示素子(CRT、LCD、有機EL、電子ペーパーなど)用反射低減層、光通信機器、医療機器、建築材料、玩具などに好ましく用いられる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
尚、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
<測定条件>
(1)配向軸(遅相軸)と幅方向(TD方向)の交差角θ(°)、交差角θのふれΔθ(°)、及び複屈折ΔNxy
得られたポリビニルアルコール系フィルムの幅方向の中央部と両端部(フィルム端から10cm内側とする)から、長さ4cm×幅4cmの試験片を切り出し、リターデーション測定装置(「KOBRA−WR」王子計測機器(株)製)を用いて、配向軸(遅相軸)と幅方向(TD方向)の交差角θ(°)、交差角θのふれΔθ(°)、及び590nmにおける複屈折ΔNxy(nm)を測定した。かかる測定は、ポリビニルアルコール系フィルムの流れ方向(MD方向)の中央部と先端/終端部(フィルム端から10m内側とする)について行った。
(2)偏光度(%)、単体透過率(%)
得られた偏光膜の幅方向の中央部と両端部(膜端から10cm内側とする)から、長さ4cm×幅4cmの試験片を切り出し、自動偏光フィルム測定装置(日本分光(株)製:VAP7070)を用いて、偏光度(%)と単体透過率(%)を測定した。かかる測定は、偏光膜の流れ方向(MD方向)の中央部と先端/終端部(膜端から10m内側とする)について行った。
(3)色ムラ
得られた偏光膜の幅方向の中央部と両端部(膜端から10cm内側とする)から、長さ30cm×幅30cmの試験片を切り出し、クロスニコル状態の2枚の偏光板(単体透過率43.5%、偏光度99.9%)の間に45°の角度で挟んだのちに、表面照度14,000lxのライトボックスを用いて、透過モードで光学的な色ムラを観察し、以下の基準で評価した。
(評価基準)
○・・・色ムラなし
△・・・かすかに色ムラあり
×・・・色ムラあり
かかる評価を、偏光膜の流れ方向(MD方向)の中央部と先端/終端部(膜端から10m内側とする)について行った。
参考例1>
(ポリビニルアルコール系フィルムの作製)
5,000Lの溶解缶に、重量平均分子量142,000、ケン化度99.8モル%のポリビニルアルコール系樹脂1,000kg、水2,500kg、可塑剤としてグリセリン105kg、および界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルアミン0.25kgを入れ、撹拌しながら150℃まで昇温して加圧溶解を行い、濃度調整により樹脂濃度25%のポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を得た。次に、該ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を、2軸押出機に供給して脱泡した後、水溶液温度を95℃にし、T型スリットダイ吐出口より、回転するキャストドラムに吐出(吐出速度2.5m/分)及び流延して製膜した。得られたフィルムをキャストドラムから剥離し(フィルム幅2.1m)、流れ方向(MD方向)に搬送しながら、フィルムの表面と裏面とを合計10本の熱ロールに交互に接触させながら乾燥を行い、含水率10%のフィルム(幅2m、厚さ60μm)を得た。次に、フィルムの両端部をクリップピッチ45mmで挟持し、流れ方向(MD方向)に速度8m/分で搬送しながら、延伸機を用いて120℃で幅方向(TD方向)に1.1倍延伸して、ポリビニルアルコール系フィルム(幅2.2m、厚さ55μm、長さ2km)を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は表1に示される通りであった。
(偏光膜及び偏光板の作製)
得られたポリビニルアルコール系フィルムをロールから巻き出し、水平方向に搬送しながら、水温30℃の水槽に浸漬して膨潤させながら1.7倍に延伸した。次に、ヨウ素0.5g/L、ヨウ化カリウム30g/Lよりなる30℃の水溶液中に浸漬して染色しながら1.6倍に延伸し、ついでホウ酸40g/L、ヨウ化カリウム30g/Lの組成の水溶液(50℃)に浸漬してホウ酸架橋しながら2.1倍に一軸延伸した。最後に、ヨウ化カリウム水溶液で洗浄を行い、50℃で2分間乾燥して総延伸倍率5.8倍の偏光膜を得た。かかる製造中に破断は起きず、得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
上記で得られた偏光膜の両面に、ポリビニルアルコール水溶液を接着剤として用いて、膜厚40μmのトリアセチルセルロースフィルムを貼合し、70℃で乾燥して偏光板を得た。
参考例2>
参考例1において、延伸機を用いて110℃で幅方向(TD方向)に1.1倍延伸する以外は、参考例1と同様にしてポリビニルアルコール系フィルム(幅2.2m、厚さ55μm、長さ2km)を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は表1に示される通りであった。
更に、該ポリビニルアルコール系フィルムを用いて、参考例1と同様にして、偏光膜及び偏光板を得た。得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
<実施例3>
参考例1において、製膜時の吐出速度を0.8m/分とし、含水率5%のフィルム(幅2m、厚さ20μm)を、延伸機を用いて120℃で幅方向(TD方向)に1.2倍延伸する以外は、参考例1と同様にしてポリビニルアルコール系フィルム(幅2.4m、厚さ17μm、長さ2km)を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は表1に示される通りであった。
更に、該ポリビニルアルコール系フィルムを用いて、参考例1と同様にして、偏光膜及び偏光板を得た。原反のポリビニルアルコール系フィルムが薄型であるにもかかわらず、偏光膜製造時の延伸工程で破断は生じなかった。得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
<実施例4>
参考例1において、製膜時の吐出速度を0.8m/分とし、含水率5%のフィルム(幅2m、厚さ20μm)を、延伸機を用いて120℃で幅方向(TD方向)に1.4倍延伸した後、固定幅2.4m(1.2倍延伸相当)まで応力緩和で収縮させる以外は、参考例1と同様にしてポリビニルアルコール系フィルム(幅2.4m、厚さ17μm、長さ2km)を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は表1に示される通りであった。
更に、該ポリビニルアルコール系フィルムを用いて、参考例1と同様にして、偏光膜及び偏光板を得た。原反のポリビニルアルコール系フィルムが薄型であるにもかかわらず、偏光膜製造時の延伸工程で破断は生じなかった。得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
<比較例1>
参考例1において、フィルムの両端部をクリップで挟持せず、単純に流れ方向(MD方向)に速度8m/分で搬送しながら、120℃で加熱する以外は参考例1と同様にして、ポリビニルアルコール系フィルム(幅2m、厚さ60μm、長さ2km)を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は表1に示される通りであった。
更に、該ポリビニルアルコール系フィルムを用いて、参考例1と同様にして、偏光膜及び偏光板を得た。得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
<比較例2>
実施例3において、フィルムの両端部をクリップで挟持せず、単純に流れ方向(MD方向)に速度8m/分で搬送しながら、120℃で加熱する以外は実施例3と同様にして、ポリビニルアルコール系フィルム(幅2m、厚さ20μm、長さ2km)を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は表1に示される通りであった。
更に、該ポリビニルアルコール系フィルムを用いて、参考例1と同様にして、偏光膜の製造を試みたが、ホウ酸架橋工程における延伸中に破断が生じた。得られた偏光膜先端部の特性は表2に示される通りであった。
Figure 0006290285
Figure 0006290285
上記実施例及び比較例の結果から、配向軸(遅相軸)と幅方向(TD方向)の交差角θ(°)、及び交差角θのふれΔθ(°)が、請求項1で特定する範囲を満足するポリビニルアルコール系フィルムから得られる実施例3〜4の偏光膜は、高度な偏光度を有し、かつ色ムラの無いものであるのに対し、配向軸(遅相軸)と幅方向(TD方向)の交差角θ(°)、及び交差角θのふれΔθ(°)が、請求項1で特定する範囲外であるポリビニルアルコール系フィルムから得られる比較例1および2の偏光膜は、偏光度が劣り、色ムラも観察されるものであることがわかる。
また、実施例3〜4のポリビニルアルコール系フィルムは、交差角θ(°)が幅方向(TD方向)にも流れ方向(MD方向)にも安定しており、高分子の配向が充分に制御されていることがわかる。
更に、実施例3及び4の薄いポリビニルアルコール系フィルムからも、偏光度に優れ、色ムラの無い偏光膜が得られることがわかる。

本発明のポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光膜は、偏光性能に優れており、携帯情報端末機、パソコン、テレビ、プロジェクター、サイネージ、電子卓上計算機、電子時計、ワープロ、電子ペーパー、ゲーム機、ビデオ、カメラ、フォトアルバム、温度計、オーディオ、自動車や機械類の計器類などの液晶表示装置、サングラス、防眩メガネ、立体メガネ、ウェアラブルディスプレイ、表示素子(CRT、LCD、有機EL、電子ペーパーなど)用反射低減層、光通信機器、医療機器、建築材料、玩具などに好ましく用いられる。

Claims (4)

  1. 厚さ5〜30μm、幅2m以上、長さ2km以上であるポリビニルアルコール系フィルムであって、配向軸(遅相軸)と幅方向(TD方向)の交差角θ(°)が20°以下、かつ交差角θのふれΔθ(°)が、10°以下であることを特徴とするポリビニルアルコール系フィルム。
  2. 複屈折ΔNxyが0.001以下であることを特徴とする請求項1記載のポリビニルアルコール系フィルム。
    ここでΔNxyは、幅方向(TD方向)の屈折率をnx、流れ方向(MD方向)の屈折率をnyとした場合に、下式(A)で算出される値である。
    (A)ΔNxy=|nx−ny|
  3. 請求項1または2記載のポリビニルアルコール系フィルムを用いてなることを特徴とする偏光膜。
  4. 請求項3記載の偏光膜の少なくとも片面に保護フィルムを設けてなることを特徴とする偏光板。
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