JP6290285B2 - ポリビニルアルコール系フィルム、偏光膜及び偏光板 - Google Patents
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Description
なお、偏光膜製造の順序として、延伸と染色が逆のケースも実施されている。すなわち、原反であるポリビニルアルコール系フィルムを、水(温水を含む)で膨潤させた後、延伸し、ヨウ素などの二色性染料で染色するケースであるが、かかるケースにおいても、偏光膜の偏光性能を向上させるためには、ポリビニルアルコール系フィルムが、MD方向に良好な延伸性を有する必要がある。
上記特許文献1は、ポリビニルアルコール系フィルムを製造する時のMD方向への延伸度合い(引っ張り具合)を特定したものであるが、TD方向への延伸も考慮しなければ、ポリビニルアルコール系フィルムの面内位相差を低減できず、かつ偏光膜製造時の延伸性を改良するには不十分である。一般的に、MD方向に延伸されたポリビニルアルコール系フィルムを、偏光膜製造時にMD方向に延伸するのは困難である。すなわち、MD方向に配向したポリビニルアルコール系高分子を、更にMD方向に引っ張るのは、分子鎖を無理やり引き伸ばすことになり困難である。逆に、TD方向に配向したポリビニルアルコール系高分子を、MD方向に引っ張るのは比較的容易である。ただし、TD方向への高分子配向が均一でなければ、偏光膜製造時に均一にMD方向に延伸できない。特許文献1には、ポリビニルアルコール系フィルム製造時に、MD方向にそれほど延伸しない例(引っ張らない例)もあるが、上述したポアソン比に依存した収縮応力と脱水による収縮応力だけでは、TD方向への高分子配向を充分に均一化できないという問題がある。すなわち、TD方向にもある程度延伸するか、少なくとも幅方向を固定しなければ、高分子のTD方向への均一な配向状態は得られない。
上記特許文献3の開示技術では、フィルムの膜厚を均一にできるものの、高分子の配向までは制御できず、偏光膜製造時の延伸性を改良するには不十分である。
上記特許文献4や5の開示技術では、フィルムの面内位相差を低減できるものの、高分子をランダムに配向させているだけであり、均一な配向状態で面内位相差を低減しなければ、偏光膜製造時の延伸性を改良するには不十分である。
なお、本発明は、偏光膜製造時の延伸性が、フィルム内のポリビニルアルコール系高分子の配向状態に依存するため、配向軸を制御することにより延伸性を改良するものである。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、厚さ5〜30μm、幅2m以上、長さ2km以上であるポリビアルコール系フィルムであって、配向軸(遅相軸)と幅方向(TD方向)の交差角θ(°)が20°以下、かつ交差角θのふれΔθ(°)が、10°以下であることを特徴とするポリビニルアルコール系フィルムである。
なお、ここでいうΔNxyは、幅方向(TD方向)の屈折率をnx、流れ方向(MD方向)の屈折率をnyとした場合に、|nx−ny|で算出される数値であり、フィルムの厚さd(nm)との積(|nx−ny|×d)が面内位相差(nm)である。
かかるクリップのピッチが広すぎると、フィルムにたわみが生じたり、交差角θのふれΔθ(°)が増大する傾向がある。また、クリップの挟持位置(クリップの先端部)は、フィルム端から100mm以下が好ましい。クリップの挟持位置(先端部)が、フィルム幅方向中心部に位置しすぎると、破棄するフィルム端部が増大し、製品幅が狭くなる傾向にある。
幅固定の搬送工程を挿入する場合、固定幅を、1段階目の延伸後の幅よりも狭めることも可能である。延伸直後のフィルムは応力緩和のために収縮しやすく、脱水に伴う収縮も起きるため、固定幅をこれらの収縮幅まで狭めることが可能である。ただし、収縮幅以上に狭めると、フィルムにたわみが生じるため好ましくない。
かかる熱処理温度が、低すぎると、寸法安定性が低下しやすい傾向があり、逆に、高すぎても、偏光膜製造時の延伸性が低下する傾向がある。
また、熱処理時間は1〜60秒間であることが好ましく、特に好ましくは5〜30秒間である。熱処理時間が、短すぎると、寸法安定性が低下する傾向があり、逆に、長すぎると、偏光膜製造時の延伸性が低下する傾向がある。
本発明において、ポリビニルアルコール系フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂としては、通常、未変性のポリビニルアルコール系樹脂、即ち、酢酸ビニルを重合して得られるポリ酢酸ビニルをケン化して製造される樹脂が用いられる。必要に応じて、酢酸ビニルと、少量(通常、10モル%以下、好ましくは5モル%以下)の酢酸ビニルと共重合可能な成分との共重合体をケン化して得られる樹脂を用いることもできる。酢酸ビニルと共重合可能な成分としては、例えば、不飽和カルボン酸(例えば、塩、エステル、アミド、ニトリル等を含む)、炭素数2〜30のオレフィン類(例えば、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン等)、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等が挙げられる。また、ケン化後の水酸基を化学修飾して得られる変性ポリビニルアルコール系樹脂を用いることもできる。
ここで、本発明における平均ケン化度は、JIS K 6726に準じて測定されるものである。
かかるポリビニルアルコール系樹脂水溶液の樹脂温度が低すぎると流動不良となる傾向があり、高すぎると発泡する傾向がある。
かかる水溶液の粘度が、低すぎると流動不良となる傾向があり、高すぎると流涎が困難となる傾向がある。
かかる吐出速度が遅すぎると生産性が低下する傾向があり、速すぎると流涎が困難となる傾向がある。
かかる直径が小さすぎると乾燥長が不足し速度が出にくい傾向があり、大きすぎると輸送性が低下する傾向がある。
キャストドラムの幅が小さすぎると生産性が低下する傾向がある。
かかる回転速度が遅すぎると生産性が低下する傾向があり、速すぎると乾燥が不十分となる傾向がある。
かかる表面温度が低すぎると乾燥不良となる傾向があり、高すぎると発泡してしまう傾向がある。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、延伸性に優れるため、偏光膜用の原反として特に好ましく用いられる。
なお、偏光度は、一般的に2枚の偏光膜を、その配向方向が同一方向になるように重ね合わせた状態で、波長λにおいて測定した光線透過率(H11)と、2枚の偏光膜を、配向方向が互いに直交する方向になる様に重ね合わせた状態で、波長λにおいて測定した光線透過率(H1)より、下式にしたがって算出される。
〔(H11−H1)/(H11+H1)〕1/2
単体透過率は、分光光度計を用いて偏光膜単体の光線透過率を測定して得られる値である。
以下、本発明の偏光板の製造方法について説明する。
尚、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
(1)配向軸(遅相軸)と幅方向(TD方向)の交差角θ(°)、交差角θのふれΔθ(°)、及び複屈折ΔNxy
得られたポリビニルアルコール系フィルムの幅方向の中央部と両端部(フィルム端から10cm内側とする)から、長さ4cm×幅4cmの試験片を切り出し、リターデーション測定装置(「KOBRA−WR」王子計測機器(株)製)を用いて、配向軸(遅相軸)と幅方向(TD方向)の交差角θ(°)、交差角θのふれΔθ(°)、及び590nmにおける複屈折ΔNxy(nm)を測定した。かかる測定は、ポリビニルアルコール系フィルムの流れ方向(MD方向)の中央部と先端/終端部(フィルム端から10m内側とする)について行った。
得られた偏光膜の幅方向の中央部と両端部(膜端から10cm内側とする)から、長さ4cm×幅4cmの試験片を切り出し、自動偏光フィルム測定装置(日本分光(株)製:VAP7070)を用いて、偏光度(%)と単体透過率(%)を測定した。かかる測定は、偏光膜の流れ方向(MD方向)の中央部と先端/終端部(膜端から10m内側とする)について行った。
得られた偏光膜の幅方向の中央部と両端部(膜端から10cm内側とする)から、長さ30cm×幅30cmの試験片を切り出し、クロスニコル状態の2枚の偏光板(単体透過率43.5%、偏光度99.9%)の間に45°の角度で挟んだのちに、表面照度14,000lxのライトボックスを用いて、透過モードで光学的な色ムラを観察し、以下の基準で評価した。
(評価基準)
○・・・色ムラなし
△・・・かすかに色ムラあり
×・・・色ムラあり
かかる評価を、偏光膜の流れ方向(MD方向)の中央部と先端/終端部(膜端から10m内側とする)について行った。
(ポリビニルアルコール系フィルムの作製)
5,000Lの溶解缶に、重量平均分子量142,000、ケン化度99.8モル%のポリビニルアルコール系樹脂1,000kg、水2,500kg、可塑剤としてグリセリン105kg、および界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルアミン0.25kgを入れ、撹拌しながら150℃まで昇温して加圧溶解を行い、濃度調整により樹脂濃度25%のポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を得た。次に、該ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を、2軸押出機に供給して脱泡した後、水溶液温度を95℃にし、T型スリットダイ吐出口より、回転するキャストドラムに吐出(吐出速度2.5m/分)及び流延して製膜した。得られたフィルムをキャストドラムから剥離し(フィルム幅2.1m)、流れ方向(MD方向)に搬送しながら、フィルムの表面と裏面とを合計10本の熱ロールに交互に接触させながら乾燥を行い、含水率10%のフィルム(幅2m、厚さ60μm)を得た。次に、フィルムの両端部をクリップピッチ45mmで挟持し、流れ方向(MD方向)に速度8m/分で搬送しながら、延伸機を用いて120℃で幅方向(TD方向)に1.1倍延伸して、ポリビニルアルコール系フィルム(幅2.2m、厚さ55μm、長さ2km)を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は表1に示される通りであった。
得られたポリビニルアルコール系フィルムをロールから巻き出し、水平方向に搬送しながら、水温30℃の水槽に浸漬して膨潤させながら1.7倍に延伸した。次に、ヨウ素0.5g/L、ヨウ化カリウム30g/Lよりなる30℃の水溶液中に浸漬して染色しながら1.6倍に延伸し、ついでホウ酸40g/L、ヨウ化カリウム30g/Lの組成の水溶液(50℃)に浸漬してホウ酸架橋しながら2.1倍に一軸延伸した。最後に、ヨウ化カリウム水溶液で洗浄を行い、50℃で2分間乾燥して総延伸倍率5.8倍の偏光膜を得た。かかる製造中に破断は起きず、得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
上記で得られた偏光膜の両面に、ポリビニルアルコール水溶液を接着剤として用いて、膜厚40μmのトリアセチルセルロースフィルムを貼合し、70℃で乾燥して偏光板を得た。
参考例1において、延伸機を用いて110℃で幅方向(TD方向)に1.1倍延伸する以外は、参考例1と同様にしてポリビニルアルコール系フィルム(幅2.2m、厚さ55μm、長さ2km)を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は表1に示される通りであった。
更に、該ポリビニルアルコール系フィルムを用いて、参考例1と同様にして、偏光膜及び偏光板を得た。得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
参考例1において、製膜時の吐出速度を0.8m/分とし、含水率5%のフィルム(幅2m、厚さ20μm)を、延伸機を用いて120℃で幅方向(TD方向)に1.2倍延伸する以外は、参考例1と同様にしてポリビニルアルコール系フィルム(幅2.4m、厚さ17μm、長さ2km)を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は表1に示される通りであった。
更に、該ポリビニルアルコール系フィルムを用いて、参考例1と同様にして、偏光膜及び偏光板を得た。原反のポリビニルアルコール系フィルムが薄型であるにもかかわらず、偏光膜製造時の延伸工程で破断は生じなかった。得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
参考例1において、製膜時の吐出速度を0.8m/分とし、含水率5%のフィルム(幅2m、厚さ20μm)を、延伸機を用いて120℃で幅方向(TD方向)に1.4倍延伸した後、固定幅2.4m(1.2倍延伸相当)まで応力緩和で収縮させる以外は、参考例1と同様にしてポリビニルアルコール系フィルム(幅2.4m、厚さ17μm、長さ2km)を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は表1に示される通りであった。
更に、該ポリビニルアルコール系フィルムを用いて、参考例1と同様にして、偏光膜及び偏光板を得た。原反のポリビニルアルコール系フィルムが薄型であるにもかかわらず、偏光膜製造時の延伸工程で破断は生じなかった。得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
参考例1において、フィルムの両端部をクリップで挟持せず、単純に流れ方向(MD方向)に速度8m/分で搬送しながら、120℃で加熱する以外は参考例1と同様にして、ポリビニルアルコール系フィルム(幅2m、厚さ60μm、長さ2km)を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は表1に示される通りであった。
更に、該ポリビニルアルコール系フィルムを用いて、参考例1と同様にして、偏光膜及び偏光板を得た。得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
実施例3において、フィルムの両端部をクリップで挟持せず、単純に流れ方向(MD方向)に速度8m/分で搬送しながら、120℃で加熱する以外は実施例3と同様にして、ポリビニルアルコール系フィルム(幅2m、厚さ20μm、長さ2km)を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は表1に示される通りであった。
更に、該ポリビニルアルコール系フィルムを用いて、参考例1と同様にして、偏光膜の製造を試みたが、ホウ酸架橋工程における延伸中に破断が生じた。得られた偏光膜先端部の特性は表2に示される通りであった。
また、実施例3〜4のポリビニルアルコール系フィルムは、交差角θ(°)が幅方向(TD方向)にも流れ方向(MD方向)にも安定しており、高分子の配向が充分に制御されていることがわかる。
更に、実施例3及び4の薄いポリビニルアルコール系フィルムからも、偏光度に優れ、色ムラの無い偏光膜が得られることがわかる。
Claims (4)
- 厚さ5〜30μm、幅2m以上、長さ2km以上であるポリビニルアルコール系フィルムであって、配向軸(遅相軸)と幅方向(TD方向)の交差角θ(°)が20°以下、かつ交差角θのふれΔθ(°)が、10°以下であることを特徴とするポリビニルアルコール系フィルム。
- 複屈折ΔNxyが0.001以下であることを特徴とする請求項1記載のポリビニルアルコール系フィルム。
ここでΔNxyは、幅方向(TD方向)の屈折率をnx、流れ方向(MD方向)の屈折率をnyとした場合に、下式(A)で算出される値である。
(A)ΔNxy=|nx−ny| - 請求項1または2記載のポリビニルアルコール系フィルムを用いてなることを特徴とする偏光膜。
- 請求項3記載の偏光膜の少なくとも片面に保護フィルムを設けてなることを特徴とする偏光板。
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