JP2018036466A - 定着部材及びこれを用いた定着装置並びに定着部材の製造方法 - Google Patents

定着部材及びこれを用いた定着装置並びに定着部材の製造方法 Download PDF

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Hiroki Muramatsu
弘紀 村松
直紀 秋山
Naoki Akiyama
直紀 秋山
凡人 杉本
Tsuneto Sugimoto
凡人 杉本
傑 竹内
Suguru Takeuchi
傑 竹内
康弘 宮原
Yasuhiro Miyahara
康弘 宮原
田中 茂
Shigeru Tanaka
茂 田中
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Yuji Kitano
祐二 北野
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松崇 前田
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Abstract

【課題】耐摩耗性を高めるとともに、定着性を劣化させずに長手方向の破れを抑制可能な定着部材及びこれを用いた定着装置並びに定着部材の製造方法を提供する。【解決手段】厚さ方向に順に、基層と、弾性層と、架橋がなされた樹脂製の被覆層と、を備える定着部材であって、前記弾性層は、前記基層に接近する側で第1の線膨張係数R1を備え、かつ、前記被覆層に接近する側で第2の線膨張係数R2を備え、前記被覆層の線膨張係数をSとするとき、R1<R2≦Sなる条件を満たし、かつ、前記弾性層は、厚さ方向で第1の位置に対し、前記第1の位置より前記被覆層に近い第2の位置において、線膨張係数が低くないことを特徴とする。【選択図】図3

Description

本発明は、定着部材及びこれを用いた定着装置並びに定着部材の製造方法に関する。
プリンタ、コピー機、ファクシミリ等の電子写真画像形成装置の定着装置に用いられる定着部材として、フィルム形状やローラ形状のものがある。これら定着部材として、耐熱樹脂製或いは金属製のフィルム或いはローラ形状の基材上に、必要に応じて、耐熱ゴム等からなる弾性層が形成され、そして表層にはトナーに対して優れた離型性を有するフッ素樹脂を含むものが知られている。ここで、表層に含有させるフッ素樹脂としては、耐熱性に優れる、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)が好ましく用いられる。
ところで、近年、印刷スピードの高速化に伴い、定着部材に求められる耐久性は更に高くなる傾向にある。特に、定着部材の表層材料は、記録材と接触するため記録材に因る摩耗が発生し易く、定着部材の短寿命化を起こしてしまうという課題が有った。この定着表層部材の摩耗という課題に対し、表層材料の耐摩耗性を高めるために、フッ素樹脂層を加熱溶融した状態において電子線を照射することで架橋させ、耐摩耗性を向上させる検討が多くなされてきた(特許文献1〜3)。
特許文献1では、温度、線量、酸素濃度を所定条件に設定した状態で、フッ素樹脂に電子線を当てて架橋させる方法、特許文献2では、押出成形をしつつ電子線を照射してフッ素樹脂チューブを作成する方法が示されている。また、特許文献3では、電子線架橋によって強化されたフッ素樹脂を摺動シートとして活用する方法が示されている。
特開2010−155443号広報 特開2013−189650号公報 特開2006−91499号公報
ここで、一般に高分子は架橋をすることによって耐摩耗性等の性質が向上することは知られているが、同時に、高分子の破断伸びや破断強度の低減も発生してしまう。特に、押出成形で作成されたチューブ体においては、電子線架橋後の破断伸びの低減が著しい。このため、架橋したチューブ体においては、定着フィルム製造時にフッ素樹脂のチューブ体を基材に被覆する際に拡張する場合、チューブの長手方向(スラスト方向)の破れが発生し易くなる。
また、使用時において周方向における繰り返し屈曲によっても長手方向の破れが発生してしまうという課題があった。特に、特許文献2に記載するような押出成形後に架橋をするような場合は、分子配向と垂直な方向への伸びが顕著に低下するため、使用時の長手方向の破れが発現し易いことが分かっている。また、繰り返しの昇温降温による熱履歴に因っても長手方向の破れが発生してしまうことも確認できている。
なお、この熱履歴に因る長手方向の破れを抑制する方法として、熱伝導フィラーの少ない線膨張係数の大きい弾性層を用いることが好ましいが、その場合、定着性が劣化し省エネ性が低下してしまうという課題が有った。
本発明の目的は、耐摩耗性を高めるとともに、定着性を劣化させずに長手方向の破れを抑制可能な定着部材及びこれを用いた定着装置並びに定着部材の製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明に係る定着部材は、厚さ方向に順に、基層と、弾性層と、架橋がなされた樹脂製の被覆層と、を備える定着部材であって、前記弾性層は、前記基層に接近する側で第1の線膨張係数R1を備え、かつ、前記被覆層に接近する側で第2の線膨張係数R2を備え、前記被覆層の線膨張係数をSとするとき、
R1<R2≦S
なる条件を満たし、かつ、前記弾性層は、厚さ方向で第1の位置に対し、前記第1の位置より前記被覆層に近い第2の位置において、線膨張係数が低くないことを特徴とする。
また、本発明に係る定着装置は、上記定着部材と、該定着部材を加熱する、もしくは発熱させる部材と、前記定着部材に対向し、前記定着部材と共にニップ部を形成する対向部材と、を有し、前記定着部材を回転させて前記ニップ部で記録材を挟持搬送することを特徴とする。
また、本発明に係る定着部材の製造方法は、厚さ方向に順に、基層と、弾性層と、架橋がなされた樹脂製の被覆層と、を備え、前記弾性層は、前記基層に接近する側で第1の線膨張係数R1を備え、かつ、前記被覆層に接近する側で第2の線膨張係数R2を備え、前記被覆層の線膨張係数をSとするとき、
R1<R2≦S
なる条件を満たし、かつ、前記弾性層は、厚さ方向で第1の位置に対し、前記第1の位置より前記被覆層に近い第2の位置において、線膨張係数が低くない定着部材の製造方法であって、前記被覆層として樹脂を押出成形によって円筒形状に成型する第1の工程と、前記樹脂に対する電子線照射によって架橋を行う第2の工程と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、耐摩耗性を高めるとともに、定着性を劣化させずに長手方向の破れを抑制可能な定着部材及びこれを用いた定着装置を提供することができる。
本発明の実施形態に係る定着装置を搭載した画像形成装置の模式図である。 第1の実施形態に係る定着装置の模式図である。 第1の実施形態における定着フィルムの模式図である。 比較例における定着フィルムの模式図で、表層が長手方向に裂ける現象を説明する図でもある。 未架橋PFAチューブを被覆する際の工程の模式図である。 第1の実施形態における表層材料に対する歪みを説明する模式図である。 第2の実施形態における定着フィルムの模式図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
《第1の実施形態》
(画像形成装置)
図1は、本実施形態の定着部材及びこれを用いた定着装置を搭載した画像形成装置の一例であるカラー電子写真プリンタの断面図であり、シートの搬送方向に沿った断面図である。本実施形態では、カラー電子写真プリンタを単に「プリンタ」という。
図1に示すプリンタは、Y(イエロ)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Bk(ブラック)の各色の画像形成部10を備えている。感光ドラム11は、帯電器12によって予め帯電される。その後、感光ドラム11は、レーザスキャナ13によって、潜像を形成されている。潜像は、現像器14によってトナー像になる。感光ドラム11のトナー像は、一次転写ブレード17によって、像担持体である例えば中間転写ベルト31に順次転写される。転写後、感光ドラム11に残ったトナーは、クリーナ15によって除去される。この結果、感光ドラム11の表面は、清浄になり、次の画像形成に備える。
一方、シートPは、給紙カセット20、又はマルチ給紙トレイ25から、1枚ずつ送り出されてレジストローラ対23に送り込まれる。レジストローラ対23は、シートPを一旦受け止めて、シートが斜行している場合、真っ直ぐに直す。そして、レジストローラ対23は、中間転写ベルト31上のトナー像と同期を取って、シートPを中間転写ベルト31と二次転写ローラ35との間に送り込む。中間転写ベルト上のカラーのトナー像は、転写体である例えば二次転写ローラ35によってシートPに転写される。その後、シートのトナー像は、シートが定着器40によって、加熱加圧されることでシートに定着される。
シートの片面だけにトナー像を形成する場合、切り換えフラッパ61の切り換えによりシートを排紙ローラ63を介してシートを画像形成装置1の側面に配置されている排紙トレイ64に排出する。もしくは、画像形成装置1の上面に配置されている排紙トレイ65に排出する。
シートの両面にトナー像を形成する場合、定着器40によってトナー像を定着されたシートPは、実線の位置にいるフラッパ61によって上方へ案内されて、後端が反転ポイントRに達したとき、搬送路73によってスイッチバック搬送されて表裏反転される。その後、シートPは、両面搬送路70を搬送されて、片面画像形成と同様の過程を経て他方の面にトナー像を形成されて、排紙トレイ64または排紙トレイ65上に排出される。
なお、排紙ユニット60は、回動支点軸60Qによって、左右方向に回動するようになっている。
(定着装置)
次に、本実施形態に係る定着部材を用いた定着装置について説明する。図2は、定着装置40の概略構成図で、定着装置としてフィルム加熱方式のもの(テンションレスタイプ)を用いた。本実施形態ではこのような定着装置を用いたが、ローラ対方式ややフィルム方式の定着装置でも実施可能である。
図2で、43は加熱体(ヒータ部材)としてのとしてのセラミックヒーター(以下、ヒーターと記す)である。このヒータ43は、紙面に垂直な長手方向に細長い薄板状のセラミック基板と、この基板面に具備させた通電発熱抵抗体層を基本構成とするもので、発熱抵抗体層に対する通電により全体に急峻な立ち上がり特性で昇温する、低熱容量のヒータである。また、記録材の長手方向におけるサイズ(幅サイズ)に応じて、通電領域を切り替える構成となっている。
(定着部材)
41は定着部材として熱を伝達する加熱部材としての円筒状(エンドレス、無端状)の耐熱性のベルト部材である定着フィルムであり、その内面を加熱するヒータ43を含む支持部材にルーズに外嵌させてある。本実施形態における定着フィルム41は、図3に示すように、厚さ方向に順に基材(基層)41b、第1の弾性層41d、第2の弾性層41c、被覆層としての樹脂製の表層41aの4層を複合構造として備えた定着フィルムである。
表層41aとしては、厚さ100μm以下、好ましくは10〜70μmのフッ素樹脂材料を使用することができる。フッ素樹脂層としては、例えばPTFE、FEP、PFAなどが挙げられる。本実施形態では、厚さ10μmのPFAチューブを用いた。
そして、金属層である基材(基層)41bは、弾性層と同様にクイックスタート性を向上させるために、厚さとして100μm以下、好ましくは50μm以下20μm以上の耐熱性材料を使用することができる。例えば、SUS、ニッケルなどの金属フィルムを使用できる。本実施形態では、厚さが30μm、直径が25mmの円筒状ニッケル金属フィルムを用いた。
第2の弾性層41cは、表層41aと第1の弾性層41dに挟まれている。また、表層41aと線膨張係数が近づくように、ゴム成分以外の熱伝導性を向上するため等に用いるフィラーの添加量を少なくした材料とした。本実施形態では、例えば、ゴム硬度10度(JIS−A)、熱伝導率0.5W/m・K、厚さ50μmのシリコーンゴムを用いた。
一方、第1の弾性層41dは、第2の弾性層41cと基層41bに挟まれている。また、熱容量を小さくしてクイックスタート製を向上させるために、熱伝導性を高める為のフィラーを添加した。本実施形態では、ゴム硬度10度(JIS−A)、熱伝導率1.3W/m・K、厚さ200μmのシリコーンゴムを用いた。
(加圧ローラ)
図2で、44は加圧部材(対向部材)としての耐熱性で弾性の加圧ローラであり、芯金と、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱ゴム、あるいはシリコーンゴムの発泡体からなる弾性層からなり、芯金の両端部を回転自由に軸受け支持させて配設してある。
そして、不図示の押付部材で押圧させることで、定着フィルム41を介してヒータ43の下面と加圧ローラ44の上面をローラ弾性層の弾性に抗して圧接させて、記録材が挟持搬送される加熱部としての所定幅の定着ニップ部を形成させてある。
ここで、加圧ローラ44は、不図示の駆動手段により矢印の反時計方向に所定の回転周速度にて回転駆動される。この加圧ローラ44の回転駆動による加圧ローラ44と定着フィルム41との、定着ニップ部における圧接摩擦力により円筒状の定着フィルム41に回転力が作用する。そして、定着フィルム41がヒータ43の下向き面に密着して摺動しながら矢印の時計方向に従動回転状態になる。ヒータ43を保持する部材であるヒーターホルダ46は、定着フィルム41の回転ガイド部材でもある。
加圧ローラ44が回転駆動され、それに伴って定着フィルム41が従動回転状態になり、またヒータ43に通電がなされて該ヒータ43が迅速に昇温して所定の温度に立ち上がり温調された状態となる。この状態において、定着ニップ部の定着フィルム41と加圧ローラ44との間に未定着トナー像Tを担持した記録材Pが導入される。そして、定着ニップ部において、記録材Pのトナー像担持側面が定着フィルム41の外面に密着して定着フィルム41と一緒に搬送されていく。
この搬送過程において、ヒータ43で加熱された定着フィルム41の熱により記録材Pが加熱され、記録材P上の未定着トナー像Tが記録材P上に加熱・加圧されて溶融定着される。定着ニップ部Tを通過した記録材Pは定着フィルム41の面から曲率分離して排出搬送されていく。
(温度制御)
図2で、45は接触式温度計(サーミスタ)であり、ヒータ43によって加熱された定着フィルム41の温度を計測し、その検出結果を不図示の温度制御手段に渡す構成となっている。
(定着部材の表層の長手方向の裂けの発生)
次に、記録材が定着装置へ連続的に搬送される際に、定着部材の表層が長手方向(スラスト方向)に裂ける現象の発生機構について、図4を用いて説明する。図4は、定着フィルムの回転時における最大歪み発生量の構造解析の結果を示した模式図である。この結果より、定着フィルム表面には、およそ3%の歪みが発生していることが分かる。
表層に用いられるPFA樹脂の降伏歪み(5%耐力)はおよそ15%、破断歪みは200〜600%であるため、表層の塑性変形や裂けといった破断現象は理論上では発生しない。しかしながら、実際は塑性変形の発生よりも小さい歪みを繰り返し印加することによって、フッ素樹脂材料に疲労破壊が発生することが分かっている。
筆者らの検討によって、長手方向への裂けの発生は、表層樹脂と弾性層の熱膨張によって表層樹脂に生じる歪みであることが確認できている。定着装置を使用する際、記録材(記録紙)を定着ニップ部に通過させる通紙時と、記録材(記録紙)を定着ニップ部に通過させない非通紙時で定着ベルトの表面温度が急激に変化する。その急激な温度変化によって定着ベルトの弾性層と表層には膨張と収縮が発生し、その際の線膨張係数の差の分だけ、表層に対して引っ張り方向のひずみが生じる。この際の線膨張係数の差が歪みとなって表層へのダメージになると考えられている。
(電子線照射の工程)
次に、本実施形態に係る定着部材の作製方法として、特に電子線照射の工程について説明する。本実施形態では、基材と、PFAチューブを含む表層とを有する定着部材を用いた。電子線照射の工程は、以下に示す第1の工程(1)、第2の工程(2)を含む表層の形成工程である。
(1)第1の工程
基材の表面に押出成形によって円筒形状に成型したPFAチューブを被覆する。
(2)第2の工程
PFAチューブのガラス転移点(Tg)以上、PFAチューブのTmより50℃低い温度(Tm−50℃)以下の温度範囲に調整しておく。そして、PFAチューブを含む膜の表面に、酸素濃度が1000ppm以下の雰囲気下、電離性放射線を照射し、該膜中のPFAチューブに下記構造式(1)で示される部分構造を形成せしめる。
以下、各工程について詳述する。
(第1の工程)
先ず、弾性層の表面に、未架橋のPFAを含む膜を形成する。ここで、本実施形態において表層の主たる材料として用いるフッ素樹脂であるPFAは、ポリテトラフルオロエチレン(以降、「PTFE」と略)と同等の耐熱性を持ちながら、PTFEと比べ、溶融粘度が低い。そのため、加工性や平滑性に優れる。
本実施形態では、押出成形によって未架橋PFAを含むチューブ(以降、「未架橋PFAチューブ」ともいう))を作成する。この未架橋PFAチューブを、基材の周囲に被覆することによって、基材の表面に未架橋のPFAを含む膜を形成する方法により、基材上にPFA表層の形成を行う。
図5は、未架橋PFAチューブを被覆する際の工程の模式図である。
(イ)基材41bより直径が大きくなるように離型層チューブ41aを拡張し、その内側に基材41bに弾性層41c、41dを設け、弾性層41c、41d上に接着剤を塗布した複層構成からなる円筒状の部材を挿入する。
(ロ)離型層チューブ41aを長手方向(スラスト方向)に引っ張る
(ハ)長手方向(スラスト方向)に引っ張ることによって離型層チューブ41aがポアソン変形をし、円筒状部材の表面上に接する。これを加熱焼成することによって離型層チューブ41aと円筒状部材を接着させる。
ここで、離型層チューブを引っ張ることによりチューブの緩みを無くすことができ、使用時のしわ発生を防ぐことができる。しかしながら、引っ張る力が大きすぎる場合は、チューブ内の分子鎖が長手方向(スラスト方向)に配向してしまい、裂けなどが発生し易くなってしまうことが知られている。
(第2の工程)
次いで、この膜の温度を、該PFAチューブのガラス転移点(Tg)以上、該PFAのTmより50℃低い温度(Tm−50℃)以下の温度範囲に調整する。PFAを含む多くのフッ素樹脂は、常温下での電離性放射線照射では分解反応しか起こらない分解型の樹脂である。しかし、本発明者らの検討によると、PFAでは融点近傍までの加熱をしなくても、ガラス転移点以上の加熱で十分架橋反応が起こり、耐摩耗性が向上することが確認された。
PTFEの場合、剛直で一本鎖に近い分子構造のPTFEを架橋させるためには、融点近傍加熱により、結晶を溶融させ、分子鎖が動き易い状態で電離性放射線の照射を行う必要がある。しかし、PTFEとは異なり、側鎖を持つことで柔軟な非晶部分を有するPFAは、ガラス転移点(Tg)以上で非晶部分が柔軟に動くことができるため、ガラス転移点(Tg)以上で電離性放射線の照射による架橋が可能となると考えられる。そのため、後述する第2の工程としての電離性放射線照射工程に供する、未架橋のPFAを含む膜の温度は、PFAのガラス転移点(Tg)以上とすることが好ましい。
本工程は、上記第1の工程にて調整した温度範囲にある、未架橋のPFAを含む膜の表面に、酸素濃度が1000ppm以下の雰囲気下、電離性放射線を照射して、PFAに前記構造式(1)で示される部分構造を形成せしめる工程である。
そして、本工程で用いる電離性放射線としては、γ線、電子線、X線、中性子線、あるいは高エネルギーイオン等が挙げられる。中でも、装置の汎用性の観点から、電子線が好ましい。放射線の照射線量の目安としては、1〜1000kGy、特には、200〜600kGyの範囲内で、未架橋のPFAに前記構造式(1)で示される架橋構造を形成させるに必要な量を適宜選択すればよい。
照射線量を上記の範囲内で設定することで、PFAの分子鎖が切断されることによって生成する低分子量成分の揮発によるPFAの重量減少を抑制することができる。 本工程に係る電離性放射線の照射は、未架橋のPFAを含む膜を、酸素が実質的に不在の雰囲気下で行うことが必要である。具体的な雰囲気としては、酸素濃度が1000ppm以下が好ましい。酸素濃度が1000ppm以下であれば、真空下、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行なってもよい。コスト面から、窒素雰囲気下が好ましい。
(本実施形態に係る定着部材の製造方法)
次に、本実施形態に係る定着部材の製造方法について説明する。本実施形態では、図3に示されるような定着ベルトを用いた。すなわち、本実施形態では、表層41aとして、451HP−J(デュポン株式会社製)の押出成形によって作製された、厚さ10μmのPFAチューブを用いた。また、基材41bとしては、厚さ30μm、直径25mm、スラスト長さ330mmの円筒状ニッケル金属フィルムを用いた。
また、第1の弾性層41dは、ゴム硬度10度(JIS−A)、熱伝導率0.5W/m・K、厚さ50μmのシリコーンゴムを用いた。そして、第2の弾性層41cは、ゴム硬度10度(JIS−A)、熱伝導率1.3W/m・K、厚さ300μmのシリコーンゴムを用いた。
この第2の弾性層41c上に接着剤として、液状シリコーンゴム混合物(商品名:SE1819CV、東レ・ダウコーニング株式会社製)を、リング形状の塗工ヘッドを用いて塗布して液状シリコーンゴム混合物の塗膜を形成した。そして、その上に表層41aの未架橋PFAチューブを被覆した。また、被覆後は、温度が150℃の状態にある該PFA樹脂の膜の表面に対して、照射線量が100kGyとなるように電子線を照射した。
ここで、本実施形態では、2層構成の弾性層は、基層に接近する側で第1の線膨張係数R1を備え、かつ、被覆層(表層)に接近する側で第2の線膨張係数R2を備え、被覆層(表層)の線膨張係数をSとするとき、
R1<R2≦S
なる条件を満たす。
かつ、本実施形態における弾性層は、厚さ方向で第1の位置に対し、第1の位置より被覆層(表層)に近い第2の位置において、線膨張係数が低くないようにする。これにより、本実施形態では、弾性層は、厚さ方向において線膨張係数の大小関係が逆転する位置(第1及び第2の位置)が無い。
具体的には、第1の位置と第2の位置が異なる層内の場合(すなわち、第1の位置が第1の弾性層41d、第2の位置が第2の弾性層41cにある場合)は、第1の位置より被覆層(表層)に近い第2の位置において、線膨張係数が高い(低くない)。また、第1の位置と第2の位置が同じ層内の場合は、線膨張係数が同じため、第1の位置より被覆層(表層)に近い第2の位置において、線膨張係数が低くない。
本実施形態に係る定着部材の製造方法は、以下のように要約される。すなわち、被覆層として樹脂を押出成形によって円筒形状に成型する第1の工程と、樹脂に対する電子線照射によって架橋を行う第2の工程と、を有する。更には、第2の工程の前に、基層に弾性層が設けられた状態で被覆層を被覆する、もしくは被覆層をスラスト方向に引っ張る工程を有する。
本実施形態で実際に用いた定着部材の材料の線膨張係数および熱伝導率は、以下の表1に示す通りである。
(本実施形態におけるPFA樹脂の評価方法)
次に、本実施形態におけるPFA樹脂の評価方法について説明する。先ず、本実施形態におけるPFA樹脂中の架橋構造の評価方法について説明する。PFA樹脂中の前記構造式(1)で示される構造の存在は、架橋構造の有無については、フッ素核を利用する核磁気共鳴分光法(19F−NMR)によって確認することができる。フッ素樹脂は溶ける溶媒を持たないので、測定は固体状態のまま行われる。PFAは、下記構造式(2)で示されるように、主鎖は直鎖状であり、側鎖部分以外は分岐構造を持たないことが知られている。
ここで、低酸素雰囲気下で、融点近傍にまで加熱した未架橋のPFAに対して電子線を照射すると、PFAの分子鎖が切断され、架橋が起こり、下記構造式(1)で示されるような分岐構造が新たに形成される。
このようにして新たに形成されてなる、構造式(1)で示される部分構造中に新たに形成される三級炭素の隣の炭素上のフッ素は、19F−NMRスペクトルにおいて、−103ppm付近にピークを持つ。従って、19F−NMRスペクトルにおける、−103ppm付近への新たなこのピーク(架橋点ピーク)の出現をもって、上記構造式(1)で示される部分構造がPFA中に存在することを確認することができ、架橋構造の有無を判別できる。また、このときの測定温度は250℃で、ピーク値は外部標準として六フッ化ベンゼンを用いて決定されている。
本実施形態において、第2の工程を経て得られた定着フィルムの表層中のPFAの分子内に上記構造式(1)で示される部分構造が形成されていることを確認するために、表層の一部を切り出し、19F−NMRで分析した。その結果、−103ppm近傍に新たなピークの発現が認められた。
(第1、第2の比較例の製造方法)
第1、第2の比較例として、図4に示されるような弾性層が単層(一層)の定着ベルトを用いた。具体的には、第1の比較例としては以下の構成を用いた。すなわち、基材41bとしては厚さ30μm、直径25mm、スラスト長さ330mmの円筒状ニッケル金属フィルムを用いた。また、弾性層41eは、ゴム硬度10度(JIS−A)、熱伝導率1.3W/m・K、厚さ300μmのシリコーンゴムを用いた。
また、第2の比較例としては以下の構成を用いた。基材41bとしては厚さ30μm、直径25mm、スラスト長さ330mmの円筒状ニッケル金属フィルムを用いた。また、弾性層41eは、ゴム硬度10度(JIS−A)、熱伝導率0.5W/m・K、厚さ50μmのシリコーンゴムを用いた。その上に表層41aの未架橋PFAチューブを被覆し、温度が150℃の状態にある該PFA樹脂の膜の表面に対して電子線を、照射線量が100kGyとなるように電子線を照射した。
そして、その上に表層41aの未架橋PFAチューブを被覆し、温度が150℃の状態にある該PFA樹脂の膜の表面に対して電子線を、照射線量が100kGyとなるように電子線を照射した。
なお、比較例に用いた弾性層の物性は以下の表に示す通りである。
(比較例との比較)
次に、これらの定着フィルムを用いた場合の実用条件での耐久性と定着性について、本実施形態を第1、第2の比較例と比較した。本実験では、図2に示される定着装置を用いた。
耐久性の比較実験の条件としては、加圧力を総圧で300N、加圧ローラの回転速度を200mm/sとし、記録材と接触する領域の定着フィルム外周温度が170℃となるように制御した。記録材としてCS−814(日本製紙(株)社製)を用いた。寿命の判定条件としては、定着表層でスラスト方向に表層が裂けるまでのプリント枚数を「裂け寿命」として、いずれか一方が発生するまでの枚数を比較した。なお、耐久性は50万枚まで継続して行い、それ以降は行わなかった。
また、定着性の比較実験の条件としては、同じく加圧力を総圧で300N、加圧ローラの回転速度を200mm/sとし、記録材と接触する領域の定着フィルム外周温度が170℃となるように制御した。記録材としてCS−814(日本製紙(株)社製)を用い、記録材上にトナーが1.0mg/cm2積載された状態で通紙し、定着後のトナーに剥がれ等が無い場合を定着性良好として○、剥がれ等が発生してしまった場合を定着不良として×と判断した。
比較実験の結果を表にまとめると、以下の通りとなる。
先ず、定着性の結果に関して説明する。本実施形態、および第1の比較例では、定着性が良好であったが、第2の比較例では定着性が不良であった。これは、第1の比較例に用いた弾性層の熱伝導率が十分高いのに対し、第2の比較例に用いた弾性層の熱伝導率は低く、これにより必要な定着温度が上昇したためであると考えられる。また、本実施形態の場合は、第1の比較例の弾性層と第2の比較例の弾性層を複層で使っているため、定着性を満足することができたと考えられる。
次に、耐久性の結果に関して説明する。本実施形態、および第2の比較例では耐久性が良好であったが、第1の比較例では耐久性が著しく低下していた。これは、第1の比較例に用いた弾性層の線膨張係数が被覆層(表層)と近いためである一方、第2の比較例のように弾性層の線膨張係数が被覆層(表層)と遠いためであるといえる。
この要因を、図5と図6を用いて説明する。図5は比較例2の模式図である。比較例2では、定着ニップ部の外側ではベルト温度が高い状態になるため、熱膨張によって被覆層(表層)と弾性層が伸びる。そして、定着ニップ部の内部に入ると、紙と接触するため部材の温度は低下し、被覆層(表層)と弾性層が収縮する。このような状態が繰り返されると、定着表層に対して、熱膨張と収縮による繰り返しひずみが発生し、この繰り返しによって部材表層が破断してしまう。
これに対し、比較例1、本実施形態では図6のように、定着表層に隣接している弾性層の線膨張係数が表層材料とほぼ同じになっているため、繰り返しによるひずみが小さくなり、部材の破断が起きにくくなっている。これにより、耐久性が50万枚となり、所定の耐久性を満足することができた。
このようにして、本実施形態では、弾性層を複層化し、各層の線膨張係数と熱伝導率を所望の値にすることにより、表層耐久性と定着性を両立することができた。
(複層の弾性層の物性に関する実験)
次に、本実施形態における複層の弾性層の物性に関して検討を行った。本実施形態では、図3に示した第1の弾性層41dとして、ゴム硬度10度(JIS−A)、熱伝導率0.5W/m・K、第2の弾性層41cとして、ゴム硬度10度(JIS−A)、熱伝導率1.3W/m・Kのシリコーンゴムを用いた。弾性層の物性は、以下に示す通りである。
これらの弾性層を用い、第1の弾性層の厚みと第2の弾性層の厚みをそれぞれ変化させた条件において、前述の方法で耐久性と定着性の評価を行った。この場合の、耐久性、および定着性の結果をまとめると以下の通りとなる。
このように、第1の弾性層41dと第2の弾性層41cの厚みの合計が250μmであるとき、第1の弾性層41dの厚みが50μm以上、150μm未満(100μm以下)とすることで、表層耐久性と定着性を両立することができた。このとき、第2の弾性層41cの厚みは100μmより大きく(150μm以上)、200μm以下である。
そして、第1の弾性層41dの厚みが50μm未満の場合は、被覆層(表層)へのひずみを抑制することができず耐久寿命が低下していると考えられる。そして、第1の弾性層の厚みが150μm以上の場合は、熱伝導率の低下により、定着性が低下してしまっていると考えられる。
《第2の実施形態》
第1の実施形態では、定着部材として弾性層が線膨張係数が異なる複数の層を積層したものを用いたが、本実施形態では定着部材として図7に示されるような定着フィルムを用いる(層内で線膨張係数が異なる弾性層を用いる)。
ここで、本実施形態に係る定着部材の作製方法について説明する。本実施形態では、被覆層(表層)41aとして、451HP−J(デュポン株式会社製)の押出成形によって作製された、厚さ10μmのPFAチューブを用いた。また、基材41bとしては厚さ30μm、直径25mm、スラスト長さ330mmの円筒状ニッケル金属フィルムを用いた。
また、第1の弾性層41fは、ゴム硬度10度(JIS−A)、熱伝導率0.5W/m・Kのシリコーンゴムと、ゴム硬度10度(JIS−A)、熱伝導率1.3W/m・Kのシリコーンゴムと、をスプレーによって塗布した。このときの塗布液の混合比を徐々に変化させることで、第1の弾性層41fを形成した。
そして、この第1の弾性層41f上に接着剤として、液状シリコーンゴム混合物(商品名:SE1819CV、東レ・ダウコーニング株式会社製)を、リング形状の塗工ヘッドを用いて塗布して液状シリコーンゴム混合物の塗膜を形成する。そして、その上に被覆層(表層)41aの未架橋PFAチューブを被覆した。また、被覆後は、温度が150℃の状態にある該PFA樹脂の膜の表面に対して電子線を、照射線量が100kGyとなるように電子線を照射した。
(本実施形態における弾性層の積層方法)
本実施形態では、スプレーによって弾性層を作製した。スプレー用の塗布液としては、シリコーンゴムA(ゴム硬度10度(JIS−A)、熱伝導率0.5W/m・Kのシリコーンゴム)と、シリコーンゴムB(ゴム硬度10度(JIS−A)、熱伝導率1.3W/m・Kのシリコーンゴム)を用いた。また、基層側の弾性層の組成比をA=100%から塗布を開始し、弾性層の厚みに対して基層側から10%(25μm)厚くなる毎にA:B=90%:10%とする。
そして、基層側から20%(25μm)厚くなる毎にA:B=80%:20%とし、最終的に表層側の弾性層の組成比がB=100%となるように、徐々にA:Bの比率を変えて弾性層を作製した。
このようにして、本実施形態では、弾性層は、基層に接近する側で第1の線膨張係数R1を備え、かつ、被覆層(表層)に接近する側で第2の線膨張係数R2を備え、被覆層(表層)の線膨張係数をSとするとき、
R1<R2≦S
なる条件を満たす。そして、弾性層は、被覆層に接近する側から基層に接近する側にかけて線膨張係数が順次小さくなる。
(比較例との比較)
次に、本実施形態における定着部材としての定着フィルムを用いた場合の実用条件での耐久性と定着性について、前述した第1、第2の比較例と比較した。なお、第1の比較例、および第2の比較例は、第1の実施形態に示される定着ベルトと同じ部材を用いた。そして、本実験では、図2に示される定着装置を用いた。
耐久性の比較実験の条件としては、加圧力を総圧で300N、加圧ローラの回転速度を200mm/sとし、記録材と接触する領域の定着フィルム外周温度が170℃となるように制御した。記録材としてCS−814(日本製紙(株)社製)を用いた。寿命の判定条件としては、定着表層で長手方向(スラスト方向)に被覆層(表層)が裂けるまでのプリント枚数を「裂け寿命」として、いずれか一方が発生するまでの枚数を比較した。なお、耐久性は50万枚まで継続して行い、それ以降は行わなかった。
また、定着性の比較実験の条件としては、同じく加圧力を総圧で300N、加圧ローラの回転速度を200mm/sとし、記録材と接触する領域の定着フィルム外周温度が170℃となるように制御した。記録材としてCS−814(日本製紙(株)社製)を用い、記録材上にトナーが1.0mg/cm2積載された状態で通紙し、定着後のトナーに剥がれ等が無い場合を定着性良好として○、剥がれ等が発生してしまった場合を定着不良として×と判断した。比較実験の結果を表にまとめると、以下の通りとなる。
このように、本実施形態においても、表層耐久性と定着性を両立することができた。
(変形例)
上述した実施形態では、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の範囲内で種々の変形が可能である。
(変形例1)
第1の実施形態では、2層で構成される弾性層を用いたが、3層以上で構成される弾性層としても良い。すなわち、この場合に3層以上で構成される弾性層が、基層に接近する側で第1の線膨張係数R1を備え、かつ、被覆層(表層)に接近する側で第2の線膨張係数R2を備え、被覆層(表層)の線膨張係数をSとするとき、
R1<R2≦S
なる条件を満たす。
かつ、弾性層は、厚さ方向で第1の位置に対し、第1の位置より被覆層(表層)に近い第2の位置において、線膨張係数が低くないようにする。具体的には、第1の位置と第2の位置が異なる層内の場合は、第1の位置より被覆層(表層)に近い第2の位置において、線膨張係数が高い(低くない)ようにする。また、第1の位置と第2の位置が同じ層内の場合は、線膨張係数が同じため、第1の位置より被覆層(表層)に近い第2の位置において、線膨張係数が低くない。
(変形例2)
上述した実施形態では、定着部材としての定着ベルトを加熱体としてのヒータで加熱したが、励磁コイルで電磁誘導により加熱するものであっても良い。また、電極を介し通電により定着ベルトが発熱するものであっても良い。
(変形例3)
上述した実施形態では、記録材として記録紙を説明したが、本発明における記録材は紙に限定されるものではない。一般に、記録材とは、画像形成装置によってトナー像が形成されるシート状の部材であり、例えば、定型或いは不定型の普通紙、厚紙、薄紙、封筒、葉書、シール、樹脂シート、OHPシート、光沢紙等が含まれる。なお、上述した実施形態では、便宜上、記録材Pの扱いを給紙、排紙などの用語を用いて説明したが、これによって本発明における記録材が紙に限定されるものではない。
(変形例4)
上述した実施形態では、未定着トナー像をシートに定着する定着装置を例に説明したが、本発明は、これに限らず、画像の光沢を向上させるべく、シートに仮定着されたトナー像を加熱加圧する装置(この場合も定着装置と呼ぶ)にも同様に適用可能である。
41・・定着フィルム、41a・・被覆層(表層)、41b・・基材(基層)、41c・・第2の弾性層、41d・・第1の弾性層

Claims (12)

  1. 厚さ方向に順に、基層と、弾性層と、架橋がなされた樹脂製の被覆層と、を備える定着部材であって、
    前記弾性層は、前記基層に接近する側で第1の線膨張係数R1を備え、かつ、前記被覆層に接近する側で第2の線膨張係数R2を備え、
    前記被覆層の線膨張係数をSとするとき、
    R1<R2≦S
    なる条件を満たし、
    かつ、前記弾性層は、厚さ方向で第1の位置に対し、前記第1の位置より前記被覆層に近い第2の位置において、線膨張係数が低くないことを特徴とする定着部材。
  2. 前記被覆層は、フッ素樹脂からなる層であることを特徴とする請求項1に記載の定着部材。
  3. 前記弾性層は、前記第1の線膨張係数R1を備える第1の弾性層と、前記第2の線膨張係数R1を備える第2の弾性層と、を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の定着部材。
  4. 前記第1の弾性層と前記第2の弾性層の厚みの合計が250μmであり、
    前記第1の弾性層の厚みが、50μm以上、150μm未満であり、
    前記第2の弾性層の厚みが、100μmより大きく、200μm以下であることを特徴とする請求項3に記載の定着部材。
  5. 前記弾性層は、前記被覆層に接近する側から前記基層に接近する側にかけて線膨張係数が順次小さくなることを特徴とする請求項1または2に記載の定着部材。
  6. 前記基層は、金属層または樹脂層からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の定着部材。
  7. 無端状のベルト部材であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の定着部材。
  8. 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の定着部材と、
    該定着部材を加熱する、もしくは発熱させる部材と、
    前記定着部材に対向し、前記定着部材と共にニップ部を形成する対向部材と、
    を有し、
    前記定着部材を回転させて前記ニップ部で記録材を挟持搬送することを特徴とする定着装置。
  9. 前記定着部材を加熱するヒータ部材が前記定着部材の内面に接触することを特徴とする請求項8に記載の定着装置。
  10. 前記対向部材は加圧ローラであることを特徴とする請求項8または9に記載の定着装置。
  11. 厚さ方向に順に、基層と、弾性層と、架橋がなされた樹脂製の被覆層と、を備え、
    前記弾性層は、前記基層に接近する側で第1の線膨張係数R1を備え、かつ、前記被覆層に接近する側で第2の線膨張係数R2を備え、
    前記被覆層の線膨張係数をSとするとき、
    R1<R2≦S
    なる条件を満たし、
    かつ、前記弾性層は、厚さ方向で第1の位置に対し、前記第1の位置より前記被覆層に近い第2の位置において、線膨張係数が低くない定着部材の製造方法であって、
    前記被覆層として樹脂を押出成形によって円筒形状に成型する第1の工程と、
    前記樹脂に対する電子線照射によって架橋を行う第2の工程と、
    を有することを特徴とする定着部材の製造方法。
  12. 前記第2の工程の前に、前記基層に前記弾性層が設けられた状態で前記被覆層を被覆する、もしくは前記被覆層をスラスト方向に引っ張る工程を有することを特徴とする請求項11に記載の定着部材の製造方法。
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