JP2017506834A - 被覆されたレーザファセットを有するレーザダイオードチップ - Google Patents

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Abstract

本発明は、少なくとも1つのレーザファセット(9)が被覆(10)を有するレーザダイオードチップ(1)に関する。被覆(10)は少なくとも1つの無機被覆(14、15、16、17、18)及び少なくとも1つの有機被覆(20、21、22)を有する。

Description

本発明は、被覆を有する少なくとも1つのレーザファセットを有するレーザダイオードチップに関する。
本特許出願は、独国特許出願102014102360.9の優先権を主張しており、その開示内容を参照することによって組み込む。
例えばUVスペクトルの領域、可視スペクトルの領域、又は赤外線スペクトルの領域において発光可能なレーザダイオードチップは、例えば照明工学における投影装置などの多くの適用において、又は例えばジェスチャ認識のための光学センサにおいて使用される。
レーザダイオードチップが適用される多くの場合、実現可能な高い光学的出力密度が十分に利用される。しかしながら、レーザダイオードチップにおいて到達された高い光学的出力密度によって、殊に発光レーザファセットが非常に高い電気的、光学的、及び熱的な負荷にさらされるという結果がもたらされる。殊に、湿分の影響下でレーザダイオードを稼働させる際に、レーザダイオードチップを劣化させる酸化が生じ得ることが判明した。さらに、レーザダイオードチップの稼働の際に、静電相互作用の結果、レーザファセット上に粒子が堆積するという危険が存在し、これによって、遠視野におけるシャドーイング効果、レーザ特性曲線の傾き減少、又はミラーが破壊されるまでの過熱(光学損傷:COD、catastrophic optical damage)がもたらされる。
レーザファセットの高い敏感性によって、レーザダイオードチップを組み立てる際に、さらに非常に高いコストが必要となる。
解決すべき課題は、改善された長時間安定性において優れるレーザダイオードチップを記載することにある。
この課題は独立請求項によるレーザダイオードチップによって解決される。本発明の有利な実施形態及びさらなる形態は従属請求項の対象である。
少なくとも1つの実施形態によると、レーザダイオードチップは被覆を有する少なくとも1つのレーザファセットを有する。レーザファセットは、殊にレーザダイオードチップの共振器ミラーの一つを形成する。レーザダイオードチップは、殊に2つの向き合ったレーザファセットによって共振器ミラーが形成されている端面放射型レーザダイオードチップであってよい。この場合、好適には両方のレーザファセットが被覆をそれぞれ1つずつ有しており、ここで被覆は少なくともその光学的特性において、殊に反射率において互いに異なってよい。好適には、少なくとも光出射面として機能するレーザダイオードチップのレーザファセットが、ここで記載した被覆を有する。
レーザダイオードチップにおいて、少なくとも1つのレーザファセットの被覆は、有利には少なくとも1つの無機層、好ましくは複数の無機層、及び少なくとも1つの有機層を有する。すなわち、被覆は無機・有機ハイブリッド構造である。
被覆中に含まれる少なくとも1つの無機層は、例えば反射を増加又は減少させる層であってよい。殊に、前記被覆は、少なくとも部分的に反射を増加又は減少させる一連の層に含まれている複数の無機層を含んでよい。反射を増加又は減少させる層、又は反射を増加又は減少させる一連の層によって、レーザファセットの反射力を意図的に調整することができる。
被覆中に含まれる少なくとも1つの有機層によって、有利には被覆の少なくとも1つのさらなる機能を実現できる。殊に少なくとも1つの有機層は、殊にレーザダイオードチップの長時間安定性を改善する保護層の機能を有することができる。少なくとも1つの有機層によって、殊に湿分の拡散又は粒子の堆積を低減することができる。よって、この無機・有機ハイブリッド構造は、純粋な無機被覆に比べて、劣化に対するレーザダイオードチップの改善された保護力において優れる。
被覆の少なくとも1つの無機層は、有利には原子層堆積法(ALD、atomic layer deposition)、化学気相蒸着法(CVD)、プラズマ化学気相蒸着法(PECVD)、イオンビーム蒸着法(IBD)、又はイオンプレーティング(IP)によって製造する。
少なくとも1つの有機層は、好適には分子気相蒸着法(MVD)又は分子層堆積法(MLD)によって製造される。これらの堆積方法は、拡散障壁として作用する有機層を製造することに特に適している。さらに、例えば物理蒸着法(PVD)、ゾルゲル法、又は浸漬被覆によって少なくとも1つの有機層を製造することができる。
一実施形態によると、少なくとも1つの有機層は拡散障壁層を含む。この有機拡散障壁層によって、殊に湿分及び/又は酸素に対する障壁が形成される。このようにして、特に酸化によるレーザファセットの劣化を低減する。
少なくとも1つの有機層は、無機絶縁層に比べてより可撓性であるので、稼働条件による温度変化の際に柔軟に変形させることができるという利点をさらに有する。このようにして、被覆中での熱に起因する応力を要因とする亀裂形成の危険を低減する。
少なくとも1つの有機層、殊に拡散障壁層は、好適にはアルカン、アルケン、アルキン、シクロアルカン、シクロアルケン、ポリアミド、又はアルミニウムアルコラートを含有する。
有利な実施形態によると、少なくとも1つの有機層は有機カバー層を含む。この実施形態において、有機カバー層とは周囲の媒体に隣接する、被覆の最外層である。
有機カバー層とは、有利には疎水性層及び/又は付着防止層である。この場合、レーザファセットとは反対にある被覆表面が、有利には撥水性及び/又は粘着防止性である。湿分の進入及び/又は粒子の堆積は、疎水性層及び/又は付着防止層によって有利に低減される。有機カバー層は、有利には水について90°超の接触角を有する。接触角とは水による表面の湿潤性についての尺度である。
有機カバー層は、殊にカーボンナノチューブ、有機フッ素化合物若しくは有機硫黄化合物、チオール、又はシランを有してよい。これらの原料は、殊に疎水性層を形成することに適している。有機カバー層は、好ましくは単分子層であり、殊に自己組織化単分子層(SAM、self assembled monolayer)である。
さらなる好ましい実施形態において、有機カバー層はクロロシラン、アミン、アルコール、カルボン酸、シロキサン、又はジメチルアミノシランを含有する。これらの原料は、殊に付着防止層を形成することに適している。付着防止層は、好ましくは分子気相蒸着法によって施与される。
有機カバー層の撥水特性又は粘着防止特性は、カバー層の原料(殊に表面の化学的特性)及び/又は原料の構造によって条件付けられていてよい。殊に有機カバー層は、撥水効果(いわゆるロータス効果)を獲得させる表面構造を有することができる。
好ましい一実施形態によると、少なくとも1つの無機層は熱伝導層を含む。熱伝導層によって、有利にはレーザダイオードチップの稼働の際にレーザファセットで生じる熱を排出できる。熱伝導層のための好ましい原料は、例えばITO又はZnOなどの透明な伝導性酸化物である。さらなる好ましい原料は、GaN、AlN、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、SiC、又はグラフェンである。熱伝導層は殊に電気伝導性でもあり得る。この理由から、熱伝導層をレーザファセットには直接施与しないことが有利である。というのも、直接施与した場合、レーザダイオードチップの半導体層が短絡してしまう危険が存在するからである。
熱伝導層が僅かな電気伝導性しか示さず、短絡の危険が存在しない場合、熱伝導層をレーザファセットに直接施与することができる。この場合、特に良好にレーザダイオードチップから熱を排出できる。
好ましい一実施形態において、熱伝導層は第一有機拡散障壁層と第二有機拡散障壁層の間に配置されている。これは、有機拡散障壁層が比較的可撓性であり、熱伝導層の温度条件による膨張を好適には可撓性伸張範囲において補償することができるので有利である。
好ましい一実施形態において、少なくとも1つの無機層は、レーザファセットに直接隣接する絶縁性保護層を含む。絶縁性保護層とは、好適には原子層堆積法を用いて製造した層である。原子層堆積法を用いることで、殊に湿分に対する拡散遮断体を形成する特に厚い層が製造される。絶縁性保護層は、好適には酸化物、窒化物、又は酸窒化物を有する。
被覆は殊に複数の無機層を有してよい。有利な一実施形態によると、無機層は、反射を増加又は減少させる一連の層中に少なくとも部分的に配置されている。反射を増加又は減少させる一連の層は、殊に比較的高い屈折率及び比較的低い屈折率をかわるがわる有する交互層を有することができる。
被覆の無機層、殊に反射を増加又は減少させる一連の層の無機層は、好ましくは絶縁性原料、殊に酸化物、窒化物、又は酸窒化物を含有する。無機層は、殊に原料SiO、Al、TiO、Ta、Si、ZrO、HfO、Nb、Y、Ho、CeO、Lu、V、HfZrO、MgO、TaC、ZnO、CuO、In、Yb、Sm、Nd、Sc、B、Er、Dy、Tm、SrTiO、BaTiO、PbTiO、PbZrO、Ga、HfAlO、又はHfTaOのうち少なくとも1種を有し得る。
反射を増加又は減少させる一連の層が無機層だけから構成されることは可能である。
好ましい一実施形態において、被覆は、反射を増加又は減少させる絶縁性の一連の層と有機拡散障壁層の間に配置されている熱伝導層を有する。この場合、熱伝導層は、有利には反射を増加又は減少させる絶縁性の一連の層によって、レーザファセットから絶縁されるので、前記熱伝導層は電気伝導性原料も有することができる。
好ましい一実施形態において、反射を増加又は減少させる一連の層は、無機層と同様に有機層も含んでおり、殊に交互の無機層及び有機層を含む。反射を増加又は減少させる一連の層は、殊に高い屈折率を有する無機層及び低い屈折率を有する有機層をかわるがわる有することができる、又は代替的に、低い屈折率を有する無機層及び高い屈折率を有する有機層をかわるがわる有することができる。この実施形態において、無機層及び/又は有機層は、有利にはそれぞれ1nm〜350nm、好ましくは5nm〜200nm、及び特に好ましくは10nm〜100nmの厚さを有する。
反射を増加させる一連の層において、層数は有利には2〜50、特に好ましくは4〜20である。
本発明を下記で図1〜8と関係する実施例を用いてより詳細に説明する。
実施例1によるレーザダイオードチップ部分領域の断面概略図。 実施例2によるレーザダイオードチップ部分領域の断面概略図。 実施例3によるレーザダイオードチップ部分領域の断面概略図。 実施例4によるレーザダイオードチップ部分領域の断面概略図。 実施例5によるレーザダイオードチップ部分領域の断面概略図。 実施例6によるレーザダイオードチップ部分領域の断面概略図。 実施例7によるレーザダイオードチップ部分領域の断面概略図。 実施例8によるレーザダイオードチップ部分領域の断面概略図。
同一の構成要素又は同一作用を及ぼす構成要素には、図においてそれぞれ同じ符号が付けられている。図示した構成要素、並びに構成要素の原寸比は、互いに正しい縮尺として見なされるべきではない。
図1において断面で概略的に示したレーザダイオードチップ1は、基材6に施与した一連の半導体層を有する。
この一連の半導体層は、例えば、基材6に施与したバッファ層2、第一クラッド層3a、第一導波層4a、活性層5、第二導波層4b、及び第二クラッド層3bを含む。一連の半導体層は、簡略化のために示されていないさらなる層を有し得る。さらに、一連の半導体層の少なくとも部分領域が、例えばリッジ型導波構造に構築されていてよい。レーザダイオードチップに適切な導波構造はそれ自体が公知であり、よって簡略化のために詳細は示してはいない。
端面放射型半導体レーザの活性層5は、例えばpn接合として、ダブルヘテロ構造として、単一量子井戸構造として、又は多重量子井戸構造として形成されていてよい。本願の範囲において、量子井戸構造という名称は、帯電体が閉じ込め(「Confinement」)られることで、そのエネルギー状態が量子化する全ての構造を含む。殊に量子井戸構造という表現は量子化の次元性についての記載を含まない。したがって、前記の表現は、とりわけ量子井戸、量子細線、及び量子ドット、及びこれら構造のあらゆる組み合わせを含む。
レーザダイオードチップ1の一連の半導体層は、好適にはIII〜V族化合物半導体原料、殊にヒ化物化合物の半導体原料、窒化物化合物の半導体原料、又はリン化物化合物の半導体原料を基礎とする。例えば、一連の半導体層は、InAlGa1−x−yAS、InAlGa1−x−yN、又はInAlGa1−x−yP(ただし、それぞれ0≦x≦1、0≦y≦1、及びx+y≦1)を有することができる。その際、III〜V族化合物半導体原料は必ずしも上記の式のうちの1つに従った数学的に厳密な組成を有する必要はない。むしろIII〜V族化合物半導体原料は、原料の物理的性質を実質的に変えることのない、一種以上のドーパント物質、並びにさらなる構成要素を有することができる。しかしながら、この構成要素は、部分的に、僅かな量のさらなる物質によって置き換えられていてよいものの、簡潔性の点から上記式は結晶格子の実質的な構成要素しか含まない。
その際、レーザダイオードチップ1の所望の発光波長に従って原料の選定を行う。基材6は、好適にはエピタキシャル成長をさせた一連の半導体層を用いて選定され、殊にGaAs、サファイヤ、SiC、GaN、又はケイ素を含有することができる。
レーザダイオードチップの電気的接触のために、一連の半導体層とは反対の基材6の裏側に第一コンタクト層7が配置されており、基材6とは反対の一連の半導体層側に第二コンタクト層8が配置されている。
レーザダイオードチップ1は、被覆10が備えられたレーザファセット9を有する。レーザファセット9は殊にレーザダイオードチップ1の共振器ミラーのうちの1つを形成することができる。この断面図には示されていないが、レーザファセット9の向かいに位置するさらなるレーザファセットは、レーザダイオードチップの第二の共振器ミラーを形成することができ、かつさらなる被覆を備えることができ、この被覆は下記のレーザファセット9の被覆10と同一の有利な実施形態を有し得る。この場合、さらなる被覆は被覆10と同一である必要はなく、例えば被覆10とは異なった光学的特性、殊にその他反射性を有してよい。
被覆10を備えるレーザファセット9は、殊にレーザダイオードチップ1の光出射面として備えられていてよい。
実施例において、被覆10は、第一層13及び第二層14を交互に複数有する、反射を増加又は減少させる第一の一連の層11を有する。反射を増加又は減少させる一連の層11は、この実施例において、第一層13及び第二層14から3組の層、つまり合計で6層を有する。一般的に、層13、14の数は2〜50であり、好ましくは4〜20である。交互層13、14は、例えば、それぞれが高い屈折率及び低い屈折率をかわるがわる有する無機絶縁層である。反射を増加又は減少させる一連の層11は、例えば、Alからの第一層13、及び原料TiO、ZrO又はTaのうち一種からの第二層14をかわるがわる有することができる。この実施形態において、第一層はそれぞれ低い屈折率を有し、第二層は高い屈折率を有する。代替的には、第一層が高い屈折率を有し、第二層が低い屈折率を有することも可能である。さらに、反射を増加又は減少させる一連の層11は奇数の層を有してもよい、つまり、一連の層11において、対である層に加えて、低い屈折率又は高い屈折率を有するさらなる層がもう1つ含まれているということである。
この実施例において、被覆10はさらに、交互の第三層15及び第四層16から構成されている、反射を増加又は減少させる第二の一連の層12を有しており、この一連の層12は、反射を増加又は減少させる第一の一連の層11の場合のように、有利には低い屈折率及び高い屈折率をかわるがわる有する。その熱膨張率に関して、例えば反射を増加又は減少させる第一の一連の層11の原料を、隣接するレーザダイオードチップの半導体原料に適合させるために、2つの重なり連続する、反射を増加又は減少させる一連の層11、12を使用することは有利であり得る。反射を増加又は減少させる第二の一連の層12の原料は、例えばその屈折率の可能な限り大きい差を獲得するために選定できる。
しかしながら、被覆10が反射を増加又は減少させる一連の層11のみ含むことも代替的に可能である。さらに、反射を増加又は減少させる第一及び/又は第二の一連の層11、12の代わりに反射を増加又は減少させる単一層を使用することも可能である。
反射を増加又は減少させる第一の一連の層11、及び反射を増加又は減少させる第二の一連の層12は、必ずしも無機層のみから構成される必要はない。反対に、反射を増加又は減少させる一連の層11、12のうち少なくとも1つが無機層及び有機層をかわるがわる有することも代替的に可能である。一実施形態において、例えば、反射を増加又は減少させる第一の一連の層11は、交互の有機第一層13及び無機第二層14を有する。この実施形態において、反射を増加又は減少させる一連の層11に組み込まれた有機層13は、無機絶縁層に比べて、比較的可撓性であるという利点を有する。これは、レーザダイオード1の稼働の際に熱条件による応力が生じる場合、殊に有利である。
さらに、被覆10は、有利には図1の実施例において疎水性有機層であるカバー層20を含む。疎水性有機カバー層20は、水について90°超の接触角を有する。疎水性有機カバー層20は、殊にレーザファセット9を湿分から保護するために役立つ。疎水性有機カバー層20は、例えばカーボンナノチューブ、又は特にチオール基若しくはシラン基を有する有機フッ素化合物、若しくは特にチオール基若しくはシラン基を有する有機硫黄化合物を含有することができる。疎水性有機カバー層20は、好適には単分子層であり、殊に自己組織化単分子層である。
図2では、レーザダイオードチップ1の実施例2を示している。これは、殊に酸素又は湿分の拡散を低減するための拡散障壁層21である有機層が、反射を増加又は減少させる第二の一連の層12に、被覆10の成長方向で後続する点で実施例1とは異なる。これによって、酸化に対してレーザファセット9がより良好に保護される。
有機拡散障壁層21は、好適にはアルカン、アルケン、アルキン、シクロアルカン、シクロアルケン、ポリアミド、又はアルミニウムアルコラートを含有する。
それ以外の点については、実施例2は先に記載した実施例1に対応する。
図3に示す実施例3において、レーザファセット9から出発して、絶縁性保護層18、反射を増加又は減少させる一連の層11、及び有機拡散障壁層21を有する被覆10がレーザファセット9に施与されている。絶縁性保護層18は、有利にはレーザファセット9に直接隣接しており、好適には原子層堆積法を用いて製造した層である。原子層堆積法を用いることで、湿分の進入に対して特に良好な保護力を示す特に厚い絶縁層を析出することができる。絶縁性保護層は、好適には酸化物、窒化物、又は酸窒化物を有する。絶縁性保護層18は、例えば、SiO、Si(O1−x、Al、又はAl(O1−x、又はそれらからの組み合わせを有することができる。
絶縁性保護層18に後続する、反射を増加又は減少させる一連の層11は、その有利な実施形態に関して実施例1に対応する。
有機層21は、実施例2の場合のように、殊に拡散障壁として機能することができる。この実施例においては、有機層21は、同時に被覆10のカバー層を形成する。有機拡散障壁層21は、無機層に比べて比較的可撓性であるので、殊に、特に耐裂性であるという利点を有する。これによって、例えばレーザダイオードチップ1の稼働の際に生じる、温度条件による応力によって有機拡散障壁層21に亀裂が生じるというリスクが低減される。
図4に示す実施例4において、レーザファセット9から出発して、反射を増加又は減少させる一連の層11、熱伝導層17、有機拡散障壁層21、及び疎水性有機層20をカバー層として有する被覆10がレーザファセット9に施与されている。
この実施例は、反射を増加又は減少させる一連の層11と有機拡散障壁層21の間に、有利には熱伝導層17が配置されており、これによってレーザダイオードチップ1の稼働の際に生じる熱の少なくとも一部を逃がすことができる点で先に記載した実施例2とは異なる。熱伝導層17は殊に電気伝導性原料を有することができる。というのも、熱伝導層17は、反射を増加又は減少させる絶縁性の一連の層11によって、レーザダイオード1の一連の半導体層とは絶縁されているからである。熱伝導層17は、例えば、ITO、ZnO、GaN、AlN、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、SiC、又はグラフェンを含有できる。
図5に示す実施例5は、被覆10において、疎水性有機カバー層の代わりに有機付着防止層22がカバー層として含まれている点で実施例4とは異なる。付着防止層22によって、有利にはレーザファセット上での粒子の堆積が低減される。そうでなければ、レーザダイオードチップ1の稼働の際に、静電相互作用によって前記粒子の堆積が生じる恐れがある。
付着防止層22は、好ましくは分子気相蒸着法又は分子層堆積法によって施与され、好ましくはクロロシラン、アミン、アルコール、カルボン酸、シロキサン、又はジメチルアミノシランを含有する。
図6に示す実施例6において、被覆10は、レーザファセット9から出発して、絶縁性保護層18、熱伝導層17、反射を増加又は減少させる一連の層11、及び疎水性有機層20をカバー層として有する。個々の層の機能及び有利な実施形態は、先に記載した実施形態に対応しているので、より詳細には説明しないこととする。
図7に示す実施例7において、被覆10は、レーザファセット9から出発して、反射を増加又は減少させる一連の層11、第一有機拡散障壁層21a、熱伝導層17、第二有機拡散障壁層21b、及び疎水性有機カバー層20を有する。この実施形態において、熱伝導層17は、二つの有機拡散障壁層21a、21bの間に配置されており、前記有機拡散障壁層は有利には可撓性であるので、好適には熱伝導層17の温度条件による膨張を可撓性伸張範囲において補償することができる。個々の層の機能及び有利な実施形態は先に記載した実施形態に対応しているので、より詳細には説明しないこととする。
図8に示すさらなる実施例において、被覆は、レーザファセット9から出発して、無機絶縁性保護層18、反射を増加又は減少させる一連の層11、熱伝導層17、有機拡散障壁層21、及び疎水性有機層20をカバー層として有する。疎水性有機カバー層20の代わりに有機付着防止層もカバー層として機能できる。個々の層の機能の仕方は前述までの実施形態に対応しているので、より詳細には説明しないこととする。
本発明は、実施例を用いた本明細書によって制限されてはいない。むしろ、たとえ特徴又は組み合わせそのものが特許請求の範囲又は実施例に明確に記載されていないとしても、本発明はあらゆる新規的特徴、並びに特徴のあらゆる組み合わせ(これらは殊に特許請求の範囲における特徴のあらゆる組み合わせに含まれている)を含む。

Claims (17)

  1. 被覆(10)を有する少なくとも1つのレーザファセット(9)を有するレーザダイオードチップ(1)であって、ここで被覆(10)が少なくとも1つの無機層(14、15、16、17、18)及び少なくとも1つの有機層(20、21、22)を有する前記レーザダイオードチップ(1)。
  2. 請求項1に記載のレーザダイオードチップであって、ここで少なくとも1つの有機層が拡散障壁層(21)を含む前記レーザダイオードチップ。
  3. 請求項1又は2に記載のレーザダイオードチップであって、ここで少なくとも1つの有機層(21)がアルカン、アルケン、アルキン、シクロアルカン、シクロアルケン、ポリアミド、又はアルミニウムアルコラートを有する前記レーザダイオードチップ。
  4. 請求項1から3までのいずれか一項に記載のレーザダイオードチップであって、ここで少なくとも1つの有機層が有機カバー層(20、22)を含む前記レーザダイオードチップ。
  5. 請求項4に記載のレーザダイオードチップであって、ここで有機カバー層(20、22)が疎水性層(20)及び/又は付着防止層(22)である前記レーザダイオードチップ。
  6. 請求項5に記載のレーザダイオードチップであって、ここで有機カバー層(20、22)が水について90°超の接触角を有する前記レーザダイオードチップ。
  7. 請求項4から6までのいずれか一項に記載のレーザダイオードチップであって、ここで有機カバー層(20、22)がカーボンナノチューブ、有機フッ素化合物若しくは有機硫黄化合物、チオール、シラン、クロロシラン、アミン、アルコール、カルボン酸、シロキサン又はジメチルアミノシランを含有する前記レーザダイオードチップ。
  8. 請求項1から7までのいずれか一項に記載のレーザダイオードチップであって、ここで少なくとも1つの無機層が熱伝導層(17)を含む前記レーザダイオードチップ。
  9. 請求項8に記載のレーザダイオードチップであって、ここで熱伝導層(17)が第一有機拡散障壁層(21a)と第二有機拡散障壁層(21b)の間に配置されている前記レーザダイオードチップ。
  10. 請求項8又は9に記載のレーザダイオードチップであって、ここで熱伝導層(17)が透明な伝導性酸化物、ITO、ZnO、GaN、AlN、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、SiC、又はグラフェンを有する前記レーザダイオードチップ。
  11. 請求項1から10までのいずれか一項に記載のレーザダイオードチップであって、ここで少なくとも1つの無機層が、レーザファセット(9)に直接隣接する絶縁性保護層(18)を含む前記レーザダイオードチップ。
  12. 請求項11に記載のレーザダイオードチップであって、ここで絶縁性保護層(18)が原子層堆積層である前記レーザダイオードチップ。
  13. 請求項1から12までのいずれか一項に記載のレーザダイオードチップであって、ここで少なくとも1つの無機層が、反射を増加又は減少させる層を含む前記レーザダイオードチップ。
  14. 請求項1から13までのいずれか一項に記載のレーザダイオードチップであって、ここで被覆(10)が、反射を増加又は減少させる一連の層(11、12)中で少なくとも部分的に配置されている複数の無機層(14、15、16)を有する前記レーザダイオードチップ。
  15. 請求項14に記載のレーザダイオードチップであって、ここで反射を増加又は減少させる一連の層(12)が無機層(14)と同様に有機層(13)も含む前記レーザダイオードチップ。
  16. 請求項2、8及び14に記載のレーザダイオードチップであって、ここで熱伝導層(17)が、反射を増加又は減少させる一連の層(11、12)と有機拡散障壁層(21)の間に配置されている前記レーザダイオードチップ。
  17. 請求項1から16までのいずれか一項に記載のレーザダイオードチップであって、ここで少なくとも1つの無機層(14、15、16、17、18)が原料SiO、Al、TiO、Ta、Si、ZrO、HfO、Nb、Y、Ho、CeO、Lu、V、HfZrO、MgO、TaC、ZnO、CuO、In、Yb、Sm、Nd、Sc、B、Er、Dy、Tm、SrTiO、BaTiO、PbTiO、PbZrO、Ga、HfAlO、又はHfTaOのうち少なくとも1種を有する前記レーザダイオードチップ。
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