JP2017222803A - 有機無機複合粒子及びそれを用いた熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、ブタジエン系ゴム状重合体にメチルメタクリレート、スチレン、アクリロニトリル等をグラフト重合した樹脂[例えば、MBS(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン)樹脂]を、樹脂改質剤として熱可塑性樹脂に混合し、その耐衝撃性を改良する方法がある。
しかしながら、MBS樹脂を混合すると耐候性が低下するため、その成形体を屋外で使用すると、耐衝撃性が経時的に低下するという欠点がある。耐候性が低下する主な原因は、MBS樹脂を構成するブタジエン単位の、紫外線劣化によるものと考えられている。
しかしながら、特許文献1で提案の方法では、発色性、透明性等の、特にエンジニアリングプラスチックスに要求される、外観に影響する物性に関する記載はない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、アクリルゴム中に無機微粒子を含有することにより、熱可塑性樹脂の耐衝撃性を保持したまま、透明性を向上させる樹脂改質剤を提供することにある。
[1] ガラス転移温度が50℃以下の重合体(A)中に無機微粒子が分散しているコア層、及び、前記コア層にグラフトするシェル層から構成される、有機無機複合粒子。
[2] 前記シェル層を構成する重合体(B)のガラス転移温度が20℃以上である、前記[1]に記載の有機無機複合粒子。
[3] ガラス転移温度が50℃以下の重合体(A)中に無機微粒子が分散している粒子の存在下で、ビニル単量体混合物(b)を重合する、有機無機複合粒子の製造方法。
[4] 前記[1]又は[2]に記載の有機無機複合粒子が分散している、熱可塑性樹脂組成物。
[5] 前記[4]に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形した、成形体。
本発明の有機無機複合粒子は、コア層及びコア層にグラフトするシェル層からなるコアシェル構造を有する粒子である。
本発明のコア層は、無機微粒子が重合体(A)に分散してなる層である。
コア層中の無機微粒子の比率は、有機無機複合粒子を含有する樹脂組成物の透明性の点から5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましい。また、有機無機複合粒子を含有する樹脂組成物の耐衝撃性の点から、コア層中の無機微粒子の比率は90質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。
本発明のシェル層は、前記コア層にグラフトする層であり、重合体(B)により構成される。
有機無機複合粒子中の重合体(B)の比率は、成形体の表面外観が良好となる点から、有機無機複合粒子100質量%に対して、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましい。また、樹脂組成物の耐衝撃性が良好となる点から、有機無機複合粒子100質量%に対して、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましい。
本発明の重合体(A)は、前記コア層を構成する重合体であり、ビニル単量体混合物(a)を重合して得られる重合体である。
重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、有機無機複合粒子を含有する樹脂組成物の耐衝撃性を向上させる点から、50℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましく、0℃以下が更に好ましい。
1/Tg=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+…+(Wm/Tgm)
W1+W2+…+Wm=1
前記Fox式における各単量体単独のガラス転移温度は、例えば、POLYMER HANDBOOK 4th Edition (Wiley Interscience)記載の値が使用できる。また、前記ガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量測定)又は動的粘弾性のtanδピークにより測定することができる。
ビニル単量体混合物(a)はビニル単量体を構成成分として含有するものであり、そのビニル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキル;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸4−t−ブチルフェニル、(メタ)アクリル酸ブロモフェニル、(メタ)アクリル酸ジブロモフェニル、(メタ)アクリル酸2,4,6−トリブロモフェニル等の(メタ)アクリル酸アリール;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド;ビニルピリジン、ビニルアルコール、ビニルイミダゾール、ビニルピロリドン、酢酸ビニル、1−ビニルイミダゾール等のビニル単量体;モノメチルイタコネート、モノエチルイタコネート、モノプロピルイタコネート、モノブチルイタコネート、ジメチルイタコネート、ジエチルイタコネート、ジプロピルイタコネート、ジブチルイタコネート等のイタコン酸エステル;モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、モノプロピルフマレート、モノブチルフマレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジプロピルフマレート、ジブチルフマレート等のフマル酸エステル;モノメチルマレート、モノエチルマレート、モノプロピルマレート、モノブチルマレート、ジメチルマレート、ジエチルマレート、ジプロピルマレート、ジブチルマレート等のマレイン酸エステルが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
架橋性単量体としては、例えば、メタクリル酸アリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、ジビニルベンゼン、ジメタクリル酸エチレングリコールジエステル、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコールジエステル、ジメタクリル酸1,4−ブチレングリコールジエステル、1,6−ヘキサンジオールジアクリル酸エステル、トリメリト酸トリアリルが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
20℃の水への溶解度が5質量%以下のラジカル重合開始剤としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−ブチロニトリル)が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
20℃の水への溶解度は、ラジカル重合開始剤のカタログ等から知ることができる。
レドックス系開始剤の場合、過酸化物は単量体の合計100質量部に対して0.01〜1質量部が好ましく、還元剤は単量体の合計100質量部に対して0.01〜1質量部が好ましい。
本発明の無機微粒子は、酸化物、水酸化物、炭酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩、窒化物、金属、炭素類、それらの複合物等から形成された無機微粒子である。
酸化物としては、例えば、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化スズ、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化カルシウム、フェライトが挙げられる。
水酸化物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムが挙げられる。
炭酸塩としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、ハイドロタルサイト、ドーソナイトが挙げられる。
ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、ガラスビーズが挙げられる。
硫酸塩としては、例えば、硫酸バリウム、硫酸カルシウムが挙げられる。
窒化物としては、例えば、窒化アルミ、窒化ケイ素、窒化ホウ素が挙げられる。
金属としては、例えば、金、銀、白金、銅が挙げられる。
炭素類としては、例えば、カーボンブラック、グラファイトが挙げられる。
これらの無機微粒子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機微粒子をビニル単量体混合物(a)中に分散させるために、無機微粒子には、必要に応じて、公知の各種の疎水化処理を行なってもよい。疎水化処理とは、親水性を有している無機微粒子の表面を、所定の疎水化処理剤により処理することで疎水化して、有機溶媒や樹脂等の有機物との親和性を向上するものである。
このような疎水化処理に用いることのできる化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルシリルクロライド、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)-3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等の有機シランカップリング剤;ブタン酸、イソブタン酸、メタクリル酸、ヘキサン酸、オクタン酸、オレイン酸、リノール酸、ラウリン酸等のカルボン酸;アクリロイルイソシアナート、メタクリロイルイソシアナート、アクリル酸2−イソシアナートエチル、メタクリル酸2−イソシアナートエチル等のアクリル基を有するイソシアネート化合物が挙げられる。
例えば、ブタン酸、イソブタン酸、メタクリル酸、ヘキサン酸、オクタン酸、オレイン酸、リノール酸、ラウリン酸等の一価の脂肪族カルボン酸が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
特に、疎水化処理後の無機微粒子を樹脂に分散して用いる場合には、当該樹脂の種類等に応じて、当該樹脂との親和性を向上しやすいカルボン酸を適宜選択して用いることが好ましい。
(1)水又は有機溶媒中に親水性の無機微粒子が分散した透明の無機微粒子分散液中に、疎水化処理剤として適量のカルボン酸及び所定量の非水溶性有機溶媒と両溶性有機溶媒とを混合し、攪拌する工程。
(2)その後に主に水と両溶性有機溶媒とを共沸により除去することで、非水溶性有機溶媒に疎水化された無機微粒子が透明に均一分散した分散液を得る工程。
(3)上記で得られた非水溶性有機溶媒に無機微粒子が透明に均一分散した分散液から更に非水溶性有機溶媒を蒸発除去して無機微粒子を分離取得する工程。
使用される両溶性有機溶媒は、主に水と非水溶性有機溶媒とを含む均一な液相を生成するため、水と共沸することにより液相から水分を除去する目的で使用される。このため、少量で水と非水溶性有機溶媒とを含む均一な液相を生じること、及び、比較的低い沸点を有するものが好ましく、使用する非水溶性有機溶媒の種類等に応じて実験的に決定することが好ましい。一般的には、水との相溶性の高い炭素数が3以下の比較的分子量の小さなアルコールやアセトンが好ましく用いられる。
非水溶性有機溶媒は、疎水化された無機微粒子を分散保持するためのものであり、水の除去の際に過剰な蒸発を生じない低蒸気圧のものが好ましい。また、その後に目的とする樹脂化合物との相溶性が高いものを選択して用いることが好ましい。
無機微粒子は、ビニル単量体混合物(a)中に均一に再分散させ、沈殿を生じない透明な無機微粒子分散液とすることが可能である。無機微粒子分散液の製法としては、無機微粒子及びビニル単量体混合物(a)を、撹拌機を備えた反応容器等の中で撹拌することが挙げられる。
無機微粒子分散液中の無機微粒子の比率は、有機無機複合粒子を含有する樹脂組成物の透明性の点から5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましい。また、ビニル単量体混合物(a)中での無機微粒子の分散性をよくする点から、無機微粒子分散液中の無機微粒子の比率は90質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。
上記コアの存在下でビニル単量体混合物(b)を重合し、コアに重合体(B)からなるシェル層を形成することで、有機無機複合粒子を得ることができる。
有機無機複合粒子を製造する方法としては、乳化重合法、懸濁重合法、微細懸濁重合法が挙げられるが、乳化重合法を用いることが好ましい。
重合体(B)のTgは、有機無機複合粒子を凝固作業による回収が容易となる点から、20℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、100℃以上が更に好ましい。
ビニル単量体混合物(b)としては、ビニル単量体混合物(a)に含まれるビニル単量体と同様のものを用いることができる。
ビニル単量体混合物(b)には架橋性単量体を含んでもよいが、その場合は、ビニル単量体混合物(b)100質量%中における架橋性単量体の使用量は、0.005質量%以下であることが好ましい。
多段で重合する場合は、コアのラテックスの存在下で、ビニル単量体混合物(b)の全使用量を分割して、逐次添加し又は連続添加して、重合することが好ましい。このような重合方法は重合安定性が良好であり、且つ、所望の粒子径及び粒子径分布を有するラテックスを安定に得ることができる。
シェル層の重合に用いられる乳化剤は、重合体(A)を製造する際に用いた前述の乳化剤と同様のものが挙げられ、アニオン系乳化剤及びノニオン系乳化剤が好ましい。
ビニル単量体混合物(b)の重合に用いられる重合開始剤としては、重合体(A)を製造する際に用いた重合開始剤と同様のものが挙げられ、アゾ系開始剤及びレドックス系開始剤が好ましい。
噴霧乾燥法は、有機無機複合粒子のラテックスを乾燥機中に微小液滴状に噴霧し、これに乾燥用の加熱ガスを当てて乾燥する方法である。微小液滴を発生する方法としては、例えば、回転円盤型式、圧力ノズル式、二流体ノズル式、加圧二流体ノズル式が挙げられる。
凝固剤としては、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、酢酸カルシウム等の無機塩;硫酸等の酸が挙げられ、酢酸カルシウムが好ましい。
凝固剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、2種以上を用いる場合は水に不溶性の塩を形成しない組み合わせを選択することが必要である。例えば、酢酸カルシウムと、硫酸、若しくはそのナトリウム塩とを併用すると、水に不溶性のカルシウム塩を形成するので好ましくない。
凝固剤水溶液の量は、ラテックス100質量部に対して10質量部以上500質量部以下が好ましい。
(1)凝固剤水溶液を攪拌しながら、その中にラテックスを連続的に添加して一定時間保持する方法。
(2)凝固剤水溶液とラテックスとを、一定の比率で攪拌機付きの容器内に連続的に注入しながら接触させ、凝析された重合体と水とを含む混合物を容器から連続的に抜き出す方法。
ラテックスを凝固剤水溶液に接触させるときの温度は、30℃以上100℃以下が好ましい。接触時間は特に限定されない。
本発明では、有機無機複合粒子は、熱可塑性樹脂と混合して得られる樹脂組成物の耐熱分解性の点から、凝固法を用いて回収することが好ましい。
本発明の有機無機複合粒子は、熱可塑性樹脂と混合して熱可塑性樹脂組成物として使用することができる。
本発明で使用できる熱可塑性樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーから選ばれる1種以上の樹脂が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のオレフィン系樹脂;ポリスチレン(PS)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、(メタ)アクリレート・スチレン共重合体(MS)、スチレン・アクリロニトリル共重合体(SAN)、スチレン・無水マレイン酸共重合体(SMA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、アクリル酸エステル・スチレン・アクリロニトリル共重合体(ASA)、アクリロニトリル・エチレン・プロピレンゴム・スチレン共重合体(AES)等のスチレン(St)系樹脂;ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル(Ac)系樹脂;ポリカーボネート(PC)樹脂;ポリアミド(PA)樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル(PEs)樹脂;(変性)ポリフェニレンエーテル((m−)PPE)樹脂、ポリオキシメチレン(POM)樹脂、ポリスルフォン(PSO)樹脂、ポリアリレート(PAr)樹脂、ポリフェニレン(PPS)樹脂等のエンジニアリングプラスチックス;熱可塑性ポリウレタン(PU)樹脂;硬質塩化ビニル樹脂、半硬質塩化ビニル樹脂、軟質塩化ビニル樹脂等の塩化ビニル(PVC)系樹脂;PC/ABS等のPC樹脂とSt系樹脂とのアロイ;PVC/ABS等のPVC系樹脂とSt系樹脂とのアロイ;PA/ABS等のPA樹脂とSt系樹脂とのアロイ;PA樹脂と熱可塑性エラストマー(TPE)とのアロイ;PA/PP等のPA樹脂とポリオレフィン系樹脂とのアロイ;PC/PBT等のPC樹脂とPEs樹脂とのアロイ;PP/TPE、PP/PE等のオレフィン系樹脂同士のアロイ;PPE/HIPS、PPE/PBT、PPE/PA等のPPE系樹脂とその他の樹脂のアロイ;PVC/PMMA等のPVC系樹脂とアクリル系樹脂とのアロイが挙げられる。
熱可塑性樹脂組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲で、各種添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、フェノール系安定剤、燐系安定剤、紫外線吸収剤、アミン系光安定剤等の安定剤;燐系、ブロム系、シリコーン系、有機金属塩系等の難燃剤;耐加水分解性等の各種物性を付与するための改質剤;酸化チタン、タルク等の充填剤;染顔料;可塑剤が挙げられる。
熱可塑性樹脂組成物の調製方法は、有機無機複合粒子と、熱可塑性樹脂と、必要に応じて使用される各種添加剤とを、V型ブレンダーやヘンシェルミキサー等により混合分散させ、この混合物を押出機又はバンバリーミキサー、加圧ニーダー、ロール等の混練機等を用いて溶融混練することにより調製できる。
これらの各成分の混合は、バッチ的又は連続的に実施することができ、各成分の混合順序は特に限定されない。溶融混練物はペレットにして、各種の成形に用いることができる。
熱可塑性樹脂組成物の成形方法としては、例えば、有機無機複合粒子粉体と熱可塑性樹脂の混合物を、射出成形機で成形する方法が挙げられる。
成形体の用途としては、自動車分野、OA機器分野、電気・電子分野等の材料として、工業的に広く利用することができる。
動的光散乱光度計(大塚電子社製、商品名:ELS−800)を用いて25℃において測定し、キュムラント法により解析して求めた平均粒子径を用いた。
(2)ヘーズ
JIS K7136に準拠して、ヘーズメーター(日本電色工業社製、商品名:NDH2000)を用いて試験片のヘーズを測定した。
JIS K7361−1に準拠して、ヘーズメーター(日本電色工業社製、商品名:NDH2000)を用いて試験片の全光線透過率を測定した。
JIS K7111に準拠して、−30℃の測定温度でノッチ付シャルピー衝撃強度を測定した。
粒子を含有するラテックス約1mLをPETフィルム上に滴下し、40℃の乾燥機中で24時間乾燥させてフィルムを得た。このフィルムの屈折率をプリズムカプラー屈折率計(メトリコン社製、商品名:2010/Mプリズムカプラー)を用いて測定した。
スターラーチップをセットしたナスフラスコに、処理される酸化ジルコニウム微粒子に対して30質量%となるように疎水化処理剤であるラウリン酸(和光純薬製)を12部、メタクリル酸(和光純薬製)を18部秤量した。非水溶性有機溶媒としてのトルエン(和光純薬製)750部、両溶性有機溶媒であるメタノール(和光純薬製)83部を加えたものに、酸化ジルコニウム微粒子トルエン/メタノール分散液(堺化学工業製、商品名:SZR−T、酸化ジルコニウム含有量:33.7質量%、平均粒子径:18.7nm)333部を加えて混合した。
上記で得られた混合液を1時間室温で攪拌した後、ロータリーエバポレーターにより分散媒を蒸発除去した。分散媒の蒸発除去は、混合液を室温に保ちつつ、液相内での突沸が生じない程度の圧力に雰囲気を減圧することにより行なった。
初回の分散媒の蒸発除去後にナスフラスコに残留した混合液に、更にトルエンを100部程度加えて再びエバポレーションする操作を行なった。当該操作を概ね2〜3回繰り返すことにより、分散液を白濁した状態から無色透明へと変化させ、残留する液相が単相となった。これにより、酸化ジルコニウム微粒子のトルエン分散液を得た。
エバポレーションによりトルエンを蒸発除去させた後、室温で8時間真空乾燥させて、酸化ジルコニウム微粒子からなる粉末を得た。上記の疎水化処理を行なった酸化ジルコニウム微粒子はアクリル酸ブチル(BA)(三菱化学社製)に再分散可能であった。
製造例1で疎水化処理をした酸化ジルコニウム微粒子10部を、アクリル酸ブチル88部に対して分散させて、透明な酸化ジルコニウム微粒子のアクリル酸ブチル分散液を得た。上記分散液に対してメタクリル酸アリル(三菱レイヨン社製、商品名:アクリエステルA)2部、ヘキサデカン3.6部、及び2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.38部を混合した。これにラウリル硫酸ナトリウム2.6部を溶解した脱イオン水900部を添加し、ウルトラタラックス(IKA社製、商品名:ウルトラタラックスT25)を回転数10000rpmで30秒間用いることで予備分散させた。
その後、高圧ホモジナイザー(吉田機械興業社製、商品名:ナノヴェイタ C−ES)を圧力100MPaで用いることにより、安定な予備混合アクリル酸ブチルエマルションを得た。
冷却コンデンサーを備えた反応容器に上記エマルションを入れ、窒素気流を通じることにより窒素置換し、70℃に2時間加熱して重合させ、冷却した。
このようにして得られたラテックスを180℃で30分間乾燥して固形分を求めたところ、9.7質量%であった。また、ラテックスの平均粒子径は131nmであった。
表1に示す組成に変更したこと以外は製造例2と同様にして、微粒子含有ポリアクリル酸ブチルラテックス(L−2)を得た。
ラテックスを180℃で30分間乾燥して固形分を求めたところ9.8質量%であり、平均粒子径は141nmであった。
表1に示す組成に変更したこと以外は製造例2と同様にして、ポリアクリル酸ブチルラテックス(L−3)を得た。
ラテックスを180℃で30分間乾燥して固形分を求めたところ9.8質量%であり、平均粒子径は116nmであった。
製造例2で得た微粒子含有ポリアクリル酸ブチルラテックス(L−1)720部(固形分換算で70部)を反応容器に入れ、脱イオン水225部を添加混合した後、窒素気流を通じることにより窒素置換し、80℃まで昇温した。液温が80℃となった時点で硫酸第一鉄0.001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.003部、及びロンガリット0.3部を脱イオン水25部に溶解させた水溶液を添加した。
このラテックスにメタクリル酸メチル(三菱レイヨン社製、商品名:アクリエステルM)30部とt−ブチルヒドロパーオキサイド0.08部の混合液を30分間に亘って滴下し、重合した。滴下終了後、温度80℃以上の状態を1時間維持し冷却し、有機無機複合粒子のラテックスを得た。
樹脂改質剤(S−1)、及び、ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名;ユーピロンS−2000F、粘度平均分子量24,000)を、表2に記載の比率で配合した。
該配合物を、二軸押出機(東芝機械社製、商品名:TEM35B)に供給してシリンダー温度270℃、及びスクリュー回転数150rpmで溶融混合して押出して、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。
得られたペレットを80℃で12時間乾燥した後、100t射出成形機(東芝機械社製、商品名:IS−100)に供給し、シリンダー温度280℃、及び金型温度80℃で射出成形を行ない、試験片1(ノッチ付、幅10mm、長さ80mm、厚み4mm、残り幅8mm)、及び、試験片2(幅50mm、長さ100mm、厚み2mm)を作製した。
次いで、試験片1を用いて耐衝撃性を、試験片2を用いてヘーズ及び全光線透過率を評価した。評価結果を表2に示す。
樹脂改質剤(S−1)は無機微粒子を含有しているため、低温での耐衝撃性と透明性の両方が良好であった。
用いるラテックスを(L−2)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂改質剤(S−2)を得た。
次いで、実施例1と同様にして試験片を作製して評価を行なった。評価結果を表2に示す。
樹脂改質剤(S−2)は無機微粒子を含有しているため、低温での耐衝撃性と透明性の両方が良好であった。
用いるラテックスを(L−3)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂改質剤(S−3)を得た。
次いで、実施例1と同様にして試験片を作製して評価を行なった。評価結果を表2に示す。
樹脂改質剤(S−3)は無機微粒子を含有していないため、透明性が低位であった。
アクリル酸ブチル77部、スチレン22.7部、メタクリル酸アリル0.3部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム2.0部、脱イオン水300部、過硫酸カリウム0.3部、リン酸二ナトリウム12水和物塩0.5部、リン酸水素ナトリウム2水和物塩0.3部を反応容器に仕込み、窒素気流を通じることにより窒素置換し、50℃で4時間攪拌をしながら重合を完結させて、ラテックスを得た。
このラテックス100部(固形分として)を反応容器に取り、攪拌しながら窒素気流を通じることにより窒素置換した後、80℃に昇温し、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.125部、脱イオン水2部からなる水溶液を添加後、温度を80℃に保ちながらメタクリル酸メチル60部、n−オクチルメルカプタン0.05部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.125部からなる混合物を2時間に亘り滴下した後、2時間保持して重合を完結させた。
得られた樹脂改質剤ラテックスを3%食塩水溶液に添加し、塩析、脱水、水洗、洗浄を行ない、粉体状の樹脂改質剤(S−4)を得た。
実施例1と同様にして試験片を作製して評価を行なった。評価結果を表2に示す。
樹脂改質剤(S−4)は無機微粒子を含有していないため、耐衝撃性、透明性が共に低位であった。
Claims (5)
- ガラス転移温度が50℃以下の重合体(A)中に無機微粒子が分散しているコア層、及び、前記コア層にグラフトするシェル層から構成される、有機無機複合粒子。
- 前記シェル層を構成する重合体(B)のガラス転移温度が20℃以上である、請求項1に記載の有機無機複合粒子。
- ガラス転移温度が50℃以下の重合体(A)中に無機微粒子が分散している粒子の存在下で、ビニル単量体混合物(b)を重合する、有機無機複合粒子の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の有機無機複合粒子が分散している、熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項4に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形した、成形体。
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