JP2017214258A - スラリー組成物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
まず、本開示に係るスラリー製造方法に好適に用いられる無機顔料は、非常に微粒であり高度に凝集なく分散させるためには分散剤を加えて過酷な条件での撹拌処理が行われる。その際に前記微細な気泡が発生し、しかも微細な気泡がスラリー中に安定に存在することになる。通常、スラリー中の微細な気泡はセラミックシートの強度等の性能に影響しないことが当然に知られているが、本発明者によって、シートの薄膜化においては影響することが発見された。そして、本開示に係るスラリー製造方法における脱気工程では、マイルドな脱気処理によってスラリー組成物の状態を安定に維持しつつ、混合液中の溶存酸素量を低減できる、すなわち、微細な気泡を除去できると考えられる。そのため、本開示に係るスラリー製造方法により製造されたスラリー組成物を用いてセラミックシートを形成すると、セラミックシートの内部の空隙を減少させることができ、セラミックシートの強度が向上すると考えられる。さらに、本開示に係るスラリー製造方法によらずとも、溶存酸素量が7mg/L以下であるスラリー組成物を用いてセラミックシートを形成することで、セラミックシートの内部の酸素濃度が減少され、薄膜化したときの環境耐性が向上することにより、セラミックシートの強度が向上すると考えられる。
さらに、本開示における脱気処理の対象である混合液中の分散剤が、例えば、酸性基を有する化合物由来の構成単位(a)及び非イオン性基を有する化合物由来の構成単位(b)を含有する共重合体である場合、構成単位(a)が無機顔料表面に強く吸着し、構成単位(b)は無機顔料粒子間に強い立体的斥力をもたらすことで分散基として機能し、無機顔料粒子の良好な分散性を発現すると考えられる。そして、構成単位(a)の無機顔料表面に対する強い吸着は、無機顔料表面と共重合体との界面における剥離や破断も抑制するためシート強度が向上すると考えられるが、本開示の脱気工程ではマイルドな脱気処理を行うため、このシート強度の発現機構に対して悪影響を与えないことによるものと考えられる。
但し、これらは推定であって、本開示は、これらメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
本開示に係るスラリー製造方法は、非水系溶媒、無機顔料、及び分散剤を含有する混合液を、該混合液中の溶存酸素量が7mg/L以下となるように脱気処理する脱気工程を含む。本開示において「脱気処理」は、分散性向上及びシート強度向上の観点から、マイルドな脱気処理が好ましく、混合液中の溶媒を蒸発させない程度に脱気することがより好ましい。本開示において「溶媒を蒸発させない程度」とは、混合液の濃度(固形分濃度)が、脱気処理の前後で実質的に同じであることをいう。脱気処理としては、スラリー組成物中の溶存酸素量を7mg/L以下に低減できれば公知の脱気処理法を利用可能であり、減圧脱気処理、超音波処理等が挙げられる。減圧脱気処理の処理条件としては、例えば、温度80℃以下、系内圧80kPa以下で行うことが挙げられ、より具体的には、温度5〜80℃、系内圧5〜80kPa、処理時間5〜90分と設定できる。減圧脱気処理は、撹拌下で行ってもよい。超音波処理の処理条件としては、例えば、周波数10〜100Hz、出力50〜2000W、温度5〜80℃、処理時間5〜60分と設定することができる。
非水系溶媒の溶解度パラメータ(単位:[(MPa)1/2])は、無機顔料の分散性向上、及び分散剤との相溶性の観点から、好ましくは18以上、より好ましくは20以上、さらに好ましくは21以上であり、そして、好ましくは30以下、より好ましくは26以下である。本開示において、非水系溶媒の溶解度パラメータ(以下、「Sp2値」ともいう)は、Fedorsの方法[R.F.Fedors. Polym. Eng. Sci.,14,147(1974)]により計算された値をいう。前記Sp2値は、2種以上の非水系溶媒を用いて調整することができる。2種以上の非水系溶媒を含む混合溶媒のSp2値は、前記方法により求めることもできるが、簡便な方法として、混合溶媒の各成分の溶解度パラメータと体積分率とから計算して求めることもできる。例えば、トルエンとエタノールとを体積分率50:50で混合した場合、そのSp2値は、(18.3)×0.5+(26.2)×0.5=22.3となる。
一般に、無機顔料の表面は酸点及び塩基点の両者を有する。非水系溶媒中における酸点及び塩基点の量は、逆滴定法で求めることが可能である。逆滴定法とは、あらかじめ濃度が既知である塩基性試薬(又は酸性試薬)を一定の割合で無機顔料と混合し、十分に中和させた後、遠心分離機等で、固液分離させ、その上澄み液を滴定し、減少した塩基性試薬の量(又は酸性試薬の量)から酸量(又は塩基量)を求める方法である。本開示において塩基量及び酸量は下記により求められる。
約2gの無機顔料を精秤し、その質量をS(g)とする。前記精秤した無機顔料と、0.01N 酢酸−トルエン/エタノール(容量比 48/52)溶液30mLとを、ガラス製試料瓶に入れ、超音波洗浄器(Branson社製「1510J−MT」)で1時間分散処理し、分散液を得る。24時間静置後、前記分散液を遠心分離機(日立社製「CP−56G」)を用いて、25,000rpm、60分の条件で遠心分離する。分離した上層の液体部10mLを、フェノールフタレイン指示薬が添加されているトルエン/エタノール溶媒(容量比 2/1)20mLに加え、0.01N 水酸化カリウム−エタノール溶液にて中和滴定する。このときの滴定量をX(mL)、0.01N 酢酸−トルエン/エタノール(容量比 48/52)10mLを中和するのに必要な滴定量をB(mL)とすると、以下の式で、塩基量が求められる。
塩基量(μmol/g)=30×(B−X)/S
約2gの無機顔料を精秤し、その質量をS(g)とする。前記精秤した無機顔料と、0.01N n−ブチルアミン−トルエン/エタノール(容量比 48/52)溶液30mLとを、ガラス製試料瓶に入れ、超音波洗浄器(Branson社製「1510J−MT」)で1時間分散処理し、分散液を得る。24時間静置後、前記分散液を遠心分離機(日立社製「CP−56G」)を用いて、25,000rpm、60分の条件で遠心分離する。分離した上層の液体部10mLを、ブロムクレゾールグリーン指示薬が添加されているトルエン/エタノール溶媒(容量比 2/1)20mLに加え、0.01N 塩酸−エタノール溶液にて中和滴定する。このときの滴定量をX(mL)、0.01N n−ブチルアミン−トルエン/エタノール(容量比 48/52)10mLを中和するのに必要な滴定量をB(mL)とすると、以下の式で、酸量が求められる。
酸量(μmol/g)=30×(B−X)/S
無機顔料のBET換算粒径は、無機顔料粒子を粒子径R(m)の球と仮定して、窒素吸着法により測定されたBET比表面積S(m2/g)、無機微粒子の密度ρ(g/cm3)を用いて、求めることができる。すなわち、BET比表面積は単位質量当たりの表面積であるので、表面積をA(m2)、粒子の質量をW(g)とすると、
S=A/W
=[4×π×(R/2)2]/[4/3×π×(R/2)3×ρ×106]
=6/(R×ρ×106)
の関係式が得られる。粒子径の単位をnmに変換すると、
R(nm)=6000/(S×ρ)
となり、BET換算粒径を求めることができる。例えば、チタン酸バリウム(密度6.0 g/cm3)のBET比表面積が5.0(m2/g)であれば、そのBET換算粒径は、200nmとなる。
本開示における混合液は、分散剤を含有する。本開示における分散剤は、共重合体である。共重合体は、例えば、後述の構成単位(a)及び後述の構成単位(b)から選ばれる少なくとも1つを含有することができ、さらに所望により、後述の構成単位(c)及びその他の構成単位から選ばれる少なくとも1つをさらに含有することができる。例えば、本開示における共重合体としては、構成単位(a)及び(b)を含む共重合体、並びに、構成単位(a)、(b)及び(c)を含む共重合体が挙げられる。本開示における共重合体を構成する各構成単位の配列は、ランダム、ブロック、又はグラフトのいずれでもよい。
本開示における共重合体が構成単位(a)を含む場合、構成単位(a)としては、分散性及びシート強度向上の観点から、酸性基を有する化合物(以下、「モノマー(a)」ともいう)由来の構成単位がより好ましい。構成単位(a)は、中和可能な酸性基を有することから、無機顔料表面との相互作用により、共重合体分子が無機顔料表面に選択的に強く吸着すると考えられる。本開示において、構成単位(a)とは、重合後の化学修飾によってモノマー(a)由来の構成単位となるものを含む概念である。前記化学修飾としては、カルボキシ基、リン酸基、スルホ基等の導入、加水分解、エステル化等が挙げられる。
本開示における共重合体が構成単位(b)を含有する場合、構成単位(b)としては、シート強度向上、分散性向上及び共重合体の製造容易性の観点から、例えば、下記式(I)で表される構成単位及び下記式(II)で表される化合物由来の構成単位から選ばれる少なくとも1種の構成単位(b)が挙げられ、下記式(I)で表される構成単位が好ましい。構成単位(b)は非イオン性基を有し、無機顔料粒子間に強い立体的斥力をもたらし、無機顔料粒子同士の凝集を抑制して高い分散性に寄与すると考えられる。
本開示における共重合体が構成単位(c)を含む場合、構成単位(c)としては、例えば、式(IV)で表される構成単位が挙げられる。構成単位(c)は非極性基を有するため、無機顔料表面に吸着した共重合体が非水系溶媒中へ再溶出することを抑制すると考えられる。さらに、構成単位(c)はイオン性基を有さないため、無機顔料表面に共重合体を留めつつ、共重合体の分子形状の自由度を高めてより均一に無機顔料を被覆するものと考えられる。
本開示における共重合体は、本開示の効果を損なわない範囲で、構成単位(a)、(b)及び(c)以外のその他の構成単位を含んでもよい。本開示における共重合体の全構成単位中、前記その他の構成単位の含有量は、本開示の効果を発現させる観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
本開示における共重合体は、例えば、モノマー(a)及びモノマー(b)を含むモノマー混合物、又はモノマー(a)、(b)及び(c)を含むモノマー混合液を溶液重合法で重合させる等、公知の方法で得ることができる。溶液重合に用いられる溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族;エタノール、2−プロパノール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル;等が挙げられる。溶液重合に用いられる溶媒の量は、モノマー全量100質量部に対し、好ましくは50質量部以上1000質量部以下である。本開示において、共重合体の全構成単位中の構成単位(a)の含有量は、重合に用いるモノマー全量に対するモノマー(a)の使用量の割合と見なすことができる。共重合体の全構成単位中の構成単位(b)の含有量は、重合に用いるモノマー全量に対するモノマー(b)の使用量の割合と見なすことができる。共重合体の全構成単位中の構成単位(c)の含有量は、重合に用いるモノマー全量に対するモノマー(c)の使用量の割合と見なすことができる。
本開示における混合液は、本開示の効果を損なわない範囲で、前述の共重合体以外の分散剤を含有してもよい。さらに、本開示における混合液は、本開示の効果を損なわない範囲で、バインダー樹脂、帯電防止剤、可塑剤、潤滑剤、分散助剤等の低分子化合物等の添加剤を含有してもよく、シート強度向上の観点から、バインダー樹脂を含有することが好ましい。
本開示における混合液は、シート強度向上の観点から、脱泡剤を含むことが好ましい。脱泡剤としては、例えば、オレフィン系脱泡剤、シリコーン系脱泡剤及びアクリル系脱泡剤から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。例えば、本開示における混合液は、少なくとも前記非水系溶媒、前記無機顔料、前記分散剤、及び前記脱泡剤を配合してなるものとすることができる。したがって、本開示における前記配合工程は、脱泡剤をさらに配合する工程を含むことができ、前記脱泡剤は、前記一次分散工程で配合されてもよいし、前記二次分散工程で配合されてもよいが、好ましくはセラミックシートを形成する直前に配合されるのがよい。
シリコーン系脱泡剤としては、オイル型、オイルコンパウンド型、溶液型、エマルジョン型、自己乳化型等が挙げられる。通常、オイル型は、溶剤や添加剤を含まない100%シリコーンオイルであり、オイルコンパウンド型は、シリコーンオイルにシリカ微粉末を配合したものであり、溶液型は、シリコーンオイルを溶媒で希釈したものである。エマルジョン型は、シリコーンオイルとシリカ微粉末とを含有するオイルコンパウンドと称される組成物を、乳化剤を用いて水に乳化したものである。そして、通常、シリコーンオイルとシリカ微粉末と変性シリコーンオイルとを含有し、水に加えて攪拌するだけで容易に乳化状態となるシリコーン系消泡剤が、自己乳化型シリコーン系消泡剤と称される。シリコーン系脱泡剤の市販品としては、エボニック社製「Airex991」、サンノプコ社製「ダッポーSN−359」、旭化学工業社製「Asahi Silicone AF105」等が挙げられる。
アクリル系脱泡剤としては、例えば、アクリル骨格やメタアクリル骨格を含むアクリル系樹脂及びビニル系樹脂等が挙げられる、アクリル系脱泡剤の市販品としては、共栄社化学社製「ポリフローNo.90」等が挙げられる。
本開示における混合液は、例えば、前記非水系溶媒、前記無機顔料、及び前記分散剤、並びに、必要に応じてその他の成分を配合することによって製造できる。例えば、本開示における混合液は、少なくとも前記非水系溶媒、前記無機顔料、及び前記分散剤を配合してなるものとすることができる。したがって、本開示に係るスラリー製造方法は、前記非水系溶媒、前記無機顔料、及び前記分散剤を配合する工程(以下、「配合工程」ともいう)をさらに含むことができる。前記配合は、例えば、ロールミル、ニーダー、エクストルーダ等の混練機、ディスパー、ホモミキサー、ジェットミル、サンドミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等の混合器を用いて行うことができる。前記配合工程における各成分の配合量は、上述の混合液中における各成分の含有量と同様とすることができる。
本開示に係るスラリー製造方法によれば、非水系溶媒中における無機顔料の良好な分散性を確保しつつ、セラミックシートのシート強度向上が可能なスラリー組成物を得ることができる。本開示において、スラリー組成物中の各成分の含有量は、上述の混合液中の各成分の含有量と同様とすることができる。すなわち、本開示は、非水系溶媒、無機顔料、及び分散剤を含有するスラリー組成物であって、前記分散剤が、共重合体であり、溶存酸素量が、7mg/L以下である、スラリー組成物に関する。本開示におけるスラリー組成物は、セラミックシートの内部の酸素濃度が減少され、シート強度が向上したセラミックシートを形成可能な新しいスラリー組成物である。
表1に示す共重合体A1〜A6の調製には、下記原料を用いたSp値の記載のあるものは、該原料が重合により共重合体の構成単位となった場合の、Hansenの方法により計算された溶解度パラメータ(単位:[(MPa)1/2])である。
・無水マレイン酸:三井化学社製「ムスイマレインサン ペレット KG」
・MAA:メタクリル酸(三菱瓦斯化学社製「GE−110」)
<モノマー(b)>
・PEGMA23:メトキシポリエチレングリコール(23モル)メタクリレート(新中村化学工業社製「NK−エステル TM―230G」)
・PEGMA40:メトキシポリエチレングリコール(40モル)メタクリレート(新中村化学工業社製「NKエステル M−450G」)
・アリルエーテルEO:ポリオキシエチレンアリルエーテル(式(5)中、R11:メチル基、R12:アリル基、m:33)、日油社製「ブレンマー PKA-5010」(EO平均付加モル数:33)
・アリルエーテルEOPO:ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンアリルエーテル(式(5)中、R11:メチル基、R12:アリル基、m:32)、日油社製「ブレンマー PKA-5016」(EO平均付加モル数:16、PO平均付加モル数:16)
<モノマー(c)>
・i−SMA:分岐ステアリルメタクリレート(新中村化学工業社製「NKエステル S−1800M」)(Sp1値:15.7)
・St:スチレン(NSスチレンモノマー社製)(Sp1値:15.5)
・MMA:メチルメタクリレート(三菱瓦斯化学社製)(Sp1値:16.6)
<重合連鎖移動剤>
・MPD:3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(旭化学工業社製「1−チオグリセロール」)
<重合開始剤>
・V−65B:2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製)
還流管、攪拌装置、温度計及び窒素導入管を取り付けた1Lセパラブルフラスコに、初期仕込み用モノマー(a)である無水マレイン酸 6.75g、初期仕込み用モノマー(b)であるPEGMA23 31.5g、初期仕込み用モノマー(c)であるi-SMA 6.75g、MPD 2.25g及びエタノール(キシダ化学社製、試薬) 27.0gを仕込み、フラスコ内を撹拌しながら窒素置換し、80℃に加熱した。フラスコ内温度が80℃に到達後、V−65B 1.35g及びエタノール 12.15gの混合液をフラスコ内に添加した。その後、滴下用モノマー液(a)である無水マレイン酸 60.75g、滴下用モノマー液(b)であるPEGMA23 283.5g、滴下用モノマー液(c)であるi-SMA 60.75g、MPD 19.35g、V−65B 12.15g及びエタノール 243.0gの混合液を3時間かけてフラスコ内に滴下した。更に80℃で3時間熟成した後、室温まで冷却した。濃度調整のためにエタノールをフラスコ内に添加し、共重合体A1溶液を得た。
表1に示した構成単位となるように初期仕込み用モノマー液(a)〜(c)、及び滴下用モノマー液(a)〜(c)を変更したこと、及び、共重合体の分子量を表1に示す値に調節するために、MPDの添加量を調節したこと以外は、前記共重合体A1と同様にして、共重合体A2〜A6溶液を製造した。
共重合体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下「GPC」ともいう)法を用いて行った。すなわち、試料をN,N−ジメチルホルムアミドで希釈し、試料の固形分濃度0.3質量%の溶液を調製して試料溶液とし、その100μLを測定に供した。N,N−ジメチルホルムアミドに、リン酸とリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、GPC〔装置:東ソー株式会社製「HLC−8120GPC」、検出器:示差屈折計(装置付属)、カラム:東ソー株式会社製「TSK−GEL α−M」×2本、カラム温度:40℃、溶離液流速:1mL/min〕により、測定した。標準物質としては、単分散ポリスチレン(東ソー株式会社製:分子量 5.26×102、1.02×105、8.42×106;西尾工業株式会社製:分子量 4.0×103、3.0×104、9.0×105)を用いた。
表2に示す実施例1〜9、比較例1及び参考例1〜3のスラリー組成物を、以下の配合工程及び脱気工程を順に行うことにより製造した。
スラリー組成物中の溶存酸素量(mg/L)は、溶存酸素測定装置(飯島電子工業社製の「B−506」)を用いて25℃下で測定した。
粒径測定装置として、光子相関法(動的光散乱法)の原理に基づく粒度分布測定機(シスメックス社製「ゼータサイザーナノZS」)を使用した。スラリー組成物 0.025gと、分散媒としてトルエン/エタノール混合溶媒(容積比:48/52) 2mLとを混合して得られた液をサンプルとし、光路長10mmの硝子セルに1.2mL採取し、測定部に入れて測定した。測定パラメータとして、粒子の屈折率、分散媒の屈折率及びサンプル粘度を入力した。例えば、無機顔料がチタン酸バリウムの場合、粒子の屈折率を2.40とした。分散媒の屈折率は1.423、サンプル粘度は0.752とした。散乱強度の頻度分布が90%となる粒径をD90とした。D90の値が小さいほど、分散性に優れると評価できる。
フィルムアプリケーター(ギャップ50μm)を用い、シリコーン処理された離型フィルム(帝人デュポンフィルム社製「ピューレックス A31」)にスラリー組成物を塗工し、60℃にて16時間乾燥し、セラミックシートを成形した。乾燥後のセラミックシートの厚みは、2.0μmであった。得られたセラミックシートを、前記離型フィルムとともにスーパーダンベル(ダンベル社製「SDK−2493」)を取り付けたレバー式試料裁断機(ダンベル社製「SD型」)を用いて裁断して、離型フィルムを剥離したシートを試験片とし、引っ張り試験用治具を装着した卓上型精密試験機(島津製作所社製「オートグラフ EZ−Test」)を用いて、シートが破断した時の破断応力を測定した。破断応力の値が大きいほど、シート強度に優れると評価できる。シート強度の観点から、破断応力(単位:MPa)は、好ましくは20.0以上、より好ましくは25.0以上、更に好ましくは26.0以上、更に好ましくは27.0以上である。
Claims (10)
- 非水系溶媒、無機顔料、及び分散剤を含有する混合液を、該混合液中の溶存酸素量が7mg/L以下となるように脱気処理する脱気工程を含み、
前記分散剤は、共重合体である、スラリー組成物の製造方法。 - 前記共重合体が、酸性基を有する化合物由来の構成単位(a)を含む、請求項1に記載のスラリー組成物の製造方法。
- 前記構成単位(a)が、一塩基酸、二塩基酸、無水二塩基酸及び二塩基酸モノエステルから選ばれる少なくとも1種の化合物由来の構成単位である、請求項2に記載のスラリー組成物の製造方法。
- 前記共重合体が、下記式(I)で表される構成単位及び下記式(II)で表される化合物由来の構成単位から選ばれる少なくとも1つの構成単位(b)を含む、請求項1から3に記載のスラリー組成物の製造方法。
R11O(AO)mR12 (II)
[式(II)中、R11は炭素数1以上18以下の炭化水素基を示し、R12は炭素数2以上5以下の不飽和炭化水素基を示し、AOは炭素数2以上4以下のオキシアルキレン基の1種又は2種以上を示し、mはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、1以上100以下である。] - 前記非水系溶媒、前記無機顔料、及び前記分散剤を配合する配合工程を含む、請求項1から4のいずれかに記載のスラリー組成物の製造方法。
- 前記脱気処理が、温度80℃以下、系内圧80kPa以下で行う減圧脱気である、請求項1から5のいずれかに記載のスラリー組成物の製造方法。
- 前記無機顔料の平均粒径が、1nm以上150nm以下である、請求項1から6のいずれかに記載のスラリー組成物の製造方法。
- 前記無機顔料が、塩基性無機顔料である、請求項1から7のいずれかに記載のスラリー組成物の製造方法。
- 非水系溶媒、無機顔料、及び分散剤を含有するスラリー組成物であって、
前記分散剤が、共重合体であり、
溶存酸素量が、7mg/L以下である、スラリー組成物。 - 前記無機顔料の平均粒径が、1nm以上150nm以下である、請求項9に記載のスラリー組成物。
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JP6727934B2 (ja) | 2020-07-22 |
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