JP2017185633A - 耐熱ガスバリア性被覆物 - Google Patents
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例えば金属アルコキシドを加水分解し重縮合反応を経て金属酸化物ゾル溶液を作製し、ステンレス基板にコーティングして保護被膜を形成することにより耐酸化性や耐腐食性を改善する試みが報告されている。このゾルゲル法はセラミックスコーティングとしてPVD、CVDや溶射法などと比べると、大面積で複雑形状の基板に均一に塗布できることや、組成の制御が分子レベルでできることの他、初期に投資する設備投資が低く安価で製膜することができる。
また、電子材料分野では、空気にさらされることで機能低下や腐食が進行することを予防する為、空気を透過しないガスバリア性を持つ部材で表面を覆い耐久性を向上させる取り組みが多数行われている。
しかし、塗布液として得られたアルミナゲルは、水酸化アルミニウムの1種(Akdalaite)で多数の水酸基を保有しており、このアルミナゲルをステンレス基板上にコーティングし形成されたアルミナ膜は、加熱処理時に水酸基同士の脱水反応により膜の収縮が非常に大きく、基板との熱膨張の差により亀裂や剥離が発生するなどの問題があり、工業的に使用するには、解決すべき多くの課題がある。
(1)耐熱ガスバリア性被覆物において、異方性を持ち次の(a)〜(d)全てを満たす板状の形状を持つアルミナ粒子で表面が被覆されていることを特徴とする被覆物。
(a)最も大きな面積を持つ面の対角長さと厚さの比が20以上1000以下
(b)最も大きな面積を持つ面の対角長さが100nm以上5000nm以下
(c)厚さが1nm以上20nm以下
(d)アルミナ粒子がシリカで表面を被覆されている
(2)(1)記載の耐熱ガスバリア性被覆物が、金属、炭化ケイ素、窒化チタン、炭素のいずれか一つ以上の表面を、被覆したものであることを特徴とする被覆物。
(3)(1)記載の被覆が、アルミナ粒子をシリカで被覆した分散液を準備する工程、分散液を表面に塗布する工程と、100℃以上1400℃以下で焼結させる工程の全てを含むことを特徴とする耐熱ガスバリア性被覆物の製造方法。
(4)(1)記載のアルミナが、ベーマイト、ギブサイト、バイヤライト、γ、θ、δ型のアルミナの少なくとも1種以上から成ることを特徴とする耐熱ガスバリア性被覆物。
(5)異方性を持ち、次の(a)〜(d)全てを満たす板状の形状を持つアルミナ粒子で表面を被覆することを特徴とする、耐熱ガスバリア性の付与方法である。
(a)最も大きな面積を持つ面の対角長さと厚さの比が20以上1000以下
(b)最も大きな面積を持つ面の対角長さが100nm以上5000nm以下
(c)厚さが1nm以上20nm以下
(d)アルミナ粒子の表面がシリカで被覆されている
(a)最も大きな面積を持つ面の対角長さと厚さの比が20以上1000以下
(b)最も大きな面積を持つ面の対角長さが100nm以上5000nm以下
(c)厚さが1nm以上20nm以下
(d)アルミナ粒子がシリカで表面を被覆されている
金属、炭化ケイ素、窒化チタン、炭素のいずれか一つ以上の表面を、前記アルミナ粒子で被覆することにより、従来に無い透明なガスバリア性被膜を持つ耐熱性被覆物を簡便に提供することが出来る。前記の被覆が、アルミナ粒子をシリカで被覆した分散液を準備する工程、分散液を表面に塗布する工程と、100℃以上1400℃以下で焼結させる工程の全てを含むことにより、簡便に耐熱ガスバリア性被覆物を製造することが出来る。前記アルミナが、ベーマイト、ギブサイト、バイヤライト、γ、θ、δ型のアルミナの少なくとも1種以上から成ることにより、格段の耐熱性を付与することができる。異方性を持ち、次の(a)〜(d)全てを満たす形状を持つアルミナ粒子で表面を被覆することによる、従来に無い高いガスバリア性を付与する方法を提供することが出来る。
(a)最も大きな面積を持つ面の対角長さと厚さの比が20以上1000以下
(b)最も大きな面積を持つ面の対角長さが100nm以上5000nm以下
(c)厚さが1nm以上20nm以下
(d)アルミナ粒子がシリカで表面を被覆されている
本発明は、特定の形状を持つシリカで表面を被覆したアルミナ粒子で緻密でガスバリア性の高い被膜で基材を被覆することにより、これまで使用できなかった温度域での使用が可能になるばかりではなく、使用耐久性時間が大幅に向上することにより広く産業の発展に寄与することが出来る。具体的には、金属の表面に被覆を行うことにより基材の酸化による熱劣化を抑制し、変色等の表面の変化を防止することができ、炭化物表面に被覆を行うことにより酸化による重量減少を抑制することができ、これらの基材の高温環境下での耐久性を大幅に向上させることができる。
前記の水性アルミナゾルは、加水分解性アルミニウム化合物を加水分解し、有機酸や無機酸を添加した酸性条件下で解膠することにより製造することができる。加水分解性アルミニウム化合物の種類および、加水分解や解膠の条件を、公知の手法により(例えば窯業協會誌 Vol.76 No.875 P207)適宜選択することにより、特定の形状を持つバイヤライト、ギブサイト、ベーマイト、又は擬ベーマイトであるアルミナ水和物粒子からなる水性アルミナゾルを製造することができる。アルミナ水和物粒子の結晶系としては、ギブサイト又は、ベーマイト又は擬ベーマイトが耐熱性の高い被膜を形成できることから好ましいものとして挙げられる。
これらの化合物のうち、適度な加水分解性を有し、副生成物の除去が容易であることなどから、アルミニウムアルコキシドが好ましく、炭素数2〜5のアルコキシル基を有するものが特に好ましい。加水分解に要する水の量は特に限定されないが、少なくともアルミニウム原子1molに対して3molを必要とし、これを一度に加えても段階的に加えても差し支えは無い。加える水の量が3molを下回ると加水分解反応が完結せず、一定の形状を持つアルミナ粒子を得ることが困難であることから好ましくない。水性ベーマイトゾル中のベーマイト又は擬ベーマイト粒子が、0.1〜30重量部になるように調整することが好ましく、更に好ましくは、0.5〜20重量部になるように調整する。
水性アルミナゾル中のアルミナ粒子の濃度が0.1重量部以下の場合は、適切な膜厚を作成するのに塗布‐乾燥の操作を繰り返す必要があり、操作が煩雑となるため好ましくなく、30重量部以上の場合は、分散液の粘度が高くなり、均一な厚さの被膜が得られ難いのみならず、1度に厚膜を形成することにより熱収縮による応力が増大し亀裂の発生や被膜が剥離するために好ましくない。
基材に分散液を塗布した後に、必要に応じて分散媒を除去場合には、公知の蒸発法が好ましい。
アセトンで脱脂処理したステンレス鋼(SUS304)基板50mm×50mmを、平均アスペクト比=40の板状ギブサイト粒子(平均厚さ:5nm、最も面積の大きな平面の平均対角長さ:200nm)10重量部を含む分散液15gおよび3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越ポリマー社製 KBM403):0.75gの混合溶液に5分間浸漬した。その後、基板をゆっくり引き上げ30℃で2時間乾燥後、さらに150℃で2時間焼結処理し、厚さ0.8μmの無色透明な被膜をステンレス鋼に被覆した耐熱ガスバリア性被覆物を作製した。この耐熱ガスバリア性被覆物を800℃で10時間耐熱性試験を行った結果、原料のステンレス鋼と同様に金属光沢を保持していた。また、耐熱試験後にガスバリア性被覆物から被膜の剥離は確認できなかった。
平均アスペクト比=50の板状ベーマイト粒子(平均厚さ:3nm、最も面積の大きな平面の平均対角長さ:150nm)10重量部を含む分散液に変更した以外は、実施例1と同様に操作を行い、透明な被膜を持つ耐熱ガスバリア性被覆物を作成した。実施例1と同様に耐熱性試験を行ったところ、原料のステンレス鋼と同様の金属光沢を保持していた。また、耐熱試験後に耐熱ガスバリア性被覆物から被膜の剥離は確認できなかった。
アセトンで脱脂処理したグラファイト基板100mm×50mmに変更した以外は、実施例1と同様に操作を行いグラファイト基板にアルミナ分散液を塗布した。その後、30℃で2時間乾燥後、さらに200℃で2時間焼結処理し、グラファイトのガスバリア性被覆物を作製した。
このガスバリア性被覆物を室温から昇温速度10℃/分で800℃(保持時間0分)まで昇温させた時の重量減少を測定した結果、加熱前に比べて重量が20%減少していた。
平均アスペクト比=1のベーマイト粒子(平均短径:20nm、平均長径:20nm)に変更した以外は、実施例1と同様に操作し、透明アルミナ被膜をステンレス鋼に作製した。この基板を800℃で10時間耐熱性試験を行った結果、基板からのアルミナ膜の剥離は無かったが、基板のステンレス鋼が金属光沢を失い褐色に変色しており、基材のガスバリア性が向上しなかった。
無定形粒子のアモルファスアルミナ粒子に変更した以外は、実施例1と同様に操作し、無色透明アルミナ被膜をステンレス鋼に作製した。この基板を800℃で10時間耐熱性試験を行った結果、アルミナ被膜の一部が基板から剥離して基板のステンレス鋼が金属光沢を失い褐色に変色しており、基材のガスバリア性が向上しなかった。
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを添加しなかった以外は、実施例1と同様に操作し、無色透明アルミナ被膜をステンレス鋼に作製した。この基板を800℃で10時間耐熱性試験を行った結果、アルミナ被膜の一部が基板から剥離して基板のステンレス鋼が金属光沢を失い褐色に変色しており、基材のガスバリア性が向上しなかった。
平均アスペクト比=1のベーマイト粒子(平均短径:20nm、平均長径:20nm)に変更した以外は、実施例4と同様に操作し、グラファイトのアルミナ被覆物を作製した。この被覆物を室温から昇温速度10℃/分で800℃(保持時間0分)まで昇温させた時の重量減少を測定した結果、40%の重量減少であった。
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを添加しなかった以外は、実施例4と同様に操作し、グラファイトのアルミナ被覆物を作製した。この耐熱性被覆物を室温から昇温速度10℃/分で800℃(保持時間0分)まで昇温させた時の重量減少を測定した結果、60%の重量減少であった。
実施例3と比較例4、5の比較より、グラファイト基板をシリカ被覆を行った特定の形状を持つアルミナで被覆した場合には、炭素の被膜のガスバリア性により酸化による重量減少が20%であったことに対して、特定の形状を持たないアルミナやシリカ被覆を行わないアルミナで被覆した場合には、炭素の酸化が進行して40〜60%の重量減少が発生したことから、シリカ被覆を行った特定の形状を持アルミナで炭素表面を被覆することにより、特段のガスバリア効果が発揮され基材の耐熱性が向上した。
Claims (5)
- 耐熱ガスバリア性被覆物において、異方性を持ち次の(a)〜(d)全てを満たす板状の形状を持つアルミナ粒子で表面が被覆されていることを特徴とする被覆物。
(a)最も大きな面積を持つ面の対角長さと厚さの比が20以上1000以下
(b)最も大きな面積を持つ面の対角長さが100nm以上5000nm以下
(c)厚さが1nm以上20nm以下
(d)アルミナ粒子の表面がシリカで被覆されている - 請求項1記載の耐熱ガスバリア性被覆物が、金属、炭化ケイ素、窒化チタン、炭素のいずれか一つ以上の表面を、被覆したものであることを特徴とする被覆物。
- 請求項1記載の被覆が、アルミナ粒子をシリカで被覆した分散液を準備する工程、分散液を表面に塗布する工程と、100℃以上1400℃以下で焼結させる工程の全てを含むことを特徴とする耐熱ガスバリア性被覆物の製造方法。
- 請求項1記載のアルミナが、ベーマイト、ギブサイト、バイヤライト、γ、θ、δ型のアルミナの少なくとも1種以上から成ることを特徴とするガスバリア性被覆物。
- 異方性を持ち、次の(a)〜(d)全てを満たす板状の形状を持つアルミナ粒子で表面を被覆することを特徴とする、耐熱ガスバリア性の付与方法。
(a)最も大きな面積を持つ面の対角長さと厚さの比が20以上1000以下
(b)最も大きな面積を持つ面の対角長さが100nm以上5000nm以下
(c)厚さが1nm以上20nm以下
(d)アルミナ粒子の表面がシリカで被覆されている
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