JP2003213210A - 塗料組成物及び耐熱プレコート鋼板 - Google Patents

塗料組成物及び耐熱プレコート鋼板

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JP2003213210A
JP2003213210A JP2002015407A JP2002015407A JP2003213210A JP 2003213210 A JP2003213210 A JP 2003213210A JP 2002015407 A JP2002015407 A JP 2002015407A JP 2002015407 A JP2002015407 A JP 2002015407A JP 2003213210 A JP2003213210 A JP 2003213210A
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coating
powder
resin
coating composition
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JP2002015407A
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Takeshi Shimizu
剛 清水
Keiji Izumi
圭二 和泉
Mitsuo Susa
光夫 須佐
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Nippon Steel Nisshin Co Ltd
Original Assignee
Dainippon Ink and Chemicals Co Ltd
Nisshin Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 鱗片状粉末を分散させることによりシロキサ
ン結合のネットワーク構造を強化し、耐熱性,加工性,
耐食性に優れた塗膜形成用塗料組成物及び耐熱プレコー
ト鋼板を提供する。 【構成】 この塗料組成物は、メチルシリコーン樹脂を
主成分とし、樹脂の合計重量100質量部に対し5〜1
00質量部の割合で鱗片状粉末3を配合している。鱗片
状粉末としては、平均粒径が0.5〜50μm,厚みが
平均粒径の1/5以下の難水溶性酸化物が好ましい。メ
チルシリコーン樹脂は、好ましくは一般式(CH3)aSi
(4-a-b)/2(OH)b(ただし、a=0.5〜1.5,b=
0.5〜1.05)をもつ。該塗料組成物を乾燥膜厚2〜
15μmとなる塗布量で塗装原板の少なくとも片面に塗
布した後、板温が150〜250℃の範囲になるように
加熱・乾燥すると、下地鋼1の沿面方向に鱗片状粉末3
が配向し、耐熱性,加工性,耐食性に優れた塗膜が形成
される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐熱性が要求される塗
膜を形成する塗料組成物及び加熱調理器具,空調機器,
暖房機器,自動車排気系部材等に使用される耐熱プレコ
ート鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】加熱調理器具,空調機器,暖房機器,自
動車排気系部材等に使用される耐熱プレコート鋼板とし
ては、塗膜の耐熱温度が400℃以上で2〜4t程度の
180度折曲げ加工によっても塗膜剥離が生じない加工
性が要求される。そこで、アルキル基,アルケニル基,
フェニル基を配合したシリコーン樹脂塗料(特開昭63
−172640号公報,特開平2−265742号公
報)を使用し、シロキサン結合のネットワークによって
塗膜を強化することが知られている。シリコーン樹脂は
シロキサン結合を主骨格にもつことから従来の有機樹脂
に比較して耐熱性に優れているが、樹脂に導入される有
機基の種類や含有量によって樹脂塗膜の特性が大きく変
動する。一般的には、シリコーン樹脂中の有機基の含有
量を減らすと耐熱性が向上するものの加工性が低下す
る。この点、従来のシリコーン樹脂は、樹脂中の有機基
比率が比較的高いためプレコート化に耐える加工性をも
つが400℃以上の耐熱性に劣る。しかも、400℃以
上に加熱されると、樹脂中のSi−C65の結合が徐々
に切断されて少量ながらもベンゼンガスが放出され、そ
の際に煙も発生する。
【0003】本発明者等も、耐熱性に優れたプレコート
鋼板用の塗料としてモノメチルシラノールゾルにエポキ
シ樹脂及びイソシアネートを配合した塗料を紹介した
(特開平8−245922号公報)。この塗料は、シリ
コーン樹脂中の有機基比率が比較的低いため400℃以
上の耐熱性に優れているが、加工性に劣るため有機樹脂
の添加によってプレコート化を可能にしている。
【0004】提案した塗料を用いて製造された塗装鋼板
から作られた製品では、使用初期に添加有機樹脂が加熱
分解する欠点がある。特にイソシアネートの加熱分解に
際しては特有の臭気又は煙が発生する。添加有機樹脂が
加熱分解した直後にはモノメチルシラノールから形成さ
れるオルガノポリシロキサン樹脂もシロキサン結合の十
分なネットワークを形成しておらず、一時的に不安定な
皮膜状態を経る。そのため、かかる問題が懸念される用
途、たとえば身近に使用される加熱調理機器,耐食性が
要求される自動車排気系部材等では、添加有機樹脂の加
熱分解及びオルガノポリシロキサン樹脂のネットワーク
形成促進による耐食性向上を狙って、プレス加工後に4
00〜500℃に数分加熱する予備加熱を施した後で本
製品に組み込む工程が採用される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来のシ
リコーン樹脂塗膜を設けた耐熱プレコート鋼板では、何
れも優れた加工密着性を示すものの、400℃以上の加
熱でベンゼンガスが放出されることや、加工後の予備加
熱を必要とする等の未解決の問題がある。すなわち、加
工後に予備加熱を必要とせずそのままで各種機器に組み
込まれて400℃以上の温度雰囲気で使用可能な耐熱プ
レコート鋼板及び当該用途に適した塗料組成物は今まで
のところ提供されていない。本発明者等は、加工後の予
備加熱が省略可能でベンゼンガスの発生もなく十分な耐
熱性を呈するプレコート鋼板を得るために、フェニル基
を有するシリコーン樹脂を使用しない系で耐熱プレコー
ト用の塗料設計を検討した。検討結果から、メチルシリ
コーン樹脂をベース樹脂とし、乾燥膜厚,樹脂中への添
加物の濃度,シリコーン樹脂へのシラノール基の導入量
等を調整することによって、プレコート化に必要とされ
る4t程度の180度折曲げ加工試験で塗膜剥離が生じ
ないプレコート鋼板が得られることを見出した。
【0006】しかし、メチルシリコーン樹脂をベース樹
脂とする塗膜を形成した塗装鋼板の耐熱性能を調査した
ところ、300〜350℃の加熱及び400℃の短時間
加熱で塗膜の著しい性能低下が検出された。塗膜の性能
低下は、次のように推察される。樹脂に含まれるSi−
CH3結合は、300〜350℃の加熱で分解反応を開
始する。他方、シリコーン樹脂中でSi−O−Siのシ
ロキサン結合が進行して十分なネットワーク構造を形成
する上では、400℃以上での長時間加熱が必要とされ
ている。そのため、メチルシリコーン樹脂単独の系にお
いても、Si−CH3の結合が加熱分解する一方で、S
i−O−Siのシロキサン結合が進行して十分なネット
ワーク構造が形成されるまでの300〜400℃の中間
温度領域で、一時的に不安定な皮膜状態を経る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、このような塗
膜形成過程における反応形態に関する検討の結果として
案出されたものであり、鱗片状粉末の添加により300
〜400℃の中間温度領域における塗膜性能を改善し、
加工後の予備加熱を必要とせず、使用中の高温加熱状態
でも異臭ガスが発生しない塗膜形成に適した塗料組成物
及び耐熱プレコート鋼板を提供することを目的とする。
本発明の塗料組成物は、その目的を達成するため、メチ
ルシリコーン樹脂を主成分とし、樹脂の合計重量100
質量部に対して5〜100質量部の割合で鱗片状粉末を
分散させている。
【0008】鱗片状粉末としては、平均粒径が0.5〜
50μm,厚みが平均粒径の1/5以下でマイカ粉,ア
ルミナフレーク,タルク粉,板状カオリン,硫酸バリウ
ムフレークから選ばれた1種又は2種以上の難水溶性酸
化物が好ましい。アルミフレーク,ステンレス鋼フレー
ク等の金属フレークやガラスフレークも鱗片状粉末とし
て使用できる。更には、塗膜に色調を付与するため、酸
化チタン,酸化鉄等の熱的に安定な難水溶性金属酸化物
等で各種フレークを被覆した鱗片状粉末も使用可能であ
る。メチルシリコーン樹脂は、好ましくは一般式(C
3)aSiO(4-a-b )/2(OH)b(ただし、a=0.5〜
1.5,b=0.5〜1.05)をもつ。鱗片状粉末を配
合した塗料組成物を好ましくは乾燥膜厚2〜15μmと
なる塗布量で下地鋼の少なくとも片面に塗布した後、板
温が150〜250℃の範囲になるように加熱・乾燥す
ることによって耐熱性,加工性,密着性に優れた塗膜が
形成される。
【0009】
【作用】本発明の塗料組成物を用いて下地鋼1の表面に
形成された塗膜2では、図1で模式的に示すように、塗
膜2中に分散した鱗片状粉末3が下地鋼1の表面と平行
な方向に配位する。塗膜2に分散した鱗片状粉末3は、
以下の理由からSi−CH3結合の加熱分解が進行して
いる状態での塗膜密着性,耐水性等の物性を改善するも
のと推察される。塗膜2に含まれているSi−CH
3(メチル基)結合は300〜350℃で加熱分解する
ため、塗膜2が一時的に脆くなる。Si−CH3結合の
加熱分解が生じている最中に加熱・冷却が繰り返される
と、下地鋼1と塗膜2との熱膨張差に起因する歪が塗膜
2に蓄積され、塗膜2の脆化が一層加速される。また、
塗膜2のバリア効果による耐水性も低下しているため、
水分が容易に塗膜2を透過して下地鋼1/塗膜2の界面
に達し、下地鋼1に対する塗膜2の密着性が低下する。
【0010】これに対し、下地鋼1の表面と平行な方向
に配位した鱗片状粉末3が分散している塗膜2では、下
地鋼1の表面と平行な方向に沿った塗膜2のネットワー
ク構造が鱗片状粉末3で補強されるため、塗膜2の脆化
が防止される。下地鋼1と塗膜2との熱膨張差に起因す
る応力も鱗片状粉末3で塗膜2全体に分散され、局部的
な応力集中による塗膜剥離,脆化等も防止される。更に
は、鱗片状粉末3は,下地鋼1の表面と平行な方向に配
位しているので、透過水分に対するバリアとしても働
き、下地鋼1/塗膜2の界面への水分の到達が抑制され
る。鱗片状粉末3としてタルク粉や板状カオリン等の酸
化物を使用した場合、これら無機酸化物粒子はある程度
の−OH基が存在する表面をもっているので、塗膜の焼
成過程で−OH基がメチルシリコーン樹脂塗料中の−O
H基と脱水縮合反応を起こし、樹脂と鱗片状粉末3が強
固に結合する。これによっても、塗膜2の脆化防止が図
られると推察される。
【0011】また、下地鋼1から剥し取った塗膜2を大
気中で昇温速度10℃/分で500℃まで加熱したとき
の発生ガスをガスクロマト質量分析装置で測定したとこ
ろ、図2に示すように水蒸気及び炭酸ガスを主成分とす
るガス組成であった。この結果は、下地鋼1表面に形成
された塗膜2が有機成分としてメチル基(−CH3)の
みを含むことを意味し、加熱調理器具,空調機器,暖房
機器,自動車排気系部材等に使用される耐熱プレコート
鋼板としての要求特性を十分に満足している。
【0012】
【実施の形態】本発明に従った塗料組成物は、メチルシ
リコーン樹脂に鱗片状粉末を配合することにより調製さ
れる。鱗片状粉末としては、アルミフレーク,ステンレ
ス鋼フレーク,ガラスフレーク,アルミナフレーク,マ
イカ粉等、500℃の耐熱性をもつものが好ましく、各
種フレークを単独で或いは2種以上組み合わせて使用で
きる。電子オーブンレンジ等の赤外線放射特性が要求さ
れる用途や塗料組成物に対する化学的安定性を考慮する
と、難水溶性酸化物のフレークが好ましい。
【0013】鱗片状粉末は、前掲の作用・効果を発現さ
せる上から平均粒度を0.5〜50μmで、樹脂固形分
に対する配合量を5〜100質量部に設定することが好
ましい。5質量部未満の配合量では鱗片状粉末の添加効
果が不十分であり、100質量部を超える配合量では加
工密着性が低下する傾向がみられる。鱗片状粉末は、各
種の焼成顔料,防錆顔料,金属粉等と併用添加できる
が、併用添加する場合には合計配合量を200質量部以
下に調整することが好ましい。鱗片状粉末の添加効果
は、配合量の他に鱗片状粉末の形状によっても異なり、
0.5μm以上の平均粒径で顕著になる。しかし、50
μmを超える平均粒径では、加工密着性が低下する傾向
にある。鱗片状粉末の平均粒径は、より好ましくは1〜
30μmの範囲にある。シロキサン結合のネットワーク
構造を補強する上では、厚みが平均粒径の1/5以下の
鱗片状粉末を塗膜に分散させ、下地表面と平行な方向に
関する鱗片状粉末の配向性を高めることが好ましい。厚
みが平均粒径の1/5を超える鱗片状粉末では、下地表
面に交叉する方向に配位する鱗片状粉末の分散状態が避
けられず、また鱗片状粉末単位重量当りのシリコーン樹
脂との接触面積が小さくなることから鱗片状粉末の添加
効果が十分に発現しない。
【0014】鱗片状粉末が配合されるメチルシリコーン
樹脂は、好ましくは一般式(CH3)aSiO(4-a-b)/2(O
H)bをもつ化合物である。指数a,bは、ブロッキング
を起こすことなく塗膜に必要硬度を付与し、長時間焼付
けを必要とせずにコイルでの連続塗装を可能にするた
め、それぞれa=0.5〜1.5,b=0.5〜1.05の
範囲に調整することが好ましい。a<0.5では塗膜の
加工密着性が低下し、a>1.5では耐熱性が劣る。b
<0.5では、塗装原板に配向した水酸基との脱水縮合
によって結合する起点が少なくなるため加工密着性が低
下し、塗膜の硬化性も劣る。逆にb>1.05では、焼
成時に三次元架橋が過度に進行して塗膜の加工密着性が
低下する。
【0015】塗料組成物には、意匠性,耐食性を改善
し、触媒機能等の各種機能を付与するために着色顔料,
体質顔料,メタリック顔料,触媒,防錆顔料,金属粉
等、各種添加剤が必要に応じて配合される。着色顔料に
は、Mn,Fe,Cr,Cu,Ti等の酸化物や複合酸
化物,グラファイト,カーボンブラック等がある。防錆
顔料には、従来のクロム系の他に、環境を考慮したモリ
ブデン酸カルシウム,リンモリブデン酸カルシウム,リ
ンモリブデン酸アルミニウム等の非クロム系も使用され
る。触媒にはTiO2を始めとする光触媒、金属粉には
Ni,Co,Cu等がある。
【0016】塗装原板には、耐熱性を備えたステンレス
鋼,Alめっき鋼板,Al系めっき鋼板等から用途や加
工度に応じて適切な鋼種が選択される。450℃以上の
加熱に長時間曝される製品をAl系めっき鋼板から製造
する場合、Alめっき層と鋼素地との界面でAl−Fe
の相互拡散によって合金層がめっき層表面まで成長し、
塗膜剥離の原因となることがある。このような高温用途
では、鋼中にNを固溶させることによってAl−Feの
相互拡散を抑え、合金化開始温度を550℃まで高めた
溶融Alめっき鋼板の使用が好ましい。
【0017】塗装原板は、塗料組成物の塗布に先立って
塗装前処理が適宜施される。たとえば、ステンレス鋼を
塗装原板に使用する場合、脱脂→酸洗,更に必要に応じ
て塗布型クロメート処理が施される。Al系めっき鋼板
を使用する場合、脱脂後に反応型,塗布型,或いはそれ
らを順次組み合わせたクロメート処理が施される。或い
は、チタン酸化物を主成分とするクロムフリーの無機質
化成処理皮膜等を塗装前処理として設けることもでき
る。適宜塗装前処理が施された塗装原板に、鱗片状粉末
を分散させた塗料組成物を塗布し、加熱・乾燥によって
塗膜を形成する。塗料組成物の塗布にはスプレー法,ロ
ールコート法,バーコート法等を採用できる。加熱・乾
燥は、塗膜の硬度を保証し加工密着性を確保するために
好ましくは150〜250℃の範囲で実施される。樹脂
塗膜の膜厚は、耐食性,加工密着性を勘案して好ましく
は2〜15μm(好ましくは、10μm以下)の範囲に
調整される。2μm以上の膜厚で耐食性の改善効果がみ
られるが、15μmを超える厚膜では塗膜の加工密着性
が低下する。
【0018】
【実施例1】板厚0.4mmのSUS430ステンレス
鋼2B仕上げ材及び溶融Alめっき鋼板を塗装原板に使
用した。ステンレス鋼2B仕上げ材では、脱脂・酸洗後
にクロム換算付着量20〜30mg/m2の塗布型クロ
メート処理を施した。溶融Alめっき鋼板では、アルカ
リ脱脂後にクロム換算付着量20〜30mg/m2の塗
布型クロメート処理を施した。塗料組成物は、樹脂の合
計重量100質量部に対して黒色顔料(MnCuCrO
x焼成顔料)を100質量部,各種鱗片状粉末を20質
量部の割合で一般式 (CH3)0.95SiO1.05(OH)0.95
のメチルシリコーン樹脂に配合することにより調製し
た。
【0019】塗料組成物をバーコート法で塗装原板に塗
布し、到達最高板温が220℃となるように加熱焼成す
ることにより乾燥膜厚6μmの塗膜を形成した。得られ
た塗装鋼板から切り出された試験片を加工試験、腐食試
験に供した。加工試験では、試験片を180度折曲げ加
工(3〜6t)し、加工部に感圧接着テープを貼り付け
た後で引き剥がすテープ剥離試験によって塗膜の剥離状
況を調査した。剥離が検出されない塗膜を◎,僅かに剥
離が検出された塗膜を○,下地鋼から剥離した塗膜を×
として加工密着性を評価した。
【0020】腐食試験では、未加熱の試験片の他に30
0℃×10時間,350℃×10時間,400℃×1時
間,500℃×100時間の加熱を施した試験片を用意
した。JIS Z2371に準拠した塩水噴霧を100
時間継続した後、テープ剥離試験で各試験片の塗膜密着
性(二次密着性)を調査した。剥離が検出されなかった
塗膜を◎,点状の剥離が一部に生じた塗膜を○,点状の
剥離が著しく生じた塗膜を△,全面剥離した塗膜を×と
して二次密着性を評価した。
【0021】表1の調査結果にみられるように、本発明
で規定した条件を満足する鱗片状粉末を分散させた塗膜
では、耐熱性,加工密着性,耐食性の何れにも優れてい
た。何れの加熱条件下においても、良好な耐食性が維持
されており、異臭ガスの発生もなかった。これに対し、
鱗片状粉末無添加の塗膜を形成した塗装鋼板(試験番号
18,19)では、300〜400℃の温度域に加熱さ
れたときの耐食性に劣っていた。また、粒片状粉末を分
散させた塗膜を形成した塗装鋼板(試験番号20)で
は、加工密着性は良好なものの300〜400℃に加熱
されたときの耐食性に劣っていた。
【0022】
【0023】更に、No.4,10,20の各塗装鋼板を
500℃に加熱し、2.5〜25μmの波長領域におけ
る黒体の分光放射強度積分値に対する各塗装鋼板の分光
放射強度積分値の比率として赤外線放射率を求めた。ま
た、塗装鋼板の作製に使用した塗料を25℃で1ヶ月間
放置した後で塗料の保存状態を調査した。表2の調査結
果にみられるように、鱗片状粉末として難水溶性酸化物
のフレークを使用した場合、放射率が高いことから赤外
線放射特性が要求される用途に適し、塗料保管安定性の
面でも優れていることが判る。
【0024】
【0025】
【実施例2】板厚0.4mmの溶融Alめっき鋼板を塗
装原板に使用した。塗装原板をアルカリ脱脂した後、ク
ロム換算付着量20〜30mg/m2の塗布型クロメー
ト処理を施した。塗料組成物は、樹脂の合計重量100
質量部に対して黒色顔料(MnCuCrOx焼成顔料)
を100質量部,モリブデン酸亜鉛系防錆顔料を15質
量部配合し、更に平均粒径5μm,厚み0.5μmのア
ルミナフレーク及び平均粒径15μm,厚み0.2μm
のマイカフレークを実施例1と同じメチルシリコーン樹
脂に配合することにより調製した。バーコート法で塗料
組成物を塗装原板に塗布し、乾燥膜厚及び加熱焼成時の
到達最高板温を種々変更した塗装鋼板を製造した。得ら
れた塗装鋼板を実施例1と同じ条件下で試験し、加工密
着性,耐食性を調査した。
【0026】表3の調査結果にみられるように、本発明
で規定した量で鱗片状粉末を分散させた塗膜は、耐熱
性,加工密着性,耐食性の何れにも優れていた。これに
対し、鱗片状粉末が不足する試験番号36,38の塗装
鋼板は、加工密着性は良好であるものの、300〜40
0℃に加熱されたときの二次密着性に劣っていた。逆に
過剰量の鱗片状粉末を分散させた試験番号37,39の
塗装鋼板は、何れも加工密着性に劣っており、二次密着
性に劣るものも散見された。
【0027】
【0028】
【実施例3】板厚0.4mmの溶融Alめっき鋼板を塗
装原板に使用した。塗装原板をアルカリ脱脂した後、ク
ロムフリー化成処理でチタン換算付着量40〜60mg
/m 2のチタン酸化物系皮膜を形成した。塗料組成物の
ベース樹脂としては、(CH3)2SiCl2及び(CH3)S
iCl3を出発原料とし、それぞれを種々の比率で混合
し、常法に従って重合させることにより複数種類のメチ
ルシリコーン樹脂を用意した。得られたメチルシリコー
ン樹脂に平均粒径18μm,厚み0.4μmのマイカ粉
又は酸化チタン被覆マイカ粉及び各種添加物を種々の割
合で配合することにより、表4の塗料組成物を調製し
た。
【0029】
【0030】塗料組成物をバーコート法で塗装原板に塗
布し、到達最高板温が220℃となる条件下で加熱・焼
成することにより、乾燥膜厚5μmの塗膜を形成した。
得られた塗装鋼板を実施例1と同じ条件下で試験し、加
工密着性,耐食性を調査した。表5の調査結果にみられ
るように、本発明に従った組成のメチルシリコーン樹脂
に鱗片状粉末を配合した塗料から作成された塗膜は、何
れも耐熱性,加工密着性,二次密着性が良好であった。
特に、指数aが0.5〜1.5,指数bが0.5〜1.05
の範囲及び添加物の合計配合量が200質量部以下のと
きに優れた特性の塗膜が形成された。
【0031】
【0032】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の塗料組
成物はメチルシリコーン樹脂を主成分とする樹脂塗膜に
鱗片状粉末を分散させており、該塗料組成物から作製さ
れる塗膜はシロキサン結合のネットワーク構造が強化さ
れ、加工密着性,耐食性に優れている。しかも、この塗
膜は、有機基としてメチル基を含む塗料から作製される
ため、製品の使用中に高温加熱された状態でもベンゼン
ガスや異臭の発生がなく、優れた耐熱性を呈する。この
ようなことから、加熱調理器具,空調機器,暖房機器,
自動車排気系部材等として好適な耐熱プレコート鋼板が
提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 鱗片状粉末が分散した塗膜の模式図
【図2】 加熱によって塗膜から発生するガスの種類,
量的変化を示すグラフ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 和泉 圭二 大阪府堺市石津西町5番地 日新製鋼株式 会社技術研究所内 (72)発明者 須佐 光夫 埼玉県さいたま市深作180 Fターム(参考) 4F100 AA07A AA07H AA19A AA19H AB03B AC03A AC03H AC05A AC05H AC10A AC10H AK52A BA02 BA03 BA06 BA13 CC00A DE02A GB32 GB48 GB71 JA20A JA20H JJ03 YY00A YY00H 4J038 DL031 HA216 HA366 HA506 HA536 HA54 KA08 KA20 NA14 PB06 PB07 PC02

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 メチルシリコーン樹脂を主成分とし、樹
    脂の合計重量100質量部に対し5〜100質量部の割
    合で鱗片状粉末を配合してなる塗料組成物。
  2. 【請求項2】 鱗片状粉末の平均粒径が0.5〜50μ
    m,厚みが平均粒径の1/5以下である請求項1記載の
    塗料組成物。
  3. 【請求項3】 アルミナフレーク,マイカ粉,タルク
    粉,板状カオリン,硫酸バリウムフレークから選ばれた
    1種又は2種以上の難水溶性酸化物を鱗片状粉末に使用
    する請求項1又は2記載の塗料組成物。
  4. 【請求項4】 メチルシリコーン樹脂が一般式(CH3)a
    SiO(4-a-b)/2(OH)b(ただし、a=0.5〜1.5,
    b=0.5〜1.05)をもつ請求項1記載の塗料組成
    物。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4何れかに記載の塗料組成物
    から作製された塗膜が鋼板の片面又は両面に形成されて
    いることを特徴とする耐熱プレコート鋼板。
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