JP5647587B2 - プレコート金属板 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車の排気系部材、家電製品の耐熱構造部材などの高温環境下で使用される金属板および金属合金板に係り、塗装により金属板の表面に耐熱皮膜を設けたプレコート金属板に関する。
自動車の排気系部材や家電製品の耐熱構造部材などの高温で使用される金属板の表面処理は、従来、金属板を製品形状に成形してから耐熱性の高い無機皮膜やシリコーン樹脂皮膜を形成するポストコート方式により行われていた。しかし、表面処理としては大量生産性や製造工程の簡略化、コスト低減の観点から、成形前の金属板の表面にあらかじめ樹脂皮膜を形成するプレコート方式により行う方が好ましい。プレコート方式により製造された耐熱性に優れるプレコート材として、次のようなものが挙げられる。
特許文献1には、エーテル・エステル型ウレタン樹脂およびエポキシ樹脂に、ポリオレフィンワックスとシリカを含有してなる有機物塗膜が形成された、耐熱性に優れた無塗油型有機被覆金属板が記載されている。
特許文献2には、アルカリケイ酸系ガラス水溶液に粒子状充填材、四フッ化系フッ素樹脂を配合してなる複合皮膜が形成された塗装金属板が提案されている。
特許文献3には、アルキルシリコーン樹脂にアルミナフレーク、マイカ粉、タルク粉、板状カオリンなどの鱗片状無機粉末を分散させてなるクリア皮膜が形成された耐熱クリアプレコート金属板が提案されている。
特開平8−192102号公報 特開2000−319575号公報 特許第4046322号公報
自動車の排気系部材や耐熱構造部材などは、使用中の温度が400℃以上の高温となる場合がある。このような高温で特許文献1〜3を使用すると、次のような問題がある。
特許文献1に記載のウレタン樹脂やエポキシ樹脂の耐熱温度は高くても200℃程度であり、それ以上の高温環境では樹脂が分解し始め、耐熱性および耐熱光沢性に劣るという問題がある。
また、特許文献2に記載の複合皮膜は、耐熱性は良いが、加工による皮膜割れや剥離等が生じやすいため、複雑な加工には対応できないおそれがある。しかも、高温で長時間使用を続けるとフッ素樹脂が分解し、毒性の強いフッ素ガスを発生するおそれがある。
特許文献3に記載のシリコーン樹脂を主成分とする皮膜は、耐熱性、安全性では問題ないが、皮膜の加工性が悪く、折曲げや絞りなどの複雑な加工をすると皮膜割れや皮膜剥離を生じる。そのため、ポストコート方式により製造される板材や部材では広く利用されているが、プレコート板としては平板での使用あるいは加工の易しい部材など用途が極めて限定される。
本発明は前記状況を鑑みてなされたものであり、400℃以上の高温に耐え(耐熱性)、耐熱光沢性、安全性および加工性に優れたプレコート金属板を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、水性樹脂と無機バインダーの比率、ケイ酸塩化合物の含有量、粒子状有機充填材の粒径と含有量および膜厚を特定の範囲にすることにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明に係るプレコート金属板は、ステンレス鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板、銅板および銅合金板の中から選択されるいずれか1つの金属板の表面に耐熱皮膜が形成されたプレコート金属板であって、前記耐熱皮膜は、水性樹脂、無機バインダーと、ウレタン微粒子、アクリル系微粒子、シリコーン微粒子、ポリスチレン微粒子から選択される1種類または2種類以上の粒子状有機充填材と、を含み、前記水性樹脂/前記無機バインダーの質量比率が0.8以上7未満であり、前記無機バインダーはケイ酸塩化合物を20質量%以上含み、前記粒子状有機充填材の粒径が0.3μm以上30μm以下であり、前記粒子状有機充填材の含有量が1質量%以上30質量%未満であり、膜厚が0.2μm以上20μm以下であることを特徴としている。
このように、本発明に係るプレコート金属板は、耐熱皮膜が水性樹脂、無機バインダーと、ウレタン微粒子、アクリル系微粒子、シリコーン微粒子、ポリスチレン微粒子から選択される1種類または2種類以上の粒子状有機充填材と、を含んでいるので耐熱性、耐熱光沢性、加工性、安全性に優れる。また、水性樹脂/無機バインダーの質量比率を0.8以上7未満とし、無機バインダーはケイ酸塩化合物を20質量%以上含むとしているので耐熱性、加工性に優れる。粒子状有機充填材の粒径を0.3μm以上30μm以下、含有量を1質量%以上30質量%未満としているので外観、耐熱光沢性、加工性に優れる。そして、膜厚を0.2μm以上20μm以下としているので良好な外観を得ることができる。
本発明に係るプレコート金属板は、前記無機バインダーが、無機粒子コロイドを50質量%以上80質量%以下含有しているのが好ましい。
無機粒子コロイドを50質量%以上80質量%以下含有することによって、塗装性と加工性に優れたものにすることができる。
本発明に係るプレコート金属板の前記耐熱皮膜は、着色顔料を含んでいてもよい。
着色顔料を含むことによって、意匠性に優れたものとすることができる。
本発明に係るプレコート金属板は、水性樹脂と無機バインダーの比率、ケイ酸塩化合物の含有量、粒子状有機充填材の粒径と含有量および膜厚を特定の範囲とした耐熱皮膜が形成されているので、400℃以上の高温に耐え(耐熱性)、耐熱光沢性、安全性および加工性に優れる。
本発明に係るプレコート金属板の第1実施形態を示す断面模式図である。 本発明に係るプレコート金属板の第2実施形態を示す断面模式図である。 本発明に係るプレコート金属板の第3実施形態を示す断面模式図である。 本発明に係るプレコート金属板の第4実施形態を示す断面模式図である。
以下、適宜図面を参照して、本発明に係るプレコート金属板を実施するための形態(実施形態)について説明する。
[第1実施形態]
まず、図1を参照して、本発明に係るプレコート金属板の第1実施形態について説明する。
図1に示すように、第1実施形態に係るプレコート金属板1Aは、金属板2の表面に耐熱皮膜3が形成されたプレコート金属板である。
金属板2は、例えば、炭素鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板、マグネシウム板、マグネシウム合金板、銅板、銅合金板が使用される。強度の必要な場合には炭素鋼板、ステンレス鋼板が推奨される。強度と軽さが必要な用途にはアルミニウム板、アルミニウム合金板、マグネシウム板、マグネシウム合金板が推奨される。高い導電性が必要な用途には銅板、銅合金板が推奨される。熱処理や板厚については特に制限はなく、目的に応じて選択することができる。
耐熱皮膜3を設けることによって金属板2に耐熱性と加工性を付与し、これらに優れたプレコート金属板1Aとすることができる。
図1に示すように、プレコート金属板1Aは、金属板2の片面のみを耐熱皮膜3で被覆するものに限定されず、金属板2の両面を被覆するものであってもよい(図示せず)。目的に応じて被覆形態を自在に選択することができる。
耐熱皮膜3は、水性樹脂、無機バインダー(いずれも図1に図示せず)および粒子状有機充填材4を含んでいる。かかる耐熱皮膜3は、これらを混合した塗料を金属板2の表面に塗布し、塗料を塗布した金属板2を焼付け処理して塗料を硬化することにより形成することができる。
塗料の金属板2への塗工方法としては、刷毛塗り、ロールコーター、カーテンフローコーター、ローラーカーテンコーター、静電塗布機、ブレードコーター、ダイコーター等いずれの方法で行ってもよいが、塗布量が均一になるとともに作業が簡便なロールコーターにより塗工するのが好ましい。
塗工は、金属板2の表面に塗布した塗料を焼付け処理によって皮膜とした場合に、膜厚が0.2μm以上20μm以下の範囲で形成されるように塗料の塗布量を調整する必要がある。膜厚をこの範囲にすることにより本発明の所望する諸効果を奏することができるだけでなく、コイル状の金属板2にロールコーターを使用して連続的に皮膜を形成できるため、生産性に優れ、コスト的にも望ましい。なお、塗布量の調整は、例えば、ロールコーターを用いる場合、金属板2の搬送速度、ロールコーターの回転方向と回転速度等を適切に設定することで行うことができる。
膜厚が0.2μm未満となると、耐熱皮膜3によって奏される効果を十分に得ることができないおそれがある。特に、未塗装部が生じることがあり、外観が劣るおそれがある。また、ロールコーターを用いる場合、ピックアップロールとアプリケーターロールの間の圧力を高くする必要があり、ロールの摩耗が激しくなるため好ましくない。
一方、膜厚が20μmを超えても、さらなる効果の向上は得られ難い。また、ロールコーターのピックアップロールによる塗料の持ち上げが不十分となり膜厚のバラツキが著しく大きくなり、外観が劣ることになるため好ましくない。なお、膜厚は、好ましくは3μm以上18μm以下であり、より好ましくは3μm以上10μm以下である。
耐熱皮膜3に含まれる水性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、PVA(ポリビニルアルコール)、PEO(ポリエチレンオキサイド)、CMC(カルボキシメチルセルロース)等があり、これらの中から選択される1種類を用いることもできるし、2種類以上を混合して用いることもできる。
耐熱皮膜3に含まれる無機バインダーとしては、例えば、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムなどのケイ酸塩化合物、コロイダルシリカ、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル等があり、これらの中から選択される1種類を用いることもできるし、2種類以上を混合して用いることもできる。
第1実施形態における無機バインダーは、前記されるもののうちケイ酸塩化合物を含み、その含有量は5質量%以上である。つまり、無機バインダーは当該無機バインダーにおける5質量%以上をケイ酸塩化合物とする。無機バインダー中のケイ酸塩化合物の含有量をこのように規制することで、耐熱性を良好に保つことができる。無機バインダー中のケイ酸塩化合物の含有量が5質量%未満になると、無機バインダーの効果が十分に得られず、耐熱性が不良となる。無機バインダー中のケイ酸塩化合物の含有量は、6質量%以上、20質量%以上、50質量%以上含有させることができるが、100質量%含有させることもできる。
耐熱皮膜3に含まれる粒子状有機充填材4としては、例えば、ウレタン微粒子、アクリル系微粒子、シリコーン微粒子、ポリスチレン微粒子等があり、これらの中から選択される1種類を用いることもできるし、2種類以上を混合して用いることもできる。
粒子状有機充填材4の粒径は0.3μm以上30μm以下とする。粒径をこの範囲にすることで、耐熱光沢性を優れたものとすることができる。粒径が0.3μm未満では粒径が小さすぎて色調に寄与せず、耐熱光沢性に劣る。粒径が30μmを超えると、色調への寄与が大きすぎて変色を軽減する効果がなくなり、耐熱光沢性に劣る。粒子状有機充填材4の粒径は0.3μm以上15μm以下とするのが好ましく、10μm以下とするのがさらに好ましい。
粒子状有機充填材4の含有量は1質量%以上30質量%未満とする。含有量をこの範囲にすることで、優れた耐熱光沢性を実現できる。含有量が1質量%未満では、量が少なすぎて熱変色改善効果が認められず、耐熱光沢性に劣る。含有量が30質量%以上になると、塗料が増粘して塗装が困難になり、結果的に耐熱光沢性に劣ることになる。粒子状有機充填材4の含有量は4質量%以上29質量%以下とするのが好ましく、5質量%以上27質量%以下とするのがより好ましい。
なお、粒子状有機充填材4の粒径には通常分布がある。本発明における粒子状有機充填材4の粒径は、粒子状有機充填材4を水系溶媒等に分散させたコロイドの状態で、レーザー回折式粒度分布測定器等を用いて測定した積算体積50%粒子径をいう。
耐熱皮膜3は、水性樹脂/無機バインダーの質量比率を0.8以上7未満とする。水性樹脂/無機バインダーの質量比率をこの範囲にすることで、耐熱性、加工性を良好に保つことができる。水性樹脂/無機バインダーの質量比率が0.8未満であると、造膜することができない。一方、水性樹脂/無機バインダーの質量比率が7以上になると塗料が増粘し、塗装することができない。水性樹脂/無機バインダーの質量比率は、3.7以上とするのが好ましく、4.3以上とするのがより好ましい。また、水性樹脂/無機バインダーの質量比率は、6.9以下とするのが好ましい。
[第2実施形態]
次に、図2を参照して、本発明に係るプレコート金属板の第2実施形態について説明する。
図2に示すように、第2実施形態に係るプレコート金属板1Bは、無機バインダーが、無機粒子コロイド5を50質量%以上95質量%以下含有する耐熱皮膜3が形成されたプレコート金属板である。
なお、第2実施形態に係るプレコート金属板1Bは、耐熱皮膜3に含まれる無機バインダーが無機粒子コロイド5を含む点で第1実施形態と相違する。そのため、第1実施形態と第2実施形態とにおいて共通する構成については同一の符号を付して表すとともに重複する説明は省略し、以下ではこれらの間で相違する構成について説明する。
無機バインダーが無機粒子コロイド5を50質量%以上95質量%以下含有することにより加工性が向上する。無機バインダー中の無機粒子コロイド5の含有量が50質量%未満であると、無機粒子コロイド5を添加することによる加工性向上効果が得られない。一方、無機バインダー中の無機粒子コロイド5の含有量が95質量%を超えると、連続した皮膜にならず、耐熱皮膜としての性能が得られない。また、無機バインダー中のケイ酸塩化合物の含有量が5質量%未満となってしまうため、耐熱性が不良となる。
耐熱皮膜3は、無機粒子コロイド5を含むことによって、加工性をさらに優れたものとすることができる。耐熱皮膜3に含まれる無機粒子コロイド5は、無機粒子を水系溶媒に分散させた無機粒子コロイドであればどのようなものでも使用することができる。かかる無機粒子コロイド5としては、例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル等を挙げることができ、これらの中から選択される1種類を用いることもできるし、2種類以上を混合して用いることもできる。
無機粒子コロイド5の粒径は、例えば、1nm以上100nm以下とすることができる。無機粒子コロイド5の粒径が1nm未満または100nmを超えると、耐熱皮膜3が外観不良となるおそれがある。特に、無機粒子コロイド5の粒径が100nmを超えると耐熱性が不十分となるおそれがある。無機粒子コロイド5の粒径は、1nm以上50nm以下とするのが好ましい。無機粒子コロイド5の粒径は、好ましくは20nm以下、より好ましくは6nm以下である。
なお、無機粒子コロイド5の粒径には通常分布がある。本発明における無機粒子コロイド5の粒径は、レーザー回折式粒度分布測定器等で測定した積算体積50%粒径をいう。
[第3実施形態]
次に、図3を参照して、本発明に係るプレコート金属板の第3実施形態について説明する。
図3に示すように、第3実施形態に係るプレコート金属板1Cは、金属板2の表面に着色顔料6をさらに含む耐熱皮膜3が形成されたプレコート金属板である。
なお、第3実施形態に係るプレコート金属板1Cは、着色顔料6を含む点で第1実施形態および第2実施形態と相違する。そのため、第1実施形態および第2実施形態と、第3実施形態とにおいて共通する構成については同一の符号を付して表すとともに重複する説明は省略し、以下ではこれらの間で相違する構成について説明する。
耐熱皮膜3に着色顔料6を含ませることによって、当該耐熱皮膜3に所望の色を付けることができる。着色顔料6は、400℃以上の高温でも分解や変色しない耐熱性の高い無機顔料が好ましく、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、チタンブラック、銅・クロムブラック、コバルトブラック、マンガン・鉄ブラック、銅・マンガン・鉄ブラック、マンガン・ビスマスブラック等があり、これらの中から選択される1種類を用いることもできるし、2種類以上を混合して用いることもできる。
耐熱皮膜3中における着色顔料6の含有量は55質量%以下であるのが好ましい。着色顔料6の含有量が55質量%を超えると、プレコート金属板1Cの加工性が低下するおそれがある。
以上、図1〜3を参照して、第1実施形態から第3実施形態に係るプレコート金属板について説明した。いずれのプレート金属板も、水性樹脂と無機バインダーの質量比率、ケイ酸塩化合物の含有量、粒子状有機充填材4の粒径と含有量、および膜厚を特定の範囲とした耐熱皮膜が形成されているので、400℃以上の高温に耐え(耐熱性)、耐熱光沢性と加工性に優れている。また、フッ素樹脂を用いていないため、400℃以上の高温に加熱されても毒性の強いフッ素ガスを発生することもなく、安全性に優れている。
なお、本発明の内容は以上に説明した内容に限定されるものではない。例えば、金属板2と耐熱皮膜3との密着性を向上させるとともに、耐食性を向上させるために、金属板2の表面に図示しない下地処理層を形成することもできる。
下地処理層としては、従来公知のCr,Zr,Tiの中から選択される1種類以上を含有する皮膜が適用できる。例えば、リン酸クロメート皮膜、クロム酸クロメート皮膜、リン酸ジルコニウム皮膜、酸化ジルコニウム皮膜、リン酸チタン皮膜、塗布型クロメート皮膜、塗布型ジルコニウム皮膜などを適宜使用することができる。また、必要に応じて、これらの皮膜に有機成分を含有させてもよい。近年の環境への配慮の観点から、六価クロムを含まないリン酸クロメート皮膜や、リン酸ジルコニウム皮膜、酸化ジルコニウム皮膜、リン酸チタン皮膜、塗布型ジルコニウム皮膜を使用することが好ましい。下地処理層の厚さは、目安として、金属板2へのCr,Zr,Tiの付着量(Cr,Zr,Ti換算値)で10〜50mg/m2程度が好ましい。付着量が10mg/m2未満では、金属板2の全面を均一に被覆することができず効果が十分に得られない。一方、付着量が50mg/m2を超えると、下地処理層自体に割れが生じやすくなる。Cr,Zr,Ti換算値は、例えば、蛍光X線法により比較的簡便かつ定量的に測定することができる。そのため、生産性を阻害することなくプレコート金属板の品質管理を行うことができる。
また、耐熱皮膜3を形成する塗料を金属板2に塗布する前に、金属板2の表面を脱脂してもよい。金属板2の表面の脱脂は、例えば、金属板2の表面に酸あるいはアルカリ水溶液をスプレーした後に水洗することで行うことができる。
さらに、図3に示すプレコート金属板1Bは、無機粒子コロイド5を含む耐熱皮膜3に着色顔料6を添加した様子を図示しているが、図4に示すプレコート金属板1Dのように、無機粒子コロイド5を含まない耐熱皮膜3に着色顔料6を添加させることもできる(第4実施形態)。なお、第4実施形態に係るプレコート金属板1Dにおいて、金属板2、耐熱皮膜3および着色顔料6は前記したものと同じものを適用することができる。
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明に係るプレコート金属板について具体的に説明する。
まず、金属板は板厚0.3mmのステンレス鋼板、アルミニウム板を用いた。ステンレス鋼板は下地処理として、酸洗した後、塗布型クロメート処理を施し、アルミニウム板はアルカリ脱脂した後、リン酸クロメート処理を施して、ともにCr換算で20mg/m2のクロメート皮膜を形成した。
次いで、表1に示す種類の水性樹脂、ケイ酸塩化合物および粒子状有機充填材を、表1に示す質量比率となるように各塗料を調製した。調製した塗料を、ロールコーターを用いて金属板に塗布し、焼付温度200℃で30秒間焼付け処理を行い、表1に示す膜厚を有する耐熱皮膜を形成し、No.1〜38に係るプレコート金属板を作製した。なお、No.12〜24に係るプレコート金属板の塗料には、顔料として、マンガン系焼成顔料を52質量%添加した。
表1のNo.34〜38に示すかっこ“( )”内の数字は、皮膜中の各成分の質量部を示す。
また、塗料を塗布した金属板の加熱方式は、塗料を塗布した金属板がオーブンの入口から出口へ移動する連続焼付け方式とし、金属板がオーブン内を通過する時間を加熱時間とし、これを30秒に調整した。また、金属板に貼り付けたヒートラベルで確認される金属板の到達温度を焼付温度とした。
作製したNo.1〜38に係るプレコート金属板の外観、耐熱性、耐熱光沢性、加工性を次のように評価した。
<外観の評価>
作製したプレコート金属板の表面を目視で観察し、耐熱皮膜に割れ、剥離、フクレ、未塗装部、色むら、凝集物が認められたものを不良(×)、皮膜にいずれの異常もないものを良好(○)と評価した。
<耐熱性の評価>
耐熱性の評価は、作製したプレコート金属板を大気雰囲気中で400℃、24時間加熱を行い、加熱前と比較して耐熱皮膜が消失したものを不良(×)、耐熱皮膜は残存するが変色したものを良好(○)、耐熱皮膜が残存し変色しないものを優良(◎)と評価した。
<耐熱光沢性の評価>
耐熱光沢性の評価は、作製したプレコート金属板を大気雰囲気中で300℃、1時間加熱を行い、加熱前と加熱後の板の明度Lを色差計で測定し、加熱前後の明度L*の差ΔLが、ΔL<−4またはΔL>4のものを不良(×)、−4≦ΔL≦4のものを良好(○)、−3≦ΔL≦3のものを優良(◎)と評価した。
<加工性の評価>
加工性の評価は、JIS K5400に規定される5T180度曲げ加工、3T180度曲げ加工および1T180度曲げ加工を行い、5T180度曲げ加工部の耐熱皮膜がセロハンテープで剥離したものを不良(×)、5T180度曲げ加工部の耐熱皮膜がセロハンテープで剥離しないものを良好(○)、3T180度曲げ加工部の耐熱皮膜がセロハンテープで剥離しないものを優良(◎)、1T180度曲げ加工部の皮膜がセロハンテープで剥離しないものを特に優良(☆)とした。
作製したプレコート金属板の外観、耐熱性、耐熱光沢性、加工性の評価結果を表1に示す。なお、表1中の下線は本発明の要件を満たさないことを示す。
Figure 0005647587
No.1〜24に係るプレコート金属板は、本発明の要件を満たしていたので外観、耐熱性、耐熱光沢性、加工性がいずれも良好、優良または特に優良であった。また、耐熱性を評価する際にフッ素ガスなどの毒性の強いガスを発生することもなく、安全性に優れていた。特に、No.3、13〜15に係るプレコート金属板は、無機バインダー中に無機粒子コロイドを所定量以上含有するため、加工性が特に優良であった。
これに対し、No.25〜38に係るプレコート金属板は、本発明の要件のいずれかを満たしていないので、外観、耐熱性、耐熱光沢性、加工性のうちの少なくとも1つが不良となった。
具体的には、No.25に係るプレコート金属板は、水性樹脂/無機バインダーの質量比率が0.8未満であるため造膜できなかった。
No.26に係るプレコート金属板は、水性樹脂/無機バインダーの質量比率が7以上であるためゲル化して塗装ができなかった。
No.27に係るプレコート金属板は、無機バインダーのケイ酸塩化合物の含有量が5質量%未満であるため、耐熱性が不良となった。
No.28,29に係るプレコート金属板は、粒子状有機充填材の粒径が本発明の要件を満たさないため耐熱光沢性が不良となった。
No.30,31に係るプレコート金属板は、粒子状有機充填材の含有量が本発明の要件を満たさないため耐熱光沢性が不良となった。
No.32,33に係るプレコート金属板は、膜厚が本発明の要件を満たさないため外観不良となった。
No.34〜38に係るプレコート金属板は、本発明とは異なる組成の皮膜の例である。
No.34に係るプレコート金属板は、ウレタン樹脂を用いたため400℃加熱で有機成分が分解し、耐熱性および耐熱光沢性が不良となった。
No.35に係るプレコート金属板は、シリカを含有したエポキシ樹脂を用いたが、400℃加熱ではシリカは残留するがエポキシ樹脂が分解するため耐熱性および耐熱光沢性が不良となった。
No.36に係るプレコート金属板は、粒子状充填材であるガラス粉末粒子と四フッ化系フッ素樹脂を含有した水ガラスを用いているので耐熱性は良好であったが、耐熱光沢性と加工性が不良となった。さらに皮膜にフッ素樹脂を含むため400℃で加熱すると毒性の強いフッ素ガスが発生した。そのため、安全性に劣っていた。
No.37,38に係るプレコート金属板は、シリコーン樹脂を用いたため耐熱性は良好であるが、耐熱光沢性と加工性が不良であった。
以上、本発明に係るプレコート金属板について、発明を実施するための形態および実施例により詳細に説明したが、本発明の趣旨はこれらの説明に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。
1A、1B、1C、1D プレコート金属板
2 金属板
3 耐熱皮膜
4 粒子状有機充填材
5 無機粒子コロイド
6 着色顔料

Claims (3)

  1. ステンレス鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板、銅板および銅合金板の中から選択されるいずれか1つの金属板の表面に耐熱皮膜が形成されたプレコート金属板であって、
    前記耐熱皮膜は、
    水性樹脂、無機バインダーと、ウレタン微粒子、アクリル系微粒子、シリコーン微粒子、ポリスチレン微粒子から選択される1種類または2種類以上の粒子状有機充填材と、を含み、
    前記水性樹脂/前記無機バインダーの質量比率が0.8以上7未満であり、
    前記無機バインダーはケイ酸塩化合物を20質量%以上含み、
    前記粒子状有機充填材の粒径が0.3μm以上30μm以下であり、
    前記粒子状有機充填材の含有量が1質量%以上30質量%未満であり、
    膜厚が0.2μm以上20μm以下である
    ことを特徴とするプレコート金属板。
  2. 前記無機バインダーが、無機粒子コロイドを50質量%以上80質量%以下含有することを特徴とする請求項1に記載のプレコート金属板。
  3. 前記耐熱皮膜が、着色顔料を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプレコート金属板。
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