JP5661870B2 - プレコートアルミニウム板 - Google Patents
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Description
プレコート方式により製造された、耐熱性に優れるプレコート材として、次のようなものが挙げられる。
しかしながら、特許文献1に記載のウレタン樹脂やエポキシ樹脂の耐熱温度は高くても200℃程度であり、それ以上の高温環境では樹脂が分解し始める。
また、無機顔料の添加によって耐熱性皮膜を着色することができる。無機顔料の添加量を20質量%以上、水性樹脂/ケイ酸塩化合物の重量比率を2.0以上5以下とすることによって、加工性が良好でありながら400℃以上の高温環境に晒されても着色した耐熱性皮膜が変色しないため、加工性および耐熱変色性に優れる。さらに、膜厚を2μm以上20μm以下とすることで、アルミニウム板を十分に被覆することができ、意匠面でも優れる。
まず、図1を参照して本発明の第1実施形態に係るプレコートアルミニウム板について説明する。
図1に示すように、第1実施形態に係るプレコートアルミニウム板1は、アルミニウム板2の表面に耐熱性皮膜3を形成したものである。
本発明で用いられるアルミニウム板2は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるものである。例えば、JISに規定される1000系の工業用純アルミニウム、3000系のAl−Mn系合金、5000系のAl−Mg系合金などが使用可能である。特に、絞り加工やしごきを行う場合にはJIS H4000に規定するA1050、A1100、A3003、A3004が推奨される。また、強度が望まれる用途に使用する場合には、A5052やA5182が推奨される。調質、板厚については特に制限はなく、目的に応じて種々の調質、板厚を選択することができる。
本発明のプレコートアルミニウム板1において、耐熱性皮膜3は耐熱性とともに加工性を付与するために設けられるものである。この耐熱性皮膜3は、生産性やコストを考慮すると、ロールコーターにて連続塗装が可能であり、焼付け炉にて20〜50秒程度の短時間焼付けを行うことができるものが好ましい。
水性樹脂/ケイ酸塩化合物の質量比率は、0.9以上とするのが好ましく、2.8以上とするのがより好ましく、3.7以上とするのがさらに好ましい。また、水性樹脂/ケイ酸塩化合物の質量比率は、6.8以下とするのが好ましい。
水性樹脂とケイ酸塩化合物を合計した含有量は耐熱性皮膜の(固形分として)25質量%以上となるようにするのが好ましい。25質量%以上とすることによって加工性が良好となり、優れた耐熱性を得ることができる。
耐熱性皮膜3の膜厚は、2μm以上とするのが好ましく、7μm以上とするのがより好ましい。
第1実施形態に係るプレコートアルミニウム板1は、図2に示す第1変形例のように、耐熱性皮膜3上にトップコート皮膜4を形成することができる。このようにすれば、高い耐熱性を保ちながら、加工性、潤滑性、耐指紋性、耐ブロッキング性等の機能を付与することができる。
トップコート皮膜4としては、アクリル樹脂、エチレン樹脂、エポキシ樹脂などの水性樹脂を塗布して形成したものが好ましい。また、トップコート皮膜4には、目的に応じた添加剤を含有させることができる。例えば、潤滑性を向上するためにカルナウバワックス、ポリエチレンワックスなどを含有させることができ、耐指紋性を高めるために光学調整微粒子を含有させることができ、耐ブロッキング性を向上するためにブロッキング防止剤を含有させることができる。これらは使用目的に応じて選択することができ、その種類は特に制限されるものではない。トップコート皮膜4は、前記した各効果を確実に奏するため、膜厚を0.2〜5μmとするのが好ましい。
第1実施形態に係るプレコートアルミニウム板1は、図3に示す第2変形例のように、アルミニウム板2と耐熱性皮膜3の間に下地処理皮膜5を形成することができる。このようにすれば、アルミニウム板2に対する耐熱性皮膜3の耐食性および接着性を向上させることができる。
下地処理皮膜5を形成すると、下地処理皮膜5を形成しない場合よりも耐食性と、アルミニウム板2と耐熱性皮膜3の密着性とを向上させることができる。
下地処理皮膜5としては、Cr、ZrまたはTiを含有する従来公知の皮膜を用いることができる。例えば、リン酸クロメート皮膜、クロム酸クロメート皮膜、リン酸ジルコニウム皮膜、酸化ジルコニウム皮膜、リン酸チタン皮膜、塗布型クロメート皮膜、塗布型ジルコニウム皮膜等を適宜形成することができる。また、必要に応じてこれらに有機成分を含有させてもよい。なお、近年の環境への配慮の観点から六価クロムを含まないリン酸クロメート皮膜や、リン酸ジルコニウム皮膜、酸化ジルコニウム皮膜、リン酸チタン皮膜、塗布型ジルコニウム皮膜などを形成するのが望ましい。
第1実施形態に係るプレコートアルミニウム板1は、図4に示す第3変形例のように、アルミニウム板2と耐熱性皮膜3の間に下地処理皮膜5を形成し、耐熱性皮膜3上にトップコート皮膜4を形成することができる。このようにすれば、耐熱性皮膜3によって高い耐熱性を保ちながら、トップコート皮膜4によって加工性、潤滑性、耐指紋性、耐ブロッキング性等の機能を付与することができ、さらに、下地処理皮膜5によってアルミニウム板2に対する耐熱性皮膜3の接着性を向上させることができる。
なお、トップコート皮膜4は、前記第1変形例で説明したものと同様であり、下地処理皮膜5は、前記第2変形例で説明したものと同様であるので詳細な説明は省略する。
次に、図5を参照して本発明の第2実施形態に係るプレコートアルミニウム板について説明する。
図5に示すように、第2実施形態に係るプレコートアルミニウム板1は、アルミニウム板2の表面に、無機顔料6を含む耐熱性皮膜3を形成したものである。耐熱性皮膜3に無機顔料4を含有させることで、耐熱性皮膜3を着色することができる。
なお、アルミニウム板2、耐食性皮膜3のケイ酸塩化合物および水性樹脂については、第1実施形態と同様であるので詳細な説明を省略する。
無機顔料6は、400℃の高温雰囲気でも分解および変色しない耐熱性を有する顔料を用いるのが好ましく、このような無機顔料4としては酸化チタン、カーボンブラック、黒色焼成顔料(コバルトブラック、マンガン・ビスマスブラック、銅・クロムブラック、銅・マンガン・鉄ブラック等)などの着色顔料や、炭酸カルシウム、バライト粉、タルク、カオリンなどの体質顔料を用いることができる。無機顔料6は、これらの中から選択されるいずれか一種を用いることができるほか、二種類以上を混合して用いることができる。
なお、無機顔料6の添加量は、耐熱性を確実に得るため62質量%未満とするのが好ましく、58質量%以下とするのがより好ましく、55質量%以下とするのがさらに好ましい。
第2実施形態における耐熱性皮膜3の膜厚は、7μm以上とするのが好ましく、18μm以下とするのが好ましい。
第2実施形態における水性樹脂/ケイ酸塩化合物の質量比率は、2.3以上とするのが好ましく、2.8以上とするのがより好ましい。また、第2実施形態における水性樹脂/ケイ酸塩化合物の質量比率は、4.6以下とするのが好ましい。
第2実施形態に係るプレコートアルミニウム板1についても、第1実施形態と同様の変形例にて実施可能である。
例えば、図6に示すように、第1変形例として、無機顔料6が添加された耐熱性皮膜3上にトップコート皮膜4を形成したプレコートアルミニウム板1とすることができる。
また、例えば、図7に示すように、第2変形例として、アルミニウム板2と無機顔料6が添加された耐熱性皮膜3の間に、下地処理皮膜5を形成したプレコートアルミニウム板1とすることができる。
さらに、例えば、図8に示すように、第3変形例として、アルミニウム板2と無機顔料6が添加された耐熱性皮膜3の間に下地処理皮膜5を形成し、この耐熱性皮膜3上にトップコート皮膜4を形成したプレコートアルミニウム板1とすることができる。
例えば、プレス成形性をより高めるために、パーム油、カルナウバワックス、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの潤滑剤を一種または二種以上を耐熱性皮膜3中に含有させることができる。また、耐熱性皮膜3は、塗料の塗装性およびプレコート金属板としての一般的な性能を確保するため、通常用いられる顔料、顔料分散剤、流動性調節剤、レベリング剤、ワキ防止剤、防腐剤、安定化剤、耐ブロッキング防止剤などを含有させることができる。
下塗り層としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、シリカ系皮膜などを挙げることができる。
はじめに、無機顔料を添加しない耐熱性皮膜を形成したプレコートアルミニウム板について具体的に説明する。
なお、参考例4には、表1に示す樹脂を用いて耐熱性皮膜の上にトップコート皮膜を形成した。トップコート皮膜は耐熱性皮膜と同様にロールコーターを用いて、200℃、30秒間や焼付け処理して形成した。トップコート皮膜の膜厚は2μmであった。
また、参考例6には、水性樹脂およびケイ酸塩化合物のほかにポリエチレンワックスを添加して、水性樹脂とケイ酸塩化合物の合計含有量が25%となるように調製した塗料を用いて耐熱性皮膜を形成した。
耐熱性皮膜を形成した直後のプレコートアルミニウム板の外観評価を目視で行い、フクレ、ハジキ、未塗装部のいずれかがあれば不良(×)とし、いずれもなければ良好(○)とした。
耐熱性の評価は、作製したプレコートアルミニウム板を大気雰囲気中にて400℃、24時間加熱を行い、加熱前と比較して耐熱性皮膜が消失したものを不良(×)とし、耐熱性皮膜が変色するが残存したものを良好(○)とし、耐熱性皮膜が変色しないものを優良(◎)とした。
加工性の評価は、JIS K5400に規定される0T180度曲げ加工および3T180度曲げ加工を行い、3T180度曲げ加工部の耐熱性皮膜がセロハンテープにて剥離したものを不良(×)とし、剥離しないものを良好(○)とし、0T180度曲げ加工部の耐熱性皮膜がセロハンテープにて剥離しないものを優良(◎)とした。
耐食性の評価は、JIS Z2371に規定される中性塩水噴霧試験を100時間行い、平坦部およびクロスカット部に腐食が見られたものを不良(×)とし、クロスカット部にのみ腐食が見られたものを良好(○)、平坦部およびクロスカット部のいずれも腐食しなかったものを優良(◎)とした。
これに対し、比較例1〜7は、本発明の要件のいずれかを満たしていなかったので、外観、耐熱性、加工性のうちのいずれかが不良となった。
比較例2は、水性樹脂/ケイ酸塩化合物の質量比率が上限を超えていたので、塗装することができなかった。
比較例3は、膜厚が下限未満であったので、外観が不良となった。
比較例4は、膜厚が上限を超えていたので、外観が不良となった。
比較例5は、エポキシ樹脂で耐熱性皮膜を形成したので、耐熱性が不良となった。
比較例6は、アクリル樹脂で耐熱性皮膜を形成したので、耐熱性が不良となった。
比較例7は、シリコーン樹脂で耐熱性皮膜を形成したので、加工性が不良となった。
次に、無機顔料を添加した耐熱性皮膜を形成したプレコートアルミニウム板について具体的に説明する。
そして、下記表2に示すケイ酸塩化合物および水性樹脂を表2に示す質量比率で混合し、さらに表2に示す含有量[質量%]で無機顔料(銅・クロムブラック)を添加し、各塗料を調製した。
なお、実施例12には、表2に示す樹脂を用いてトップコート皮膜を形成した。トップコート皮膜はロールコーターを用いて、200℃、30秒間焼付け処理して形成した。トップコート皮膜の膜厚は2μmであった。
また、実施例13には、水性樹脂およびケイ酸塩化合物のほかにポリエチレンワックスを添加して、水性樹脂とケイ酸塩化合物の合計含有量が25%となるように調製した塗料を用いて耐熱性皮膜を形成した。
表2に、ケイ酸塩化合物の種類、水性樹脂の種類、水性樹脂/ケイ酸塩化合物の質量比率、膜厚[μm]およびトップコート皮膜の有無と、外観、耐熱性および加工性の各評価結果とを示す。なお、表2中の下線は、本発明の要件を満たさないことを示す。
これに対し、比較例8〜12は、本発明の要件のいずれかを満たしていなかったので、外観、耐熱性、加工性のうちのいずれかが不良となった。
比較例9は、水性樹脂/ケイ酸塩化合物の質量比率が下限未満であったので、加工性が不良となった。
比較例10は、無機顔料の含有量が下限未満であったので、外観が不良となった。
比較例11は、膜厚が下限未満であったので、外観が不良となった。
比較例12は、膜厚が上限を超えていたので、外観が不良となった。
2 アルミニウム板
3 耐熱性皮膜
4 トップコート皮膜
5 下地処理皮膜
6 無機顔料
Claims (2)
- アルミニウム板またはアルミニウム合金板の表面に耐熱性皮膜が形成されたプレコートアルミニウム板であって、
前記耐熱性皮膜は、アクリル樹脂、エチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、およびカルボキシメチルセルロースの中から選択されるいずれか一種または二種以上からなる水性樹脂と、ケイ酸塩化合物と、を含み、前記水性樹脂/前記ケイ酸塩化合物の質量比率が2.0以上5以下であり、さらに無機顔料を20質量%以上含み、膜厚が2μm以上20μm以下である
ことを特徴とするプレコートアルミニウム板。 - 前記耐熱性皮膜上にトップコート皮膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプレコートアルミニウム板。
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