JP2002307606A - 耐熱性及び加工性を両立させた塗装鋼板 - Google Patents

耐熱性及び加工性を両立させた塗装鋼板

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JP2002307606A
JP2002307606A JP2001113100A JP2001113100A JP2002307606A JP 2002307606 A JP2002307606 A JP 2002307606A JP 2001113100 A JP2001113100 A JP 2001113100A JP 2001113100 A JP2001113100 A JP 2001113100A JP 2002307606 A JP2002307606 A JP 2002307606A
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coating
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Takeshi Shimizu
剛 清水
Yoshiharu Iwamizu
義治 岩水
Keiji Izumi
圭二 和泉
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Nisshin Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 300〜500℃の温度域においても優れた
耐熱性を呈し、プレコート化に要求される加工性も兼ね
備えた塗装鋼板を提供する。 【構成】 この塗装鋼板は、Si原子1個当り0.6〜
1.1個の割合でシラノール基又はエトキシ基を含むメ
チルシリコーン樹脂Aと、Si原子1個当り0.001
〜0.3個の割合でシラノール基又はエトキシ基を含む
分子量1000以上の直鎖状メチルフェニルシリコーン
樹脂Bとが複合された樹脂塗膜が鋼板表面に形成されて
いる。メチルシリコーン樹脂A及び直鎖状メチルフェニ
ルシリコーン樹脂Bは、樹脂分比A/B=0.4〜2.
5の割合で混合又は重合させることが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、加熱調理器具,暖房機
器,空調機器,自動車排気系部品等として使用され、加
工性及び耐熱性に優れた塗装鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】加熱調理器具,空調機器,暖房機器,自
動車排気系部品等に使用されるプレコート鋼板として
は、塗膜耐熱温度が400℃以上,2〜4t程度の18
0度折曲げ加工で剥離しない加工性が要求されている。
耐熱用塗装鋼板としては、アルキル基,アルケニル基,
フェニル基を付加したシリコーン樹脂を主成分とする塗
料を用いた耐熱プレコート鋼板(特開昭63−1726
40号公報,特開平2−265742号公報,特開平8
−10701号公報)が知られている。シリコーン樹脂
は、Si−O結合を主骨格とするため、従来の有機樹脂
に比較して耐熱性に優れている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】シリコーン樹脂塗膜の
耐熱特性は、シリコーン樹脂に導入される有機基の種類
や含有量により大きく変化する。一般的には、シリコー
ン樹脂中の有機基の含有量を減らすと耐熱性は向上する
が、プレコート鋼板の要求特性である加工性が低下する
傾向を示す。そのため、シリコーン樹脂系の塗料で40
0℃以上の耐熱性を有するプレコート鋼板、なかでも加
熱機能を持つ家電製品に適用可能なプレコート鋼板が提
供されていない。
【0004】因みに、樹脂中の有機基比率が比較的低い
モノメチルシリコーン系の樹脂塗膜(特開平8−245
922号公報)は、400℃以上の耐熱性に優れている
が加工性が劣る。そのため、プレコート化を可能にする
上では、耐熱性をある程度犠牲にした有機樹脂の増量で
加工性を向上させることが要求される。有機基比率が比
較的高いシリコーン樹脂塗膜(特開昭63−17264
0号公報、特開平2−265742号公報,特開平8−
10701号公報)は、プレコート化に必要な加工性を
呈するが、400℃以上の耐熱性に劣っている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、このような問
題を解消すべく案出されたものであり、メチルシリコー
ン樹脂と直鎖状メチルフェニルシリコーン樹脂を複合し
た樹脂塗膜を形成することにより、300〜500℃の
温度域においても優れた耐熱性を呈し、プレコート化に
要求される加工性も兼ね備えた塗装鋼板を提供すること
を目的とする。
【0006】本発明の塗装鋼板は、その目的を達成する
ため、Si原子1個当り0.6〜1.1個の割合でシラ
ノール基又はエトキシ基を含むメチルシリコーン樹脂A
と、Si原子1個当り0.001〜0.3個の割合でシ
ラノール基又はエトキシ基を含む分子量1000以上の
直鎖状メチルフェニルシリコーン樹脂Bとが複合された
樹脂塗膜が鋼板表面に形成されていることを特徴とす
る。メチルシリコーン樹脂A及び直鎖状メチルフェニル
シリコーン樹脂Bは、樹脂分比A/B=0.4〜2.5
の割合で混合又は重合させることが好ましい。
【0007】
【作用】シラノール基又はエトキシ基を含むメチルシリ
コーン樹脂を加熱すると、エトキシ基の加水分解、更に
シラノール基間の脱水縮合反応によって三次元網目構造
(図1)が形成される。三次元網目構造の形成は、分子
中にシラノール基又はエトキシ基が多いほど促進され、
比較的低温短時間の焼成でも強度の高い塗膜が形成され
る。しかし、形成された塗膜は、硬質で加工密着性に劣
る。
【0008】他方、本発明で使用する直鎖状メチルフェ
ニルシリコーン樹脂は、シラノール基又はエトキシ基の
導入量が少なく三次元網目構造を取り難く、樹脂相互の
絡み合い(図2)によって塗膜を形成する。そのため、
延性に富み加工密着性に優れた塗膜が形成される。反
面、その塗膜構造に由来して総体的に塗膜強度が低く、
更に塗膜形成過程で硬化反応が緩慢なため300℃以上
の高温で数十分の長時間焼成が余儀なくされる。アルミ
ニウムアセチルアセトネート等の触媒添加によって硬化
促進が図られるが、触媒を添加した場合でも、300℃
以上の高温で数分の焼成が必要とされるばかりでなく、
塗料寿命が短くなり残塗料を再使用できなくなる。高温
長時間の焼成は、鋼帯に対する連続塗装を必要とするプ
レコート塗装には不利である。また、高温耐熱性を付与
するためにN含有量を高めた普通鋼冷延鋼板をベースと
した溶融アルミニウムめっき鋼板を塗装原板とすると
き、塗料焼付け時の入熱によって時効硬化が進行し、塗
装鋼板のプレス加工性が劣化する。
【0009】これに対し、メチルシリコーン樹脂と直鎖
状メチルフェニルシリコーン樹脂とを配合した本発明の
樹脂塗膜では、優れた加工密着性が得られると共に強度
的にも優れた塗膜が形成される。加工密着性及び塗膜強
度の両立は、メチルシリコーン樹脂の三次元網目構造中
に直鎖状メチルフェニルシリコーン樹脂が絡み合った塗
膜構造(図3)に由来し、直鎖状メチルフェニルシリコ
ーン樹脂単独膜と同様な軟化開始点を示しつつも、急激
な軟化状態に至らないものと推察される。その結果、比
較的自由度の大きな直鎖状の樹脂部分が塗膜に延性を付
与して加工密着性を向上させ、しかもバインドする三次
元網目構造によって必要強度をもつ塗膜が形成される。
【0010】実際、メチルシリコーン樹脂A,直鎖状メ
チルフェニルシリコーン樹脂B及び樹脂分比A:B=
1:1のシリコーン樹脂混合物を下地鋼板に塗布し、焼
成後に形成された膜厚30μmの塗膜についてガラス転
移温度を測定した。なお、メチルシリコーン樹脂Aでは
到達板温を230℃として60秒焼成し、直鎖状メチル
フェニルシリコーン樹脂Bでは到達板温を340℃とし
て90秒焼成し、シリコーン樹脂混合物では到達板温度
230℃として90秒焼成した。
【0011】メチルシリコーン樹脂からなる塗膜(図
4)は測定温度200℃まで軟化点が現れず、熱的にも
非常に安定した硬質塗膜であった。対照的に直鎖状メチ
ルフェニルシリコーン樹脂Bからなる塗膜(図5)は、
室温を超えた辺りですぐに軟化点が現れ、そのまま急激
に軟化した。これに対し、樹脂分比A:B=1:1の塗
膜(図6)では、直鎖状メチルフェニルシリコーン樹脂
B単独の塗膜とほぼ同様な軟化点が現れ、塗膜中に直鎖
状メチルフェニルシリコーン樹脂Bが依然として存在し
ていることが窺われる。また、シリコーン樹脂混合塗膜
の軟化状態は、温度上昇に伴って徐々に軟化する温度依
存性を示した。
【0012】このようにメチルシリコーン樹脂A及び直
鎖状メチルフェニルシリコーン樹脂Bが混在した塗膜で
は、メチルシリコーン樹脂の三次元網目構造に直鎖状メ
チルフェニルシリコーン樹脂Bが絡み合った塗膜構造に
なっていることから、加工密着性及び塗膜硬度が両立す
る。この塗膜特性のため、プレコート鋼板用途ではプレ
ス加工に耐える塗膜硬度が確保される。また、主として
メチルシリコーン樹脂のシラノール基又はエトキシ基の
脱水縮重合によって三次元網目構造が形成されるため、
低温短時間の焼成(具体的には、180〜300℃×3
分以内の加熱焼付け)によって塗膜を形成でき、N添加
鋼板をベースとした溶融アルミニウム系めっき鋼板であ
っても塗料焼付け時の時効硬化が抑えられ、良好なプレ
ス成形性が確保される。
【0013】
【実施の形態】塗装原板には、耐熱性に優れた鋼板,ス
テンレス鋼板,Al系めっき鋼板,Al系めっきステン
レス鋼板等が使用され、用途や加工度に応じて適切な鋼
種が選択される。下地鋼板は、塗装に先立って脱脂,酸
洗,反応型クロメート処理,塗布型クロメート処理,リ
ン酸塩処理等、適宜の塗装前処理が施される。
【0014】塗装前処理された下地鋼板にシリコーン樹
脂塗料をスプレー法,ロールコート法,バーコート法等
で塗布し、加熱焼付けによって必要膜厚のシリコーン樹
脂塗膜を形成する。シリコーン樹脂塗料は、メチルシリ
コーン樹脂Aと直鎖状メチルフェニルシリコーン樹脂B
とを配合することにより調製される。加工性及び耐熱性
をバランスさせる上では、樹脂分比A/Bが0.4〜
2.5の範囲に収まるようにメチルシリコーン樹脂A及
び直鎖状メチルフェニルシリコーン樹脂Bの混合比率を
調整する。オーブン機能付き電子レンジ内箱等の耐摩耗
性が要求される用途では、樹脂分比A/Bを0.8〜
2.5の範囲にすることが望まれる。
【0015】メチルシリコーン樹脂Aは、Si原子1個
当り0.6〜1.1個の割合でシラノール基又はエトキ
シ基を結合させたシリコーン樹脂である。シラノール基
又はエトキシ基結合割合を0.6〜1.1個/Si原子
とすることにより、十分な強度をもち耐熱性に優れた塗
膜が比較的低温短時間の焼成で形成される。シラノール
基又はエトキシ基の結合割合が0.6個/Si原子に満
たないと三次元網目構造が十分に成長せず、塗膜強度が
低下する。逆に、1.1個/Si原子を超える過剰のシ
ラノール基又はエトキシ基が含まれると、塗膜が硬質化
し、加工密着性が低下する。
【0016】直鎖状メチルフェニルシリコーン樹脂は、
Si原子1個当り0.001〜0.3個の割合でシラノ
ール基又はエトキシ基を結合させた分子量1000以上
のシリコーン樹脂である。直鎖状メチルフェニルシリコ
ーン樹脂Bもシラノール基又はエトキシ基同士の脱水縮
合反応を起こしてメチルシリコーン樹脂Aの一部に結合
する。このとき、直鎖状メチルフェニルシリコーン樹脂
Bのシラノール基又はエトキシ基の結合割合が0.00
1個/Si原子に満たないと、メチルシリコーン樹脂A
との架橋が少なく塗膜強度が低下する。逆に0.3個/
Si原子を超えるシラノール基又はエトキシ基が含まれ
ると、メチルシリコーン樹脂Aとの架橋が過度に進行し
て塗膜の延性が失われ、結果的に加工密着性が低下す
る。塗膜に延性を付与する上では、メチルフェニルシリ
コーン樹脂Bが直鎖状であることが有利であり、ポリス
チレン換算の分子量が1000未満であると膜厚を1μ
m以上にすることが困難になる。
【0017】メチルシリコーン樹脂A及び直鎖状メチル
フェニルシリコーン樹脂Bを樹脂分比A/B=0.4〜
2.5の割合で配合した塗料を調製する。樹脂分比A/
Bを0.4〜2.5の範囲に調整することにより、メチ
ルシリコーン樹脂Aに由来する耐熱性及び直鎖状メチル
フェニルシリコーン樹脂Bに由来する加工性をバランス
させた塗膜が形成される。たとえば、メチルシリコーン
樹脂A単独の塗膜では硬く、加熱・冷却を受けると熱膨
張係数が下地鋼板と異なるためクラックが生じやすい
が、柔軟性に富む直鎖状メチルフェニルシリコーン樹脂
Bがメチルシリコーン樹脂Aのネットワークに絡んだ塗
膜構造をとる本発明の塗膜では、加熱・冷却時に下地鋼
板との熱膨張差に起因する応力が分散・緩和されるため
塗膜にクラックが生じがたく、良好な塗膜性能が維持さ
れる。
【0018】シリコーン樹脂塗料には、塗膜の意匠性,
耐食性,耐摩耗性,触媒機能等を向上又は付与するため
着色顔料,体質顔料,触媒,防錆顔料,金属粉等の添加
物を含有させることも可能である。顔料としては、M
n,Fe,Cr,Cu,Ti,Al等の金属酸化物や複
合酸化物、グラファイト、Al粉,Ni粉等の金属粉等
がある。防錆顔料としては、環境に配慮したモリブデン
酸カルシウム,リンモリブデン酸カルシウム,リンモリ
ブデン酸アルミニウム等の非クロム防錆顔料が好まし
い。また、バインダーがシリコーン樹脂であることから
TiO2等の光触媒も添加でき、光触媒反応で油脂を酸
化分解するセルフクリーニング機能が発現する。
【0019】顔料は、塗料中の樹脂分100質量部に対
して40〜150質量部の割合で添加することが好まし
い。顔料による隠蔽作用は40質量部以上の添加で顕著
になるが、150質量部を超える過剰添加では塗膜が脆
くなり、加工密着性が低下する。防錆顔料は、塗料中の
樹脂分100質量部に対し5〜50質量部の割合で、顔
料と併用添加する場合には合計45〜150質量部とな
る割合で添加される。防錆顔料による耐食性改善効果は
5質量部以上で顕著になるが、50質量部を超える過剰
量を添加しても防錆顔料の増量に見合った耐食性に向上
がみられない。
【0020】下地鋼板に塗布されたシリコーン樹脂塗料
を最高到達板温180〜300℃で焼き付けると、耐熱
性,加工性に優れた塗膜が形成される。150℃に達し
ない加熱温度では、塗膜に溶剤が残存して樹脂の架橋が
不充分になり、加工密着性の低下やコイル巻取り時,切
り板のパイリング時に塗膜面がブロッキングを起こしや
すくなる。逆に300℃を超える加熱温度では、塗膜の
架橋密度が高くなりすぎ、加工密着性が低下する傾向が
みられる。焼付け時の入熱によってシラノール基間で脱
水縮合反応が生じ、三次元網目構造が形成される。この
とき、直鎖状メチルフェニルシリコーン樹脂は三次元網
目構造でバインドされた状態に留まることから、依然と
して塗膜の柔軟性,加工密着性が確保される。
【0021】
【実施例1】ポリスチレン換算の重量平均分子量が10
000で一般式(CH3)0.95SiO1 .05(OH)0.95で表
されるメチルシリコーン樹脂Aとポリスチレン換算分子
量が1000以上の分子で構成され重量平均分子量が1
00000で一般式(CH3)0 .85(C65)0.85SiO
1.12(OH)0.06で表される直鎖状メチルフェニルシリコ
ーン樹脂Bを種々の比率で混合し、顔料無添加のシリコ
ーン樹脂塗料を用意した。アルカリ脱脂した板厚0.4
mmの溶融Alめっき鋼板(塗装原板)にシリコーン樹
脂塗料をバーコート法で塗布し、到達最高板温230℃
(試験番号1〜9),350℃(試験番号10)で焼き
付け、膜厚5μmのクリア塗膜を形成した。
【0022】各塗装鋼板から試験片を切り出し、加工試
験及び加熱後腐食試験に供した。加工試験では、試験片
を180度折り曲げ加工(2t〜5t)し、加工部にセ
ロハンテープを貼り付けた後で剥離するテーピング剥離
試験を実施した。セロハンテープ剥離後に加工部表面を
顕微鏡観察し、塗膜が剥離しなかったものを◎,僅かに
剥離が検出されたものを○,著しく剥離したものを×と
して加工密着性を評価した。加熱後腐食試験では、試験
片を500℃に30分加熱した後で直ちに水冷するヒー
トショック試験を5サイクル繰り返した後、塩水噴霧を
100時間継続した。塩水噴霧後の試験片表面を観察
し、塗装面に発生した白錆の占める面積率が5%未満を
○,5%以上を×として加熱後耐食性を評価した。
【0023】表1の調査結果にみられるように、樹脂分
比A/Bが0.4〜2.5の範囲にある試験番号1〜6
(本発明例)では、加工密着性及び加熱後耐食性の双方
が良好で、プレコート用として使用可能な耐熱塗膜であ
ることが確認された。これに対し、メチルシリコーン樹
脂A単独で形成した試験番号7(比較例)や直鎖状メチ
ルフェニルシリコーン樹脂Bが不足する試験番号8(比
較例)の塗膜では、5t曲げ加工で塗膜剥離が生じ、ヒ
ートショック試験後の耐食性にも劣っていた。また、直
鎖状メチルフェニルシリコーン樹脂B単独で形成した試
験番号10(比較例)やメチルシリコーン樹脂Aが不足
する試験番号9(比較例)の塗膜では、良好な加工性を
示すものの、ヒートショック試験後の耐食性に劣ってい
た。
【0024】
【0025】
【実施例2】塗装原板として、脱脂・酸洗処理にクロム
付着量20〜30mg/m2の塗布型クロメート処理を
施した板厚0.4mmのSUS304・2D仕上げ材及
びアルカリ脱脂した板厚0.4mmの溶融Alめっき鋼
板を用意した。樹脂分100質量部に対して80質量部
の割合で黒色顔料(MnCuCrOx焼成顔料),20
質量部の割合でリンモリブデン酸アルミニウム系の防錆
顔料を実施例1と同じシリコーン樹脂に配合した塗料を
調製した。各塗装原板にバーコート法で塗布し、最高到
達板温230℃(試験番号11〜20),350℃(試
験番号21,22)で焼き付けることにより、乾燥膜厚
6μmのシリコーン樹脂塗膜を形成した。
【0026】各塗装鋼板から試験片を切り出し、実施例
1と同じ加工試験に加え、鉛筆硬度で塗膜硬さを測定す
ると共に、磨耗試験,加工後二次密着試験に供した。鉛
筆硬度による塗膜硬さの測定では、各硬度の鉛筆で塗膜
面を引っ掻き、下地鋼板にまで疵が達しない鉛筆硬度を
求め、Hより硬い場合を○,H未満を×として塗膜硬さ
を評価した。摩耗試験では、試験片を500℃で100
時間加熱した後、市販の台所用液体洗剤を浸み込ませた
フェルトで、荷重2kgをかけて塗膜面を擦った。下地
鋼板が露出するまでの回数(往復で1回)を測定し、1
00回以上擦っても下地鋼板が露出しないものを○,1
00回未満の摩擦で下地鋼板が露出したものを×として
耐摩耗性を評価した。
【0027】加熱後二次密着試験では、350℃,40
0℃,500℃と加熱温度を変えて実施例1と同様のヒ
ートショック試験を実施した後、JIS Z2371に
準拠して塩水噴霧を100時間継続した。塩水噴霧後の
試験片をセロハンテープを貼り付けて引き剥がすテーピ
ング剥離試験に供し、塗膜の剥離が検出されなかったも
のを◎,塗膜の一部が点状に剥離したものを○,塗膜が
著しく剥離したものを×として加熱後二次密着性を評価
した。なお、比較例27,28,31,32の試験片で
は、500℃加熱だけでセロハンテープの剥離に伴って
塗膜の凝集剥離がみられたため、塩水噴霧試験は実施し
なかった。
【0028】樹脂分比A/Bを0.4〜2.5の範囲に
維持したシリコーン樹脂塗料を使用した本発明例では、
表2,3にみられるように、優れた加工密着性及び加熱
後二次密着性が示された。樹脂分比A/B≧0.8で優
れた耐摩耗性が得られ、樹脂分比A/Bの低下に応じて
耐摩耗性が低下する傾向が窺われる。耐熱密着性に関し
ても、表2,3では表示しなかったが、350〜500
℃の温度範囲で優れた特性であった。
【0029】
【0030】
【0031】
【実施例3】塗装原板として、アルカリ脱脂後にクロム
付着量20〜40mg/m2の塗布型クロメート処理を
施した板厚0.4mmの溶融Alめっき鋼板を用意し
た。(C65)2SiCl2,(C65)SiCl3,(CH3)
2SiCl2,(CH3)SiCl3を出発原料として、種々
の割合で混合し、常法に従って重合させたシリコーン樹
脂A,Bを数種類作製した。樹脂分比A/B=1.4で
シリコーン樹脂A,Bを配合し、樹脂分100質量部に
対し70質量部の割合で黒色顔料(MnCuCrOx
成顔料),30質量部の割合でモリブデン酸カルシウム
系の防錆顔料を添加することにより、表4に示すシリコ
ーン樹脂塗料を調製した。なお、使用したシリコーン樹
脂Bは,何れもポリスチレン換算で分子量1000以上
の分子で構成され,重量平均分子量が50000〜30
0000の範囲にあった。
【0032】
【0033】シリコーン樹脂塗料を塗装原板に塗布・焼
き付けた後、塗装鋼板の塗膜特性を実施例2と同様に調
査した。表5,6の調査結果にみられるように、シリコ
ーン樹脂A,BのSi原子1個当りに結合するシラノー
ル基の割合及び樹脂分比A/Bを本発明で規定した範囲
に維持するとき、加工密着性,塗膜強度,耐摩耗性及び
加工後二次密着性に優れた塗膜が形成された。他方、シ
リコーン樹脂中のシラノール基が過剰な試験番号37,
39では加工密着性が劣っていた。シリコーン樹脂中の
シラノール基が少ない試験番号38,40では、加工密
着性は良好であるものの、耐摩耗性,塗膜強度に劣って
いた。なお、試験番号40は、500℃×100時間の
加熱後にテーピング剥離試験する耐熱試験で塗膜の凝集
剥離がみられたため、加熱後二次密着試験は実施しなか
った。
【0034】
【0035】
【0036】
【実施例4】塗装原板として、アルカリ脱脂後にクロム
付着量が20〜40mg/m2となるように反応型クロ
メート処理,塗布型クロメート処理の順で前処理した板
厚0.4mmの溶融Alめっき鋼板を用意した。樹脂分
比A/B=1.25で実施例1と同じシリコーン樹脂A
及びシリコーン樹脂Bを配合し、樹脂分100質量部に
対して60質量部の黒色顔料(MnCuCrOx焼成顔
料)及び20質量部の防錆顔料(モリブデン酸亜鉛系)
を添加したシリコーン樹脂塗料を調製した。シリコーン
樹脂塗料を塗装原板にバーコート法で塗布し、到達最高
板温250℃,60秒で加熱焼付けすることにより、乾
燥膜厚5μmの塗膜を形成した。
【0037】得られた塗装鋼板は、鉛筆硬度が3Hで加
工密着性に優れ、180度4t曲げ試験した後でも塗膜
剥離が観察されなかった。また、500℃×100時間
の加熱後に往復100回の耐摩耗性試験したところ、何
れの塗装鋼板においても下地鋼板の露出がなく、耐摩耗
性に優れていることが確認できた。更に、350℃,4
00℃,500℃の各温度に種々の時間加熱した試験片
を100時間継続して塩水噴霧した後、セロハンテープ
を貼り付けて引き剥がすテーピング剥離試験に供し、塗
膜の剥離状況を観察した。観察結果から、塗膜に剥離が
検出されなかったものを◎,塗膜の一部が点状に剥離し
たものを○,塗膜が著しく剥離したものを×として二次
密着性を評価した。表7の調査結果にみられるように、
何れの加熱条件下でも優れた二次密着性が示された。
【0038】
【0039】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の塗装鋼
板は、メチルシリコーン樹脂及び直鎖状メチルフェニル
シリコーン樹脂を特定比率で複合しているため、300
〜500℃の広い温度域で十分な耐熱性を呈し、プレコ
ート化に要求される加工性も兼ね備えている。また、顔
料の添加によって耐摩耗性や塗膜強度を改善することも
可能である。このようにして得られた塗装鋼板は、優れ
た耐熱性,加工性を活用し、加熱調理器具,暖房機器,
空調機器,自動車排気系部品等、広範な用途で使用され
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 メチルシリコーン樹脂単独塗膜の塗膜構造を
示すモデル図
【図2】 直鎖状メチルフェニルシリコーン樹脂単独塗
膜の塗膜構造を示すモデル図
【図3】 メチルシリコーン樹脂,直鎖状メチルフェニ
ルシリコーン樹脂の混合塗膜の塗膜構造を示すモデル図
【図4】 メチルシリコーン樹脂単独塗膜のガラス転移
温度を示すグラフ
【図5】 直鎖状メチルフェニルシリコーン樹脂単独塗
膜のガラス転移温度を示すグラフ
【図6】 メチルシリコーン樹脂,直鎖状メチルフェニ
ルシリコーン樹脂の混合塗膜のガラス転移温度を示すグ
ラフ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B32B 27/00 101 B32B 27/00 101 C09D 183/06 C09D 183/06 (72)発明者 和泉 圭二 大阪府堺市石津西町5番地 日新製鋼株式 会社技術研究所内 Fターム(参考) 4D075 CA03 CA18 DA06 DB02 DC10 DC13 DC18 EB42 4F100 AA22 AB03B AB10 AK52A AL05A AL06A BA02 CA15 CC00A EH46 EH71 EJ69 GB32 GB41 JJ03 JK06 JL01 YY00A 4J038 DL051 DL052 MA14 NA12 NA14 PB07 PC02

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Si原子1個当り0.6〜1.1個の割
    合でシラノール基又はエトキシ基を含むメチルシリコー
    ン樹脂と、Si原子1個当り0.001〜0.3個の割
    合でシラノール基又はエトキシ基を含む分子量1000
    以上の直鎖状メチルフェニルシリコーン樹脂とが複合さ
    れた樹脂塗膜が鋼板表面に形成されていることを特徴と
    する耐熱性及び加工性を両立させた塗装鋼板。
  2. 【請求項2】 メチルシリコーン樹脂A及び直鎖状メチ
    ルフェニルシリコーン樹脂Bが樹脂分比A/B=0.4
    〜2.5の割合で混合又は重合した樹脂塗膜が形成され
    ている請求項1記載の塗装鋼板。
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