JP4055942B2 - 加工性,耐食性に優れた耐熱プレコート鋼板 - Google Patents

加工性,耐食性に優れた耐熱プレコート鋼板 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、加熱調理器具,暖房機器,空調機器,自動車排ガス流路部材等に使用され、耐食品汚染性,耐食性,耐熱性に優れた耐熱プレコート鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
耐食性の良好な鋼材としてAl−Si合金めっき鋼板が多用されているが、湿潤雰囲気,排ガス雰囲気,海塩粒子飛散雰囲気等にAl−Si合金めっき鋼板を長期間放置すると、鋼板表面に白錆が発生し外観が劣化する。白錆の発生はAl−Si合金めっき鋼板をクロメート処理することにより防止でき、クロメート皮膜は塗膜密着性の向上にも有効である。
【0003】
クロメート処理では、環境にとって有害な水溶性のCrイオンを含むクロメート処理液,リンス液等の廃液処理に多大な負担がかかる。そこで、チタン系,ジルコニウム系,モリブデン系,リン酸塩系等の薬液を使用したCrフリーの化成処理方法が検討されており、アルミニウム材料ではDI缶等への適用を主目的として多数の提案がある。
たとえば、チタン系では、チタン化合物,燐酸イオン,フッ化物,促進剤を含む水溶液をアルミニウム含有金属材料に接触させ、水洗・乾燥することにより化成処理皮膜を形成する方法が特開平9−20984号公報で紹介されている。本発明者等も、バルブメタルの酸化物,水酸化物を主成分とするCrフリーの化成処理皮膜を形成するとき、Al−Si合金めっき鋼板の耐食性が改善されることを提案した(特願2002−015661号)。
【0004】
ところで、耐熱性が要求される加熱調理器具,暖房機器,空調機器,自動車排ガス流路部材等の素材にAl−Si合金めっき鋼板を使用するとき、周囲部材との調和を損なう金属光沢を嫌って鋼板表面に樹脂塗膜を設けた塗装鋼板が好まれている。なかでも、製品形状に加工した後での塗装が不要な耐熱プレコート鋼板の提供が強く望まれている。
耐熱プレコート鋼板の塗膜には、400℃以上の耐熱温度,2〜4t程度の180度折曲げ加工によっても塗膜剥離が生じない加工性が要求される。そこで、アルキル基,アルケニル基,フェニル基を配合したシリコーン樹脂塗料(特開昭63−172640号公報,特開平2−265742号公報)を使用し、シロキサン結合のネットワークによって塗膜を強化している。
【0005】
シリコーン樹脂は、従来の有機樹脂に比較して耐熱性に優れたシロキサン結合を主骨格にしているが、樹脂に導入される有機基の種類や含有量によって樹脂塗膜の特性が大きく変動する。一般的には、シリコーン樹脂中の有機基の含有量を減らすと耐熱性が向上するものの加工性が低下する。この点、従来のシリコーン樹脂は、樹脂中の有機基比率が比較的高いためプレコート化に耐える加工性をもつが400℃以上の耐熱性に劣る。しかも、400℃以上に加熱されると、樹脂中のSi−C65の結合が徐々に切断されて少量ながらもベンゼンガスが放出され、発煙もある。
【0006】
本出願人は、耐熱性に優れたプレコート鋼板用の塗料としてモノメチルシラノールゾルにエポキシ樹脂及びイソシアネートを配合した塗料を紹介した(特開平8−245922号公報)。当該塗料は、シリコーン樹脂中の有機基比率が比較的低いため400℃以上の耐熱性に優れているが、加工性に劣るため有機樹脂の添加によってプレコート化を可能にしている。
【0007】
当該塗料を用いて製造された塗装鋼板から作られた製品では、使用初期に添加有機樹脂が加熱分解する欠点がある。特にイソシアネートの加熱分解に際しては特有の臭気又は煙が発生する。添加有機樹脂が加熱分解した直後にはモノメチルシラノールから形成されるオルガノポリシロキサン樹脂もシロキサン結合の十分なネットワークを形成しておらず、一時的に不安定な皮膜状態を経る。そのため、かかる問題が懸念される用途、たとえば身近に使用される加熱調理機器,耐食性が要求される自動車排気系部材等では、添加有機樹脂の加熱分解及びオルガノポリシロキサン樹脂のネットワーク形成促進による耐食性向上を狙って、プレス加工後に400〜500℃に数分加熱する予備加熱を施した後で本製品に組み込む工程が採用される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
予備加熱の必要なく成形加工された耐熱プレコート鋼板をそのまま各種機器に組み込めると、製造工程が簡略化され、製品コストの低減も図られる。臭気や煙を予め除去する予備加熱が省略可能で耐熱性も良好な塗膜を形成する耐熱塗料としては、フェニル基を有するシリコーン樹脂に代えてメチルシリコーン樹脂をベース樹脂に使用することが考えられる。しかし、メチルシリコーン樹脂をベースとする塗膜を形成した耐熱プレコート鋼板は、300〜350℃の加熱及び400℃の短時間加熱で塗膜性能が著しく低下する。塗膜の性能低下は、次のように推察される。
【0009】
樹脂に含まれるSi−CH3結合は、300〜350℃の加熱で分解反応を開始する。他方、シラノール基(Si−OH)間の脱水縮合反応によりSi−O−Siのシロキサン結合を進行させて十分なネットワーク構造を形成する上では400℃以上の高温長時間加熱が必要とされる。そのため、メチルシリコーン樹脂単独の系が300〜400℃の中間温度域に加熱されると、Si−CH3結合が加熱分解する一方で、ネットワーク構造の形成に必要なSi−O−Siのシロキサン結合が十分に進行しない。その結果、メチルシリコーン樹脂から成膜された塗膜は、一時的に不安定な皮膜状態になる。
【0010】
また、加熱調理器具等の実使用状態を想定すると、食品類や調味料の飛散・付着が予想される。食品類や調味料はNaCl,ミネラル,有機酸,硫酸イオン等を多く含み、酸性の調味料が多く、pH3以下の強酸性調味料もある。付着した食品類の腐敗によるpH値の低下も予想される。付着した食品類や調味料が腐食性因子となって、加熱調理器具等の構成材料である鋼板が過酷な腐食性雰囲気に曝される。
耐熱プレコート鋼板を加熱調理器具等の素材に使用する場合、所定形状に成形加工した耐熱プレコート鋼板を空焼き(予備加熱)せず加熱調理器具等に組み込むことがある。この場合、加熱調理器具等の使用中に耐熱プレコート鋼板が加熱されるが、幅広い温度域での後加熱が余儀なくされ、コーナー部,合せ部や加熱源から離れた個所等では後加熱温度が低くなる。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、Al−Si合金めっき鋼板にCrフリーの皮膜を設けた化成処理鋼板が塗膜密着性に優れていることに着目し、耐熱性に優れた基材,化成処理皮膜,樹脂塗膜の特定された組合せにより、予備加熱や後加熱を省略しても使用時に異臭や煙が発生せず、耐食性,加工性,耐食品汚染性に優れた耐熱プレコート鋼板を提供することを目的とする。
【0012】
本発明の耐熱プレコート鋼板は、その目的を達成するため、Al−Si合金めっき鋼板を基材とし、バルブメタルの酸化物及び水酸化物を主体とする化成処理皮膜を介し、一般式(CH3)aSiO(4-a-b)/2(OH)b〔ただし、a=0.5〜1.5,b=0.5〜1.05〕で表されるメチルシリコーン樹脂に鱗片状粉末を配合した塗料から形成された塗膜が片面又は両面に設けられていることを特徴とする。
【0013】
基材としては、めっき層全体としてSi含有量が5〜13質量%,表層のSi含有量が7〜80質量%のAl−Si合金めっき層が下地鋼板の表面に形成されているAl−Si合金めっき鋼板が好適である。化成処理皮膜は、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wから選ばれた1種又は2種以上のバルブメタルの酸化物,水酸化物を主成分にしている。塗膜には、アルミフレーク,アルミナフレーク,ステンレス鋼フレーク,ガラスフレーク,アルミナフレーク,マイカ粉,タルク粉,板状カオリン,硫酸バリウムフレークから選ばれた1種又は2種以上の鱗片状粉末が分散している。
【0014】
【実施の形態】
Al−Si合金めっき鋼板の下地鋼には、低炭素鋼,中炭素鋼,高炭素鋼,合金鋼等が使用される。なかでも、良好なプレス成形性が要求される用途では、低炭素Ti添加鋼,低炭素Nb添加鋼等の深絞り用鋼板が好ましい。下地鋼は、常法に従って溶融アルミニウムめっきされるが、Al−Si合金めっき層のSi含有量を5〜13質量%の範囲に調整することが好ましい。Si含有量を5質量%以上とすることにより、めっき層表層にSiが濃化しやすくなると共に、下地鋼とめっき層との界面に生じ加工性に有害な合金層の成長が抑制される。しかし、13質量%を超える過剰量のSiが含まれると、溶融めっき後の冷却過程で初晶Siがめっき層に晶出し、加工性が著しく劣化する。
【0015】
Si含有量を5〜13質量%に調整したAl−Si合金めっき鋼板を溶融めっき浴から引き上げ、冷却速度等を調整することによって予めめっき層の表層にSiを濃化させた後、酸洗,アルカリ洗浄等を施すことにより金属Si主体の凸部及びAlリッチの凹部がめっき層の表層に形成される。酸洗,アルカリ洗浄等で金属Si主体の凸部及びAlリッチの凹部を形成する場合、水洗,乾燥工程を必要とする。他方、Alに対してエッチング作用のある化成処理液を使用する場合、化成処理液をめっき層に塗布して乾燥させる化成処理皮膜の生成過程で表層のAlが選択的にエッチング除去され、Alリッチの凹部が形成される。
【0016】
金属Si主体の凸部及びAlリッチの凹部がめっき層の表層に分散している状況は、AES分析法を用いて1000μm四方のエリアを走査・分析し、同様にArスパッタで表層から100nmの深さまで繰返し分析することにより確認できる。本発明者等による実験結果から、めっき層の表層から100nmまでの深さにおけるSi濃度を7質量%以上にするとき、目標とする平坦部耐食性及び加工部耐食性が得られることが判った。しかし、表層のSi濃度が80質量%を超えるまでAlがエッチング除去されると、めっき層の表層が脆くなり、プレス加工時等の際に鋼板が変形すると化成処理皮膜が脱落しやすくなる。
【0017】
Al−Si合金めっき鋼板に化成処理液を塗布し、水洗せずに乾燥することによりバルブメタルの酸化物及び水酸化物を主成分にする化成処理皮膜が形成される。化成処理液は、バルブメタルを含む限り塗布型又は反応型の何れであってもよいが、反応型化成処理では処理液の安定性を維持する上からpHを若干低く調整する。
バルブメタルは、酸化物が高い絶縁抵抗を示す金属を指し、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wの1種又は2種以上が使用される。たとえば、バルブメタルにTiを使用した化成処理液は、TiCl,(NHTiF,TiOSO,Ti(SO,Ti(OH),K[TiO(COO)],XTiF(X:アルカリ金属又はアルカリ土類金属,n:1又は2)等をTiソースとして含む。TiF 2−+4HO→Ti(OH)+6F等の反応によって皮膜の最終的な主成分がバルブメタルの酸化物及び水酸化物となる限り、フッ化物,硫酸塩等もTiソースに使用できる。
【0018】
化成処理液には、Al−Si合金めっき層の表面をエッチングにより活性化するため、フッ化物や各種酸類を複合添加しても良い。キレート作用のある酒石酸,タンニン酸,クエン酸,蓚酸,マロン酸,乳酸,酪酸等の有機酸を添加すると、化成処理液の安定性が向上する。更に、金属リン酸塩又は複合リン酸塩を化成処理液に添加すると、化成処理皮膜の欠陥部に溶出してAlと反応し不溶性リン酸塩となって析出するので、化成処理皮膜に自己修復機能が付与される。
【0019】
バルブメタルの酸化物及び水酸化物からなる皮膜は、電子の移動に対する抵抗体として働き、雰囲気中の水分に含まれている溶存酸素による還元反応(下地鋼との酸化反応)が抑えられる。高い絶縁抵抗を示すバルブメタルの酸化物は、腐食促進因子や水,プロトン,酸素等の腐食作用を呈する物質を効果的に遮蔽する。その結果、下地鋼からの金属成分の溶出(腐食)が防止される。
バルブメタルの酸化物及び水酸化物化成処理皮膜に存在する。酸化物及び水酸化物は、Si−O結合の進展によりメチルシリコーン樹脂に十分なネットワーク構造が形成されるまでの300〜400℃の中間温度域で、シラノール基(Si−OH)又はシロキサン結合(Si−O)と水素結合する。水素結合の形成により、化成処理皮膜に塗布されたメチルシリコーン樹脂との密着性が向上し、300〜400℃の中間温度域における耐食品汚染性,耐食性が飛躍的に向上する。
【0020】
化成処理皮膜は、ロールコート法,スピンコート法,スプレー法等でAl−Si合金めっき鋼板に化成処理液を塗布し、水洗せずに乾燥することにより形成される。常温乾燥も可能であるが、連続操業を考慮すると50℃以上に保持して乾燥時間を短縮することが好ましい。しかし、乾燥温度が高温になるほど化成処理皮膜に含まれているバルブメタルの水酸化物が減少するので、乾燥温度の上限を300℃に設定することが好ましい。化成処理液の塗布量は、十分な耐食性を確保するため1mg/m2以上のチタン付着量となるように調整することが好ましい。なお、化成処理に先立って、必要に応じAl−Si合金めっき鋼板がアルカリ脱脂される。
【0021】
化成処理皮膜形成後、直ちにメチルシリコーン樹脂に鱗片状粉末を配合した樹脂塗料を塗布し焼付け・乾燥によって樹脂塗膜を形成する。樹脂塗料の塗布にはスプレー法,ロールコート法,バーコート法等が採用され、塗膜の硬度を保証し加工密着性を確保するために好ましくは150〜300℃の範囲で加熱・乾燥される。300℃を超える高温乾燥では、耐食品汚染性,耐食性に悪影響が現れるだけでなく塗膜の加工性も損なわれ、プレコート鋼板としての特性が得られない。樹脂塗膜の膜厚は、耐食性,加工密着性を勘案して好ましくは2〜15μm(好ましくは、10μm以下)の範囲に調整される。膜厚2μm以上で耐食性の改善効果がみられるが、15μmを超える厚膜では塗膜の加工密着性が低下する。
【0022】
メチルシリコーン樹脂は、一般式(CH3)aSiO(4-a-b)/2(OH)bをもつ化合物である。指数a,bは、ブロッキングを起こすことなく塗膜に必要硬度を付与し、長時間焼付けを必要とせずにコイルでの連続塗装を可能にするため、それぞれa=0.5〜1.5,b=0.5〜1.05の範囲に調整することが好ましい。a<0.5では塗膜の加工密着性が低下し、a>1.5では耐熱性が劣る。b<0.5では、塗装原板に配向した水酸基との脱水縮合によって結合する起点が少なくなるため加工密着性が低下し、塗膜の硬化性も劣る。逆にb>1.05では、焼成時に三次元架橋が過度に進行して塗膜の加工密着性が低下する。
【0023】
メチルシリコーン樹脂に配合する鱗片状粉末には、アルミフレーク,アルミナフレーク,ステンレス鋼フレーク,ガラスフレーク,マイカ粉,タルク粉,板状カオリン,硫酸バリウムフレーク等、500℃の耐熱性をもつものが好ましく、各種フレークを単独で或いは2種以上組み合わせて使用できる。電子オーブンレンジ等の赤外線放射特性が要求される用途や樹脂塗料の化学的安定性を考慮すると、アルミナフレーク,マイカ粉,タルク粉,板状カオリン,硫酸バリウムフレーク等の難水溶性酸化物のフレークが好適である。
【0024】
鱗片状粉末は、塗膜に分散した状態で基材・Al−Si合金めっき鋼板の面内方向と平行に配位し、Si−CH3結合の加熱分解が進行している過程で塗膜密着性,耐水性等の物性を改善する。物性改善効果を発現させる上で、鱗片状粉末の平均粒度を0.5〜50μm,樹脂固形分に対する配合量を5〜100質量部に設定することが好ましい。5質量部未満の配合量では鱗片状粉末の添加効果が不十分であり、100質量部を超える配合量では加工密着性が低下する傾向がみられる。鱗片状粉末は各種の焼成顔料,防錆顔料,金属粉等と併用添加でき、併用添加する場合には合計配合量を200質量部以下に調整することが好ましい。
【0025】
鱗片状粉末の添加効果は、配合量の他に鱗片状粉末の形状によっても異なり、0.5μm以上の平均粒径で顕著になる。しかし、50μmを超える平均粒径では、加工密着性が低下する傾向にある。鱗片状粉末の平均粒径は、より好ましくは1〜30μmの範囲にある。シロキサン結合のネットワーク構造を補強する上では、厚みが平均粒径の1/5以下の鱗片状粉末を塗膜に分散させ、下地表面と平行な方向に関する鱗片状粉末の配向性を高めることが好ましい。厚みが平均粒径の1/5を超える鱗片状粉末では、下地表面に交叉する方向に配位する鱗片状粉末の分散状態が避けられず、また鱗片状粉末単位重量当りのシリコーン樹脂との接触面積が小さくなることから鱗片状粉末の添加効果が十分に発現しない。
【0026】
樹脂塗料には、意匠性,耐食性を改善し、触媒機能等の各種機能を付与するために着色顔料,体質顔料,メタリック顔料,触媒,防錆顔料,金属粉等、各種添加剤が必要に応じて配合される。着色顔料には、Mn,Fe,Cr,Cu,Ti等の酸化物や複合酸化物,グラファイト,カーボンブラック等がある。防錆顔料には、従来のクロム系の他に、環境を考慮したモリブデン酸カルシウム,リンモリブデン酸カルシウム,リンモリブデン酸アルミニウム等の非クロム系も使用される。触媒にはTiO2を始めとする光触媒、金属粉にはNi,Co,Cu等がある。
【0027】
【実施例】
板厚0.4mmの極低炭素鋼板を溶融めっきし、めっき付着量40g/mでSi:6〜11質量%のAl−Si合金めっき層を形成した。このAl−Si合金めっき鋼板を原板に使用し、バルブメタルの化合物を種々の比率で含む化成処理液を塗布した後、水洗せずにオーブンに装入し、最高到達板温150℃で乾燥することにより、バルブメタルの酸化物及び水酸化物を主成分とする化成処理皮膜を形成した。
化成処理皮膜形成後、直ちに樹脂塗料をバーコート法で塗布し、最高到達板温230℃で加熱焼成することにより、乾燥膜厚6μmの塗膜を形成した。樹脂塗料には、一般式(CH0.95SiO1.05(OH)0.95のメチルシリコーン樹脂をベースとし、樹脂の合計重量100質量部に対し黒色顔料(MnCuCrO焼成顔料):100質量部,各種鱗片状粉末:20質量部を配合した塗料を使用した。
原板のAl−Si合金めっき層,化成処理液の組成,樹脂塗料に配合した鱗片状粉末を表1に示す。
【0028】
Figure 0004055942
【0029】
得られた塗装鋼板から試験片を切り出し、加工試験,腐食試験に供した。
加工試験では、試験片を180度折曲げ加工(3〜6t)し、加工部に粘着テープを貼り付けた後で引き剥がすテープ剥離試験によって塗膜の剥離状況を調査した。剥離が検出されない塗膜を◎,僅かに剥離が検出された塗膜を○,下地鋼から剥離した塗膜を×として加工密着性を評価した。
【0030】
腐食試験では、未加熱の試験片の他に300℃×10時間,350℃×10時間,400℃×1時間,500℃×100時間の加熱を施した試験片を用意した。JIS Z2371に準拠した塩水噴霧を100時間継続した後、テープ剥離試験で各試験片の塗膜密着性(二次密着性)を調査した。剥離が検出されなかった塗膜を◎,点状の剥離が一部に生じた塗膜を○,点状の剥離が著しく生じた塗膜を△,全面剥離した塗膜を×として二次密着性を評価した。
【0031】
表2の調査結果にみられるように、Al−Si合金めっき鋼板を塗装原板とし、化成処理皮膜を介して鱗片状粉末分散塗膜を設けた本発明例No.1〜8は、耐熱性,加工密着性,耐食性の何れにも優れていた。加熱された後でも良好な耐食性が維持されており、加熱中に異臭ガスも発生しなかった。
他方、鱗片状粉末無添加の塗膜を形成した塗装鋼板No.10は、300〜400℃の温度域に加熱されたときの耐食性に劣っていた。化成処理皮膜を設けることなく樹脂塗膜を直接形成した塗装鋼板No.9は、耐熱性,加工性の何れにも劣っていた。タンニン酸処理後に樹脂塗膜を形成した塗装鋼板No.11は、基材に対する塗膜の密着性が不足し、加工後の塗膜に剥離が生じた。
【0032】
Figure 0004055942
【0033】
更に、未加熱,300℃×10時間加熱,350℃×10時間加熱,400℃×1時間加熱,500℃×100時間加熱後の各試験片を食品汚染試験に供した。食品汚染試験では、各種調味料1gを試験片に滴下し、試験片を水平に維持したままで60℃,90%RHの恒温恒湿槽に装入した。恒温恒湿槽で8時間保持した後、室温に16時間放置した。調味料滴下→高温高湿→室温放置を1サイクルとし、3サイクル繰り返した後で試験片をテープ剥離試験にかけ、塗膜の密着性を調査した。剥離しなかった塗膜を◎,点状の剥離が一部に生じた塗膜を○,点状の剥離が著しく進行した塗膜を△,全面剥離した塗膜を×とし、各種調味料に対する耐食品汚染性を評価した。
【0034】
表3の結果にみられるように、本発明例の塗装鋼板No.1〜8は、何れの調味料に対しても汚染されることなく、美麗な表面及び塗膜性状を維持していた。他方、比較例の塗装鋼板No.9〜11は調味料による塗膜の劣化が激しく、加熱後の試験片から大半の塗膜が全面剥離していた。この対比から明らかなように、基材,化成処理皮膜,樹脂塗膜を適正に組み合わせることによって、300〜400℃の中間温度域においても十分な特性を維持し、加熱調理器具等に好適な素材として使用できることが判る。
【0035】
Figure 0004055942
【0036】
【発明の効果】
以上に説明したように、基材としてのAl−Si合金めっき鋼板,バルブメタルの酸化物,水酸化物を主成分とする化成処理皮膜,メチルシリコーン樹脂に鱗片状粉末を配合した樹脂塗料から成膜された塗膜を組み合わせることにより、300〜400℃の中間温度域においても優れた耐熱性を呈し、加熱後にも十分な耐食性,耐食品汚染性を維持する耐熱プレコート鋼板が得られる。この耐熱プレコート鋼板は、予備加熱や後加熱を必要とすることなく所定形状に加工したまま各種機器に組み込むことができ、使用時に異臭や煙の発生がないため、加熱調理器具,暖房機器,空調機器,自動車排ガス流路部材等の素材として重宝される。

Claims (2)

  1. Al−Si合金めっき鋼板を基材とし、バルブメタルの酸化物及び水酸化物を主体とする化成処理皮膜を介し、一般式(CHSiO(4−a−b)/2(OH)〔ただし、a=0.5〜1.5,b=0.5〜1.05〕で表されるメチルシリコーン樹脂に鱗片状粉末を配合した塗料から形成された塗膜が片面又は両面に設けられていることを特徴とする加工性,耐食性に優れた耐熱プレコート鋼板であって、該鱗片状粉末は、アルミフレーク,アルミナフレーク,ステンレス鋼フレーク,ガラスフレーク,マイカ粉,タルク粉,板状カオリン,硫酸バリウムフレークから選ばれた1種又は2種以上であり、その平均粒径が12〜50μmでかつアスペクト比が11以上であり、該バルブメタルがTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wから選ばれた1種又は2種以上である、該耐熱プレコート鋼板。
  2. めっき層全体としてSi含有量が5〜13質量%,表層のSi含有量が7〜80質量%のAl−Si合金めっき層が下地鋼板の表面に形成されている請求項1記載の耐熱プレコート鋼板。
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