JP4027848B2 - 耐食性に優れた塗装ステンレス鋼板 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、環境に有害なCr成分が化成処理皮膜,樹脂塗膜の何れにも含まれておらず、優れた耐食性を呈する塗装ステンレス鋼板に関する。
【0002】
【従来技術及び問題点】
耐食性の良好な鋼材としてステンレス鋼板が多用されているが、環境悪化に伴い鋼板表面が発錆し外観に悪影響を及ぼす場合が散見される。また、ステンレス鋼特有の孔食が進行し、鋼材本来の機能が損なわれることもある。
発錆を防止するため、ステンレス鋼をクロメート処理することがあるが、Crイオンを含む排液の処理に多大な負担がかかる。そこで、チタン系,ジルコニウム系,モリブデン系,リン酸塩系等の薬液を使用したCrフリーの化成処理方法が検討されている。
モリブデン系では、モリブデン酸のマグネシウム又はカルシウム塩を含む水溶液に鋼材を浸漬処理して防錆皮膜を形成する方法(特公昭51−2419号公報),6価モリブデン酸化合物を部分還元し、6価モリブデン/全モリブデンの比を0.2〜0.8に調整した処理液を鋼材表面に塗布する方法(特開平6−146003号公報)等がある。チタン系では、硫酸チタン水溶液及び燐酸を含む処理液を鋼板に塗布し、加熱乾燥することにより、耐食性に優れたチタン化合物含有皮膜を形成している(特開平11−61431号公報)。
【0003】
クロメート皮膜に代わる化成処理皮膜として提案されているチタン系,ジルコニウム系,リン酸塩系等の皮膜では、クロメート皮膜にみられるような優れた自己修復作用が得られていない。たとえば、チタン系皮膜は、クロメート皮膜と同様にバリア作用のある酸化物や水酸化物からなる連続皮膜として形成されるが、クロメート皮膜と異なり難溶性であることから自己修復作用を呈さない。そのため、化成処理時や成形加工等の際に生じた皮膜欠陥部を起点とする腐食の抑制には有効でない。他のCrフリー皮膜も、チタン系皮膜と同様に自己修復作用が弱く、腐食抑制効果が不充分である。
本出願人は、クロメート皮膜と同様な自己修復作用のある化成処理皮膜について種々調査・検討した結果、バルブメタルの酸化物又は水酸化物とフッ化物とを共存させた化成処理皮膜が有効であることを紹介した(特開2002−194558号公報)。この化成処理皮膜は、環境遮断能をバルブメタルの酸化物又は水酸化物で発現させ、可溶性のフッ化物によって自己修復作用を付与している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
新しく提案した化成処理皮膜の物性について、本発明者等は種々の観点から調査した。その結果、この化成処理皮膜は、クロメート皮膜に匹敵する塗料密着性を呈することが判った。優れた塗料密着性を活用し、特定の樹脂塗膜と組み合わせるとき、耐食性が格段に良好な塗装ステンレス鋼板が得られることが予想される。
本発明は、このような観点から案出されたものであり、先願で提案した化成処理皮膜とステンレス鋼本来の優れた耐食性を組み合わせ、更に樹脂皮膜を設けることにより、従来にない耐食性が得られ、長期間にわたって美麗な外観を維持する塗装ステンレス鋼板を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の塗装ステンレス鋼板は、ステンレス鋼を基材とし、酸化物が高い絶縁抵抗を示すバルブメタルの酸化物又は水酸化物及びフッ化物が共存する化成処理皮膜を介して樹脂塗膜が形成されていることを特徴とする。
バルブメタルには、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wから選ばれた1種又は2種以上が使用される。化成処理皮膜は、濃度比F/O(原子比率)1/100以上でO及びFを含むことが好ましい。化成処理皮膜は、更に可溶性又は不溶性金属リン酸塩又は複合リン酸塩を含むことができる。
【0006】
化成処理皮膜上に形成される樹脂塗膜には、Caイオンをイオン交換で結合させた多孔質シリカ粒子(以下、「変性シリカ」という)を分散させている。変性シリカは、下地の化成処理皮膜と相俟って従来のCr系防錆顔料を凌駕する腐食防止能を呈する。耐食性は、樹脂塗膜にポリリン酸塩を含ませることにより更に向上する。好ましくは、変性シリカ:ポリリン酸塩の質量比が60:40〜5:95で、樹脂成分100質量部に対して2〜50質量部の変性シリカを樹脂塗膜に分散させる。
【0007】
【実施の形態】
塗装原板には、鋼種に特段の制約がなく、フェライト系,オーステナイト系,二相系等、各種ステンレス鋼が使用される。化成処理に先立ってアルカリ脱脂,洗浄,水洗,Ni置換型表面調整等が必要に応じて施される。
化成処理皮膜は、塗布型又は反応型化成処理液をステンレス鋼板に塗布することにより形成される。反応型化成処理では処理液の安定性を維持する上からpHを若干低く調整する。以下の説明では、バルブメタルとしてTiを例に採っているが、他のZr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wのバルブメタルを使用する場合も同様である。
【0008】
化成処理液は、Tiソースとして可溶性のハロゲン化物や酸素酸塩を含む。Tiのフッ化物はTiソース及びFソースとしても有効であるが、(NH4)F等の可溶性フッ化物をFソースとして化成処理液に別途添加する場合もある。フッ化物を含む化成処理液でステンレス鋼板の表面を処理すると、フッ素イオンによるエッチング効果で鋼板表面が活性化し、バルブメタルとの反応が促進され皮膜の密着性が向上する。バルブメタルは、酸素を介して鋼板表面に結合するものと推察される。
具体的なTiソースとしては、KnTiF6(K:アルカリ金属又はアルカリ土類金属,n:1又は2),K2[TiO(COO)2],(NH4)2TiF6,TiCl4,TiOSO4,Ti(SO4)2,Ti(OH)4等がある。これらTiソースは、化成処理液を塗布した後で乾燥・焼付けするときに所定組成の酸化物又は水酸化物とフッ化物からなる化成処理皮膜が形成されるように各成分の配合比率が選定される。
【0009】
Tiソースを化成処理液中にイオンとして安定的に維持する上で、キレート作用のある有機酸を添加することが好ましい。有機酸を添加する場合、金属イオンをキレート化して化成処理液を安定させることから、有機酸/金属イオンのモル比が0.02以上となる添加量に定められる。有機酸としては、酒石酸,タンニン酸,クエン酸,蓚酸,マロン酸,乳酸,酢酸等が挙げられる。なかでも、酒石酸等のオキシカルボン酸やタンニン酸等の多価フェノール類は、処理液を安定化させると共に、フッ化物の自己修復作用を補完する作用も呈し、塗膜密着性の向上にも有効である。
【0010】
可溶性又は難溶性の金属リン酸塩又は複合リン酸塩を化成処理皮膜に含ませるため、各種金属のオルソリン酸塩やポリリン酸塩を添加してもよい。
可溶性の金属リン酸塩又は複合リン酸塩は、化成処理皮膜から溶出して皮膜欠陥部に溶出し、下地鋼のZn,Al等と反応して不溶性リン酸塩を析出することによって、チタンフッ化物の自己修復作用を補完する。また、可溶性リン酸塩が解離する際に雰囲気が若干酸性化するため、チタンフッ化物の加水分解、ひいては難溶性チタン酸化物又は水酸化物の生成が促進される。可溶性リン酸塩又は複合リン酸塩を生成する金属にはアルカリ金属,アルカリ土類金属,Mn等があり、各種金属リン酸塩又は各種金属塩と燐酸,ポリ燐酸,リン酸塩として化成処理液に添加される。
難溶性の金属リン酸塩又は複合リン酸塩は、化成処理皮膜に分散し、皮膜欠陥を解消すると共に皮膜強度を向上させる。難溶性リン酸塩又は複合リン酸塩を形成する金属にはAl,Ti,Zr,Hf,Zn等があり、各種金属リン酸塩又は各種金属塩と燐酸,ポリ燐酸,リン酸塩として化成処理液に添加される。
【0011】
化成処理液には、潤滑性の向上に有効なワックスを化成処理皮膜に含ませるため、フッ素系,ポリエチレン系,スチレン系等の有機ワックスやシリカ,二硫化モリブデン,タルク等の無機質潤滑剤等を添加することもできる。低融点の有機ワックスは、皮膜乾燥時に表面にブリードし、潤滑性を発現すると考えられる。高融点有機ワックスや無機系潤滑剤は、皮膜中に分散状態で存在するが,処理皮膜の最表層では島状分布で皮膜表面に露出することによって潤滑性が発現するものと考えられる。
更に、タンニン酸,澱粉,コーンスターチ,ポリビニルアルコール,アミノメチル化ポリビニルフェノール等を添加しても良い。これら添加成分は、化成処理皮膜に可撓性を付与し、加工部における塗膜密着性を向上させる。また、塗膜との密着性を向上させるためにSiO2を添加しても良い。
【0012】
調製された化成処理液をロールコート法,スピンコート法,スプレー法等で化成処理用原板に塗布し、水洗することなく乾燥することによって、耐食性に優れた化成処理皮膜がステンレス鋼板の表面に形成される。化成処理液の塗布量は、十分な耐食性を確保するため1mg/m2以上のバルブメタル付着量となるように調整することが好ましい。なお、化成処理液の塗布に先立って、酸洗,Ni析出,Co析出等の表面調整処理を原板に適宜施しても良い。
形成された化成処理皮膜を蛍光X線,ESCA等で元素分析すると、化成処理皮膜に含まれているO及びF濃度が測定される。測定値から算出した濃度比F/O(原子比率)と耐食性との関係を調査したところ、濃度比F/O(原子比率)1/100以上で皮膜欠陥部を起点とする腐食の発生が大幅に減少した。これは、自己修復作用のあるチタンフッ化物が十分な量で化成処理皮膜中に含まれていることによるものと推察される。
【0013】
化成処理皮膜は、常温で乾燥することもできるが、連続操業を考慮すると50℃以上に保持して乾燥時間を短縮することが好ましい。ただし、200℃を超える乾燥温度では、化成処理被膜に含まれている有機成分が熱分解し、有機成分で付与された特性が損なわれることがある。
化成処理皮膜を形成した後、更に樹脂塗料を塗布・焼付けすることにより樹脂塗膜を形成する。塗膜のベース樹脂は塗装ステンレス鋼板の用途に応じて適宜選択されるが、樹脂塗膜によって加工時潤滑性が向上するため塗装ステンレス鋼板の加工性が改善される。また、導電性に優れた樹脂塗膜を形成すると、塗装ステンレス鋼板の溶接性も向上する。
【0014】
樹脂塗料としては、ウレタン系樹脂,エポキシ樹脂,ポリエチレン、ポリプロピレン,エチレン−アクリル酸共重合体等のオレフィン系樹脂,ポリスチレン等のスチレン系樹脂,ポリエステル,或いはこれらの共重合物又は変性物,アクリル系樹脂等をベースとした塗料が使用される。
基材・ステンレス鋼に耐食性が優れた化成処理皮膜を形成しているので、樹脂塗料に防錆顔料を添加しなくても長期にわたって美麗な外観を維持する塗装ステンレス鋼板が得られる。しかし、本発明は樹脂塗料への防錆顔料添加を排除するものではなく、防錆剤を樹脂塗膜に分散させるとき更なる耐食性の向上が図られる。
防錆顔料としては、環境負荷の大きなCr系防錆顔料に代えて変性シリカを使用し、必要に応じてポリリン酸塩を使用する。
変性シリカは、イオン交換によってCaイオンを結合させた多孔質シリカ粒子であり、Hイオン等の腐食性イオンをCaイオンで捕捉することにより腐食抑制能を発現する。変性シリカの腐食抑制能は、樹脂成分100質量部に2〜50質量部の割合で変性シリカを配合するとき顕著になる。
【0015】
変性シリカに加えてポリリン酸塩を添加すると、樹脂塗膜中へのCaイオンの溶出が抑制され、変性シリカの腐食抑制能が長期間にわたって維持される。使用可能なポリリン酸塩には、ピロリン酸アルミニウム,メタリン酸アルミニウム,トリポリリン酸二水素アルミニウム等がある。ポリリン酸塩は、シランカップリング剤やシリコーンオイル等の疎水性皮膜と異なり、シリカ粒子の表面にキレート結合のようなイオン結合を形成しCaイオンの溶出を抑制するため、変性シリカの腐食抑制能が損なわれない。Caイオンの溶出抑制には、変性シリカ/ポリリン酸塩の質量比を60/40〜5/95の範囲に維持することが好ましい。
【0016】
樹脂塗料は、好ましくは膜厚0.1〜20μmの樹脂塗膜が形成される割合で化成処理されたステンレス鋼板に塗布される。膜厚0.1μm以上でピンホール,未塗装部等の欠陥がない均一な樹脂塗膜が形成される。しかし、20μmを超える厚膜では、塗装ステンレス鋼板を成形加工する際樹脂塗膜に亀裂,剥離等が生じやすくなる。
変性シリカ分散樹脂塗膜の上に、更に一層又は二層以上の塗膜を設けることができる。この塗膜は、変性シリカが分散した塗膜,変性シリカのない塗膜の何れでも良い。具体的には、変性シリカを分散させた膜厚5μmの樹脂塗膜の上に、高分子ポリエステル塗料を230℃×40秒で焼き付けた膜厚15μmの上塗り塗膜がある。
【0017】
【実施例1】
Tiソース及びFソースを配合し、必要に応じて各種金属化合物,有機酸,リン酸塩を更に添加し、表1の組成をもつ化成処理液を調合した。
【0018】
【0019】
化成処理用原板として、板厚0.5mmのオーステナイト系(SUS304),フェライト系(SUS430)ステンレス鋼板を使用した。各ステンレス鋼板を脱脂,酸洗することにより化成処理用原板を用意した。
表1の化成処理液をステンレス鋼板に塗布し、水洗することなく電気オーブンに装入し、板温50〜200℃で加熱乾燥した。比較材として、市販のクロメート処理液(ZM-3387:日本パーカライジング株式会社製)をステンレス鋼板に塗布し、同様に水洗せずに板温150℃で加熱乾燥した。
ステンレス鋼板の表面に形成された化成処理皮膜を分析したところ、表2に示す濃度で各成分が含まれていた。
【0020】
【0021】
化成処理された各ステンレス鋼板から試験片を切り出し、腐食試験に供した。平坦部腐食試験では、試験片の端面をシールし、JIS Z2371に準拠して35℃の5%NaCl水溶液を噴霧した。塩水噴霧を500,1000及び2000時間継続した後、試験片表面における孔食の発生状況を調査した。孔食深さを測定し、最大深さ0.5mmを超える孔食が成長した試験片を×,孔食の最大深さが0.1〜0.5mmにある試験片を△,最大深さが0.1mm以下に抑えられている試験片を○として平坦部の耐食性を評価した。
加工部腐食試験では、試験片を180度曲げ加工した後、同様な塩水噴霧を500,1000時間継続した。そして、加工部表面に発生した孔食の最大深さから平坦部腐食試験と同様に加工部の耐食性を評価した。
【0022】
表3の調査結果にみられるように、本発明に従って形成された試験番号1〜6の化成処理皮膜は、平坦部及び加工部共に従来のクロメート皮膜を凌駕する優れた耐食性を呈することが判る。リン酸塩を含まない試験番号7であっても、試験時間が短い場合に比較的良好な耐食性が得られた。
他方、可溶性のチタンフッ化物を含まない試験番号8(比較例)では、加工部に生じた皮膜欠陥部を起点とする腐食が観察された。チタン化合物を含まない試験番号9(比較例)では、平坦部,加工部共に耐食性が低下していた。
【0023】
【0024】
耐食性の優れた化成処理皮膜が形成された試験番号1のステンレス鋼板を塗装原板として樹脂塗膜を形成した。樹脂塗料には、変性シリカ及びポリリン酸塩を種々の割合で配合したエポキシ変性高分子ポリエステル系樹脂塗料(表4)を使用した。塗装原板に塗布した樹脂塗料を最高到達板温215℃で40秒間焼付けることにより、膜厚10μmの樹脂塗膜を形成した。
【0025】
【0026】
得られた塗装ステンレス鋼板から試験片を切り出し、以下の試験で塗膜性能を調査した。
〔沸騰水試験〕
試験片を沸騰水に2時間浸漬した後、沸騰水から引き上げた試験片の塗膜を観察し、フクレ又は艶引けの有無により耐沸騰水性を評価した。同じく沸騰水から引き上げられた試験片を0t曲げ加工し、曲げ部にテープを一旦貼り付けて引き剥がすテーピング試験後に塗膜を観察し、塗膜剥離の有無によって加工性を評価した。
【0027】
〔腐食・湿潤試験〕
下地鋼に達するクロスカットを試験片に入れた後、JIS Z2371に準拠した240時間の塩水噴霧試験及び50℃,98%RHの雰囲気に240時間放置する試験に供した。試験後に試験片の平坦部を観察し、異常発生の有無によって平坦部耐食性を評価した。また、下バリ端面最大フクレ幅及びクロスカット片側最大フクレ幅を測定し、最大フクレ幅によって耐食性及び耐湿性を評価した。
【0028】
何れの試験片でも、沸騰水浸漬後の塗膜にフクレや艶引けが検出されず、沸騰水浸漬後の0t曲げでも塗膜剥離が生じなかった。腐食試験や湿潤試験でも塗膜に異常が観察されず、最大フクレ幅も1mm以下と極僅かであった。
また、変性シリカ無添加のエポキシ変性高分子ポリエステル系樹脂塗料を用いて樹脂塗膜を形成した塗装ステンレス鋼板を同様に試験したところ、この場合にも沸騰水浸漬後の塗膜にフクレや艶引けが検出されず、沸騰水浸漬後の0t曲げでも塗膜剥離が生じなかった。これは、基材・ステンレス鋼板,化成処理皮膜の優れた耐食性が活かされ、防錆顔料無添加の樹脂塗膜であっても十分に要求特性を満足することを意味する。
以上の結果から明らかなように、バルブメタルの酸化物又は水酸化物とフッ化物が共存する化成処理皮膜を介してステンレス鋼板表面に樹脂塗膜を形成するとき、環境に悪影響を及ぼすクロメート皮膜やCr系防錆顔料を必要とすることなく、耐食性,加工性に優れた塗装ステンレス鋼板が得られることが確認された。
【0029】
【実施例2】
表5の化成処理液を使用し、実施例1と同様にステンレス鋼板を化成処理した。ステンレス鋼板表面に形成された化成処理皮膜を分析したところ、表6に示す濃度で各成分が含まれていた。
【0030】
【0031】
【0032】
化成処理されたステンレス鋼板に実施例1と同じ樹脂塗料(表4)を塗布・焼付けし、膜厚10μmの樹脂塗膜を形成した。得られた塗装ステンレス鋼板から試験片を切り出し、実施例1と同様に耐食試験したところ、何れも平坦部,加工部共に優れた耐食性を呈した。
【0033】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の塗装ステンレス鋼板は、耐食性に優れたCrフリーの化成処理皮膜を介して樹脂塗膜を設けている。この塗装ステンレス鋼板は、環境に悪影響を及ぼすクロメート皮膜やCr系防錆顔料を必要とすることなく、耐食性,加工性,塗膜密着性にも優れているので、外装材,内装材,表装材,機械構造用部材等として広範な分野で使用される。
Claims (5)
- ステンレス鋼板を基材とし、酸化物が高い絶縁抵抗を示すバルブメタルの酸化物又は水酸化物及びフッ化物が共存する化成処理皮膜を介し樹脂塗膜が形成されている耐食性に優れた塗装ステンレス鋼板であって、該樹脂塗膜がCaイオンをイオン交換で結合させた多孔質シリカ粒子を防錆顔料として含むことを特徴とする該塗装ステンレス鋼板。
- バルブメタルがTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wから選ばれた1種又は2種以上である請求項1記載の塗装ステンレス鋼板。
- 化成処理皮膜が更に可溶性又は不溶性金属リン酸塩又は複合リン酸塩を含む請求項1記載の塗装ステンレス鋼板。
- 樹脂塗膜が更にポリリン酸塩を含む請求項1に記載の塗装ステンレス鋼板。
- 多孔質シリカ粒子:ポリリン酸塩の質量比が60:40〜5:95で、樹脂成分100質量部に対して2〜50質量部の多孔質シリカ粒子が樹脂塗膜に配合されている請求項4記載の塗装ステンレス鋼板。
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