JP3886913B2 - 耐食性に優れた化成処理鋼板 - Google Patents

耐食性に優れた化成処理鋼板 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、耐食性に優れた皮膜が形成された化成処理鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
耐食性の良好な鋼材として亜鉛めっき,亜鉛合金めっき等を施した亜鉛めっき鋼板が多用されているが、湿潤雰囲気,排ガス雰囲気,海塩粒子飛散雰囲気等に亜鉛めっき鋼板を長期間放置すると、鋼板表面に白錆が発生し外観が劣化する。
白錆の発生は亜鉛めっき鋼板をクロメート処理することにより防止できるが、Crイオンを含む排液の処理に多大な負担がかかる。そこで、チタン系,ジルコニウム系,モリブデン系,リン酸塩系等の薬液を使用したCrフリーの化成処理方法が検討されている。
【0003】
たとえば,モリブデン系では、モリブデン酸のマグネシウム又はカルシウム塩を含む水溶液に亜鉛めっき鋼材を浸漬処理して防錆皮膜を形成する方法(特公昭51−2419号公報),6価モリブデン酸化合物を部分還元し、6価モリブデン/全モリブデンの比を0.2〜0.8に調整した処理液を鋼材表面に塗布する方法(特開平6−146003号公報)等がある。チタン系では、硫酸チタン水溶液及び燐酸を含む処理液を各種めっき鋼板に塗布し、加熱乾燥することにより、耐食性に優れたチタン化合物含有皮膜を形成している(特開平11−61431号公報)。
【0004】
ところが、クロム系皮膜に代わるものとして提案されているチタン系,ジルコニウム系,リン酸塩系等の皮膜では、クロム系皮膜と同様にバリア作用のある酸化物や水酸化物からなる連続皮膜として形成され、耐食性を高めているが、クロム系皮膜と異なり難溶性であることから自己修復作用を呈さない。そのため、化成処理時や成形加工等の際に生じた皮膜欠陥部を起点とする腐食の抑制には有効でない。他のCrフリー皮膜も、チタン系皮膜と同様に自己修復作用が弱く、腐食抑制効果が不充分である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者等は、亜鉛めっき鋼板又は亜鉛合金めっき鋼板を基材とし、その表面に、酸化物が高い絶縁抵抗を示すTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W等のバルブメタルの酸化物又は水酸化物及びフッ化物が共存する化成処理皮膜を形成することにより、耐食性に優れた化成処理鋼板が得られることを、特許第3302684号公報で紹介した。
バルブメタルのフッ化物は雰囲気中の水分に溶け出した後、キズ等の皮膜欠陥部から露出している下地鋼の表面に難溶性の酸化物又は水酸化物となって再析出し、皮膜欠陥部を埋めると言う自己修復作用を呈する。そして、上記公報で紹介された技術により、キズ等の小さな欠陥が導入された化成処理皮膜であっても、共存させたフッ化物の自己修復作用によって、優れた耐食性が維持できている。しかしながら、キズ等の欠陥が大きくなると、フッ化物の自己修復作用によっても再析出物は皮膜欠陥部の下地鋼表面を覆いきれず、下地鋼に対してZn及び化成処理皮膜の防食が早期に働き、腐食が進行することもある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、バルブメタルの酸化物又は水酸化物及びフッ化物が共存した化成処理皮膜と下地鋼との密着性を向上させて腐食因子の透過を防止するとともに、皮膜欠陥部近傍のpH低下を抑制することにより、耐食性が格段に改善された化成処理鋼板を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の耐食性に優れた化成処理鋼板は、その目的を達成するため、亜鉛めっき鋼板又は亜鉛合金めっき鋼板を基材とし、その表面上に、第1層として表層にOH基を有するシリカ又はアルミナの皮膜が、第2層としてバルブメタルの酸化物又は水酸化物及びフッ化物が共存する化成処理皮膜が形成されていることを特徴とする。第1層としてのシリカまたはアルミナの皮膜の付着量がSi又はAlとして5〜300mg/m2であり、皮膜中のシリカ又はアルミナの粒子径は200nm以下であることが好ましい。バルブメタルとしては、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W等がある。化成処理皮膜に含まれるO及びFの濃度比F/Oが原子比率で1/100以上となるようにフッ化物を含ませるとき、フッ化物起因の自己修復作用が顕著になる。
化成処理皮膜は、更に可溶性又は不溶性の金属リン酸塩又は複合リン酸塩を含むことができる。可溶性の金属リン酸塩又は複合リン酸塩としては、アルカリ金属,アルカリ土類金属,Mn等の塩がある。不溶性の金属リン酸塩又は複合リン酸塩としては、Al,Ti,Zr,Hf,Zn等の塩がある。
【0008】
【作用】
本発明の化成処理鋼板は、亜鉛めっき鋼板又は亜鉛合金めっき鋼板表面に、シリカ又はアルミナの皮膜を介して、バルブメタルの酸化物又は水酸化物とフッ化物とを共存させた化成処理皮膜が形成されている。バルブメタルは、酸化物が高い絶縁抵抗を示す金属を指し、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wの1種又は2種以上が使用される。バルブメタルの酸化物又は水酸化物からなる皮膜は、電子の移動に対する抵抗体として働き、雰囲気中の水分に含まれている溶存酸素による還元反応(下地鋼との酸化反応)が抑えられる。その結果、下地鋼からの金属成分の溶出(腐食)が防止される。なかでも、Ti,Zr,Hf等のIV族A元素の4価化合物は安定な化合物であり、優れた皮膜を形成することから好適な皮膜成分である。
【0009】
バルブメタルの酸化物又は水酸化物が連続皮膜として鋼板表面に形成されている場合、電子移動に対する抵抗体として有効に作用するが、実際の化成処理皮膜では化成処理時や成形加工時におけるキズ等の皮膜欠陥の発生が避けられない。キズ等の皮膜欠陥部では下地鋼が露出するため、所期の腐食抑制作用が期待できない。そこで、本発明においては、バルブメタルの可溶性フッ化物を共存させることによって化成処理皮膜に自己修復作用を付与している。バルブメタルのフッ化物は、雰囲気中の水分に溶け出した後、皮膜欠陥部から露出している下地鋼の表面に難溶性酸化物又は水酸化物となって再析出し、皮膜欠陥部を埋める自己修復作用を呈することにより、腐食の進行を抑制することができている。
【0010】
ところで、キズ等の皮膜欠陥が大きいと、バルブメタルのフッ化物の自己修復作用による難溶性酸化物又は水酸化物の再析出によっても、上記皮膜欠陥部の下地鋼表面を覆いきれず、下地鋼に対してZn及び化成処理皮膜の防食が早期に働き、めっき層と化成処理皮膜の界面から腐食が進行している。
本発明は、めっき層と化成処理皮膜の間にシリカ又はアルミナの皮膜を介在させることにより、上記腐食の進行を防げたものであるが、その機構について、本発明者等は、次のように2つの作用が機能していると推測した。シリカ皮膜を介在させた場合について説明するが、アルミナ皮膜を形成した場合も同様である。
【0011】
(1)密着性向上による腐食因子の透過抑制作用について
図1に示すように、Zn系めっき層(図中、M)上第1層(図中、I)のシリカはめっき表面のOH基と脱水縮合反応(図中、R)を起こし、また第1層のシリカのOH基と第2層(図中、II)の水酸化物が脱水縮合反応(図中、R)を起こして、互いに吸着し、結果的に各層の密着性が向上している。
また、シリカは一般的にイオン吸着能やイオン交換反応或いは触媒活性等の化学的性質を有している。そこで、Si原子に着目すると、Si原子は通常sp3混成軌道による4配位であるが、適当な電子供与体(配位子)との共存により、空のd軌道に弱く結合した、遷移状態或いは中間体的なd2sp3軌道の6配位を取る性質を有することになる。このため、シリカ中のSi原子がLewis酸(電子受容性)点となり、アニオン等を吸着することになる。第2層の処理膜を形成する化成処理液成分のTiF6 2-,PO4 2-,TiO3 2-,MoO4 2-,VO3-,NbO3-,TaO3-,HfO3 2-,HfF6 2-,WO4 2-,ZrF6 2-等のイオンがSi原子に配位結合するため、第1層と第2層の密着性が向上する。
【0012】
さらに、亜鉛系めっき層を第1層のシリカで覆うことにより、比表面積の増加及びアンカー効果により第2層との密着性が向上する。
さらにまた、第2層の処理膜を形成する化成処理液中に含まれるフッ化物塩中のフッ素が、例えば次に示すような反応により、第1層のシリカ皮膜表面をエッチングし、珪フッ化化合物を形成することにより、第1層と第2層の密着性が向上することになる。
(NH42TiF6→2NH4 ++TiF6 2-
TiF6 2-+H2O→TiOF4 2-+2F-+2H+
SiO2+6F-+4H+→SiF6 2-+2H2
このような機構のもとにめっき鋼板に対する第1層と第2層の密着性が向上し、腐食因子のめっき層と被覆皮膜との界面への透過を防止し、結果的に耐食性低下を抑えることができる。
【0013】
(2)キズ等の皮膜欠陥部近傍のpH低下の抑制作用について
キズ等の皮膜欠陥部近傍における腐食状況をみると、カソード部では、次の▲1▼式にしたがって生じた水酸化物によるpH上昇が、シリカを介在させることにより、次の▲2▼式に示したシリカの溶解によって抑制される。一方アノード部では、次の▲3▼,▲4▼式にしたがって生じた水素イオンが次の▲5▼式に示したシリカの析出により消費されてpHの低下が抑制される。
このようにpHの低下が抑制され、キズ等の皮膜欠陥部近傍の腐食が抑制される。
▲1▼ 1/2O2+H2O+2e-→2OH-
▲2▼ 2OH-+SiO2(S)→SiO3 2-+H2
▲3▼ Zn→Zn2++2e-
▲4▼ Zn2++2H2O→Zn(OH)2+2H+
▲5▼ 2H++SiO3 2-→SiO2↓+H2
【0014】
上記のようなシリカ又はアルミナの皮膜による作用は、それらの付着量をSi又はAlとして5mg/m2以上にすると、キズ等の皮膜欠陥部の耐食性向上効果は顕著に現れる。しかし、それらの付着量が300mg/m2を超えると、加工後の耐皮膜カジリ性が著しく低下する。
また、シリカ又はアルミナの皮膜中のシリカ又はアルミナの粒子径が200nmを超えると、加工時の耐皮膜カジリ性が著しく低下する。
【0015】
【実施の形態】
本発明の化成処理皮膜が形成される原板としては、電気めっき法,溶融めっき法,蒸着めっき法で製造された亜鉛又は亜鉛合金めっき鋼板が使用される。亜鉛合金めっきには、Zn−Al,Zn−Mg,Zn−Ni,Zn−Al−Mg等がある。また、溶融めっきした後で合金化処理を施した合金化亜鉛めっき鋼板も本発明の原板として使用できる。
【0016】
シリカ皮膜の形成には、シリカゾルや乾式シリカ等、SiO2粒子を分散させた処理液が使用される。SiO2粒子の形態には制限はない。好ましくは一次粒子径が200nm以下のSiO2粒子を分散させた処理液をロールコーター法,スプレーリンガー絞り法等で、乾燥後の付着量がSiとして5〜300mg/m2になるように塗布することが好ましい。塗布後、例えば80℃以下の温風乾燥を行うことにより、原板に固着したシリカ皮膜が形成される。
アルミナ皮膜の形成も全く同様である。
【0017】
シリカ又はアルミナの皮膜形成後の化成処理は、塗布型又は反応型の何れであってもよいが、反応型化成処理では処理液の安定性を維持する上からpHを若干低く調整する。以下の説明では、バルブメタルとしてTiを例に採っているが、Ti以外のバルブメタルを使用する場合も同様である。
化成処理液は、Tiソースとして可溶性のハロゲン化物や酸素酸塩を含む。Tiのフッ化物はTiソース及びFソースとしても有効であるが、(NH4)F等の可溶性フッ化物をFソースとして化成処理液に別途添加する場合もある。具体的なTiソースとしては、KnTiF6(K:アルカリ金属又はアルカリ土類金属,n:1又は2),K2[TiO(COO)2],(NH4)2TiF6,TiCl4,TiOSO4,Ti(SO4)2,Ti(OH)4等がある。これらTiソースは、化成処理液を塗布した後で乾燥・焼付けするときに所定組成の酸化物又は水酸化物とフッ化物からなる化成処理皮膜が形成されるように各成分の配合比率が選定される。
【0018】
Tiソースを化成処理液中にイオンとして安定的に維持する上で、キレート作用のある有機酸を添加することが好ましい。有機酸を添加する場合、金属イオンをキレート化して化成処理液を安定させることから、有機酸/金属イオンのモル比が0.02以上となる添加量に定められる。有機酸としては、酒石酸,タンニン酸,クエン酸,蓚酸,マロン酸,乳酸,酢酸等が挙げられる。なかでも、酒石酸等のオキシカルボン酸やタンニン酸等の多価フェノール類は、処理液を安定化させると共に、フッ化物の自己修復作用を補完する作用も呈し、塗膜密着性の向上にも有効である。
可溶性又は難溶性の金属リン酸塩又は複合リン酸塩を化成処理皮膜に含ませるため、各種金属のオルソリン酸塩やポリリン酸塩を添加してもよい。
【0019】
可溶性の金属リン酸塩又は複合リン酸塩は、化成処理皮膜から溶出して皮膜欠陥部に溶出し、下地鋼のZn,Al等と反応して不溶性リン酸塩を析出することによって、チタンフッ化物の自己修復作用を補完する。また、可溶性リン酸塩が解離する際に雰囲気が若干酸性化するため、チタンフッ化物の加水分解、ひいては難溶性チタン酸化物又は水酸化物の生成が促進される。可溶性リン酸塩又は複合リン酸塩を生成する金属にはアルカリ金属,アルカリ土類金属,Mn等があり、各種金属リン酸塩又は各種金属塩と燐酸,ポリ燐酸,リン酸塩として化成処理液に添加される。
【0020】
不溶性の金属リン酸塩又は複合リン酸塩は、化成処理皮膜に分散し、皮膜欠陥を解消すると共に皮膜強度を向上させる。不溶性リン酸塩又は複合リン酸塩を形成する金属にはAl,Ti,Zr,Hf,Zn等があり、各種金属リン酸塩又は各種金属塩と燐酸,ポリ燐酸,リン酸塩として化成処理液に添加される。
【0021】
亜鉛合金系めっき鋼板のうちAlを含むめっき層が形成されためっき鋼板では黒変色が発生しやすいが、この場合にFe,Co,Niから選ばれた1種又は2種以上の金属塩を皮膜に存在させることにより黒変色を防止できる。また、厳しい加工等によってめっき層に大きなクラックが生じたものでは、フッ化物,リン酸塩の自己修復作用だけでは不充分な場合が生じる。この場合には、Mo,Wの可溶性6価酸素酸塩を皮膜中に多量存在させることにより、6価クロムと同様の作用を発現させてめっき層のクラックを補修し、耐食性を向上させる。
【0022】
化成処理液には、潤滑性の向上に有効なワックスを化成処理皮膜に含ませるため、フッ素系,ポリエチレン系,スチレン系等の有機ワックスやシリカ,二硫化モリブデン,タルク等の無機質潤滑剤等を添加することもできる。低融点の有機ワックスは、皮膜乾燥時に表面にブリードし、潤滑性を発現すると考えられる。高融点有機ワックスや無機系潤滑剤は、皮膜中に分散状態で存在するが,処理皮膜の最表層では島状分布で皮膜表面に露出することによって潤滑性が発現するものと考えられる。
【0023】
調製された化成処理液をロールコート法,スピンコート法,スプレー法等で化成処理用原板に塗布し、水洗することなく乾燥することによって、耐食性に優れた化成処理皮膜がシリカ又はアルミナの皮膜上に形成される。化成処理液の塗布量は、十分な耐食性を確保するため1mg/m2以上のバブルメタル付着量となるように調整することが好ましい。
【0024】
形成された化成処理皮膜を蛍光X線,ESCA等で元素分析すると、化成処理皮膜に含まれているO及びF濃度が測定される。測定値から算出した濃度比F/O(原子比率)と耐食性との関係を調査したところ、濃度比F/O(原子比率)1/100以上で皮膜欠陥部を起点とする腐食の発生が大幅に減少した。これは、自己修復作用のあるチタンフッ化物が十分な量で化成処理皮膜中に含まれていることによるものと推察される。
化成処理皮膜は、常温で乾燥することもできるが、連続操業を考慮すると50℃以上に保持して乾燥時間を短縮することが好ましい。ただし、200℃を超える乾燥温度では、化成処理被膜に含まれている有機成分が熱分解し、有機成分で付与された特性が損なわれることがある。
【0025】
化成処理皮膜を形成した後、更に耐食性に優れた有機皮膜を形成することもできる。この種の皮膜として、たとえばウレタン系樹脂,エポキシ樹脂,ポリエチレン、ポリプロピレン,エチレン−アクリル酸共重合体等のオレフィン系樹脂,ポリスチレン等のスチレン系樹脂,ポリエステル,或いはこれらの共重合物又は変性物,アクリル系樹脂等の樹脂皮膜を膜厚0.1〜5μmで化成処理皮膜の上に設けると、クロメート皮膜を凌駕する高耐食性が得られる。或いは導電性に優れた樹脂皮膜を化成処理皮膜鋼板の上に設けることにより、溶接性を維持したまま、高耐食性や潤滑性が得られる。この種の樹脂皮膜としては、たとえば有機樹脂エマルジョンを静電霧化して塗布する方法(特公平7−115002号公報)で形成できる。
【0026】
【実施例】
化成処理皮膜を形成する原板としては、板厚1.0mm,片面当りめっき付着量20g/m2の電気亜鉛めっき鋼板及び板厚が1.0mmで片面当りめっき付着量50g/m2のZn−6質量%Al−3質量%Mgの合金めっき層が形成された溶融めっき鋼板を使用した。各めっき鋼板を脱脂,酸洗することにより処理用原板を用意した。
第1層のシリカ或いはアルミナ皮膜形成のための処理としてシリカゾルである日産化学株式会社製のST−O,ST−20,ST−N,ST−XL,MP−2040,MP−4540M,ST−UPとアルミナゾルであるアルミナゾル−520を用い、スプレーリンガーロール絞り法で塗装後、60℃の温風を吹き付けて乾燥し、乾燥後のSi或いはAl付着量5〜325mg/m2になるように処理した。
【0027】
第1層の皮膜形成後、その上に第2層としてTiソース及びFソースを配合し、場合によっては各種金属化合物,有機酸,リン酸塩を添加し、表1の組成をもつ化成処理液を調合し、塗布した後、水洗することなく電気オーブンに装入し、板温50〜200℃で加熱乾燥した。
比較材として、市販のクロメート処理液(ZM-3387:日本パーカライジング株式会社製)を亜鉛めっき鋼板に塗布し、同様に水洗せずに板温150℃で加熱乾燥した。
第2層として形成された化成処理皮膜を蛍光X線,ESCA等で元素分析したところ、化成処理皮膜には表2に示す濃度で各成分が含まれていた。
【0028】
Figure 0003886913
【0029】
Figure 0003886913
【0030】
なお表2中、原板の種類として表示したAは電気亜鉛めっき鋼板を、BはZn−6%Al−3%Mg合金めっき鋼板を表している。また、化成処理皮膜中の他の元素としては、化成処理液に添加している金属を含むものであり、原板に含まれているZnや、Zn,Al,Mgは含んでいない。皮膜中の原板元素は、電気亜鉛めっき鋼板では亜鉛:1〜3質量%、Zn−6%Al−3%Mg合金めっき鋼板ではZn:1〜3質量%,Al及びMg:0.1〜0.5質量%である。
【0031】
化成処理された各亜鉛めっき鋼板から試験片を切り出し、平坦部の耐食性及びキズ付き部の腐食性、並びに加工性の評価を行った。
平坦部の耐食性試験では、試験片の端面をシールし、JIS Z2371に準拠して35℃の5%NaCl水溶液を噴霧した。塩水噴霧を所定時間継続した後、試験片表面を観察し、試験片表面に発生している白錆の面積率を測定した。白錆発生面積率が5%以下を◎,5〜10%を○,10〜30%を△,30〜50%を▲,50%以上を×として平坦部の耐食性を評価した。
【0032】
キズ付き部の腐食試験では、カッターナイフでクロスカットを深さ10〜20μmのキズを付けた後、上記と同じ塩水噴霧を所定時間継続した後、試験片表面を観察し、キズ付き部からの最大腐食幅を測定した。腐食幅が1mm以下を◎,1〜3mmを○,3〜5mmを△,5〜10mmを▲,10mm以上を×としてキズ付き部の耐食性を評価した。
【0033】
加工性の一つの指標である皮膜カジリ性試験は、ドロービード試験機で、平板摺動後の試験片のカジリ程度をクロメート材(Cr:52mg/m2)と比較した。金型材質はSKD11を用い、加圧力:1N/mm2,引き抜き距離:100mm,引き抜き速度:100mm/minの条件で平板摺動を行った。
カジリの程度がクロメート材より優れるものを◎,同程度のものを○,若干劣るものを△,劣るものを×として評価した。
上記の評価結果を表3に示す。
【0034】
Figure 0003886913
【0035】
表3の調査結果にみられるように、亜鉛めっき鋼板上にバルブメタルの酸化物又は水酸化物及びフッ化物が共存する化成処理皮膜を形成する際に、シリカ又はアルミナからなる第1層の皮膜を形成・介在させた試験No.1〜11の試料は、比較例として示した第1層を介在させていないものと比較して、キズ付き部の耐食性に優れていることがわかる。特に、第1層として5mg/m2以上の付着量のシリカ又はアルミナの皮膜を形成しておくと、第1層を形成していないものは勿論、従来のクロメート皮膜を形成したものをも凌駕する程の優れた耐食性を呈している。
ただし、第1層を構成するシリカ又はアルミナの粒子径が200nmを超えたり(試験No.8)、皮膜付着量が300mg/m2を超える(試験No.7)と、加工後の耐皮膜カジリ性が低下している。
【0036】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の化成処理鋼板は、シリカ又はアルミナの皮膜を介して、酸化物が高い絶縁抵抗を示すバルブメタルの酸化物又は水酸化物及びフッ化物が共存した化成処理皮膜で覆われている。シリカ又はアルミナの皮膜を介在させることにより、当該皮膜のZn系めっき層に対する密着性、化成処理皮膜に対する密着性のよさを利用して、めっき層と化成処理皮膜の密着性を向上させて腐食因子の鋼基地への浸透を抑制し、またキズ等の皮膜欠陥部近傍のpH低下を抑制することができる。さらには、化成処理皮膜中の可溶性フッ化物の自己修復能を最大限併用して、それらの相乗効果により、めっき層と化成処理皮膜の界面からの腐食の進行を防ぐことができるので、成形加工等で大きなキズ等の皮膜欠陥が発生した化成処理鋼板であっても、優れた耐食性を呈する。しかも、環境に悪影響を及ぼしかねないCrを含まない化成処理皮膜であることから、従来のクロメート処理鋼板に代わる材料として広範な分野で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 皮膜界面での脱水縮合反応による吸着状況を説明する図

Claims (6)

  1. 亜鉛めっき鋼板又は亜鉛合金めっき鋼板を基材とし、その表面上に、第1層として表層にOH基を有するシリカ又はアルミナの皮膜が、第2層としてバルブメタルの酸化物又は水酸化物及びフッ化物が共存する化成処理皮膜が形成されていることを特徴とする耐食性に優れた化成処理鋼板。
  2. 第1層としてのシリカまたはアルミナの皮膜の付着量がSi又はAlとして5〜300mg/m2である請求項1に記載の耐食性に優れた化成処理鋼板。
  3. 第1層中のシリカ又はアルミナの粒子径が200nm以下である請求項1又は2に記載の耐食性に優れた化成処理鋼板。
  4. 第2層の化成処理皮膜を構成するバルブメタルがTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Wから選ばれた1種又は2種以上である請求項1〜3の何れかに記載の化成処理鋼板。
  5. 第2層の化成処理皮膜に含まれるO及びFの濃度比F/Oが原子比率で1/100以上である請求項1〜4の何れかに記載の化成処理鋼板。
  6. 請求項1〜5の何れかに記載の化成処理皮膜が更に可溶性又は不溶性の金属リン酸塩又は複合リン酸塩を含む化成処理鋼板。
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