JP3305702B2 - 燃料タンク用アルミニウム系めっき鋼板 - Google Patents

燃料タンク用アルミニウム系めっき鋼板

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JP3305702B2
JP3305702B2 JP2000338516A JP2000338516A JP3305702B2 JP 3305702 B2 JP3305702 B2 JP 3305702B2 JP 2000338516 A JP2000338516 A JP 2000338516A JP 2000338516 A JP2000338516 A JP 2000338516A JP 3305702 B2 JP3305702 B2 JP 3305702B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、内面耐食性,外面耐食
性及び加工性が要求される自動車用燃料タンクに適した
アルミニウム系めっき鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】耐食性の良好な鋼材としてアルミニウム
系めっき鋼板が多用されているが、湿潤雰囲気,排ガス
雰囲気,海塩粒子飛散雰囲気等にアルミニウム系めっき
鋼板を長期間放置すると、鋼板表面に白錆が発生し外観
が劣化する。白錆の発生はアルミニウム系めっき鋼板を
クロメート処理することにより防止できるが、Crイオ
ンを含む排液の処理に多大な負担がかかる。そこで、チ
タン系,ジルコニウム系,モリブデン系,リン酸塩系等
の薬液を使用したCrフリーの化成処理方法が検討され
ており、アルミニウム材料ではDI缶等への適用を主目
的として多数の提案がある。たとえば、チタン系では、
チタン化合物,燐酸イオン,フッ化物,促進剤を含む水
溶液をアルミニウム含有金属材料に接触させ、水洗・乾
燥することにより化成処理皮膜を形成する方法が特開平
9−20984号公報で紹介されている。他方、自動車
用の燃料タンクでは、長期耐食性を保証するためにアル
ミニウム系めっき鋼板の使用が進められている。しか
し、Crフリーの化成処理が施されたアルミニウム系め
っき鋼板をプレス成形して自動車用燃料タンクを製造す
る場合、カジリ,クラック等の欠陥が化成処理皮膜やめ
っき層に生じやすい。具体的には、自動車用燃料タンク
の製造では、プレス成形したアッパーハーフ1u及びロ
アハーフ1dをシーム溶接することにより燃料タンク本
体1とし、インレットパイプ2,フュエルパイプ3,フ
ュエルリターンパイプ4,サブタンク5,ドレーンプラ
グ6等の各種部材を取り付ける(図1)。アッパーハー
フ1u及びロアハーフ1dの形状にアルミニウム系めっ
き鋼板を成形するプレス加工は伸び,圧縮等が複合され
た複雑な塑性変形を伴う加工である。そのため、従来の
Crフリー化成処理皮膜では潤滑性が不足し,プレス油
を塗布した場合にあっても加工時の塑性変形にアルミニ
ウム系めっき層や化成処理皮膜が追従できず、カジリ,
クラック等の欠陥が発生しやすい。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】欠陥発生個所では、ア
ルミニウム系めっき層及び化成処理皮膜本来の長所が発
現されず、燃料タンクが腐食環境に曝されたとき腐食発
生の起点となり、穴開きに至る腐食が生じることもあ
る。また、アルコール系燃料が使用される燃料タンクで
は、アルミニウム系めっき層の犠牲防食作用を期待でき
ず、プレス成形時に生じた欠陥発生個所で露出している
鋼素地の腐食が進行し、耐久性が低下する。
【0004】クロメート皮膜の上に高分子樹脂粉末を含
む有機樹脂皮膜を形成してアルミニウム系めっき鋼板表
面の潤滑性を改善することにより、カジリ,クラック等
の欠陥発生を抑制できる(特開平8−41651号公
報,特開平8−319550号公報)。有機樹脂皮膜
は、欠陥発生の抑制には有効であるものの、燃料タンク
製造時のシーム溶接やスポット溶接工程で熱分解してヒ
ュームや臭気を発生させ、作業環境を悪化させる。しか
も、下地めっき層の腐食等に起因してアルミニウム系め
っき層に対する有機樹脂皮膜の密着性が低下する。その
結果、脱落した有機樹脂皮膜片が燃料に混入すると、フ
ィルタの目詰り等のトラブルを発生させることにもなり
かねない。この点、脱膜型の有機樹脂皮膜を採用し、プ
レス成形後に有機樹脂皮膜を除去することも提案されて
いるが、脱膜工程を必要とすることから作業性及び製造
性に問題がある。
【0005】なかでも、チタン系皮膜は、従来のクロム
系皮膜と同様に酸化物や水酸化物からなる重合酸化物に
なりやすく、バリア性に優れた連続皮膜となることによ
ってめっき鋼板の耐食性を向上させると考えられている
が、クロム系の重合酸化物と異なり水に難溶性であるた
め自己修復機能を備えていない。その結果、化成処理や
成形加工等の際に生じた皮膜欠陥部を起点とする腐食の
進展に対して有効な抑制作用が得られない。他のCrフ
リー皮膜も、チタン系皮膜と同様に自己修復作用が弱
く、腐食抑制効果が不充分である。
【0006】また、汎用のロールコート法やスプレーリ
ンガー法等でCrフリーの化成処理液をアルミニウム系
めっき鋼板に塗布する場合、少ない塗布量ではAl露出
部の発生が避けられない。Al露出部は腐食の起点やプ
レス加工時にカジリの起点となり、化成処理皮膜やめっ
き層が損傷する原因となる。逆に塗布量を多くして厚い
化成処理皮膜を形成すると、プレス成形時に化成処理皮
膜にクラック等の欠陥が発生しやすくなり、不充分な自
己修復作用と相俟って耐食性を低下させる。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、このような問
題を解消すべく案出されたものであり、Al−Si合金
めっき鋼板を基材とし、バルブメタルの酸化物又は水酸
化物とフッ化物が共存した化成処理皮膜をAl−Si合
金めっき層の上に形成することにより、自動車用燃料タ
ンクに成形した場合でも優れた内面耐食性が得られるア
ルミニウム系めっき鋼板を提供することを目的とする。
本発明の燃料タンク用アルミニウム系めっき鋼板は、そ
の目的を達成するため、Al−Si合金めっき鋼板を基
材とし、酸化物が高い絶縁抵抗を示すバルブメタルの酸
化物又は水酸化物とフッ化物が共存する化成処理皮膜が
基材表面に形成されていることを特徴とする。基材のA
l−Si合金めっき鋼板には、めっき層全体でのSi含
有量が5〜13質量%,表層のSi含有量が7〜80質
量%のAl−Si合金めっき層が形成されている。
【0008】バルブメタルとしては、Ti,Zr,H
f,V,Nb,Ta,Mo,W等がある。化成処理皮膜
に含まれるO及びFの濃度比F/Oが原子比率で1/1
00以上となるようにフッ化物を含ませるとき、フッ化
物起因の自己修復作用が顕著になる。化成処理皮膜には
有機系又は無機系の潤滑剤を添加することもできる。化
成処理皮膜は、更に可溶性又は難溶性の金属リン酸塩又
は複合リン酸塩を含むことができる。可溶性の金属リン
酸塩又は複合リン酸塩としては、アルカリ金属,アルカ
リ土類金属,Mn等の塩がある。難溶性の金属リン酸塩
又は複合リン酸塩としては、Al,Ti,Zr,Hf,
Zn等の塩がある。化成処理皮膜には、有機系又は無機
系の潤滑剤を更に添加してもよい。
【0009】
【作用】本発明の燃料タンク用アルミニウム系めっき鋼
板は、バルブメタルの酸化物又は水酸化物とフッ化物と
を共存させている。バルブメタルは、酸化物が高い絶縁
抵抗を示す金属を指し、Ti,Zr,Hf,V,Nb,
Ta,Mo,Wの1種又は2種以上が使用される。バル
ブメタルの酸化物又は水酸化物からなる皮膜は、電子の
移動に対する抵抗体として働き、雰囲気中の水分に含ま
れている溶存酸素による還元反応(下地鋼との酸化反
応)が抑えられる。その結果、下地鋼からの金属成分の
溶出(腐食)が防止される。なかでも、Ti,Zr,H
f等のIV族A元素の4価化合物は安定な化合物であ
り、優れた皮膜を形成することから好適な皮膜成分であ
る。
【0010】バルブメタルの酸化物又は水酸化物が連続
皮膜として鋼板表面に形成されている場合、電子移動に
対する抵抗体として有効に作用するが、実際の化成処理
皮膜では化成処理時や成形加工時における皮膜欠陥の発
生が避けられない。皮膜欠陥部では下地鋼が露出するた
め、所期の腐食抑制作用が期待できない。そこで、本発
明においては、バルブメタルの可溶性フッ化物を共存さ
せることによって化成処理皮膜に自己修復作用を付与し
ている。バルブメタルのフッ化物は、雰囲気中の水分に
溶け出した後、皮膜欠陥部から露出している下地鋼の表
面に難溶性酸化物又は水酸化物となって再析出し、皮膜
欠陥部を埋める自己修復作用を呈する。
【0011】たとえば、めっき鋼板表面に形成されたチ
タン系皮膜は、酸化物〔TiO2]や水酸化物[Ti(O
H)4]が複合した皮膜である。ミクロ的にみて皮膜厚み
が極端に不足する部分やピンホール等の皮膜欠陥部では
下地鋼が露出し、腐食の起点になりやすい。この点、従
来のクロム系皮膜では可溶性の六価Crが皮膜欠陥部に
難溶性三価Cr化合物として析出することにより自己修
復作用が発現するが、チタン系皮膜では自己修復作用を
期待できない。皮膜厚みを増加することによって皮膜欠
陥部を少なくできるが、硬質で延性に乏しいチタン系皮
膜は化成処理された鋼板を成形加工する際に鋼板の伸び
に追従できず、クラック,カジリ等の欠陥が化成処理皮
膜に生じやすくなる。
【0012】これに対し、XnTiF6(X:アルカリ金
属,アルカリ土類金属又はNH4,n=1又は2),T
iF4等のフッ化物を共存させると、フッ化物が化成処
理皮膜から溶出し、TiF6 2-+4H2O→Ti(OH)4
+6F-等の反応によって難溶性の酸化物又は水酸化物
となって皮膜欠陥部に再析出し、自己修復作用を呈す
る。フッ化物としては、酸化物又は水酸化物となる金属
と同種又は異種の何れであってもよい。また、バルブメ
タルとしてMo又はWを選択するとき、これら六価酸素
酸塩の中には可溶性を示す塩も存在し、自己修復作用を
呈するものもある。そのため、化成処理皮膜に含ませる
フッ化物に加わる制約が緩和される。
【0013】更に、Al−Si合金めっき層のSi含有
量を規制するとき、化成処理皮膜量が少ない場合でもA
lの露出を防止できる。Al−Si合金めっき層のSi
含有量がAl露出の如何に及ぼす影響は次のように推察
される。めっき層の表層にSiをある程度濃化させたA
l−Si合金めっき鋼板を基材として化成処理すると、
めっき層表面のAlが選択的にエッチング除去され、金
属Si主体の凸部及びAlリッチの凹部をもつ表面にな
る。凹部に化成処理液が溜まりやすいので、チタンの酸
化物又は水酸化物及びフッ化物からなる複合皮膜でAl
リッチな凹部が優先的に被覆される。
【0014】この方法で化成処理皮膜を形成することに
より、めっき層表層は金属Si及びチタンの複合化合物
皮膜で覆われて硬質化すると共に、凹凸の形成で金型と
の接触面積が低減することから、プレス成形時に摺動抵
抗が軽減され、加工性が向上する。また、めっき層表層
にAlリッチな部位が露出していないため、抵抗溶接時
には電極へのAlのピックアップが低減され、電極寿命
も長くなる。めっき層表層に形成された凹凸は、アンカ
ー効果を呈し、後工程で形成される塗膜の密着性を向上
させる上でも有効である。
【0015】以上のように、Si含有量が特定されたA
l−Si合金めっき層をもつめっき鋼板を基材とし、チ
タンの酸化物又は水酸化物及びフッ化物からなる複合皮
膜をめっき層の上に設けることにより、皮膜量が少なく
てもAlリッチな部位の露出が防止されるため良好な平
坦部が得られ、プレス成形時に鋼板の塑性変形に化成処
理皮膜が追従しないことに起因するクラック等の欠陥が
化成処理皮膜に発生しても自己修復作用によって優れた
内面耐食性が得られる。
【0016】
【実施の形態】下地鋼としては、低炭素鋼,中炭素鋼,
高炭素鋼,合金鋼等が使用される。なかでも、良好なプ
レス成形性が要求される用途では、低炭素Ti添加鋼,
低炭素Nb添加鋼等の深絞り用鋼板が好ましい。下地鋼
は、常法に従って溶融アルミニウムめっきされるが、A
l−Si合金めっき層のSi含有量を5〜13質量%の
範囲に調整することが好ましい。Si含有量を5質量%
以上とすることにより、めっき層表層にSiが濃化しや
すくなると共に、下地鋼とめっき層との界面に生じ加工
性に有害な合金層の成長が抑制される。しかし、13質
量%を超える過剰量のSiが含まれると、溶融めっき後
の冷却過程で初晶Siがめっき層に晶出し、加工性が著
しく劣化する。
【0017】Si含有量を5〜13質量%に調整したA
l−Si合金めっき鋼板を溶融めっき浴から引き上げ、
冷却速度等を調整することによって予めめっき層の表層
にSiを濃化させた後、酸洗,アルカリ洗浄等を施すこ
とにより金属Si主体の凸部及びAlリッチの凹部がめ
っき層の表層に形成される。酸洗,アルカリ洗浄等で金
属Si主体の凸部及びAlリッチの凹部を形成する場
合、水洗,乾燥工程を必要とする。他方、Alに対して
エッチング作用のある化成処理液を使用する場合、化成
処理液をめっき層に塗布して乾燥させる化成処理皮膜の
生成過程で表層のAlが選択的にエッチング除去され、
Alリッチの凹部が形成される。
【0018】金属Si主体の凸部及びAlリッチの凹部
がめっき層の表層に分散している状況は、AES分析法
を用いて1000μm四方のエリアを走査・分析し、同
様にArスパッタで表層から100nmの深さまで繰返
し分析することにより確認できる。本発明者等による実
験結果からすると、めっき層の表層から100nmまで
の深さにおけるSi濃度を7質量%以上にするとき、目
標とする平坦部耐食性及び内面耐食性が得られることが
判った。しかし、表層のSi濃度が80質量%を超える
までAlがエッチング除去されると、めっき層の表層が
脆くなり、プレス加工時等の際に鋼板が変形すると化成
処理皮膜が脱落しやすくなる。
【0019】化成処理は塗布型又は反応型の何れであっ
てもよいが、反応型化成処理では処理液の安定性を維持
する上からpHを若干低く調整する。以下の説明では、
バルブメタルとしてTiを例に採っているが、Ti以外
のバルブメタルを使用する場合も同様である。
【0020】化成処理液は、Tiソースとして可溶性の
ハロゲン化物や酸素酸塩を含む。Tiのフッ化物はTi
ソース及びFソースとしても有効であるが、(NH4)F
等の可溶性フッ化物をFソースとして化成処理液に別途
添加する場合もある。具体的なTiソースとしては、X
nTiF6(X:アルカリ金属又はアルカリ土類金属,
n:1又は2),K2[TiO(COO)2],(NH4)2Ti
6,TiCl4,TiOSO4,Ti(SO4)2,Ti(O
H)4等がある。これらTiソースは、化成処理液を塗布
した後で乾燥・焼付けするときに所定組成の酸化物又は
水酸化物とフッ化物からなる化成処理皮膜が形成される
ように各成分の配合比率が選定される。
【0021】Tiソースを化成処理液中にイオンとして
安定的に維持する上で、キレート作用のある有機酸を添
加することが好ましい。有機酸を添加する場合、金属イ
オンをキレート化して化成処理液を安定させることか
ら、有機酸/金属イオンのモル比が0.02以上となる
添加量に定められる。有機酸としては、酒石酸,タンニ
ン酸,クエン酸,蓚酸,マロン酸,乳酸,酢酸等が挙げ
られる。なかでも、酒石酸等のオキシカルボン酸やタン
ニン酸等の多価フェノール類は、処理液を安定化させる
と共に、フッ化物の自己修復作用を補完する作用も呈
し、塗膜密着性の向上にも有効である。可溶性又は難溶
性の金属リン酸塩又は複合リン酸塩を化成処理皮膜に含
ませるため、各種金属のオルソリン酸塩やポリリン酸塩
を添加してもよい。
【0022】化成処理皮膜中に含まれるフッ化物による
自己修復作用を発現させるためには、化成処理皮膜中の
OとFとの原子数比F/Oを1/100以上に調整する
ことが好ましい。化成処理皮膜中のF,Oは蛍光X線,
ESCA等を用いて分析できる。原子数比F/Oが1/
100未満では、フッ化物の加水分解による自己修復作
用が不充分で、化成処理皮膜の欠陥部や成形加工時の疵
部を起点とする腐食が進行することがある。
【0023】可溶性の金属リン酸塩又は複合リン酸塩
は、化成処理皮膜から溶出して皮膜欠陥部に溶出し、下
地鋼のAl等と反応して不溶性リン酸塩を析出すること
によって、チタンフッ化物の自己修復作用を補完する。
また、可溶性リン酸塩が解離する際に雰囲気が若干酸性
化するため、チタンフッ化物の加水分解、ひいては難溶
性チタン酸化物又は水酸化物の生成が促進される。可溶
性リン酸塩又は複合リン酸塩を生成する金属にはアルカ
リ金属,アルカリ土類金属,Mn等があり、各種金属リ
ン酸塩又は各種金属塩と燐酸,ポリ燐酸,リン酸塩とし
て化成処理液に添加される。難溶性の金属リン酸塩又は
複合リン酸塩は、化成処理皮膜に分散し、皮膜欠陥を解
消すると共に皮膜強度を向上させる。難溶性リン酸塩又
は複合リン酸塩を形成する金属にはAl,Ti,Zr,
Hf,Zn等があり、各種金属リン酸塩又は各種金属塩
と燐酸,ポリ燐酸,リン酸塩として化成処理液に添加さ
れる。
【0024】化成処理液には、潤滑性の向上に有効なワ
ックスを化成処理皮膜に含ませるため、フッ素系,ポリ
エチレン系,スチレン系等の有機ワックスやシリカ,二
硫化モリブデン,タルク等の無機質潤滑剤等を添加する
こともできる。低融点の有機ワックスは、皮膜乾燥時に
表面にブリードし、潤滑性を発現すると考えられる。高
融点有機ワックスや無機系潤滑剤は、皮膜中に分散状態
で存在するが,処理皮膜の最表層では島状分布で皮膜表
面に露出することによって潤滑性が発現するものと考え
られる。
【0025】調製された化成処理液をロールコート法,
スピンコート法,スプレー法等でAl−Si合金めっき
鋼板に塗布し、水洗することなく乾燥することによっ
て、耐食性に優れた化成処理皮膜がAl−Si合金めっ
き層の表層に形成される。化成処理液の塗布量は、十分
な耐食性を確保するため1mg/m2以上のチタン付着
量となるように調整することが好ましい。化成処理皮膜
は、常温で乾燥することもできるが、連続操業を考慮す
ると50℃以上に保持して乾燥時間を短縮することが好
ましい。ただし、200℃を超える乾燥温度では、化成
処理被膜に含まれている有機成分が熱分解し、有機成分
で付与された特性が損なわれることがある。
【0026】燃料タンクの使用環境や製造工程によって
は、プレス成形性,耐食性,抵抗溶接性等を向上させる
ため、必要に応じて有機皮膜を化成処理皮膜形成後に設
ける。この種の皮膜として、たとえばウレタン系樹脂,
エポキシ樹脂,ポリエチレン、ポリプロピレン,エチレ
ン−アクリル酸共重合体等のオレフィン系樹脂,ポリス
チレン等のスチレン系樹脂,ポリエステル,或いはこれ
らの共重合物又は変性物,アクリル系樹脂等の樹脂皮膜
を膜厚0.1〜5μmで化成処理皮膜の上に設けると、
クロメート皮膜を凌駕する高耐食性が得られる。
【0027】有機樹脂皮膜に有機系又は無機系潤滑剤を
添加してプレス成形時の潤滑性を確保し、或いは無機ゾ
ルを添加して抵抗溶接性を改善することも可能である。
樹脂皮膜としては、アルカリ洗浄で容易に除去できるア
ルカリ可溶タイプ又は非可溶タイプの何れであってもよ
い。アルカリに対する溶解性は樹脂皮膜に含まれるアク
リル酸量によって調整でき、アクリル酸量を多くすると
アルカリ可溶性に、少なくすると非可溶性になる。この
種の樹脂皮膜は、ロールコート法や静電霧化によって形
成できる。
【0028】
【実施例】Tiソース及びFソースを配合し、場合によ
っては各種金属化合物,有機酸,リン酸塩を添加し、表
1の組成をもつ化成処理液を調合した。
【0029】
【0030】板厚0.8mmの極低炭素Ti添加冷延鋼
板を連続溶融めっきラインに通板し、Si:6〜11質
量%のAl−Si合金めっき層をめっき付着量35g/
2(平均層厚13μm)で形成させた。このAl−S
i合金めっき鋼板を化成処理用原板とし、表1の組成を
もつ化成処理液をロールコート法で塗布した後、水洗す
ることなくオーブンに装入し、到達板温120℃で乾燥
することにより化成処理皮膜を形成した。形成された化
成処理皮膜を蛍光X線,AES及びESCAで分析し,
めっき層表面から深さ100nmまでの表層部における
Si含有量及び化成処理皮膜の各成分濃度を求めた。調
査結果を表2に示す。
【0031】
【0032】化成処理されたAl−Si合金めっき鋼板
から試験片を切り出し、平坦部腐食試験,内面腐食試験
及び抵抗溶接性試験に供した。平坦部腐食試験では、試
験片の端面をシールし、JIS Z2371に準拠して
35℃の5%NaCl水溶液を噴霧した。塩水噴霧を2
4,72,120時間継続した後、試験片表面に発生し
た白錆を観察した。試験片表面に占める白錆の面積率が
5%以下を◎,5〜10%を○,10〜30%を△,3
0〜50%を▲,50%以上を×として平坦部の耐食性
を評価した。
【0033】内面腐食試験では,劣化ガソリンからなる
腐食性雰囲気に燃料タンクの内面が曝されることを想定
し,自動車燃料タンク形状にプレス成形したアルミニウ
ム系めっき鋼板から切り出した試験片を使用し、50℃
に加温した試験液A,Bに試験片を浸漬し、1週間ごと
に試験液を取り替えながら浸漬し続けた。9週間後に試
験液から試験片を引き上げ、試験片の腐食状況を観察し
た。腐食は、最も大きな加工を受けた加工部内側を起点
として発生・成長していた。試験片に生じている腐食の
最大深さを測定し、最大侵食深さが100μm以下を
◎,100〜200μmを○,200〜300μmを
△,300μm以上を×として内面耐食性を評価した。 試験液A:蟻酸400ppmを含む水+等量のガソリン 試験液B:メタノール80質量%+ガソリン20質量%
+蟻酸400ppm 抵抗溶接性試験では、Cr−Cu合金電極を用い、重ね
合わせた2枚の試験片をスポット溶接した。溶接条件
は、各試験片ごとに適正電流及び適正荷重を予め求めて
おき、一定打点ごとに一定比率で溶接電流を増加させる
方法を採用した。そして、溶接打点数が500〜100
0打点を○,500打点以下を×として抵抗溶接性を評
価した。
【0034】表3の調査結果にみられるように、本発明
に従って化成処理皮膜が形成された試験番号1〜6は、
何れも良好な平坦部耐食性,内面耐食性,抵抗溶接性を
示した。これに対し、可溶性チタンフッ化物を含まない
化成処理皮膜を形成した試験番号7(比較例)は、自己
修復効果が不充分なため皮膜欠陥部を起点とする腐食が
観察された。チタン化合物を含まない化成処理皮膜を形
成した試験番号8(比較例)では、バリア効果に乏しく
平坦部耐食性,内面耐食性共に劣っていた。同じ化成処
理液を使用した場合でも、Siを含まないアルミニウム
めっき鋼板を化成処理液No.1で化成処理した試験番
号9(比較例)では、Alリッチ部位が一部露出してし
まい、目標とする品質性能が得られなかった。
【0035】
【0036】
【実施例2】Ti以外のバルブメタルソース及びFソー
スを配合し、場合によっては各種金属化合物,有機酸,
リン酸を添加し、表4の組成をもつ化成処理液を調合し
た。各化成処理液をロールコート法でAl−Si合金め
っき鋼板に塗布した後,水洗することなくオーブンに装
入し、到達板温160℃で乾燥することにより化成処理
皮膜を形成した。
【0037】
【0038】化成処理皮膜が形成された各Al−Si合
金めっき鋼板について、実施例1と同様にめっき層表面
から深さ100nmまでの表層部におけるSi含有量及
び化成処理皮膜の各成分濃度を求めた。調査結果を表5
に示す。
【0039】
【0040】次いで、化成処理された各Al−Si合金
めっき鋼板から試験片を切り出し、実施例1と同様の方
法で平坦部腐食試験,内面腐食試験及び抵抗溶接性試験
に供した。表6の調査結果にみられるように、本発明に
従って化成処理皮膜が形成された試験番号1〜6は、平
坦部耐食性,内面耐食性及び抵抗溶接性の何れにも優れ
ていた。
【0041】
【0042】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の燃料タ
ンク用アルミニウム系めっき鋼板は、Si含有量が特定
されたAl−Si合金めっき層が形成されたAl−Si
合金めっき鋼板を基材とし、金属の酸化物又は水酸化物
及びフッ化物が共存した化成処理皮膜で基材表面が覆わ
れているため、難溶性の金属酸化物又は水酸化物が環境
遮断機能を呈し下地鋼の腐食を防止すると共に、可溶性
のフッ化物が自己修復作用を呈する。そのため、過酷な
加工で燃料タンク形状に成形された後でも、成形加工で
欠陥が導入された皮膜欠陥が溶出フッ化物の再析出によ
って自己修復されるため、皮膜欠陥部を介して下地鋼が
露出することがなくなり、優れた耐食性が維持される。
更に、リン酸塩又は複合リン酸塩を含ませることにより
耐食性が一層向上し、従来のクロメート皮膜に匹敵する
優れた耐食性を呈する。しかも、環境に悪影響を及ぼし
かねないCrを含まない化成処理皮膜であることから、
従来のクロメート処理鋼板に代わる材料として、長期耐
食性が要求される自動車用燃料タンクに好適に使用され
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 燃料タンクの概略図
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C23C 22/36 C23C 28/00 C 28/00 B60K 15/02 A (72)発明者 古川 伸也 大阪府堺市石津西町5番地 日新製鋼株 式会社 技術研究所内 (72)発明者 武津 博文 大阪府堺市石津西町5番地 日新製鋼株 式会社 技術研究所内 (56)参考文献 特開2000−104021(JP,A) 特開 平9−228066(JP,A) 特開 平9−20984(JP,A) 特開2000−265283(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 2/12 B60K 15/02 C23C 2/26 C23C 2/40 C23C 22/00 - 22/86 C23C 28/00

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Al−Si合金めっき鋼板を基材とし、酸
    化物が高い絶縁抵抗を示すバルブメタルの酸化物又は水
    酸化物及びフッ化物が共存する化成処理皮膜が基材表
    面に形成されていることを特徴とする燃料タンク用アル
    ミニウム系めっき鋼板。
  2. 【請求項2】 めっき層全体としてのSi含有量が5〜
    13質量%,表層のSi含有量が7〜80質量%のAl
    −Si合金めっき層が形成されているめっき鋼板を基材
    とする請求項1記載の燃料タンク用アルミニウム系めっ
    き鋼板。
  3. 【請求項3】 バルブメタルがTi,Zr,Hf,V,
    Nb,Ta,Mo,Wから選ばれた1種又は2種以上で
    ある請求項1記載の燃料タンク用アルミニウム系めっき
    鋼板。
  4. 【請求項4】 化成処理皮膜に含まれるO及びFの濃度
    比F/Oが原子比率で1/100以上である請求項1記
    載の燃料タンク用アルミニウム系めっき鋼板。
  5. 【請求項5】 請求項1記載の化成処理皮膜が更に可溶
    性又は不溶性金属のリン酸塩又は複合リン酸塩を含む燃
    料タンク用アルミニウム系めっき鋼板。
  6. 【請求項6】 請求項1記載の化成処理皮膜が更に潤滑
    剤を含む燃料タンク用アルミニウム系めっき鋼板。
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