JP4073796B2 - 耐食性に優れた化成処理鋼板 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、耐食性に優れた皮膜が形成された化成処理鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
耐食性の良好な鋼材として亜鉛めっき,亜鉛合金めっき等を施した亜鉛めっき鋼板が多用されているが、湿潤雰囲気,排ガス雰囲気,海岸近傍の雰囲気等に長期間にわたって曝されると鋼板表面に白錆が発生し、外観を劣化させる。白錆の防止には、亜鉛めっき鋼板をクロメート処理する方法が通常採用されている。
クロメート処理では、クロムイオンを含む廃液の処理に多大な負担がかかる。そこで、チタン系,ジルコニウム系,モリブデン系,リン酸塩系等の薬液を使用したクロムフリーの表面処理方法が検討されている。たとえば、特開平11−61431号公報では、硫酸チタン水溶液及びリン酸を含む処理液を各種めっき鋼板に塗布して加熱乾燥することにより、耐食性に優れたチタン化合物含有皮膜が形成されることが紹介されている。また、マンガン系の化成処理皮膜を形成することも検討されている。
【0003】
しかし、硫酸チタン水溶液をリン酸と混合することにより調製された処理液は沈澱物が生じ易く、安定性に欠けるため、所期の性能をもった皮膜が得られなくなることもある。また、マンガン系の化成処理皮膜では、たとえばリン酸塩処理で形成された場合、比較的溶解度が高く、湿潤環境下で皮膜の溶出が生じるため、付着量を多くしても耐食性向上効果が小さい。しかも、リン酸塩処理液は,燐酸マンガンの溶解度が小さいために処理液を強酸性にする必要があり、亜鉛系めっき鋼板との反応性が強く、処理液が短期間で劣化する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者等は、亜鉛めっき鋼板又は亜鉛合金めっき鋼板を基材とし、その表面にマンガン及びチタンの酸化物,リン酸塩,フッ化物塩,有機酸塩から選ばれた少なくとも1種又は2種以上からなる複合化合物皮膜を形成することにより、チタン系皮膜及びマンガン系皮膜の欠点を相殺し、耐食性が著しく改善された化成処理鋼板が得られることを、特許第3302677号公報で紹介した。マンガン化合物の耐食性向上効果はクロメート処理皮膜には及ばない。しかし、リン酸塩系のマンガン化合物は皮膜中で自己修復性のある可溶分になる。リン酸マンガン系の化成処理液を用いて亜鉛めっき層の表面に形成された化成処理皮膜は、比較的ポーラスな皮膜であることから、腐食性成分が化成処理皮膜を透過して下地鋼に到達して腐食反応を生起させる。この化成処理液にチタン塩を添加することにより、処理液から晶出したチタン化合物が化成処理皮膜のポアを充填する。チタン化合物は、不溶性であり下地鋼を環境から遮断するバリアとなって働く。これらのことから、リン酸系マンガン化合物及びチタン塩からなる化成処理皮膜は、マンガン化合物の自己修復性と、不溶性であるチタン化合物のバリア性の両方の特性を兼ね備えた化成処理皮膜が得られるというものである。
【0005】
上記公報で紹介された技術により、キズ等の小さな欠陥が導入された化成処理皮膜であっても、マンガン化合物の自己修復作用とチタン化合物のバリア性によって、優れた耐食性が維持できている。しかしながら、キズ等の欠陥が大きくなると、マンガン化合物の自己修復作用によっても再析出物は皮膜欠陥部の下地鋼表面を覆いきれず、チタン化合物のバリア性にも限界があって、下地鋼に対してZn及び化成処理皮膜の防食が早期に働き、腐食が進行することもある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、マンガン及びチタンの複合化合物を含む化成処理皮膜と下地鋼との密着性を向上させて腐食因子の透過を防止するとともに、皮膜欠陥部近傍のpH低下を抑制することにより、耐食性が格段に改善された化成処理鋼板を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の耐食性に優れた化成処理鋼板は、その目的を達成するため、亜鉛めっき鋼板又は亜鉛合金めっき鋼板を基材とし、その表面上に、第1層としてシリカ又はアルミナの皮膜が、第2層としてマンガン及びチタンの複合化合物を含む化成処理皮膜が形成されていることを特徴とする。第1層としてのシリカまたはアルミナの皮膜の付着量がSi又はAlとして5〜300mg/m2であり、皮膜中のシリカ又はアルミナの粒子径は200nm以下であることが好ましい。第2層の化成処理皮膜に含まれる複合化合物は、酸化物,リン酸塩,フッ化物塩、有機酸塩から選ばれた少なくとも1種又は2種以上であることが好ましい。さらに第2層の化成処理皮膜に、酸化物又は水酸化物又はフッ化物が共存していてもよい。化成処理皮膜に含まれるO及びFの濃度比F/Oが原子比率で1/100以上となるようにフッ化物を含ませるとき、フッ化物起因の自己修復作用も活用できる。
【0008】
【作用】
本発明の化成処理鋼板は、亜鉛めっき鋼板又は亜鉛合金めっき鋼板表面に、シリカ又はアルミナの皮膜を介して、マンガン及びチタンの複合化合物を含む化成処理皮膜が形成されている。マンガン及びチタンの複合化合物を含む化成処理皮膜が、マンガン化合物の自己修復性と、不溶性であるチタン化合物のバリア性の両方の特性を兼ね備えることにより、優れた耐食性を発揮することは、前記と全く同様である。
【0009】
ところで、キズ等の皮膜欠陥が大きいと、マンガン化合物の自己修復作用によっても再析出物は皮膜欠陥部の下地鋼表面を覆いきれず、チタン化合物のバリア性にも限界があって、下地鋼に対してZn及び化成処理皮膜の防食が早期に働き、めっき層と化成処理皮膜の界面から腐食が進行している。
本発明は、めっき層と化成処理皮膜の間にシリカ又はアルミナの皮膜を介在させることにより、上記腐食の進行を防げたものであるが、その機構について、本発明者等は、次のように2つの作用が機能していると推測した。シリカ皮膜を介在させた場合について説明するが、アルミナ皮膜を形成した場合も同様である。
【0010】
(1)密着性向上による腐食因子の透過抑制作用について
図1に示すように、Zn系めっき層(図中、M)上第1層(図中、I)のシリカはめっき表面のOH基と脱水縮合反応(図中、R)を起こし、また第1層のシリカのOH基と第2層(図中、II)の水酸化物が脱水縮合反応(図中、R)を起こして、互いに吸着し、結果的に各層の密着性が向上している。
また、シリカは一般的にイオン吸着能やイオン交換反応或いは触媒活性等の化学的性質を有している。そこで、Si原子に着目すると、Si原子は通常sp3混成軌道による4配位であるが、適当な電子供与体(配位子)との共存により、空のd軌道に弱く結合した、遷移状態或いは中間体的なd2sp3軌道の6配位を取る性質を有することになる。このため、シリカ中のSi原子がLewis酸(電子受容性)点となり、アニオン等を吸着することになる。第2層の処理膜を形成する化成処理液成分のTiF6 2-,PO4 2-,TiO3 2-,MoO4 2-,VO3-,NbO3-,TaO3-,HfO3 2-,HfF6 2-,WO4 2-,ZrF6 2-等のイオンがSi原子に配位結合するため、第1層と第2層の密着性が向上する。
【0011】
さらに、亜鉛系めっき層を第1層のシリカで覆うことにより、比表面積の増加及びアンカー効果により第2層との密着性が向上する。
さらにまた、第2層の処理膜を形成する化成処理液中にフッ化物塩が含まれている場合、その中のフッ素が、例えば次に示すような反応により、第1層のシリカ皮膜表面をエッチングし、珪フッ化化合物を形成することにより、第1層と第2層の密着性が向上することになる。
(NH4)2TiF6→2NH4 ++TiF6 2-
TiF6 2-+H2O→TiOF4 2-+2F-+2H+
SiO2+6F-+4H+→SiF6 2-+2H2O
このような機構のもとにめっき鋼板に対する第1層と第2層の密着性が向上し、腐食因子のめっき層と被覆皮膜との界面への透過を防止し、結果的に耐食性低下を抑えることができる。
【0012】
(2)キズ等の皮膜欠陥部近傍のpH低下の抑制作用について
キズ等の皮膜欠陥部近傍における腐食状況をみると、カソード部では、次の▲1▼式にしたがって生じた水酸化物によるpH上昇が、シリカを介在させることにより、次の▲2▼式に示したシリカの溶解によって抑制される。一方アノード部では、次の▲3▼,▲4▼式にしたがって生じた水素イオンが次の▲5▼式に示したシリカの析出により消費されてpHの低下が抑制される。
このようにpHの低下が抑制され、キズ等の皮膜欠陥部近傍の腐食が抑制される。
▲1▼ 1/2O2+H2O+2e-→2OH-
▲2▼ 2OH-+SiO2(S)→SiO3 2-+H2O
▲3▼ Zn→Zn2++2e-
▲4▼ Zn2++2H2O→Zn(OH)2+2H+
▲5▼ 2H++SiO3 2-→SiO2↓+H2O
【0013】
上記のようなシリカ又はアルミナの皮膜による作用は、それらの付着量をSi又はAlとして5mg/m2以上にすると、キズ等の皮膜欠陥部の耐食性向上効果は顕著に現れる。しかし、それらの付着量が300mg/m2を超えると、加工後の耐皮膜カジリ性が著しく低下する。
また、シリカ又はアルミナの皮膜中のシリカ又はアルミナの粒子径が200nmを超えると、加工時の耐皮膜カジリ性が著しく低下する。
【0014】
【実施の形態】
本発明の化成処理皮膜が形成される原板としては、電気めっき法,溶融めっき法,蒸着めっき法で製造された亜鉛又は亜鉛合金めっき鋼板が使用される。亜鉛合金めっきには、Zn−Al,Zn−Mg,Zn−Ni,Zn−Al−Mg等がある。また、溶融めっきした後で合金化処理を施した合金化亜鉛めっき鋼板も本発明の原板として使用できる。
【0015】
シリカ皮膜の形成には、シリカゾルや乾式シリカ等、SiO2粒子を分散させた処理液が使用される。SiO2粒子の形態には制限はない。好ましくは一次粒子径が200nm以下のSiO2粒子を分散させた処理液をロールコーター法,スプレーリンガー絞り法等で、乾燥後の付着量がSiとして5〜300mg/m2になるように塗布することが好ましい。塗布後、例えば80℃以下の温風乾燥を行うことにより、原板に固着したシリカ皮膜が形成される。
アルミナ皮膜の形成も全く同様である。
【0016】
本発明で使用する化成処理液は、マンガン化合物及びチタン化合物を含む酸性溶液である。
マンガン化合物にはMn(H2PO4)2,MnCO3,Mn(NO3)2,Mn(OH)2,MnSO4,MnCl2,Mn(C2H3O2)2,等が使用され、チタン化合物にはK2TiF6,TiOSO4,(NH4)2TiF6,K2[TiO(COO)2],TiCl4,Ti(SO4)2,Ti(OH)4等が使用される。
【0017】
マンガン化合物は、Mn濃度0.1〜100g/lで化成処理液に含まれることが好ましい。Mn濃度0.1g/l未満の含有量では十分な耐食性を呈するMn付着量が得られ難く、逆にMn100g/lを超える含有量では化成処理液の安定性が低下しやすい。チタン化合物は、Ti/Mnのモル比が0.05〜2となるように添加することが好ましい。0.05以上のTi/Mnのモル比で、化成処理皮膜の自己修復作用を損なわずに耐食性を向上させる効果が顕著になる。しかし、2を超えるTi/Mnのモル比では、Ti化合物による効果が得られるものの、化成処理液の安定性が低下し、コストも高くなる。
【0018】
化成処理液は、亜鉛めっき層又は亜鉛合金めっき層の表層をエッチングして活性化させ、耐食性に有効な難溶性リン酸塩を生成する成分となるリン酸又はリン酸塩を含んでいる。リン酸塩には、リン酸マンガン,リン酸二水素ナトリウム,リン酸水素二ナトリウム,リン酸マグネシウム,リン酸二水素アンモニウム等がある。リン酸又はリン酸塩は、P/Mnのモル比が0.2〜4となるように化成処理液に添加される。化成処理皮膜の耐食性向上効果はP/Mnのモル比0.2以上で顕著になるが、4を超えるP/Mnのモル比ではエッチング性が強くなりすぎ化成処理液が不安定化する。
【0019】
化成処理液は、亜鉛めっき層又は亜鉛合金めっき層の表層をエッチングして活性化させると共に、マンガン化合物及びチタン化合物をキレート化するフッ化物を含んでいる。フッ化物には、フッ化水素,フッ化チタン,フッ化アンモニウム,フッ化カリウム,ケイフッ酸等がある。フッ化物は、F/Mnのモル比が0.1〜10となるように化成処理液に添加することが好ましい。F/Mnのモル比0.1以上でフッ化物を添加すると、金属イオンが十分にキレート化され,化成処理液が安定化する。逆に10を超えるF/Mnのモル比では,エッチング力が強くなり過ぎて連続処理時に亜鉛めっき層又は亜鉛合金めっき層の溶解反応が過剰に進行しやすく、化成処理液も不安定化しやすい。
【0020】
マンガン,チタン等の難溶性金属を化成処理液中に金属イオンとして安定的に維持するため、キレート作用のある有機酸が更に添加される。有機酸としては、酒石酸,タンニン酸,クエン酸,蓚酸,マロン酸,乳酸,酢酸等がある。有機酸は、有機酸/Mnのモル比が0.05〜1となるように化成処理液に添加することが好ましい。金属イオンをキレート化して化成処理液を安定化する有機酸の作用は有機酸/Mnのモル比0.05以上で顕著になるが、1を超える有機酸/Mnのモル比では化成処理液のpHを低下させ、連続処理性が劣化しやすい。
【0021】
化成処理液は、pHが1〜6となるように所定量のマンガン化合物,チタン化合物,リン酸又はリン酸塩,フッ化物及び有機酸が配合される。亜鉛めっき層又は亜鉛合金めっき層の表層をエッチングして活性化表面を発現させるためにはpH値が低いほど好ましいが、1未満のpH値ではZnの溶出反応が過激に進行するため処理安定性が悪い。逆に6を超えるpH値では、化成処理液からチタン化合物が析出しやすくなり、化成処理液の安定性が低下する。
【0022】
また、潤滑性を付与するため、化成処理液に潤滑剤を添加することも可能である。潤滑剤としては、フッ素樹脂,ポリエチレン,ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂,ABS,ポリスチレン等のスチレン樹脂、塩化ビニル,塩化ビニリデン等のハロゲン化樹脂等の合成樹脂粉末がある。また、シリカ,二硫化モリブデン,黒鉛,滑石(タルク)等の無機質も潤滑剤として使用できる。化成処理皮膜に1質量%以上の潤滑剤を添加することによって加工性の改善がみられるが、25質量%を超える過剰量の潤滑剤が含まれると化成処理皮膜の造膜性、ひいては耐食性が低下する。
【0023】
調製された化成処理液をロールコート法,スピンコート法,スプレー法等で亜鉛めっき鋼板又は亜鉛合金めっき鋼板に塗布し、水洗することなく乾燥することによって、耐食性に優れた化成処理皮膜が亜鉛めっき層又は亜鉛合金めっき層の表層に形成される。化成処理液の塗布量は、十分な耐食性を確保する上からMn付着量が10mg/m2以上になるように調整することが好ましい。耐食性に及ぼす塗布量は、Mn付着量1000mg/m2で飽和し、それ以上の付着量で化成処理皮膜を形成しても厚膜化による耐食性の向上はみられない。
化成処理皮膜は、常温で乾燥することもできるが、連続操業を考慮すると50℃以上に保持して乾燥時間を短縮することが好ましい。ただし、200℃を超える乾燥温度では、化成処理被膜に含まれている有機成分が熱分解し、皮膜の耐食性が劣化する虞がある。
【0024】
化成処理皮膜を形成した後、更に耐食性に優れた有機皮膜を形成することもできる。この種の皮膜として、たとえばウレタン系樹脂,エポキシ樹脂,ポリエチレン、ポリプロピレン,エチレン−アクリル酸共重合体等のオレフィン系樹脂,ポリスチレン等のスチレン系樹脂,ポリエステル,或いはこれらの共重合物又は変性物,アクリル系樹脂等の樹脂皮膜を膜厚0.1〜5μmで化成処理皮膜の上に設けると、クロメート皮膜を凌駕する高耐食性が得られる。或いは導電性に優れた樹脂皮膜を化成処理皮膜鋼板の上に設けることにより、溶接性を維持したまま、高耐食性や潤滑性が得られる。この種の樹脂皮膜としては、たとえば有機樹脂エマルジョンを静電霧化して塗布する方法(特公平7−115002号公報)で形成できる。
【0025】
【実施例】
化成処理皮膜を形成する原板としては、板厚1.0mm,片面当りめっき付着量20g/m2の電気亜鉛めっき鋼板及び板厚が1.0mmで片面当りめっき付着量50g/m2のZn−6質量%Al−3質量%Mgの合金めっき層が形成された溶融めっき鋼板を使用した。各めっき鋼板を脱脂,酸洗することにより処理用原板を用意した。
第1層のシリカ或いはアルミナ皮膜形成のための処理としてシリカゾルである日産化学株式会社製のST−XS,ST−20,ST−N,ST−XL,MP−2040,MP−4540M,ST−UPとアルミナゾルであるアルミナゾル−520を用い、スプレーリンガーロール絞り法で塗装後、60℃の温風を吹き付けて乾燥し、乾燥後のSi或いはAl付着量5〜325mg/m2になるように処理した。
【0026】
第1層の皮膜形成後、その上に第2層としてマンガン及びチタンの酸化物,リン酸塩,フッ化物塩,有機酸塩から選ばれた少なくとも1種又は2種以上からなる、表1の組成をもつ化成処理液を調合し、塗布した後、水洗することなく電気オーブンに装入し、板温50〜200℃で加熱乾燥した。
比較材として、市販のクロメート処理液(ZM-3387:日本パーカライジング株式会社製)を亜鉛めっき鋼板に塗布し、同様に水洗せずに板温150℃で加熱乾燥した。
第2層として形成された化成処理皮膜を蛍光X線,ESCA等で元素分析したところ、化成処理皮膜には表2に示す付着量で各成分が含まれていた。
【0027】
【0028】
【0029】
なお表2中、原板の種類として表示したAは電気亜鉛めっき鋼板を、BはZn−6%Al−3%Mg合金めっき鋼板を表している。また、化成処理皮膜中の他の元素としては、化成処理液に添加している金属を含むものであり、原板に含まれているZnや、Zn,Al,Mgは含んでいない。皮膜中の原板元素は、電気亜鉛めっき鋼板では亜鉛:1〜3質量%、Zn−6%Al−3%Mg合金めっき鋼板ではZn:1〜3質量%,Al及びMg:0.1〜0.5質量%である。
【0030】
化成処理された各亜鉛めっき鋼板から試験片を切り出し、平坦部の耐食性及びキズ付き部の腐食性、並びに加工性の評価を行った。
平坦部の耐食性試験では、試験片の端面をシールし、JIS Z2371に準拠して35℃の5%NaCl水溶液を噴霧した。塩水噴霧を所定時間継続した後、試験片表面を観察し、試験片表面に発生している白錆の面積率を測定した。白錆発生面積率が5%以下を◎,5〜10%を○,10〜30%を△,30〜50%を▲,50%以上を×として平坦部の耐食性を評価した。
【0031】
キズ付き部の腐食試験では、カッターナイフでクロスカットを深さ10〜20μmのキズを付けた後、上記と同じ塩水噴霧を所定時間継続した後、試験片表面を観察し、キズ付き部からの最大腐食幅を測定した。腐食幅が1mm以下を◎,1〜3mmを○,3〜5mmを△,5〜10mmを▲,10mm以上を×としてキズ付き部の耐食性を評価した。
【0032】
加工性の一つの指標である皮膜カジリ性試験は、ドロービード試験機で、平板摺動後の試験片のカジリ程度をクロメート材(Cr:52mg/m2)と比較した。金型材質はSKD11を用い、加圧力:1N/mm2,引き抜き距離:100mm,引き抜き速度:100mm/minの条件で平板摺動を行った。
カジリの程度がクロメート材より優れるものを◎,同程度のものを○,若干劣るものを△,劣るものを×として評価した。
上記の評価結果を表3に示す。
【0033】
【0034】
表3の調査結果にみられるように、亜鉛めっき鋼板上にマンガン及びチタンの複合化合物を含む化成処理皮膜を形成する際に、シリカ又はアルミナからなる第1層の皮膜を形成・介在させた試験No.1〜11の試料は、比較例として示した第1層を介在させていないものと比較して、キズ付き部の耐食性に優れていることがわかる。特に、第1層として5mg/m2以上の付着量のシリカ又はアルミナの皮膜を形成しておくと、第1層を形成していないものは勿論、従来のクロメート皮膜を形成したものをも凌駕する程の優れた耐食性を呈している。
ただし、第1層を構成するシリカ又はアルミナの粒子径が200nmを超えたり(試験No.8)、皮膜付着量が300mg/m2を超える(試験No.7)と、加工後の耐皮膜カジリ性が低下している。
【0035】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の化成処理鋼板は、亜鉛めっき層又は亜鉛合金めっき層の上に、シリカ又はアルミナの皮膜を介してマンガン及びチタンの複合化合物を含む化成処理皮膜を形成している。シリカ又はアルミナの皮膜を介在させることにより、当該皮膜のZn系めっき層に対する密着性、化成処理皮膜に対する密着性のよさを利用して、めっき層と化成処理皮膜の密着性を向上させて腐食因子の鋼基地への浸透を抑制し、またキズ等の皮膜欠陥部近傍のpH低下を抑制することができる。さらには、化成処理皮膜の自己修復能を最大限併用し、それらの相乗効果により、めっき層と化成処理皮膜の界面からの腐食の進行を防ぐことができるので、成形加工等で大きなキズ等の皮膜欠陥が発生した化成処理鋼板であっても、優れた耐食性を呈する。しかも、環境に悪影響を及ぼしかねないCrを含まない化成処理皮膜であることから、従来のクロメート処理鋼板に代わる材料として広範な分野で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 皮膜界面での脱水縮合反応による吸着状況を説明する図
Claims (4)
- 亜鉛めっき鋼板又は亜鉛合金めっき鋼板を基材とし、その表面上に、第1層として表面にOH基を有するシリカ又はアルミナの被膜が形成され、第2層としてマンガン化合物,チタン化合物及びフッ化物を含む化成処理液により化成処理被膜が形成され、この化成処理液に含まれるMn及びFのモル比F/Mnが0.1〜10であり、化成処理皮膜に含まれるO及びFの濃度比F/Oが原子比率で1/100以上であることを特徴とする耐食性に優れた化成処理鋼板。
- 第1層としてのシリカ又はアルミナの皮膜の付着量がSi又はAlとして5〜300mg/m2である請求項1に記載の耐食性に優れた化成処理鋼板。
- 第1層中のシリカ又はアルミナの粒子径が200nm以下である請求項1又は2に記載の耐食性に優れた化成処理鋼板。
- 第2層の化成処理皮膜に含まれる複合化合物が、フッ化物の他に酸化物,水酸化物,リン酸塩,有機酸塩から選ばれた少なくとも1種又は2種以上である請求項1〜3の何れかに記載の化成処理鋼板。
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