JP4448511B2 - プレコート金属板およびプレコート金属板の製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、アルミニウム合金板材に、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂およびアクリル樹脂の単独あるいはその混合物をベース樹脂とし、粒径0.1μm以下のSiO2を5〜40%、および潤滑剤を5〜60%含む塗料が、0.5〜10μmの厚さで塗装され、摩擦係数を0.15以下に制御した成形性と疵付き防止性に優れたプレコート金属板が提案されている。
図3(a)に示すように、トレイ方式の光ディスクドライブ20には、トレイ21に、CDやDVDなどの光ディスク10をセットし、トレイ21をカバー22の中へ装入する方式のもので、これまで多くの製品に採用されてきた方式である。
また、図3(b)に示すように、最近では、光ディスク10をセットするトレイが出入りせず、光ディスク10だけを開口部31に差し込んで挿入する、スロットイン方式の光ディスクドライブ30が開発されている。このようなスロットイン方式の光ディスクドライブ30では、光ディスク10が光ディスクドライブ30のカバー32の内面すれすれの所を出入りする。そのため、光ディスク10が出入りする際に、光ディスク10の表面が光ディスクドライブ30のカバー32の内面と擦れて摺動疵が入る場合があるため、これを防ぐために光ディスク10の表面に疵が付くことを防ぐ処理がカバー32の内面側に必要となる。
かかる処理として従来は、スロットイン方式の光ディスクドライブ30のカバー32の内面に、部分的に疵付き防止のためのコーティング(ポストコーティング)を一枚一枚施していた。
このような要望に対し、本発明者は、フッ素系樹脂をマトリックス層とし、このマトリックス層に対し、皮膜厚さと粒径との比率が所定の範囲内となる様な粒径のウレタンビーズが所定の配合比率で配合された樹脂皮膜を金属板表面に形成することにより、成形して使用するプレコート金属板にとって基本的な、優れた成形性および外観を有すると共に、粘着物を併用する用途において粘着物が付着しにくく、かつ、汚れや油がつきにくくするとともに、光ディスクへの疵付き防止性を兼ね備えたプレコート金属板を開発し、既に実用化もされている(特願2005−294109号参照)。
また、特許文献2に記載されているプレコート金属板の疵付き防止性では、ユーザーによっては、必ずしも十分満足できる疵付き防止性を具備しているとはいえず、これらのユーザーからは、さらに疵付き防止性を高めて欲しいとの要求が強かった。
ここで、本発明に係るプレコート金属板に用いる軟質ビーズは、ウレタンビーズであるのが好ましい。
すなわち、ウレタンビーズの平均粒径をマトリックス層の平均厚さの1.1倍以上とすることによりウレタンビーズがマトリックス層の中に埋没するのを抑えることができ、またウレタンビーズの平均粒径をマトリックス層の平均厚さの5倍以下とすることによりウレタンビーズがマトリックス層から脱落するのを抑えることができるため、ウレタンビーズによるクッション材としての機能を高いレベルで引き出すことができる。また、ウレタンビーズの含有率をマトリックス層に対して15質量%以上とすることにより、ウレタンビーズのクッション材としての機能を確保でき、また、ウレタンビーズの含有率を50質量%以下とすることにより塗料の粘度増加が抑えられて適度な塗装性を確保することができる。
このようにすると、塗料中に分散した軟質ビーズが塗料中で沈降したり、再凝集したりすることが大幅に抑制される。そのため、塗料中の軟質ビーズの分散状態が良好なまま金属板に塗布されるため、塗装後の樹脂皮膜に、軟質ビーズの分散が不均一となる部位を生じさせるリスクを大幅に低下させることができる。その結果、軟質ビーズが部分的に少ない部分、つまり、マトリックス層が露出した部分が大幅に減る。これにより、光ディスクの表面が疵付いてしまう確率を低減させることができる。
本発明に係るプレコート金属板の製造方法によれば、金属板の表面に形成されたマトリックス層と軟質ビーズを含んでなる樹脂皮膜によって、成形して使用するプレコート金属板にとって基本的な、優れた成形性、外観を確保したプレコート金属板を製造することができる。特に、揮発成分の比率として芳香族炭化水素系溶剤の比率を適切に規制することによって、従来のプレコート金属板よりも光ディスクへの疵付き防止性を一層高めたプレコート金属板を製造することができる。
また、このような樹脂皮膜を備えた本発明のプレコート金属板によれば、部分的にポストコーティングする際の塗料代、塗装設備および排気などの環境設備代、塗布作業者の人件費、ロット管理やデリバリー管理などの工程管理費等を省くことができるので、大幅に低コスト化を図ることができる。
図1に示すように、本発明のプレコート金属板1は、ベース素材である金属板2の表面に形成された樹脂皮膜3を備える。このうち樹脂皮膜3については、ポリエステル樹脂と硬化剤とが架橋反応してなるマトリックス層4と、このマトリックス層4の中に分散された軟質ビーズ5とを含んでなり、軟質ビーズ5の含有率および平均粒径が所定の値となるように制御されている。
また、図示はしないが、例えば、同時に複数の光ディスク10を搭載することのできる、光ディスクオートチェンジャー用ディスクトレイのように、トレイの両面に光ディスク10が接触する場合において、本発明のプレコート金属板1をトレイとして使用するときは、金属板2の両面に本発明の樹脂皮膜3を形成すればよい。次に、各構成について説明する。
本発明で用いられる金属板2には特に制限がなく、最も一般的な冷延鋼板の他、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板や銅めっき鋼板、錫めっき鋼板等の各種めっき鋼板、さらには、ステンレス鋼等の合金鋼板や、アルミニウムまたはアルミニウム合金板や、銅または銅合金板等の非鉄金属板等の全てが適用可能である。ここで、ノートパソコン搭載用の光ディスクドライブのカバー類や、液晶表示装置のフレーム類、車載用電装品のカバー等軽さが求められる用途に対しては、アルミニウム板またはアルミニウム合金板が好ましい。これらの用途は軽さだけではなく強度も求められるため、特に、JISに規定する5052や5182に代表されるAl−Mg系合金がより好ましい。
樹脂皮膜3は、前記したように、マトリックス層4と、このマトリックス層4の中に分散された軟質ビーズ5とからなり、前記した金属板2の表面に形成される。
マトリックス層4に使用するポリエステル樹脂は、ガラス転移温度が0℃以上50℃以下、より好ましくは5℃以上40℃以下のポリエステル樹脂を用いる。ガラス転移温度をこの範囲にすることにより、架橋反応後のマトリックス層4が適度に軟質化されるため、プレコート金属板1の表面に形成された樹脂皮膜3に軟質ビーズ5の分散が不均一な部位が生じた場合であっても、露出しているマトリックス層4が比較的軟らかいため、光ディスク10に疵が付いてしまうのを抑制することができる。また、プレコート金属板1を製造する際にコイルとして巻き取った場合に、向かい合った樹脂皮膜3が接触する面同士が巻き取り時のコイル温度によって熱融着するブロッキング現象を生じにくくすることができる。
つまり、ガラス転移温度が50℃を超えるポリエステル樹脂をマトリックス層4に用いた場合には、これらの装置が実際に動作している50℃においても、マトリックス層4が硬いガラス状として存在することになるため、軟質ビーズ5が不均一に分散した部位があった場合に、光ディスク10が硬いガラス状のマトリックス層4と接触する可能性があり、それにより光ディスク10が疵付くおそれがある。
また、ガラス転移温度が0℃を下回るポリエステル樹脂をマトリックス層4に用いた場合には、マトリックス層4が軟らかくなりすぎて樹脂皮膜3のタック性(粘着性)が大きくなるため、加熱して塗装焼付けした金属板2をコイルとして巻き取る際に、樹脂皮膜3が接触する面同士が熱融着するブロッキング現象が生じる可能性がある。
このような、ガラス転移温度が0℃以上50℃以下のポリエステル樹脂は、大日本インキ化学工業社製、日本ペイント社製のものを好適に使用することができる。なお、同様の塗料は関西ペイント社製、大日本塗料社製、川上塗料社製のものなども使用することができる。
スロットイン方式の光ディスクドライブ30に光ディスク10が出入りする際に、光ディスク10に疵が付くのを防止するためには、前述したように樹脂皮膜3を軟らかくすることが不可欠となる。後で詳述するように、本願ではウレタンビーズに代表される軟質ビーズ5を使用して樹脂皮膜3を部分的に軟質化しているが、本来樹脂皮膜を軟らかくするための常套手段は、樹脂皮膜を部分的に軟質化することではなく樹脂皮膜全体を軟質化すること、すなわち、ビーズなどの添加剤には頼らず、マトリックス層そのものに使用する樹脂のガラス転移温度を下げる方法や、マトリックス層となる樹脂と硬化剤の架橋反応を抑制する方法などである。
これらの方法は、樹脂皮膜を部分的ではなく全体的に軟質化する効果があるため樹脂皮膜を軟質化させる効果は大きいといえるが、副作用として樹脂皮膜の表面全体にタック性が出てしまう。また、ビーズを使用していないため表面は平滑となる。このような平滑でタック性がある樹脂皮膜の表面が光ディスク10の表面に接触すると、光ディスク10が樹脂皮膜に貼り付いたような状態となり、光ディスク10を出し入れする際の光ディスク10自体の動きや光ディスクドライブ30など光ディスク10を使用する機器の動作が損なわれるという問題が生じる。
微小圧縮試験を行う試験機としては、例えば、島津製作所社製の微小圧縮試験機MCT−W500などがあり、この試験機を使用することにより、粒径1μmから100μm程度の単一ビーズに圧縮試験を行うことができる。より具体的には、粒径が5〜10μm、望ましくは8μm程度の単一ビーズを試験機の下部加圧板にセットし、上部加圧圧子を下げながら単一ビーズに圧縮変形を加えつつ同時に荷重を測定し、ビーズ径が10%減少した時点での荷重を10%圧縮荷重値とする。この10%圧縮荷重値をP(N)、測定したビーズの粒径をd(mm)とすると、次式(1)により10%変形時の圧縮強度St(MPa)を算出することができる(日本鉱業会誌、81.10.24(1965)参照)。なお、この10%変形時の圧縮強度St(MPa)が小さいほど、ビーズとしては軟らかいことになる。本発明では、この10%変形時の圧縮強度St(MPa)が10MPa以下であることが必要であり、より望ましくは5MPa以下である。
St=2.8P/(Πd2)・・・式(1)
(ただし、式(1)において、Πは、円周率を表わす。)
光ディスク10への疵付き防止性を高めるためには、軟質ビーズ5の含有率が、マトリックス層4に対して、多い方が好ましい。軟質ビーズ5の含有率が15質量%未満では、マトリックス層4中に固定される軟質ビーズ5の量が少なく、クッション材としての機能が低下し、疵付き防止性が劣ることになる。また、軟質ビーズ5の含有率を高くしていくと、軟質ビーズ5を分散させた塗料の粘度が増粘してしまうため、ロール塗装等で塗料を金属板2に塗装する場合に、膜厚を均一に制御することが困難となる(つまり、塗装性が悪化する)。以上の理由から、軟質ビーズ5の含有率は、マトリックス層4に対して、15質量%以上50質量%以下とする。より安定した塗装性を確保するためには、軟質ビーズ5の含有率を40質量%以下とすることが好ましい。
軟質ビーズ5で光ディスク10への疵付き防止性を向上させるためには、軟質ビーズ5の平均粒径がマトリックス層4の平均厚さより大きいことが重要である。軟質ビーズ5の平均粒径をマトリックス層4の平均厚さより大きくすることにより、図1に示すように、樹脂皮膜3の断面形状は軟質ビーズ5の存在する部分が凸となる微細な凹凸形状を有する樹脂皮膜3となる。そのため、光ディスク10と樹脂皮膜3とが接触する際に軟らかい軟質ビーズ5がクッション材として機能するだけでなく、光ディスク10とマトリックス層4とが直接接触するのを大幅に低減させることができるため、光ディスク10の動作不良を生じることなく疵付き防止性をより高めることができる。
耐食性皮膜が形成されていることによって、プレコート金属板1に耐食性が付与されるとともに、金属板2と樹脂皮膜3との接着性が向上する。
次に、図2を参照して、本発明に係るプレコート金属板の製造方法について詳細に説明する。
図2に示すように、本発明に係るプレコート金属板の製造方法は、塗布工程S1と、加熱工程S2と、を含んでなる。以下、各工程について説明する。なお、本発明の塗布工程S1には、後記する所定の組成を有する塗料を調整する作業も含まれている。
塗布工程S1は、塗料の必須成分として、ガラス転移温度が0℃以上50℃以下のポリエステル樹脂と、硬化剤と、微小圧縮試験による単一ビーズ10%変形時の圧縮強度が10MPa以下の軟質ビーズ5と、これらを均一に分散させるための揮発成分と、を十分混合させて熱硬化性ポリエステル系塗料(以下、これを単に「塗料」という。)を金属板2の表面に塗布する工程である。
なお、前記した必須成分のうち、軟質ビーズの含有率は、後に説明する加熱工程S2を経てポリエステル樹脂と硬化剤が架橋反応してできたマトリックス層4に対して15質量%以上50質量%以下となるようにあらかじめ比率調整する。
このうち、多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールなどの二価アルコールや、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの三価アルコール、さらには四価以上のアルコール類などを用いることができる。
これらの多価アルコールおよび多塩基酸は、一種類もしくは二種類以上同時に使用して縮合重合させてもよいが、縮合重合させて製造されたポリエステル樹脂のガラス転移温度を測定し、0℃以上50℃以下のものだけが本発明のプレコート金属板1の製造方法に用いることができる。
なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)などの常法により測定することができる。
軟質ビーズ5は、撹拌装置で十分撹拌させることで、塗料中に均一に分散させることができるが、撹拌を停止して長時間放置しておくと重力などで沈降したり、凝集したりすることがある。
揮発成分は、後記する加熱工程S2で加熱されて、架橋反応させる際に揮発してしまい、樹脂皮膜3の成分として残存するものではないが、その成分がどのようなものであるかによって、塗料中の軟質ビーズ5の分散性に影響を与えるため、結果的には塗装および架橋反応後の樹脂皮膜3中の軟質ビーズ5の分布にまで大きな影響を与える。
なお、使用している軟質ビーズ5の粒径に合わせて塗料の塗布量を調整することにより、軟質ビーズ5の平均粒径が、マトリックス層4の平均厚さの1.1倍以上5倍以下とすることができる。本発明では、軟質ビーズ5の平均粒径としては、5〜30μm程度のものを用いるのが好ましいとしていることから、塗布量は、金属板2の表面に平均厚さ3〜15μmのマトリックス層4が形成されるように、金属板2の搬送速度、ロールの回転方向と回転速度、ロール間の押し付け圧(ニップ圧)などを適宜調整するとよい。これらを調整することによって、金属板2に転写される、乾燥前の塗料の厚さ(つまり、ウェット膜厚)を変更することができる。その結果、後記する加熱工程S2によって架橋反応させるとともに、乾燥させた乾燥皮膜のマトリックス層4の平均厚さを調整することができ、前記したように、軟質ビーズ5の平均粒径がマトリックス層4の平均厚さの1.1倍以上5倍以下とすることができる。
さらに、前記したように、金属板2と樹脂皮膜3との間に耐食性皮膜を備える場合には、脱脂工程に引き続いて、クロムイオン等を含む化成処理液を金属板2の表面にスプレーして水洗するか、またはクロムイオン等を含む処理液を塗布して乾燥することにより耐食性皮膜を形成することができる。
加熱工程S2は、塗布工程S1で塗布された塗料を有する金属板2を、加熱温度が200℃以上300℃以下、加熱時間が20秒間以上60秒間以下の条件で加熱する工程である。この加熱工程S2で、塗料中に含まれる揮発成分が蒸発して乾燥するとともに、加熱された塗料は架橋反応して金属板2の表面に樹脂皮膜3(軟質ビーズ5を含むマトリックス層4)を形成し、当該金属板2に強固に接着される。なお、いうまでもなく、加熱工程S2で加熱された軟質ビーズ5は、マトリックス層4中に適度に分散された状態で固定されている。
この加熱工程S2は、例えば、熱風炉、誘導加熱炉、近赤外線炉、遠赤外線炉、エネルギー線硬化炉を用いて行うことができる。
表1に示すように、実施例1〜10は、ガラス転移温度が0℃以上50℃以下のポリエステル樹脂と、硬化剤と、本発明で規定する10%変形時の圧縮強度を持つ軟質ビーズと、これらを分散させる揮発成分と、を含む塗料を金属板に塗布し、次いで、塗料を塗布した金属板を加熱温度250℃、加熱時間30秒間で加熱して焼付することによって樹脂皮膜を備えたプレコート金属板を製造した。ここで、軟質ビーズとしてはウレタンビーズを用いた。なお、実施例1〜10に用いた金属板は、耐食性を向上させるための耐食性皮膜としてリン酸クロメート処理をその両面にあらかじめ形成してあるものを用いた。リン酸クロメート皮膜の付着量はCr換算で20mg/m2であった。プレコート金属板の各構成は以下のとおりである。
金属板は、厚さ0.5mm、JIS規定の5052−H34のアルミニウム合金板を使用した。
樹脂皮膜は、リン酸クロメート皮膜の上に軟質ビーズとしてウレタンビーズを分散させた、ガラス転移温度が0℃以上50℃以下であるポリエステル樹脂を含む塗料を塗布し、前記した加熱温度および加熱時間で加熱処理を行うことで形成した。
ここで、金属板の加熱方式は、塗料を塗布した金属板がコンベアに乗ってオーブンの入り口から出口へ移動する連続焼付け方式とし、金属板がオーブン内を通過する時間を加熱時間と定義し、これを30秒とした。また、金属板に貼り付けたヒートラベルで確認される金属板の最高到達温度を加熱温度と定義し、これを250℃とした。
ガラス転移温度が0℃以上50℃以下のポリエステル樹脂は、大日本インキ化学工業社製、日本ペイント社製のものを使用した。
実施例1〜10の対照として、比較例1〜12のプレコート金属板を製造した。比較例1〜12のプレコート金属板の製造は、以下に述べる点を除いて、実施例1〜10を製造した条件・構成に準じた。
比較例1および比較例2は、ガラス転移温度が本発明で規定する数値範囲を満たしていない。比較例3から比較例6は、本発明で規定するポリエステル樹脂でない種類の樹脂を使用した。比較例7および比較例8は、軟質ビーズの平均粒径と、マトリックス層の平均厚さとの関係が、本発明で規定する数値範囲を満たしていない。また、比較例9と比較例10は、軟質ビーズの添加量が本発明で規定する数値範囲を満たしていない。さらに、比較例11と比較例12は、本発明で規定する10%変形時の圧縮強度を持たないビーズ(つまり、軟質でないビーズ)を使用した比較例である。
光ディスクへの疵付き防止性は、市販の光ディスクの記録面を、プレコート金属板の樹脂皮膜表面に接触させて、軽く指で押さえながら左右に10往復擦りつけた後、光ディスク表面の疵を目視にて観察し、疵が認められない場合を「○」、少しでも疵がある場合を「×」とした。なお試験は50℃に加温して実施した。
これを一種類の実施例または比較例に対してそれぞれ100回試験を行い、「○」の確率が95%以上の場合を疵付き防止性が良好(合格)であるとし、「○」の確率が95%未満の場合を疵付き防止性が不良(不合格)であるとした。
塗装性は、塗料の粘度測定によって確認した。具体的には、塗料の粘度測定に広く用いられるフォードカップ#4を使用し、塗料の固形分が30%以上確保された状態、すなわち揮発成分の比率が70%を超えない範囲で粘度を測定し、粘度が120秒以内である場合には塗装可能、120秒を超え180秒以内の場合は塗装性やや難(表1において「塗装性やや難」と示す。)、180秒を超える場合には塗装性不良(表1において「塗装性不良」と示す。)と判断した。
ブロッキング性は、塗料の塗布工程および加熱工程を経たプレコート金属板の塗膜(樹脂皮膜)面同士を向かい合わせた状態で、70℃に加熱したホットプレスに軽く挟んで1分間以上保持し、取り出したプレコート金属板の塗膜面同士が接着していなければ良好、接着した場合は不良(表1において「ブロッキング性不良」と示す。)と判断した。
また、比較例3〜6のプレコート金属板は、ポリエステル樹脂でない樹脂を用いたため、光ディスクへの疵付き防止性が不良となった。
そして、比較例10のプレコート金属板は、軟質ビーズの含有率が本発明で規定する数値範囲を超えたものであったため、光ディスクへの疵付き防止性は良好であったものの、塗料の粘度が著しく増加し、塗装性が不良となった。
また、塗料の塗装性およびプレコート金属板としての一般的な性能を確保するため、通常用いられる、顔料、顔料分散剤、流動性調節剤、レベリング剤、ワキ防止剤、防腐剤、安定化剤などを含有させてもよい。
さらに、両者の密着性を高めるための下塗り層を、樹脂皮膜と、金属板および/または耐食性皮膜と、の間に設けてもよい。これにより、プレコート金属板の成形性をより向上させることができる。
2 金属板
3 樹脂皮膜
4 マトリックス層
5 軟質ビーズ
S1 塗布工程
S2 加熱工程
10 光ディスク
20 トレイ方式の光ディスクドライブ
21 トレイ
22 カバー
30 スロットイン方式の光ディスクドライブ
31 開口部
32 カバー
Claims (7)
- 金属板とその表面に形成された樹脂皮膜とを備え、成形されて使用されるプレコート金属板であって、
前記樹脂皮膜は、ガラス転移温度が0℃以上50℃以下のポリエステル樹脂が硬化剤と架橋反応してなるマトリックス層と、前記マトリックス層の中に分散された微小圧縮試験による単一ビーズ10%変形時の圧縮強度が10MPa以下の軟質ビーズと、を備え、
前記軟質ビーズは、前記マトリックス層に対する含有率が15質量%以上50質量%以下で、平均粒径が前記マトリックス層の平均厚さの1.1倍以上5倍以下であることを特徴とするプレコート金属板。 - 前記軟質ビーズが、ウレタンビーズであることを特徴とする請求項1に記載のプレコート金属板。
- 前記金属板は、アルミニウム板またはアルミニウム合金板であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプレコート金属板。
- 金属板の表面に樹脂皮膜を形成された、成形されて使用されるプレコート金属板の製造方法であって、
ガラス転移温度が0℃以上50℃以下のポリエステル樹脂と、硬化剤と、微小圧縮試験による単一ビーズ10%変形時の圧縮強度が10MPa以下の軟質ビーズと、これらを均一に分散させるための揮発成分と、を必須成分として含む塗料を、所定のウェット膜厚に前記金属板の表面に塗布する塗布工程と、
前記塗布工程で前記塗料が塗布された金属板を、加熱温度が200℃以上300℃以下、加熱時間が20秒間以上60秒間以下の条件で加熱することにより、前記ポリエステル樹脂と前記硬化剤とを架橋反応させてマトリックス層を生成して、前記塗料を乾燥皮膜とし、前記マトリックス層とその中に分散された前記軟質ビーズとを備える前記樹脂皮膜を前記金属板の表面に形成する加熱工程と、を含み、
前記塗布工程において、前記塗料は、前記樹脂皮膜において前記軟質ビーズが前記マトリックス層に対して15質量%以上50質量%以下の含有率となるように比率調整され、前記塗料のウェット膜厚は、前記樹脂皮膜において前記軟質ビーズの平均粒径が前記マトリックス層の平均厚さの1.1倍以上5倍以下の関係となる当該平均厚さになるように計算されたことを特徴とするプレコート金属板の製造方法。 - 前記揮発成分は、芳香族炭化水素系溶剤を含み、その揮発成分中における前記芳香族炭化水素系溶剤の含有比率が30質量%以上であることを特徴とする請求項4に記載のプレコート金属板の製造方法。
- 前記軟質ビーズが、ウレタンビーズであることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のプレコート金属板の製造方法。
- 前記金属板は、アルミニウム板またはアルミニウム合金板であることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか1項に記載のプレコート金属板の製造方法。
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