JP5426824B2 - プレコート金属板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、アルミニウム合金板材に、エポキシ系樹脂、ウレタン樹脂およびアクリル樹脂の単独あるいはその混合物をベース樹脂とし、粒径0.1μm以下のSiO2を5〜40%、および潤滑剤を5〜60%含む塗料が、0.5〜10μmの厚さで塗装され、摩擦係数を0.15以下に制御した成形性と疵付き防止性に優れたプレコート金属板が提案されている。
図3(a)に示すように、トレイ方式の光ディスクドライブ20には、トレイ21に、CDやDVDなどの光ディスク10をセットし、トレイ21をカバー22の中へ装入する方式のもので、これまで多くの製品に採用されてきた方式である。
また、図3(b)に示すように、最近では、光ディスク10をセットするトレイが出入りせず、光ディスク10だけを開口部31に差し込んで挿入する、スロットイン方式の光ディスクドライブ30が開発されている。このようなスロットイン方式の光ディスクドライブ30では、光ディスク10が光ディスクドライブ30のカバー32の内面すれすれの所を出入りする。そのため、光ディスク10が出入りする際に、光ディスク10の表面が光ディスクドライブ30のカバー32の内面と擦れて摺動疵が入る場合があるため、これを防ぐために光ディスク10の表面に疵が付くことを防ぐ処理がカバー32の内面側に必要となる。
かかる処理として従来は、スロットイン方式の光ディスクドライブ30のカバー32の内面に、部分的に疵付き防止のためのコーティング(ポストコーティング)を一枚一枚施していた。
このような要望に対し、例えば、特許文献2には、フッ素系樹脂をマトリックス層とし、このマトリックス層に対し、皮膜厚さと粒径との比率が所定の範囲内となる様な粒径のウレタンビーズが所定の配合比率で配合された樹脂皮膜を金属板表面に形成することにより、成形して使用するプレコート金属板にとって基本的な、優れた成形性および外観を有すると共に、粘着物を併用する用途において粘着物が付着しにくく、かつ、汚れや油がつきにくくするとともに、光ディスクへの疵付き防止性を兼ね備えたプレコート金属板が開示されている。
このようにすれば、例えば、加熱処理等を受けても皮膜表面や皮膜中に高分子型帯電防止剤であるポリカルボン酸もしくはその誘導体、またはポリエチレングリコール系帯電防止剤が残存するため、静電気を確実に除去することが可能となる。したがって、プレコート金属板の表面に埃などの異物がより付着しにくくなるため、これと接触する被接触物に対する疵付き防止性をさらに向上させることが可能となる。
このようにすれば、軟質ビーズを確実に保持することができるので、被接触物に対する疵付き防止性を確実に得ることができる。
このようにすれば、ウレタンビーズが十分な軟らかさを有するクッション材として機能するため、被接触物が接触した場合であっても当該被接触物が疵付くのを確実に防止することができる。
このようにすれば、十分な強度を有しつつ、軽量なプレコート金属板とすることができる。
このようにすれば、例えば、加熱処理等を受けても皮膜表面や皮膜中に高分子型帯電防止剤であるポリカルボン酸もしくはその誘導体、またはポリエチレングリコール系帯電防止剤が残存するため、静電気を確実に除去することが可能となる。したがって、これによって製造されたプレコート金属板は、その表面に埃などの異物がより付着しにくくなるため、これと接触する被接触物に対する疵付き防止性をさらに向上させることが可能となる。
このようにすれば、軟質ビーズを確実に保持することができるので、被接触物に対する疵付き防止性を確実に得ることが可能なプレコート金属板を製造することができる。
このようにすれば、ウレタンビーズが十分な軟らかさを有するクッション材として機能するため、被接触物が接触した場合であっても当該被接触物が疵付くのを確実に防止することが可能なプレコート金属板を製造することができる。
このようにすれば、十分な強度を有しつつ、軽量なプレコート金属板を製造することができる。
図1に示すように、本発明のプレコート金属板1は、ベース素材である金属板2の表面に形成された皮膜3を備える。このうち皮膜3については、静電気を除去することのできる除電樹脂で形成される樹脂マトリックス層4と、この樹脂マトリックス層4の中に分散された軟質ビーズ5とを含んでなり、軟質ビーズ5の含有率および平均粒径が所定の値となるように制御されている。
また、図示はしないが、例えば、同時に複数の光ディスク10を搭載することのできる、光ディスクオートチェンジャー用ディスクトレイのように、トレイの両面に光ディスク10が接触する場合は、本発明のプレコート金属板1を前記したトレイとして使用するときは、金属板2の両面に本発明の皮膜3を形成すればよい。次に、各構成について説明する。
本発明で用いられる金属板2には特に制限がなく、最も一般的な冷延鋼板の他、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板や銅めっき鋼板、錫めっき鋼板等の各種めっき鋼板、さらには、ステンレス鋼等の合金鋼板や、アルミニウムまたはアルミニウム合金板や、銅または銅合金板等の非鉄金属板等の全てが適用可能である。ここで、ノートパソコン搭載用の光ディスクドライブのカバー類や、液晶表示装置のフレーム類、車載用電装品のカバー等軽さが求められる用途に対しては、アルミニウム板またはアルミニウム合金板が好ましい。これらの用途は軽さだけではなく強度も求められるため、特に、JISに規定する5052や5182に代表されるAl−Mg系合金がより好ましい。
皮膜3は、前記したように、静電気を除去することのできる除電樹脂で形成される樹脂マトリックス層4と、この樹脂マトリックス層4の中に分散された軟質ビーズ5とからなり、前記した金属板2の表面に形成される。
(除電樹脂)
樹脂マトリックス層4に使用する除電樹脂は、静電気を自然放電やアース効果により、プレコート金属板1の表面から除去できる樹脂であれば好適に使用することができる。
例えば、ベース樹脂に導電性高分子を5質量%以上の含有率で含んでなる除電樹脂、または、ベース樹脂に高分子型帯電防止剤を5質量%以上20質量%以下の含有率で含んでなる除電樹脂であれば、プレコート金属板1の表面に帯電する静電気を自然放電やアース効果によって除電することができるので好適である。
ここで、ベース樹脂に導電性高分子を5質量%以上の含有率で含んでなる除電樹脂を用いる場合、これに含まれる導電性高分子としては、例えば、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリピロール系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ジチアフルベン骨格を有する導電性高分子、液晶構造を分子内に有する光導電性高分子、または溶融塩構造のイオン導電性高分子を好適に用いることができる。
この導電性高分子は、ベース樹脂に5質量%以上100質量%以下の含有率で含まれて樹脂マトリックス層4を形成していればプレコート金属板1の表面から静電気を除去することができるがコストの観点から好ましくない。望ましくは、その上限値を50質量%以下、より望ましくは25質量%以下とするのがよい。
また、ベース樹脂に高分子型帯電防止剤を5質量%以上20質量%以下の含有率で含んでなる除電樹脂を用いる場合、これに含まれる高分子型帯電防止剤は、有機系の高分子型帯電防止剤を用いるのが好ましく、そのような高分子型帯電防止剤としては、例えば、ポリエチレングリコールおよびその誘導体(ポリエチレングリコール系帯電防止剤)、第4級アンモニウム塩型スチレン重合体、第4級アンモニウム塩型アミノアルキル(メタ)アクリレート重合体、第4級アンモニウム塩型ジアリルアミン重合体、スルホン酸塩型スチレン重合体、ポリオキシエチレンジアミン、ポリエーテル・ポリエステル・ポリアミドブロック共重合物、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、ポリカルボン酸およびその誘導体(特殊ポリカルボン酸型高分子帯電防止剤)などを用いることができる。中でも特殊ポリカルボン酸型高分子帯電防止剤またはポリエチレングリコール系帯電防止剤を好適に用いることができる。
前記したベース樹脂としては、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、またはフッ素系樹脂を用いるのが望ましい。なお、樹脂マトリックス層4を導電性樹脂のみ(導電性樹脂の含有率が100%)で形成する場合は、導電性樹脂がすなわちベース樹脂であるということができる。
このうち、多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールなどの二価アルコールや、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの三価アルコール、さらには四価以上のアルコール類などを用いることができる。
また、多塩基酸としては、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸などの二塩基酸や、無水トリメリット酸などの三塩基酸、さらには四価以上の多塩基酸などを用いることができる。これらの多価アルコールおよび多塩基酸は、一種類もしくは二種類以上同時に使用して縮合重合させてもよい。
なお、これらを硬化させる硬化剤としては、二個以上のアミノ基を有するアミン系硬化剤や、二個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート系硬化剤などが使用可能であるが、塗料の安定性などからアミン系硬化剤を使用するのが望ましく、中でもメラミン系硬化剤がより望ましい。
なお、焼付け硬化型エポキシ系樹脂や2液硬化型エポキシ系樹脂の他に、乾性油脂肪酸にエポキシ系樹脂を反応させたエステル化合物を用いたエポキシエステル樹脂や、エポキシ系樹脂の末端にメタクリル酸メチルを結合させてスチレンなどと共重合させたビニルエステルも用いることができる。
本発明のプレコート金属板1と被接触物とが接触した際に被接触物に疵が付くのを防止するためには、前述したように皮膜3を軟質化することと、静電気による異物の付着を抑止することが不可欠となる。本発明では、除電樹脂によって静電気による異物の付着を抑止し、かつ、ウレタンビーズに代表される軟質ビーズ5をクッション材として機能させることによって部分的に皮膜3を軟質化することによって被接触物に対する疵付き防止性を向上させている。
微小圧縮試験を行う試験機としては、例えば、島津製作所社製の微小圧縮試験機MCT−W500などがあり、この試験機を使用することにより、粒径1μmから100μm程度の単一ビーズに圧縮試験を行うことができる。より具体的には、粒径が5〜10μm、望ましくは8μm程度の単一ビーズを試験機の下部加圧板にセットし、上部加圧圧子を下げながら単一ビーズに圧縮変形を加えつつ同時に荷重を測定し、ビーズ径が10%減少した時点での荷重を10%圧縮荷重値とする。この10%圧縮荷重値をP[N]、測定したビーズの粒径をd[mm]とすると、次式(1)により10%変形時の圧縮強度St[MPa]を算出することができる(日本鉱業会誌、81.10.24(1965)参照)。なお、この10%変形時の圧縮強度St[MPa]が小さいほど、ビーズとしては軟らかいことになる。本発明では、この10%変形時の圧縮強度St[MPa]が10MPa以下であることが必要であり、より望ましくは5MPa以下である。
St=2.8P/(Πd2)・・・式(1)
(ただし、式(1)において、Πは、円周率を表わす。)
被接触物への疵付き防止性を高めるためには、軟質ビーズ5の含有率が、樹脂マトリックス層4に対して、多い方が好ましい。軟質ビーズ5の含有率が15質量%未満では、樹脂マトリックス層4中に固定される軟質ビーズ5の量が少なく、クッション材としての機能が低下し、疵付き防止性が劣ることになる。また、軟質ビーズ5の含有率を高くしていくと、軟質ビーズ5を分散させた塗料の粘度が増粘してしまうため、ロール塗装等で塗料を金属板2に塗装する場合に、膜厚を均一に制御することが困難となる(つまり、塗装性が悪化する)。以上の理由から、軟質ビーズ5の含有率は、樹脂マトリックス層4に対して、15質量%以上40質量%以下とする。
軟質ビーズ5で被接触物への疵付き防止性を向上させるためには、軟質ビーズ5の平均粒径が樹脂マトリックス層4の平均厚さより大きいことが重要である。軟質ビーズ5の平均粒径を樹脂マトリックス層4の平均厚さより大きくすることにより、図1に示すように、皮膜3の断面形状は軟質ビーズ5の存在する部分が凸となる微細な凹凸形状を有するようになる。そのため、被接触物と皮膜3とが接触する際に軟らかい軟質ビーズ5がクッション材として機能するだけでなく、被接触物と樹脂マトリックス層4とが直接接触するのを大幅に低減させることができるため、被接触物への疵付き防止性をより高めることができる。
耐食性皮膜が形成されていることによって、プレコート金属板1に耐食性が付与されるとともに、金属板2と皮膜3との接着性が向上する。
次に、図2を参照して、本発明に係るプレコート金属板の製造方法について詳細に説明する。
図2に示すように、本発明に係るプレコート金属板の製造方法は、塗布工程S1と、乾燥工程S2と、を含んでなる。以下、各工程の内容について説明する。なお、本発明の塗布工程S1には、後記する所定の組成を有する塗料を調整する作業も含まれている。また、本発明に係るプレコート金属板1でした説明と重複する事項については、詳細な説明を省略することとする。
塗布工程S1は、塗料の必須成分として、静電気を除去することのできる除電樹脂と、微小圧縮試験による単一ビーズ10%変形時の圧縮強度が10MPa以下の軟質ビーズ5と、を十分混合させた塗料を金属板2の表面に塗布する工程である。
なお、前記した必須成分のうち、軟質ビーズ5の含有率は、後に説明する乾燥工程S2を経て形成される樹脂マトリックス層4に対して15質量%以上40質量%以下となるようにあらかじめ比率調整しておく。
なお、軟質ビーズ5は、撹拌装置で十分撹拌させることで、塗料中に均一に分散させることができる。例えば、超音波処理、マグネット・スターラやインペラー撹拌機による撹拌処理、ホモジナイザー、アトライター、ボールミル、ビーズミルなどを用いた撹拌処理方法を挙げることができる。
なお、使用している軟質ビーズ5の粒径に合わせて塗料の塗布量を調整することにより、軟質ビーズ5の平均粒径が、マトリックス層4の平均厚さの1.3倍以上3倍以下とすることができる。例えば、軟質ビーズ5の平均粒径が5〜30μm程度のものであれば、塗料の塗布量は、金属板2の表面に平均厚さ3〜15μmの樹脂マトリックス層4が形成されるように、金属板2の搬送速度、ロールの回転方向と回転速度、ロール間の押し付け圧(ニップ圧)などを適宜調整するとよい。これらを調整することによって、金属板2に転写される、乾燥前の塗料の厚さ(つまり、ウェット膜厚)を変更することができる。その結果、後記する乾燥工程S2によって塗料を乾燥させて皮膜3を形成させることによって樹脂マトリックス層4の平均厚さを調整することが可能となり、前記したように、軟質ビーズ5の平均粒径が樹脂マトリックス層4の平均厚さの1.3倍以上3倍以下とすることができる。
さらに、前記したように、金属板2と樹脂皮膜3との間に耐食性皮膜を備える場合には、脱脂工程に引き続いて、クロムイオン等を含む化成処理液を金属板2の表面にスプレーして水洗するか、またはクロムイオン等を含む処理液を塗布して乾燥することにより耐食性皮膜を形成することができる。
乾燥工程S2は、塗布工程S1で金属板2に塗布された塗料を乾燥させて皮膜3を形成する工程である。塗料を乾燥させることにより、金属板2の表面に皮膜3(軟質ビーズ5を含む樹脂マトリックス層4)を形成し、当該金属板2に強固に接着される。なお、いうまでもなく、乾燥工程S2で加熱された軟質ビーズ5は、マトリックス層4中に適度に分散された状態で固定されている。
この場合において、加熱温度が100℃未満であったり、加熱時間が20秒間未満であったりすると、塗料の乾燥が不十分となり、金属板2に強固に接着されないおそれがある。一方、加熱温度が200℃を超えたり、加熱時間が60秒間を超えたりすると、塗料(皮膜3)が熱劣化(分解)するため好ましくない。
この場合において、加熱温度が200℃未満であったり、加熱時間が20秒間未満であったりすると、皮膜3の形成が不十分となり、金属板2に強固に接着されないおそれがある。一方、加熱温度が300℃を超えたり、加熱時間が60秒間を超えたりすると、塗料(皮膜3)が熱劣化(分解)したり、コストアップとなったりするため好ましくない。
この乾燥工程S2は、例えば、熱風炉、誘導加熱炉、近赤外線炉、遠赤外線炉、エネルギー線硬化炉を用いて行うことができる。
《実施例A》で検討した項目は、塗料に用いた樹脂の種類、帯電防止剤の種類および含有率、皮膜の樹脂マトリックス層の平均厚さ、樹脂マトリックス層に分散された軟質ビーズの種類、圧縮強度、含有率および平均粒径である。そして、被接触物として光ディスクを用い、これに対する疵付き防止性(以下、単に「被接触物への疵付き防止性」という。)ならびに塗装性、ブロッキング性を評価した。以下に詳述する。
表1〜3に示すように、実施例は、ポリエステル樹脂、エポキシ系樹脂またはフッ素系樹脂、ウレタン系樹脂から選ばれるベース樹脂と、本発明で規定する10%変形時の圧縮強度を持つ軟質ビーズと、高分子型帯電防止剤と、を含む塗料を金属板に塗布し、次いで、塗料を塗布した金属板を加熱温度250℃、加熱時間30秒間で加熱して乾燥させることによって、除電樹脂で形成される樹脂マトリックス層を含む皮膜を形成したプレコート金属板を製造した。
なお、金属板は、厚さ0.5mm、JIS規定の5052−H34のアルミニウム合金板を使用した。
また、ベース樹脂は、大日本インキ化学工業社製、日本ペイント社製、日本パーカライジング社製のものを使用した。
実施例の対照として、比較例のプレコート金属板を製造した。比較例のプレコート金属板の製造は、以下に述べる点を除いて、実施例を製造した条件・構成に準じた。
比較例1、3、4、5、6、7、10、13、17、20、21、23、25、28、30、31、32、34はいずれも本発明で規定する高分子型帯電防止剤を含んでいない。また比較例2、9、11、15、18、26、29はいずれも本発明で規定する高分子型帯電防止剤ではない、低分子型の帯電防止剤(低分子型帯電防止剤)が使用されている。なお低分子型帯電防止剤は、具体的にはアルキルジエタノールアミンを使用し、表1〜3中では記号Lとした。また比較例12、16、19、27はいずれも本発明で規定する高分子型帯電防止剤の含有率が本発明で規定する範囲を満たしていない。比較例21、22、23、24は、軟質ビーズの平均粒径と、樹脂マトリックス層の平均厚さとの関係が、本発明で規定する数値範囲を満たしていない。また、比較例7、8、9、13、14、15、16は、軟質ビーズの含有率が本発明で規定する数値範囲を満たしていない。さらに、比較例32、33、34、35は、本発明で規定する10%変形時の圧縮強度を持たないビーズ(つまり、軟質でないビーズ)を使用した比較例である。
被接触物への疵付き防止性は、市販の光ディスクの記録面を、プレコート金属板の皮膜表面に接触させて、軽く指で押さえながら左右に10往復擦りつけた後、光ディスク表面の疵を目視にて観察し、疵が認められない場合を「○」、少しでも疵がある場合を「×」とした。なお試験は50℃に加温して実施した。
これを一種類の実施例または比較例に対してそれぞれ100回試験を行い、「○」の確率が99%以上の場合を疵付き防止性が良好(合格)であるとし、「○」の確率が99%未満の場合を疵付き防止性が不良(不合格)であるとした。
塗装性は、塗料の粘度測定によって確認した。具体的には、塗料の粘度測定に広く用いられるフォードカップ#4を使用し、塗料の固形分が30%以上確保された状態で粘度を測定し、粘度が120秒以内である場合には塗装可能、120秒を超える場合には塗装性不良(表1〜3において「塗装性難」と示す。)と判断した。
ブロッキング性は、塗料の塗布工程および乾燥工程を経たプレコート金属板の塗膜(皮膜)面同士を向かい合わせた状態で、70℃に加熱したホットプレスに軽く挟んで1分間以上保持し、取り出したプレコート金属板の塗膜面同士が接着していなければ良好、軽いタック感があるが接着には至らないものは使用可能(表1〜3において「軽微なブロッキング」と示す。)、接着した場合は不良(表1〜3において「ブロッキング」と示す。)と判断した。
《参考例B》で検討した項目は、塗料に用いた樹脂の種類、導電性高分子の含有率および皮膜の樹脂マトリックス層の平均厚さ、樹脂マトリックス層に分散された軟質ビーズの種類、圧縮強度、含有率および平均粒径である。そして、≪実施例A≫と同様に被接触物として光ディスクを用い、これに対する疵付き防止性(被接触物への疵付き防止性)ならびに塗装性、ブロッキング性を評価した。以下に詳述する。
表4,5に示すように、参考例は、ポリエステル樹脂およびエポキシ樹脂から選ばれるベース樹脂と、本発明で規定する10%変形時の圧縮強度を持つ軟質ビーズと、導電性高分子と、を含む塗料を金属板に塗布し、次いで、塗料を塗布した金属板を加熱温度150℃、加熱時間30秒間で加熱して乾燥させることによって、除電樹脂で形成される樹脂マトリックス層を含む皮膜を形成したプレコート金属板を製造した。
なお、金属板は、厚さ0.5mm、JIS規定の5052−H34のアルミニウム合金板を使用した。
また、ベース樹脂は、大日本インキ化学工業社製、日本ペイント社製、日本パーカライジング社製のものを使用した。
参考例の対照として、比較例のプレコート金属板を製造した。比較例のプレコート金属板の製造は、以下に述べる点を除いて、参考例を製造した条件・構成に準じた。
比較例36、37、38、39、40、41、43、44、46、47、48、50、52、53、54、56はいずれも本発明で規定する導電性高分子を含んでいない。比較例48、49、50、51は、軟質ビーズの平均粒径と、樹脂マトリックス層の平均厚さとの関係が、本発明で規定する数値範囲を満たしていない。また、比較例41、42、44、45は、軟質ビーズの含有率が本発明で規定する数値範囲を満たしていない。さらに、比較例54、55、56、57は、本発明で規定する10%変形時の圧縮強度を持たないビーズ(つまり、軟質でないビーズ)を使用した比較例である。
表4,5に、《参考例B》における参考例および比較例に係るプレコート金属板を製造した条件・構成、および、被接触物への疵付き防止性、塗装性およびブロッキング性についての評価を示す。なお、表4,5中の下線は、本発明で規定する要件を満たさないことを示す。
また、塗料の塗装性およびプレコート金属板としての一般的な性能を確保するため、通常用いられる、顔料、顔料分散剤、流動性調節剤、レベリング剤、ワキ防止剤、防腐剤、安定化剤などを含有させてもよい。
さらに、両者の密着性を高めるための下塗り層を、樹脂皮膜と、金属板および/または耐食性皮膜と、の間に設けてもよい。これにより、プレコート金属板の成形性をより向上させることができる。
2 金属板
3 皮膜
4 樹脂マトリックス層
5 軟質ビーズ
S1 塗布工程
S2 乾燥工程
10 光ディスク
20 トレイ方式の光ディスクドライブ
21 トレイ
22 カバー
30 スロットイン方式の光ディスクドライブ
31 開口部
32 カバー
Claims (11)
- 金属板の表面に形成された皮膜を備えるプレコート金属板であって、
前記皮膜は、
ベース樹脂に高分子型帯電防止剤を5質量%以上20質量%以下の含有率で含んでなる除電樹脂で形成される樹脂マトリックス層と、
前記樹脂マトリックス層の中に分散され、微小圧縮試験による単一ビーズ10%変形時の圧縮強度が10MPa以下であり、平均粒径が前記樹脂マトリックス層の平均厚さの1.3倍以上3倍以下、かつ前記樹脂マトリックス層中における含有率が15質量%以上40質量%以下で含有される軟質ビーズと、
を含むことを特徴とするプレコート金属板。 - 前記高分子型帯電防止剤が、ポリカルボン酸もしくはその誘導体、またはポリエチレングリコール系帯電防止剤であることを特徴とする請求項1に記載のプレコート金属板。
- 前記ベース樹脂が、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、またはフッ素系樹脂であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプレコート金属板。
- 前記軟質ビーズがウレタンビーズであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプレコート金属板。
- 前記金属板が純アルミニウム板またはアルミニウム合金板であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプレコート金属板。
- 金属板の表面に皮膜を備えるプレコート金属板の製造方法であって、
塗料の必須成分として、ベース樹脂に高分子型帯電防止剤を5質量%以上20質量%以下の含有率で含んでなる除電樹脂と、微小圧縮試験による単一ビーズ10%変形時の圧縮強度が10MPa以下であり、前記除電樹脂にて形成される樹脂マトリクス層中における含有率が15質量%以上40質量%以下となるようにあらかじめ比率調整された軟質ビーズと、を含有する塗料を、乾燥工程後の乾燥皮膜となった際に、前記軟質ビーズの平均粒径が前記樹脂マトリックス層の平均厚さの1.3倍以上3倍以下となるようにあらかじめ計算されたウェット膜厚となるように、前記金属板の表面に塗布する塗布工程と、
前記塗布工程で前記金属板に塗布された前記塗料を乾燥させて前記皮膜を形成する乾燥工程と、
を含むことを特徴とするプレコート金属板の製造方法。 - 前記乾燥工程は、加熱温度を200℃以上300℃以下、加熱時間を20秒間以上60秒間以下の条件とすることを特徴とする請求項6に記載のプレコート金属板の製造方法。
- 前記高分子型帯電防止剤が、ポリカルボン酸もしくはその誘導体、またはポリエチレングリコール系帯電防止剤であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のプレコート金属板の製造方法。
- 前記ベース樹脂が、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、またはフッ素系樹脂であることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか1項に記載のプレコート金属板の製造方法。
- 前記軟質ビーズがウレタンビーズであることを特徴とする請求項6から請求項9のいずれか1項に記載のプレコート金属板の製造方法。
- 前記金属板が純アルミニウム板またはアルミニウム合金板であることを特徴とする請求項6から請求項10のいずれか1項に記載のプレコート金属板の製造方法。
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