JP5426824B2 - プレコート金属板およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、家庭用電気製品や自動車用車載部品等の外板材や構造部材、更には建材、屋根材等に使用されるプレコート金属板およびその製造方法に関する。
鋼板やアルミニウム板またはアルミニウム合金板に代表される金属薄板材(金属板)は、高い強度と成形性を兼ね備えており、様々な成形を施すことにより家庭用電気製品、自動車用車載部品、更には建材等の様々な用途に適用されている。これらの用途に使用される金属板の成形品は、外観や耐食性等の向上を目的として表面処理が行なわれることがある。この表面処理は、従来、金属板を所定の形状に成形してから行なうポストコート方式が主流であったが、最近では、職場環境の改善や製造工程の簡素化とコスト低減等を目的として、予め金属板に表面処理されたプレコート金属板を所定の形状に成形して用いるプレコート方式も定着している。さらに、近年、かかるプレコート金属板は、製品、機器の多様化と高級化に応えるため、種々の機能、例えば、耐指紋性、疵付き防止性、アース接続性、放熱性、遮熱性、抗菌性、潤滑性等を付与した機能性プレコート金属板が開発され、広く普及している。
このような、プレコート金属板では、表面処理が施された状態で成形が行なわれるので、皮膜には優れた成形性が要求されるばかりでなく、成形後の外観がそのまま製品外観になるため、優れた表面外観、性状等が要求される。
例えば、特許文献1には、アルミニウム合金板材に、エポキシ系樹脂、ウレタン樹脂およびアクリル樹脂の単独あるいはその混合物をベース樹脂とし、粒径0.1μm以下のSiO2を5〜40%、および潤滑剤を5〜60%含む塗料が、0.5〜10μmの厚さで塗装され、摩擦係数を0.15以下に制御した成形性と疵付き防止性に優れたプレコート金属板が提案されている。
特許文献1に記載のプレコート金属板は、アルミニウム合金板材から構成されているが、一般に、アルミニウムを素材とするプレコート金属板は軽さが求められる用途に適しており、例えば、ノートパソコン搭載用の光ディスクドライブのカバー類や、液晶表示装置のフレーム、バックカバー類、車載用電装品である、ECU(Electronic Control Unit)やカーステレオ、カーナビゲーションシステム、光ディスクオートチェンジャー等のカバー類や構造部材にも使用されている。
図3(a)(b)は、従来の光ディスクドライブとこれに用いられる光ディスクを示す斜視図であり、(a)はトレイ方式の光ディスクドライブを示し、また、(b)はスロットイン方式の光ディスクドライブを示す。
図3(a)に示すように、トレイ方式の光ディスクドライブ20には、トレイ21に、CDやDVDなどの光ディスク10をセットし、トレイ21をカバー22の中へ装入する方式のもので、これまで多くの製品に採用されてきた方式である。
また、図3(b)に示すように、最近では、光ディスク10をセットするトレイが出入りせず、光ディスク10だけを開口部31に差し込んで挿入する、スロットイン方式の光ディスクドライブ30が開発されている。このようなスロットイン方式の光ディスクドライブ30では、光ディスク10が光ディスクドライブ30のカバー32の内面すれすれの所を出入りする。そのため、光ディスク10が出入りする際に、光ディスク10の表面が光ディスクドライブ30のカバー32の内面と擦れて摺動疵が入る場合があるため、これを防ぐために光ディスク10の表面に疵が付くことを防ぐ処理がカバー32の内面側に必要となる。
かかる処理として従来は、スロットイン方式の光ディスクドライブ30のカバー32の内面に、部分的に疵付き防止のためのコーティング(ポストコーティング)を一枚一枚施していた。
このようなポストコーティングをカバー32一枚一枚に施すことは、非常に煩雑であるため、光ディスクが接触した場合であっても、光ディスクの表面を疵付け難い特性(以下、「疵付き防止性」という。)をあらかじめ備えたプレコート金属板の開発が望まれていた。
このような要望に対し、例えば、特許文献2には、フッ素系樹脂をマトリックス層とし、このマトリックス層に対し、皮膜厚さと粒径との比率が所定の範囲内となる様な粒径のウレタンビーズが所定の配合比率で配合された樹脂皮膜を金属板表面に形成することにより、成形して使用するプレコート金属板にとって基本的な、優れた成形性および外観を有すると共に、粘着物を併用する用途において粘着物が付着しにくく、かつ、汚れや油がつきにくくするとともに、光ディスクへの疵付き防止性を兼ね備えたプレコート金属板が開示されている。
そして、特許文献3には、スロットイン光ドライブを想定したプレコート金属板として、ポリエステル系、エポキシ系、アクリル系、のいずれかのベース樹脂に、ナイロン系、フッ素系、ウレタン系のいずれかの樹脂ビーズとカルナウバ、ポリエチレン、マイクロクリスタリンのいずれかのワックスを含有させることで、疵付き防止性を備えたプレコート金属板が開示されている。
特許第3338156号公報 特許第3846807号公報 特開2006−97127号公報
しかしながら、特許文献1記載のプレコート金属板は、プレコート金属板自体の成形性と耐疵付き性を向上させることができるものの、これと接触する被接触物に疵が付くのを防止する効果(疵付き防止性)、例えば、出し入れされる光ディスク表面の疵付き防止性を向上させる効果はないため、前記したように、成形が終了したカバー32の内面に一枚一枚ポストコーティングを施すことが必要となる。したがって、このような処理を行うとその処理が非常に煩雑であるため、きわめて生産性が低く、かつきわめて高価となるという問題があった。
また、特許文献2や特許文献3に記載されているプレコート金属板の疵付き防止性では、ユーザーによっては、必ずしも十分満足できる疵付き防止性を具備しているとはいえず、これらのユーザーからは、さらに疵付き防止性を高めて欲しいとの要求が強かった。
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、例えば、光ディスクなどの接触する対象物である被接触物への疵付き防止性を従来のプレコート金属板よりも向上させたプレコート金属板およびその製造方法を提供することを課題とする。
(1)前記課題を解決した本発明に係るプレコート金属板は、金属板の表面に形成された皮膜を備えるプレコート金属板であって、前記皮膜は、ベース樹脂に高分子型帯電防止剤を5質量%以上20質量%以下の含有率で含んでなる除電樹脂で形成される樹脂マトリックス層と、前記樹脂マトリックス層の中に分散され、微小圧縮試験による単一ビーズ10%変形時の圧縮強度が10MPa以下であり、平均粒径が前記樹脂マトリックス層の平均厚さの1.3倍以上3倍以下、かつ前記樹脂マトリックス層中における含有率が15質量%以上40質量%以下で含有される軟質ビーズと、を含むことを特徴としている。
このように、本発明に係るプレコート金属板は、表面に形成した樹脂マトリックス層と軟質ビーズを有する皮膜によって、成形して使用するプレコート金属板にとって基本的な、優れた成形性、外観を確保することができる。そして、軟質ビーズの平均粒径、含有率をコントロールすることにより、プレコート金属板と被接触物の表面が接触しても当該軟質ビーズをクッション材として機能させることができるので、被接触物に対する疵付き防止性を向上させることができる。また、皮膜を形成する樹脂マトリックス層が、静電気を除去することのできる除電樹脂で形成されているので、プレコート金属板の表面に静電気が帯電するのを防止することができる。したがって、プレコート金属板の表面に埃などの異物の付着を抑止することができるため、これと接触する被接触物に対する疵付き防止性をより向上させることができる。
また、このようにすれば、除電樹脂がプレコート金属板の表面に静電気が帯電するのをより防止することができるので、プレコート金属板の表面に埃などの異物の付着をより抑止することが可能となる。そのため、これと接触する被接触物に対する疵付き防止性をさらに向上させることができる。
)本発明においては、前記高分子型帯電防止剤が、ポリカルボン酸もしくはその誘導体、またはポリエチレングリコール系帯電防止剤であるのが好ましい。
このようにすれば、例えば、加熱処理等を受けても皮膜表面や皮膜中に高分子型帯電防止剤であるポリカルボン酸もしくはその誘導体、またはポリエチレングリコール系帯電防止剤が残存するため、静電気を確実に除去することが可能となる。したがって、プレコート金属板の表面に埃などの異物がより付着しにくくなるため、これと接触する被接触物に対する疵付き防止性をさらに向上させることが可能となる。
)本発明においては、前記ベース樹脂が、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、またはフッ素系樹脂であるのが好ましい。
このようにすれば、軟質ビーズを確実に保持することができるので、被接触物に対する疵付き防止性を確実に得ることができる。
)本発明においては、前記軟質ビーズがウレタンビーズであるのが好ましい。
このようにすれば、ウレタンビーズが十分な軟らかさを有するクッション材として機能するため、被接触物が接触した場合であっても当該被接触物が疵付くのを確実に防止することができる。
)本発明においては、前記金属板が純アルミニウム板またはアルミニウム合金板であるのが好ましい。
このようにすれば、十分な強度を有しつつ、軽量なプレコート金属板とすることができる。
)本発明に係るプレコート金属板の製造方法は、金属板の表面に皮膜を備えるプレコート金属板の製造方法であって、塗布工程と、乾燥工程と、を含むことを特徴としている。
塗布工程では、塗料の必須成分として、ベース樹脂に高分子型帯電防止剤を5質量%以上20質量%以下の含有率で含んでなる除電樹脂と、微小圧縮試験による単一ビーズ10%変形時の圧縮強度が10MPa以下であり、前記除電樹脂にて形成される樹脂マトリクス層中における含有率が15質量%以上40質量%以下となるようにあらかじめ比率調整された軟質ビーズと、を含有する塗料を、乾燥工程後の乾燥皮膜となった際に、前記軟質ビーズの平均粒径が前記樹脂マトリックス層の平均厚さの1.3倍以上3倍以下となるようにあらかじめ計算されたウェット膜厚となるように、前記金属板の表面に塗布する処理を行う。そして、乾燥工程では、前記塗布工程で前記金属板に塗布された前記塗料を乾燥させて前記皮膜を形成する処理を行う。
このようにすれば、金属板の表面に塗布した塗料を乾燥させてなる樹脂マトリックス層に対して軟質ビーズの含有率が15質量%以上40質量%以下であり、軟質ビーズの平均粒径が、マトリックス層の平均厚さの1.3倍以上3倍以下である皮膜を備えたプレコート金属板を製造することができる。
)本発明においては、前記乾燥工程は、加熱温度を200℃以上300℃以下、加熱時間を20秒間以上60秒間以下の条件とするのが好ましい。
このようにすれば、乾燥工程の条件が適切であるので、良好な乾燥皮膜を形成させることができるだけでなく、高分子型帯電防止剤の熱分解を防止することができる。そのため、乾燥工程後に除電樹脂が静電気を除去する効果を損なわれにくくすることができる。したがって、これによって製造されたプレコート金属板は、より確実に静電気を除去することが可能となる。したがって、これによって製造されたプレコート金属板は、その表面に埃などの異物の付着をより抑止することが可能となるため、これと接触する被接触物に対する疵付き防止性をさらに向上させることが可能となる。
)本発明においては、前記高分子型帯電防止剤が、ポリカルボン酸もしくはその誘導体、またはポリエチレングリコール系帯電防止剤であるのが好ましい。
このようにすれば、例えば、加熱処理等を受けても皮膜表面や皮膜中に高分子型帯電防止剤であるポリカルボン酸もしくはその誘導体、またはポリエチレングリコール系帯電防止剤が残存するため、静電気を確実に除去することが可能となる。したがって、これによって製造されたプレコート金属板は、その表面に埃などの異物がより付着しにくくなるため、これと接触する被接触物に対する疵付き防止性をさらに向上させることが可能となる。
)本発明においては、前記ベース樹脂が、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、またはフッ素系樹脂であるのが好ましい。
このようにすれば、軟質ビーズを確実に保持することができるので、被接触物に対する疵付き防止性を確実に得ることが可能なプレコート金属板を製造することができる。
(1)本発明においては、前記軟質ビーズがウレタンビーズであるのが好ましい。
このようにすれば、ウレタンビーズが十分な軟らかさを有するクッション材として機能するため、被接触物が接触した場合であっても当該被接触物が疵付くのを確実に防止することが可能なプレコート金属板を製造することができる。
(1)本発明においては、前記金属板が純アルミニウム板またはアルミニウム合金板であるのが好ましい。
このようにすれば、十分な強度を有しつつ、軽量なプレコート金属板を製造することができる。
本発明に係るプレコート金属板によれば、金属板の表面に形成された、静電気を除去することのできる除電樹脂で形成される樹脂マトリックス層と軟質ビーズとを含んでなる皮膜によって、成形して使用するプレコート金属板にとって基本的な、優れた成形性、外観を確保することができるだけでなく、軟質ビーズの含有率や平均粒径を最適化することにより、クッション材として機能させることがきる。また、皮膜の樹脂マトリックス層が除電樹脂で形成されているため、プレコート金属板の表面に静電気が帯電するのを防止することができるので、皮膜への異物の付着を抑止することができる。そのため、皮膜の表面と被接触物が接触した場合であっても、被接触物に対する疵付き防止性を従来のプレコート金属板よりも大幅に向上させることができる。
また、本発明に係るプレコート金属板の製造方法によれば、除電樹脂および軟質ビーズを含む塗料を用いて適切な塗布工程および乾燥工程を行うことによって、成形して使用するプレコート金属板にとって基本的な、優れた成形性、外観を確保し、かつ、被接触物に対する疵付き防止性を従来よりも大幅に向上したプレコート金属板を製造することができる。
さらに、このような皮膜を備えた本発明のプレコート金属板によれば、部分的にポストコーティングする際の塗料代、塗装設備および排気などの環境設備代、塗布作業者の人件費、ロット管理やデリバリー管理などの工程管理費等を省くことができるので、大幅に低コスト化を図ることができる。
以下、適宜図面を参照して本発明に係るプレコート金属板およびプレコート金属板の製造方法を実施するための最良の形態について詳細に説明する。参照する図面において、図1は、本発明に係るプレコート金属板の構成を説明するための部分断面図である。図2は、本発明に係るプレコート金属板の製造方法の内容を説明するフローチャートである。なお、各図において、同一の構成要素には同一の符号を付して説明することとする。
1.プレコート金属板
図1に示すように、本発明のプレコート金属板1は、ベース素材である金属板2の表面に形成された皮膜3を備える。このうち皮膜3については、静電気を除去することのできる除電樹脂で形成される樹脂マトリックス層4と、この樹脂マトリックス層4の中に分散された軟質ビーズ5とを含んでなり、軟質ビーズ5の含有率および平均粒径が所定の値となるように制御されている。
ここで、金属板2の表面とは、金属板2の少なくとも一方の面を意味する。例えば、図3(b)に示したようなスロットイン方式の光ディスクドライブ30のカバー32を、本発明のプレコート金属板1を用いて製造した製品の一例として説明すると、被接触物である光ディスク10の接触する面がカバー32の内側の表面だけに限られる場合は、カバー32の内面となる表面のみに皮膜3を形成すればよい。この場合、被接触物である光ディスク10が直接接触することのないカバー32の外面となる表面は特に制約を受けない。
また、図示はしないが、例えば、同時に複数の光ディスク10を搭載することのできる、光ディスクオートチェンジャー用ディスクトレイのように、トレイの両面に光ディスク10が接触する場合は、本発明のプレコート金属板1を前記したトレイとして使用するときは、金属板2の両面に本発明の皮膜3を形成すればよい。次に、各構成について説明する。
(金属板)
本発明で用いられる金属板2には特に制限がなく、最も一般的な冷延鋼板の他、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板や銅めっき鋼板、錫めっき鋼板等の各種めっき鋼板、さらには、ステンレス鋼等の合金鋼板や、アルミニウムまたはアルミニウム合金板や、銅または銅合金板等の非鉄金属板等の全てが適用可能である。ここで、ノートパソコン搭載用の光ディスクドライブのカバー類や、液晶表示装置のフレーム類、車載用電装品のカバー等軽さが求められる用途に対しては、アルミニウム板またはアルミニウム合金板が好ましい。これらの用途は軽さだけではなく強度も求められるため、特に、JISに規定する5052や5182に代表されるAl−Mg系合金がより好ましい。
(皮膜)
皮膜3は、前記したように、静電気を除去することのできる除電樹脂で形成される樹脂マトリックス層4と、この樹脂マトリックス層4の中に分散された軟質ビーズ5とからなり、前記した金属板2の表面に形成される。
(樹脂マトリックス層)
(除電樹脂)
樹脂マトリックス層4に使用する除電樹脂は、静電気を自然放電やアース効果により、プレコート金属板1の表面から除去できる樹脂であれば好適に使用することができる。
例えば、ベース樹脂に導電性高分子を5質量%以上の含有率で含んでなる除電樹脂、または、ベース樹脂に高分子型帯電防止剤を5質量%以上20質量%以下の含有率で含んでなる除電樹脂であれば、プレコート金属板1の表面に帯電する静電気を自然放電やアース効果によって除電することができるので好適である。
(導電性高分子)
ここで、ベース樹脂に導電性高分子を5質量%以上の含有率で含んでなる除電樹脂を用いる場合、これに含まれる導電性高分子としては、例えば、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリピロール系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ジチアフルベン骨格を有する導電性高分子、液晶構造を分子内に有する光導電性高分子、または溶融塩構造のイオン導電性高分子を好適に用いることができる。
この導電性高分子は、ベース樹脂に5質量%以上100質量%以下の含有率で含まれて樹脂マトリックス層4を形成していればプレコート金属板1の表面から静電気を除去することができるがコストの観点から好ましくない。望ましくは、その上限値を50質量%以下、より望ましくは25質量%以下とするのがよい。
(高分子型帯電防止剤)
また、ベース樹脂に高分子型帯電防止剤を5質量%以上20質量%以下の含有率で含んでなる除電樹脂を用いる場合、これに含まれる高分子型帯電防止剤は、有機系の高分子型帯電防止剤を用いるのが好ましく、そのような高分子型帯電防止剤としては、例えば、ポリエチレングリコールおよびその誘導体(ポリエチレングリコール系帯電防止剤)、第4級アンモニウム塩型スチレン重合体、第4級アンモニウム塩型アミノアルキル(メタ)アクリレート重合体、第4級アンモニウム塩型ジアリルアミン重合体、スルホン酸塩型スチレン重合体、ポリオキシエチレンジアミン、ポリエーテル・ポリエステル・ポリアミドブロック共重合物、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、ポリカルボン酸およびその誘導体(特殊ポリカルボン酸型高分子帯電防止剤)などを用いることができる。中でも特殊ポリカルボン酸型高分子帯電防止剤またはポリエチレングリコール系帯電防止剤を好適に用いることができる。
なお、このような高分子型帯電防止剤を用いる場合は、樹脂マトリックス層4中における存在形態は特に限定されない。例えば、ベース樹脂を作る際に添加してモノマーの形態で存在させてもよく、また、できあがったベース樹脂に混練し、いわゆる複合樹脂(ポリマーアロイ)の形態で存在させてもよい。高分子型帯電防止剤をモノマーの形態で存在させると、皮膜本来の特性をほぼ維持したまま表面の帯電を防止することが期待でき、高分子型帯電防止剤をポリマーアロイの形態で存在させると、皮膜内部の帯電も防止することが期待できる。
この高分子型帯電防止剤は、ベース樹脂に5質量%以上20質量%以下の含有率で含まれて樹脂マトリックス層4を形成していることによって、プレコート金属板1の表面から静電気を除去することができる。高分子型帯電防止剤の含有率が0.5質量%未満であると、十分に静電気を除去することができないため、異物が皮膜3表面に付着しやすくなる。また、高分子型帯電防止剤の含有率が20質量%を超えると、静電気を除去する効果は殆ど向上しないだけでなく、皮膜3が着色したり、外観品位が低下したり、皮膜3の強度が低下したりする。また、コストアップにもなるため好ましくない。
(ベース樹脂)
前記したベース樹脂としては、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、またはフッ素系樹脂を用いるのが望ましい。なお、樹脂マトリックス層4を導電性樹脂のみ(導電性樹脂の含有率が100%)で形成する場合は、導電性樹脂がすなわちベース樹脂であるということができる。
ポリエステル系樹脂としては、多価アルコールと多塩基酸を縮合重合させることによって得られた飽和ポリエステル樹脂を用いるのが好ましい。
このうち、多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールなどの二価アルコールや、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの三価アルコール、さらには四価以上のアルコール類などを用いることができる。
また、多塩基酸としては、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸などの二塩基酸や、無水トリメリット酸などの三塩基酸、さらには四価以上の多塩基酸などを用いることができる。これらの多価アルコールおよび多塩基酸は、一種類もしくは二種類以上同時に使用して縮合重合させてもよい。
なお、これらを硬化させる硬化剤としては、二個以上のアミノ基を有するアミン系硬化剤や、二個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート系硬化剤などが使用可能であるが、塗料の安定性などからアミン系硬化剤を使用するのが望ましく、中でもメラミン系硬化剤がより望ましい。
エポキシ系樹脂としては、分子中の水酸基の反応を利用して焼付ける焼付け硬化型エポキシ系樹脂や、硬化剤として加えられる第1級アミンまたは第2級アミンとエポキシ基との付加反応による硬化を利用した2液硬化型エポキシ系樹脂が多く用いられる。焼付け硬化型エポキシ系樹脂には、アミン樹脂硬化型エポキシ系樹脂、フェノール樹脂硬化型エポキシ系樹脂、イソシアナート硬化型エポキシ系樹脂などが含まれる。二液硬化型エポキシ系樹脂には、アミン硬化型樹脂、アミンアダクト硬化型樹脂、ポリアミド樹脂硬化型樹脂などが含まれる。
なお、焼付け硬化型エポキシ系樹脂や2液硬化型エポキシ系樹脂の他に、乾性油脂肪酸にエポキシ系樹脂を反応させたエステル化合物を用いたエポキシエステル樹脂や、エポキシ系樹脂の末端にメタクリル酸メチルを結合させてスチレンなどと共重合させたビニルエステルも用いることができる。
フッ素系樹脂としては、主剤となるフッ素系樹脂と硬化剤が熱によって反応し、その分子内に架橋構造を有するものが望ましい。さらに主剤と硬化剤の組み合わせとしては、水酸基、カルボキシル基およびアミノ基のうち少なくとも一種類を有するフッ素系樹脂である主剤と、2個以上のイソシアネート基、好ましくは3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物である硬化剤とがウレタン結合、酸アミド結合および尿素結合のうち少なくとも一種類の化学結合で結合(架橋)されたものが好ましい。これにより、樹脂マトリックス層4に安定した架橋構造が形成され、樹脂マトリックス層4(皮膜3)が金属板2とより一層強固に接着する。水酸基としては、アルコール系水酸基やフェノール系水酸基はもちろん、イソシアネート基と反応する誘導体は広い意味でこれに該当する。また、カルボキシル基としては、カルボキシル基単体はもちろん、無水化されたカルボキシル基など、イソシアネート基と反応する誘導体はすべて該当する。同様にアミノ基についてもイソシアネート基と反応する誘導体はすべて本発明に含まれる。なお、架橋された樹脂マトリックス層4の架橋度は、その架橋度の指標であるJISK6796に規定されたゲル含量で80%以上が好ましい。
(軟質ビーズ)
本発明のプレコート金属板1と被接触物とが接触した際に被接触物に疵が付くのを防止するためには、前述したように皮膜3を軟質化することと、静電気による異物の付着を抑止することが不可欠となる。本発明では、除電樹脂によって静電気による異物の付着を抑止し、かつ、ウレタンビーズに代表される軟質ビーズ5をクッション材として機能させることによって部分的に皮膜3を軟質化することによって被接触物に対する疵付き防止性を向上させている。
本発明における軟質ビーズ5の軟質とは、例えば、微小圧縮試験による単一ビーズを用いて10%変形させた時(単一ビーズ10%変形時)の圧縮強度が10MPa以下程度のものをいう。
微小圧縮試験を行う試験機としては、例えば、島津製作所社製の微小圧縮試験機MCT−W500などがあり、この試験機を使用することにより、粒径1μmから100μm程度の単一ビーズに圧縮試験を行うことができる。より具体的には、粒径が5〜10μm、望ましくは8μm程度の単一ビーズを試験機の下部加圧板にセットし、上部加圧圧子を下げながら単一ビーズに圧縮変形を加えつつ同時に荷重を測定し、ビーズ径が10%減少した時点での荷重を10%圧縮荷重値とする。この10%圧縮荷重値をP[N]、測定したビーズの粒径をd[mm]とすると、次式(1)により10%変形時の圧縮強度St[MPa]を算出することができる(日本鉱業会誌、81.10.24(1965)参照)。なお、この10%変形時の圧縮強度St[MPa]が小さいほど、ビーズとしては軟らかいことになる。本発明では、この10%変形時の圧縮強度St[MPa]が10MPa以下であることが必要であり、より望ましくは5MPa以下である。
St=2.8P/(Πd)・・・式(1)
(ただし、式(1)において、Πは、円周率を表わす。)
このような軟質ビーズ5を使用すると、樹脂マトリックス層4がタック性を生じることがないため、皮膜3と光ディスク10などの被接触物が貼り付くような問題を生じることなく、被接触物への疵付き防止性を向上させることができる。なお、このような軟質ビーズ5としては、例えば、ウレタンビーズ、エチレン・メチルメタクリラート共重合物(EMMA)ビーズ、低密度ポリエチレン(LDPE)ビーズなどを好適に用いることができる。なお、ウレタンビーズとしては、三洋化成社製のメルテックス(登録商標)、大日精化社製のダイミックビーズ(登録商標)、根上工業社製のアートパール(登録商標)などを好適に用いることができる。また、EMMAビーズは、住友精化社製のソフトビーズA、ソフトビーズBなどを好適に用いることができ、LDPEビーズは、住友精化社製のフロービーズ(登録商標)などを好適に用いることができる。
なお、図1に示すように、本発明のプレコート金属板1は、樹脂マトリックス層4の平均厚さと軟質ビーズ5の平均粒径をコントロールしているため、皮膜3の表面は平滑ではなく凹凸のある表面状態となっている。これにより、皮膜3のうち被接触物の表面と接触するほとんどの部分は軟質ビーズ5の先端となり、被接触物と樹脂マトリックス層4が直接接触する機会を大幅に抑えることができる。なお、軟質ビーズ5には後で説明するような粒径分布があるため、図示しないが、比較的小さい軟質ビーズ5の先端まで除電樹脂が薄く被覆されている場合があっても、隣接し得るそれよりも大きな軟質ビーズ5によって疵付き防止性を確保することができる。
(軟質ビーズの含有率:15質量%以上40質量%以下)
被接触物への疵付き防止性を高めるためには、軟質ビーズ5の含有率が、樹脂マトリックス層4に対して、多い方が好ましい。軟質ビーズ5の含有率が15質量%未満では、樹脂マトリックス層4中に固定される軟質ビーズ5の量が少なく、クッション材としての機能が低下し、疵付き防止性が劣ることになる。また、軟質ビーズ5の含有率を高くしていくと、軟質ビーズ5を分散させた塗料の粘度が増粘してしまうため、ロール塗装等で塗料を金属板2に塗装する場合に、膜厚を均一に制御することが困難となる(つまり、塗装性が悪化する)。以上の理由から、軟質ビーズ5の含有率は、樹脂マトリックス層4に対して、15質量%以上40質量%以下とする。
(軟質ビーズの平均粒径:マトリックス層の平均厚さの1.3倍以上3倍以下)
軟質ビーズ5で被接触物への疵付き防止性を向上させるためには、軟質ビーズ5の平均粒径が樹脂マトリックス層4の平均厚さより大きいことが重要である。軟質ビーズ5の平均粒径を樹脂マトリックス層4の平均厚さより大きくすることにより、図1に示すように、皮膜3の断面形状は軟質ビーズ5の存在する部分が凸となる微細な凹凸形状を有するようになる。そのため、被接触物と皮膜3とが接触する際に軟らかい軟質ビーズ5がクッション材として機能するだけでなく、被接触物と樹脂マトリックス層4とが直接接触するのを大幅に低減させることができるため、被接触物への疵付き防止性をより高めることができる。
ここで、軟質ビーズ5の平均粒径が、樹脂マトリックス層4の平均厚さに対して3倍を超えると、樹脂マトリックス層4中に固定されず脱落してしまう軟質ビーズ5が生じてくることから、被接触物への疵付き防止性を高める効果が低下する。また、軟質ビーズ5の平均粒径が樹脂マトリックス層4の平均厚さに対して1.3倍未満であると、粒径の小さい軟質ビーズ5は、樹脂マトリックス層4に埋没しやすくなるため、被接触物への疵付き防止性を高める効果が低下する。よって、軟質ビーズ5の平均粒径は、樹脂マトリックス層4の平均厚さの1.3倍以上3倍以下とする。なお、樹脂マトリックス層4の平均厚さの1.5倍以上3倍以下とするとより好ましい。
なお、軟質ビーズ5の平均粒径と樹脂マトリックス層4の平均厚さがこのような関係に保たれていれば、被接触物への疵付き防止性を向上させることが可能であるが、前記の関係が保たれていたとしても、必要以上に大きい粒径の軟質ビーズ5を使用すると、樹脂マトリックス層4の平均厚さも厚くしなければならなくなるため、皮膜3が必要以上に厚くなり、経済的でない。一方、必要以上に小さい軟質ビーズ5を使用した場合には、軟質ビーズ5の平均粒径と樹脂マトリックス層4の平均厚さの関係をコントロールすることが工業的に難しくなる。したがって、軟質ビーズ5の平均粒径としては、5〜30μm程度のものを用いるのが好ましく、樹脂マトリックス層4の平均厚さが、3μm以上15μm以下であることがより好ましい。なお、本発明における樹脂マトリックス層4の平均厚さは、単位面積あたりの皮膜3の重量を測定し、比重を1として換算することで求めることができる。
ここで、先に述べたように、軟質ビーズ5の粒径には分布が存在する。例えば、積算体積50%粒子径でおよそ8μm程度のビーズの粒径分布は、最小1μm程度から最大で20μm程度にまで分布していることが知られている(例えば、大日精化工業(株)のホームページのダイミックビーズ(登録商標)の粒度分布(粒径分布と同義)参照)。そこで、本発明では、軟質ビーズ5の粒径の指標として、平均粒径を採用した。なお、本発明における平均粒径とは、軟質ビーズ5を水に分散させた状態で、レーザー回折式粒度分布測定器等で測定した積算体積50%粒子径をいう。
なお、本発明のプレコート金属板1は、金属板2と、軟質ビーズ5および樹脂マトリックス層4を含む皮膜3と、の間に、耐食性皮膜(図示せず)を備えるものであってもよい。
耐食性皮膜が形成されていることによって、プレコート金属板1に耐食性が付与されるとともに、金属板2と皮膜3との接着性が向上する。
このような耐食性皮膜の構成としては、CrまたはZrを成分として含む従来公知の耐食性皮膜を用いることができる。例えば、リン酸クロメート皮膜、リン酸ジルコニウム皮膜、酸化ジルコニウム系皮膜、あるいは塗布型ジルコニウム皮膜等を適宜使用することができる。また、耐食性皮膜の付着量は、CrまたはZr換算値で10〜50mg/mが好ましい。耐食性皮膜の付着量が10mg/mより少なくなると、金属板2の全面を均一に被覆することができず、耐食性の確保が難しくなり、長期間の使用に耐えることができなくなる。また、耐食性皮膜の付着量が50mg/mを超えると、成形等において、耐食性皮膜自体に割れ(剥離)が生じ、長期間にわたって高い耐食性を維持することが難しくなる。
2.プレコート金属板の製造方法
次に、図2を参照して、本発明に係るプレコート金属板の製造方法について詳細に説明する。
図2に示すように、本発明に係るプレコート金属板の製造方法は、塗布工程S1と、乾燥工程S2と、を含んでなる。以下、各工程の内容について説明する。なお、本発明の塗布工程S1には、後記する所定の組成を有する塗料を調整する作業も含まれている。また、本発明に係るプレコート金属板1でした説明と重複する事項については、詳細な説明を省略することとする。
(塗布工程)
塗布工程S1は、塗料の必須成分として、静電気を除去することのできる除電樹脂と、微小圧縮試験による単一ビーズ10%変形時の圧縮強度が10MPa以下の軟質ビーズ5と、を十分混合させた塗料を金属板2の表面に塗布する工程である。
なお、前記した必須成分のうち、軟質ビーズ5の含有率は、後に説明する乾燥工程S2を経て形成される樹脂マトリックス層4に対して15質量%以上40質量%以下となるようにあらかじめ比率調整しておく。
なお、軟質ビーズ5は、撹拌装置で十分撹拌させることで、塗料中に均一に分散させることができる。例えば、超音波処理、マグネット・スターラやインペラー撹拌機による撹拌処理、ホモジナイザー、アトライター、ボールミル、ビーズミルなどを用いた撹拌処理方法を挙げることができる。
なお、前記した塗料中に助剤として、例えば、水、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メタノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルベンゼン、キシレン、トルエン、トリメチルベンゼン、ナフタレン、芳香族ナフサなどの芳香族炭化水素系溶剤を単独もしくは混合した揮発成分を含有すると、軟質ビーズ5をより確実に、均一に分散させることができるため好ましい。
かかる塗料を金属板2に塗布するには、はけ、ロールコータ、カーテンフローコータ、ローラーカーテンコータ、静電塗装機、ブレードコータ、ダイコータなど、いずれの手段で行ってもよいが、特に、塗布量が均一となるとともに、作業が簡便なロールコータの使用が好ましい。
なお、使用している軟質ビーズ5の粒径に合わせて塗料の塗布量を調整することにより、軟質ビーズ5の平均粒径が、マトリックス層4の平均厚さの1.3倍以上3倍以下とすることができる。例えば、軟質ビーズ5の平均粒径が5〜30μm程度のものであれば、塗料の塗布量は、金属板2の表面に平均厚さ3〜15μmの樹脂マトリックス層4が形成されるように、金属板2の搬送速度、ロールの回転方向と回転速度、ロール間の押し付け圧(ニップ圧)などを適宜調整するとよい。これらを調整することによって、金属板2に転写される、乾燥前の塗料の厚さ(つまり、ウェット膜厚)を変更することができる。その結果、後記する乾燥工程S2によって塗料を乾燥させて皮膜3を形成させることによって樹脂マトリックス層4の平均厚さを調整することが可能となり、前記したように、軟質ビーズ5の平均粒径が樹脂マトリックス層4の平均厚さの1.3倍以上3倍以下とすることができる。
なお、かかる塗料の塗布に先立って、金属板2の表面を脱脂する脱脂工程(不図示)を設けてもよい。脱脂工程は、例えば、金属板2の表面に酸やアルカリ水溶液をスプレーし、その後、水洗することで金属板2の表面を脱脂することができる。
さらに、前記したように、金属板2と樹脂皮膜3との間に耐食性皮膜を備える場合には、脱脂工程に引き続いて、クロムイオン等を含む化成処理液を金属板2の表面にスプレーして水洗するか、またはクロムイオン等を含む処理液を塗布して乾燥することにより耐食性皮膜を形成することができる。
(乾燥工程)
乾燥工程S2は、塗布工程S1で金属板2に塗布された塗料を乾燥させて皮膜3を形成する工程である。塗料を乾燥させることにより、金属板2の表面に皮膜3(軟質ビーズ5を含む樹脂マトリックス層4)を形成し、当該金属板2に強固に接着される。なお、いうまでもなく、乾燥工程S2で加熱された軟質ビーズ5は、マトリックス層4中に適度に分散された状態で固定されている。
この乾燥工程S2は、用いる除電樹脂に応じて乾燥条件を変更するのが好ましい。例えば、除電樹脂が、ベース樹脂に導電性高分子を5質量%以上の含有率で含んでなる除電樹脂である場合は、加熱温度を100℃以上200℃以下、前記加熱時間を20秒間以上60秒間以下の条件とするのが好ましい。
この場合において、加熱温度が100℃未満であったり、加熱時間が20秒間未満であったりすると、塗料の乾燥が不十分となり、金属板2に強固に接着されないおそれがある。一方、加熱温度が200℃を超えたり、加熱時間が60秒間を超えたりすると、塗料(皮膜3)が熱劣化(分解)するため好ましくない。
また、例えば、除電樹脂が、ベース樹脂に高分子型帯電防止剤を5質量%以上20質量%以下の含有率で含んでなる除電樹脂である場合は、加熱温度を200℃以上300℃以下、加熱時間を20秒間以上60秒間以下の条件とするのが好ましい。
この場合において、加熱温度が200℃未満であったり、加熱時間が20秒間未満であったりすると、皮膜3の形成が不十分となり、金属板2に強固に接着されないおそれがある。一方、加熱温度が300℃を超えたり、加熱時間が60秒間を超えたりすると、塗料(皮膜3)が熱劣化(分解)したり、コストアップとなったりするため好ましくない。
この乾燥工程S2は、例えば、熱風炉、誘導加熱炉、近赤外線炉、遠赤外線炉、エネルギー線硬化炉を用いて行うことができる。
次に、本発明のプレコート金属板およびその製造方法について、本発明の要件を満たす実施例と、本発明の要件を満たさない比較例と、を対比させて具体的に説明する。
《実施例A》
《実施例A》で検討した項目は、塗料に用いた樹脂の種類、帯電防止剤の種類および含有率、皮膜の樹脂マトリックス層の平均厚さ、樹脂マトリックス層に分散された軟質ビーズの種類、圧縮強度、含有率および平均粒径である。そして、被接触物として光ディスクを用い、これに対する疵付き防止性(以下、単に「被接触物への疵付き防止性」という。)ならびに塗装性、ブロッキング性を評価した。以下に詳述する。
(実施例)
表1〜3に示すように、実施例は、ポリエステル樹脂、エポキシ系樹脂またはフッ素系樹脂、ウレタン系樹脂から選ばれるベース樹脂と、本発明で規定する10%変形時の圧縮強度を持つ軟質ビーズと、高分子型帯電防止剤と、を含む塗料を金属板に塗布し、次いで、塗料を塗布した金属板を加熱温度250℃、加熱時間30秒間で加熱して乾燥させることによって、除電樹脂で形成される樹脂マトリックス層を含む皮膜を形成したプレコート金属板を製造した。
ここで、軟質ビーズとしては、ウレタンビーズおよびポリエチレンビーズを用いた。また、実施例に使用した高分子型帯電防止剤は、具体的には特殊ポリカルボン酸型高分子帯電防止剤およびポリエチレングリコール系帯電防止剤を使用し、表1〜3中では特殊ポリカルボン酸型高分子帯電防止剤を記号P、ポリエチレングリコール系帯電防止剤を記号P2で表した。なお、実施例に用いた金属板は、耐食性を向上させるための耐食性皮膜としてリン酸クロメート処理をその両面にあらかじめ形成してあるものを用いた。リン酸クロメート皮膜の付着量はCr換算で20mg/mであった。
なお、金属板は、厚さ0.5mm、JIS規定の5052−H34のアルミニウム合金板を使用した。
また、ベース樹脂は、大日本インキ化学工業社製、日本ペイント社製、日本パーカライジング社製のものを使用した。
塗料を塗布した金属板の加熱方式は、塗料を塗布した金属板がコンベアに乗ってオーブンの入り口から出口へ移動する連続焼付け方式とし、金属板がオーブン内を通過する時間を加熱時間と定義し、これを30秒とした。また、金属板に貼り付けたヒートラベルで確認される金属板の最高到達温度を加熱温度と定義し、これを250℃とした。
(比較例)
実施例の対照として、比較例のプレコート金属板を製造した。比較例のプレコート金属板の製造は、以下に述べる点を除いて、実施例を製造した条件・構成に準じた。
比較例1、3、4、5、6、7、10、13、17、20、21、23、25、28、30、31、32、34はいずれも本発明で規定する高分子型帯電防止剤を含んでいない。また比較例2、9、11、15、18、26、29はいずれも本発明で規定する高分子型帯電防止剤ではない、低分子型の帯電防止剤(低分子型帯電防止剤)が使用されている。なお低分子型帯電防止剤は、具体的にはアルキルジエタノールアミンを使用し、表1〜3中では記号Lとした。また比較例12、16、19、27はいずれも本発明で規定する高分子型帯電防止剤の含有率が本発明で規定する範囲を満たしていない。比較例21、22、23、24は、軟質ビーズの平均粒径と、樹脂マトリックス層の平均厚さとの関係が、本発明で規定する数値範囲を満たしていない。また、比較例7、8、9、13、14、15、16は、軟質ビーズの含有率が本発明で規定する数値範囲を満たしていない。さらに、比較例32、33、34、35は、本発明で規定する10%変形時の圧縮強度を持たないビーズ(つまり、軟質でないビーズ)を使用した比較例である。
こうして製造された実施例および比較例のプレコート金属板のそれぞれについて、皮膜の樹脂マトリックス層の平均厚さを求めた。樹脂マトリックス層の平均厚さは、単位面積あたりの皮膜の重量を測定し、比重を1として換算とすることで求めることができる。
製造された実施例および比較例に係るプレコート金属板について、被接触物への疵付き防止性、塗装性およびブロッキング性を評価した。被接触物への疵付き防止性、塗装性およびブロッキング性の評価は、以下のようにして行った。
(1)被接触物への疵付き防止性
被接触物への疵付き防止性は、市販の光ディスクの記録面を、プレコート金属板の皮膜表面に接触させて、軽く指で押さえながら左右に10往復擦りつけた後、光ディスク表面の疵を目視にて観察し、疵が認められない場合を「○」、少しでも疵がある場合を「×」とした。なお試験は50℃に加温して実施した。
これを一種類の実施例または比較例に対してそれぞれ100回試験を行い、「○」の確率が99%以上の場合を疵付き防止性が良好(合格)であるとし、「○」の確率が99%未満の場合を疵付き防止性が不良(不合格)であるとした。
(2)塗装性
塗装性は、塗料の粘度測定によって確認した。具体的には、塗料の粘度測定に広く用いられるフォードカップ#4を使用し、塗料の固形分が30%以上確保された状態で粘度を測定し、粘度が120秒以内である場合には塗装可能、120秒を超える場合には塗装性不良(表1〜3において「塗装性難」と示す。)と判断した。
(3)ブロッキング性
ブロッキング性は、塗料の塗布工程および乾燥工程を経たプレコート金属板の塗膜(皮膜)面同士を向かい合わせた状態で、70℃に加熱したホットプレスに軽く挟んで1分間以上保持し、取り出したプレコート金属板の塗膜面同士が接着していなければ良好、軽いタック感があるが接着には至らないものは使用可能(表1〜3において「軽微なブロッキング」と示す。)、接着した場合は不良(表1〜3において「ブロッキング」と示す。)と判断した。
表1に、《実施例A》における実施例および比較例に係るプレコート金属板を製造した条件・構成、および、被接触物への疵付き防止性、塗装性およびブロッキング性についての評価を示す。なお、表1〜3中の下線は、本発明で規定する要件を満たさないことを示す。
Figure 0005426824
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Figure 0005426824
表1〜3に示すように、実施例のプレコート金属板は、いずれも被接触物への疵付き防止性について優れた評価結果を得ることができた。また、実施例のプレコート金属板は、塗装性およびブロッキング性について、実用上何ら問題のないものであった。
一方、比較例のプレコート金属板は、本発明で規定するいずれかの要件を満たさないものであるために、被接触物への疵付き防止性、塗装性およびブロッキング性のいずれかの評価結果が好ましくないものとなった。
具体的には、比較例1、3、4、5、6、7、10、17、20、21、23、25、28、30、31、32、34のプレコート金属板は、いずれも本発明で規定する高分子型帯電防止剤を含んでいないため、その他の要件にかかわらず被接触物への疵付き防止性が不十分であった。なお比較例13だけは高分子型帯電防止剤を含んでいながら良好な被接触物への疵付き防止性を示したが、ウレタンビーズの含有率が本発明で規定する範囲を超えていたため、塗装性難となった。
比較例2、9、11、18、26、29のプレコート金属板は、いずれも本発明で規定する高分子型帯電防止剤ではない低分子型の帯電防止剤が使用されたため、その他の要件にかかわらず被接触物への疵付き防止性が不十分な結果を示した。なお比較例15だけは良好な被接触物への疵付き防止性を示したが、ウレタンビーズの含有率が本発明で規定する範囲を超えていたため、塗装性難となった。
比較例12、19、27のプレコート金属板は、いずれも本発明で規定する高分子型帯電防止剤の含有率が本発明で規定する範囲を満たしていないため、その他の要件にかかわらず被接触物への疵付き防止性が不十分な結果を示した。なお比較例16だけは良好な被接触物への疵付き防止性を示したが、ウレタンビーズの含有率が本発明で規定する範囲を超えていたため、塗装性難となった。
比較例21、22、23、24のプレコート金属板は、軟質ビーズの平均粒径とマトリックス層の平均厚さとの関係が本発明で規定する要件を満たさないものであったため、いずれも被接触物への疵付き防止性が不良となった。
比較例7、8、9のプレコート金属板は、軟質ビーズの含有率が本発明で規定する数値範囲未満のものであったため、被接触物への疵付き防止性が不良となった。
そして、比較例13、14、15、16のプレコート金属板は、軟質ビーズの含有率が本発明で規定する数値範囲を超えたものであったため、被接触物への疵付き防止性は良好であったものの、塗料の粘度が著しく増加し、塗装性難となった。
比較例32、33、34、35のプレコート金属板は、使用しているビーズの10%変形時の圧縮強度が本発明で規定する数値範囲を超えるビーズ、つまり、軟質でないビーズであったため、高分子型帯電防止剤の有無にかかわらずいずれも被接触物への疵付き防止性が不良となった。
参考例B》
参考例B》で検討した項目は、塗料に用いた樹脂の種類、導電性高分子の含有率および皮膜の樹脂マトリックス層の平均厚さ、樹脂マトリックス層に分散された軟質ビーズの種類、圧縮強度、含有率および平均粒径である。そして、≪実施例A≫と同様に被接触物として光ディスクを用い、これに対する疵付き防止性(被接触物への疵付き防止性)ならびに塗装性、ブロッキング性を評価した。以下に詳述する。
参考例)
表4,5に示すように、参考例は、ポリエステル樹脂およびエポキシ樹脂から選ばれるベース樹脂と、本発明で規定する10%変形時の圧縮強度を持つ軟質ビーズと、導電性高分子と、を含む塗料を金属板に塗布し、次いで、塗料を塗布した金属板を加熱温度150℃、加熱時間30秒間で加熱して乾燥させることによって、除電樹脂で形成される樹脂マトリックス層を含む皮膜を形成したプレコート金属板を製造した。
ここで、軟質ビーズとしては、ウレタンビーズおよびポリエチレンビーズを用いた。また、参考例に使用した導電性高分子は、具体的にはポリアニリンを使用し、表4,5中では記号Aで表した。なお、参考例に用いた金属板は、耐食性を向上させるための耐食性皮膜としてリン酸クロメート処理をその両面にあらかじめ形成してあるものを用いた。リン酸クロメート皮膜の付着量はCr換算で20mg/mであった。プレコート金属板の各構成は以下のとおりである。
なお、金属板は、厚さ0.5mm、JIS規定の5052−H34のアルミニウム合金板を使用した。
また、ベース樹脂は、大日本インキ化学工業社製、日本ペイント社製、日本パーカライジング社製のものを使用した。
塗料を塗布した金属板の加熱方式は、塗料を塗布した金属板がコンベアに乗ってオーブンの入口から出口へ移動する連続焼付け方式とし、金属板がオーブン内を通過する時間を加熱時間と定義し、これを30秒とした。また、金属板に貼り付けたヒートラベルで確認される金属板の最高到達温度を加熱温度と定義し、これを150℃とした。
(比較例)
参考例の対照として、比較例のプレコート金属板を製造した。比較例のプレコート金属板の製造は、以下に述べる点を除いて、参考例を製造した条件・構成に準じた。
比較例36、37、38、39、40、41、43、44、46、47、48、50、52、53、54、56はいずれも本発明で規定する導電性高分子を含んでいない。比較例48、49、50、51は、軟質ビーズの平均粒径と、樹脂マトリックス層の平均厚さとの関係が、本発明で規定する数値範囲を満たしていない。また、比較例41、42、44、45は、軟質ビーズの含有率が本発明で規定する数値範囲を満たしていない。さらに、比較例54、55、56、57は、本発明で規定する10%変形時の圧縮強度を持たないビーズ(つまり、軟質でないビーズ)を使用した比較例である。
こうして製造された参考例および比較例のプレコート金属板のそれぞれについて、皮膜の樹脂マトリックス層の平均厚さを求めた。樹脂マトリックス層の平均厚さは、《実施例A》で記載したように、単位面積あたりの皮膜の重量を測定し、比重を1として換算とすることで求めることができる。
製造された参考例および比較例に係るプレコート金属板について、被接触物への疵付き防止性、塗装性およびブロッキング性を評価した。なお、被接触物への疵付き防止性、塗装性およびブロッキング性の評価は、《実施例A》で記載した内容に準じて行った。
表4,5に、《参考例B》における参考例および比較例に係るプレコート金属板を製造した条件・構成、および、被接触物への疵付き防止性、塗装性およびブロッキング性についての評価を示す。なお、表4,5中の下線は、本発明で規定する要件を満たさないことを示す。
Figure 0005426824
Figure 0005426824
表4,5に示すように、参考例のプレコート金属板は、いずれも被接触物への疵付き防止性について優れた評価結果を得ることができた。また、参考例のプレコート金属板は、塗装性およびブロッキング性について、実用上何ら問題のないものであった。
一方、比較例のプレコート金属板は、本発明で規定するいずれかの要件を満たさないものであるために、被接触物への疵付き防止性、塗装性およびブロッキング性のいずれかの評価結果が好ましくないものとなった。
具体的には、比較例36、37、38、39、40、41、43、46、47、48、50、52、53、54、56のプレコート金属板は、いずれも本発明で規定する導電性高分子を含んでいないため、その他の要件にかかわらず被接触物への疵付き防止性が不十分であった。なお比較例44だけは導電性高分子を含んでいないながら良好な被接触物への疵付き防止性を示したが、ウレタンビーズの含有率が本発明で規定する範囲を超えていたため、塗装性難となった。
比較例48、49、50、51のプレコート金属板は、軟質ビーズの平均粒径とマトリックス層の平均厚さとの関係が本発明で規定する要件を満たさないものであったため、いずれも被接触物への疵付き防止性が不良となった。
比較例41、42のプレコート金属板は、軟質ビーズの含有率が本発明で規定する数値範囲未満であったため、被接触物への疵付き防止性が不良となった。
そして、比較例44、45のプレコート金属板は、軟質ビーズの含有率が本発明で規定する数値範囲を超えたものであったため、被接触物への疵付き防止性は良好であったものの、塗料の粘度が著しく増加し、塗装難となった。
比較例54、55、56、57のプレコート金属板は、使用しているビーズの10%変形時の圧縮強度が本発明で規定する数値範囲を満たさないビーズ、つまり、軟質でないビーズであったため、導電性高分子の有無にかかわらずいずれも被接触物への疵付き防止性が不良となった。
以上、本発明に係るプレコート金属板およびその製造方法について、最良の実施形態および実施例を挙げて詳細に説明したが、本発明の内容はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、本発明の内容は、本発明の効果を阻害しない範囲で種々変更、改変することができる。
例えば、光ディスクなどの被接触物への疵付き防止性をより高めるために、パーム油、カルナウバワックス、ポリエチレンワックス及びマイクロクリスタリンワックスなどの潤滑剤を一種または二種を塗料中に所定量含有させてもよい。
また、塗料の塗装性およびプレコート金属板としての一般的な性能を確保するため、通常用いられる、顔料、顔料分散剤、流動性調節剤、レベリング剤、ワキ防止剤、防腐剤、安定化剤などを含有させてもよい。
さらに、両者の密着性を高めるための下塗り層を、樹脂皮膜と、金属板および/または耐食性皮膜と、の間に設けてもよい。これにより、プレコート金属板の成形性をより向上させることができる。
本発明に係るプレコート金属板の構成を模式的に示す断面図である。 本発明に係るプレコート金属板の製造方法の内容を説明するフローチャートである。 (a)および(b)は、従来の光ディスクドライブとこれに用いられる光ディスクを示す斜視図であり、(a)はトレイ方式の光ディスクドライブを示し、(b)はスロットイン方式の光ディスクドライブを示す。
符号の説明
1 プレコート金属板
2 金属板
3 皮膜
4 樹脂マトリックス層
5 軟質ビーズ
S1 塗布工程
S2 乾燥工程
10 光ディスク
20 トレイ方式の光ディスクドライブ
21 トレイ
22 カバー
30 スロットイン方式の光ディスクドライブ
31 開口部
32 カバー

Claims (11)

  1. 金属板の表面に形成された皮膜を備えるプレコート金属板であって、
    前記皮膜は、
    ベース樹脂に高分子型帯電防止剤を5質量%以上20質量%以下の含有率で含んでなる除電樹脂で形成される樹脂マトリックス層と、
    前記樹脂マトリックス層の中に分散され、微小圧縮試験による単一ビーズ10%変形時の圧縮強度が10MPa以下であり、平均粒径が前記樹脂マトリックス層の平均厚さの1.3倍以上3倍以下、かつ前記樹脂マトリックス層中における含有率が15質量%以上40質量%以下で含有される軟質ビーズと、
    を含むことを特徴とするプレコート金属板。
  2. 前記高分子型帯電防止剤が、ポリカルボン酸もしくはその誘導体、またはポリエチレングリコール系帯電防止剤であることを特徴とする請求項に記載のプレコート金属板。
  3. 前記ベース樹脂が、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、またはフッ素系樹脂であることを特徴とする請求項1または請求項に記載のプレコート金属板。
  4. 前記軟質ビーズがウレタンビーズであることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載のプレコート金属板。
  5. 前記金属板が純アルミニウム板またはアルミニウム合金板であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載のプレコート金属板。
  6. 金属板の表面に皮膜を備えるプレコート金属板の製造方法であって、
    塗料の必須成分として、ベース樹脂に高分子型帯電防止剤を5質量%以上20質量%以下の含有率で含んでなる除電樹脂と、微小圧縮試験による単一ビーズ10%変形時の圧縮強度が10MPa以下であり、前記除電樹脂にて形成される樹脂マトリクス層中における含有率が15質量%以上40質量%以下となるようにあらかじめ比率調整された軟質ビーズと、を含有する塗料を、乾燥工程後の乾燥皮膜となった際に、前記軟質ビーズの平均粒径が前記樹脂マトリックス層の平均厚さの1.3倍以上3倍以下となるようにあらかじめ計算されたウェット膜厚となるように、前記金属板の表面に塗布する塗布工程と、
    前記塗布工程で前記金属板に塗布された前記塗料を乾燥させて前記皮膜を形成する乾燥工程と、
    を含むことを特徴とするプレコート金属板の製造方法。
  7. 記乾燥工程は、加熱温度を200℃以上300℃以下、加熱時間を20秒間以上60秒間以下の条件とすることを特徴とする請求項に記載のプレコート金属板の製造方法。
  8. 前記高分子型帯電防止剤が、ポリカルボン酸もしくはその誘導体、またはポリエチレングリコール系帯電防止剤であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のプレコート金属板の製造方法。
  9. 前記ベース樹脂が、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、またはフッ素系樹脂であることを特徴とする請求項から請求項のいずれか1項に記載のプレコート金属板の製造方法。
  10. 前記軟質ビーズがウレタンビーズであることを特徴とする請求項から請求項のいずれか1項に記載のプレコート金属板の製造方法。
  11. 前記金属板が純アルミニウム板またはアルミニウム合金板であることを特徴とする請求項から請求項10のいずれか1項に記載のプレコート金属板の製造方法。
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