JP2006076232A - 放熱性に優れた有機樹脂被覆鋼板 - Google Patents

放熱性に優れた有機樹脂被覆鋼板 Download PDF

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【課題】 基材に形成する有機樹脂皮膜自体に放熱特性を付与し、電気・電子機器用の筐体材料として好適な有機樹脂被覆鋼板を提供する。
【解決手段】 電子授与性又は電子供与性窒素含有化合物を配合した複素環式共役系又はヘテロ原子含有共役系のπ共役高分子からなる有機樹脂皮膜が形成された有機樹脂被覆鋼板である。電子授与性又は電子供与性窒素含有化合物としては分子量が400以下の化合物が好ましい。π共役高分子をドーピング状態にしておくと導電性が一層向上する。ドーパントには、ハロゲン,プロトン酸,ルイス酸,有機酸等が使用される。
【選択図】 なし

Description

本発明は、家電機器,OA機器等の筐体材料として好適で、温度上昇に起因する電気・電子機器の故障や誤動作防止に有効な有機樹脂被覆鋼板に関する。
電気・電子機器の高性能化,小型化に伴い、装置内部の温度上昇に起因する故障,誤動作等のトラブルが発生する頻度が高くなっている。トラブル発生原因である装置内部の温度上昇は、電気・電子機器の筐体に設けた開口部にファンを取り付け、空気の強制対流で放熱を促進させることにより防止できる。ファンによる空気の強制対流は温度上昇を抑制する上で有効であるものの、電気・電子機器を気密雰囲気に保持できなくなる。因みに、開口部を介して水分,塵芥等が装置内部に侵入すると、電子回路がショートしやすくなり、錆や腐食の発生原因にもなる.
ファンによる空気の強制対流に代えて放熱性の高い鋼板を筐体材料に使用すると、水分,塵芥等が侵入する開口部を筐体に形成する必要がない。放熱特性を改善した筐体用材料としては、Ni粉末やカーボンブラックを分散させた樹脂皮膜で被覆した放熱鋼板が知られている(特許文献1)。Ni粉末やカーボンブラックの分散により樹脂皮膜の熱伝導性,ひいては放熱特性が向上するが、筐体材料に要求される放熱特性を満足させるため厚い樹脂皮膜が必要になる。厚膜の樹脂皮膜は、樹脂被覆鋼板のコスト上昇を招くだけでなく、プレス成形,曲げ加工時等に亀裂又は剥離しやすい。亀裂や剥離は、筐体の外観や耐食性を劣化させる。
特開2004-160979号公報
従来の放熱鋼板では、樹脂皮膜に分散させたNi粉末やカーボンブラックの熱伝導性を利用している。そのため、要求に見合った熱伝導性,ひいては放熱特性を得る上でNi粉末やカーボンブラックの分散量を確保すべく、樹脂皮膜を厚膜化せざるを得ない。
本発明は、Ni粉末やカーボンブラックの分散を必要とせず、樹脂皮膜自体に放熱性を付与することにより、薄膜であっても筐体材料の要求特性を満足する放熱特性を呈し、電気・電子機器の筐体として有用な有機樹脂被覆鋼板を提供することを目的とする。
本発明の有機樹脂被覆鋼板は、電子授与性又は電子供与性窒素含有化合物を配合した複素環式共役系又はヘテロ原子含有共役系のπ共役高分子からなる有機樹脂皮膜が形成されていることを特徴とする。電子授与性又は電子供与性窒素含有化合物としては分子量が400以下の化合物が好ましい。π共役高分子をドーピング状態にしておくと導電性が一層向上する。ドーパントには、ハロゲン,プロトン酸,ルイス酸,有機酸等が使用される。
発明の効果及び実施の形態
樹脂皮膜自体に熱伝導性があれば、Ni粉末やカーボンブラックの分散を必要とせず、要求特性を満足する有機樹脂被覆鋼板が得られる。本発明者等は、かかる観点から皮膜形成用の樹脂種について種々調査・検討し、π共役高分子が有望な樹脂種であることを見出した。しかし、単独のπ共役高分子では従来の放熱鋼板に匹敵する放熱特性が得られない。放熱特性に関する調査・検討を更に進めた結果、窒素含有化合物を配合した複素環式共役系又はヘテロ原子含有共役系のπ共役高分子で有機樹脂皮膜を形成するとき、有機樹脂皮膜の熱伝導度,ひいては放熱特性が格段に向上することを解明した。
窒素含有化合物の配合による熱伝導度の向上は、π共役高分子間の相互作用が強化されることに拠るものと推察される。すなわち、π共役高分子の良好な熱伝導性はチェーンに沿った熱移動に依るものであるが、窒素含有化合物で隣り合うπ共役高分子を連絡するネットワークを構成すると、π共役高分子間の熱移動も見込まれる。代表的なπ共役高分子であるポリアニリンを例に採ると、窒素含有化合物でπ共役高分子間の相互作用が強化され、分子間力Fで又は窒素含有化合物を介してπ共役高分子間の熱移動が生じる。π共役高分子間の熱移動がチェーンに沿った熱移動に加算されるため、有機樹脂皮膜全体の熱伝導度が向上する。更に、π共役高分子をドープしておくと、π共役高分子自体の熱伝導性も向上するので、放熱特性が一層良好な有機樹脂皮膜が形成される。−図1−
本発明に従った有機樹脂皮膜は、π共役高分子,窒素含有化合物,必要に応じてドーパントを含む塗料から成膜される。
〔π共役高分子〕
π共役高分子は、分子内をπ電子が自由に移動できる共役二重結合を有し、半導体〜金属レベルの導電性を示す有機高分子であり、複素環式共役系やヘテロ原子含有共役系がある。ポリピロール,ポリフラン,ポリチオフェン,ポリセレノフェン等の複素環式共役系は、それぞれピロール,フラン,チオフェン,セレノフェン等の複素環式化合物が2.5の位置で重合し、トランス-イソシド型の炭素-炭素共役骨格を形成した高分子化合物である。ポリ(パラフェニレンスルフィド),ポリ(パラフェニレンオキシド),ポリアニリン等のヘテロ原子含有共役系は、脂肪族又は芳香族の共役系を窒素,硫黄,酸素,セレン,テルル等のヘテロ原子で結合した高分子化合物である。大半のπ共役高分子は溶媒に不溶であるが、ポリアニリンはメチルピロリドンに可溶性を示し、水溶性のポリピロール誘導体,ポリ(3-チオフェン-β-エタンスルホン酸)等も合成されている。
〔窒素含有化合物〕
窒素含有化合物としては、電子授与性又は電子供与性を示す化合物が使用される。電子授与性窒素含有化合物には硝酸,亜硝酸,アゾニアヘリセン,アセトニトリル,ニトロベンゼン等があり、電子供与性窒素含有化合物にはN-メチル-2-ピロリドン,イソプロパノールアミン,ベンジルアミン,N-メチルエタンイミン等がある。π共役高分子間の距離を適正に保ち必要な相互作用を働かせるためには、分子量:400以下の窒素含有化合物が好ましい。分子サイズが大きすぎる窒素含有化合物では、π共役高分子の相互間距離が離れすぎ、熱移動に有効なネットワークが形成され難くなる。
窒素含有化合物は、熱移動に有効なネットワークを形成する割合でπ共役高分子に配合される。具体的には、(皮膜中の窒素含有化合物)/(皮膜中のπ共役高分子が窒素含有化合物と相互作用可能な部位,水素結合する部位,の総数)のモル比が0.05〜0.25の範囲となる割合で窒素含有化合物を配合することが好ましい。モル比:0.05以上で窒素含有化合物配合による熱伝導性向上効果が得られ、窒素含有化合物の配合割合が高くなるほど熱伝導性が向上する。しかし、窒素含有化合物配合による熱伝導性向上効果はモル比:0.25で飽和し、それ以上添加しても経済的でない。
〔ドーパント〕
有機樹脂皮膜にドーパントを含ませることにより、有機樹脂皮膜の導電性が向上する。ドーパントは、耐食性の向上にも有効である。ドーパントにはハロゲン,プロトン酸,ルイス酸,有機酸等がある。具体的には、塩素,臭素,沃素等のハロゲン、塩酸,硫酸,過塩素酸,過塩素酸テトラメチルアンモニウム,テトラフルオロホウ酸,ヘキサフルオロリン酸等のプロトン酸、五フッ化リン,三フッ化ホウ素等のルイス酸、ベンゼンスルホン酸,トルエンスルホン酸,ナフタレンスルホン酸等の有機酸が使用される。窒素を含有する硝酸,亜硝酸等の化合物をドーパントに用いた場合、放熱性改善機能のある窒素含有化合物としても働く。
〔塗料の調製〕
放熱性有機樹脂皮膜の形成に使用される塗料は、複素環式共役系又はヘテロ原子含有共役系のπ共役高分子,電子授与性又は電子供与性窒素含有化合物,必要に応じてドーパントを溶媒に溶解することにより調製される。π共役高分子等の溶質を安定溶解させる限り各種溶媒を使用できる。具体的には、水、メタノール等のアルコール類、メチルエチルケトン,キシレン,アセトニトリル,N-メチル-2-ピロリドン等がある。また、皮膜密着性,潤滑性,耐食性に有効なシランカップリング剤,ワックス,防錆顔料等、常用添加剤を配合しても良い。
目標とする有機樹脂皮膜を均質に形成する上で、π共役高分子の配合量を1〜30質量%の範囲で選定することが好ましい。1質量%未満の配合量では塗料に含まれるπ共役高分子が不足し、均質な膜厚の有機樹脂皮膜が生成し難くなる。しかし、30質量%を超える高濃度でπ共役高分子を配合すると、塗料の貯蔵安定性が劣化し、塗料の早期更新が必要になる。
窒素含有化合物の配合量は、前述したように(皮膜中の窒素含有化合物)/(皮膜中のπ共役高分子が窒素含有化合物と相互作用可能な部位の総数)のモル比が好ましくは0.05〜0.25の範囲となるように調整される。
ドーパントの配合量は、π共役高分子を形成しているモノマーの濃度に対して0.01〜1.0のモル比で配合することが好ましい。ドーパント配合による導電性向上効果は、モル比:0.01以上でみられ、ドーパントの増量によって顕著になるが、1.0を超える過剰添加は塗料の不安定化,有機樹脂皮膜の特性低下を招きやすい。
ドーパントは、塗料に配合された状態で有機樹脂皮膜に持ち込まれるが、塗料への配合に代え、皮膜形成後のドーピングによっても有機樹脂皮膜に持ち込まれる。この場合、π共役高分子含有塗料を塗装原板に塗布・焼付けして有機樹脂皮膜を形成した後、乾燥した有機樹脂皮膜にドーパント溶液を塗布し焼き付ける二段階処理が採用される。ドーパント溶液としては、ドーパント濃度が0.05〜3.0モル/lの溶液が好ましい。0.05モル/l未満の濃度ではドーピング速度が遅く、有機樹脂皮膜を均一にドーピングし難い。ドーピング速度はドーパント濃度が高いほど上昇するが、3.0モル/lで飽和し、それ以上の添加は経済的でない。
シランカップリング剤,ワックス,防錆顔料等の添加剤を配合する場合には、これら添加剤の合計配合量をπ共役高分子に対し30質量%以下にすることが好ましい。30質量%を超える過剰量のシランカップリング剤,ワックス,防錆顔料等を配合すると、却ってπ共役高分子の熱伝導性が損なわれる虞がある。
〔塗装原板〕
有機樹脂皮膜が形成される塗装原板には、普通鋼板,めっき鋼板,ステンレス鋼板等がある。ステンレス鋼板には、フェライト系,オーステナイト系等が使用され、表面仕上げにも特段の制約が加わらない。めっき鋼板としては、溶融めっき,電気めっき,蒸着めっき等が施された鋼板を使用できる。
溶融めっきには、溶融Zn浴,溶融Zn-Al合金浴,溶融Zn-Al-Mg合金浴,溶融Zn-Mg合金浴,溶融Zn-Ni合金浴,溶融Al浴,溶融Al-Si合金浴等を用いた連続めっき又はドブ漬けめっきが採用される。溶融めっき後に合金化処理した合金化溶融めっき鋼板も同様に原板として使用できる。
電気めっきには,通常の電気Znめっき液,電気Zn合金めっき液,電気Cuめっき液,電気Snめっき液等を用いた鋼帯の連続めっき法や鋼板をめっき液に浸漬する個別電気めっき法が採用される。
有機樹脂皮膜の形成に先立って、耐食性や密着性を向上させる前処理として、アルカリ,溶剤等を用いた脱脂処理やリン酸塩処理等の化成処理を適宜施しても良い。
〔塗装条件〕
π共役高分子,窒素含有化合物等を配合した塗料をロールコート,スプレー,浸漬法等で塗装原板に塗布し、乾燥・焼付けによって目標の有機樹脂皮膜が形成される。乾燥・焼付けは、塗料の溶媒が揮散する限り温度条件に特段の制約が加わるものではないが、乾燥・焼付けを短時間で完了する上では50℃以上の加熱温度が好ましい。しかし、高すぎる加熱温度はπ共役高分子の熱分解を引き起こすので、加熱温度の上限を300℃に設定する。
塗装原板に対する塗料の塗布量は、乾燥膜厚:0.1〜10μmの有機樹脂皮膜が形成される量に調整される。乾燥膜厚:0.1μm未満では十分な放熱性が得られないが、10μmを超える厚膜は有機樹脂被覆鋼板のコスト上昇,加工性劣化を招きやすい。
ドーパントを配合した塗料から成膜された有機樹脂皮膜ではπ共役高分子がドープ状態にあるが、二段階処理でπ共役高分子をドーピングする場合には乾燥後の有機樹脂皮膜にドーパント溶液を接触させ、加熱・乾燥によりドーパントを有機樹脂皮膜に導入する。この場合の加熱温度は、有機樹脂皮膜形成時と同様な理由から50〜300℃の範囲で選定される。また、窒素含有化合物をドーパントに使用すると、π共役高分子の相互作用を強化する機能もドーパントに期待できるため、窒素含有化合物無添加の塗料も使用できる。ドーピング処理後、有機樹脂被覆鋼板を水洗して余剰のドーパントを除去すると、品質安定性に優れた有機樹脂被覆鋼板が得られる。
得られた有機樹脂被覆鋼板を電気・電子機器の筐体材料として使用するとき、筐体内部の電気・電子機器で発生した熱を効果的に外部に放出し、電気・電子機器の温度上昇を抑制する。その結果、電気・電子機器の故障,誤動作等のトラブルが防止され、電気・電子機器の耐久性が向上する。優れた放熱特性は、電気・電子機器用筐体材料に限らず、温度上昇が嫌われる保冷庫を初め温度制御が必要な建築部材にも活用できる。
塗装原板として、次の三種類の鋼板を用意した。
・板厚:0.8mm,片面当りめっき付着量:40g/m2の溶融Alめっき鋼板
・板厚:0.8mmのNo.2D表面仕上げSUS430ステンレス鋼板
・板厚:0.8mmの冷延鋼板
塗料の主成分には、次の方法で合成したポリアニリンを使用した。
アニリン:42gに水:600g,濃塩酸:35mlを加えた溶液に、濃硫酸:40gを水:150gに溶解させた水溶液を混合し、モノマー溶液を調製した。モノマー溶液を0℃以下の温度に保持しながら、水:220gに過硫酸アンモニウム:103gを溶解した酸化剤溶液をモノマー溶液に滴下した。滴下後、5時間攪拌しながら重合反応させることによりポリアニリンを合成した。次いで、濃アンモニア水で脱ドープ処理し、水、メタノール洗浄を繰り返した後、真空乾燥することにより脱ドープ状態のポリアニリン粉末を得た。
ポリアニリンを電子授与性又は電子供与性窒素含有化合物と共にブチルセロソルブ(溶媒)に溶解し、ポリアニリン濃度:5質量%の塗料を調製した。調製された塗料の組成を表1に示す。
Figure 2006076232
塗料No.1〜8を各塗装原板に塗布し、到達板温:120℃で加熱・乾燥することにより、有機樹脂皮膜を形成した。一部の有機樹脂皮膜については、乾燥後にHCl水溶液を塗布し加熱・乾燥するドーピング処理を施した。ドーピングの有無,有機樹脂皮膜の膜厚を表2に示す。表中、カーボンブラック:10質量%,Ni微粉末:30質量%をエポキシ樹脂に分散させた有機樹脂皮膜を比較例9として掲げた。
Figure 2006076232
各有機樹脂被覆鋼板から試験片を切り出し、次の試験で放熱特性を評価した。
長さ:175mm,幅:175mm,高さ:45mmで上部が開放された筐体を加熱ボックス1に用い、加熱ボックス1の外面に断熱材2を貼り付け、内面をアルミ箔3(熱反射板)でライニングした。加熱ボックス1の底面にヒータ4を載せ、ボックス内空気を対流攪拌するファン5を配置した。−図2−
加熱ボックス1の上部開口を試験片Sで密閉し、ボックス内を湿度60%RHの雰囲気に維持した。この条件下で一定電力:0.86Wをヒータ4に投入し、ボックス内空気をファン5で対流攪拌することによりボックス内温度を平衡状態に調節し、内部温度を熱電対6で測定した。
無被覆の鋼板を試験片Sに使用した場合の内部温度T0,有機樹脂被覆鋼板を試験片Sに使用した場合の内部温度T1を測定し、温度差ΔT(T0−T1)を算出した。温度差ΔTは、無被覆の鋼板で加熱ボックス1を密閉した場合に比較して有機樹脂被覆鋼板で密閉した加熱ボックス1の内部温度が低くなっていることを示し、大きな値ほど有機樹脂被覆鋼板の放熱特性が優れているといえる。
表3の試験結果にみられるように、本発明例No.1〜6は、電子授与性又は電子供与性窒素含有化合物のない有機樹脂皮膜を設けた比較例No.6,7よりも温度差ΔTが大きくなっており、電子授与性又は電子供与性窒素含有化合物による放熱性向上効果が確認される。π共役高分子をドーピングした本発明例No.2,4,6の結果から、ドーピングによって放熱特性が更に向上していることが判る。
優れた放熱特性は、膜厚が1μm前後の有機樹脂皮膜でも得られるが、あまり薄い有機樹脂皮膜(No.1)では温度差ΔTが小さくなる傾向にあった。他方、カーボンブラック,Ni微粉末を分散させたエポキシ樹脂系皮膜(No.9)では、5.8℃又は5.9℃と大きな温度差ΔTであったが5.0μmの厚膜にする必要があったため、有機樹脂被覆鋼板を加工した際に加工部の外観不良,耐食性低下が頻発した。
Figure 2006076232
π共役高分子として、次の方法で合成したポリアニリンスルホン酸を使用した。
アニリンスルホン酸:78gに水:770g,濃塩酸:35mlを加えてモノマー溶液を調製した。モノマー溶液を0℃以下に保持しながら、水:220gに過硫酸アンモニウム:103gを溶解した酸化剤溶液を滴下した。滴下後、5時間攪拌しながら重合反応させることによりポリアニリンスルホン酸を合成した。次いで、水,メタノール洗浄を繰り返し、真空乾燥後にポリアニリンスルホン酸粉末を得た.
ポリアニリンスルホン酸を電子授与性又は電子供与性窒素含有化合物と共にブチルセロソルブ(溶媒)に溶解することにより、ポリアニリンスルホン酸濃度:5質量%の塗料(表4)を調製した。
Figure 2006076232
実施例1と同じAlめっき鋼板,ステンレス鋼板,冷延鋼板を塗装原板に使用し、実施例1と同じ条件下で塗料No.1〜8から有機樹脂皮膜を形成した。得られた有機樹脂被覆鋼板の放熱特性を実施例1と同じ試験で調査した結果を、有機樹脂皮膜の膜厚と共に表5に示す。
この場合にも、本発明例No.1〜5の有機樹脂被覆鋼板は、電子授与性又は電子供与性窒素含有化合物を含まない有機樹脂皮膜を設けた比較例No.7,8よりも温度差ΔTが大きく、放熱特性が向上していることが判る。ただし、電子授与性窒素含有化合物にアメブテリデンを使用した例No.6では、アメブテリデン(C2OH2285)の分子量が大きいためポリアニリンスルホン酸高分子間に強い相互作用が得られ難く、その分だけ放熱性向上効果が小さかった。
Figure 2006076232
以上に説明したように、π共役高分子間の相互作用を強化する電子授与性又は電子供与性窒素含有化合物をπ共役高分子質と配合した塗料から有機樹脂皮膜を形成することにより、有機樹脂皮膜の熱伝導度が格段に向上し、電気・電子機器用の筐体材料に要求される放熱特性を備えた有機樹脂被覆鋼板が得られる。優れた放熱特性は薄膜でも維持されるので、カーボンブラックやニッケル微粉末を分散させた従来の放熱鋼板のように有機樹脂皮膜の厚膜化を要しない。そのため、有機樹脂被覆鋼板の加工性が確保され、皮膜剥離,亀裂等の加工欠陥に起因する外観劣化や耐食性劣化も抑制される。
電子授与性又は電子供与性によってπ共役高分子質有機樹脂皮膜の熱伝導性が改善されることを説明する模式図 有機樹脂被覆鋼板の放熱特性を調査した試験装置を示す概略図
符号の説明
1:加熱ボックス 2:断熱材 3:アルミ箔 4:ヒータ 5:ファン 6:熱電対 S:試験片

Claims (3)

  1. 電子授与性又は電子供与性窒素含有化合物を配合した複素環式共役系又はヘテロ原子含有共役系のπ共役高分子からなる有機樹脂皮膜が形成されていることを特徴とする放熱性に優れた有機樹脂被覆鋼板。
  2. 電子授与性又は電子供与性窒素含有化合物の分子量が400以下である請求項1記載の有機樹脂被覆鋼板。
  3. ハロゲン,プロトン酸,ルイス酸,有機酸の一種又は二種以上でπ共役高分子がドープされている請求項1記載の有機樹脂被覆鋼板。
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WO2009040626A3 (en) * 2007-09-25 2009-07-02 Toyota Motor Co Ltd Antirust treated metal

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