JP2006076232A - 放熱性に優れた有機樹脂被覆鋼板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 電子授与性又は電子供与性窒素含有化合物を配合した複素環式共役系又はヘテロ原子含有共役系のπ共役高分子からなる有機樹脂皮膜が形成された有機樹脂被覆鋼板である。電子授与性又は電子供与性窒素含有化合物としては分子量が400以下の化合物が好ましい。π共役高分子をドーピング状態にしておくと導電性が一層向上する。ドーパントには、ハロゲン,プロトン酸,ルイス酸,有機酸等が使用される。
【選択図】 なし
Description
本発明は、Ni粉末やカーボンブラックの分散を必要とせず、樹脂皮膜自体に放熱性を付与することにより、薄膜であっても筐体材料の要求特性を満足する放熱特性を呈し、電気・電子機器の筐体として有用な有機樹脂被覆鋼板を提供することを目的とする。
〔π共役高分子〕
π共役高分子は、分子内をπ電子が自由に移動できる共役二重結合を有し、半導体〜金属レベルの導電性を示す有機高分子であり、複素環式共役系やヘテロ原子含有共役系がある。ポリピロール,ポリフラン,ポリチオフェン,ポリセレノフェン等の複素環式共役系は、それぞれピロール,フラン,チオフェン,セレノフェン等の複素環式化合物が2.5の位置で重合し、トランス-イソシド型の炭素-炭素共役骨格を形成した高分子化合物である。ポリ(パラフェニレンスルフィド),ポリ(パラフェニレンオキシド),ポリアニリン等のヘテロ原子含有共役系は、脂肪族又は芳香族の共役系を窒素,硫黄,酸素,セレン,テルル等のヘテロ原子で結合した高分子化合物である。大半のπ共役高分子は溶媒に不溶であるが、ポリアニリンはメチルピロリドンに可溶性を示し、水溶性のポリピロール誘導体,ポリ(3-チオフェン-β-エタンスルホン酸)等も合成されている。
窒素含有化合物としては、電子授与性又は電子供与性を示す化合物が使用される。電子授与性窒素含有化合物には硝酸,亜硝酸,アゾニアヘリセン,アセトニトリル,ニトロベンゼン等があり、電子供与性窒素含有化合物にはN-メチル-2-ピロリドン,イソプロパノールアミン,ベンジルアミン,N-メチルエタンイミン等がある。π共役高分子間の距離を適正に保ち必要な相互作用を働かせるためには、分子量:400以下の窒素含有化合物が好ましい。分子サイズが大きすぎる窒素含有化合物では、π共役高分子の相互間距離が離れすぎ、熱移動に有効なネットワークが形成され難くなる。
有機樹脂皮膜にドーパントを含ませることにより、有機樹脂皮膜の導電性が向上する。ドーパントは、耐食性の向上にも有効である。ドーパントにはハロゲン,プロトン酸,ルイス酸,有機酸等がある。具体的には、塩素,臭素,沃素等のハロゲン、塩酸,硫酸,過塩素酸,過塩素酸テトラメチルアンモニウム,テトラフルオロホウ酸,ヘキサフルオロリン酸等のプロトン酸、五フッ化リン,三フッ化ホウ素等のルイス酸、ベンゼンスルホン酸,トルエンスルホン酸,ナフタレンスルホン酸等の有機酸が使用される。窒素を含有する硝酸,亜硝酸等の化合物をドーパントに用いた場合、放熱性改善機能のある窒素含有化合物としても働く。
放熱性有機樹脂皮膜の形成に使用される塗料は、複素環式共役系又はヘテロ原子含有共役系のπ共役高分子,電子授与性又は電子供与性窒素含有化合物,必要に応じてドーパントを溶媒に溶解することにより調製される。π共役高分子等の溶質を安定溶解させる限り各種溶媒を使用できる。具体的には、水、メタノール等のアルコール類、メチルエチルケトン,キシレン,アセトニトリル,N-メチル-2-ピロリドン等がある。また、皮膜密着性,潤滑性,耐食性に有効なシランカップリング剤,ワックス,防錆顔料等、常用添加剤を配合しても良い。
窒素含有化合物の配合量は、前述したように(皮膜中の窒素含有化合物)/(皮膜中のπ共役高分子が窒素含有化合物と相互作用可能な部位の総数)のモル比が好ましくは0.05〜0.25の範囲となるように調整される。
有機樹脂皮膜が形成される塗装原板には、普通鋼板,めっき鋼板,ステンレス鋼板等がある。ステンレス鋼板には、フェライト系,オーステナイト系等が使用され、表面仕上げにも特段の制約が加わらない。めっき鋼板としては、溶融めっき,電気めっき,蒸着めっき等が施された鋼板を使用できる。
溶融めっきには、溶融Zn浴,溶融Zn-Al合金浴,溶融Zn-Al-Mg合金浴,溶融Zn-Mg合金浴,溶融Zn-Ni合金浴,溶融Al浴,溶融Al-Si合金浴等を用いた連続めっき又はドブ漬けめっきが採用される。溶融めっき後に合金化処理した合金化溶融めっき鋼板も同様に原板として使用できる。
有機樹脂皮膜の形成に先立って、耐食性や密着性を向上させる前処理として、アルカリ,溶剤等を用いた脱脂処理やリン酸塩処理等の化成処理を適宜施しても良い。
π共役高分子,窒素含有化合物等を配合した塗料をロールコート,スプレー,浸漬法等で塗装原板に塗布し、乾燥・焼付けによって目標の有機樹脂皮膜が形成される。乾燥・焼付けは、塗料の溶媒が揮散する限り温度条件に特段の制約が加わるものではないが、乾燥・焼付けを短時間で完了する上では50℃以上の加熱温度が好ましい。しかし、高すぎる加熱温度はπ共役高分子の熱分解を引き起こすので、加熱温度の上限を300℃に設定する。
ドーパントを配合した塗料から成膜された有機樹脂皮膜ではπ共役高分子がドープ状態にあるが、二段階処理でπ共役高分子をドーピングする場合には乾燥後の有機樹脂皮膜にドーパント溶液を接触させ、加熱・乾燥によりドーパントを有機樹脂皮膜に導入する。この場合の加熱温度は、有機樹脂皮膜形成時と同様な理由から50〜300℃の範囲で選定される。また、窒素含有化合物をドーパントに使用すると、π共役高分子の相互作用を強化する機能もドーパントに期待できるため、窒素含有化合物無添加の塗料も使用できる。ドーピング処理後、有機樹脂被覆鋼板を水洗して余剰のドーパントを除去すると、品質安定性に優れた有機樹脂被覆鋼板が得られる。
・板厚:0.8mm,片面当りめっき付着量:40g/m2の溶融Alめっき鋼板
・板厚:0.8mmのNo.2D表面仕上げSUS430ステンレス鋼板
・板厚:0.8mmの冷延鋼板
アニリン:42gに水:600g,濃塩酸:35mlを加えた溶液に、濃硫酸:40gを水:150gに溶解させた水溶液を混合し、モノマー溶液を調製した。モノマー溶液を0℃以下の温度に保持しながら、水:220gに過硫酸アンモニウム:103gを溶解した酸化剤溶液をモノマー溶液に滴下した。滴下後、5時間攪拌しながら重合反応させることによりポリアニリンを合成した。次いで、濃アンモニア水で脱ドープ処理し、水、メタノール洗浄を繰り返した後、真空乾燥することにより脱ドープ状態のポリアニリン粉末を得た。
ポリアニリンを電子授与性又は電子供与性窒素含有化合物と共にブチルセロソルブ(溶媒)に溶解し、ポリアニリン濃度:5質量%の塗料を調製した。調製された塗料の組成を表1に示す。
長さ:175mm,幅:175mm,高さ:45mmで上部が開放された筐体を加熱ボックス1に用い、加熱ボックス1の外面に断熱材2を貼り付け、内面をアルミ箔3(熱反射板)でライニングした。加熱ボックス1の底面にヒータ4を載せ、ボックス内空気を対流攪拌するファン5を配置した。−図2−
加熱ボックス1の上部開口を試験片Sで密閉し、ボックス内を湿度60%RHの雰囲気に維持した。この条件下で一定電力:0.86Wをヒータ4に投入し、ボックス内空気をファン5で対流攪拌することによりボックス内温度を平衡状態に調節し、内部温度を熱電対6で測定した。
アニリンスルホン酸:78gに水:770g,濃塩酸:35mlを加えてモノマー溶液を調製した。モノマー溶液を0℃以下に保持しながら、水:220gに過硫酸アンモニウム:103gを溶解した酸化剤溶液を滴下した。滴下後、5時間攪拌しながら重合反応させることによりポリアニリンスルホン酸を合成した。次いで、水,メタノール洗浄を繰り返し、真空乾燥後にポリアニリンスルホン酸粉末を得た.
ポリアニリンスルホン酸を電子授与性又は電子供与性窒素含有化合物と共にブチルセロソルブ(溶媒)に溶解することにより、ポリアニリンスルホン酸濃度:5質量%の塗料(表4)を調製した。
Claims (3)
- 電子授与性又は電子供与性窒素含有化合物を配合した複素環式共役系又はヘテロ原子含有共役系のπ共役高分子からなる有機樹脂皮膜が形成されていることを特徴とする放熱性に優れた有機樹脂被覆鋼板。
- 電子授与性又は電子供与性窒素含有化合物の分子量が400以下である請求項1記載の有機樹脂被覆鋼板。
- ハロゲン,プロトン酸,ルイス酸,有機酸の一種又は二種以上でπ共役高分子がドープされている請求項1記載の有機樹脂被覆鋼板。
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JP2004265161A JP2006076232A (ja) | 2004-09-13 | 2004-09-13 | 放熱性に優れた有機樹脂被覆鋼板 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009126105A (ja) * | 2007-11-26 | 2009-06-11 | Kobe Steel Ltd | プレコート金属板およびその製造方法 |
WO2009040626A3 (en) * | 2007-09-25 | 2009-07-02 | Toyota Motor Co Ltd | Antirust treated metal |
-
2004
- 2004-09-13 JP JP2004265161A patent/JP2006076232A/ja active Pending
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WO2009040626A3 (en) * | 2007-09-25 | 2009-07-02 | Toyota Motor Co Ltd | Antirust treated metal |
JP2009126105A (ja) * | 2007-11-26 | 2009-06-11 | Kobe Steel Ltd | プレコート金属板およびその製造方法 |
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