JP4664828B2 - 塗装後耐食性に優れた有機樹脂被覆鋼板 - Google Patents

塗装後耐食性に優れた有機樹脂被覆鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、加工部でも優れた塗装後耐食性を呈する有機樹脂被覆鋼板に関する。
金属材料の耐食性や意匠性を改善するため、各種表面処理(塗装下地処理)を施した後で塗装することが多い。塗装下地処理は、下地鋼,上塗り塗膜との密着性や耐水性,耐食性等が要求され、Cr,Pb等の重金属が従来から防錆剤として使用されてきた。しかし、塗装下地処理で使用される重金属は、環境汚染の原因となっている。
Cr等の重金属を含まない塗装下地処理として、導電性高分子が着目されている。たとえば、可溶性ポリアニリンを含む溶液を金属表面に塗布し乾燥することにより形成したポリアニリン皮膜で耐食性を改善した塗装金属板(特許文献1),ポリアニリン及びリン酸を配合した防食塗料(特許文献2)等が知られている。
特開平6-128769号公報 特開平11-21505号公報
ポリアニリン皮膜の形成によりある程度の効果は得られるが、加工部等では塗装後耐食性が不足しがちになる。低い塗装後耐食性は加工を受けた鋼板表面からπ共役高分子が剥離することが原因と推察され、下地鋼に対するπ共役高分子の密着性の向上が可能になれば塗装後耐食性の低下が防止されることが予想される。
そこで、塗装下地処理に使用するπ共役高分子について種々調査・検討した。その結果、π共役高分子の分子量が密着性に大きな影響を及ぼしていることを見出した。
本発明は、かかる知見をベースに完成されたものであり、塗装下地皮膜に含まれるπ共役高分子の数平均分子量を20000以上に規制することにより、加工を受けた部位であっても鋼板表面に十分な密着性で塗装下地皮膜が付着しており、π共役高分子本来の酸化還元作用が発揮され、塗装後耐食性に優れた有機樹脂被覆鋼板を得ることを目的とする。
本発明の有機樹脂被覆鋼板は、鋼板表面に、複素環式共役系又はヘテロ原子含有共役系のπ共役高分子と0.1〜30質量%のシランカップリング剤とを含む処理液を塗布し、焼き付けてなる有機樹脂皮膜が形成されている。π共役高分子には数平均分子量が20000以上の高分子が使用され、π共役高分子に含まれるヘテロ原子には窒素及び/又は硫黄がある。有機樹脂皮膜のπ共役高分子は好ましくは結晶化度:5%以上で結晶化しており、好ましくは0.05μm以上の膜厚で形成される
複素環式共役系又はヘテロ原子含有共役系のπ共役高分子を含む処理液を鋼板に塗布し、80〜300℃で加熱・乾燥すると、結晶化度:5%以上のπ共役高分子を含む有機樹脂皮膜が形成される。
複素環式共役系又はヘテロ原子含有共役系のπ共役高分子が塗膜下腐食を抑制するメカニズムは、次のように考えられている。
π共役高分子は、下地鋼に比較して貴な電位にあるため下地鋼との界面では還元反応を受ける。π共役高分子の還元に伴い下地鋼が酸化され、緻密な不動態皮膜が下地鋼の表面に形成される。他方、空気に接触する表面側ではπ共役高分子が空気酸化され元の状態に戻る。このような酸化還元の繰返しにより、環境遮断能の高いバリア層が下地鋼表面に形成される。また、ピンホール,皮膜疵付き等の皮膜欠陥が生じても不動態化が促進されるため、欠陥部を起点とする腐食の進行が抑制される。
しかし、π共役高分子は、剛直な分子構造であり、加工しがたい皮膜になりやすい。そのため、π共役高分子の皮膜を設けた鋼板を曲げ加工すると、π共役高分子が鋼板から剥離し十分な塗装後耐食性を付与できない。
本発明者等は、鋼板に対するπ共役高分子の密着性について検討した結果、分子量を大きくしてπ共役高分子に柔軟性を付与することが有効であること、π共役高分子の結晶化度が塗装後耐食性に影響を及ぼしていることを見出した。すなわち、数平均分子量:20000以上,結晶化度:5%以上のπ共役高分子で鋼板を被覆すると、加工性が良好で、塗装前処理として一般的に採用されているクロメート皮膜に匹敵する塗装後耐食性が加工部でも得られる。
π共役高分子の高分子量化や結晶化度が有効な理由は次のように説明できる。
π共役高分子が数平均分子量:20000以上になると、密着性に必要な水素結合部位の個数が確保され、高分子量化に伴い皮膜の自由度が増加するため伸縮性が付与される。水素結合部位の個数増加,高分子量化が相俟って加工部でも皮膜密着性が改善され、塗装後耐食性が向上する。
π共役高分子は、結晶化の進行に応じ分子間の共鳴が大きくなり酸化還元反応が活発化する。結晶化の進行に伴い分子配向の規則性が高まりπ電子が同一方向に作用することも、効果的な酸化還元反応を促している一因と考えられる。実際、π共役高分子の結晶化度が5%以上になると、塗装後耐食性の向上が顕著になる。しかし、過剰に結晶化すると皮膜が硬質化して加工性、加工密着性の低下が懸念されるので、結晶化度の上限を50%とすることが好ましい。
本発明に従った有機樹脂皮膜が形成される原板には、普通鋼板,めっき鋼板,ステンレス鋼板等がある。めっき鋼板としては、溶融めっき,電気めっき,蒸着めっき等が施された鋼板を使用できる。
溶融めっきには、溶融Zn浴,溶融Zn-Al合金浴,溶融Zn-Al-Mg合金浴,溶融Zn-Al-Mg-Si合金浴,溶融Zn-Mg合金浴,溶融Zn-Ni合金浴,溶融Al浴,溶融Al-Si合金浴等を用いた連続めっき又はドブ漬けめっきが採用される。溶融めっき後に合金化処理した合金化溶融めっき鋼板も同様に原板として使用できる。
電気めっきには,通常の電気Znめっき液,電気Zn合金めっき液,電気Cuめっき液,電気Snめっき液等を用いた鋼帯の連続めっき法や鋼板をめっき液に浸漬する個別電気めっき法が採用される。
有機樹脂皮膜の形成に先立って、耐食性や密着性を向上させる前処理として、アルカリ,溶剤等を用いた脱脂処理やリン酸塩処理等の化成処理を適宜施しても良く、必要に応じてシランカップリング処理することもできる。
シランカップリング剤の層を下地鋼と有機樹脂皮膜との界面に介在させると、π共役高分子本来の特性を損なうことなく下地鋼に対する密着性,塗装後耐食性が改善される。π共役高分子と相互作用の強いシクロアルカン,π結合を有する原子団,一級アミノ基から選ばれた一種又は二種以上の有機官能基を有するシランカップリング剤使用すると、一層優れた密着性,塗装後耐食性が得られる。下地鋼と有機樹脂皮膜との界面にシランカップリング剤を介在させる方法は、π共役高分子を含む処理液にシランカップリング剤を配合して処理する方法を採用できる。処理液に添加するシランカップリング剤の量は、処理液に対し0.1〜30質量%の範囲である。処理液に添加したシランカップリング剤は有機樹脂皮膜の密着性向上に寄与し、0.1質量%以上で添加効果がみられる。しかし、30質量%を超える過剰添加は、π共役高分子に起因する特性に及ぼす悪影響が懸念される。
一級アミノ基含有シランカップリング剤には、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン,アミノシラン,γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン,γ−アミノプロピルトリエトキシシラン,トリメトキシシラン,γ−アミノプロピルトリメトキシシラン,メチルジメトキシシラン等がある。
シクロアルカン,π結合を有機官能基として有するシランカップリング剤には、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)-γ−アミノプロピルトリメトキシシラン,3-アニリノプロピルトリメトキシシラン,シクロヘキシルメチルジメトキシシラン,フェニルトリメトキシシラン,ジフェニルジメトキシシラン,2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン,N-[2-(ビニルベンジルアミノ)エチル]-3-アミノプロピルトリメトキシシラン,3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン,3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン,ビニルトリアセトキシシラン,ビニルトリメトキシシラン,ビニルトリエトキシシラン等がある。
適宜の前処理が施された原板に、π共役高分子とシランカップリング剤とを含む処理液を塗布し焼き付けることにより、密着性が改善された有機樹脂皮膜が形成される。
π共役高分子には、複素環式共役系,ヘテロ原子含有共役系等が挙げられ、具体的には以下の化合物が使用される。
複素環式共役系:ポリピロール,ポリフラン,ポリチオフェン,ポリセレノフェン
ヘテロ原子含有共役系:ポリ(パラフェニレンスルフィド),ポリ(パラフェニレンオキシド),ポリアニリン
特に、ヘテロ原子Sを有するポリ(パラフェニレンスルフィド)やNを有するポリアニリンをπ共役高分子に使用する場合、有機樹脂皮膜の密着性が一層向上する。
処理液には、安定化に有効なアミンやマトリックス形成高分子を添加しても良い。
アミンには、イソプロパノールアミン,ベンジルアミン,N-メチルエタンイミン,アニリン,p-フェニレンジアミン,トリエチルアミン,N-メチルアニリン,アミノシラン,γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等がある。
マトリックス形成高分子には、ポリスチレン,ポリエステル,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリカーボネート,ポリアミド,ポリイミド,ポリメチル(メタ)アクリレート,ポリ塩化ビニル,ポリ酢酸ビニル,ポリビニルブチラール,ポリビニルホルマール,エポキシ樹脂,フェノール樹脂,シリコーン樹脂,フッ素樹脂,ポリシロキサン,アクリル樹脂,ウレタン樹脂,ABS樹脂,ナイロン,ポリアクリロニトリル,ポリビニルアルコール等及びこれらの共重合体がある。
π共役高分子や必要に応じアミン,マトリックス形成高分子を溶媒に溶解することにより、有機樹脂皮膜形成用の処理液が調製される。使用可能な溶媒は、π共役高分子を安定に溶解させる限り特に種類が制約されるものではなく、水,メタノール等のアルコール類,メチルエチルケトン,キシレン,アセトン,アセトニトリル,N-メチル-2-ピロリドン等の有機溶媒がある。
処理液に含まれる量は、たとえばπ共役高分子で1〜30質量%,アミンで0.1〜10質量%の範囲から選定し、π共役高分子に対しマトリックス成形高分子を90質量%以下の割合で添加することが好ましい
π共役高分子の配合量が1質量%未満では、処理液中のπ共役高分子が不足し、均一な有機樹脂皮膜を形成させ難い。逆に、30質量%を超える過剰量では、処理液の安定性が悪くなり、処理液の更新時期を早めることにもなる。
アミン化合物は、0.1〜10質量%の範囲で添加することが好ましい。0.1質量%未満の添加量では十分な安定性向上効果が得られず、10質量%を超えても更なる安定化が期待できずコストが高くなる。また、π共役高分子に対し90質量%を超える過剰量のマトリックス形成高分子を配合すると、π共役高分子の絶対量不足に起因して十分な特性を付与できない。
ロールコート,スプレー,浸漬法等で原板に処理液を塗布し、焼付け・乾燥することにより目標の有機樹脂皮膜が形成される。焼付け・乾燥は、π共役高分子の分解を防止しながら溶媒を揮発させる限り温度条件に特段の制約が加わるものではないが、工業的な観点から焼付け・乾燥温度を50〜300℃の範囲で選定することが好ましい。50℃に達しない温度では長時間の焼付け・乾燥を必要とし、300℃を超える温度ではπ共役高分子の分解に起因する品質低下が懸念される。
また、焼付け温度が高くなるに従いπ共役高分子の結晶化が進行し、80℃以上で結晶化度が5%以上になり塗装後耐食性に及ぼす影響が顕著になる。結晶化度は、規則配列した高分子(結晶化した高分子)とランダム配列した高分子(非晶質高分子)との割合を示す指標であり、X線回折の測定結果から求められる。具体的には、X線回折で結晶性ピーク(2θ=11.36度),非晶性ピーク(2θ=11.84度)を測定し、(結晶化度)=(結晶性ピーク)/(結晶性ピーク+非晶性ピーク)として算出される。
処理液の塗布量は、乾燥膜厚:0.05〜10μmの有機樹脂皮膜が形成されるように調整することが好ましい。0.05μm未満の薄膜では、十分な耐食性が確保されない。有機樹脂皮膜が厚膜になるほど耐食性等の品質が向上するものの、10μmを超えて厚膜化しても更なる品質向上効果が得られず経済的に不利となる。
形成される有機樹脂皮膜は、着色顔料を含まない処理液を用いているにも拘わらず、薄膜でも鮮やかな色調を呈し、加工後の皮膜密着性,耐食性にも優れている。また、防錆顔料としてクロム化合物を含む必要がないので、環境対応型の表面処理鋼板として高加工が予定されている家電機器部材,建材等に使用できる。
更に、有機樹脂皮膜にドーパントを含ませることにより、導電性,耐食性の向上が図られる。ドーパントには、ハロゲン,プロトン,ルイス酸,有機酸,過酸化物等を使用できる。具体的には、塩素,臭素,沃素等のハロゲン、塩酸,硫酸,過塩素酸,過塩素酸テトラメチルアンモニウム,テトラフルオロホウ酸,ヘキサフルオロリン酸等のプロトン酸、五フッ化リン,三フッ化ホウ素等のルイス酸、ベンゼンスルホン酸,トルエンスルホン酸,ナフタレンスルホン酸等の有機酸,ペルオキソチタン酸等の過酸化物が挙げられる。
π共役高分子,シランカップリング剤,ドーパントを含む処理液を原板に塗布・焼付けする一段処理、或いはπ共役高分子,シランカップリング剤を含む有機樹脂皮膜にドーパント溶液を塗布する二段処理で、ドーパントを含むπ共役高分子の有機樹脂皮膜が形成される。
一段処理では、π共役高分子を形成しているモノマーの濃度に対する濃度比:0.01〜1.0でドーパントを処理液に配合することが好ましい。0.01未満の濃度比では十分な導電性が得られず、逆に1.0を超える濃度比では過剰なドーパントに起因する処理液の不安定化,有機樹脂皮膜の特性劣化が懸念される。
二段処理では、好ましくは濃度:0.05〜3.0モル/lのドーパント溶液が使用される。0.05モル/l未満の濃度では、ドーピング速度が遅く、有機樹脂皮膜を均一にドーピングし難い。濃度を3.0モル/lを超えて増加しても、濃度増加に見合ったドーピング速度の上昇を期待できない。有機樹脂皮膜にドーパント溶液を塗布した後、乾燥することによりπ共役高分子がドーピングされる。乾燥・焼付け温度は、有機樹脂皮膜の形成時と同じ理由から50〜300℃の範囲で選定することが好ましい。また、乾燥後に処理鋼板を水洗することにより、余剰のドーパントを除去することが好ましい。
π共役高分子をドープした有機樹脂皮膜は高い導電性を呈するので、アース性が要求される用途に適用でき、帯電防止材,電磁波シールド材等として有効な表面処理鋼板が得られる。
〔塗装原板〕
板厚:0.8mm,めっき付着量:60g/m2の合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)を塗装原板に使用し、π共役高分子を含む有機樹脂皮膜を形成した実施例で本発明を具体的に説明する。しかし、使用可能な原板が合金化溶融亜鉛めっき鋼板に限られるものではなく、熱延鋼板,冷延鋼板,電気めっき鋼板,他の溶融めっき鋼板,化成処理鋼板,ステンレス鋼板等を原板に使用した場合でも、塗装後耐食性に優れた有機樹脂被覆鋼板が同様に得られることは勿論である。
〔π共役高分子〕
π共役高分子として,次の手順で合成したポリアニリンを用いたが、ポリアニリン以外のπ共役高分子を使用した場合でも同様な結果が得られている。
アニリン:42gに水:600g,濃塩酸:35mlを加えた溶液に、濃硫酸:40gを水:150gに溶解させた水溶液を混合し、モノマー溶液を調製した。水:220gに過硫酸アンモニウム:130gを溶解した酸化剤溶液をモノマー溶液に滴下した。滴下時の温度及び重合中の温度を0〜30℃の範囲で、重合時間を1〜10時間の範囲で変えることにより、分子量の異なる数種のポリアニリンを合成した。合成したポリアニリンを濃アンモニア水で脱ドープ処理し、水,エタノール洗浄を繰り返した後、真空乾燥によって脱ドープ状態のポリアニリン粉末を得た。
合成されたポリアニリンの分子量をGPC測定で求めたところ、表1に示すように重合温度,重合時間に応じて分子量が異なっていた。
Figure 0004664828
〔下塗り〕
合成されたポリアニリンをドーパント,マトリックス形成高分子,アミン,シランカップリング剤と有機溶媒中で混合することにより、ポリアニリン含有処理液(表2)を調製した。
脱脂,洗浄した合金化溶融亜鉛めっき鋼板にポリアニリン含有処理液をバーコート塗布し、到達板温:50〜200℃で加熱・乾燥することにより膜厚:1μmの有機樹脂皮膜(下塗り塗膜)を形成した。比較のため、塗布型クロメート処理液(サーフコートNRC300:日本ペイント株式会社製)をバーコート塗布し、到達板温:100℃で加熱乾燥することにより、Cr換算付着量:40mg/m2のクロメート皮膜を形成した。なお、処理液No.1,3,5及び8を用いた試験No.1,2,5,6,9,10,15及び16は、参考例である。
Figure 0004664828
生成した有機樹脂皮膜をX線回折し、結晶化度を求めた。なお、X線回折では、CuKαをX線源とするX線回折装置(株式会社リガク製)を用い、ステップ:0.02度,走査速度:4.0度/分の条件下でX線回折スペクトルを得た。本発明例1(図1a)では結晶性ピークが観察されなかったが、本発明例2(図1b)では2θ=11.36度に結晶性ピークがあった。結晶性のピーク値A,非晶性のピーク値Bから結晶化度〔A/(A+B)〕を算出した。
有機樹脂被覆鋼板から試験片を切り出し、曲げ部内側に同じ厚みの板材を複数枚(t枚)介在させて180度曲げ試験した。曲げ試験後、曲げ部外側に粘着テープを貼り付け瞬時に引き剥がすテープ剥離試験により有機樹脂皮膜の剥離状態を観察し、皮膜残存率:100面積%を◎,90面積%以上を○,50〜90面積%を△,50面積%未満を×として加工密着性を評価した。
曲げ部内側に介在させた板材の枚数との関係で有機樹脂皮膜の密着性を、有機樹脂皮膜に含まれるポリアニリンの分子量及び有機樹脂皮膜の膜厚と共に表3に示す。表3から明らかなように、高分子量化したポリアニリンからなる有機樹脂皮膜ほど、加工部での塗膜密着性に優れており、数平均分子量:29000以上で1t曲げにも耐える有機樹脂皮膜であった。
これに対し、数平均分子量:20000未満のポリアニリンからなる有機樹脂皮膜では、3t曲げした場合でも曲げ部外側から大半の有機樹脂皮膜が剥離していた。
なお、結晶化度と密着性との間には有意性のある関係がみられなかった。
〔上塗り〕
有機樹脂皮膜で被覆した鋼板にポリエステル変性アクリルウレタン系上塗り塗料(ユニポン400SC:日本ペイント製)を塗布し、常温乾燥させて乾燥膜厚:20μmの上塗り塗膜を形成した。
得られた塗装鋼板から試験片を切り出し、曲げ部内側に同じ厚みの板材を2枚介在させて180度曲げした。次いで、曲げ部外側に5%NaCl水溶液(35℃)を1500時間噴霧した後、曲げ部外側を観察して白錆発生の有無を調査した。そして、白錆が検出されなかった試験片を◎,白錆発生面積率:10%未満を○,10〜30%を△,30〜60%を▲,60%以上を×として塗装後耐食性を評価した。
表3にみられるように有機樹脂皮膜に含まれるポリアニリンが高分子量化するほど、また結晶化するほど、塗装後耐食性が良好であった。ポリアニリンの分子量と塗膜の白錆発生との関係を求めたところ、図2に示すようにポリアニリンの数平均分子量が20000以上になると白錆発生面積率が大幅に減少しており、ポリアニリンの防錆能が有効に働いていることを確認できた。
他方、数平均分子量:20000未満のポリアニリンからなる有機樹脂皮膜を設けた比較例では、白錆が著しく発生し塗装後耐食性に劣っていた。低い塗装後耐食性は、曲げ部外側の有機樹脂皮膜が下地鋼から剥離し、ポリアニリンの作用が消失したことを示す。
Figure 0004664828
板厚:0.8mm,めっき付着量:90g/m2の溶融亜鉛めっき鋼板(GI)を塗装原板に用い、π共役高分子としてポリピロールを含む有機樹脂皮膜を設けた。
ポリピロールは次の手順で合成し、塗料化した。
ピロール:10gに水:750g,塩酸:10.5mlを加えて混合し、モノマー溶液を調製した。モノマー溶液を0℃の温度に保持しながら、水:220gに過硫酸アンモニウム:8gを溶解した酸化剤溶液をモノマー溶液に滴下した。滴下時及び重合中の温度を0〜30℃の範囲で、重合時間を1〜10時間の範囲で変えることにより、分子量の異なる数種のポリピロールを合成した。濾過したポリピロールを水,エタノールで繰返し洗浄した後、真空乾燥してポリピロール粉末を得た。
合成されたポリピロールの分子量をGPC測定したところ、表4に示すように重合温度,重合時間に応じて分子量が異なっていた。
Figure 0004664828
得られたポリピロール粉末をマトリックス形成高分子,シランカップリング剤と共に水に添加し、ポリピロール含有処理液(表5)を調製した。
Figure 0004664828
脱脂,洗浄した合金化溶融亜鉛めっき鋼板にポリピロール含有処理液をバーコート塗布し、到達板温:50〜200℃で加熱・乾燥することにより有機樹脂皮膜(下塗り塗膜)を形成した。なお、処理液No.1,3及び5を用いた試験No.1,2,5,6,9及び10は参考例である。
得られた有機樹脂被覆鋼板の密着性,塗装後耐食性を実施例1と同じ条件下で調査した。表6の調査結果にみられるように、ポリピロールでも高分子量化するほど良好な結果が得られていた。また、ポリピロールの分子量と塗膜の白錆発生との関係を求めたところ、図3に示すようにポリピロールの数平均分子量が20000以上になると白錆発錆面積が大幅に減少しており、ポリピロールの防錆能が有効に働いていることを確認できた。
実施例1と同様に下塗り塗膜,上塗り塗膜を形成し、塗装後耐食性を調査した結果を表6に示す。また、塗膜膨れ幅とポリピロールの結晶化度との関係を図3に示す。ポリピロールを用いた本実施例でも、結晶化度:5%以上で優れた塗装後耐食性が得られており、結晶化度:5%以上には80℃以上の加熱温度が必要であった。
Figure 0004664828
板厚:0.8mm,めっき付着量:90g/m2の溶融Al-9質量%Si合金めっき鋼板を塗装原板に用い、π共役高分子としてポリ(チオフェン-2,4-ジイル)を含む有機樹脂皮膜を設けた。
ポリ(チオフェン-2,4-ジイル)は次の手順で合成し、塗料化した。
窒素雰囲気中でビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル:31.6g,2,2'-ビピリジン:18.0g,1,5-シクロオクタジエン:20.0mlをN,N-ジメチルホルムアルデヒド:1000mlに混合し、更に2,4-ジブロモチオフェン:23.0gを添加し、重合温度:60℃,重合時間:10時間でポリ(チオフェン-2,4-ジイル)を合成した。抽出したポリ(チオフェン-2,4-ジイル)を塩酸,エタノールで繰返し洗浄した後、真空乾燥によってポリ(チオフェン-2,4-ジイル)粉末を得た。合成されたポリ(チオフェン-2,4-ジイル)の数平均分子量を測定したところ、47,000であった。
ポリ(チオフェン-2,4-ジイル)粉末を水に添加し、表7の水性処理液を調合した。本例では、シランカップリング剤にフェニルトリエトキシシランを用いた。
Figure 0004664828
実施例1と同様に下塗り塗膜,上塗り塗膜を形成し、塗装後耐食性を調査した。この場合にも、塗料焼付け時の温度管理によってポリチオフェンの結晶化度を5%以上にすることにより、優れた塗装後耐食性を付与できた。なお、処理液Bを用いた例は、参考例である。
以上に説明したように、高分子量化したπ共役高分子から有機樹脂皮膜を成膜することにより、π共役高分子本来の優れた特性を維持しながら加工性が改善された有機樹脂被覆鋼板が得られる。更に、π共役高分子の結晶化度を5%以上とすることにより、加工部,クロスカット部等の皮膜欠陥部においても優れた塗装後耐食性が付与される。この有機樹脂被覆鋼板は、耐食性,加工性等の優れた特性を活用し、環境負荷の大きなクロメート処理鋼板に代わる素材として種々の分野で使用される。
鋼板表面に形成した非結晶ポリアニリン皮膜(a),結晶化したポリアニリン皮膜(b)のX線回折スペクトル ポリアニリンの分子量が塗装後耐食性に及ぼす影響を示すグラフ ポリピロールの分子量が塗装後耐食性に及ぼす影響を示すグラフ

Claims (4)

  1. 鋼板表面に、数平均分子量:20000以上の複素環式共役系又はヘテロ原子含有共役系のπ共役高分子と0.1〜30質量%のシランカップリング剤とを含む処理液を塗布し、焼き付けてなる有機樹脂皮膜が設けられていることを特徴とする塗装後耐食性に優れた有機樹脂被覆鋼板。
  2. π共役高分子に含まれるヘテロ原子が窒素及び/又は硫黄である請求項1記載の有機樹脂被覆鋼板。
  3. シランカップリング剤が、シクロアルカンπ結合を有する原子団及び一級アミノ基から選ばれた一種又は二種以上の有機官能基を有する請求項1記載の有機樹脂被覆鋼板。
  4. 結晶化度:5%以上の複素環式共役系又はヘテロ原子含有共役系のπ共役高分子を含む有機樹脂皮膜が設けられている請求項1〜3何れかに記載の有機樹脂被覆鋼板。
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