JP5407421B2 - 傷部耐食性に優れる容器用樹脂被覆金属板 - Google Patents

傷部耐食性に優れる容器用樹脂被覆金属板 Download PDF

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Description

本発明は、例えば、食品缶詰の缶胴及び蓋等に用いられる容器用樹脂被覆金属板に関するものである。
従来、食品缶詰に用いられる金属缶用素材であるティンフリースチール(TFS)、アルミニウム等の金属板には、耐食性、耐久性、耐候性などの向上を目的として、塗装が施されていた。しかし、この塗装を施す技術は、焼き付け工程が複雑であるばかりでなく、多大な処理時間を必要とし、さらには多量の溶剤を排出するという問題を抱えていた。
そこで、これらの問題を解決するため、塗装鋼板に替わり、熱可塑性樹脂フィルムを加熱した金属板に積層してなるフィルムラミネート金属板が開発され、現在、食品缶詰用素材として工業的に用いられている。なかでも、PETフィルムをTFS表面に熱融着させたフィルムラミネート鋼板は、優れた密着性、加工性、耐食性を有するため、ほんどの食品缶詰に適用可能であり、今後、更なる需要拡大が見込まれている。
また、更なる需要拡大地域として注目されているのがBRICs諸国などの経済発展の著しい地域であり、今後の需要増は顕著であろう。そして、このような世界市場を見据えた場合、フィルムラミネート金属板の技術はグローバルスタンダードとなり得る可能性が高く、重要性がますます高まることは確実である。
このような状況のもと、フィルムラミネート金属板には、更なる性能改善が必要であることが明らかになってきた。耐食性、なかでも傷部の耐食性を、大幅に向上させる必要がある。以下、その理由を示す。
フィルムラミネート金属板の耐食性は、フィルムの絶縁性に依存するため、被覆性の確保が必須である。しかし、フィルムを貫通する傷が生じた場合は、その部分の絶縁性が失われ、耐食性が確保できない。更には、傷部に腐食が集中しやすく、局部腐食を招く可能性が高い。局部腐食が著しく進行すると、缶壁部に穿孔が生じ、缶詰としての機能を失ってしまう。
これまで、フィルムラミネート金属板は、日本国内市場を中心に使用され、数多くの種類の缶詰に加工・商品化されてきた。国内の製缶会社では、製造ラインの管理体制及び製品の品質管理体制が整っており、例えば、製缶ラインで鋼板に傷をつけるようなトラブル(例えば、ロールのスリップなど)はほとんど発生しない。そのため、フィルムラミネート金属板には、フィルムを貫通するような傷が生ずることは殆どなく、缶成形後も、フィルムが鋼板を被覆し続け、優れた耐食性を維持することができた。また、仮にフィルムを貫通する傷が生じたとしても、製缶後のすべての缶に対して、欠陥検査を実施しており、傷のある缶は、市場へ流通させないシステムとなっている。
一方で、国外に目を向けると、多種多様な製缶会社及び缶詰製造会社が存在し、その技術レベルも様々である。国内の製缶会社に比べ、品質管理体制が見劣りする製缶会社も数多く存在し、製造ラインでのトラブルが頻発している会社も多い。また、成形後の缶につき全量検査を実施している製缶会社は世界的にみても稀であり、ほとんどが抜き取り検査のみである。したがって、フィルムを貫通する傷のある缶が、検査ラインをパスして市場に流通する危険性があり、傷部耐食性に劣るフィルムラミネート金属缶は、大きな市場クレームを招くおそれがある。世界中の製缶メーカーに対し、日本国内と同レベルの生産管理体制や、全量検査システムの導入を期待することができない以上、フィルムラミネート金属板の傷部耐食性を向上させる術なくして、グローバルスタンダード化は達成できないことになる。
上記に対して、傷部耐食性を向上させるための技術としては、例えば、特許文献1、2が挙げられる。
特許文献1は、フッ素樹脂フィルムラミネート鋼板に関する技術であり、フッ素樹脂フィルムの撥水性を利用したものである。これによれば、表面の対水接触角を90°以上とすることで、表面に付着した水が、すべて球状となり、傷部においても球状が維持されることから、水が傷部へ侵入することなく腐食が抑制されると記載されている。しかしながら、傷部にはフッ素樹脂が存在しないので、撥水効果もなく、腐食抑制効果は全く期待できない。
特許文献2は、積層タイプのフッ素樹脂フィルムラミネート鋼板に関する技術であり、フッ素樹脂フィルムの下に100μm以上のポリ塩化樹脂フィルムを積層させたものである。この技術は、傷を鋼板表面に到達させないことを目的としており、いわゆる傷部耐食性を向上させる技術ではない。しかも、単に、膜厚を増加させただけの技術であるため、工業的利用価値も極めて低い。
これら特許文献1および2を受けて、発明者らは、傷部において下地金属が露出しても、下地金属の不動態化を促進させることで、腐食因子に対して保護性のある皮膜を形成させ、傷部の耐食性を確保するという、新たなコンセプトを着想した。このコンセプトは、これまでの亜鉛めっきをはじめとする資源消費型の犠牲防食技術とは異なり、下地金属の自発的な不動態化反応を活用するため、省資源型の防食技術である。
金属の不動態化を促進させる技術としては、遷移金属であるモリブデン酸、タングステン酸などの不動態化剤を利用する技術が特許及び論文にて公開されている。しかし、これらは、いわゆるレアメタルであり、半導体産業などの必須素材であるため、需要過多の状況に陥りやすい。特に、BRICsが著しい経済発展をとげた2002年以降、価格は数倍に跳ね上がっており、今後もこの傾向は続くであろう。また、不動態化能に関しても、従来のクロメート処理に及ばないレベルであることが多くの論文にて報告されており、発明者らの要求性能を満たすものではない。
さらに、発明者らは、近年、金属防食への適用が検討されている導電性ポリマーに注目し検討した。導電性ポリマーとは、π電子共役系が発達したポリマーであり、ポリアセチレンをはじめ、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどが知られている。このうち、ポリアニリンについては、その金属防食能につき、多くの研究がなされている。特許文献3〜5に金属板への適用例を示す。
特許文献3には、樹脂、ポリアニリン、無機酸化物からなる皮膜を、金属板上に形成することで、従来のクロメート処理を代替可能な密着性、耐食性が得られる旨、記載されている。しかしながら、ベース樹脂として、水溶性または水分散性のアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等を用いており、これらでは、発明者らが想定している利用分野への適用は困難である。その理由として、ア)PETフィルムとベース樹脂との相溶性が不十分であることから、層間密着性が確保できない。
イ)樹脂の力学特性(伸び特性と強度特性のバランス)が食品缶詰の成形加工に追随するレベルでなく、成形過程で樹脂が破壊されてしまう、ウ)無機酸化物を必須成分として40%未満添加することから、イ)と同様に、成形過程で樹脂が破壊されてしまう、エ)水溶性樹脂を使用した場合は、腐食環境下での樹脂溶解が少なからず生じ、耐食性が得られない、オ)水分散性樹脂を使用した場合でも、親水性官能基を有するモノマーもしくはポリマーとの共重合化が必要であり、本発明が想定する耐食性レベルの確保は困難、カ)塗装下地処理を想定した技術であり、本発明とは技術的思想自体が異なること、などが挙げられる。
特許文献4には、平均分子量20000以上の導電性ポリマーを有機樹脂皮膜中に含有させ、鋼板上に形成する旨、記載されている。この技術の不十分な点は、ア)導電性ポリマーを高分子量化させているが、所詮、分子鎖の骨格は剛直なままであり、加工性改善効果をもたらさないこと、イ)導電性ポリマーの結晶化度を上限なく規定しているが、加工性を妨げる方向であり、本発明が想定する高加工用途への適用が何ら考慮されていないこと、ウ)マトリックス形成高分子、ドーパントに関する規定が、広く一般的な物質の羅列に留まり特定されていないため、その重要性を見出していないこと、エ)塗装下地処理を想定した技術であり、本発明とは技術的思想自体が異なること、などが挙げられる。
特許文献5についても同様で、ベース樹脂がエポキシ系、ウレタン系、フッ素系に限定されること等から、本発明の想定する分野への適用は困難である。
特開平7−256819号公報 特開平10−264305号公報 特開平10−251509号公報 特開2007−190896号公報 特開2006−326459号公報
本発明は、上記を鑑みなされたもので、食品缶詰に要求される多くの要求特性に対応し、かつ、傷部耐食性に優れた容器用樹脂被覆金属板を提供するものである。
本発明者らが、課題解決のため鋭意検討した結果、特定の分子構造・熱物性を有するポリエステル樹脂に、導電性ポリマー、ドーパント、架橋剤、金属イオン交換シリカを一定の範囲で含有させた樹脂層を密着層とし、その上層にポリエステルフィルムを積層することで、加工性・密着性などの基本特性に加え、優れた傷部耐食性を有する、画期的な容器用樹脂被覆金属板が得られることを知見した。詳細には、密着層となるポリエステル樹脂に架橋剤を含有させることで、深絞り成形性、加工・レトルト後密着性、耐衝撃性を確保し、更に導電性ポリマー、ドーパント及び金属イオン交換シリカを一定の範囲で含有させることで、優れた傷部耐食性を有する容器用樹脂被覆金属板が得られることを見出した。
本発明は、以上の知見に基づき、なされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
ポリエステルを主成分とする複層構造の樹脂層を少なくとも一方の面に有する容器用樹脂被覆金属板であって、金属板との密着層となるポリエステル樹脂層は以下の(A)〜(E)を満たすことを特徴とする傷部耐食性に優れる容器用樹脂被覆金属板。
(A)アミノ樹脂、イソシアネート化合物のうちの少なくとも1種を、ポリエステル樹脂に対し1〜20PHRの範囲で含有する。
(B)導電性ポリマーを、ポリエステル樹脂に対し0.1〜15.0PHRの範囲で含有する。
(C)ドーパントを、前記導電性ポリマー1mol(但し、導電性ポリマーのモノマー単位)に対し0.01〜1.00molの範囲で含有する。
(D)金属イオン交換シリカを、ポリエステル樹脂に対し1〜25PHRの範囲で含有する。
(E)付着量は、0.1g/m2以上5.0g/m2以下である。
[2]前記[1]において、前記金属イオン交換シリカが、亜鉛イオン交換シリカ、カルシウムイオン交換シリカから選ばれる一種または二種以上の混合物であることを特徴とする容器用樹脂被覆金属板。
[3]前記[1]または[2]において、前記導電性ポリマーが、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリアルキルジオキシチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリフェニレン、ポリフラン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリアセン及びこれらの誘導体、及びこれらの単量体の共重合物から選ばれる一種または二種以上の混合物であることを特徴とする容器用樹脂被覆金属板。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかにおいて、前記ドーパントが、ハロゲン類、プロトン酸、ルイス酸から選ばれた一種または二種以上の混合物であることを特徴とする容器用樹脂被覆金属板。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかにおいて、前記密着層の上層を形成するポリエステル樹脂層が、二軸延伸ポリエステルフィルムであって、ポリエステルの構成単位の93mass%以上がエチレンテレフタレート単位及び/またはエチレンナフタレート単位であり、かつ、円面積換算平均粒子径が0.005〜5.0μmであり、下記式に示される相対標準偏差が0.5以下であり、粒子の長径/短径比が1.0〜1.2で、モース硬度が7未満である粒子を0.005〜10mass%含有することを特徴とする容器用樹脂被覆金属板。
本発明によれば、食品缶詰用素材に要求される多様な機能への対応が可能であり、かつ、優れた傷部耐食性を有する容器用樹脂被覆金属板が得られる。このような特性を有するため、本発明の容器用樹脂被覆金属板は、日本国内市場に留まらず世界中のあらゆる缶用市場へ適用が可能となり、新たな容器用樹脂被覆金属板として有望である。
金属板のラミネート装置の要部を示す図である。(実施例1) フィルムラミネート金属板の断面構造を示す図である。(実施例) 缶胴部に付与したクロスカット傷の位置を示す図である。(実施例) 人工傷からの最大腐食幅を測定する方法を示す図である。(実施例)
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の容器用樹脂被覆金属板について説明する。
本発明の金属板としては、缶用材料として広く使用されているアルミニウム板や軟鋼板等を用いることができ、特に下層が金属クロム、上層がクロム水酸化物からなる二層皮膜を形成させた表面処理鋼板(いわゆるTFS)等が好適である。
TFSの金属クロム層、クロム水酸化物層の付着量については、特に限定されないが、加工後密着性、耐食性の観点から、何れもCr換算で、金属クロム層は70〜200mg/m、クロム水酸化物層は10〜30mg/mの範囲とすることが望ましい。
そして、本発明ではポリエステルを主成分とする複層構造の樹脂層を上記金属板の少なくとも一方の面に有する。
まず、金属板と密着するポリエステルを主成分とする樹脂層(密着層)について説明する。
ポリエステルを主成分とする樹脂層とは、ポリエステルを50mass%以上100mass%以下含む樹脂であり、ポリエステル以外の樹脂を含む場合には、ポリオレフィンなどの樹脂を含有することができる。
樹脂組成
ポリエステル樹脂層の組成としては、カルボン酸成分としてテレフタル酸、グリコール成分としてエチレングリコールよりなるポリエチレンテレフタレートに代表されるが、他のカルボン酸成分としてイソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸等と、また他のグリコール成分としてジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等と成分を置き換えた共重合樹脂等も含まれる。酸成分として、テレフタル酸は、機械的強度、耐熱性、化学的耐性などから必須であるが、更に、イソフタル酸と共重合させることで、柔軟性、引き裂き強度などが向上する。イソフタル酸成分を、10.0mol%以上60.0mol%以下の範囲でテレフタル酸成分と共重合させることで、本提案に規定する熱物性の確保が容易になるとともに、深絞り成形性、加工後密着性を向上させるよう機能するため、好適である。グリコール成分としては、エチレングリコール、プロパンジオールなどの柔軟性に優れる低Tg(Tg=ガラス転移温度)成分と、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの環構造を有する剛直な高Tg成分とを共重合させることが望ましい。本発明で規定する熱物性の確保が容易であるとともに、強度と柔軟性をバランスできるためである。好適な例としては、酸成分がイソフタル酸27mol%、テレフタル酸73mol%で構成され、グリコール成分がエチレングリコール40mol%、ネオペンチルグリコール60mol%で構成されるポリエステル樹脂を挙げることができる。
熱物性(ガラス転移点、軟化点)
ポリエステル樹脂層の熱物性として、ガラス転移点を30℃以上85℃以下の範囲に、軟化点を100℃以上200℃以下の範囲に調整することが好ましい。
樹脂被覆金属板が保管・運搬される際、20℃程度の温度で長時間保持される可能性があるため、ガラス転移点は、30℃以上であることが望ましい。一方、ガラス転移点の上限は85℃が望ましい。ガラス転移点の上昇にともない、ポリエステルポリマーの硬度が上昇し、加工性は劣化傾向となる。85℃超となると、加工性の劣化が顕著となり、本発明が想定する高加工用途への適用が困難となるためである。
また、食缶用のレトルト殺菌処理は、100℃以上の高温で1時間以上に及ぶことがあり、100℃以上の温度域で耐熱性を有することが求められる。従って、JIS K2425に定める軟化点を100℃以上、望ましくは150℃以上に規定する必要がある。一方、軟化点の上限は、200℃に規定する。軟化点が200℃超となると、樹脂の流動性が劣化してしまい、金属板とのラミネート時や、製缶加工時などの工程で、樹脂の柔軟性が不足することとなる。ラミネート時の柔軟性不足は金属板との密着性を劣化させ、製缶加工時の柔軟性不足は、缶高さ方向への伸び変形を抑制し、缶胴部を破裂させる原因となる。
分子量
ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、10000以上40000以下の範囲が好ましく、15000〜20000の範囲がさらに好ましい。上記範囲の分子量を有するポリエステル樹脂は、加工性と強度のバランスに優れ、深絞り成形性及び成形加工後の密着性が良好となる。分子量10000以上とすることで樹脂の強度がアップし、深絞り成形時に樹脂が断裂することなく変形に追随する。その後のレトルト処理においても、上層に形成したフィルムの熱収縮に対抗して、トリム端等からのデラミを抑制することができる。また、製缶後の耐衝撃性についても、欠陥の発生を抑制し、良好な性能を得ることができようになる。
一方、分子量を40000超とすると、樹脂の強度が過大となり、逆に柔軟性を損なうおそれがある。40000以下とすることで、強度と柔軟性のバランスを維持することができる。
付着量
ポリエステル樹脂層の付着量は、0.1g/m2以上5.0g/m2以下の範囲に規定する。0.1g/m2未満では、金属板表面を均一に被覆することができず、膜厚が不均一になってしまう。改質剤を添加した場合は、改質剤の付着量が変動することとなり、安定した機能を得ることができず、不適である。一方、5.0g/m2超とすると、樹脂の凝集力が不十分となり、樹脂層の強度が低下してしまう。その結果、製缶加工時に、樹脂層が凝集破壊してフィルムが剥離し、そこを起点に缶胴部が断裂してしまうこととなる。
以上より、付着量は、0.1g/m2以上5.0g/m2以下、好ましくは0.1g/m2以上4.0g/m2以下、更に好ましくは、0.5g/m2以上2.5g/m2である。
架橋剤
架橋剤として、アミノ樹脂、イソシアネート化合物のうちの少なくとも1種を適用する。
アミノ樹脂としては、メチロール化アミノ樹脂を適当なアルコールによってエーテル化したものが適しており、中でもエーテル化度が高いものが好適に使用できる。エーテル化に用いられるアルコールの例としてはメチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコールなどが挙げられる。アミノ樹脂としては、なかでもメチロール基の少なくとも一部をアルキルエーエル化したメチロール化メラミン樹脂が好適に使用できる。
イソシアネート化合物としては、ブロックフリーイソシアネートが好適である。ブロック化剤を用いないことで、フリーのイソシアネート基は、ポリエステル樹脂の末端の官能基や、基材であるポリエステルフィルムの表面の官能基と、速やかに反応することができる。これにより、ラミネート時の短時間の熱処理を利用した、イソシアネート架橋反応による高分子化が可能となり、ポリエステル樹脂層の強度と加工性を大幅に向上させるとともに、基材フィルムとの強固な密着性を得ることができる。適用するイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、キシリレンイソシアネートなどが挙げられ、中でも、キシリレンイソシアネート化合物が、密着性、耐久性などの観点から、最も好適である。
ここで、架橋剤の添加量は、ポリエステル樹脂に対して1〜20PHRの範囲に規定する。1PHR未満であると、ポリエステル樹脂の末端官能基との架橋反応、もしくはポリエステルフィルム表面の官能基との架橋反応のいずれかが不十分となり、製缶加工時に、フィルムが剥離したり、素材が断裂してしまう。一方、20PHRを超える場合、ポリエステル樹脂層の加工性が低下してしまうため、製缶加工時に樹脂層が断裂してしまうおそれがある。なお、樹脂の強度と加工性のバランスの点から、好ましくは5〜15PHRの範囲である。
導電性ポリマー
ポリエステル樹脂層に導電性ポリマーを添加することで、下地金属の不動態化を促進させ、フィルムラミネート金属板に傷部耐食性を付与することができる。導電性ポリマーの酸化還元電位は、下地金属の電位に対して貴であるため、下地金属との界面において、下地金属の酸化反応と導電性ポリマーの還元反応が生じ、界面に安定な不動態皮膜を形成する。不動態皮膜は、絶縁体であるとともに緻密であるため、腐食因子に対しバリア層として機能する。そのため、下地金属の耐食性を大幅に向上させることができる。
ここで、導電性ポリマーの酸化還元反応は可逆的であることがわかっており、溶存酸素の還元反応とのカップリング反応によって、元の状態に戻る。すなわち、導電性ポリマーには、その可逆的な酸化還元特性により自身を劣化させることなく、永続的に下地金属を防食する効果が期待できることになる。
以上の防食プロセスは、腐食環境下における下地金属の自発的な不動態化を促すものであるため、導電性ポリマーには一種の自己補修作用があるものと考えることができる。したがって、フィルムを貫通する傷が生じたとしても、傷部周辺に不動態化皮膜を形成させることで、腐食の進行を著しく抑制することが可能となるのである。
使用する導電性ポリマーとしては、π電子共役系ポリマーである、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、アルキレンジオキシチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリフェニレン、ポリフラン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリアセン及びこれらの誘導体、及びこれらの単量体の共重合物から選ばれた1種または2種以上の混合物があげられる。中でも、ポリアニリン、ポリピロール、ポリエチレンジオキシチオフェンは電気伝導度が高く、下地金属との界面における電子の授受がスムーズであるため、不動態化能が高く、防食効果が大きい。
導電性ポリマーの添加量としては、ポリエステル樹脂に対し、0.1〜15.0PHRの範囲とする。添加量が0.1PHR未満であると、下地金属との界面における酸化還元反応に寄与するポリマーの絶対量が不足し、界面における不動態化皮膜の形成が不十分となる。傷部の耐食性は、不動態化皮膜形成能に大きく依存するため、発明者らの期待する性能レベルが得られないこととなる。一方、添加量が15.0PHR超であると、導電性ポリマーの力学物性が密着層全体の物性に影響を及ぼすようになり、剛直な分子構造ゆえ加工性を大きく劣化させることになる。よって、導電性ポリマーの添加量としては、密着層を形成するポリエステル樹脂に対し、0.1〜15.0PHRの範囲に規定する。
ドーパント
本発明で規定するπ電子系導電性ポリマーは、脱ドープ状態では半導体であり、バンドギャップを有する。よって、導電性を付与するためには、ドーパントを添加し、導電性ポリマーの主鎖の共役系からπ電子を奪って、主鎖上に正孔を生成させる必要がある。正孔が、ポリマーの分子鎖上を移動するため、電流が流れるのである。
したがって、本発明で期待する防食効果を発揮させるためには、導電性ポリマーを含有するポリエステル樹脂中へのドーパント添加が必須である。ドーパントとしては、ハロゲン類、プロトン酸、ルイス酸、遷移金属ハライド、アルカリ金属から選ばれた一種または二種以上の混合物が好適である。なかでも、ハロゲン類、プロトン酸、ルイス酸が安定した防食能を有するため、特に好適である。
ハロゲン類としては、臭素、塩素、ヨウ素などを用いることができ、プロトン酸としては、有機カルボン酸、有機スルホン酸、有機ホスホン酸、リン酸類及びポリ酸などを好適に用いることができる。ルイス酸としては、FeCl3 、FeOCl、TiCl4 、ZrCl4 、SnCl4 、MoCl5 、WCl5 、BF4 、BCl3 、PF5 等の金属ハロゲン化物を用いることができる。
中でも好適であるのがプロトン酸であり、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリリン酸、などのポリマー酸が、特に好適である。これらは、自身に皮膜形成能があるため、密着層となる樹脂の連続性を高め、密着性、耐食性に対して効果がある。
ドーパントの添加量としては、樹脂中に添加された導電性ポリマー1molに対し、0.01〜1.00molの範囲とする。ドーパントの添加量が、導電性ポリマー1molに対し、0.01mol未満であると、ポリマー主鎖上に生成するキャリヤーの数が不足し、十分な電気伝導性が得られない。導電性ポリマーの防食効果は、防食対象となる金属とのスムーズな電子の授受に依存するため、導電性の低下は、不動態化能を低下させ、傷部耐食性が劣ることになる。一方、ドーパントの添加量が、導電性ポリマー1molに対し1.00mol超とすると、処理液の不安定化やポリエステル樹脂層の加工性劣化をまねき、傷部耐食性を低下させる懸念がある。したがって、ドーパントの添加量としては、導電性ポリマー1molに対し、0.01〜1.00molの範囲に規定する。
金属イオン交換シリカ
金属イオン交換シリカは、微細な多孔質のシリカ担体にイオン交換によって金属イオンが導入されたシリカ粒子である。中でも好適なのが、カルシウムイオン交換シリカ、亜鉛イオン交換シリカであり、これらから選ばれた一種または二種以上の混合物の適用が望ましい。カルシウムイオン交換シリカから放出されるカルシウムイオンは、電気化学的作用、塩生成作用を有するため保護膜を形成し、腐食の進行を抑制させる働きがある。亜鉛イオン交換シリカについても、亜鉛イオンが同様の防食能を有するため、好適である。
金属イオン交換シリカの添加量としては、ポリエステル樹脂に対し1〜25PHRの範囲とする。添加量が1PHR未満では、十分な防食効果が得られない。逆に25PHR超では、樹脂層が剛直となって、加工性が大きく劣化してしまい、缶加工時に樹脂層が断裂してしまうおそれがある。
なお、本発明で使用する金属イオン交換シリカとしては、一般に公知の、シリカ表面のシラノール基にカルシウムイオンや亜鉛イオンをイオン交換させたタイプのものを使用することができ、市販品の使用も可能である。市販品としては、W. R. Grace & Co. incorporates.の「SHIELDEX(登録商標)」等を使用できる。
添加剤:着色剤、カーボンブラック
更に、ポリエステル樹脂中に、染料、顔料などの着色剤を添加することで、下地の金属板を隠蔽し、樹脂独自の多様な色調を付与できる。例えば、黒色顔料として、カーボンブラックを添加することで、下地の金属色を隠蔽するとともに、黒色のもつ高級感を食品缶詰に付与することができる。カーボンブラックの添加量は、ポリエステル樹脂に対して5PHR以上40PHR以下が望ましい。5PHR未満では黒色度が不十分であるとともに下地金属の色調が隠蔽できず、高級感のある意匠性を付与できない。一方、40PHR超としても、黒色度は変化しないため意匠性の改善効果は得られないばかりか、ポリエステル樹脂の構造が脆弱となるため、製缶加工時に樹脂層が容易に破壊してしまう。添加量を5PHR以上40PHR以下の範囲とすることで、意匠性と他の要求特性との両立が可能となる。
カーボンブラックの円面積換算平均粒子径としては、5〜50nmの範囲のものを使用できるが、ポリエステル樹脂中での分散性や発色性を考慮すると、5〜30nmの範囲が好適である。
添加剤:着色剤、白色・光輝色
黒色顔料以外にも、白色顔料を添加することで下地の金属光沢を隠蔽するとともに、印刷面を鮮映化することができ、良好な外観を得ることができる。添加する顔料としては、容器成形後に優れた意匠性を発揮できることが必要であり、係る観点からは、二酸化チタンなどの無機系顔料を使用できる。着色力が強く、展延性にも富むため、容器成形後も良好な意匠性を確保できるので好適である。二酸化チタンの添加量は、ポリエステル樹脂に対して、5〜30PHRであることが望ましい。5PHR以上であれば、充分な白色度が得られ、良好な意匠性が確保できる。一方、30PHRを超えて添加しても、白色度が飽和するため、経済上の理由で30PHR以下とすることが望ましい。より好ましくは、10〜20PHRの範囲である。なお、着色剤の添加量とは、着色剤を添加した樹脂層に対する割合である。
容器表面に光輝色を望む場合には、アゾ系顔料の使用も好適である。透明性に優れながら着色力が強く、展延性に富むため、容器成形後も光輝色のある外観が得られるためである。本発明で使用できるアゾ系顔料を例示すれば、カラーインデックス(C.I.登録の名称)が、ピグメントイエロー12、13、14、16、17、55、81、83、139、180、181のうちの少なくとも1種類を挙げることができる。特に、色調(光輝色)の鮮映性、レトルト殺菌処理環境での耐ブリーディング性(顔料がフィルム表面に析出する現象に対する抑制能)などの観点から、分子量が大きく、PET樹脂への溶解性が乏しい顔料が望ましい。例えば、分子利用が700以上の、ベンズイミダゾロン構造を有するC.I.ピグメントイエロー180がより好ましく用いられる。
アゾ系顔料の添加量は、対象樹脂層に対して、10〜40PHRとすることが好ましい。添加量が10PHR以上であれば、発色に優れるので好適である。40PHR以下の方が、透明度が高くなり光輝性に富んだ色調となる。
次いで、密着層の上層となるポリエステルフィルム(上層)について説明する。
フィルム組成
本発明で使用するポリエステルフィルムは、レトルト後の味特性を良好とする点、製缶工程での摩耗粉の発生を抑制する点で、エチレンテレフタレート及び/またはエチレンナフタレートを主たる構成成分とすることが望ましい。エチレンテレフタレート及び/またはエチレンナフタレートを主たる構成成分とするポリエステルとは、ポリエステルの93mass%以上がエチレンテレフタレート及び/またはエチレンナフタレートを構成成分とするポリエステルである。さらに好ましくは95mass%以上であると金属缶に飲料を長期充填しても味特性が良好であるので望ましい。
一方、味特性を損ねない範囲で他のジカルボン酸成分、グリコール成分を共重合してもよく、ジカルボン酸成分としては、例えば、ジフェニルカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等を挙げることができる。
グリコール成分としては、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の指環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。なお、これらのジカルボン酸成分、グリコール成分は2種以上を併用してもよい。
また、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、トリメリット酸、トリメシン酸、トリメチロールプロパン等の多官能化合物を共重合してもよい。
粒子
本発明で用いるポリエステルフィルムにおける粒子とは、組成的には有機、無機を問わず特に制限されるものではないが、耐摩耗性、加工性、味特性等の点から円面積換算平均粒子径が0.005〜5.0μmであることが必要であり、特に0.01〜3.0μmであることが好ましい。また、耐摩耗性等の点から、下記式に示される相対標準偏差が0.5以下であることが必要であり、さらには0.3以下であることが好ましい。
粒子の長径/短径比としては、1.0〜1.2であることが必要である。モース硬度としては、突起硬さ、耐摩耗性などの点から7未満であることが必要である。
また、これらの効果を十分に発現させるには、上記からなる粒子を0.005〜10mass%含有することが必要である。
具体的には、無機粒子としては、湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、マイカ、カオリン、クレー等が挙げられる。中でも、粒子表面の官能基とポリエステルとが反応してカルボン酸金属塩を生成するものが好ましく、具体的には、粒子1gに対し、1×10−5mol以上有するものが、ポリエステルとの親和性、耐摩耗性などの点で好ましく、さらには2×10−5mol以上であることが好ましい。
また、有機粒子としては、さまざまな有機高分子粒子を用いることができるが、その種類としては、少なくとも一部がポリエステルに対し不溶の粒子であればいかなる組成の粒子でも構わない。また、このような粒子の素材としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメチルメタクリレート、ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、架橋ポリスチレン、シリコーン樹脂などの種々のものを使用することができる。中でも、耐熱性が高く、かつ粒度分布の均一な粒子が得られやすいビニル系架橋高分子粒子が特に好ましい。
このような無機粒子および有機高分子粒子は、単独で用いても構わないが、2種以上を併用して用いることが好ましく、粒度分布、粒子強度など物性の異なる粒子を組み合わせることにより、さらに機能性の高いポリエステル樹脂を得ることができる。
また、本発明の効果を妨げない範囲において、他の粒子、例えば各種不定形の外部添加型粒子、及び内部析出型粒子、あるいは各種表面処理剤を用いても構わない。
更に、ポリエステルフィルムが二軸延伸ポリエステルフィルムであると、耐熱性・味特性の観点から好ましい。二軸延伸の方法としては、同時二軸延伸、逐次二軸延伸のいずれであってもよいが、延伸条件、熱処理条件を特定化し、フィルムの厚さ方向の屈折率が1.50以上であることが、ラミネート性、成形性を良好とする点で好ましい。さらに、厚さ方向屈折率が1.51以上、特に1.52以上であると、ラミネート時に多少のばらつきがあっても成形性、耐衝撃性を両立させる上で面配向係数を特定の範囲に制御することが可能となるので好ましい。
また、該二軸延伸ポリエステルフィルムは、製缶工程で絞り成形後に200〜230℃程度の熱履歴を受けた後にネック部を加工する際の加工性、耐衝撃性の点で固体高分解能NMRによる構造解析におけるカルボニル部の緩和時間が270msec以上であることが好ましい。さらに好ましくは、280msec以上、特に好ましくは300msec以上である。本発明の効果を妨げない範囲において、他の粒子、例えば各種不定形の外部添加粒子、及び内部析出型粒子、あるいは各種表面処理剤を用いても構わない。
フィルムの厚み
本発明で用いるポリエステルフィルムの厚さは、5〜100μmが好ましい。ポリエステルフィルムの厚さが5μm未満では、被覆性が不十分であり耐衝撃性と成形性が確保できない。一方、100μmを超えると、上記特性が飽和して何ら改善効果が得られないばかりか、金属表面への熱融着時に必要となる熱エネルギーが増大するため、経済性を損なってしまう。このような観点から、より好ましいポリエステルフィルムの厚さは8〜50μm、特に好ましくは10〜25μmである。
次いで、上記からなる複層構造の樹脂層を有する容器用樹脂被覆金属板の製造方法について説明する。
ポリエステルを主成分とする樹脂層(密着層)の形成方法
金属板と密着するポリエステル樹脂層を、上層となるポリエステルフィルムの表面に形成する方法について述べる。
本発明で規定する熱物性及び分子量を有するポリエステル樹脂を、有機溶剤中に溶解させコーティング液とする。前記コーティング液を、ポリエステルフィルム製膜時もしくは製膜後に、フィルム表面に塗布し乾燥することで、樹脂層を形成する。
本発明に規定するポリエステル樹脂を溶解させるための有機溶剤としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン溶剤、酢酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤などを挙げることができ、これらの1種以上を適宜選定して使用することができる。
また、本発明で規定する架橋剤、導電性ポリマー、ドーパント、金属イオン交換シリカ、着色剤としてカーボンブラック、アゾ系顔料などの添加剤も、有機溶剤中に分散させて使用することができる。この際、分散剤を併用すると、添加剤の均一性が付与できるため好適である。
コーティング液をポリエステルフィルムに塗布する方法としては、ロールコーター方式、ダイコーター方式、グラビア方式、グラビアオフセット方式、スプレー塗布方式など、既知の塗装手段が適用できるが、グラビアロールコート法が最も好適である。コーティング液塗布後の乾燥条件としては、80℃〜170℃で20〜180秒間、特に80℃〜120℃で60〜120秒間が好ましい。乾燥後のポリエステル樹脂層の付着量は、本発明に規定する0.1g/m2以上5.0g/m2以下の範囲でなければならない。
コーティング後のポリエステルフィルムを金属板表面にラミネートする方法
本発明では、例えば、金属板をフィルムの融点を超える温度で加熱し、その表面にポリエステルフィルムを圧着ロール(以後ラミネートロールと称す)を用いて接触させ熱融着させる方法を用いることができる。このとき、コーティングした面を圧着ロール(以後ラミネートロールと称す)を用いて金属板に接触させ熱融着させることが必要である。
ラミネート条件については、本発明に規定する樹脂層が得られるように適宜設定される。例えば、ラミネート開始時の温度を少なくともフィルムの融点以上とし、ラミネート時にフィルムの受ける温度履歴として、フィルムの融点以上の温度で接している時間を1〜20msecの範囲とすることが好適である。このようなラミネート条件を達成するためには、高速でのラミネートに加えて、融着中の冷却も必要である。ラミネート時の加圧は特に規定するものではないが、面圧として9.8〜294N/cm2(1〜30kgf/cm)が好ましい。この値が低すぎると、樹脂界面の到達する温度が融点以上であっても時間が短時間であるため溶融が不十分であり、十分な密着性を得難い。また、加圧が大きいとラミネート金属板の性能上は不都合がないものの、ラミネートロールにかかる力が大きく設備的な強度が必要となり装置の大型化を招くため不経済である。
以下、本発明の実施例について説明する。
まず、ポリエステルフィルムを製造する。ジオール成分とジカルボン酸成分を、表1および表2に示す比率にて重合したポリエステル樹脂を乾燥、溶融、押し出し、冷却ドラム上で冷却固化させ、未延伸フィルムを得た後、二軸延伸・熱固定して、二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
次いで、ポリエステル樹脂を主成分とする樹脂と架橋剤、導電性ポリマー、ドーパントなどの各種添加剤を、表3および表4に示す比にてトルエンとメチルエチルケトンの混合溶媒中に溶解してコーティング液を作製した。この液を上記にて得られたポリエステルフィルムの片側の面に、グラビアロールコーターで塗布・乾燥し、乾燥後の樹脂層の付着量を調整した。乾燥温度は、80〜120℃の範囲とした。
金属板としては、クロムめっき鋼板を用いた。厚さ0.18mm、幅977mmの冷間圧延、焼鈍、調質圧延を施した鋼板を、脱脂、酸洗後、クロムめっきを行い製造した。クロムめっきは、CrO、F、SO 2−を含むクロムめっき浴でクロムめっき、中間リンス後、CrO、Fを含む化成処理液で電解した。その際、電解条件(電流密度・電気量等)を調整して金属クロム付着量とクロム水酸化物付着量を、Cr換算でそれぞれ120mg/m、15mg/mに調整した。
次いで、図1に示す金属帯のラミネート装置を用い、前記で得たクロムめっき鋼板1を金属帯加熱装置2で加熱し、ラミネートロール3で前記クロムめっき鋼帯1の一方の面に、容器成形後に容器内面側になるポリエステルフィルムとして、表1および表3に示すフィルム4aをラミネート(熱融着)し、他方の面に、容器成形後に容器外面側となるポリエステルフィルムとして、表2および表4に示すフィルム4bをラミネート(熱融着)した。その後、金属帯冷却装置5にて水冷を行い、ポリエステル樹脂被覆金属板を製造した。図2に、ポリエステル樹脂被覆金属板の断面構造を示す。
ラミネートロール3は内部水冷式とし、ラミネート中に冷却水を強制循環し、フィルム接着中の冷却を行った。樹脂フィルムを金属板にラミネートする際に、金属板に接する界面のフィルム温度がフィルムの融点以上になる時間を1〜20msecの範囲内にした。
以上の方法で得られた樹脂被覆金属板及び金属板上に有する樹脂層の特性について、下記の(1)〜(5)の方法によりそれぞれ測定、評価した。
(1)成形性
ポリエステルフィルムをラミネートした金属板にワックスを塗布後、直径200mmの円板を打ち抜き、絞り比2.00で浅絞り缶を得た。次いで、この絞り缶に対し、絞り比2.20で再絞り加工を行った。この後、常法に従いドーミング成形を行った後、トリミングし、次いでネックイン−フランジ加工を施し深絞り缶を成形した。このようにして得た深絞り缶のネックイン部に着目し、フィルムの損傷程度を目視観察した。評価対象は、缶の内外面である。
(評点について)
◎:成形後フィルムに損傷も白化も認められない状態
○:成形後フィルムに損傷が認められないが、部分的に白化が認められる状態
△:成形可能であるが、部分的にフィルム損傷が認められる状態
×:缶が破胴し、成形不可能
(2)成形後密着性1
上記(1)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶を対象とした。缶胴部よりピール試験用のサンプル(幅15mm、長さ120mm)を切り出した。切り出したサンプルの長辺側端部からフィルムの一部を剥離する。剥離したフィルムを、剥離された方向とは逆方向(角度:180°)に開き、引張試験機を用いて、引張速度30mm/min.でピール試験を行い、幅15mmあたりの密着力を評価した。評価対象は、缶外面の缶胴部である。
(評点)
◎:10.0(N)/15(mm)以上
○:5.0(N)/15(mm)以上、10.0(N)/15(mm)未満
×:5.0(N)/15(mm)未満
(3)成形後密着性2
上記(1)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶を対象とした。缶の内部に水道水を充填した後、蓋を巻き締めて密閉した。続いて、レトルト殺菌処理を130℃、90分間の条件で実施し、缶胴部よりピール試験用のサンプル(幅15mm、長さ120mm)を切り出した。切り出したサンプルの長辺側端部からフィルムの一部を剥離する。剥離したフィルムを、剥離された方向とは逆方向(角度:180°)に開き、引張試験機を用いて、引張速度30mm/min.でピール試験を行い、幅15mmあたりの密着力を評価した。評価対象は、缶内面の缶胴部である。
(評点)
◎:10.0(N)/15(mm)以上
○:5.0(N)/15(mm)以上、10.0(N)/15(mm)未満
×:5.0(N)/15(mm)未満
(4)傷部耐食性評価1
上記(1)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶を対象とした。図3に示すように、缶外面の缶胴部2箇所に、下地鋼板に達するクロスカット傷を入れる。続いて、クロスカット傷を付与した缶に対し、JISZ2371に準拠した塩水噴霧テストを300時間行い、傷部からの片側最大腐食幅を測定した。測定方法を図4に示す。評価対象は、缶外面の缶胴部である。
(評点について)
◎:片側最大腐食幅0.5mm未満
○:片側最大腐食幅0.5mm以上〜1.0mm未満
×:片側最大腐食幅1.0mm以上
(5)傷部耐食性評価2
上記(1)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶を対象とした。図3に示すように、缶内面の缶胴部2箇所に、下地鋼板に達するクロスカット傷を入れる。続いて、缶の内部に、15%NaCl+15%クエン酸ナトリウム混合液を充填した後、蓋を巻き締めて密閉した。続いて、レトルト殺菌処理を130℃、90分間の条件で実施した後、温度38℃の恒温槽内で、20日間経時させた。その後、缶を切り開き、クロスカット傷部からの片側最大腐食幅を測定した。評価対象は、缶内面の缶胴部である。
(評点について)
◎:片側最大腐食幅1.0mm未満
○:片側最大腐食幅1.0mm以上〜3.0mm未満
×:片側最大腐食幅3.0mm以上
以上により得られた結果を表5および表6に示す。
表5、表6より、本発明例は、容器用素材に要求される成形性、成形後密着性、傷部耐食性について、良好な性能を有することがわかる。これに対し、本発明の範囲を外れる比較例は、いずれかの特性が劣っている。
容器用途素材・包装用途素材として、食品缶詰の缶胴及び蓋等を中心に、世界のあらゆる市場で使用可能である。
1 金属板(クロムめっき鋼板)
2 金属帯加熱装置
3 ラミネートロール
4a、4b フィルム
5 金属帯冷却装置

Claims (5)

  1. ポリエステルを主成分とする複層構造の樹脂層を少なくとも一方の面に有する容器用樹脂被覆金属板であって、金属板との密着層となるポリエステル樹脂層は以下の(A)〜(E)を満たすことを特徴とする傷部耐食性に優れる容器用樹脂被覆金属板。
    (A)アミノ樹脂、イソシアネート化合物のうちの少なくとも1種を、ポリエステル樹脂に対し1〜20PHRの範囲で含有する。
    (B)導電性ポリマーを、ポリエステル樹脂に対し0.1〜15.0PHRの範囲で含有する。
    (C)ドーパントを、前記導電性ポリマー1mol(但し、導電性ポリマーのモノマー単位)に対し0.01〜1.00molの範囲で含有する。
    (D)金属イオン交換シリカを、ポリエステル樹脂に対し1〜25PHRの範囲で含有する。
    (E)付着量は、0.1g/m2以上5.0g/m2以下である。
  2. 前記金属イオン交換シリカが、亜鉛イオン交換シリカ、カルシウムイオン交換シリカから選ばれる一種または二種以上の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の容器用樹脂被覆金属板。
  3. 前記導電性ポリマーが、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリアルキルジオキシチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリフェニレン、ポリフラン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリアセン及びこれらの誘導体、及びこれらの単量体の共重合物から選ばれる一種または二種以上の混合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の容器用樹脂被覆金属板。
  4. 前記ドーパントが、ハロゲン類、プロトン酸、ルイス酸から選ばれた一種または二種以上の混合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の容器用樹脂被覆金属板。
  5. 前記密着層の上層を形成するポリエステル樹脂層が、二軸延伸ポリエステルフィルムであって、ポリエステルの構成単位の93mass%以上がエチレンテレフタレート単位及び/またはエチレンナフタレート単位であり、かつ、円面積換算平均粒子径が0.005〜5.0μmであり、下記式に示される相対標準偏差が0.5以下であり、粒子の長径/短径比が1.0〜1.2で、モース硬度が7未満である粒子を0.005〜10mass%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の容器用樹脂被覆金属板。
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