JP5407421B2 - 傷部耐食性に優れる容器用樹脂被覆金属板 - Google Patents
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Description
特許文献1は、フッ素樹脂フィルムラミネート鋼板に関する技術であり、フッ素樹脂フィルムの撥水性を利用したものである。これによれば、表面の対水接触角を90°以上とすることで、表面に付着した水が、すべて球状となり、傷部においても球状が維持されることから、水が傷部へ侵入することなく腐食が抑制されると記載されている。しかしながら、傷部にはフッ素樹脂が存在しないので、撥水効果もなく、腐食抑制効果は全く期待できない。
特許文献2は、積層タイプのフッ素樹脂フィルムラミネート鋼板に関する技術であり、フッ素樹脂フィルムの下に100μm以上のポリ塩化樹脂フィルムを積層させたものである。この技術は、傷を鋼板表面に到達させないことを目的としており、いわゆる傷部耐食性を向上させる技術ではない。しかも、単に、膜厚を増加させただけの技術であるため、工業的利用価値も極めて低い。
イ)樹脂の力学特性(伸び特性と強度特性のバランス)が食品缶詰の成形加工に追随するレベルでなく、成形過程で樹脂が破壊されてしまう、ウ)無機酸化物を必須成分として40%未満添加することから、イ)と同様に、成形過程で樹脂が破壊されてしまう、エ)水溶性樹脂を使用した場合は、腐食環境下での樹脂溶解が少なからず生じ、耐食性が得られない、オ)水分散性樹脂を使用した場合でも、親水性官能基を有するモノマーもしくはポリマーとの共重合化が必要であり、本発明が想定する耐食性レベルの確保は困難、カ)塗装下地処理を想定した技術であり、本発明とは技術的思想自体が異なること、などが挙げられる。
本発明は、以上の知見に基づき、なされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
ポリエステルを主成分とする複層構造の樹脂層を少なくとも一方の面に有する容器用樹脂被覆金属板であって、金属板との密着層となるポリエステル樹脂層は以下の(A)〜(E)を満たすことを特徴とする傷部耐食性に優れる容器用樹脂被覆金属板。
(A)アミノ樹脂、イソシアネート化合物のうちの少なくとも1種を、ポリエステル樹脂に対し1〜20PHRの範囲で含有する。
(B)導電性ポリマーを、ポリエステル樹脂に対し0.1〜15.0PHRの範囲で含有する。
(C)ドーパントを、前記導電性ポリマー1mol(但し、導電性ポリマーのモノマー単位)に対し0.01〜1.00molの範囲で含有する。
(D)金属イオン交換シリカを、ポリエステル樹脂に対し1〜25PHRの範囲で含有する。
(E)付着量は、0.1g/m2以上5.0g/m2以下である。
[2]前記[1]において、前記金属イオン交換シリカが、亜鉛イオン交換シリカ、カルシウムイオン交換シリカから選ばれる一種または二種以上の混合物であることを特徴とする容器用樹脂被覆金属板。
[3]前記[1]または[2]において、前記導電性ポリマーが、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリアルキルジオキシチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリフェニレン、ポリフラン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリアセン及びこれらの誘導体、及びこれらの単量体の共重合物から選ばれる一種または二種以上の混合物であることを特徴とする容器用樹脂被覆金属板。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかにおいて、前記ドーパントが、ハロゲン類、プロトン酸、ルイス酸から選ばれた一種または二種以上の混合物であることを特徴とする容器用樹脂被覆金属板。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかにおいて、前記密着層の上層を形成するポリエステル樹脂層が、二軸延伸ポリエステルフィルムであって、ポリエステルの構成単位の93mass%以上がエチレンテレフタレート単位及び/またはエチレンナフタレート単位であり、かつ、円面積換算平均粒子径が0.005〜5.0μmであり、下記式に示される相対標準偏差が0.5以下であり、粒子の長径/短径比が1.0〜1.2で、モース硬度が7未満である粒子を0.005〜10mass%含有することを特徴とする容器用樹脂被覆金属板。
まず、本発明の容器用樹脂被覆金属板について説明する。
本発明の金属板としては、缶用材料として広く使用されているアルミニウム板や軟鋼板等を用いることができ、特に下層が金属クロム、上層がクロム水酸化物からなる二層皮膜を形成させた表面処理鋼板(いわゆるTFS)等が好適である。
TFSの金属クロム層、クロム水酸化物層の付着量については、特に限定されないが、加工後密着性、耐食性の観点から、何れもCr換算で、金属クロム層は70〜200mg/m2、クロム水酸化物層は10〜30mg/m2の範囲とすることが望ましい。
まず、金属板と密着するポリエステルを主成分とする樹脂層(密着層)について説明する。
ポリエステルを主成分とする樹脂層とは、ポリエステルを50mass%以上100mass%以下含む樹脂であり、ポリエステル以外の樹脂を含む場合には、ポリオレフィンなどの樹脂を含有することができる。
ポリエステル樹脂層の組成としては、カルボン酸成分としてテレフタル酸、グリコール成分としてエチレングリコールよりなるポリエチレンテレフタレートに代表されるが、他のカルボン酸成分としてイソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸等と、また他のグリコール成分としてジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等と成分を置き換えた共重合樹脂等も含まれる。酸成分として、テレフタル酸は、機械的強度、耐熱性、化学的耐性などから必須であるが、更に、イソフタル酸と共重合させることで、柔軟性、引き裂き強度などが向上する。イソフタル酸成分を、10.0mol%以上60.0mol%以下の範囲でテレフタル酸成分と共重合させることで、本提案に規定する熱物性の確保が容易になるとともに、深絞り成形性、加工後密着性を向上させるよう機能するため、好適である。グリコール成分としては、エチレングリコール、プロパンジオールなどの柔軟性に優れる低Tg(Tg=ガラス転移温度)成分と、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの環構造を有する剛直な高Tg成分とを共重合させることが望ましい。本発明で規定する熱物性の確保が容易であるとともに、強度と柔軟性をバランスできるためである。好適な例としては、酸成分がイソフタル酸27mol%、テレフタル酸73mol%で構成され、グリコール成分がエチレングリコール40mol%、ネオペンチルグリコール60mol%で構成されるポリエステル樹脂を挙げることができる。
ポリエステル樹脂層の熱物性として、ガラス転移点を30℃以上85℃以下の範囲に、軟化点を100℃以上200℃以下の範囲に調整することが好ましい。
ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、10000以上40000以下の範囲が好ましく、15000〜20000の範囲がさらに好ましい。上記範囲の分子量を有するポリエステル樹脂は、加工性と強度のバランスに優れ、深絞り成形性及び成形加工後の密着性が良好となる。分子量10000以上とすることで樹脂の強度がアップし、深絞り成形時に樹脂が断裂することなく変形に追随する。その後のレトルト処理においても、上層に形成したフィルムの熱収縮に対抗して、トリム端等からのデラミを抑制することができる。また、製缶後の耐衝撃性についても、欠陥の発生を抑制し、良好な性能を得ることができようになる。
一方、分子量を40000超とすると、樹脂の強度が過大となり、逆に柔軟性を損なうおそれがある。40000以下とすることで、強度と柔軟性のバランスを維持することができる。
ポリエステル樹脂層の付着量は、0.1g/m2以上5.0g/m2以下の範囲に規定する。0.1g/m2未満では、金属板表面を均一に被覆することができず、膜厚が不均一になってしまう。改質剤を添加した場合は、改質剤の付着量が変動することとなり、安定した機能を得ることができず、不適である。一方、5.0g/m2超とすると、樹脂の凝集力が不十分となり、樹脂層の強度が低下してしまう。その結果、製缶加工時に、樹脂層が凝集破壊してフィルムが剥離し、そこを起点に缶胴部が断裂してしまうこととなる。
以上より、付着量は、0.1g/m2以上5.0g/m2以下、好ましくは0.1g/m2以上4.0g/m2以下、更に好ましくは、0.5g/m2以上2.5g/m2である。
架橋剤として、アミノ樹脂、イソシアネート化合物のうちの少なくとも1種を適用する。
アミノ樹脂としては、メチロール化アミノ樹脂を適当なアルコールによってエーテル化したものが適しており、中でもエーテル化度が高いものが好適に使用できる。エーテル化に用いられるアルコールの例としてはメチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコールなどが挙げられる。アミノ樹脂としては、なかでもメチロール基の少なくとも一部をアルキルエーエル化したメチロール化メラミン樹脂が好適に使用できる。
イソシアネート化合物としては、ブロックフリーイソシアネートが好適である。ブロック化剤を用いないことで、フリーのイソシアネート基は、ポリエステル樹脂の末端の官能基や、基材であるポリエステルフィルムの表面の官能基と、速やかに反応することができる。これにより、ラミネート時の短時間の熱処理を利用した、イソシアネート架橋反応による高分子化が可能となり、ポリエステル樹脂層の強度と加工性を大幅に向上させるとともに、基材フィルムとの強固な密着性を得ることができる。適用するイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、キシリレンイソシアネートなどが挙げられ、中でも、キシリレンイソシアネート化合物が、密着性、耐久性などの観点から、最も好適である。
ここで、架橋剤の添加量は、ポリエステル樹脂に対して1〜20PHRの範囲に規定する。1PHR未満であると、ポリエステル樹脂の末端官能基との架橋反応、もしくはポリエステルフィルム表面の官能基との架橋反応のいずれかが不十分となり、製缶加工時に、フィルムが剥離したり、素材が断裂してしまう。一方、20PHRを超える場合、ポリエステル樹脂層の加工性が低下してしまうため、製缶加工時に樹脂層が断裂してしまうおそれがある。なお、樹脂の強度と加工性のバランスの点から、好ましくは5〜15PHRの範囲である。
ポリエステル樹脂層に導電性ポリマーを添加することで、下地金属の不動態化を促進させ、フィルムラミネート金属板に傷部耐食性を付与することができる。導電性ポリマーの酸化還元電位は、下地金属の電位に対して貴であるため、下地金属との界面において、下地金属の酸化反応と導電性ポリマーの還元反応が生じ、界面に安定な不動態皮膜を形成する。不動態皮膜は、絶縁体であるとともに緻密であるため、腐食因子に対しバリア層として機能する。そのため、下地金属の耐食性を大幅に向上させることができる。
ここで、導電性ポリマーの酸化還元反応は可逆的であることがわかっており、溶存酸素の還元反応とのカップリング反応によって、元の状態に戻る。すなわち、導電性ポリマーには、その可逆的な酸化還元特性により自身を劣化させることなく、永続的に下地金属を防食する効果が期待できることになる。
以上の防食プロセスは、腐食環境下における下地金属の自発的な不動態化を促すものであるため、導電性ポリマーには一種の自己補修作用があるものと考えることができる。したがって、フィルムを貫通する傷が生じたとしても、傷部周辺に不動態化皮膜を形成させることで、腐食の進行を著しく抑制することが可能となるのである。
本発明で規定するπ電子系導電性ポリマーは、脱ドープ状態では半導体であり、バンドギャップを有する。よって、導電性を付与するためには、ドーパントを添加し、導電性ポリマーの主鎖の共役系からπ電子を奪って、主鎖上に正孔を生成させる必要がある。正孔が、ポリマーの分子鎖上を移動するため、電流が流れるのである。
したがって、本発明で期待する防食効果を発揮させるためには、導電性ポリマーを含有するポリエステル樹脂中へのドーパント添加が必須である。ドーパントとしては、ハロゲン類、プロトン酸、ルイス酸、遷移金属ハライド、アルカリ金属から選ばれた一種または二種以上の混合物が好適である。なかでも、ハロゲン類、プロトン酸、ルイス酸が安定した防食能を有するため、特に好適である。
ハロゲン類としては、臭素、塩素、ヨウ素などを用いることができ、プロトン酸としては、有機カルボン酸、有機スルホン酸、有機ホスホン酸、リン酸類及びポリ酸などを好適に用いることができる。ルイス酸としては、FeCl3 、FeOCl、TiCl4 、ZrCl4 、SnCl4 、MoCl5 、WCl5 、BF4 、BCl3 、PF5 等の金属ハロゲン化物を用いることができる。
中でも好適であるのがプロトン酸であり、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリリン酸、などのポリマー酸が、特に好適である。これらは、自身に皮膜形成能があるため、密着層となる樹脂の連続性を高め、密着性、耐食性に対して効果がある。
ドーパントの添加量としては、樹脂中に添加された導電性ポリマー1molに対し、0.01〜1.00molの範囲とする。ドーパントの添加量が、導電性ポリマー1molに対し、0.01mol未満であると、ポリマー主鎖上に生成するキャリヤーの数が不足し、十分な電気伝導性が得られない。導電性ポリマーの防食効果は、防食対象となる金属とのスムーズな電子の授受に依存するため、導電性の低下は、不動態化能を低下させ、傷部耐食性が劣ることになる。一方、ドーパントの添加量が、導電性ポリマー1molに対し1.00mol超とすると、処理液の不安定化やポリエステル樹脂層の加工性劣化をまねき、傷部耐食性を低下させる懸念がある。したがって、ドーパントの添加量としては、導電性ポリマー1molに対し、0.01〜1.00molの範囲に規定する。
金属イオン交換シリカは、微細な多孔質のシリカ担体にイオン交換によって金属イオンが導入されたシリカ粒子である。中でも好適なのが、カルシウムイオン交換シリカ、亜鉛イオン交換シリカであり、これらから選ばれた一種または二種以上の混合物の適用が望ましい。カルシウムイオン交換シリカから放出されるカルシウムイオンは、電気化学的作用、塩生成作用を有するため保護膜を形成し、腐食の進行を抑制させる働きがある。亜鉛イオン交換シリカについても、亜鉛イオンが同様の防食能を有するため、好適である。
金属イオン交換シリカの添加量としては、ポリエステル樹脂に対し1〜25PHRの範囲とする。添加量が1PHR未満では、十分な防食効果が得られない。逆に25PHR超では、樹脂層が剛直となって、加工性が大きく劣化してしまい、缶加工時に樹脂層が断裂してしまうおそれがある。
更に、ポリエステル樹脂中に、染料、顔料などの着色剤を添加することで、下地の金属板を隠蔽し、樹脂独自の多様な色調を付与できる。例えば、黒色顔料として、カーボンブラックを添加することで、下地の金属色を隠蔽するとともに、黒色のもつ高級感を食品缶詰に付与することができる。カーボンブラックの添加量は、ポリエステル樹脂に対して5PHR以上40PHR以下が望ましい。5PHR未満では黒色度が不十分であるとともに下地金属の色調が隠蔽できず、高級感のある意匠性を付与できない。一方、40PHR超としても、黒色度は変化しないため意匠性の改善効果は得られないばかりか、ポリエステル樹脂の構造が脆弱となるため、製缶加工時に樹脂層が容易に破壊してしまう。添加量を5PHR以上40PHR以下の範囲とすることで、意匠性と他の要求特性との両立が可能となる。
カーボンブラックの円面積換算平均粒子径としては、5〜50nmの範囲のものを使用できるが、ポリエステル樹脂中での分散性や発色性を考慮すると、5〜30nmの範囲が好適である。
黒色顔料以外にも、白色顔料を添加することで下地の金属光沢を隠蔽するとともに、印刷面を鮮映化することができ、良好な外観を得ることができる。添加する顔料としては、容器成形後に優れた意匠性を発揮できることが必要であり、係る観点からは、二酸化チタンなどの無機系顔料を使用できる。着色力が強く、展延性にも富むため、容器成形後も良好な意匠性を確保できるので好適である。二酸化チタンの添加量は、ポリエステル樹脂に対して、5〜30PHRであることが望ましい。5PHR以上であれば、充分な白色度が得られ、良好な意匠性が確保できる。一方、30PHRを超えて添加しても、白色度が飽和するため、経済上の理由で30PHR以下とすることが望ましい。より好ましくは、10〜20PHRの範囲である。なお、着色剤の添加量とは、着色剤を添加した樹脂層に対する割合である。
アゾ系顔料の添加量は、対象樹脂層に対して、10〜40PHRとすることが好ましい。添加量が10PHR以上であれば、発色に優れるので好適である。40PHR以下の方が、透明度が高くなり光輝性に富んだ色調となる。
フィルム組成
本発明で使用するポリエステルフィルムは、レトルト後の味特性を良好とする点、製缶工程での摩耗粉の発生を抑制する点で、エチレンテレフタレート及び/またはエチレンナフタレートを主たる構成成分とすることが望ましい。エチレンテレフタレート及び/またはエチレンナフタレートを主たる構成成分とするポリエステルとは、ポリエステルの93mass%以上がエチレンテレフタレート及び/またはエチレンナフタレートを構成成分とするポリエステルである。さらに好ましくは95mass%以上であると金属缶に飲料を長期充填しても味特性が良好であるので望ましい。
一方、味特性を損ねない範囲で他のジカルボン酸成分、グリコール成分を共重合してもよく、ジカルボン酸成分としては、例えば、ジフェニルカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等を挙げることができる。
グリコール成分としては、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の指環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。なお、これらのジカルボン酸成分、グリコール成分は2種以上を併用してもよい。
また、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、トリメリット酸、トリメシン酸、トリメチロールプロパン等の多官能化合物を共重合してもよい。
本発明で用いるポリエステルフィルムにおける粒子とは、組成的には有機、無機を問わず特に制限されるものではないが、耐摩耗性、加工性、味特性等の点から円面積換算平均粒子径が0.005〜5.0μmであることが必要であり、特に0.01〜3.0μmであることが好ましい。また、耐摩耗性等の点から、下記式に示される相対標準偏差が0.5以下であることが必要であり、さらには0.3以下であることが好ましい。
また、これらの効果を十分に発現させるには、上記からなる粒子を0.005〜10mass%含有することが必要である。
また、有機粒子としては、さまざまな有機高分子粒子を用いることができるが、その種類としては、少なくとも一部がポリエステルに対し不溶の粒子であればいかなる組成の粒子でも構わない。また、このような粒子の素材としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメチルメタクリレート、ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、架橋ポリスチレン、シリコーン樹脂などの種々のものを使用することができる。中でも、耐熱性が高く、かつ粒度分布の均一な粒子が得られやすいビニル系架橋高分子粒子が特に好ましい。
このような無機粒子および有機高分子粒子は、単独で用いても構わないが、2種以上を併用して用いることが好ましく、粒度分布、粒子強度など物性の異なる粒子を組み合わせることにより、さらに機能性の高いポリエステル樹脂を得ることができる。
本発明で用いるポリエステルフィルムの厚さは、5〜100μmが好ましい。ポリエステルフィルムの厚さが5μm未満では、被覆性が不十分であり耐衝撃性と成形性が確保できない。一方、100μmを超えると、上記特性が飽和して何ら改善効果が得られないばかりか、金属表面への熱融着時に必要となる熱エネルギーが増大するため、経済性を損なってしまう。このような観点から、より好ましいポリエステルフィルムの厚さは8〜50μm、特に好ましくは10〜25μmである。
金属板と密着するポリエステル樹脂層を、上層となるポリエステルフィルムの表面に形成する方法について述べる。
本発明で規定する熱物性及び分子量を有するポリエステル樹脂を、有機溶剤中に溶解させコーティング液とする。前記コーティング液を、ポリエステルフィルム製膜時もしくは製膜後に、フィルム表面に塗布し乾燥することで、樹脂層を形成する。
本発明に規定するポリエステル樹脂を溶解させるための有機溶剤としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン溶剤、酢酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤などを挙げることができ、これらの1種以上を適宜選定して使用することができる。
また、本発明で規定する架橋剤、導電性ポリマー、ドーパント、金属イオン交換シリカ、着色剤としてカーボンブラック、アゾ系顔料などの添加剤も、有機溶剤中に分散させて使用することができる。この際、分散剤を併用すると、添加剤の均一性が付与できるため好適である。
コーティング液をポリエステルフィルムに塗布する方法としては、ロールコーター方式、ダイコーター方式、グラビア方式、グラビアオフセット方式、スプレー塗布方式など、既知の塗装手段が適用できるが、グラビアロールコート法が最も好適である。コーティング液塗布後の乾燥条件としては、80℃〜170℃で20〜180秒間、特に80℃〜120℃で60〜120秒間が好ましい。乾燥後のポリエステル樹脂層の付着量は、本発明に規定する0.1g/m2以上5.0g/m2以下の範囲でなければならない。
本発明では、例えば、金属板をフィルムの融点を超える温度で加熱し、その表面にポリエステルフィルムを圧着ロール(以後ラミネートロールと称す)を用いて接触させ熱融着させる方法を用いることができる。このとき、コーティングした面を圧着ロール(以後ラミネートロールと称す)を用いて金属板に接触させ熱融着させることが必要である。
ラミネート条件については、本発明に規定する樹脂層が得られるように適宜設定される。例えば、ラミネート開始時の温度を少なくともフィルムの融点以上とし、ラミネート時にフィルムの受ける温度履歴として、フィルムの融点以上の温度で接している時間を1〜20msecの範囲とすることが好適である。このようなラミネート条件を達成するためには、高速でのラミネートに加えて、融着中の冷却も必要である。ラミネート時の加圧は特に規定するものではないが、面圧として9.8〜294N/cm2(1〜30kgf/cm2)が好ましい。この値が低すぎると、樹脂界面の到達する温度が融点以上であっても時間が短時間であるため溶融が不十分であり、十分な密着性を得難い。また、加圧が大きいとラミネート金属板の性能上は不都合がないものの、ラミネートロールにかかる力が大きく設備的な強度が必要となり装置の大型化を招くため不経済である。
まず、ポリエステルフィルムを製造する。ジオール成分とジカルボン酸成分を、表1および表2に示す比率にて重合したポリエステル樹脂を乾燥、溶融、押し出し、冷却ドラム上で冷却固化させ、未延伸フィルムを得た後、二軸延伸・熱固定して、二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
次いで、ポリエステル樹脂を主成分とする樹脂と架橋剤、導電性ポリマー、ドーパントなどの各種添加剤を、表3および表4に示す比にてトルエンとメチルエチルケトンの混合溶媒中に溶解してコーティング液を作製した。この液を上記にて得られたポリエステルフィルムの片側の面に、グラビアロールコーターで塗布・乾燥し、乾燥後の樹脂層の付着量を調整した。乾燥温度は、80〜120℃の範囲とした。
金属板としては、クロムめっき鋼板を用いた。厚さ0.18mm、幅977mmの冷間圧延、焼鈍、調質圧延を施した鋼板を、脱脂、酸洗後、クロムめっきを行い製造した。クロムめっきは、CrO3、F−、SO4 2−を含むクロムめっき浴でクロムめっき、中間リンス後、CrO3、F−を含む化成処理液で電解した。その際、電解条件(電流密度・電気量等)を調整して金属クロム付着量とクロム水酸化物付着量を、Cr換算でそれぞれ120mg/m2、15mg/m2に調整した。
ラミネートロール3は内部水冷式とし、ラミネート中に冷却水を強制循環し、フィルム接着中の冷却を行った。樹脂フィルムを金属板にラミネートする際に、金属板に接する界面のフィルム温度がフィルムの融点以上になる時間を1〜20msecの範囲内にした。
(1)成形性
ポリエステルフィルムをラミネートした金属板にワックスを塗布後、直径200mmの円板を打ち抜き、絞り比2.00で浅絞り缶を得た。次いで、この絞り缶に対し、絞り比2.20で再絞り加工を行った。この後、常法に従いドーミング成形を行った後、トリミングし、次いでネックイン−フランジ加工を施し深絞り缶を成形した。このようにして得た深絞り缶のネックイン部に着目し、フィルムの損傷程度を目視観察した。評価対象は、缶の内外面である。
(評点について)
◎:成形後フィルムに損傷も白化も認められない状態
○:成形後フィルムに損傷が認められないが、部分的に白化が認められる状態
△:成形可能であるが、部分的にフィルム損傷が認められる状態
×:缶が破胴し、成形不可能
(2)成形後密着性1
上記(1)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶を対象とした。缶胴部よりピール試験用のサンプル(幅15mm、長さ120mm)を切り出した。切り出したサンプルの長辺側端部からフィルムの一部を剥離する。剥離したフィルムを、剥離された方向とは逆方向(角度:180°)に開き、引張試験機を用いて、引張速度30mm/min.でピール試験を行い、幅15mmあたりの密着力を評価した。評価対象は、缶外面の缶胴部である。
(評点)
◎:10.0(N)/15(mm)以上
○:5.0(N)/15(mm)以上、10.0(N)/15(mm)未満
×:5.0(N)/15(mm)未満
(3)成形後密着性2
上記(1)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶を対象とした。缶の内部に水道水を充填した後、蓋を巻き締めて密閉した。続いて、レトルト殺菌処理を130℃、90分間の条件で実施し、缶胴部よりピール試験用のサンプル(幅15mm、長さ120mm)を切り出した。切り出したサンプルの長辺側端部からフィルムの一部を剥離する。剥離したフィルムを、剥離された方向とは逆方向(角度:180°)に開き、引張試験機を用いて、引張速度30mm/min.でピール試験を行い、幅15mmあたりの密着力を評価した。評価対象は、缶内面の缶胴部である。
(評点)
◎:10.0(N)/15(mm)以上
○:5.0(N)/15(mm)以上、10.0(N)/15(mm)未満
×:5.0(N)/15(mm)未満
(4)傷部耐食性評価1
上記(1)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶を対象とした。図3に示すように、缶外面の缶胴部2箇所に、下地鋼板に達するクロスカット傷を入れる。続いて、クロスカット傷を付与した缶に対し、JISZ2371に準拠した塩水噴霧テストを300時間行い、傷部からの片側最大腐食幅を測定した。測定方法を図4に示す。評価対象は、缶外面の缶胴部である。
(評点について)
◎:片側最大腐食幅0.5mm未満
○:片側最大腐食幅0.5mm以上〜1.0mm未満
×:片側最大腐食幅1.0mm以上
(5)傷部耐食性評価2
上記(1)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶を対象とした。図3に示すように、缶内面の缶胴部2箇所に、下地鋼板に達するクロスカット傷を入れる。続いて、缶の内部に、15%NaCl+15%クエン酸ナトリウム混合液を充填した後、蓋を巻き締めて密閉した。続いて、レトルト殺菌処理を130℃、90分間の条件で実施した後、温度38℃の恒温槽内で、20日間経時させた。その後、缶を切り開き、クロスカット傷部からの片側最大腐食幅を測定した。評価対象は、缶内面の缶胴部である。
(評点について)
◎:片側最大腐食幅1.0mm未満
○:片側最大腐食幅1.0mm以上〜3.0mm未満
×:片側最大腐食幅3.0mm以上
以上により得られた結果を表5および表6に示す。
2 金属帯加熱装置
3 ラミネートロール
4a、4b フィルム
5 金属帯冷却装置
Claims (5)
- ポリエステルを主成分とする複層構造の樹脂層を少なくとも一方の面に有する容器用樹脂被覆金属板であって、金属板との密着層となるポリエステル樹脂層は以下の(A)〜(E)を満たすことを特徴とする傷部耐食性に優れる容器用樹脂被覆金属板。
(A)アミノ樹脂、イソシアネート化合物のうちの少なくとも1種を、ポリエステル樹脂に対し1〜20PHRの範囲で含有する。
(B)導電性ポリマーを、ポリエステル樹脂に対し0.1〜15.0PHRの範囲で含有する。
(C)ドーパントを、前記導電性ポリマー1mol(但し、導電性ポリマーのモノマー単位)に対し0.01〜1.00molの範囲で含有する。
(D)金属イオン交換シリカを、ポリエステル樹脂に対し1〜25PHRの範囲で含有する。
(E)付着量は、0.1g/m2以上5.0g/m2以下である。 - 前記金属イオン交換シリカが、亜鉛イオン交換シリカ、カルシウムイオン交換シリカから選ばれる一種または二種以上の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の容器用樹脂被覆金属板。
- 前記導電性ポリマーが、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリアルキルジオキシチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリフェニレン、ポリフラン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリアセン及びこれらの誘導体、及びこれらの単量体の共重合物から選ばれる一種または二種以上の混合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の容器用樹脂被覆金属板。
- 前記ドーパントが、ハロゲン類、プロトン酸、ルイス酸から選ばれた一種または二種以上の混合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の容器用樹脂被覆金属板。
- 前記密着層の上層を形成するポリエステル樹脂層が、二軸延伸ポリエステルフィルムであって、ポリエステルの構成単位の93mass%以上がエチレンテレフタレート単位及び/またはエチレンナフタレート単位であり、かつ、円面積換算平均粒子径が0.005〜5.0μmであり、下記式に示される相対標準偏差が0.5以下であり、粒子の長径/短径比が1.0〜1.2で、モース硬度が7未満である粒子を0.005〜10mass%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の容器用樹脂被覆金属板。
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