JP2010100910A - 電着塗装鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】疵付き部の耐食性、塗膜の鮮映性、および耐クレータリング性に優れた電着塗装鋼板を提供する。
【解決手段】鋼板の表面に、電子伝導型導電性高分子を含む化成処理皮膜、および電着塗膜を有する、電着塗装鋼板。前記化成処理皮膜は、好ましくは非導電性の有機樹脂またはイオン伝導型導電性高分子をさらに含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、電着塗装鋼板に関する。
電着塗装は、塗料ロスが少なく衛生的であるため、公害対策面から利点が大きく、冷延鋼板や各種表面処理鋼板に適用されている。電着塗装が施された鋼板は、主として自動車部品や家電製品、サッシなどの建材用途に用いられている。
一般に、電着塗膜と鋼板の密着性を向上させるために、鋼板表面には下地処理(「化成処理」ともいう)が施される。化成処理として、通常はリン酸亜鉛処理が施されるが、より耐食性が求められる用途においては、有機樹脂を含む化成処理液で処理がなされ、鋼板の上には樹脂皮膜が形成される(特許文献1)。しかし、一般に樹脂皮膜は導電性に劣るため、樹脂皮膜が形成された化成処理鋼板を電着塗装してなる電着塗装鋼板は、塗膜の鮮映性や耐クレータリング性が十分でなかった。
この点を改善するために、増膜助剤を含有しない樹脂エマルションを用いた有機系処理が提案されている(特許文献2)。増膜助剤とは、処理液を基材に塗布したときの造膜性を向上させるために添加される、中高沸点の溶剤である。この構成により、鮮映性や耐クレータリング性を改善した電着塗装鋼板が得られるとされる。しかし、この方法で形成される樹脂皮膜も導電性に劣ることから、塗膜の鮮映性や耐クレータリング性は十分でなかった。
また、特許文献1および2に記載の電着塗装鋼板は、鋼素地まで達する疵が形成された場合、防錆作用がほとんど働かず、疵部から腐食が進行する、すなわち疵付き部の耐食性に劣るという問題があった。
一方、ポリアニリンに代表される電子伝導型導電性高分子化合物は、金属表面に塗装すると金属の腐食を抑制することが知られており、塗装鋼板の防錆顔料としての応用が提案されている。例えば、特許文献3には、金属材料表面に酸化重合によりπ共役導電性高分子膜を形成する方法が開示されている。また特許文献4には、ドーパントを有しない可溶性ポリアニリン系化合物を含む溶液を用いて金属表面を被覆する方法が開示されている。
さらに、特許文献5には、電子伝導型導電性高分子化合物を含む化成処理液で処理した鋼板の上に、バーコーターによる塗装を施した塗装鋼板が開示されている。しかし、同文献には、電着塗装に関しては一切開示がない。
特公昭61−36587号公報 特開平4−143296号公報 特開平6−128769号公報 特開2006−169543号公報 特開2007−190896号公報
疵付き部の耐食性、塗膜の鮮映性、および耐クレータリング性に優れた電着塗装鋼板が望まれていたものの、未だその要求を満足する電着塗装鋼板は存在しなかった。かかる事情に鑑み、本発明は、疵付き部の耐食性、塗膜の鮮映性、および耐クレータリング性に優れた電着塗装鋼板を提供することを目的とする。
発明者らは鋭意検討した結果、電着塗装の下地処理に電子伝導型導電性高分子を用いることにより前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、前記課題は、以下の本発明により解決される。
[1]鋼板の表面に、電子伝導型導電性高分子化合物を含む化成処理皮膜、および電着塗膜を有する、電着塗装鋼板。
[2]前記化成処理皮膜は、非導電性の有機樹脂、またはイオン伝導型導電性高分子化合物をさらに含む、[1]に記載の電着塗装鋼板。
[3]前記有機樹脂は、ポリビニルアルコール類である、[1]または[2]に記載の電着塗装鋼板。
[4]前記イオン伝導型導電性高分子化合物は、アニオン性基を有する変性ポリビニルアルコール類である、[1]〜[3]いずれかに記載の電着塗装鋼板。
[5]前記化成処理皮膜は、カップリング剤を含む、[1]〜[4]いずれかに記載の電着塗装鋼板。
[6]前記鋼板は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板である、[1]〜[5]いずれかに記載の電着塗装鋼板。
[7]前記電着塗膜は、カチオン電着塗膜であり、前記電子伝導型導電性高分子化合物は、ポリアニリンまたはポリピロールである、[1]〜[6]いずれかに記載の電着塗装鋼板。
[8](A)鋼板を準備する工程、
(B)前記鋼板の表面に、電子伝導型導電性高分子化合物を含む化成処理皮膜を形成する工程、および
(C)前記工程で得た鋼板の表面に、電着塗装により塗膜を形成する工程を含む、電着塗装鋼板の製造方法。
本発明により、疵付き部の耐食性、塗膜の鮮映性、および耐クレータリング性に優れた電着塗装鋼板を提供できる。
1.電着塗装鋼板
電着塗装鋼板とは、鋼板表面に電着塗装により形成された塗膜を有する鋼板である。本発明の電着塗装鋼板は、電着塗膜の下に電子伝導型導電性高分子化合物を含む化成処理皮膜を有することを特徴とする。
(1)化成処理皮膜
化成処理皮膜とは、化成処理により鋼板表面に形成される膜である。本発明の化成処理皮膜は、電子伝導型導電性高分子化合物を含む。表面に化成処理皮膜を有する鋼板は、化成処理鋼板とも呼ばれる。
1)電子伝導型導電性高分子化合物
電子伝導型導電性高分子化合物とは、電子を移動させることにより電気伝導性を有する高分子化合物であり、ドーパントを添加されて導電性を発現する高分子化合物も含む。電子伝導型導電性高分子化合物の例には、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリセレノフェン等の主鎖にヘテロ原子を有する高分子化合物が含まれる。
ポリアニリンとは、アニリンまたはアニリン誘導体の重合体である。アニリン誘導体の例には、アニリンの2位、3位、またはN位を、炭素数1〜18のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはスルホン酸基等で置換した化合物が含まれる。その具体例には、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、2−エチルアニリン、3−エチルアニリン、2−メトキシアニリン、3−メトキシアニリン、2−エトキシアニリン、3−エトキシアニリン、N−メチルアニリン、N−プロピルアニリン、N−フェニル−1−ナフチルアミン、8−アニリノ−1−ナフタレンスルホン酸、2−アミノベンゼンスルホン酸、7−アニリノ−4−ヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸が含まれる。
ポリピロールとは、ピロールまたはピロール誘導体の重合体である。ピロール誘導体の例には、ピロールの1位、3位、または4位を、炭素数1〜18のアルキル基またはアルコキシ基等で置換した化合物が含まれる。その具体例には、1−メチルピロール、3−メチルピロール、1−エチルピロール、3−エチルピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、1−(2−ヒドロキシエチル)ピロール、1−フェニルピロール、が含まれる。
ポリチオフェンとは、チオフェンまたはチオフェン誘導体の重合体である。チオフェン誘導体の例には、チオフェンの3位または4位を、炭素数1〜18のアルキル基またはアルコキシ基等で置換した化合物が含まれる。その具体例には、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェンが含まれる。
本発明における電子伝導型導電性高分子化合物は、ポリアニリンやポリピロールのように主鎖に窒素原子を含む高分子化合物が好ましく、窒素原子が有機基で置換されていないポリアニリンやポリピロールがより好ましい。後述するとおり、疵付き部における塗膜下の耐食性に特に優れた電着塗装鋼板が得られるからである。特に、ポリアニリンは、前記の理由に加えて、モノマーの入手が容易という観点からも好ましい。
2)非導電性の有機樹脂、またはイオン伝導型導電性高分子化合物
本発明の化成処理皮膜は、さらに非導電性の有機樹脂、またはイオン伝導型導電性高分子化合物を含んでいてもよい。非導電性の有機樹脂は、公知のものを用いてよいが、その好ましい例には、ポリビニルアルコール類、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、セルロース系樹脂、および尿素樹脂が含まれる。
中でも、本発明においては、ポリビニルアルコール類が好ましい。ポリビニルアルコール類とは、ポリビニルアルコール、またはビニルアルコールと他のモノマーとの共重合体(「変性ポリビニルアルコール」ともいう)をいう。
ポリビニルアルコール類は、分子内に水酸基を含むため鋼板との親和性が良く、化成処理皮膜としたときに、界面近傍に濃縮されて存在し、鋼板と化成処理皮膜の密着性を向上させるからである。前記他のモノマーの例には、チオール基を含む重合性化合物が含まれる。
イオン伝導型導電性高分子化合物とは、イオンを移動させることによって導電性を発現する高分子化合物をいう。イオン伝導型導電性高分子としては公知のものを用いてもよいが、その好ましい例には、アニオン性基を有するポリビニルアルコール類、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、セルロース系樹脂、および尿素樹脂が含まれる。アニオン性基とはH(水素イオン)を放出する基を有する化合物である。アニオン性基の例には、スルホン酸基、カルボキシル基、およびリン酸基、およびホスホン酸基が含まれる。
アニオン性基を有するポリビニルアルコール類は、ビニルアルコールと、他のモノマーとしてアニオン性基を有する重合性化合物を共重合して得ることが好ましい。このような変性ビニルアルコールを含む化成処理液は、処理液の安定性に優れ、かつ電子伝導型導電性高分子化合物に対するドーパントの役割も果たせるので好ましい。
分子内にアニオン性基を有する変性ポリビニルアルコールは公知の方法で得てよい。例えば、ポリビニルアルコールのα水素を引き抜いてラジカルを発生させて、アニオン性基を有するモノマーをグラフト重合させる方法(「水素引き抜き法」ともいう)や、連鎖移動反応を利用してアニオン性基を有するモノマーを重合させる方法(「連鎖移動法」ともいう)が含まれる。
本発明の化成処理皮膜は、非導電性の有機樹脂とイオン伝導型導電性高分子化合物のいずれかを含んでいてもよいし、双方を含んでいてもよい。
電子伝導型導電性高分子化合物と非導電性の有機樹脂またはイオン伝導型導電性高分子化合物との配合割合は、質量比にして[電子伝導型導電性高分子化合物]/[非導電性有機樹脂とイオン伝導型導電性高分子化合物の合計量]=0.01〜10が好ましい。
3)カップリング剤
本発明の化成処理皮膜は、カップリング剤を含んでいてもよい。カップリング剤とは、分子内に加水分解によってM−OH構造(Mは(半)金属原子)を与える複数の加水分解性基を有する有機金属化合物からなる化合物であって、無機材料と有機材料、または異なる有機材料の界面における親和性を改善し、化学的に両者を結合させる化合物をいう。カップリング剤の例には、シラン系カップリング剤やチタン系カップリング剤やジルコニウム系カップリング剤やアルミニウム系カップリング剤が含まれる。
特に、本発明においてカップリング剤は、電子伝導型導電性高分子と、非導電性の有機樹脂またはイオン伝導型導電性高分子化合物間の親和性を高める。よって、本発明の化成処理皮膜が非導電性の有機樹脂またはイオン伝導型導電性高分子化合物を含む場合には、カップリング剤も含むことが特に好ましい。化成処理皮膜がカップリング剤を含むとは、皮膜中に、カップリング剤が他の材料と反応した状態で存在する場合や、カップリング剤の加水分解物同士が重縮合した状態で存在することを含む。
シラン系カップリング剤(「シランカップリング剤」ともいう)とは、分子内に、加水分解でシラノール基(Si−OH)を与えるアルコキシ基等と、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基やアルキル基等の有機基を有する化合物をいう。中でも、エポキシ基を含むシラン系カップリング剤がより好ましい。エポキシ基は電子伝導型導電性高分子化合物とも反応しうるため、化成処理皮膜自身の強度を高めるとともに、鋼板と化成処理皮膜との密着性も高められるからである。
シラン系カップリング剤の例には、以下のものが含まれる。
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等の、分子内にエポキシ基を含有するエポキシ系シランカップリング剤。
アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、アミノメチルトリプロポキシシラン、アミノメチルトリブトキシシラン、アミノメチルトリフェノキシシラン、アミノエチルトリメトキシシラン、アミノエチルトリエトキシシラン、アミノエチルトリプロポキシシラン、アミノエチルトリブトキシシラン、アミノエチルトリフェノキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリプロポキシシラン、3−アミノプロピルトリブトキシシラン、3−アミノフェニルトリメトキシシラン、3−アミノフェニルトリエトキシシラン、3−アミノフェニルトリプロポキシシラン、3−アミノフェニルトリブトキシシラン等の、分子内にアミノ基を含有するアミン系シランカップリング剤。
メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリプロポキシシラン、メルカプトメチルトリブトキシシラン、メルカプトメチルトリフェノキシシラン等の、分子内にメルカプト基を含有するメルカプト系シランカップリング剤。
ビス−1,2−(トリエトキシシリル)エタン、ビス−1,2−(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス−1,2−(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等の双官能系シランカップリング剤。
チタン系カップリング剤の例には、一般式Ti(OR)で表されるチタンアルコキシド、Ti(OR)(X)で表されるチタンキレート、Ti(OR(OCORで表されるチタンアシレートが含まれる。ここで、R、R、Rはアルキル基または水素原子、m+n=4、XはO配位キレートである。また、チタン系カップリング剤は、味の素ファインテクノ(株)より市販されている窒素、リン、硫黄といったヘテロ原子を含有するチタネート系カップリング剤であってもよい。
チタン系カップリング剤の具体例には、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンテトラキス(2−エチルヘキソキシド)、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタンラクテート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンテトラキス(アセチルアセトネート)、チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、ポリヒドロキシチタンステアレート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネートが含まれる。
ジルコニウム系カップリング剤の例には、一般式Zr(OR)、で表されるジルコニウムアルコキシド、Zr(OR)(X)で表されるジルコニウムキレート、Zr(OR(OCORで表されるジルコニウムアシレートが含まれる。ここで、R、R、Rはアルキル基又は水素、m+n=4、XはO配位キレートである。安定性の面からジルコニウム系カップリング剤としては、ジルコニウムキレート、ジルコニウムアシレートが好ましい。ジルコニウム系カップリング剤の具体例には、ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシモノステアレートが含まれる。
アルミニウム系カップリング剤の例には、一般式Al(OR)で表されるアルミニウムアルコキシド、Al(OR(OCORで表されるアルミニウムアシレート、あるいは下記一般式(2)で表されるアルミニウムキレートが含まれる。ここで、R、R、R、R、R、Rはアルキル基または水素、m+n=3、記号「←」は配位結合を表す。
Figure 2010100910
アルミニウム系カップリング剤の具体例には、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリブトキシド、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、アルミニウムジブトキシドモノ(エチルアセトアセテート)、アルミニウム(9−オクタデセニルアセトアセテート)ジイソプロポキシド、ジイソプロポキシアルミニウムアルキルアセトアセテート、アルミニウムオキサイドオクチレートトリマー、アルミニウムオキサイドステアレートトリマーが含まれる。
4)その他の添加剤
本発明の化成処理皮膜は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の添加剤等を含んでいてもよい。添加剤等の例には、架橋剤、耐水化剤、分散安定化剤、消泡剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、滑剤、防滑剤、難燃剤、および無機質充填材が含まれる。
架橋剤、耐水化剤の例には、トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等のポリイソシアネート類;グリオキザール、グルタルアルデヒド等のポリアルデヒド類;グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、テトラグリシジルメタキシレンジアミン等のポリエポキシド化合物が含まれる。
分散安定化剤の例には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸等の界面活性剤が含まれる。
5)化成処理皮膜の厚み
本発明における化成処理皮膜の厚みは、所望の耐食性等が発現できるように適宜調整できるが、0.1〜10μmが好ましく、0.5〜5μmがより好ましい。
6)化成処理皮膜の製法
本発明の化成処理液は発明の効果を損なわない範囲で任意に製造できる。例えば、本発明の化成処理液は、電子伝導型導電性高分子と、必要に応じて非導電性の有機樹脂またはイオン伝導型導電性高分子、カップリング剤、および添加剤等を、有機溶剤に溶解させて製造できる。この際、電子伝導型導電性高分子と非導電性の有機樹脂とイオン伝導型導電性高分子化合物の合計量と有機溶剤の質量比は、0.1〜5:20が好ましく、0.5〜2:20がより好ましい。
また、イオン伝導型導電性高分子として、アニオン性基を含有するポリビニルアルコール類を用いる場合は、水中に、電子伝導型導電性高分子化合物と、必要に応じてカップリング剤および添加剤等を分散または溶解させることにより化成処理液を得ることができる。分散または溶解には公知の方法を用いてよく、その例には、ディスパーザー等の高せん断下での攪拌が可能な攪拌機やアジテーター等の攪拌機を用いる方法が含まれる。
さらに、イオン伝導型導電性高分子として、アニオン性基を含有するポリビニルアルコール類を用いる場合は、以下の工程を含む方法で本発明の化成処理液を得ることが好ましい。
1)アニオン性基を含有するポリビニルアルコール類、電子伝導型導電性高分子化合物を生成しうるモノマー、および水を含む混合物を準備する工程、
2)前記水溶液中のモノマーを酸化重合し、水中にアニオン性基を含有するポリビニルアルコール類および電子伝導型導電性高分子化合物が微分散した分散液、あるいは水中にアニオン性基を含有するポリビニルアルコール類および電子伝導型導電性高分子化合物が溶解した溶液を得る工程、および
3)前工程で得た分散液に、必要に応じてカップリング剤や添加剤を添加する工程。
前記1)工程におけるアニオン性基を有するポリビニルアルコール類と、導電性高分子化合物を生成しうるモノマーの配合比は、アニオン性基1当量に対し、0.01〜5当量であることが好ましい。安定した分散液を得ることができるからである。
前記2)工程における重合は公知の方法で行ってよく、例えば、1)工程で得た混合物を所定の温度に保持した後、開始剤を添加して重合を開始させればよい。この際に用いられる開始剤の例には、過硫酸アンモニウム塩、過酸化水素等の過酸化物、および塩化第二鉄などの遷移金属のハロゲン化物が含まれる。また、過酸化物と、塩化銅、塩化鉄、硫酸鉄、または硫酸銅等の遷移金属化合物を併用してもよい。
酸化重合の温度は、通常、酸化重合を行う温度であって、かつ反応系が凍結しない温度であれば特に限定されない。しかしながら副反応等が起こりにくいため、低温領域が好ましく、具体的には−5〜30℃であることが好ましい。
前記3)工程は、前工程で得た分散液に、所定の量のカップリング剤等を添加し、攪拌することにより行ってよい。攪拌は公知の方法で行ってよく、その例には、ディスパーザー、またはアジテーター等の攪拌機を用いる方法が含まれる。
(2)電着塗膜
電着塗膜とは、電着塗装により形成された塗膜である。電着塗膜は、カチオン電着塗膜、アニオン電着塗膜のいずれであってもよい。しかしながら、本発明においてはカチオン電着塗膜が好ましい。後述するように、このような鋼板は疵付き部における塗膜下の耐食性に極めて優れるからである。
電着塗膜は、アミノ基、アンモニウム基、ホスホニウム基、またはスルホニウム基等のカチオン性基、あるいは中和されたこれらのカチオン性基を有するカチオン電着樹脂からなる。カチオン電着樹脂としては、カチオン性基を有するエポキシ変性樹脂が好ましい。エポキシ基は他の樹脂等との接着性に優れるからである。特に、カチオン性基を有するエポキシ変性樹脂は、電子伝導型導電性高分子化合物として、ポリアニリンやポリピロール等の分子内に活性水素を有する化合物を用いた場合に、この活性水素と反応しうるので、化成処理皮膜と電着塗膜の密着性を向上させられる。
電着塗膜中の樹脂は、架橋剤(硬化剤)で架橋されていてもよい。架橋剤の例には、ブロック化ポリイソシアネートが含まれる。ブロック化ポリイソシアネート化合物は、塗膜の防食性および塗料安定性の観点から、アルコール系、エーテルアルコール系またはオキシム系のブロック化剤を有するものが好ましい。
電着塗膜の厚みは特に限定されず、目的に応じて適宜調整してよい。
(3)鋼板
本発明の鋼板としては、冷延鋼板、めっき鋼板、ステンレス鋼板を用いることが好ましい。めっき鋼板としては、溶融めっき、電気めっき、または蒸着めっき等を施して得たものを用いてよい。溶融めっき鋼板の例には、Zn、Zn−Al合金、Zn−Al−Mg合金、Zn−Al−Mg−Si合金、Zn−Mg合金、Al、Al−Si合金などが挙げられ、連続めっきまたは浸せきめっきにより得られるものが含まれる。あるいは、溶融めっき後に加熱処理により鉄地を合金化処理した合金化溶融めっき鋼板を用いてもよい。
電気めっき鋼板の例には、通常の電気Znめっき液、電気Zn合金めっき液、電気Cuめっき液、電気Snめっき液などを用いた連続めっき、または浸漬めっき(個別電気めっき法)により得られるものが含まれる。
中でも、本発明の鋼板としては、合金化溶融亜鉛めっき鋼板がより好ましい。疵付き部における塗膜下の耐食性に特に優れた電着塗装鋼板が得られるからである。この理由は明らかになっていないが、合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、他の鋼板と比較して、鋼板表面に凹凸が多く存在するため、アンカー効果により化成処理皮膜との密着性がより向上するためと推察される。
本発明の鋼板は、効果を損なわない範囲で、化成処理皮膜が形成される前に、アルカリ溶剤などを用いた脱脂処理やリン酸塩処理などの前処理が施されていてもよい。このような処理が施された鋼板は、電着塗装鋼板としたときの耐食性や密着性により優れる。
図1は、本発明の電着塗装鋼板の一例を示す断面図である。図中、1は電着塗装鋼板、10は鋼板、12は化成処理皮膜、14は電着塗膜である。
(4)電着塗装鋼板の鮮映性、耐クレータリング性
本発明の電着塗装鋼板は、鮮映性、耐クレータリング性に優れる。鮮映性とは、塗膜表面に映る正反射像の鮮明さである。耐クレータリング性とは、塗膜表面におけるクレータ(凹部)の発生しにくさである。
電子伝導型導電性高分子を含まない有機樹脂からなる化成処理皮膜が形成された鋼板に電着塗装を施すと、前記化成処理皮膜は絶縁性であるため通電部位が均一にならず、塗膜表面の平滑性が低下する。そのためこのような塗膜は鮮映性に劣る。また、前記化成処理鋼板は、電着塗装時に、化成処理皮膜の薄い部位に電圧が集中する。このため、局部的に塗膜が厚くなり、クレータが形成されやすくなる。
一方、本発明の化成処理鋼板は、化成処理皮膜に電子伝導型導電性高分子を含むので、電着塗装において、処理面における通電が均一であり、塗料粒子が均一に電析し鮮映性に優れた塗膜が得られる。また、局部的な電圧の集中も認められないことから、耐クレータリング性にも優れる。
(5)電着塗装鋼板の疵付き部の耐食性
本発明の電子伝導型導電性高分子化合物は、いわゆる酸化型の電子伝導型導電性高分子化合物であり、鋼板の耐食性、特に疵付き部の耐食性を向上させる。このメカニズムは次のように推察される。
1)酸化型の電子伝導型導電性高分子化合物が疵部で露出した鋼板の鉄を酸化し二価の鉄イオンを生成する。このとき電子伝導型導電性高分子化合物は還元型の電子伝導型導電性高分子化合物となる。2)次に、還元型の電子伝導型導電性高分子化合物が空気酸化されて、酸化型の電子伝導型導電性高分子化合物に戻る。このとき、酸素が還元されて水酸化物イオンが生成される。3)続いて、前記1)の過程で生成された二価の鉄イオンは、さらに空気により酸化され、三価の鉄イオンとなる。4)さらに、当該三価の鉄イオンは、2)の過程で生成された水酸化物イオンと反応して、不動態であるFe・HOを生成する。
また、本発明において、亜鉛等の鉄と比較してイオン化傾向の大きい金属をめっきした鋼板を原板として用いた場合も、疵付き部においては、上記と同様に亜鉛等が不動態化され、耐食性が発現する。しかし同時に亜鉛等の犠牲防食作用が働き、亜鉛等が優先的に腐食するので、疵部から横に腐食が拡がり、塗膜下膨れが進行する。
この場合、電子伝導型導電性高分子化合物としてポリアニリンまたはポリピロール等の主鎖に窒素原子を有する高分子化合物を用い、電着塗膜としてカチオン電着塗膜を用いると、塗膜下膨れが低減され、疵付き部における塗膜下の耐食性が極めて良好となるので好ましい。この理由は以下のように考えられる。
ポリアニリン等を含む化成処理鋼板にカチオン電着塗装が施されると、化成処理皮膜中のポリアニリン等の一部が還元され、主鎖中の窒素原子がイミノ基(−NH−)に変換される。このイミノ基は水素結合が可能であるため、鋼板表面に存在する水酸基等の極性基と水素結合する。この結果、化成処理皮膜と鋼板が強固に密着するので、疵付き部における塗膜下の膨れが低減される。アニオン電着塗装や他の塗装方法では還元体の電子伝導型導電性高分子が形成されないため、疵付き部における塗膜下の膨れを十分に抑制できないことがある。
2.電着塗装鋼板の製造方法
本発明の電着塗装鋼板は発明の効果を損なわない範囲で任意に製造されうるが、以下好ましい製造方法を説明する。
本発明の化成処理鋼板は、(A)鋼板を準備する工程、(B)前記鋼板の表面に、電子伝導型導電性高分子を含む化成処理皮膜を形成する工程、および(C)前記工程で得た鋼板の表面に、電着塗装により塗膜を形成する工程を経て製造されることが好ましい。
(A)工程
本工程では、鋼板を準備する。準備する手段は特に限定されないが、既に述べたとおりの方法で準備することが好ましい。
(B)工程
本工程では、前記鋼板の表面に、電子伝導型導電性高分子を含む化成処理皮膜を形成する。具体的には、既に述べたとおりに化成処理液を調製して、これを鋼板表面に塗装すればよい。塗装方法には公知の方法を用いてよい。公知の方法の例には、スプレーなどによる吹き付け塗装、ハケやローラーで塗装する方法、粉体塗装、および電着塗装が含まれる。
さらに、電子伝導型導電性高分子をドープできる化合物を含む溶液を調製して、電子伝導型導電性高分子を含む化成処理皮膜の上に塗布・乾燥させて、ドープ処理を行ってもよい。
(C)工程
本工程では、前記化成処理鋼板に、電着塗装を施す。具体的には、既に述べたとおりに電着塗料を公知の方法で電着塗装すればよい。
[実施例1]
ポリアニリン粉末(Aldrich製、556386)をメチルピロリドンに質量比1:20の割合で溶解させ、化成処理液1を調製した。
上記のようにして得た化成処理液1を用いて、次に示す方法で化成処理鋼板を調製した。続いて、化成処理鋼板に電着塗装を施し、電着塗装後の鮮映性、耐クレータリング性、耐食性、および密着性を評価した。
1)電着塗装鋼板の調製
板厚0.8mm、めっき付着量45g/mの合金化溶融亜鉛めっき鋼板を準備した。当該鋼板の片面に、化成処理液1をロールコートにより塗布した。続いて、当該鋼板を到達板温150℃で乾燥させて、膜厚1μmの化成処理皮膜を形成した。さらに、ドープ処理として0.1モル/L塩酸水溶液を、前記化成処理皮膜の上に、5ml/mの塗布量で塗布し、化成処理鋼板を得た。
電着塗料(日本ペイント製PT−U250)を用いて、定法により、化成処理鋼板に電着塗装を施し、150℃で20分間焼き付けた。電着塗膜は、焼付後の膜厚が25μmになるように調整された。
2)電着塗膜の鮮映性
電着塗装鋼板の塗膜が形成された面に、25μmのポリエチレン粘着テープを粘着し、DOIメーターにて塗膜の鮮映度を測定した。
3)電着塗膜の耐クレータリング性
電着塗膜の耐クレータリング性は、クレータの発生電圧で評価した。電圧条件は次のとおりとした。
陽極面積/陰極面積 1/1
極間距離 100mm
30秒立ち上がり制御 2.5分
電圧 180〜320Vまで20Vごとに変化
浴温 29±1℃
4)耐食性
耐食性は、JASOM606−91(社団法人自動車技術会規格)に準じて行った。具体的には電着塗装鋼板を7cm×15cmの大きさに切断し、以下に示す手順で腐食促進試験を実施し、クロスカット部分からの腐食状態を評価した。
i)前記電着塗装鋼板の表面にクロスカットを作製した。
ii)当該サンプルに5%NaClを2時間噴霧した後、60℃/30%RHの条件下に4時間、続いて50℃/95%RHの条件下に2時間静置した。
iii)前工程を1サイクルとし、クロスカット部の腐食状態を評価した。
iv)前記ii)〜iii)工程を繰り返し、クロスカット部に腐食(例えば赤錆など)が発生するまでに要したサイクル数および、500サイクル後のクロスカット部からの最大塗膜膨れ片幅を記録した。
5)密着性
密着性は、以下の方法により評価した。
i)5cm×7cmの形状の塗装鋼板を3枚準備し、2枚の塗装鋼板がスペーサとなるようにし、かつ塗装面が内側になるようにして、1枚の塗装鋼板を二つ折りにした(図2参照)。
ii)折り曲げられた塗装鋼板を元に戻し、折り曲げ時に内側に存在していた塗膜表面にセロハンテープを貼り付けた。
iii)当該テープを剥がし、塗膜の剥離状況を観察した。このとき剥離が観察された塗装鋼板は2tと評価された。
iv)塗膜に剥離が見られなかった場合は、新たな塗装鋼板を2枚準備し、前記i)と同様にして、1枚の塗装鋼板がスペーサとなるようにして、もう1枚の塗装鋼板を二つ折りにした。続いて上記と同様の評価を行った。このとき剥離が観察された塗装鋼板は1tと評価された。
v)上記評価で塗膜に剥離が見られなかった場合は、新たな塗装鋼板を1枚準備し、前記i)と同様にして、スペーサを挟まずに1枚の塗装鋼板を二つ折りにした。続いて上記と同様の評価を行った。このとき剥離が観察された塗装鋼板は0tと評価された。本試験では、評価の数値が小さいほど塗膜の密着性が良好なことを示す。
[実施例2]
化成処理鋼板作製時のドープ処理として、0.1モル/L塩酸水溶液の代わりに0.1モル/L硫酸水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして電着塗装鋼板を作製し評価した。
[実施例3]
化成処理鋼板作製時のドープ処理として、0.1モル/L塩酸水溶液の代わりに0.1モル/Lリン酸水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして電着塗装鋼板を作製し評価した。
[実施例4]
ポリアニリン粉末(Aldrich製、556386)をメチルピロリドンに質量比1:20の割合で溶解させた。さらにこの溶液にアミノ系シランカップリング剤(γ−(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン)を配合して化成処理液2を調製した。この際、アミノ系シランカップリング剤の配合量は、化成処理液中0.1質量%とした。続いて、化成処理液2を用いて実施例1と同様にして、電着塗装鋼板を得た。
[実施例5]
攪拌装置、温度計、および窒素導入装置を備えた1Lのフラスコにイオン交換水710.5質量部、ビニルアルコールとチオール基を含有するモノマーの共重合体(製品名:クラレMポリマー M−115、株式会社クラレ製(以下、M−115と略することがある)重合度1500)104.5質量部を加え、窒素雰囲気下において90℃で90分加熱撹拌してM−115を溶解させた。
次に、前記溶液を85℃に保持して2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(以下「AMPS」と呼ぶことがある)44.8質量部を加えた後、0.5%過硫酸アンモニウム水溶液140.2質量部を5時間かけて滴下した。滴下後さらに85℃で1時間反応させ、固形分質量あたりのスルホン酸基の量が1.44meq/gである、スルホン酸基を有するポリビニルアルコール類の水溶液を得た。
攪拌装置、温度計、および窒素導入装置を備えた1Lのフラスコに前記水溶液を13.3質量部、アニリンを0.2質量部、イオン交換水を974.4質量部仕込み、氷水浴中で攪拌し約5℃に冷却した。この混合液に30%過硫酸アンモニウム水溶液2.1質量部を1時間かけて滴下し、滴下後さらに温度を5℃に保ったまま6時間撹拌し、アニリンを重合させた。このようにして濃緑色の分子内にスルホン酸基を有するポリビニルアルコール類及び電子伝導型導電性高分子化合物であるポリアニリンを含有する分散液を得た。
続いて、シランカップリング剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを10質量部加えて攪拌し、化成処理液3を得た。
続いて、この化成処理液3を用いて、塩酸によるドープ処理を行わない以外は実施例1と同様にして電着塗装鋼板を作製し、評価した。
[実施例6]
特開2005−60671号公報の実施例1に記載の方法と同様にして、ポリアニリン溶液を調製した。具体的には、次のとおりにポリアニリン溶液を調整した。
純水1.5Lにドデシルベンゼンスルホン酸0.1molとアニリン0.1molを加え、よく撹拌した。撹拌しながら冷却し、反応槽中の液温が5℃以下になったところで0.25mol/Lの過硫酸アンモニウム水溶液500mLを徐々に滴下し、ポリアニリンを合成した。過硫酸アンモニウム水溶液滴下終了後、12時間撹拌し、反応を完結させた。
このようにして得たポリアニリンを含む液300mLを分液ロートに移し、それに200mLの酢酸エチルを加えよく混合した。有機層と水層が分離するまで静置した後、下層の水層を除去した。有機層を取り出し、化成処理液4とした。
続いて、この化成処理液4を用いて、塩酸によるドープ処理を行わない以外は実施例1と同様にして電着塗装鋼板を作製し、評価した。
[実施例7]
アニリン42g、水600g、濃塩酸35mlを混合して溶液を調製した。また、濃硫酸40gを水150gに溶解させた硫酸水溶液を調整した。前記のアニリンを含む水溶液に、前記硫酸水溶液とヒドロキシプロピルセルロース40gを加え、モノマー溶液を得た。次に、水220gに過硫酸アンモニウム130gを溶解した酸化剤溶液を調製し、前記モノマー溶液に滴下した。この間、モノマー溶液は0℃の温度に保持された。酸化剤溶液を滴下した後、溶液を5時間撹拌して重合反応を行いポリアニリンを合成した。続いて、ポリアニリンを含む溶液を濃アンモニア水で脱ドープ処理し、さらに水、メタノール洗浄を繰り返し実施した。このように処理された溶液を真空乾燥して、脱ドープ状態のポリアニリン粉末を得た。このようにして得たポリアニリン粉末をメチルピロリドンに質量比1:20の割合で溶解させて、化成処理液5を得た。
この化成処理液5を用いて実施例1と同様にして電着塗装鋼板を作製し、評価した。
[実施例8]
特開2002−285070号公報の合成例1に記載の方法で得られたエチレン変性ポリビニルアルコール20部をイオン交換水180部に溶解して、エチレン変性ポリビニルアルコール水溶液を得た。得られた水溶液15部に実施例5で得られた化成処理液3を985部を加え、化成処理液6を得た。
この化成処理液6を用いて、塩酸によるドープ処理を行わない以外は実施例1と同様にして電着塗装鋼板を作製し、評価した。
[実施例9]
アニリン0.2質量部に代えて、ピロール0.2質量部を使用した以外は、実施例5と同様にしてピロールを重合させた。このようにして分子内にスルホン酸基を有するポリビニルアルコール類および電子伝導型導電性高分子であるポリピロールを含有する分散液を得た。
続いて、シランカップリング剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを10質量部加えて撹拌し、化成処理液7を得た。
続いて、この化成処理液7を用い、塩酸によるドープ処理を行わない以外は実施例1と同様にして電着塗装鋼板を作製し、評価した。
[実施例10]
原板を板厚0.8mmの冷延鋼板とした以外は、実施例1と同様にして電着塗装鋼板を作製し、評価した。
[実施例11]
原板を板厚0.8mmの冷延鋼板とした以外は、実施例5と同様にして電着塗装鋼板を作製し、評価した。
[実施例12]
原板を板厚0.8mmの冷延鋼板とした以外は、実施例6と同様にして電着塗装鋼板を作製し、評価した。
[実施例13]
原板を板厚0.8mmの冷延鋼板とした以外は、実施例9と同様にして電着塗装鋼板を作製し、評価した。
[実施例14]
原板を板厚0.8mm、めっき付着量45g/mの溶融亜鉛−6%アルミニウム−3%マグネシウムめっき鋼板とする以外は、実施例1と同様にして電着塗装鋼板を作製し、評価した。
[実施例15]
原板を板厚0.8mm、めっき付着量45g/mの溶融亜鉛−6%アルミニウム−3%マグネシウムめっき鋼板とする以外は、実施例5と同様にして電着塗装鋼板を作製し、評価した。
[実施例16]
原板を板厚0.8mm、めっき付着量45g/mの溶融亜鉛−6%アルミニウム−3%マグネシウムめっき鋼板とする以外は、実施例6と同様にし、電着塗装鋼板を作製し、評価した。
[実施例17]
原板を板厚0.8mm、めっき付着量45g/mの溶融亜鉛−6%アルミニウム−3%マグネシウムめっき鋼板とした以外は、実施例9と同様にして電着塗装鋼板を作製し、評価した。
[比較例1]
実施例1と同様にして、化成処理鋼板を準備した。この化成処理鋼板の表面に、アクリル系上塗り塗料(日本ペイント製、スーパーラック300)を、エアスプレーで塗布し、150℃で15分加熱して、膜厚20μmの塗膜を形成した。得られた塗装鋼板は、実施例1と同様にして評価された。
[比較例2]
実施例1と同様にして、化成処理鋼板を準備した。この化成処理鋼板の表面に、ポリエステル系粉体塗料(日本ペイント製、ビリューシアPL2000)を粉体塗装し、160℃で15分間焼付けて、膜厚40μmの塗膜を形成した。得られた塗装鋼板は、実施例1と同様にして評価された。
[比較例3]
実施例1と同様にして、化成処理鋼板を準備した。この化成処理鋼板の表面に、エポキシ樹脂系塗料(日本ペイント製、パワーバインド)を刷毛により塗布し、室温(20℃)で2時間乾燥させ、膜厚30μmの塗膜を形成した。得られた塗装鋼板は、実施例1と同様にして評価された。
[比較例4]
リン酸亜鉛処理液(日本パーカライジング製、パルボンド139)を用い、リン酸塩処理皮膜の付着量が4.5g/mとなるように表面処理された合金化溶融亜鉛めっき鋼板を準備した。この鋼板の化成処理された表面に、実施例1と同様にして電着塗膜を形成した。得られた電着塗装鋼板は、実施例1と同様にして評価された。
[比較例5]
クロメート処理液(日本パーカライジング製、ZM−1300AN)を用い、クロメート処理皮膜量が、クロム換算で40mg/mとなるように表面処理された合金化溶融亜鉛めっき鋼板を準備した。この鋼板の化成処理された表面に、実施例1と同様にして電着塗膜を形成した。得られた電着塗装鋼板は、実施例1と同様にして評価された。
[比較例6]
特開平4−143296号公報の実施例に記載の方法に準じて、ウレタン樹脂エマルション(固形分30%)100質量部、コロイダルシリカ(シリカ40%)50質量部、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン15質量部、界面活性剤1質量部、リン酸マグネシウム50質量部、純水1000質量部を含む処理液を調製した。脱脂およびクロメート処理されたZn12%Niめっき鋼板を準備し、この鋼板の表面に、前記処理液により乾燥後の平均膜厚が1.5μmの化成処理皮膜を形成した。
このようにして得た化成処理鋼板の表面に、さらに実施例1と同様にして電着塗装を行い、電着塗装鋼板を得た。得られた電着塗装鋼板は、実施例1と同様にして評価された。
[比較例7]
原板を板厚0.8mmの冷延鋼板とする以外は、比較例1と同様にし、塗装鋼板を作製し、評価した。
[比較例8]
原板を板厚0.8mm、めっき付着量45g/mの溶融亜鉛−6%アルミニウム−3%マグネシウムめっき鋼板とする以外は、比較例1と同様にし、塗装鋼板を作製し、評価した。
Figure 2010100910
Figure 2010100910
表2に示すとおり、本発明の電着塗装鋼板は、疵付き部の耐食性、塗膜の鮮映性、および耐クレータリング性に優れることが明らかである。
特に、実施例5、8、9に示されるとおり、スルホン酸基を有するポリビニルアルコール類を含有する、化成処理液3、6および7で処理された化成処理鋼板を用いた電着塗装鋼板は、疵付き部の耐食性に極めて優れることが明らかである。
本発明の電着塗装鋼板は、疵付き部の耐食性、塗膜の鮮映性、および耐クレータリング性に優れるため、耐食性が要求される自動車部品や家電製品、サッシ等の建材用途として有用である。
本発明の電着塗装鋼板の一例を示す断面図 本発明の電着塗装鋼板の密着試験方法を示す断面図
符号の説明
1 電着塗装鋼板
2 スペーサ用電着塗装鋼板
10 鋼板
12 化成処理皮膜
14 電着塗膜

Claims (8)

  1. 鋼板の表面に、電子伝導型導電性高分子化合物を含む化成処理皮膜、および電着塗膜を有する、電着塗装鋼板。
  2. 前記化成処理皮膜は、非導電性の有機樹脂、またはイオン伝導型導電性高分子化合物をさらに含む、請求項1に記載の電着塗装鋼板。
  3. 前記有機樹脂は、ポリビニルアルコール類である、請求項2に記載の電着塗装鋼板。
  4. 前記イオン伝導型導電性高分子化合物は、アニオン性基を有する変性ポリビニルアルコール類である、請求項2または請求項3に記載の電着塗装鋼板。
  5. 前記化成処理皮膜は、カップリング剤を含む、請求項1〜4いずれかに記載の電着塗装鋼板。
  6. 前記鋼板は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板である、請求項1に記載の電着塗装鋼板。
  7. 前記電着塗膜は、カチオン電着塗膜であり、前記導電性高分子化合物は、ポリアニリンまたはポリピロールである、請求項1に記載の電着塗装鋼板。
  8. (A)鋼板を準備する工程、
    (B)前記鋼板の表面に、電子伝導型導電性高分子化合物を含む化成処理皮膜を形成する工程、および
    (C)前記工程で得た鋼板の表面に、電着塗装により塗膜を形成する工程を含む、電着塗装鋼板の製造方法。
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