JP3966520B2 - プレコート金属板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
A(%)={F/(F+C+O+N)}×100・・・(1)
前記式(1)において、Aはフッ素濃度の割合、Fはフッ素質量%、Cは炭素質量%、Oは酸素質量%、Nは窒素質量%である。
このように構成すれば、フッ素系樹脂皮膜のフッ素が最表面で濃化するため、フッ素系樹脂皮膜の粘着物の剥離強度を低く維持できる。また、同時に最表面を除いた皮膜内部ではフッ素濃度が低く抑えられているため、樹脂系プライマー層や接着剤層を形成しなくても、フッ素系樹脂皮膜が金属板と強固に接着する。
1.プレコート金属板
本発明のプレコート金属板は、ベース素材である金属板と、金属板の表面に形成された、皮膜最表面と皮膜内部のフッ素濃度が所定の値となる様に制御されたフッ素系樹脂皮膜とを備える。ここで、表面とは、金属板の少なくとも一方の面を意味し、好ましくは両面を意味する。次に、各構成について説明する。
本発明で用いられる金属板には特に制限がなく、最も一般的な冷延鋼板の他、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板や銅めっき鋼板、錫めっき鋼板等の各種めっき鋼板、更には、ステンレス鋼などの合金鋼板や、アルミニウムまたはアルミニウム合金板や、銅または銅合金板などの非鉄金属板等の全てが適用可能である。また、ノートパソコン搭載用の光ディスクドライブのカバー類や、液晶表示装置のフレーム類、車載用電装品のカバーなど軽さが求められる用途に対しては、アルミニウムまたはアルミニウム合金板が好ましい。特に、JISに規定する5052や5182に代表されるAl−Mg系合金がより好ましい。
(フッ素濃度の割合)
本発明における実施形態は、フッ素系樹脂皮膜の最表面でのフッ素濃度の割合を下式(1)で計算したとき、その割合が20%以上であることを特徴とするとともに、同時に同じ下式(1)で計算したときの、フッ素系樹脂皮膜の皮膜内部のフッ素濃度の割合が15%以下であることを特徴とするプレコート金属板である。
A(%)={F/(F+C+O+N)}×100・・・(1)
前記式(1)において、Aはフッ素濃度の割合、Fはフッ素質量%、Cは炭素質量%、Oは酸素質量%、Nは窒素質量%である。
ここで、フッ素濃度の割合は、ESCA等で測定、換算した、フッ素系樹脂皮膜の最表面および皮膜内部のフッ素質量%、炭素質量%、酸素質量%および窒素質量%を使用して、前記式(1)で計算される。なお、最表面の測定は、プレコート金属板の表面を、そのまま測定し、皮膜内部の測定は、フッ素樹脂皮膜の最表面から、厚さ方向に皮膜厚さの1/2〜1/3の部分を測定することが好ましい。すなわち、最表面とは、プレコート金属板の表面を言い、皮膜内部は、最表面から厚さ方向に皮膜厚さの1/2〜1/3の部分を言う。
フッ素系塗料の主剤となるフッ素系樹脂の分子量は、フッ素系樹脂皮膜の表面光沢に影響し、結果的にプレコート金属板の表面光沢を決定するものである。本発明に係るプレコート金属板の表面光沢は、光沢の高いもの、光沢の低いもの(艶消し外観)のいずれでもよいが、家庭用電気製品の外板材等の用途を考慮すると、光沢の高いものが好ましい。そして、フッ素系樹脂の分子量と表面光沢の関係は以下の通りである。
フッ素系樹脂皮膜の厚さは、0.1〜20μmが好ましい。厚さが0.1μm未満であると、金属板の全面を均一に被覆することができず、粘着物の剥離強度が大きくなる。また、厚さが20μmを超えると、金属板との密着性が低下し、フッ素系樹脂皮膜が金属板に接着しづらくなる。
耐食性皮膜としては、CrまたはZrを成分として含む従来公知の耐食性皮膜である、リン酸クロメート皮膜、クロム酸クロメート皮膜、リン酸ジルコニウム皮膜、酸化ジルコニウム系皮膜、塗布型クロメート皮膜、あるいは塗布型ジルコニウム皮膜等を適宜使用することができる。また、耐食性皮膜の付着量は、CrまたはZr換算値で10〜50mg/m2が好ましい。耐食性皮膜の付着量が10mg/m2より少なくなると、金属板の全面を均一に被覆することができず、耐食性の確保が難しくなり、長期間の使用に耐えられなくなる。また、付着量が50mg/m2を超えると、プレス成形等において、耐食性皮膜自体に割れ(剥離)を生じ、長期間にわたって高い耐食性を維持することが難しくなる。
本発明のプレコート金属板の製造方法は、金属板の表面にフッ素系塗料を塗布する第1工程と、フッ素系塗料を200℃以上280℃以下で焼付処理してフッ素系樹脂皮膜を形成する第2工程とを含むものである。以下、各工程について説明する。
金属板の表面にフッ素系塗料を塗布する工程であって、フッ素系塗料は、主剤として水酸基、カルボキシル基およびアミノ基のうち少なくとも一種類を有するフッ素系樹脂に、硬化剤として、2個以上、好ましくは3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物、さらに好ましくはイソシアネート基をブロックしたブロックドイソシアネート化合物を混合したものが好ましい。また、フッ素系塗料に天然ワックス、石油ワックス、合成ワックスまたはそれらの混合物等の潤滑剤を添加してもよい。さらには着色を目的とした染料や顔料、樹脂皮膜の硬さや耐疵付き性を高めるための各種無機充填剤、導電性添加剤などの添加剤は、本発明の請求項の内容から外れない範囲で自由に添加することができる。
金属板の表面にフッ素系樹脂皮膜を形成する工程であって、第1工程で塗布したフッ素系塗料を200℃以上280℃以下で焼付処理して、フッ素系塗料を硬化(架橋)させる。そして、フッ素系塗料が硬化(架橋)することによって、皮膜最表面のフッ素濃度の割合が20%以上、かつ皮膜内部のフッ素濃度の割合が15%以下のフッ素系樹脂皮膜が形成される。また、フッ素系樹脂皮膜が金属板に強固に接着する。ここで、焼付温度とは、金属板の温度のピーク温度とする。
(実施例1〜5)
実施例1〜5として、前記の製造方法に従ってプレコート金属板を作製した。プレコート金属板の各構成は以下のとおりである。
(金属板)
厚み0.5mm、JIS規定の5052−H34のアルミニウム合金板を使用した。
(耐食性皮膜)
アルミニウム合金板の両面にリン酸クロメート皮膜を形成した。リン酸クロメート皮膜の付着量はCr換算で20mg/m2であった。
(フッ素系樹脂皮膜)
リン酸クロメート皮膜の最表面にフッ素系塗料を塗布し、焼付温度(金属板のピーク温度)200、220、250、260、280℃で焼付処理を行い、皮膜厚さ5μmのフッ素系樹脂皮膜とした。ここで、フッ素系塗料としては、以下の二液混合型のフッ素系塗料を使用した。
(主剤):水酸基を有するフッ素系樹脂(重量平均分子量:176000)。
(硬化剤):3個のイソシアネート基を有するブロックドイソシアネート化合物。
比較例1〜4として、焼付温度125、150、170、300℃で行った以外は実施例1〜5と同様にして、プレコート金属板を作製した。また比較例、5、6として本発明とは異なるフッ素系樹脂を使用してフッ素系樹脂被覆アルミニウム板を作製した。なお被覆膜(樹脂皮膜)として使用したETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)フィルムは、そのままではアルミ板表面に接着することができなかったため、樹脂系プライマーを介してETFEフィルムをラミネートする方法を選択した。また、比較例7として、フッ素系塗料の代わりにエポキシ系塗料を使用した以外は実施例3と同様にして、プレコート金属板を作製した。
樹脂皮膜の最表面および皮膜内部を、ESCA(島津製作所製)で測定して、フッ素、炭素、酸素、窒素およびアルミニウムの5元素の原子%を得た。これらの原子%を、各元素の原子量を使用して質量%に換算した。このうち、皮膜を構成する元素のみ、即ちフッ素質量%(F)、炭素質量%(C)、酸素質量%(O)および窒素質量%(N)だけを使用して、下式(1)でフッ素濃度の割合(A(%))を算出した。
A(%)=[F/(F+C+O+N)]×100・・・(1)
ここで、最表面については、前記で作製したプレコート金属板の表面を、そのまま測定し、皮膜内部については、アルゴンイオンスパッタリングで樹脂皮膜を厚さ方向に皮膜厚さの1/2までエッチングした後の表面を測定した。ただし、最表面および皮膜内部共に、油類等で汚染を受けていない部位を選択して測定した。
(ウレタン結合)
樹脂皮膜をFTIR(サーモ・ニコレージャパン社製)で測定し、ウレタン結合に相当する吸収ピークの有無を確認した。
粘着物剥離強度は、JISK6854−2に規定された180度剥離試験により測定した。粘着物には、コニカインクジェットペーパーフォトラベル(コニカミノルタホールディングス(株)製、品番QP10A4GMT)を使用した。また、測定条件として、長さ100mm×巾60mmのプレコート金属板、長さ100mm×巾6mmのラベルを使用し、剥離速度を50mm/minとした。なお、表1における剥離評価は、粘着物剥離強度が0.1N/6mm以下の場合に「○」で優れている、0.1N/6mmを超える場合に「×」で不良とした。
次に、主剤となるフッ素系樹脂の重量平均分子量と外観に関する実施例について説明する。実施例6〜13として、前記の製造方法に従ってプレコート金属板を作製した。プレコート金属板の各構成は以下のとおりである。
(金属板)
厚み0.5mm、JIS規定の5052−H34のアルミニウム合金板を使用した。
(耐食性皮膜)
アルミニウム合金板の両面にリン酸クロメート皮膜を形成した。リン酸クロメート皮膜の付着量はCr換算で20mg/m2であった。
(フッ素系樹脂皮膜)
リン酸クロメート皮膜の最表面にフッ素系塗料を塗布し、焼付温度(金属板のピーク温度)250℃で焼付処理を行い、皮膜厚さ5μmのフッ素系樹脂皮膜とした。ここで、フッ素系塗料としては、以下の二液混合型のフッ素系塗料を使用した。
(主剤):水酸基を有するフッ素系樹脂。重量平均分子量は130000〜224000の範囲の8種類を使用。
(硬化剤):3個のイソシアネート基を有するブロックドイソシアネート化合物。
(光沢度)
光沢度計(日本電色工業製)を使用し、JIS Z8741に基づく60度鏡面光沢条件にて、プレコート金属板の樹脂皮膜面の光沢度を測定した。測定は、アルミニウム合金板の圧延平行方向と圧延直角方向で測定し、平均値を算出した。
(目視外観評価)
無作為に抽出した10人に、プレコート金属板の外観を目視で観察してもらい、光沢性があると判断した人数が9人以上の場合を「光沢」、光沢性があると判断した人数が8人以下の場合を「艶消し」と評価した。
また、主剤となるフッ素系樹脂として、重量平均分子量が200000以下のものを使用した実施例6〜11のプレコート金属板の光沢度は、すべて80以上であり、目視評価でも優れた光沢性を有していた。
20 光ディスクドライブ
21 トレイ
22 カバー
D ディスク
L 識別ラベル
Ln 粘着部
Claims (6)
- 金属板と、その表面に形成されたフッ素系樹脂皮膜とを備えるプレコート金属板であって、
前記フッ素系樹脂皮膜の最表面でのフッ素濃度の割合を下式(1)で計算したとき、その割合が20%以上であると共に、
前記フッ素系樹脂皮膜の皮膜内部のフッ素濃度の割合を下式(1)で計算したとき、その割合が15%以下であることを特徴とするプレコート金属板。
A(%)={F/(F+C+O+N)}×100・・・(1)
前記式(1)において、Aはフッ素濃度の割合、Fはフッ素質量%、Cは炭素質量%、Oは酸素質量%、Nは窒素質量%である。 - 前記フッ素系樹脂皮膜は、水酸基、カルボキシル基およびアミノ基のうち少なくとも一種類を有するフッ素系樹脂と、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物とがウレタン結合、酸アミド結合および尿素結合のうち少なくとも一種類の化学結合で結合されていることを特徴とする請求項1に記載のプレコート金属板。
- 前記フッ素系樹脂の分子量が、重量平均分子量で20万以下であることを特徴とする請求項2に記載のプレコート金属板。
- 前記金属板と前記フッ素系樹脂皮膜との間に、耐食性皮膜を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のプレコート金属板。
- 前記金属板は、アルミニウム板またはアルミニウム合金板であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のプレコート金属板。
- 金属板と、その表面に形成されたフッ素系樹脂皮膜とを備える請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のプレコート金属板の製造方法であって、
前記金属板の表面にフッ素系塗料を塗布する第1工程と、
前記フッ素系塗料を200℃以上280℃以下で焼付処理してフッ素系樹脂皮膜を形成する第2工程とを含むことを特徴とするプレコート金属板の製造方法。
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