JP2002178448A - 加工性及び耐疵付き性に優れた塗装鋼板 - Google Patents

加工性及び耐疵付き性に優れた塗装鋼板

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JP2002178448A
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Hiroshi Tsuburaya
浩 圓谷
Keimei Mori
啓明 森
Kazumi Matsubara
和美 松原
Fumishiro Kumon
史城 公文
Kazuyoshi Sugawara
和良 菅原
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Nisshin Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 加工性,耐疵付き性及び耐候性に優れた塗装
鋼板を提供する。 【構成】 この塗装鋼板は、軟化開始温度が30℃以上
の下塗り塗膜及び軟化開始温度が30℃以下の上塗り塗
膜が鋼板表面に積層されている。下塗り塗膜は、エポキ
シ樹脂を樹脂ベースとする塗料で形成される。上塗り塗
膜は、ネオペンチルグリコール及び1,6-ヘキサンジオー
ルを主体とする多価アルコールとシクロヘキサンジカル
ボン酸を主体とする多塩基酸からなるポリエステルポリ
オールとポリイソシアネートとの反応生成物であるウレ
タン樹脂を樹脂ベースとする塗料で形成される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、成形加工して使用され
る建材,器物外板等に適し、加工性,耐疵付き性及び耐
候性に優れた塗装鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】建材,器物外板等に使用されている塗覆
装鋼板としては、上塗りとしてポリエステル系塗料で塗
装したカラー鋼板,ポリフッ化ビニリデンとアクリル樹
脂からなるフッ素塗料で塗装したフッ素塗装鋼板,塩化
ビニル樹脂塗料で塗装し又は塩化ビニル樹脂フィルムで
ラミネートした塩ビ鋼板等が使用されている。塩ビ鋼板
は、皮膜が軟質で伸びが大きいため密着曲げ等の過酷な
加工を施しても樹脂層にクラックが入ることなく、優れ
た加工部耐食性を呈する。また、皮膜が約150〜30
0μmと厚いため、成形加工時,成形品の輸送時,施工
時等の際に下地鋼板に達する疵が入り難く、疵部の耐食
性にも優れている。このような長所を活用し、耐食性が
要求される建材用途に塩ビ鋼板が広く採用されている。
【0003】しかし、塩化ビニル樹脂の焼却に伴うダイ
オキシン発生の可能性が報告されて以降、種々の分野で
塩化ビニル樹脂の代替品開発が推進されている。塗覆装
鋼板の分野でも、塩化ビニル樹脂を使用しない塗覆装鋼
板に対する要求が強くなっている。塩ビ鋼板に代わる塗
装鋼板として、3コート仕様の塗膜により加工性を改善
した塗装鋼板(特開2000−178758号公報)
や、尿素樹脂系塗料を用い80μmまでの厚膜で下塗り
塗膜を形成することにより加工性及び耐疵付き性を改善
した塗装鋼板(特開2000−185260号公報)が
紹介されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】3コートの塗装鋼板
は、3コート3ベーク仕様の塗装ラインを必要とし、或
いは2コート2ベーク仕様の塗装ラインを2回通す必要
がある。そのため、製造コストが高くなる。他方、下塗
り塗膜を厚く設けることは、従来の塗装鋼板の下塗り塗
膜が5μm程度の膜厚であることを考慮すると、コスト
上昇の原因ともいえる。しかも、軟質の尿素樹脂で下塗
り塗膜を形成していると、厚膜化した下塗り塗膜であっ
ても耐疵付き性が不足する嫌いがある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、このような問
題を解消すべく案出されたものであり、下塗り塗膜及び
上塗り塗膜に使用される樹脂塗料の軟化開始温度を調整
することにより、加工性及び耐疵付き性に優れ、安価な
2コート仕様の塗装鋼板を提供することを目的とする。
本発明の塗装鋼板は、その目的を達成するため、軟化開
始温度が30℃以上の下塗り塗膜及び軟化開始温度が3
0℃以下の上塗り塗膜が鋼板表面に積層されていること
を特徴とする。
【0006】下塗り塗膜は、エポキシ樹脂を樹脂ベース
とする塗料で形成される。上塗り塗膜は、ネオペンチル
グリコール及び1,6-ヘキサンジオールを主体とする多価
アルコールとシクロヘキサンジカルボン酸を主体とする
多塩基酸からなるポリエステルポリオールとポリイソシ
アネートとの反応生成物であるウレタン樹脂を樹脂ベー
スとする塗料で形成される。
【0007】
【作用】本発明者等は、塗装鋼板の加工性及び耐疵付き
性に及ぼす塗膜物性の影響を種々調査検討した。その結
果、塗膜の熱的挙動を表す物性値として従来から使用さ
れてきたガラス転移温度(Tg)では、加工性及び耐疵
付き性を的確に把握できないことを解明した。ガラス転
移温度(Tg)は動的粘弾性測定の損失弾性率E'やtan
δの極大値を示す温度で一般的に表され、図1の温度−
貯蔵弾性率の曲線上では変曲点近傍に位置する。しか
し、塗膜に使用される高分子樹脂は、ガラス転移温度
(Tg)の狭い温度範囲で物性が変化するものではな
く、広い温度範囲で物性が変化する性質をもっている。
しかも、物性が変化する温度範囲は樹脂の種類や添加剤
に応じて異なることから、加工性及び耐疵付き性をガラ
ス転移温度(Tg)で適確に評価できない。
【0008】この点、軟化開始温度に基づき塗膜物性を
評価すると、加工性及び耐疵付き性を適確に把握でき
る。軟化開始温度は、動的粘弾性測定における貯蔵弾性
率E'の低下開始点として設定できる(図1)。温度上
昇に伴って貯蔵弾性率E'は低下する傾向を示すが、あ
る温度を境として貯蔵弾性率E'の減少率ΔlogE'が大
幅に大きくなる。そこで、減少率ΔlogE'が0.01℃
-1を超えたときの温度を軟化開始温度T(℃)と定め
る。
【0009】下塗り塗膜の軟化開始温度T(℃)が30
℃以上では、成形加工時,施工時等に下塗り塗膜が軟化
することなく、塗装鋼板を所定形状に成形する際の外部
応力に十分耐える。この下塗り塗膜上に軟化開始温度3
0℃以下の上塗り塗膜を積層しているので、軟化した上
塗り塗膜で外部応力が吸収・緩和され、下地鋼板に達す
る疵の発生が防止されると共に、上塗り塗膜が軟化して
いるので延性に優れ加工性も良好である。
【0010】
【実施の形態】本発明に従った塗装鋼板は、下地鋼板に
下塗り塗膜及び上塗り塗膜を積層した2層構成の塗膜を
もつ。下地鋼板は、特に種類が制約されるものでなく、
冷延鋼板,溶融亜鉛めっき鋼板,電気亜鉛めっき鋼板,
溶融5%Al−Zn合金めっき鋼板,溶融55%Al−
Zn合金めっき鋼板,溶融Al−Zn−Mg合金めっき
鋼板,溶融アルミニウムめっき鋼板,ステンレス鋼板等
が使用される。下地鋼板は、下塗り塗料の塗布に先立っ
て塗膜密着性及び耐食性を向上させるため、表面調整処
理,クロメート処理,クロムフリー処理,リン酸塩処理
等の塗装前処理を施すことが好ましい。
【0011】下塗り塗料は、軟化開始温度が30℃以上
である限り、樹脂種に制約を受けることはない。軟化開
始温度を30℃以上とすることにより、成形加工時の金
型によるカジリや施工時の取扱い疵に対して強い抵抗力
を示す。30℃以上の軟化開始温度が耐疵付き性の改善
に有効なことは、次のように推察される。軟化開始温度
30℃以上は、塗装鋼板が成形加工又は施工される際の
材料温度より高く、外部からの応力に抗して下塗り塗膜
の変形が少なくなる。そのため、塗膜の剥離や疵付きが
防止される。逆に30℃に達しない軟化開始温度では、
成形加工や施工時に下塗り塗膜が軟化して外部応力に応
じた変形が大きくなり、下地鋼板と下塗り塗膜との界面
に応力が集中しやすくなる。応力集中の結果、塗膜剥離
が進行する。
【0012】また、エポキシ樹脂を樹脂ベースとする下
塗り塗料を使用するとき、ウレタン樹脂を樹脂ベースと
する上塗り塗膜及び下地鋼板との密着性が向上し、耐疵
付き性が一層向上する。好適なエポキシ樹脂としては、
ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ
樹脂,これらを変性したポリエステル変性エポキシ樹
脂,アクリル変性エポキシ樹脂等が使用される。エポキ
シ樹脂の硬化剤には、エーテル化メラミン樹脂で代表さ
れるアミノ樹脂,ヘキサメチレンジイソシアネート,イ
ソホロンジイソシアネート等のポリイソシアネートが使
用される。ポリイソシアネートは、フェノール,クレゾ
ール等のフェノール類、ε−カプロラクタム等のラクタ
ム類、ホルムアミドオキシム、メチルエチルケトオキシ
ム等のオキシム類、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチ
ル等の活性メチレン類でブロック化したものが好まし
い。
【0013】下塗り塗料は、防錆顔料,体質顔料,無機
粒子,有機樹脂等の骨材を適宜配合できる。防錆顔料に
は、クロム酸ストロンチウム,クロム酸バリウム,クロ
ム酸亜鉛等のクロム酸系防錆顔料や、燐酸アルミニウ
ム,リン酸亜鉛,燐酸カルシウム,炭酸カルシウム,シ
リカ−カルシウム系等のノンクロメート防錆顔料等があ
る。体質顔料には、シリカ,タルク,チタニア,硫酸バ
リウム等がある。有機樹脂系の骨材としては、PEFE
(ポリテトラフルオロエチレン)やPAN(ポリアクリ
ロニトリル)ビーズが使用される。下塗り塗膜の膜厚
は、特に制約されるものではないが、2〜30μmの範
囲に調整することが好ましい。下塗り塗膜は、軟化開始
温度が室温より高く、室温では硬質で伸びが少ない。そ
のため、薄い膜厚ほど加工性が良好となるので、3〜1
5μmの範囲がより好ましい。
【0014】下塗り塗膜に積層される上塗り塗膜は、軟
化開始温度が30℃以下に調整される。軟化開始温度を
30℃以下にすることによって、通常雰囲気で塗装鋼板
を加工する際に塗膜成分の一部又は全部が軟化し、換言
すると塗膜を構成する分子の自由度が大きくなる。した
がって、塗膜が変形しやすく、クラックが発生しがたく
なる。軟化した上塗り塗膜は、加工時に加えられた外部
応力を吸収又は緩和し、耐疵付き性も向上させる。これ
に対し、軟化開始温度が30℃以上の上塗り塗膜では、
変形抵抗が大きくクラックが入りやすくなる。また、外
部応力の吸収・緩和も期待できず、下地鋼板に達する疵
が入りやすくなる。
【0015】上塗り塗膜の伸びを確保する上で、ウレタ
ン樹脂を樹脂ベースとする塗料で上塗り塗膜を形成する
ことが好ましい。ウレタン系塗膜は、強度,加工性,耐
候性にも優れている。ウレタン樹脂としては、多価アル
コールと多塩基酸の重縮合物であるポリエステルポリオ
ールとポリイソシアネートとを反応させた樹脂が好まし
い。多価アルコールとしては、エチレングリコール,プ
ロピレングリコール,1,6-ヘキサンジオール,ジエチレ
ングリコール,ジプロピレングリコール,ネオペンチル
グリコール,トリエチレングリコール,グリセリン,ト
リメチロールエタン,トリメチロールプロパン,ペンタ
エリトリット等がある。これら多価アルコールの1種又
は2種以上を混合して使用できる。
【0016】多塩基酸には、無水フタル酸,イソフタル
酸,テレフタル酸,フマル酸,無水コハク酸,アジピン
酸,アゼライン酸,セバシン酸,シクロヘキサンジカル
ボン酸,無水トリメリット酸,無水ピロメリット酸等が
あり、1種又は2種以上が混合して使用される。多価ア
ルコールと多塩基酸のなかでも、ネオペンチルグリコー
ル及び1,6-ヘキサンジオールを主体とした多価アルコー
ルとシクロヘキサンジカルボン酸を主体とした多塩基酸
からなるポリエステルポリオールが加工性及び耐候性の
観点から好ましい。
【0017】ポリイソシアネートとしては、トリレンジ
イソシアネート,4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネ
ート,キシレンジイソシアネート,ヘキサメチレンジイ
ソシアネート,ジシクロヘキシルメタンジイソシアネー
ト,メチルシクロヘキサンジイソシアネート,イソホロ
ンジイソシアネート等がある。これらポリイソシアネー
トは、プレポリマ,アダクト,ビウレット,イソシアヌ
レート体等としても使用できる。ポリイソシアネート
は、フェノール,クレゾール等のフェノール類、ε−カ
プロラクタム等のラクタム類、ホルムアミドオキシム,
メチルエチルケトオキシム等のオキシム類、マロン酸ジ
メチル,アセト酢酸エチル等の活性メチレン類でブロッ
ク化したものが好ましい。
【0018】この組合せにより加工性,耐疵付き性及び
耐候性に優れたウレタン樹脂塗膜を形成できる。ポリエ
ステルポリオール及びポリイソシアネートは、それぞれ
1種の組合せ又は2種以上の併用の何れでもよい。上塗
り塗膜の軟化開始温度は、ポリエステルポリオールを構
成する多価アルコールとジカルボン酸の種類及び配合割
合、ポリイソシアネートの種類及び配合量によって調整
できる。上塗り塗膜は、10〜50μmの膜厚で形成す
ることが好ましい。加工性と耐疵付き性とをバランスさ
せるためには、15〜40μmの範囲がより好ましい。
薄すぎる膜厚では耐疵付き性が不充分となり、厚すぎる
膜厚はコスト上昇及び加工性低下の原因になる。
【0019】上塗り塗料には、従来の塗装鋼板で使用さ
れている各種添加剤を配合できる。たとえば、着色顔
料、メタリック顔料、体質顔料、シリカ等の艶消し剤、
ガラスビーズ,ガラス繊維,ガラスフレーク,アクリル
ビーズ,ポリアクリロニトリルビーズ,ナイロンビーズ
等の骨材、ポリオレフィン系,フッ素樹脂系等のワック
スを上塗り塗料に配合してもよい。以上の下塗り塗膜及
び上塗り塗膜は、従来の塗装鋼板と同様の方法で製造で
きる。具体的には、塗装前処理した下地鋼板にロールコ
ータ,カーテンコータ等の常法で下塗り塗料を塗布し、
190〜240℃で焼き付ける。次いで、同様に上塗り
塗料を塗布し、200〜250℃で焼き付けることによ
り、目標とする塗膜が形成される。
【0020】
【実施例】板厚0.5mm,めっき付着量両面150g
/m2(付着量規格 AZ150)の溶融55%Al−
Zn合金めっき鋼板をアルカリ脱脂した後、Cr換算付
着量が40mg/m2となるように塗布型クロメート処
理を施すことにより塗装原板を用意した。
【0021】(本発明例1〜3)防錆顔料としてストロ
ンチウムクロメートを配合したビスフェノール型エポキ
シ樹脂プライマ塗料を塗布し、最高到達板温215℃で
焼き付けた。形成された下塗り塗膜は、乾燥膜厚が5μ
m,軟化開始温度が75℃であった。下塗り塗膜が形成
された塗装原板にウレタン樹脂塗料を塗布し、最高到達
板温240℃で焼き付けることにより、乾燥膜厚30μ
mの上塗り塗膜を形成した。ウレタン樹脂塗料として
は、ネオペンチルグリコール及び1,6-ヘキサンジオール
を主体とする多価アルコールとシクロヘキサンジカルボ
ン酸を主体とする多塩基酸からなるポリエステルポリオ
ールとヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシア
ネートからなる樹脂を使用した。また、黒色に調色する
ため、カーボンブラックをウレタン樹脂塗料に配合し
た。ネオペンチルグリコール及び1,6-ヘキサンジオール
の配合割合を変えることにより上塗り塗膜の軟化開始温
度を、本発明例1では20℃に、本発明例2では10℃
に、本発明例3では5℃に調整した。
【0022】(比較例1)防錆顔料としてストロンチウ
ムクロメートを配合したポリエステル樹脂プライマ塗料
を塗装原板に塗布し、最高到達板温220℃で焼き付け
ることにより、乾燥膜厚5μm,軟化開始温度20℃の
下塗り塗膜を形成した。次いで、本発明例2と同様にし
て、膜厚30μm,軟化開始温度10℃のウレタン樹脂
上塗り塗膜を設けた。
【0023】(比較例2)本発明例1〜3と同様のプラ
イマを設けた後、ネオペンチルグリコール及び1,6-ヘキ
サンジオールを主体とした多価アルコールとシクロヘキ
サンジカルボン酸を主体とした多塩基酸からなるポリエ
ステルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネート系
ポリイソシアネートからなるウレタン樹脂塗料を塗布
し、最高到達板温240℃で焼き付けることにより乾燥
膜厚30μmの上塗り塗膜を形成した。上塗り塗膜の軟
化開始温度は、ネオペンチルグリコールと1,6-ヘキサン
ジオールとの配合割合を変えることにより40℃に調整
した。
【0024】(比較例3)本発明例1〜3と同様なプラ
イマ層を形成した後、ネオペンチルグリコールを主体と
する多価アルコールとフタル酸を主体とする多塩基酸か
らなるポリエステルポリオールとメラミン樹脂からなる
ポリエステル系樹脂塗料を塗布し、最高到達板温225
℃で焼き付けることにより乾燥膜厚20μmの上塗り塗
膜を形成した。上塗り塗膜の軟化開始温度は50℃であ
った。
【0025】各塗装鋼板から試験片を切り出し、軟化開
始温度を測定すると共に、加工性及び耐疵付き性を調査
した。軟化開始温度の測定には、フッ素樹脂被覆した鋼
板に本発明例1〜3及び比較例1〜3の各塗膜を形成し
た塗装鋼板から塗膜をはがして作製された試験片を使用
した。塗膜を所定サイズに切断し、動的粘弾性測定装置
を用いて周波数10Hz,昇温速度3℃/分で貯蔵弾性
率E'の変化を測定した。そして、貯蔵弾性率E'の減少
率ΔlogE'が0.01℃-1に達した時点を軟化開始温度
と判定した。
【0026】加工性試験では、塗装鋼板の塗膜面を外側
にして5℃及び20℃で180度折曲げ試験し、曲げ部
の塗膜に生じたクラックの有無を10倍ルーペで観察し
た。加工性評価用塗装鋼板と同一の板を内側に挟んで1
80度折り曲げ試験し、塗膜にクラックが入らなくなる
ときに塗装鋼板に挟まれた鋼板の最小枚数nをノークラ
ック限界とし、nTノークラックで加工性を評価した。
一般的には、3Tノークラック以上であれば、加工性良
好と判定される。耐疵付き性試験では、荷重をかけた先
端直径125μmのダイヤモンド針を10cm/秒の速
度で塗膜面に摺擦させることにより塗膜面を引っ掻い
た。摺擦によって生じた塗膜面の疵を10倍ルーペで観
察し、疵が下地鋼板に達しない最大荷重を引掻き耐荷重
と判定した。一般的には、引掻き耐荷重が400g以上
であれば、耐疵付き性良好と扱われる。
【0027】表1の試験結果にみられるように、塗膜の
軟化開始温度を下塗り塗膜で30℃以上,上塗り塗膜で
30℃以下に調整した本発明例1〜3の塗装鋼板は、何
れも加工性及び耐疵付き性に優れていた。これに対し、
下塗り塗膜の軟化開始温度が30℃未満の比較例1で
は、加工性は満足するものの耐疵付き性に劣っていた。
また、上塗り塗膜の軟化開始温度が30℃を超える比較
例2,3では、加工性が低下していた。この対比から明
らかなように、下塗り塗膜の軟化開始温度を30℃以
上,上塗り塗膜の軟化開始温度を30℃以下とすること
により、加工性及び耐疵付き性をバランスさせた塗装鋼
板が得られることが確認される。また,塗膜に導入され
る疵等の欠陥が少ないため、欠陥部を起点とする腐食の
発生・進行が抑制され、耐候性も優れた塗装鋼板であっ
た。
【0028】
【0029】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の塗装鋼
板は、軟化開始温度を30℃以上とした下塗り塗膜で成
形加工時等の際に加わる外部応力に耐える強度を塗膜に
付与し、軟化開始温度を30℃以下とした上塗り塗膜で
外部応力の吸収,緩和を図っている。そのため、複雑形
状に成形加工した状態でも塗膜に発生する疵が少なく、
疵を起点とする発錆も抑えられるため,耐久性に優れた
塗装鋼板として使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 塗膜の温度−貯蔵弾性率曲線を示すグラフ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C09D 163/00 C09D 163/00 175/06 175/06 201/00 201/00 C23C 28/00 C23C 28/00 C (72)発明者 松原 和美 千葉県市川市高谷新町7番1号 日新製鋼 株式会社技術研究所内 (72)発明者 公文 史城 千葉県市川市高谷新町7番1号 日新製鋼 株式会社技術研究所内 (72)発明者 菅原 和良 千葉県市川市高谷新町7番1号 日新製鋼 株式会社技術研究所内 Fターム(参考) 4D075 AE03 CA02 CA13 CA32 CA33 DA06 DB02 DB04 DB05 DB07 DC01 DC10 DC38 EB32 EB33 EB38 EB45 EB53 4F100 AA37 AB03A AB31 AK51C AK53B BA03 BA07 BA10A BA10C CA13 EH46 EJ01 EJ08 EJ48 GB07 JA04B JA04C JK14 JL01 JL09 YY00B YY00C 4J038 DB061 DB071 DB471 DG111 DG261 KA03 MA13 NA11 NA23 PB03 PB05 PC02 4K044 AA02 AB02 BA10 BA12 BA14 BA15 BA17 BA21 BB03 BB04 BB05 BB11 BB16 BC02 BC05 BC06 CA11 CA16 CA18 CA53

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 軟化開始温度が30℃以上の下塗り塗膜
    及び軟化開始温度が30℃以下の上塗り塗膜が鋼板表面
    に積層されていることを特徴とする加工性及び耐疵付き
    性に優れた塗装鋼板。
  2. 【請求項2】 エポキシ樹脂を樹脂ベースとする塗料で
    下塗り塗膜が形成されている請求項1記載の塗装鋼板。
  3. 【請求項3】 ネオペンチルグリコール及び1,6-ヘキサ
    ンジオールを主体とする多価アルコールとシクロヘキサ
    ンジカルボン酸を主体とする多塩基酸からなるポリエス
    テルポリオールとポリイソシアネートとの反応生成物で
    あるウレタン樹脂を樹脂ベースとする塗料で上塗り塗膜
    が形成されている請求項1記載の塗装鋼板。
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