JP3875985B2 - 耐傷付け性プレコート金属板 - Google Patents
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前記化成皮膜の一方の上に形成した塗膜であって、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂及びアクリル系樹脂から成る群から選択される少なくとも1種のベース樹脂と;フッ素系樹脂ビーズ及びウレタン系樹脂ビーズの少なくとも1種の樹脂ビーズと;カルナウバワックス、ポリエチレンワックス及びマイクロクリスタリンワックスから成る群から選択される少なくとも1種の潤滑剤と;を含有する塗膜とを備え、
前記塗膜の算術平均粗さRaが1.3〜6.2μmであり、輪郭曲線要素の平均長さRSmが316〜550μmであり、前記塗膜表面における動摩擦係数Kfが0.20以下であり、
前記樹脂ビーズの平均粒径Pdが10〜100μmであり、かつ、当該樹脂ビーズが前記塗膜のベース樹脂に対して2〜12重量%含有され、
前記カルナウバワックス、ポリエチレンワックス及びマイクロクリスタリンワックスから成る群から選択される少なくとも1種の潤滑剤が、前記塗膜のベース樹脂に対して0.2〜10重量%含有されることを特徴とする耐傷付け性プレコート金属板とした。
本発明において用いる金属は、電気機器や電子機器の部品の筐体を形成するのに十分な強度を有し、かつ、十分な成形加工性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、純アルミニウム、5000系アルミニウム合金等のアルミニウム合金、亜鉛メッキ鋼、ステンレス鋼が好ましい。
プレス成形等の成形加工後に筐体内面となる面の凸部にプレコーティング層を形成するには、まず、成形加工前の金属板上に化成皮膜が設けられる。このような化成皮膜は、金属板の表面と塗膜との間に介在して両者の密着性を高めるものであれば特に限定されるものでない。例えば、アルミニウム合金には、安価で浴液管理が容易なリン酸クロメート処理液で形成される化成皮膜や、処理液成分の変化が無く水洗を必要としない塗布型ジルコニウム処理で形成される化成皮膜を用いることができる。このような化成処理は、アルミニウム合金板に所定の化成処理液をスプレーしたり、合金板を処理液中に所定の温度で所定時間浸漬することによって施される。亜鉛メッキ鋼やステンレス鋼には、クロメート処理の他に、リン酸塩処理液で形成される化成皮膜も用いることができる。
次いで、前記化成皮膜上に塗膜が形成される。塗膜は、ポリエステル系樹脂等のベース樹脂、特定種類と特定の平均粒径を有する樹脂ビーズ、さらに、特定の潤滑剤を必須成分として含有させ、樹脂ビーズの添加量を限定し、適当な溶剤にこれらを溶解又は分散した塗料を特定の塗膜厚さになるように焼付け塗装して形成される。一方、特定の樹脂と樹脂ビーズと潤滑剤との混合物を、溶剤を用いないで粉体塗装して塗膜を形成してもよい。
このようにして得られる塗膜は、非柔軟性樹脂から成るベース樹脂と、柔軟性樹脂から成るビーズとの組合せを採用し、かつ、塗膜の表面物理特性として、算術平均粗さRa、輪郭曲線要素の平均長さRSm及び動摩擦係数Kfを所定範囲に設定したことに特徴を有する。ここで、輪郭曲線要素の平均長さRSmは、算術平均値である。
なお、金属板の両面上に上記化成皮膜を設けて、一方の化成皮膜上にこのような塗膜を形成する。
塗膜の表面物理特性に関して、Raが1.3〜6.2μmであり、RSmが316〜550μmであり、かつ、Kfが0.20以下となるようにした。図1に模式的に示すように、塗膜の表面粗さRは、樹脂ビーズが存在しない塗膜表面からビーズにより突出した部分までの高さとして表わされる。また、図1に模式的に示すように、輪郭曲線要素の離間距離RSは、ビーズによる突出部分間の間隔を表わすものである。Ra及びRSmの測定値は、JIS B0601に従ったもので、膜厚のバラツキ等も含んでいるが、主として、膜厚とビーズの添加量、ビーズの粒径によって決まる。よって、RaはRの平均値として、RSmはRSの平均値と考えることができる。また、Kfの測定値は、バウデン試験機で測定される動摩擦係数であり、ベース樹脂の種類、Ra、RSm、潤滑剤の種類と含有量、ビーズの含有量、塗膜厚さ等によって決まる特性である。Ra、RSm及びKfを上記の数値範囲内に設定することにより、良好な耐傷付け性が得られる。
塗膜厚さは、樹脂ビーズの存在しない部分において5〜30μmであることが好ましい。5μm未満であると成形加工時に樹脂ビーズの脱落が生じ易くなるからである。一方、30μmを超えると、樹脂ビーズが存在しない塗膜表面と光ディスクが接触し易くなるからである。
なお、塗膜厚さと後述のビーズ平均粒径Pdとの関係は、塗膜厚さ:Pd=1:2.0〜1:3.5であるのが好ましい。
ベース樹脂としては、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂から成る群から選択される1種以上が用いられる。すなわち、これらの樹脂は単独で、又は2種以上を混合して用いられる。これらの樹脂は、ウレタン樹脂等の柔軟性樹脂と比べて非柔軟性であるため、光ディスク等の被接触物と塗膜が接触した際における塗膜の変形が低減されて塗膜と光ディスク等の被接触物との接触面積を低減し、その結果、耐傷付け性を向上することができる。
なお、焼付け硬化型エポキシ樹脂や2液硬化型エポキシ樹脂の他に、乾性油脂肪酸にエポキシ樹脂を反応させたエステル化合物を用いたエポキシエステル樹脂や、エポキシ樹脂の末端にメタクリル酸メチルを結合させてスチレンなどと共重合させたビニルエステルも用いることができる。
プレス成形後に得られる凸部の塗膜は一般に成形前より伸張して薄くなり、塗膜が変形し難くなる。したがって、光ディスクと接触した際にも変形が発生し難いので、接触面積の増加防止という観点からは塗膜の伸張薄膜化は有利に作用する。しかしながら、凸部における塗膜の伸張による薄膜化のみでは、光ディスクに対する十分な耐傷付け性が得られない。そこで、塗膜に樹脂ビーズを含有させることによって、光ディスクが接触した際に柔軟性に富む樹脂ビーズを弾性変形させて、接触による衝撃を和らげる緩衝効果を発揮させるようにした。これにより、光ディスクに対する耐傷付け性が向上する。
このような樹脂ビーズは塗膜表面から上方に突出するために、無添加の場合と比べて、光ディスク等の被接触物と塗膜表面の接触面積を低減することができる。その結果、光ディスクが塗膜表面に接触する際の滑り性が向上して、光ディスクへの耐傷付け性を高めることができる。しかしながら、硬度の高いアクリルビーズを添加しても光ディスクに傷が付き問題になる。これに対し、潤滑性に富むフッ素系樹脂ビーズ及び柔軟性に富むウレタン系樹脂ビーズの少なくとも1種の樹脂ビーズを含有させることによって、十分な耐傷付け性を得ることができる。
なお、第2発明で用いるフッ素系樹脂はビーズ状であり、上記特許文献1において加えられるフッ素樹脂粉末に比べてベース樹脂に対する分散性が良好である。したがって、ビーズ状のフッ素系樹脂は粉末状のフッ素系樹脂に比べて、滑り性にムラが生じ難い利点がある。
潤滑剤としては、カルナウバワックス、ポリエチレンワックス及びマイクロクリスタリンワックスから成る群から選択される少なくとも1種が用いられる。カルナウバワックスは、高級脂肪酸エステルを主成分とする植物ロウであり、78〜86℃の融点を有する。ポリエチレンワックスは、分子量が600〜12000であり105〜140℃の融点を有するものや、パラフィン(50〜75℃程度の融点)とポリエチレン(110〜130℃程度)の中間的な融点を有するものが用いられる。マイクロクリスタリンワックスは、石油成分から得られる結晶性の細かいロウでパラフィンより高融点であり、例えば分子量が600〜900で60〜93℃の融点を有するものが用いられる。
また、本発明で用いる塗料には、塗装性及びプレコート材としての一般的性能を確保するために通常の塗料において用いられる、顔料、顔料分散剤、流動性調節剤、レベリング剤、ワキ防止剤、防腐剤、安定化剤等を適宜添加してもよい。
ベース樹脂、樹脂ビーズ及び潤滑剤を必須成分とし、これに上記添加剤を適宜加え、適当な溶剤にこれらを溶解又は分散した塗料を、ロールコーターによって化成皮膜(後述の下塗り層が存在する場合には、下塗り層)上に直接塗布し、所定温度のオーブン中で所定時間処理して焼付け乾燥する。溶剤としては、ベンゼン、トルエン、メチルアルコール、エチルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブ、ブチルセロソルブ、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、イソホロン、イソブチルアルコール、キシレン、エチルベンゼン、メチルエチルケトン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテルなどが用いられる。なお、ロールコーターに代えてエアスプレーやバーコーター等によって塗料を塗布してもよい。
前記化成皮膜と塗膜との間に、両者の密着性を高めるための下塗り層を設けてもよい。このような下塗り層は、化成皮膜と塗膜との密着性に優れ、かつ、成形加工性に優れるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、塗膜を構成するベース樹脂と相溶性の良い樹脂を含有する塗料を焼き付け塗装したものを用いることができる。下塗り層の樹脂としては、塗膜のベース樹脂と同じものを用いるのが好ましい。なお、下塗り層の膜厚は、3〜15μm、好ましくは5〜10μmである。
また、下塗り層を複層から構成したり、或いは、下塗り層と塗膜との間に単層又は複層から成る他の塗膜を設けてもよい。
このような下塗り層は、ロールコーター、エアスプレー、バーコーター等によって化成皮膜上に直接塗布し、所定温度のオーブン中で所定時間処理して焼付け乾燥される。
成形後に筐体外面となる面であって、上記塗膜とは反対側の外面に導電性樹脂皮膜を更に設けた構成のプレコート金属板としてもよい。この場合には、上記塗膜とは反対側の外面となる金属板上に化成皮膜を設け、その上に導電性樹脂皮膜を形成するものである。導電性樹脂皮膜の導電性は、四端子法により銀製のプローブ(直径5mm、先端2.5mmRのものを使用して)を荷重100gで接触させた時の電気抵抗値Erを10Ω以下とするものである。Erが10Ωを超えると、筐体外面に必要なアース性や磁気シールド性などの電気特性を十分に確保することができないからである。このような導電性皮膜の厚さは、0.3〜5μmとするのが好ましい。
成形後に筐体外面となる面であって、上記塗膜とは反対側の外面に、上記導電性樹脂皮膜に代えて導電性かつ放熱性の樹脂皮膜を設けた構成のプレコート金属板としてもよい。この場合には、上記塗膜とは反対側の外面となる金属板上に化成皮膜を設け、その上に導電性と放熱性を両立した樹脂皮膜を形成するものである。
実施例1〜15及び比較例1〜9
アルミニウム合金板(材質:JIS A5052、板厚:0.6mm)の両面を、市販のアルミニウム用脱脂剤にて脱脂処理を行い、水洗後に、市販のリン酸クロメート処理液により両面を化成処理した。次いで、一方の化成処理面Aに導電性樹脂皮膜用塗料(エポキシ系樹脂にニッケルフィラーとマイクロクリスタリンワックスを混合した塗料)を、バーコーターで塗装し、焼付けした。一方、他の化成処理面Bには、ポリエステル系樹脂からなる下塗り塗料をバーコーターで塗装し、焼付けし、塗膜厚を10μmに調整した。次いで表1に示すベース樹脂、樹脂ビーズ及び潤滑剤を含む塗料を下塗り層上にバーコーターで塗装し、焼付けした。焼付け温度は、最高到達板温度(PMT)200〜240℃であった。
実施例1〜15及び比較例1〜9の条件を表1に示す。
光ディスクを用いた耐傷付け試験を、バウデン式摩擦試験機を使用して行なった。耐傷付け性試験において、試験片と光ディスクの位置関係を模式的に図2に示す。図2において、7は試験片、8は光ディスク、9は架台である。試験片7は、プレコートアルミニウム合金板のB面をエリクセン試験機で4mm張り出して作製した。その試験片に荷重100gを負荷して光ディスクに接触させて、速度40mm/分で20回摺動した。各塗装条件ごとに3つの試験片での測定を行った。
塗膜の表面粗さは、JIS B0601に基づいて、表面粗さR及び輪郭曲線要素の離間距離RSをそれぞれ測定し、Rの算術平均値としてRaを、RSの算術平均値としてRSmをそれぞれ評価した。
塗膜の潤滑性は、バウデン試験機を用いて、荷重500gで 3/16インチの鋼球を正転1回移動させたときの動摩擦係数Kfを測定して評価した。Kfが小さいほど潤滑性が高いことを示す。
曲げ加工性は、JIS Z2248に基づいて、アルミニウム合金板のB面を外側にして素板を2枚挟んで(合計厚さ1.6mm)180度曲げ、目視で曲げ部外観を観察した。塗膜割れが観察されなかった場合を合格とした。
比較例2及び3は、ウレタン系樹脂ビーズ及びフッ素系樹脂ビーズとは異なる樹脂ビーズを添加したために、耐光ディスク傷付け性が劣っていた。
比較例4は、潤滑剤が塗膜に含有されていないために、耐光ディスク傷付け性が劣っていた。
比較例5は、RSmが550μmを超えたために、耐光ディスク傷付け性が劣っていた。
比較例6は、Raが6.2μmを超えたため、耐光ディスク傷付け性が劣っていた。
比較例7は、Raが1.3μm未満であり、RSmが316μm未満であったため、耐光ディスク傷付け性が劣っていた。
比較例8及び9は、ベース樹脂として柔軟性のウレタン系樹脂を用い、潤滑剤としてポリテトラフルオロエチレンを用いたために、耐光ディスク傷付け性が劣っていた。
2 化成皮膜
3 金属板
4 下塗り層
5 塗膜
6 樹脂ビーズ
7 試験片
8 光ディスク
9 架台
R 表面粗さ
RS 輪郭曲線要素の離間距離
Claims (3)
- 金属板の両面に形成した化成皮膜と、
前記化成皮膜の一方の上に形成した塗膜であって、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂及びアクリル系樹脂から成る群から選択される少なくとも1種のベース樹脂と;フッ素系樹脂ビーズ及びウレタン系樹脂ビーズの少なくとも1種の樹脂ビーズと;カルナウバワックス、ポリエチレンワックス及びマイクロクリスタリンワックスから成る群から選択される少なくとも1種の潤滑剤と;を含有する塗膜とを備え、
前記塗膜の算術平均粗さRaが1.3〜6.2μmであり、輪郭曲線要素の平均長さRSmが316〜550μmであり、前記塗膜表面における動摩擦係数Kfが0.20以下であり、
前記樹脂ビーズの平均粒径Pdが10〜100μmであり、かつ、当該樹脂ビーズが前記塗膜のベース樹脂に対して2〜12重量%含有され、
前記カルナウバワックス、ポリエチレンワックス及びマイクロクリスタリンワックスから成る群から選択される少なくとも1種の潤滑剤が、前記塗膜のベース樹脂に対して0.2〜10重量%含有される、ことを特徴とする耐傷付け性プレコート金属板。 - 前記化成皮膜の他方の上に形成した導電性樹脂皮膜であって、四端子法により銀製プローブを接触荷重100gで接触させた時の電気抵抗値Erが10Ω以下の導電性樹脂皮膜を更に備える、請求項1に記載の耐傷付け性プレコート金属板。
- 前記化成皮膜の他方の上に形成した樹脂皮膜であって、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂から成る群から選択される少なくとも1種のベース樹脂と;少なくともグラファイトを含む放熱材と;少なくともニッケル粉末を含む導電材と;を含有する放熱性かつ導電性の樹脂皮膜を更に備える、請求項1に記載の耐傷付け性プレコート金属板。
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