JP2010005545A - 電子電気機器用プレコート金属板 - Google Patents

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武廣 小澤
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Abstract

【課題】 液晶テレビ、パソコン、DVDプレーヤー等の電気機器や電子機器の筐体に用いられる電子電気機器用プレコート金属板を提供する。
【解決手段】
算術平均粗さRaが0.1〜0.6μmであり、Ra以上の山の個数が1mmあたりに19個以上781個以下である金属板の両面に化成皮膜を形成し、片面に、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂及びアクリル系樹脂の1種以上からなり、皮膜厚が0.4〜2.0μm、平均粒径1〜10μmとなるウレタンビーズ、フッ素樹脂ビーズを1種以上を3〜20重量%配合した樹脂皮膜を形成し、前記面と反対面に、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂及びアクリル系樹脂の1種以上からなり、皮膜厚は0.2〜2.0μm、平均粒径0.1〜6.0μmとなるウレタンビーズ、フッ素樹脂ビーズを1種以上を1〜5重量%配合した樹脂皮膜を形成した。
【選択図】なし

Description

本発明は、液晶テレビ、パソコン、DVDプレーヤー等の電気機器や電子機器の筐体に用いられる電子電気機器用プレコート金属板に関する。
近年、電気機器や電子機器の筐体や光ディスクの開発が進み、ドライブのさらなる省スペース化を可能にしたスロットローディング方式が普及し始めている。スロットローディング方式では、CD−RやDVD−Rなどの光ディスクを直接押し込むだけで、自動的にドライブ内に光ディスクが引き込まれる。従来のトレイローディング方式と比較して、トレイを引き出す必要がないために省スペース化が可能であり、又、光ディスクのロードやアンロードがスムーズになるので使い勝手が良くなる。
スロットローディング方式はトレイローディング方式と比較して、光ディスクに傷が付き易い。トレイローディング方式では、引き出したトレイの上に光ディスクを固定したまま、ロード及びアンロードを行うために、光ディスクに傷が付き難い。スロットローディング方式では、次のような場合に光ディスクに傷がつくことがある。

1.光ディスクとドライブ内面間の間隔が狭く、光ディスク自身の厚さ精度や光ディスクの運転時の撓み等で光ディスクとドライブ内面が衝突する場合。

2.光ディスクの再生中又はこれに記録中にドライブに不慮の衝撃が加わると、光ディスクとドライブ内面が接触する場合。

3.投入状態によっては、光ディスクが傾けられて挿入されることがあり、光ディスクとドライブ内面が接触する場合。
様々な種類の光ディスクが開発されているが、光ディスク表面に僅かに傷が付いただけでも、記録の再生、書き込みに悪影響を及ぼすものがある。そのため、光ディスクとドライブ内面の接触によって光ディスクに傷が付くと、光ディスクを使用することができなくなるという不都合があった。このような傷を防止するために、特許文献1、特許文献2に記載の発明が開示されている。
又、スロットローディング方式の場合、人の手によってディスクをスロットから差し込み装置内部へ挿入するため、人体に帯電された静電気がディスクを持つ手から流れ、静電気がディスクを介してドライブ内に放電される可能性がある。静電気放電によってディスク装置内の電子部品やディスクの記録領域が破壊されて、情報の記録、再生時にエラーの発生などの不具合が生じるという問題が生じる場合がある。

特開2007−98636号公報 特開2007−98864号公報
しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示されたプレコート金属板では、ドライブ内面に必要な導電性を確保できないという不都合があった。プレコート金属板に導電性を付与する為に、樹脂皮膜に金属微粒子を添加する事が一般的である。しかしながら、金属微粒子と光ディスクが接触すると、光ディスクに傷がつき問題となる。その為、導電性と耐傷つけ性を両立する事は困難な技術課題である。又、金属微粒子のうち、特に、Niフィラーを添加すると、接触腐食がおきて、耐食性が劣る場合があった。
本発明は、耐食性と導電性に優れた電子電気機器用プレコート金属板の提供を目的とする。
上記課題を解決するために本発明は以下の構成を有する。
すなわち、算術平均粗さRaが0.1〜0.6μmであり、Ra以上の山の個数が1mmあたりに19個以上781個以下である金属板の両面に形成した化成皮膜と、該化成皮膜の一方の上に、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂及びアクリル系樹脂から成る群から選択される1種以上のベース樹脂a1に、フッ素樹脂ビーズ、ウレタンビーズから成る群から選択される1種以上の樹脂ビーズa2を含有する樹脂皮膜Aとを備え、該樹脂ビーズa2の平均粒径a3は1〜10μmであり、該樹脂ビーズa2の配合量a4は3〜20重量%であり、該樹脂皮膜Aの皮膜厚αは0.4〜2.0μmであり、さらに樹脂皮膜Aの反対面に樹脂皮膜Bを設け、該樹脂皮膜Bはポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂及びアクリル系樹脂から成る群から選択される1種以上のベース樹脂b1に、ウレタンビーズ、フッ素樹脂ビーズから成る群から選択される1種以上の樹脂ビーズb2を含有し、該樹脂ビーズb2の平均粒径b3は0.1〜6.0μmであり、該樹脂ビーズb2の配合量b4は1〜5重量%であり、該樹脂皮膜Bの皮膜厚βは0.2〜2.0μmとした。であることを特徴とする電子電気機器用プレコート金属板とした。
また、該樹脂ビーズa2の配合量a4と該樹脂ビーズb2の配合量b4の比が1〜18であることを特徴とする請求項1に記載の電子電気機器用プレコート金属板とした。
本発明のプレコート金属板の導電性は、樹脂皮膜下層の金属板表面の山の部分が樹脂皮膜表面に露出する事により発現するものであり、一方、耐傷付け性は、特定の樹脂と樹脂ビーズを用い、樹脂ビーズの平均粒径と配合量、さらに皮膜厚を所定の範囲とする事により、回避できないドライブ内面と光ディスクの接触に対して、樹脂皮膜表面の樹脂ビーズと光ディスクが接触することで、ウレタンビーズの弾性変形により光ディスクへの衝撃を和らげ、樹脂ビーズ先端より樹脂皮膜表面との近くにある、樹脂皮膜表面から露出した金属板表面の山と光ディスクとの接触を防ぐことhで発現する。その為、本発明では、素材の表面粗度、特定の樹脂ビーズの配合量、皮膜厚を所定の範囲に限定する事により、導電性に優れた耐傷付け性プレコート金属板とする事ができる。
更に、金属板における樹脂皮膜Aとは反対側の面に、特定の樹脂と樹脂ビーズからなる樹脂皮膜Bを備えるので、ドライブ外面を電磁シールドしたり、アース接地したりすることが可能となる。又、樹脂皮膜B中に金属微粒子が添加されていないので、塗装後に輸送中や保管中に金属微粒子が樹脂皮膜Aに転写される可能性がなくなり、樹脂皮膜Aの傷付け性は劣化しない。
(1)金属板
本発明において用いる金属は、電気機器や電子機器の部品のドライブを形成するのに十分な強度を有し、かつ、十分な成形加工性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、純アルミニウム、5000系アルミニウム合金等のアルミニウム合金、溶融亜鉛めっき鋼、溶融亜鉛−アルミニウム系合金鋼が好ましい。
本発明にあっては、金属板表面の算術平均粗さRaは0.1〜0.6μmである。算術平均粗さRaが0.1μm未満であると、樹脂皮膜が被覆されていない化成皮膜の割合が少なく、未導通部が分布する為、導電性が劣る。一方、算術平均粗さRaが0.6μmを超えると、樹脂皮膜から露出する化成皮膜の割合が多くなる為、導電性は良好であるが、耐傷付け性や耐傷付き性が劣る。
金属板表面の算術平均粗さRa以上の山の個数が1mmあたりに19個以上781個以下である。山の数が19個未満であると、金属板表面の山の部分の露出が少ない為、導電性が劣る。山の数が781個を超えると、導電性は優れるが、耐傷付け性や耐傷付き性が劣る。
本発明を実施するに当たり、金属板の表面形状は、例えば、レーザーテック(株)製コンフォーカル顕微鏡HD100を用いて測定する。対物レンズ50倍で金属板表面の3次元像を測定し、任意に選んだ322μm角の面積の中で、最も高い山の部分を通り、圧延方向に対して直角方向の一の直線における算術平均粗さRaを測定する。前述した322μm角の面積について、Ra以上の高さの山のみからなる3次元像を得て、その画像に存在する山の個数を計測し、1mm当りの個数に換算する。この際にメディアンフィルターのフィルターサイズは5*5に設定する。5回測定し、Raと1mm当りの山の個数に関して平均値を算出する。他の測定方法によって、算術平均粗さRa以上の山の個数を求めてもよい。
金属板表面において、算術平均粗さRaが0.1μm〜0.6μmの範囲にあり、算術平均粗さRa以上の山の個数が1mmあたりに19個以上781個以下となるように、冷間圧延工程における最終パスの圧延ロールの表面粗度と圧下率、圧延油の粘性を以下の通りに調整する。圧延ロール表面の算術平均粗さは0.1μm〜0.7μmである。又、圧下率は10〜55%である。圧延油の粘性は1.0〜9.0cStである。好ましくは3.0〜6.0cStである。金属板の表面形状は主に圧延ロールの表面形状の影響を受け、その他にやオイルピットの形状や分布状態の影響を受ける。オイルピットは圧延時にロールと素材との間に圧延油が巻き込まれ、素材表面が油圧によって局部的に凹状になる現象である。圧延ロール表面の中心線平均粗さが小さい程、ロールと素材との間における圧延油の巻き込み量が少なくなりオイルピットの発生を抑えることができる。逆に、圧延ロ―ル表面の中心線平均粗さが大きい程、オイルピットの発生を助長する。又、圧延ロール表面の凹凸が圧延板に転写されるので、板表面の凹凸が顕著になる。
一方、圧下率が小さい程、ロールと素材との間における圧延油の巻き込み量が多くなり、オイルピットの発生を助長する。逆に、圧下率が大きい程、オイルピットの発生を抑制する。
さらに、圧延油の粘度が小さいほど、冷間圧延時に圧延油が濡れ広がるため、オイルピットの発生を抑制する。逆に圧延油の粘度が大きいほど、冷間圧延時に圧延油が濡れ広がりにくい為、オイルピットの発生を助長する。
圧延ロール表面の算術平均粗さが0.1μm未満で、かつ圧下率が55%を超えると、オイルピットの発生が少なく、金属板表面の算術平均粗さRaは0.1μm未満となり、Ra以上の山の個数が1mmあたりに19個未満となる。一方、圧延ロール表面の算術平均粗さが0.7μmを超え、かつ圧下率が15%未満では、オイルピットの発生が多く、圧延ロール表面の凹凸が圧延板に転写されるので、金属板表面の算術平均粗さ算術平均粗さRaは0.6μmを超え、Ra以上の山の個数が1mmあたりに781個を超えることになる。なお、圧延ロールの表面形状を調整する方法としては、研磨あるいはショットブラスト、放電加工、レーザー加工等が挙げられる。
(2)化成皮膜
化成皮膜は、金属板の表面と樹脂皮膜膜との間に介在して両者の密着性を高めるものであれば特に限定されるものでない。例えば、アルミニウム合金には、安価で浴液管理が容易なりん酸クロメート処理液で形成される化成皮膜や、処理液成分の変化が無く水洗を必要としない塗布型ジルコニウム処理で形成される化成皮膜を用いることができる。このような化成処理は、アルミニウム合金板に所定の化成処理液をスプレーしたり、合金板を処理液中に所定の温度で所定時間浸漬したりすることによって施される。溶融亜鉛めっき鋼や溶融亜鉛−アルミニウム系合金鋼には、クロメート処理の他にリン酸塩処理液で形成される化成皮膜も用いることができる。なお、化成処理を行なう前に、金属板表面の汚れを除去したり表面性状を調整したりするために、金属板を、硫酸、硝酸、リン酸等による酸処理(洗浄)、或いは、カセイソーダ、リン酸ソーダ、ケイ酸ソーダ等によるアルカリ処理(洗浄)を行なうことが望ましい。このような洗浄による表面処理も、金属板に所定の表面処理液をスプレーしたり、金属板を処理液中に所定温度で所定時間浸漬したりすることによって施される。
(3)樹脂皮膜A
次いで、前記化成皮膜上に樹脂皮膜Aが形成される。樹脂皮膜Aは、ベース樹脂a1、樹脂ビーズa2を必須成分として含有させ、適当な溶剤にこれらを溶解又は分散した塗料を焼付け塗装して形成される。
(3−1)皮膜厚α
樹脂皮膜Aの皮膜厚αは、樹脂ビーズの存在しない部分において、0.4〜2.0μmとなるようにした。0.4μm未満であると、金属板の山の部分が樹脂皮膜表面から露出する割合が多くなる為、導電性は良好であるが耐傷付け性が劣る。一方、2.0μmを超えると、金属板の山の部分が樹脂皮膜表面から露出する割合が小さくなり,導電性が劣る。
(3−2)ベース樹脂a1
ベース樹脂a1としては、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂から成る群から選択される少なくとも1種、すなわち、これらの樹脂の1種または2種以上が用いられる。これらの樹脂は、光ディスク等の被接触物と樹脂皮膜が接触した際における樹脂皮膜の変形が小さく樹脂皮膜と光ディスク等の被接触物との接触面積を低減し、耐傷付け性を向上することができる。
ポリエステル系樹脂としては、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及び変成アルキド樹脂等が用いられる。アルキド樹脂は、無水フタル酸などの多塩基酸とグリセリンなどの多価アルコールとの縮合物を骨格とし、これを脂肪酸の油脂で変性したものである。用いる油脂の種類と含有量によって、短油性アルキド樹脂、中油性アルキド樹脂、長油性アルキド樹脂及び超長油性アルキド樹脂に分類される。不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和多塩基酸又は飽和多塩基酸とグリコール類をエステル化することによって合成される。多塩基酸としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及びアジピン酸が用いられ、グリコール類としては、プロピレングリコールが多く用いられる。変成アルキド樹脂としては、天然樹脂、フェノール樹脂又はスチレンなどの重合性モノマーで変成されたものが用いられる。
エポキシ系樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、アクリル変性エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などを用いることができる。
アクリル系樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのモノマーを1種または2種以上を重合して得られるものを用いることができる。 プレス加工等の加工時に樹脂皮膜の割れが起こり難く、塗装時の作業性が良好で、コスト的にも有利なポリエステル系樹脂を用いることが好ましい。
(3−3)樹脂ビーズa2
樹脂皮膜Aにウレタンビーズ、フッ素樹脂ビーズから成る群から選択される1種以上の樹脂ビーズa2を含有させることによって、光ディスクが接触した際に樹脂ビーズa2が弾性変形し、接触による衝撃を和らげる緩衝効果を発揮させるようにした。これにより、光ディスク等の被接触物に対する耐傷付け性が向上する。このような樹脂ビーズa2は樹脂皮膜表面から上方に突出するために、光ディスク等の被接触物と樹脂皮膜表面の接触面積を低減することができる。その結果、光ディスクが樹脂皮膜表面に接触する際の滑り性が向上して、光ディスクへの耐傷付け性を高めることができる。
ウレタンビーズとしては、ジイソシアナートとグリコールとの重付加反応により得られるもの、脱塩酸剤の存在下でジアミンにグリコールのビスクロルギ酸エステルを作用させて得られるもの、ジアミンと炭酸エチレンとの反応により得られるもの、ω−アミノアルコールをクロルギ酸エステル又はカルバミン酸エステルに変えこれを縮合させて得られるもの、ビスウレタンとジアミンとの反応により得られるものが用いられる。ジイソシアナートとグリコールとの重付加反応により得られるものが多く用いられ、ジイソシアナートとしては、トリレンジイソシアナート(2,4−及び2,6−の混合物)が多く用いられ、水酸基を有する化合物としては、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレングリコールのようなエーテル系と、アジピン酸とエチレングリコールを縮合させたポリエステル系のものが多く用いられる。
フッ素樹脂ビーズとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンの共重合体(PEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/テトラフルオロエチレンの共重合体(ETFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレンの共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリトリフルオロクロルエチレン(PTFCE)、ポリジクロルジフルオロエチレン(DCDFE)等のビーズが用いられる。これらの樹脂のなかで、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が最も好適に用いられる。
用いる樹脂ビーズa2の平均粒径a3は1〜10μmとなることが好ましい。平均粒径が1μm未満では、光ディスクとの接触面積を低減できず耐傷付け性が劣る。一方、10μmを超えると、光ディスクと樹脂ビーズが接触する場合、点接触になり、荷重が集中するため、耐傷付け性が劣る。
樹脂ビーズa2の含有量は樹脂皮膜の樹脂固形分に対する重量比で3〜20重量%が好ましい。3重量%未満では、樹脂ビーズa2の存在しない樹脂皮膜表面部分に被接触物が接触し易くなり、耐傷付け性が劣る。一方、20重量%を超えると樹脂ビーズの密度が大きくなる為、導電性が劣る。
(3−4)添加剤
また、本発明で用いる塗料には、塗装性及びプレコート材としての一般的性能を確保するために通常の塗料において用いられる、潤滑剤、顔料、顔料分散剤、流動性調節剤、レベリング剤、ワキ防止剤、防腐剤、安定化剤等を適宜添加してもよい。
(3−5)樹脂皮膜形成
ベース樹脂a1、樹脂ビーズa2を必須成分とし、これに上記添加剤を適宜加え、適当な溶剤にこれらを溶解又は分散した塗料を、ロールコーターやバーコーター等によって化成皮膜上に直接塗布し、所定温度のオーブン中で所定時間処理して焼付け乾燥する。
溶剤としては、ベンゼン、トルエン、メチルアルコール、エチルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブ、ブチルセロソルブ、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、イソホロン、イソブチルアルコール、キシレン、エチルベンゼン、メチルエチルケトン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテルなどが用いられる。
(4)樹脂皮膜B
成形後にドライブケース外面となる面であって、上記塗膜とは反対側の外面に樹脂皮膜Bを更に設ける。樹脂皮膜Bには、ベース樹脂b1に樹脂ビーズb2を混合した塗料を塗装して形成される樹脂皮膜を用いることができる。
(4−1)皮膜厚β
前記樹脂皮膜Bの皮膜厚は0.2〜2.0μmとする。0.2μm未満であると、金属板表面の凸部の露出が多い為、導電性は良好であるが、耐傷付き性が劣る。2.0μmを超えると、金属板表面の凸部の露出が少ない為、導電性が劣る。
(4−2)ベース樹脂b1
前記樹脂皮膜Bに用いられるベース樹脂b1は、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂または、エポキシ系樹脂から成る群から選択される1種又は2種以上を用いる。ポリエステル系樹脂としては、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及び変成アルキド樹脂などを用いることができる。アクリル系樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのモノマーを1種又は2種以上を重合して得られるものを用いることができる。エポキシ系樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、アクリル変性エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などを用いることができる。
(4−3)樹脂ビーズb2
前記樹脂皮膜Bに用いられる樹脂ビーズb2は、ウレタンビーズ、フッ素樹脂ビーズから成る群から選択される1種以上である。コイルアップした際に樹脂皮膜Aと樹脂皮膜Bは接触するため、金属微粒子が樹脂皮膜Bに配合されていると、樹脂皮膜Aが損傷する可能性が高く、その場合には、成形後の耐傷付け性を劣化させる。これに対し、ウレタンビーズは軟質であり、フッ素樹脂ビーズは滑り性に優れる為、樹脂皮膜Bに傷がつきにくく、樹脂皮膜Bの耐傷付け性は劣化しない。又、樹脂皮膜B中にウレタンビーズやフッ素樹脂ビーズが配合されていると、塗膜表面に凹凸があり、化成皮膜表面の山の高さよりも樹脂ビーズの高さが高い為、指紋を付着させても、目立たなくなり、耐指紋性が向上する。
ウレタンビーズとしては、ジイソシアナートとグリコールとの重付加反応により得られるもの、脱塩酸剤の存在下でジアミンにグリコールのビスクロルギ酸エステルを作用させて得られるもの、ジアミンと炭酸エチレンとの反応により得られるもの、ω−アミノアルコールをクロルギ酸エステル又はカルバミン酸エステルに変えこれを縮合させて得られるもの、ビスウレタンとジアミンとの反応により得られるものが用いられる。ジイソシアナートとグリコールとの重付加反応により得られるものが多く用いられ、ジイソシアナートとしては、トリレンジイソシアナート(2,4−及び2,6−の混合物)が多く用いられ、水酸基を有する化合物としては、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレングリコールのようなエーテル系と、アジピン酸とエチレングリコールを縮合させたポリエステル系のものが多く用いられる。
フッ素樹脂ビーズとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンの共重合体(PEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/テトラフルオロエチレンの共重合体(ETFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレンの共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリトリフルオロクロルエチレン(PTFCE)、ポリジクロルジフルオロエチレン(DCDFE)等のビーズが用いられる。これらの樹脂のなかで、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が最も好適に用いられる。
樹脂ビーズb2の平均粒径b3は0.3〜6μmである。0.3μm未満では、金属板表面の凸部の露出が多くなり、耐傷付き性が劣る。6μmを超えると、金属板表面の凸部の露出が少なくなり、導電性が劣る。
樹脂ビーズb2の配合量b4は1〜5重量%である。1重量%未満では、金属板表面の凸部の露出が多くなり、耐付き性が劣る。5重量%を超えると、金属板表面の凸部の露出が少なくなり、導電性が劣る。
ウレタンビーズa2の配合量a4と樹脂ビーズb2の配合量b4の比a4/b4は1〜18である。1未満であると、樹脂皮膜B面の凸部が多くなり、その部分を起点とした塗膜破断がおきやすくなる為、樹脂皮膜B面の耐傷付き性が劣る。18を超えると、樹脂皮膜A面の凸部が多くなり、その部分を起点とした塗膜破断がおきやすくなる為、樹脂皮膜A面に傷がついたり、ウレタンビーズが脱落したりする為、耐傷付け性が劣る。導電性が劣る。
(4−4)添加剤
また、本発明で用いる塗料には、塗装性及びプレコート材としての一般的性能を確保するために通常の塗料において用いられる、潤滑剤、顔料、顔料分散剤、流動性調節剤、レベリング剤、ワキ防止剤、防腐剤、安定化剤等を適宜添加してもよい。
(4−5)樹脂皮膜B形成
ベース樹脂b1、樹脂ビーズb2を必須成分とし、これに上記添加剤を適宜加え、適当な溶剤にこれらを溶解又は分散した塗料を、ロールコーターによって化成皮膜上に直接塗布し、所定温度のオーブン中で所定時間処理して焼付け乾燥する。また、ピックアップロールとアプリケーターロールとの間に上から供給した塗料をアプリケーターロールで金属板上にロールコーティングする、トップフィード方式が好ましい。ロールコーターに代えて、エアスプレー、バーコーター等によって化成皮膜上に直接塗布しても良い。
以下に、本発明を実施例により詳細に説明する。
金属板D1〜D6、S1〜S2、E1〜E2の作製
表1に示す最終パスの冷間圧延条件で、金属板D1〜D6、S1〜S2、E1〜E2を作製した。得られた金属板について、表面形状を測定した。
<金属板表面の表面形状>
金属板の表面形状はレーザーテック(株)製コンフォーカル顕微鏡HD100を用いて測定した。対物レンズ50倍で金属板表面の3次元画像を測定し任意に選んだ322μm角の面積の中で、最大高さの突出部を通り圧延方向に対して直交する一の直線上に存在する算術平均粗さRaを測定した。前述した322μm角の面積部分において、Ra以上の高さの突出部のみからなる3次元画像を作成した。この際にメディアンフィルターのフィルターサイズは5*5に設定した。そして、その画像に存在する突出部の個数を計測し、1mm2当りの個数に換算した。測定箇所を任意に5箇所選択して5回測定し、Raと1mm2当りの山の個数に関して平均値を算出した。
Figure 2010005545
番号1〜7(発明例)
金属板の両面を、市販のアルカリ性脱脂液にて脱脂し、市販のりん酸クロメート処理液にて化成処理した。この金属板の両面に表2に示すような塗料aとbを、それぞれ、金属板の両面に塗装した。焼付温度はPMT(最高到達板温度)230℃であった。塗料aを塗装した面をイ面とし、塗料bを塗装した面をロ面とした。
Figure 2010005545
番号8〜15(発明例)
金属板の両面を、市販のアルカリ性脱脂液にて脱脂し、希硫酸で酸洗後、市販のジルコニウム処理液にて化成処理した。この金属板の両面に表2に示すような各種塗料を番号1〜7と同様に塗装した。

番号16〜17(発明例)
金属板の両面を、市販のクロメート処理液によって化成処理した。この金属板の両面に表2に示すような各種塗料を番号1〜7と同様に塗装した。

番号18〜25(比較例)
番号1〜7と同様にして、表2の作製条件にもとづいて、塗装した。

上述した方法で得られた化成皮膜の皮膜量を蛍光X線分析装置により測定した結果、クロム量は、30mg/m、ジルコニウム量は、10mg/m2であった。

番号1〜25で作製したプレコート金属板試料について、耐傷付け性、導電性、耐傷付き性、耐指紋性を下記の方法にて評価した。○、△を合格とし、×を不合格とした。
<耐傷付け性>
プレコート金属板のイ面を上側にして、定盤の上に固定し、さらに、光ディスク、分銅をのせ、水平にディスクを滑らせてディスクの傷付きが発生しない最大荷重を測定した。

○:150g以上
△:100g以上150g未満
×:100g未満

<導電性>
プレコート金属板のイ面に、四端子法により銀製のプローブ(直径5mm、先端2.5mmRのものを使用して)を荷重500gで接触させた時の電気抵抗値を測定した。 また、プレコート金属板のロ面に、四端子法により銀製のプローブ(直径5mm、先端2.5mmRのものを使用して)を荷重100gで接触させた時の電気抵抗値を測定した。

○:5Ω以下
△:5Ωを超え10Ω以下
×:10Ωを超える

<耐傷付き性>
プレコート金属板のロ面について、バウデン式付着滑り試験機(4.8mmφ鋼球、5N)にて10回摺動を行い、
得られた塗膜表面の外観を観察した。

○:若干、傷が認められる
△:傷が認められ、素材まで到達している
×:著しい傷が認められる

<耐指紋性>
プレコート金属板のロ面について、指紋を押し付け、拭き取り後の外観を観察した。
○:指紋跡が殆ど、認められない。
×:指紋跡が明瞭に認められる。
Figure 2010005545
番号1〜17のプレコート金属板のイ面は算術平均粗さRaが0.1〜0.6μmであり、Ra以上の山の個数が1mmあたりに19個以上781個以下である金属板の両面に形成した化成皮膜と、該化成皮膜の一方の上に、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂及びアクリル系樹脂から成る群から選択される1種以上のベース樹脂a1に樹脂ビーズa2を含有する樹脂皮膜とを備え、フッ素樹脂ビーズ、ウレタンビーズから成る群から選択される1種以上の樹脂ビーズa2の平均粒径a3は1〜10μmであり、該樹脂ビーズa2の配合量a4は3〜20重量%であり、該樹脂皮膜の皮膜厚αは0.4〜2.0μmである結果を示す。耐傷付け性、導電性は良好であった。
番号1〜17のプレコート金属板のロ面は更に、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂及びアクリル系樹脂から成る群から選択される1種以上のベース樹脂b1にウレタンビーズ、フッ素樹脂ビーズから成る群から選択される1種以上の樹脂ビーズb2を含有し、該樹脂ビーズb2の平均粒径b3は0.1〜6.0μmであり、該樹脂ビーズb2の配合量b4は1〜5重量%であり、皮膜厚βは0.2〜2.0μmである結果を示す。導電性、耐傷付き性、耐指紋性は良好であった。
一方、番号18は金属板表面の算術平均粗さが0.1μm未満であり、金属板表面におけるRa以上の山の個数が1mmあたりに19個未満である為、イ面の導電性が劣り、ロ面の導電性が劣った。
番号19は金属板表面の算術平均粗さが0.6μmを超え、金属板表面におけるRa以上の山の個数が1mmあたりに781個を超える為、イ面の耐傷付け性が劣り、ロ面の耐傷付き性が劣った。
番号20はウレタンビーズa2の平均粒径が1μm未満である為、イ面の耐傷付け性が劣った。樹脂ビーズb2の平均粒径が0.13μm未満である為、ロ面の耐傷付き性、耐指紋性が劣った。
番号21はウレタンビーズa2の平均粒径が10μmを超える為、イ面の耐傷付け性が劣った。樹脂ビーズb2の平均粒径が6.0μmを超える為、ロ面の導電性が劣った。
番号22はウレタンビーズa2の配合量が3%未満である為、イ面の耐傷付け性が劣った。樹脂ビーズb2の配合量が1%未満である為、耐傷付き性、耐指紋性が劣った。
番号23はウレタンビーズa2の配合量が20%を超える為、イ面の導電性が劣った。樹脂ビーズb2の配合量が5%を超える為、導電性が劣った。
番号24は皮膜厚αが0.4μm未満である為、イ面の耐傷付け性が劣った。ロ面に樹脂皮膜が形成されていない為、耐傷付き性、耐指紋性が劣った。
番号25は皮膜厚αが2.0μmを超える為、イ面の導電性が劣った。ロ面の皮膜厚βが2.0μmを超える為、導電性が劣った。

Claims (2)

  1. 算術平均粗さRaが0.1〜0.6μmであり、Ra以上の山の個数が1mmあたりに19個以上781個以下である金属板の両面に形成した化成皮膜と、該化成皮膜の一方の上に、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂及びアクリル系樹脂から成る群から選択される1種以上のベース樹脂a1に、フッ素樹脂ビーズ、ウレタンビーズから成る群から選択される1種以上の樹脂ビーズa2を含有する樹脂皮膜Aとを備え、該樹脂ビーズa2の平均粒径a3は1〜10μmであり、該樹脂ビーズa2の配合量a4は3〜20重量%であり、該樹脂皮膜Aの皮膜厚αは0.4〜2.0μmであり、さらに樹脂皮膜Aの反対面に樹脂皮膜Bを設け、該樹脂皮膜Bはポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂及びアクリル系樹脂から成る群から選択される1種以上のベース樹脂b1に、ウレタンビーズ、フッ素樹脂ビーズから成る群から選択される1種以上の樹脂ビーズb2を含有し、該樹脂ビーズb2の平均粒径b3は0.1〜6.0μmであり、該樹脂ビーズb2の配合量b4は1〜5重量%であり、該樹脂皮膜Bの皮膜厚βは0.2〜2.0μmであることを特徴とする電子電気機器用プレコート金属板。
  2. 該樹脂ビーズa2の配合量a4と該樹脂ビーズb2の配合量b4の比が1〜18であることを特徴とする請求項1に記載の電子電気機器用プレコート金属板。
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