JP2017179634A - ゴム補強用炭素繊維コード - Google Patents

ゴム補強用炭素繊維コード Download PDF

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Abstract

【課題】ゴム製品の切断面における繊維コードのホツレ性や、屈曲疲労性が改良されたゴム補強用炭素繊維コードを提供すること。【解決手段】炭素繊維束の表面に樹脂が付着したゴム補強用炭素繊維コードであって、3点曲げ強さが20MPa以上であるゴム補強用炭素繊維コード。さらには、樹脂が少なくとも2種の層からなり、内層に存在する樹脂Aがエポキシ化合物および/またはイソシアネート化合物を構成成分とし、外層に存在する樹脂Bがゴムラテックス成分を構成成分とし、樹脂Aの固形分付着量が樹脂Bの固形分付着量よりも多いことや、最表面層に樹脂Cが存在し樹脂Cがクロロスルホン化ポリエチレンまたはハロゲンを含有するポリマー系接着剤であること、炭素繊維束を構成する繊維が片撚りであることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明はゴム補強用炭素繊維コードに関し、さらに詳しくはベルト補強用に最適なゴム補強用炭素繊維コードに関する。
近年、高弾性率、高強度、寸法安定性、耐熱性および耐薬品性等の優れた特性を有する炭素繊維が、これらの特性を活かしタイヤ、ホース、ベルト等の用途のゴム補強用繊維として期待されている。特に歯付ベルトを始めとする各種ベルトにおいては、伸びが0.1〜0.3%という範囲でも高い弾性率特性の炭素繊維が、高い荷重を負担することが期待されている。
しかし、炭素繊維はその表面が比較的不活性であることが多く、そのままではゴムや樹脂等のマトリックスとの接着性が不十分であり、炭素繊維の特性を十分に発揮することはできないという問題があった。
そのため、これまで他の各種ゴム補強用繊維、例えばポリエステルを始めとする有機繊維の処理方法と同様の条件にて、炭素繊維の表面を処理する方法が各種提案されてきた。例えば特許文献1では無撚りの炭素繊維をレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)系接着剤を処理し、その後撚りを施した後に、さらに接着処理する方法が開示されている。しかしこのような繊維を撚る前に処理液に通すことで処理液の含浸性を高める方法は、ガラス繊維を始めとする従来の無機繊維の処理方法としては汎用的な方法の一つではあるが、処理後の糸を撚る工程において、単糸と単糸の間に介在する樹脂部分が破壊され、接着被膜としては弱くなるという問題があった。また特許文献2では、炭素繊維束をウレタン樹脂を主成分とする柔軟な処理液にて前処理する方法が開示されている。しかしこのような処理では結果として処理被膜及びコードが柔らかく、有機繊維に比較して、そもそも剛直な炭素繊維の処理方法としては、結果として不満足なものであった。
特開2014−070296号公報 特開2011−241502号公報
本発明は、ゴム製品の切断面における繊維コードのホツレ性や、屈曲疲労性が改良されたゴム補強用炭素繊維コードを提供することにある。
本発明のゴム補強用炭素繊維コードは、炭素繊維束の表面に樹脂が付着したゴム補強用炭素繊維コードであって、3点曲げ強さが20MPa以上であることを特徴とする。
さらには、樹脂が少なくとも2種の層からなり、内層に存在する樹脂Aがエポキシ化合物および/またはイソシアネート化合物を構成成分とし、外層に存在する樹脂Bがゴムラテックス成分を構成成分とし、樹脂Aの固形分付着量が樹脂Bの固形分付着量よりも多いことや、最表面層に樹脂Cが存在し樹脂Cがクロロスルホン化ポリエチレンまたはハロゲンを含有するポリマー系接着剤であること、炭素繊維束を構成する繊維が片撚りであることが好ましい。
本発明によれば、ゴム製品の切断面における繊維コードのホツレ性や、屈曲疲労性が改良されたゴム補強用炭素繊維コードが提供される。
本発明のゴム補強用炭素繊維コードは、炭素繊維束の表面に樹脂が付着したゴム補強用炭素繊維コードであって、3点曲げ装置にて測定される曲げ強さが、20MPa以上であるものである。さらには樹脂が少なくとも2種の層からなり、内層に存在する樹脂Aがエポキシ化合物および/またはイソシアネート化合物を構成成分とし、外層に存在する樹脂Bがゴムラテックス成分を構成成分とし、樹脂Aの固形分付着量が樹脂Bの固形分付着量よりも多いことが好ましい。そしてここで本発明の3点曲げ装置にて測定される曲げ強さとは、3点曲げ装置にて支点間距離25mm、試験速度25mm/分の条件にて測定される曲げ強さである。
そして本発明のゴム補強用炭素繊維コードにおいて最も重要な要件は、3点曲げ装置にて測定される曲げ強さが、20MPa以上であることである。この曲げ強さは、炭素繊維束中の各単糸が十分に集束されることで、数値が向上し20MPa以上のコードとすることが可能となる。つまり、炭素繊維束中への樹脂の浸透が充分であることが重要であり、さらには浸透することに加えて、炭素繊維束を構成するそれぞれの単糸と単糸の間を架橋することが好ましい。架橋した場合、炭素繊維コードを曲げた際に、各単糸の応力が分散せずに集合した応力が発生する。そのためコードはすぐには折れ曲がらず、十分な曲げ強さを得ることが可能となる。さらに炭素繊維束の内部に樹脂が浸透することにより、炭素繊維束の表面だけが強く集束された場合に比べ、初期の曲げ剛性(弾性率)こそ若干低下するものの、疲労試験などで表面部分の樹脂が若干が壊れたとしても、初期の剛性を保持し、折れ曲がりにくく、十分な曲げ強さを保持することが可能となる。ちなみに炭素繊維コードの表面だけが集束された場合、例えば最終製品として得られる繊維補強ベルトは、その製造の工程でコード繊維束の中央付近から繊維の方向に沿って切断されることがあるが、その場合に著しいホツレに繋がってしまう。本発明の炭素繊維コードは、繊維束の内部に樹脂が存在し、曲げ硬さを保持することが重要なのである。
また本発明のゴム補強用炭素繊維コードは、3点曲げ強さが20MPa以上なのであるが、このように十分な曲げ強さをもつ炭素繊維コードは、各単糸が樹脂によって十分に集束されており、単糸と単糸の摩擦による摩耗が低減されることから、屈曲疲労等の動的疲労性が向上するのである。
ちなみに従来から、ベルト用心線に用いられる汎用されているポリエステル繊維や芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)等の有機合成繊維は、繊維束が拘束されてコードが硬くなると、曲げられた際に、圧縮部に集中して負荷が掛かることで、有機合成繊維を構成する高分子の結晶部のすべりによってキンクバンドが発生し、著しい強力低下が起こっていた。しかし本発明で用いられる炭素繊維は、そのような有機合成繊維に比べて圧縮特性に優れ、コード硬さ向上によるキンクバンドの発生は、極めて起こりにくい。コードが硬いことによる有機合成繊維が有するデメリットは、炭素繊維束には当てはまらないのである。
また、このような3点曲げ硬さの硬い本発明の炭素繊維束の内部には、樹脂が充分に浸透している。すると、最終製品として得られる繊維補強ベルトの製造工程でコード繊維束の中央付近から繊維の方向に沿って切断されても、さらにはベルト製造工程のどこで切断されても、優れた耐ホツレ性を示すこととなる。また、各単糸が本来持つ特性がひとまとまりで発現されるため、優れた引張強度、引張弾性率を示す。また、曲げ強度が高い本発明の炭素繊維コードは、曲げ剛性(弾性率)にも優れるのである。特に本発明の炭素繊維コードを伝動ベルト用途等に使用する場合、心線となる炭素繊維コードの曲げ剛性は、ベルト全体の軸方向の曲げ剛性に大きく寄与し、その軸方向の曲げ剛性向上は、スリップテスト等のベルトの伝動性能にも、大きく貢献することとなる。なお曲げ強さが大きすぎる場合、すなわちコードが硬すぎる場合であるが、より高いゴム接着力が必要とされ、ゴム接着力とのバランスが崩れた場合には、使用するゴムとの組み合わせにもよるが動的接着力等が不足し、予期する効果が得られない傾向にあるため注意が必要である。その意味では本発明の炭素繊維コードの3点曲げ硬さは、500MPa以下であることが好ましく、さらには20〜350MPa、特には50〜350MPaの範囲であることが好ましい。
そしてこのような本発明のゴム補強用炭素繊維コードは、樹脂が少なくとも2種の層からなり、内層に存在する樹脂Aがエポキシ化合物および/またはイソシアネート化合物を構成成分とし、外層に存在する樹脂Bがゴムラテックス成分を構成成分とし、樹脂Aの固形分付着量が樹脂Bの固形分付着量よりも多いことが好ましい。そして樹脂Aが繊維束の内部に十分に含浸しており、後に付与するなどして外層に存在する樹脂Bは、繊維束の外部のみに存在することが好ましい。ここで少なくとも2種の層とは、例えば2浴以上の処理を行うことで得られるものであって、内層とは繊維束の表面に存在することに加えて、繊維束の内部にも存在するように、十分に含浸処理されたものであることが好ましい。
本発明のゴム補強用炭素繊維コードに用いられる炭素繊維としては、従来公知のものを用いることができるが、特には強度に優れたPAN系炭素繊維であることが好ましい。またこの炭素繊維はフィラメントが集合して束状の糸条となっている繊維束であることが必要であり、このような繊維束の形態であるからこそ、ゴム補強用として耐疲労性に優れたものとなる。この繊維束の総繊度としては500dtex〜16000dtexの範囲であることが好ましい。より好ましくは、4000dtex〜16000dtexの範囲であることが好ましい。またフィラメント数としては1000本〜25000本の範囲であることが好ましい。好ましくは、25000本〜25000本の範囲であることが、特に好ましくは、3000本〜24000本の範囲であることが好ましい。そしてこの炭素繊維束を構成する1本の繊維の直径としては1〜20μm、特には5〜10μmの範囲であることが好ましい。単糸繊度としては、0.4〜1.0dtexの範囲内であることが好ましい。
また本発明に用いられる炭素繊維束としては、炭素繊維束のモジュラス(弾性率)が100GPa以上であることが好ましく、より好ましくは230GPa以上であることが好ましい。炭素繊維束のモジュラスの上限としては1000GPa以下であることが、さらには400GPa以下であることが通常の範囲である。炭素繊維束のモジュラスを高めることによって、本発明のゴム補強用炭素繊維コードで補強した繊維強化ゴム材料は、特に寸法安定性が優れたものとなる。また炭素繊維束の強度としては2000〜10000MPaであることが、さらには3000〜6000MPaの範囲であることが好ましく、また破断時の伸度は0.2〜3.0%であることが、さらには1.5〜2.5%であることが好ましい。このような範囲とすることにより、疲労性をより向上させることが可能となる。また、該繊維には予め製糸段階あるいは製糸後にエポキシ樹脂、ウレタン樹脂などによって前処理が施されていても構わない。
また、本発明のゴム補強用炭素繊維コードは、撚りを施されたものであることが好ましい。さらには繊維束にS方向、或いはZ方向の撚り(片撚り)を施すことが好ましい。さらにはその片撚りのコードをさらに複数本引き揃えて、片撚りの方向と反対方向に撚り(諸撚り)を施しても構わないが、炭素繊維に諸撚りを施すのは工程通過性の観点で難しいため、複数本の繊維束を使用する場合でも、繊維束を引き揃えて、同方向への片撚りを行ったものであることがより好ましい。ここで、撚り数は、次式(1)で表せる撚り係数(TM)=0.1〜5.0を満たす範囲が、接着剤の繊維コード内部への浸透性を保ち耐ホツレ性を発揮しつつ引張物性と耐屈曲疲労性を満たす点で好ましく、より好ましくはTM=0.5〜3.0であり、さらに好ましくは、1.0〜2.0である。
TM=T×√D/1150 (数式1)
[但し、TM;撚り係数、T;撚り数(回/m)、D;総繊度(tex)を示す。]
この計算式は、一般的に、綿の紡績糸に使用される計算式、K=t/√N(K:撚係数、t:撚数t/inch、N:綿番手)について、綿の比重を炭素繊維の比重に変換し、綿番手を繊度(tex)に変換して、再計算したものである。TM=1.0に近い時に、単糸が繊維軸方向に約5.5°傾き、繊維束の引き揃えを良くすることで、引張強力が最大限に発揮される。更に撚り係数を高くすると、単糸の傾きが大きくなり、屈曲時の歪を単糸が受けにくくなり、耐屈曲疲労性が向上するが、引張強力は低下する傾向であり、また小さな負荷荷重を受ける際の初期の伸びが増加し、炭素繊維コードに期待される伸びにくい性質、言い換えれば0.3%等の初期の伸びで負担可能な荷重が低下することになる。
ちなみの本発明の炭素繊維コードは、撚りをかけた後に樹脂を含んだ処理液に浸漬して処理することが好ましい。特に外層に配置されるゴムラテックス成分を構成成分とする樹脂Bを含んだ処理液に関し、撚りをかけた後に処理することが好ましい。そして繊維コードに対する撚り係数が大きすぎる場合には、樹脂の繊維束内部への浸透が阻害され、耐ホツレ性が悪化する傾向にある。また、樹脂の繊維束への浸漬のみを考えた場合、繊維束に樹脂を付着させた後に撚りを施した場合、より繊維束内部に浸透しやすくなるものの、その後の撚りの工程で、単糸と単糸の間に介在する樹脂が破壊および/または剥離してしまい、結果として摩耗低減による屈曲疲労性の向上や、耐ホツレ性向上に十分に貢献しなくなる傾向にある。また、樹脂付着後に撚りをかける場合、既に繊維束が樹脂により拘束されてしまっているため、工程通過性が悪くなるばかりでなく、各単糸の引き揃えが悪くなり、小さな負荷荷重を受ける際の初期の伸びが増加し、炭素繊維コードに期待される伸びにくい性質、言い換えれば初期の伸びで負担可能な荷重が、低下する傾向にある。
本発明の炭素繊維コードは、処理液を浸漬するなどして、少なくとも樹脂が2種の層を形成することが好ましい。そして内層に存在する樹脂Aがエポキシ化合物および/またはイソシアネート化合物を構成成分とすることが好ましい。またここでこの内層とは、繊維コードの内部も含む概念である。そして樹脂Aの固形分付着量が樹脂Bの固形分付着量よりも多いことが好ましい。
ここで炭素繊維コードの内層や内部に存在する樹脂Aは、通常集束剤として使用されるものを使用することができる。樹脂Aが繊維束内部に含浸され、炭素繊維の単糸と単糸の間に介在することで、炭素繊維コードが動く際の摩耗による損傷を低減させると共に、単糸と単糸を樹脂Aが接着させることで、繊維束が一体となり、引張特性等において、より本来の炭素繊維の単糸が持つ性能を繊維束として発現することができるようになる。
そして本発明ではこの樹脂Aがエポキシ化合物および/またはイソシアネート化合物を構成成分としたものであることが好ましい。このような樹脂Aは、繊維体を浸漬する際には、比較的低分子量で内部に浸透しやすく、その後の熱処理により、自己縮合、或いはその他の分子と架橋し、単糸間を接着させることが可能となる。このような樹脂Aを用いることにより、樹脂Aが繊維束内部に浸透し、かつ繊維束内で単糸と単糸を接着し、強固に集束することが容易となるのである。
さらに樹脂Aとしては高靱性を有する樹脂であることが好ましく、イソシアネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ウレア樹脂、あるいはイソシアネートとエポキシの架橋体等であることが好ましい。さらに具体的には、イソシアネート樹脂、ウレア樹脂、イソシアネートとエポキシの架橋体であることが好ましい。
そして樹脂Aとしてイソシアネート樹脂を用いる場合には、その付与方法としては例えば、イソシアネート化合物をトルエン等の有機溶剤に溶解した液に、繊維束を浸漬後、熱処理によりイソシアネート化合物の自己架橋により繊維集束体を得る方法や、水系ブロックドイソシアネートの水分散体に繊維束を浸漬後、熱処理によりブロック剤が解離したイソシアネート化合物の自己架橋により繊維集束体を得る方法等が挙げられる。作業性としては水系の剤を使用することが好ましく、水系の場合にはブロックドイソシアネートが好ましく使用される。ブロックイソシアネートを用いることにより、水分を揮発させる工程になって初めて水とイソシアネートが反応するため、それまでの浸漬工程等で官能基が失活するのを抑制することが可能になる。
イソシアネート化合物としては、芳香族系のジフェニルメタンジイソシアネートや、トルエンジイソシアネート、脂肪族系のヘキサメチレンジイソシアネート等から選択することが好ましい。さらに好ましくは、繊維束内部への浸透性に優れる脂肪族系のイソシアネートの使用が推奨される。より具体的にはブロックドイソシアネートとして、ジメチルピラゾールブロック、メチルエチルケトンオキシムブロック、カプロラクタムブロックのブロックドイソシアネートが好ましく、さらに具体的にはジメチルピラゾールブロックヘキサメチレンジイソシアネートを用いることが好ましい。また、上記の剤を二つ以上を組み合わせて用いても構わない。
また、樹脂Aとしてはウレア樹脂を用いることも好ましい。ここでウレア樹脂とは、アミンとイソシアネート化合物の縮合により得られる樹脂である。
本発明において特に好ましい樹脂Aとしては、イソシアネート化合物とエポキシ化合物の架橋体を挙げることができる。これは、比較的低分子量のイソシアネート化合物と、反応性の高い同じく比較的低分子量のエポキシ化合物とを繊維内部に浸透させた後に、熱処理をすることで繊維集束体を得ることができる。このように繊維束内部から架橋させることで、繊維束内部において単糸と単糸を接着させ、強固に集束した繊維集束体を得ることが可能になる。
単独で、またはイソシアネート化合物と組み合わせて使用することができるエポキシ化合物としては、繊維表面にエポキシ基を有するエポキシ化合物を付着させ、熱処理等により高分子量化したものであることが好ましく、具体的には、エチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール類とエピクロルヒドリンの如きハロゲン含有エポキシド類との反応生成物、レゾルシン、ピス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルメタン、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂等の多価フェノール類と前記ハロゲン含有エポキシド類との反応生成物、過酢酸又は過酸化水素等で不飽和化合物を酸化して得られるポリエポキシド化合物、即ち3,4−エポキシシクロヘキセンエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ビス(3、4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキシルメチル)アジベートなどを挙げることができる。
これらのうち、特に多価アルコールとエピクロルヒドリンとの反応生成物、即ち多価アルコールのポリグリシジルエーテル化合物が優れた性能を発現するので好ましい。特に、水溶性の高いソルビトールポリグリシジルエーテル構造を有するエポキシ化合物の水分散体を使用することが、好ましい。さらに繊維束内部への浸透性に優れる脂肪族ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)構造を有するブロックドイソシアネートと、水溶性の高いソルビトールポリグリシジルエーテル構造を有するエポキシ化合物の水分散体を使用することが、特に好ましい。より具体的にはブロックドイソシアネートとして、ジメチルピラゾールブロックヘキサメチレンジイソシアネートやカプロラクタムブロックジフェニルメタンジイソシアネートを用い、エポキシ化合物としてソルビトールポリグリシジルエーテル系エポキシ化合物を組み合わせて用いることが好ましい。
また、本発明の繊維コードを得るためには、繊維集束体の内部に集束剤として用いられる樹脂Aを付着させるのであるが、その具体的な方法としては、単繊維が集まったマルチフィラメント長繊維、さらにはそれを複数本に引き揃えた形状のものやトウ状の長繊維を、ボビンやビームクリールから連続的に送繊されるようにして、集束剤の入った漕の中で含浸させる方法や、ローラータッチ法によって付着させる方法、スプレー方式により該集束剤を噴霧して付着させる方法などが挙げられる。中でも繊維に均一に樹脂Aを付着させるためには、集束剤の入った漕の中で含浸させる方法が好ましく、さらには次いで絞りロールで一定の付着量に調整することが好ましい。
また、先に述べたように集束剤をより繊維束内部に含浸、浸透させるためには、集束剤を水系マルション、または有機溶剤に分散、または溶解させ、希釈して使用する方法が好ましい。その際、有機溶剤に溶解させる処理方法を採用する場合には、大量に有機溶剤を用いるために、安全や作業環境負荷が高く、また接着処理設備および回収・廃液処理やその周辺設備にかかるコストが非常に高いため、本発明の実施方法としては水系処理を行うことが好ましい。ちなみに集束剤を溶解させた有機溶剤は粘性が高くなり、繊維束内部への浸透が不十分となりやすい傾向にあり、その観点からも、水溶性を高めた比較的低分子量の化合物を使用することが好ましい。
本発明の炭素繊維コードを得る場合、上記の炭素繊維コードを樹脂Aを含む処理溶液に浸漬させる時間は、集束剤を十分に浸透させるためには重要である。浸漬時間は3秒以上が好ましくは、より好ましくは10秒以上が好ましい。長時間の浸漬は、生産性の観点から好ましくないので60秒以下であることが好ましい。特に好ましくは30秒以下であることが好ましい。また、浸漬時の糸の張力も、集束剤を十分に浸透させるためには重要である。なるべく低い張力で浸漬させることが好ましいが、あまり低すぎると繊維束を構成する単糸と単糸の引き揃え性が悪くなり、最終的に炭素繊維コードの引張特性が低下してしまう。好ましくは0.01〜0.5cN/dtexの範囲で実施することが好ましい。より好ましくは0.03〜0.2cN/dtexの範囲で実施することが好ましい。また、集束剤を付与した繊維束は通常、その後熱処理を施し、集束剤の分散媒を乾燥、時には熱処理により架橋させることが好ましい。処理装置としては特に限定されるものではなく、接触型のホットローラー等も用いることができるが、非接触型の熱風乾燥炉を用いると集束剤による装置への付着や汚れがなく作業しやすいため好ましい。好ましい熱処理条件としては、2段階の加熱処理であることが好ましい。具体的には例えば、80〜150℃の温度で60〜240秒間の乾燥を行い、次いで180〜240℃の温度で60〜240秒間の熱処理を行うことが好ましい。
本発明の炭素繊維コードを得るためには、まず第一段の熱処理により、コード表面およびコード内部の樹脂Aを含む処理液を繊維コード内部に拡散させながら、水分を乾燥させることが好ましい。ここで処理温度が高すぎる場合には、水分が留去する間もなく、水分の揮発が開始されるため、十分な拡散が得られず、集束性が不十分となり、コードは柔らかくなる傾向にある。逆にあまり低温すぎると、乾燥が不十分な樹脂Aが糸導ガイド等に転写され、樹脂がコードから脱落してしまい、十分な付着量が得られない。本発明の炭素繊維コードは外層に後述の樹脂Bが存在するが、樹脂Aを含む処理液の乾燥熱処理に引き続き、第二段の熱処理により、樹脂Aを架橋反応し、強い皮膜とすることが、内層と外層を明確に役割分担する上で好ましい。
本発明の炭素繊維コードでは、上記の樹脂Aの付着量は、3.0〜20重量%であることが好ましい。付着量が少なすぎると、繊維コードのフィラメントを充分に集束できず屈曲疲労時に単糸間の摩耗による強力低下や、ホツレ性が低下する。一方、多すぎる場合には、接着処理工程でのガムアップなど工程通過性が低下する恐れがある。より好ましくは、5.0〜15重量%の範囲である。この固形分付着量を制御するためには、圧接ローラーによる絞り、スクレバー等によるかき落とし、空気吹きつけによる吹き飛ばし、吸引、ビーターの手段により行うことができ、付着量を多くするためには浸漬時間の増加や、処理液中の樹脂A固形分濃度の向上、複数回の浸漬等で行えばよい。
なお、樹脂Aを含有する処理液は、基本的には撚りをかけた後に繊維コードを処理液に浸漬し処理することが好ましい。さらに樹脂Aの繊維コード内部へ、エポキシ化合物および/またはイソシアネート化合物をより含浸させるためには、撚りをかける前に樹脂Aと同じ、または樹脂Aと異なるエポキシ化合物および/またはイソシアネート化合物を含有する処理液に浸漬し乾燥処理することも好ましい。その後、その無撚の前処理コードに撚りをかけ、再度樹脂Aで処理することも好ましい。
本発明のゴム補強用炭素繊維コードは、上記の内層に存在する樹脂Aの外層に、樹脂Bが存在し、樹脂Aの固形分付着量が樹脂Bの固形分付着量よりも多いことが必要である。
そしてこのような樹脂Bを炭素繊維コードに付与する方法としては、上記のように該繊維コードに樹脂Aからなる集束剤を付着させたのち、その表面にゴムラテックス成分を構成成分とする樹脂Bを付着させる。さらに、ゴムラテックス成分を構成成分とする樹脂Bの組成としては、接着力や耐化学薬品性等の観点からレゾルシン・ホルマリン・ラテックス(RFL)を用いることが好ましい。
ここで、本発明の炭素繊維コードに好ましくは含有されるレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)としては、レゾルシンとホルムアルデヒドのモル比が、1:0.6〜1:8の範囲にあるものが好ましく使用され、より好ましくは、1:0.8〜1:6の範囲で用いられる。ホルムアルデヒドの添加量が少なすぎるとレゾルシン・ホルマリンの縮合物の架橋密度が低下すると共に分子量の低下を招くため、接着剤層凝集力が低下することにより接着性が低下するとともに屈曲疲労性が低下する恐れがあり、また、ホルムアルデヒドの添加量が多すぎると架橋密度上昇によりレゾルシン・ホルマリン縮合物が硬くなり、被着体ゴムとの共加硫時にRFLとゴムとの相溶化が阻害され、接着性が低下する傾向がある。レゾルシン・ホルマリンとゴムラテックスとの配合比率は、固形分量比で、レゾルシン・ホルマリン:ゴムラテックス(RFL)が1:3〜1:16の範囲にあるものが好ましく使用され、特に、1:4〜1:10の範囲にあるものが好ましく使用される。ゴムラテックスの比率が少なすぎるとゴムとの共加硫成分が少ないため接着力が低下する傾向があり、一方、ゴムラテックスの比率が多すぎると接着剤皮膜として充分な強度を得ることができないため、接着力や耐久性が低下する傾向があるとともに、接着処理した繊維コードの粘着性が著しく高くなり接着処理工程やベルト成型工程でカムアップや取り扱い性などの工程通過性が低下する恐れがある。用いられるレゾルシンとしては、予めオリゴマー化したレゾルシン−ホルマリン初期縮合物やクロロフェノールとレゾルシンをホルマリンとオリゴマー化した多核クロロフェノール系レゾルシン−ホルマリン初期縮合物を必要に応じて単独あるいはそれらを組み合わせて用いても良い。また、ここで用いられるゴムラテックスとしては、例えば水素添加アクリロニトリルーブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンラテックス、イソプレンゴムラテックス、ウレタンゴムラテックス、スチレン−ブタジエンゴムラテックス、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエンゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス、ブタジエンゴムラテックス、クロロスルホン化ポリエチレンラテックス等があり、これらを単独または併用して使用する。特には本発明のゴム補強用炭素繊維コードが、ホースやベルトなどに用いられる場合、水素添加アクリロニトリルーブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンラテックス、イソプレンゴムラテックス、ウレタンゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエンゴムラテックス、クロロスルホン化ポリエチレンラテックスの群から選ばれるいずれか一つ以上のゴムラテックスであることが好ましい。また、このラテックスとしては、繊維強化ゴム材料のマトリックスゴムと同種のものであることが好ましく、たとえば、マトリックスゴムとして水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴムを使用する場合、本発明の製造方法におけるラテックス種類としては、水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックスを含有することが好ましい。ラテックス中の水素添加アクリロニトリルブタジエンゴムラテックスの固形分重量比率としては、50重量%以上あることが好ましい。マトリックスゴムと同種のものでなければ、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエンゴムラテックスや、アクリロニトリル−ブタジエンゴムを使用することが好ましい。
さらには、上記のレゾルシン・ホルマリン・ラテックス(RFL)を使用する際には、架橋剤を併用することも好ましい。好ましく添加される架橋剤としては、アミン、エチレン尿素、ブロックポリイソシアネート化合物などが例示されるが、処理剤の経時安定性、前処理剤との相互作用などを踏まえ、ブロックドポリイソシアネート化合物が好ましく用いることができる。ブロックドポリイソシアネート化合物などの架橋剤の添加率は、レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)に対して0.5〜40重量%、好ましくは、10〜30重量%の範囲であるものが好ましい。添加量を増やすことにより通常は接着力が向上するが、逆に添加量が多すぎると接着剤のゴムに対する相容性が低下し、ゴムとの接着力が低下する傾向があるためである。
また、ゴムラテックス成分を構成成分とする外層に存在する樹脂Bのさらに外側の最表面層に樹脂Cが存在することが好ましい。この樹脂Cとして、クロロスルホン化ポリエチレンまたはハロゲンを含有するポリマー系接着剤であることが好ましい。また樹脂Cとしては、ゴムを有機溶剤に溶解させたゴム糊や、クロロスルホン化ポリエチレンやハロゲン含有ポリマー系の溶剤系接着剤や水系接着剤を含有するものであることが好ましいが、特には水系の処理剤であることが好ましい。このような樹脂Cに用いることが可能な剤として市販されているもととしては、株式会社東洋化学研究所製の『メタロックF112』や、LORD社の『CHEMLOK CH233X』、『CHEMLOK CH238S』、『CHEMLOK CH8216』等が挙げられる。取扱い性の面から、水系接着剤であり、ハロゲン含有ポリマーとカーボンブラックと酸化亜鉛を含有する『CHEMLOK CH8216』が特に好ましく用いられる。これらの接着剤は、被着体のゴム中に拡散し、ゴムマトリックスの剛性や凝集力を向上させ、炭素繊維コードとの剛性の差異を低減させることで、より炭素繊維コードとゴムマトリックスとを一体化させ、接着力を向上させるものである。特には炭素繊維コードとゴムとの十分な接着力を得ることが困難なゴムマトリックスを使用する際に効果的である。なおこの樹脂Cは樹脂Bの外側に、最表面の層として存在する場合だけでなく、樹脂Bと混合して同じ層に存在する態様であることも好ましい。
本発明のゴム補強用炭素繊維処理コードを得るためには、樹脂Aに引き続き樹脂Bや樹脂Cを繊維に付着させるために、ローラーとの接触、若しくは、ノズルからの噴霧による塗布、または、溶液への浸漬などの手段を採用することが好ましい。また、繊維コードに対する樹脂Bの固形分付着量は、2.0重量%以上が好ましく、さらに好ましくは2.0〜6.0重量%の範囲にあるものがよい。さらに樹脂Cを用いる場合には、繊維コードに対する樹脂Cの固形分付着量は、3.0重量%以上が好ましく、さらには6〜20重量%、特には6〜18重量%の範囲が好ましく、さらには12重量%以下であることが好ましい。樹脂Bよりも樹脂Cの付着量が多いことが好ましい。
繊維コードに対する固形分付着量を制御するためには、前記と同様に、圧接ローラーによる絞り、スクレバー等によるかき落とし、空気吹きつけによる吹き飛ばし、吸引、ビーターの手段により行うことができ、付着量を多くするためには複数回付着させてもよい。また処理条件としては、樹脂Bを含む溶液に浸漬させた後、100℃〜250℃の温度で60〜300秒間の乾燥、熱処理を行うことが好ましい。より好ましくは、100〜180℃の温度範囲で60〜240秒間乾燥し、次いで200〜245℃の温度で60〜240秒間の熱処理を行う。この乾燥・熱処理温度が低すぎるとゴム類との接着が不十分となる傾向にあり、また、乾燥・熱処理温度が高すぎるとRFLが高温下での空気酸化が促進され、接着活性が低下してしまう傾向がある。また、樹脂Bを含む溶液に浸漬させた後、80〜180℃の温度で60〜300秒間の乾燥、熱処理を行うことが好ましい。この乾燥・熱処理温度が低すぎると乾燥が不十分となり、工程通過性が悪化する傾向にあり、また、乾燥・熱処理温度が高すぎると接着成分が高温下で失活し、接着活性が低下してしまう傾向がある。
最も好ましい使用形態としては、レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を含む組成物である樹脂Bを2.0〜5.0重量%付着させた後、ハロゲン含有ポリマーとカーボンブラックと酸化亜鉛を含有する水系接着剤を樹脂Cとして、固形分量で3〜20重量%付着させることが好ましい。
このような本発明のゴム補強用炭素繊維コードは、ホツレ性、屈曲疲労性、初期伸びが大幅に改善されたゴム補強用炭素繊維コードであり、本ゴム補強用炭素繊維コードは、補強材として用いることにより物性の非常に優れた炭素繊維強化ゴム材料を得ることが出来る。
このような本発明のゴム補強用炭素繊維コードを補強材として含む炭素繊維強化ゴム材料では、その補強対象となるゴムとしては、アクリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、水素化アクリロニトリルーブタジエンゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、多硫化ゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム等を挙げることができる。特には本発明の製造方法は、水素化アクリロニトリルーブタジエン(H−NBR)ゴム用途に最適である。また上記ゴムには、主成分のゴムの他に、材料の改質等のため、カーボンブラック、シリカ等の無機充填剤、クマロン樹脂、フェノール樹脂等の有機充填剤、ナフテン系オイル等の軟化剤が含まれていてもよい。
このような炭素繊維強化ゴム材料は、例えば、上記ゴム補強用炭素繊維コードを必要本数引き揃え、これをゴムで挟み込み、さらにプレス機等で加圧、加熱して成形することができるものであり、得られた炭素繊維強化ゴム材料は、屈曲変形などに対して優れた耐久性を発揮しその炭素繊維強化ゴム材料の具体例としては、ベルト、ホースなどを挙げることができる。
以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本発明の実施例における評価は下記の測定法で行った。
(1)コードの重量(繊度)、コードの径(コードゲージ)、引張強力、引張伸び率(切断伸度)、0.3%伸長時の荷重
JIS L1017に準じて測定を行った。0.3%伸長時の荷重は、得られる応力―歪曲線から読み取った。
(2)曲げ強さ
ASTM D885、Stiffnessのタイヤコード測定方法に準じ、コード1本にて測定を行った。試験片長さは50mm、外側支点間距離(エッジスパン長)25mm、中間部の支点を移動させる試験速度は25mm/分の条件にて、3点曲げ装置を用いて実施した。応力は、以下の式で計算した。
曲げ強さ=曲げ荷重・8Lv/(π・D) (数式2)
[但し、Lv:エッジスパン長、D;コードゲージ(コード径)を示す。]
(3)コードの剥離接着力
ゴム補強用炭素繊維コードを約30mmの幅に隣接して並べて、ゴムから剥離する際の接着力で評価した。評価用ゴムとしては、下記配合組成で作製したH−NBRゴムを用いて、温度180℃で30分間、1MPaのプレス圧をかけて加硫した。また、剥離させたコードへのゴム付を評価した。
(配合組成)
水素化アクリロニトリルーブタジエンゴム:100部
カーボンブラック:50部
酸化亜鉛:5部
可塑剤TOTM:5部
ステアリン酸:0.5部
抗酸化剤(ナウガード445):1.5部
老化防止剤(ノクラックMBZ):1部
シリカ:8部
(4)コードの屈曲疲労性
接着処理済みの炭素繊維コードを、水素化アクリロニトリルーブタジエンゴムの巾50mm、長さ500mm、厚み2mmの2枚の未加硫ゴムシートに8本等間隔に埋包したのち、180℃の温度で、30分間、1MPaのプレス圧力で加硫し、ベルト状ゴム成型品を得た。次いで該ベルト状ゴム成型品に30kgの荷重をかけて直径50mmのローラーに取り付け、100℃の雰囲気下でローラー屈曲(接触)距離100mmで100rpmの往復運動をさせ、100,000回の繰返し屈曲を行ったのち、コードを取り出して残強力を測定し、屈曲疲労後の強力維持率を求めた。
(5)ホツレ性
また、(4)の炭素繊維コードを埋法したベルト状ゴム成型体を1°傾けた状態で、切断し、コード中央で切断された部分の断面に露出した繊維コードの集束状態を目視および光学顕微鏡で観察してホツレ性を評価した。ホツレ性は以下の通り3段階で評価判定した。
[ホツレ性(屈曲疲労試験後)]
○:繊維コードのフィラメントが集束しており外観上の異常は認められず良好。
△:繊維コードの一部のフィラメントに集束不良箇所が見受けられる。
×:繊維コードのフィラメントに集束不良が発生しており、集束していない。
[実施例1]
ソルビトールポリグリシジルエーテル構造を有するポリエポキシド化合物(デナコール EX−614B ナガセケムテックス製、濃度100%)55gに、界面活性剤としてジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム塩水溶液(ネオコールSW−C、第一工業製薬製、濃度70%)15gを加えて攪拌し、これを水353gに攪拌添加して溶解させた。ここに、官能基が3以上であるジメチルピラゾールブロック−HDIトリマーの縮合物(Trixene BI201、英国Baxenden製、濃度40%)228.0gを攪拌添加して、樹脂Aの水分散体を調整した。
レゾルシン/ホルマリン(R/F)のモル比が1/0.6であるレゾルシン−ホルマリン初期縮合物(スミカノール700S、住友化学製、濃度65%)19.8gを、水154.5gに10%苛性ソーダ水5.0gと20%アンモニア水19.9gを加えたアルカリ水溶液に溶解し、これにアクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス(NIPOL LX1562、日本ゼオン株式会社製、濃度41%)415gと水368.9gを添加した。この液に、37%ホルマリン水16.8gを添加し、20℃で48時間熟成して固形分濃度19.4%のRFL系接着処理剤を含む樹脂Bの水分散体を調整した。
8000dtex/12000フィラメントの炭素繊維(UTS50、東邦テナックス製)を1本用いて撚数60回/mのZ方向の片撚りを行い、炭素繊維撚糸コードを得た。この繊維コードをコンピュートリーター処理機(CAリッツラー製ディップコード処理機)を用いて5m/分の速度で給糸し、前記の樹脂A水分散体に6秒間浸漬した後、定長で120℃、120秒間の乾燥、次いで定長で235℃、60秒間の熱処理を行い、引き続き前記のRFL系接着処理剤を含む樹脂Bの水分散体に浸漬した後に、定長で160℃、120秒間の乾燥、次いで230℃、150秒間の熱処理を行い、さらにハロゲン含有ポリマーとカーボンブラックと酸化亜鉛を含有する固形分濃度30%の水系分散体(CHEMLOK CH8216、米国LOAD社製)に浸漬した後に、定長で150℃、120秒間の乾燥を行い、炭素繊維コードを得た。この炭素繊維コードには、炭素繊維撚糸コードに対して固形分換算で、エポキシ化合物およびイソシアネート化合物を構成成分とする樹脂Aが8.0重量%、RFL系接着処理剤を含む樹脂Bが3.5重量%、ハロゲン含有ポリマーとカーボンブラックと酸化亜鉛を含有する接着剤である樹脂Cが8.5%付着していた。得られた炭素繊維コードの製造条件と性能評価結果について、表1及び表2にまとめて示す。
[実施例2〜4、比較例1〜3]
撚糸条件、樹脂A水分散体の処理条件を表1に示す通り変更して処理した以外は、実施例1と同様に炭素繊維コードの接着処理を行った。得られた炭素繊維処理コードの製造条件と性能評価結果を表1及び表2にまとめて示す。
[実施例5]
樹脂A水分散体の組成物として、ジメチルピラゾールブロック−HDIトリマーの縮合物(「BI201」)の代わりに、ε―カプロラクタムブロック―ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(DM3031、明成化学工業株式会社製、濃度40%)を用いた以外は、実施例1と同様に炭素繊維コードの接着処理を行った。得られた炭素繊維コードの製造条件と性能評価結果を表1及び表3に示す。
[実施例6]
樹脂BのRFL系接着処理剤処理の後、ハロゲン含有ポリマーとカーボンブラックと酸化亜鉛を含有する接着剤を処理しなかった以外は、実施例1と同様に炭素繊維コードの接着処理を行った。得られた炭素繊維コードの製造条件と性能評価結果を表1及び表3に示す。
[比較例4]
樹脂A水分散体の代わりとして、樹脂Bの固形分濃度19.4%のRFL系接着処理剤を用いた以外は、実施例1と同様に炭素繊維コードの製造条件と性能評価結果を表1及び表3に示す。
Figure 2017179634
Figure 2017179634
Figure 2017179634
本発明の実施例1〜6は、比較例に曲げ強さが高く、屈曲疲労性に優れるとともに耐ホツレ性も良好であった。
本発明によれば、ホツレ性が大幅に改良され、ゴムとの接着性、屈曲疲労性、耐久性に優れ、伝動ベルトの心線として好適に用いられる炭素繊維コードを提供することができ、炭素繊維であるにも関わらずホツレ性や屈曲疲労性が良好で、摩擦伝動ベルトや歯付ベルトの心線として好適に用いることができる。

Claims (4)

  1. 炭素繊維束の表面に樹脂が付着したゴム補強用炭素繊維コードであって、3点曲げ強さが20MPa以上であることを特徴とするゴム補強用炭素繊維コード。
  2. 樹脂が少なくとも2種の層からなり、内層に存在する樹脂Aがエポキシ化合物および/またはイソシアネート化合物を構成成分とし、外層に存在する樹脂Bがゴムラテックス成分を構成成分とし、樹脂Aの固形分付着量が樹脂Bの固形分付着量よりも多い請求項1記載のゴム補強用炭素繊維コード。
  3. 最表面層に樹脂Cが存在し、樹脂Cがクロロスルホン化ポリエチレンまたはハロゲンを含有するポリマー系接着剤である請求項1または2記載のゴム補強用炭素繊維コード。
  4. 炭素繊維束を構成する繊維が片撚りである請求項1〜3のいずれか1項記載のゴム補強用炭素繊維コード。
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