JP2005042229A - 伝動ベルト補強用炭素繊維コードおよびこれを用いた伝動ベルト - Google Patents
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Abstract
【課題】伝動ベルトの細幅化に対応できる高負荷伝達性と、高い耐屈曲疲労性を発現する伝動ベルト補強用炭素繊維コードを提供せんとするものである。
【解決手段】炭素繊維束にエポキシ樹脂とゴムラテックスを含む樹脂組成物が付着した、40〜80回/mの下撚り数を有する伝動ベルト用コードであって、該コードの強度が10〜16cN/dTexであり、強伸度S−S曲線から求めた4cN/dTex荷重時の伸度が0.5〜1.2%であることを特徴とした伝動ベルト補強用炭素繊維コード。また、前記伝動ベルト補強用炭素繊維コードがベルト芯体として使用されていることを特徴する伝動ベルト。
【選択図】なし
【解決手段】炭素繊維束にエポキシ樹脂とゴムラテックスを含む樹脂組成物が付着した、40〜80回/mの下撚り数を有する伝動ベルト用コードであって、該コードの強度が10〜16cN/dTexであり、強伸度S−S曲線から求めた4cN/dTex荷重時の伸度が0.5〜1.2%であることを特徴とした伝動ベルト補強用炭素繊維コード。また、前記伝動ベルト補強用炭素繊維コードがベルト芯体として使用されていることを特徴する伝動ベルト。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、伝動ベルトの補強用に好適に用いられる高強度、高弾性率で、かつ接着性、耐屈曲疲労性に優れる伝動ベルト補強用炭素繊維コード、及びこれを用いた伝動ベルトに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、歯付きベルト、Vベルト、平ベルト等の各種伝動ベルトでは、高強力、高弾性率、高寸法安定性等の特性が要求されることから、ベルト本体(通常はゴム)には繊維からなる補強用コードや布状物等の抗張体が埋設されている。例えば自動車用タイミングベルト等の抗張体には、噛み合い等の問題から、弾性率の大きいガラス繊維コードやアラミドコードが用いられている。
【0003】
近年、自動車用タイミングベルトでは、内燃機関の高性能化により、ベルトはより狭小なスペースに配置されるようになってきた。このため、抗張体として、ベルトの細幅化に対応できる高負荷伝達可能な高強度繊維が求められている。また、一般産業用ベルトにおいても、高負荷をかけた場合の精密駆動、およびベルト伸びによる歯の異常摩耗低減が求められ、さらなる高弾性率繊維が求められている。
【0004】
これらの問題を解決するべく、高強度ガラス繊維をタイミングベルト用途に用いる手法が開示されている(特許文献1参照)。しかしかかる手法によるガラス繊維コードでも、要求されるベルトの高性能化は得られない。そこで、上記抗張体として炭素繊維からなる撚糸コードを使用することが提案されている(特許文献2、3参照)。しかし、これら文献における炭素繊維コードは、単にガラス繊維コードやアラミドコードの代わりに炭素繊維コードを使用したのみであって特に伝動ベルトとしての耐疲労性が悪く、伝動ベルト用の抗張体として実用に耐えるものではなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2000−9186号公報
【0006】
【特許文献2】特開昭61−192943号公報
【0007】
【特許文献3】特開平8−174708号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、伝動ベルトの細幅化に対応できる高負荷伝達性と、高い耐屈曲疲労性を発現する伝動ベルト補強用炭素繊維コードを提供せんとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の伝動ベルト補強用炭素繊維コードは炭素繊維束にエポキシ樹脂とゴムラテックスを含む樹脂組成物が付着した40〜80回/mの下撚り数を有する伝動ベルト用コードであって、該コードの強度が10〜16cN/dTexであり、強伸度SS曲線から求めた4cN/dTex荷重時の伸度が0.5〜1.2%であることを特徴とする。
【0010】
そして、本発明の伝動ベルト補強用炭素繊維コードに於いては、次の(1)〜(7)がそれぞれ好ましい態様として挙げられる。
(1)コード径が0.5〜2.5mmであること。
(2)切断伸度が1.2〜3.5%であること。
(3)単位重量あたりのコード長さが、200〜2500m/kgであること。
(4)前記エポキシ樹脂の含有量が樹脂組成物全重量に対して、20〜80重量%であること。
(5)前記樹脂組成物の付着量が炭素繊維全重量に対し10〜30重量%であること。
(6)前記コードの表層部が接着剤層で被覆形成されていること。
(7)ゴムと前記コードの接着剥離力が150N/20mm以上であること。
【0011】
また、本発明の伝動ベルトは前記記載の伝動ベルト用炭素繊維コードがベルト芯体として使用されてなることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の伝動ベルト補強用炭素繊維コード(以下、炭素繊維コードと呼ぶ)は、炭素繊維束にエポキシ樹脂とゴムラテックスを含む樹脂組成物を含浸した後、40〜80回/mの下撚りを施した炭素繊維コードであって、該コードの4cN/dTex荷重下の伸度が0.5〜1.2%であり、強度が10〜16cN/dTexである。上記の撚数、伸度および強度の炭素繊維コードとすることにより、伝動ベルト、特に歯付きの伝動ベルト補強用のコードとして優れた特性を示す。
【0013】
本発明に用いる炭素繊維束は、その製造方法が限定されるものではないが、紡糸工程により前駆体繊維を得て、その後、耐炎化(熱安定化、不融化)工程、炭化(炭素化)工程を経て炭素繊維束としたものを用いることができる。さらに熱処理を施した黒鉛繊維束も本発明でいうところの炭素繊維束に含むものである。なお、かかる炭素繊維束を得るに際しての各工程の処理温度、昇温速度、処理速度、延伸比、張力などの条件は、目的とする炭素繊維束の特性によって適宜選択することができる。例えば前駆体繊維束を300℃未満の空気中で耐炎化処理し、かかる耐炎化繊維を300℃以上2000℃未満の不活性雰囲気中で炭化処理して炭素繊維束としたものを用いることができる。更に2000〜3000℃の不活性雰囲気中で熱処理してなる黒鉛繊維を用いることができる。
【0014】
本発明に用いる炭素繊維束の前駆体繊維束としては、ポリアクリロニトリル、レーヨン、リグニン、ポリビニルアルコール、ポリアセチレン、ピッチなどを原料とする各種前駆体繊維束が挙げられるが、特にこれらに限定するものではない。高強度という点では、ポリアクリロニトリルを原料とした前駆体が好ましく用いられる。
【0015】
前駆体繊維束を得るための紡糸方法としては、原料に応じて湿式紡糸、乾式紡糸、乾湿式紡糸、溶融紡糸などが挙げられる。操業性の点からは、湿式紡糸、乾湿式紡糸が好ましく用いられ、乾湿式紡糸がより好ましい。
【0016】
さらに、製品目的によっては得られた炭素繊維束を仕上げ処理することが好ましい。かかる仕上げ処理には表面処理やサイジング剤の付与などが含まれる。かかる表面処理法としては、気相中での加熱、紫外線等による酸化、液相中で酸化剤を用いた化学的酸化又は水溶液中で電気化学的手法により酸化する方法などが挙げられる。かかる処理により本発明の樹脂組成物との親和性、例えば接着性、濡れ性、分散性等の表面特性を高められる。さらに、サイジング剤を付与することにより集束性を増し、繊維の取り扱いが容易となる。炭素繊維束の形態としては、前駆体繊維の単糸を2本以上合わせて撚りをかけて熱処理をする有撚糸、単糸を2本以上合わせて撚りをかけて熱処理し、その後撚りを解く解撚糸、実質的に撚りをかけずに熱処理を行う無撚糸などいずれにも適用できるが、炭素繊維コードの加工性と強度特性のバランスを考慮すると無撚り糸または解撚糸とするのが好ましく、さらに、ゴム製品の加工性の面からは無撚り糸とするのが好ましい。
【0017】
また、本発明に使用する炭素繊維束は、JIS−R7601に基づいて測定される引張強度が、好ましくは4000MPa以上であり、より好ましくは4400MPa以上、特に好ましくは4800MPa以上であるのがよい。4000Mpa未満であると、ゴム材料が過大な応力を受けた際に、コードが破断し易くなり、高度の耐疲労性が要求されるゴム材料用途に使用できないことがある。なお、引張強度は高いほど好ましいが、少なくとも4500MPaあれば、本発明に用いる炭素繊維束としては十分である。
【0018】
また、本発明に使用する炭素繊維束は、そのフィラメント数が4000〜14000本であることが好ましく、6000〜12000本がより好ましい。4000本未満であると、樹脂組成物を含浸処理する工程において、フィラメント切れがおこることがあり、工程通過性が悪くなることがある。14000本以上であると、樹脂組成物を炭素繊維束内部まで含浸させることが困難になることがあり、炭素繊維コードの耐疲労性が不足することがある。
【0019】
本発明において、炭素繊維束に、エポキシ樹脂とゴムラテックスを必須成分とする樹脂組成物が含浸されていることが必要である。エポキシ樹脂が存在しないと炭素繊維コードとゴムとの接着性が不足することがあり、ゴム中での炭素繊維コードの耐疲労性が不足することがある。ゴムラテックスが存在しないと、炭素繊維コードの柔軟性が不足し、耐疲労性が不足することがある。
【0020】
本発明で用いられるエポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば、いかなる化合物を用いても差し支えない。
【0021】
分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物は特に限定されないが、例えば、分子内に水酸基を有する化合物から得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、分子内にアミノ基を有する化合物から得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、分子内にカルボキシル基を有する化合物から得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、分子内に不飽和結合を有する化合物から得られる環式脂肪族エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアネートなどの複素環式エポキシ樹脂、あるいはこれらから選ばれる2種類以上のタイプが分子内に混在するエポキシ樹脂などを用いることができる。
【0022】
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンのようなハロゲン含有エポキシド類との反応により得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールFと前記ハロゲン含有エポキシド類との反応により得られるビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニルと前記ハロゲン含有エポキシド類との反応により得られるビフェニル型エポキシ樹脂、レゾルシノールと前記ハロゲン含有エポキシド類との反応により得られるレゾルシノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールSと前記ハロゲン含有エポキシド類との反応により得られるビスフェノールS型エポキシ樹脂、多価アルコール類と前記ハロゲン含有エポキシド類との反応生成物であるポリエチレングリコール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、ビス−(3,4−エポキシ−6−メチル−ジシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシシクロヘキセンエポキシドなどの不飽和結合部分を酸化して得られるエポキシ樹脂、その他ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、およびこれらのハロゲンあるいはアルキル置換体などを使用することができる。
【0023】
中でも、炭素繊維コードの柔軟性を発現するため、環状構造を有しない脂肪族系エポキシ樹脂が好ましく、グリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなど多価アルコール類とエピクロロヒドリンとの反応物が好ましく用いることができる。
【0024】
とりわけ、グリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテルは、耐屈曲疲労性の向上に特に効果的であり、好ましく用いられる。
【0025】
本発明における樹脂組成物に含まれるゴムラテックスは特に限定されるものではなく、ブタジエンゴムラテックス、イソプレンゴムラテックス、ウレタンゴムラテックス、天然ゴムラテックス、スチレン−ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス、水素化アクリロニトリルブタジエンゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックスおよびビニルピリジン−スチレン−ブタジエンゴムラテックスなどが使用できる。これらは単独でも使用できるし、混合して使用することもできる。
【0026】
ゴムラテックスの種類は、伝動ベルトに用いるゴム基材との相性により適宜選択することができる。例えば、ゴム基材として、天然ゴムを用いる場合には、処理液中の全ゴム成分100重量%中、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエンゴムラテックスに由来するゴム成分が50重量%以上を占めることが好ましい。また、ゴム基材として、アクリロニトリル−ブタジエンゴムを用いる場合には、処理液中の全ゴム成分100重量%中、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックスに由来するゴム成分が、50重量%以上を占めることが好ましい。
【0027】
また本発明の炭素繊維コードは、上記樹脂組成物が含浸された後に撚りを掛けられたものであることが必要である。その撚り数は40〜80回/m、好ましくは45〜75回/m、より好ましくは50〜70回/mである。80回/mを超えると、キンクが発生しやすくなり、強力低下、操業性悪化につながることがある。40回/m以下であると、撚り数が十分でないため、曲げの応力を受けた時に応力を分散できず、一点に集中することから、疲労が進行しやすくなり、結果として耐疲労性が不足することがある。また、コード径、強力を目的に応じて調整するため、前記下撚りした炭素繊維コードを数本引き揃えて上撚りを施しても良い。この時、上撚り数は好ましくは10回/m〜100回/m、より好ましくは15回/m〜75回/mが良い。100回/mを超えると、キンクが発生しやすくなり、強力低下、操業性悪化につながることがある。10回/m以下であると、撚り数が十分でないため、曲げの応力を受けた時に応力を分散できず、一点に集中することから、疲労が進行しやすくなり、結果として耐疲労性が不足することがある。撚りの付与は通常用いられる撚糸方法を用いることができ、例えばリング撚糸機を使用することができるが、下撚りしたコードを数本引き揃えて上撚りを施す場合は、撚糸工程の安定性を高める目的から、ロープの製造工程に用いられているストランダーも好ましく使用される。
【0028】
本発明の炭素繊維コードは、強度が10c〜16cN/dTexであり、かつ強伸度SS曲線から求めた4cN/dTex荷重時の伸度が0.5〜1.2%である特性を同時に満足して始めて伝動ベルト補強用コードとしての優れた性能を発揮する。4cN/dTex荷重時の伸度が1.2%以上であると、ベルト走行中の伸びが発生し、応力の均一な伝達が困難となるため、耐疲労性が不足することがある。0.5%以下であると、過大な応力変形を受けた際に炭素繊維コードが破砕しやすくなり、伝動ベルト用途に使用できないことがある。伝動ベルト補強用コードとしては、伸度はより好ましくは0.6〜1.0%である。一方、強度が16cN/dTex以上であると、ベルト走行中の強力低下の影響が大きく、実用性に欠けるベルトになる。10cN/dTex以下では、伝動ベルトの細幅化の目的を達成することが困難になる。伝動ベルト補強用コードとしては、強度は好ましくは11cN/dTex〜15cN/dTexである。
【0029】
本発明の炭素繊維コードの強度、伸度は、炭素繊維束種、樹脂組成物組成、処理条件に影響され、これらの組み合わせにより上記範囲に設計することが必要である。本発明の炭素繊維コードは例えば以下の方法で得られる。コンピュートリーターシングルディッピングマシン(米リッツラー社製)を用い、炭素繊維束(東レ製”トレカ”(登録商標)T700S−12K−50C)を、無撚りのまま10m/分の速度で、給糸張力100g/本にて搬送する。エポキシ樹脂(ソルビトールポリグリシジルエーテル)とゴムラテックスの固形分比が2/3であり、かつ固形分濃度25%の樹脂組成物の水分散体の貯留したタンクに炭素繊維束を通し、エアーワイパー圧10kPaのエアーを吹きつけて液きりを行い、樹脂組成物の水分散体を炭素繊維束に付着させる。続いて200℃で240秒の熱処理を行い、樹脂付着量20重量%(炭素繊維束100重量%に対する量)のコードを得た。続いて、リング撚糸機にて60t/mのZ方向の撚りを加えることで本発明の炭素繊維コードが得られる。
【0030】
樹脂組成物の炭素繊維束への含浸処理は、炭素繊維束を樹脂組成物の水分散体(以下、処理液と呼ぶ)に浸漬した後、熱処理することによって行うことが好ましい。この熱処理は、炭素繊維束に含浸ないしは付着させた樹脂組成物を定着させるに足る温度であればよく、好ましくは100〜270℃にて数分間処理すればよい。
【0031】
本発明に用いられる前記処理液は、適度な濃度に調整し、炭素繊維束の処理に用いることができる。該処理液は、炭素繊維束への含浸性を高めるために、水を添加して、濃度を調整することができる。ここで用いる水としては、イオン交換水を用いることが、処理液の安定性の向上から好ましい。また、かかる処理液の濃度は、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは20〜50重量%がよい。10重量%未満であると、炭素繊維束内部への樹脂組成物の含浸が不十分となり、耐屈曲疲労性が悪化することがある。60重量%を超えると、処理液の保存安定性が悪くなることがあり、固形分の凝集、沈降がおこるため樹脂組成物の含浸処理が不可能になることがある。該処理液は、その保存安定性を向上させるため、界面活性剤を混合したものも好ましく用いられる。ここで、処理液の濃度とは、処理液に含まれる乾燥後の固形分の重量を、乾燥前の処理液の重量で除した値である。
【0032】
界面活性剤を処理液中に混合する場合の調整手順は、水、エポキシ化合物、界面活性剤を混合し、エポキシ化合物の均一分散液とし、これをゴムラテックスに添加、あるいはゴムラテックスに該均一分散液を混合することが好ましい。さらに、濃度を調整するため、これら混合液(水、エポキシ化合物、界面活性剤、ゴムラテックス)に水を混合してもよい。
【0033】
上記のような処理を施すことにより、炭素繊維束内部まで樹脂組成物が含浸され、炭素繊維単糸同士の擦過が防止されることにより、伸張、圧縮等の動的な変形に対する耐屈曲疲労性が向上するものと考えられる。
【0034】
本発明の炭素繊維コードはそのコード径が0.5〜2.5mmであることが好ましく、0.7〜2.3mmであることがより好ましく、0.9〜2.1mmであることが更に好ましい。0.5mm以下であると、炭素繊維コードの解じょ性が悪く、操業安定性に問題が生じることがある。2.5mm以上であると、炭素繊維コードの伸張部と圧縮部の差が大きくなるため耐疲労性が不足することがある。
【0035】
また本発明の炭素繊維コードは切断伸度が好ましくは1.2〜3.5%、より好ましくは1.5%〜3%である。3.5%以上であると、ベルト走行中の伸びが発生し、応力の均一な伝達が困難となるため、耐疲労性が不足することがある。1.2%以下であると、過大な応力変形を受けた際に炭素繊維コードが破砕しやすくなり、伝動ベルト用途に使用できないことがある。
【0036】
また、前記炭素繊維コードは、単位重量あたりのコード長さが、200〜2500m/kgであることが好ましい。200m/kg以下であると、コードが太くなり、コードの柔軟性が悪くなることから耐疲労性が不足することがある。2500m/kg以上であると、ベルト作製時の解じょ性が悪化することがある。
【0037】
本発明の樹脂組成物中に含まれるエポキシ樹脂の含有量は、樹脂組成物100重量部に対して好ましくは20〜80重量%であり、より好ましくは30〜70重量%、特に好ましくは40〜60重量%であるのがよい。20重量%以上であると、炭素繊維コードとゴムとの界面の接着性が低下することがなく、80重量%以上であると、コードの柔軟性が低下して耐疲労性が低下することがない。
【0038】
また前記樹脂組成物は、炭素繊維束100重量%に対して10〜30重量%付着されていることが好ましく、より好ましくは15〜25重量%である。10重量%未満であると含浸不良部分が生じ、樹脂による炭素繊維単糸の擦過防止効果が不十分となり、結果として炭素繊維コードの耐疲労性が悪くなることがある。30重量部を超えると、炭素繊維コードが剛くなりすぎる傾向があり、屈曲変形による座屈が生じやすく、結果として耐疲労性が低下することがある。
【0039】
また、本発明の炭素繊維コードは、表層部に接着剤層が被覆形成されていることが好ましい。接着剤層は、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物・ニトリル基含有ブタジエンゴムラテックスを含むゴムラテックス混合物(RFL)、又はゴム糊が好ましく用いられる。また、RFL層で被覆した後、さらにゴム糊を被覆したものも、接着性を向上する観点からより好ましい。
【0040】
RFLの調整方法は特に限定されないが、レゾルシンとホルマリンを初期縮合させたものを使用して調製することができる。特にアルカリ触媒下で初期縮合して得たレゾルシン・ホルマリン初期縮合物を用いてRFLを好ましく調製することができる。例えば、水酸化ナトリウムなどのアルカリ性化合物を含むアルカリ性水溶液内に、レゾルシンとホルマリンを添加混合して、室温で数時間静置し、レゾルシンとホルムアルデヒドを初期縮合させた後、ゴムラテックスを加えて混合エマルジョンとする方法により調製される。
【0041】
レゾルシン・ホルマリン初期縮合物は、レゾルシンとホルマリンのモル比が好ましくは1:0.3〜1:5、さらに好ましくは1:0.75〜1:2.0の範囲のものを用いることができる。この範囲をはずれると、コード/ゴム基材界面の接着性が不十分になることがある。
【0042】
RFL調製に用いるゴムラテックスとしては、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス、イソプレンゴムラテックス、ウレタンゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス、スチレン−ブタジエンゴムラテックス、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエンゴムラテックス、水素化ニトリルゴムラテックス等の合成ゴムラテックスを挙げることができる。
【0043】
ゴムラテックスの種類は、用いるゴム基材との相性により適宜選択することができる。例えば、ゴム基材として、天然ゴムを用いる場合には、処理液中の全ゴム成分100重量%中、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエンゴムラテックスに由来するゴム成分が50重量%以上を占めることが好ましい。また、ゴム基材として、アクリロニトリル−ブタジエンゴムを用いる場合には、処理液中の全ゴム成分100重量%中、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックスに由来するゴム成分が、50重量%以上を占めることが好ましい。
【0044】
RFLにおけるレゾルシンホルマリン初期縮合物とゴムラテックスの配合比率は、固形分重量比で1:3〜1:8であることが好ましく、1:4〜1:6の範囲であることがさらに好ましい。この範囲を外れると接着性が不十分になることがある。
【0045】
RFL液の濃度は10〜40重量%が好ましく、さらには15〜30重量%が好ましい。10重量%未満であると、RFLの付着量が不十分となり、接着力が不十分となることがある。RFL液の濃度が40重量%を超えると、RFL液の保存安定性が悪くなることがあり、固形分が凝集してくるため濃度低下等がおこり均一にRFLを付着させることが困難となる。ここで、RFL液の濃度とは、RFL液に含まれる乾燥後の固形物質の重量を乾燥前のRFL液の重量で除した値である。
【0046】
RFLの付着量は、炭素繊維コード100重量部に対して、乾燥後に好ましくは1〜20重量部、より好ましくは2〜15重量部、特に好ましくは3〜10重量部であるのがよい。1重量部未満であると、接着性が低下することがあり、20重量部を超えると、炭素繊維コードの柔軟性が低下することやコード作製プロセスにおいてロールへの付着(ガムアップ)が生じ、品質安定性が損なわれることがある。
【0047】
なお、RFL付着工程において、付着量をコントロールする方法として、ローラーで絞る方法とノズルを通してエアーを吹き付ける方法があり、特に限定されるものではないが、接着剤組成物を均一に付着せしめる目的から、後者の方法が好ましい。
【0048】
接着剤層に用いられるゴム糊とは、ゴム配合物と、ポリイソシアネート化合物を必須とする組成物を有機溶剤に溶解させたものである。ゴム配合物とは、ゴム、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤などの添加剤を含んだものである。
【0049】
ゴム配合物は特に限定されるものではなく、用いるゴム基材にあわせて適宜選択することができる。ゴム配合物に含まれるゴムは、例えば天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレン酢ビゴム、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム等がある、アクリロニトリルブタジエンゴム、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム等があり、これらの中から単独あるいは混合して用いることができる。
【0050】
加硫剤としては、硫黄、硫黄化合物および有機過酸化物があるが、硫黄化合物としては塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド等があるが、一般的には硫黄が使用される。
【0051】
また、加硫剤の有機過酸化物としては、例えばジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキサイド)−ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン−3,1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、4,4−ジ−t−オキシパレリック酸−nブチル、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン等が挙げられる。
【0052】
加硫剤としては、架橋反応を引き起こすものであれば特に有機過酸化物と硫黄化合物に限定されるものではない。ただ、好ましくは加工時の温度で架橋反応が極度に進まない加硫剤がより好ましい。
【0053】
加硫剤の添加量(配合量)としてはゴム100重量部に対して0.5%以下であることが好ましい。特に好ましくは0.1%未満である。0.5%を越えるとゴム組成物の架橋が進み、接着剤で処理されたコードが硬くなり、ひいてはゴム中での耐屈曲疲労性が極度に低下するなどの問題が生じる。
【0054】
ゴム糊に含まれるポリイソシアネート化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、トリレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート等のポリイソシアネートが好ましく用いられる。また、かかるポリイソシアネートにトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のように分子内に活性水素を2以上有する化合物を反応させて得られる多過アルコール付加ポリイソシアネートや、前記ポリイソシアネートにフェノール類、第3級アルコール類、第2級アミン類等のブロック化剤を反応させて、ポリイソシアネートのイソシアネート基をブロック化したブロック化ポリイソシアネートも、ポリイソシアネート化合物として好適に用いられる。
【0055】
ゴム糊に使用される有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、通常、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、エーテル類、トリクロロエチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素、メチルエチルケトン等が好適に用いられる。
【0056】
上記ゴム糊の付着処理は、有機溶剤を乾燥させるに足る熱処理を行えばよく、通常、200℃以下の温度にて数分間加熱すればよい。
【0057】
また、本発明の炭素繊維コードは、ゴムとの接着力が150N/20mm以上であることが好ましい。150N/20mm以下であると、伝動ベルト走行中にコードとゴムが剥離し、応力伝達が不可能になることがある。ここで、ゴムとの接着力は以下のようにして求めた値である。20×150×6mmの未加硫ゴム上の長手方向(20/炭素繊維コードのコード径)で求められる本数の前記炭素繊維コードを平行に並べ、加熱、加圧下で加硫する。放冷後、50mm/minの速度でゴムからコードを剥離する時に要する応力を接着力とした。また、加熱、加圧条件は、使用するゴムによって条件を適宜選択することができ、通常150〜170℃、20〜30分、2〜5MPaにて処理すれば良い。
【0058】
本発明の伝動ベルトは、ゴムを含んでなる基材が、前記炭素繊維コードにより補強されてなるものである。
【0059】
ここで基材100重量%中、ゴムは50〜100重量%含まれていることが好ましい。
【0060】
基材に含まれるゴムの具体例としては、アクリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エピクロロヒドリンンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、多硫化ゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム等を使用することができる。
【0061】
なお、基材には、主成分であるゴム以外に、カーボンブラック、シリカ等の無機充填剤、クマロン樹脂、フェノール樹脂等の有機充填剤、ナフテン系オイル等の軟化剤、老化防止剤、加硫助剤、加工助剤等を必要に応じて含ませてもよい。
【0062】
本発明の伝動ベルトは、例えば、次の方法により製造することができる。すなわち、一方向に引き揃えたコードを、両面からゴムを主成分として含むシート状の基材で挟み込んだ後、かかるコード/ゴム複合体をプレス機内で加熱・加圧し、ゴムを加硫させ、成形する方法である。
【0063】
こうした基材に用いるゴムの種類に応じて、同種のゴム成分を前述の炭素繊維コードに用いる樹脂組成物中に含有させることが、伝動ベルトとして良好な接着性、耐屈曲疲労性を得るために好ましい。
【0064】
本発明の伝動ベルトは、コードとゴム基材が高い接着力を有しているため、炭素繊維コードの強力が伝動ベルトの高い強力を発現し、高負荷伝達性を有するとともに、高い耐屈曲疲労性を有するものである。また、同様に炭素繊維コードの弾性率がベルト伸びに反映され、従来のガラス繊維コードで補強されたベルトに対し、伸びが少なくなり、精密駆動、高負荷の確実な伝動に効果を発揮する。
【0065】
【実施例】
以下、実施例により本発明についてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0066】
なお、実施例における樹脂組成物、炭素繊維コードの作製に当たり、以下に示す原材料を用いた。
<原材料>
(ゴムラテックス)
・アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス:LX1571(日本ゼオン(株)製、固形分濃度40.0%の水分散体)
・アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス:LX1562(日本ゼオン(株)製、固形分濃度40.0%の水分散体)
・水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス:ZLX−B(日本ゼオン(株)製、固形分濃度40.0%の水分散体)
(エポキシ樹脂)
・ソルビトールポリグリシジルエーテル:”デナコール”EX−614B(ナガセ化成工業(株)製)
・ソルビトールポリグリシジルエーテル:”デナコール”EX−313(ナガセ化成工業(株)製)
(ガラス繊維コード)
下記のHNBR用の処理を施されたディップコード(旭ファイバーグラス(株)製”ラバーコーテッドヤーン”)を使用した。
・ECG150 3/13(旭ファイバーグラス(株)製):汎用ガラス繊維(表5のコードA)
・SCE150 3/13(旭ファイバーグラス(株)製):高強度ガラス繊維(表5のコードB)
(炭素繊維束)
・”トレカ”(登録商標)T700S−12K(東レ(株)製):引張強度4900MPa
・”トレカ”(登録商標)T700S−6K(東レ(株)製):引張強度4900MPa
・”トレカ”(登録商標)M60J−6K(東レ(株)製):引張強度3820MPa
・”トレカ”(登録商標)T1000G−12K(東レ(株)製):引張強度6370MPa
また、本発明において用いる炭素繊維束の評価方法は、以下に示すとおりである。
<炭素繊維コードの評価方法>
(1)接着剥離力(平剥離法)
20×150×6(mm)の未加硫ゴム配合物(表4)上の長手方向に、20/炭素繊維コードのコード径)本で求められる本数の炭素繊維コードを平行に敷き詰め、3MPaの加圧下で160℃、30分間プレス加硫を行い、放冷後、ゴムからコードを剥離することにより測定した。剥離スピードは50mm/minで行い、その時の剥離力をN/20mmで表示した。
(2)耐屈曲疲労性評価方法(FS法)
JIS L−1017の記載のファイヤストン法(FS法)に準じた方法で測定した。表4に記載の未加硫ゴムシートをドラムに捲回し、その上に炭素繊維コードを15本/20mmの打ち込み本数で等間隔に捲回し、さらにその上に同一のゴムシートを捲回し、ゴム/コード/ゴムの三層体を準備した。この三層体の上に厚み調整のためのゴムシートを重ね、20×370×5(mm)のベルト状試験片を作製した。これを3MPaの加圧下、160℃、30分間プレス加硫を行い、ベルト状試験片を得た。該試験片を1インチプーリーにかけ、190回/分の回転数で、室温下、48時間往復摩擦運動させた。疲労後の試験片からコードを取り出し、強力を測定した。疲労前と疲労後の強力の比(強力保持率、%で示す)を耐屈曲疲労性の指標とした。
(3)炭素繊維束の引張強度
JIS R7601に従って測定した。なお、引張試験片は、次の樹脂組成物を炭素繊維束に含浸し、130℃、35分の条件で加熱硬化させて作成した。
【0067】
樹脂組成:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−シクロヘキサン−カルボキシレート(100重量部)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(3重量部)/アセトン(4重量部)
(4)炭素繊維コードの強度、伸度
JIS L1017に準じて測定した。測定する炭素繊維コードの両端をチャックに挟み込んで固定する。ここで、チャック間のサンプル長は250mmとした。温度25℃、湿度40%の環境下、速度50mm/分で引張り、その最大荷重値、伸度を測定し、炭素繊維コードの強度を算出した。なお、強度算出時の繊度(dTex)は、付着した樹脂を含む総繊度を用いた。4cN/dTex時伸度は、強伸度SS曲線チャートから読みとった。
(5)コード径
JIS L1017に準じて測定した。測定する炭素繊維コードを4本一組とし、たるまないように平行に並べ、ダイヤルゲージで5ヶ所を測定し、その平均値をコード径とした。
(6)単位重量あたりのコード長さ
測定する炭素繊維コードを50m採取し、その重量を求め、この数値から1kgあたりのコード長さを算出した。
<伝動ベルトの評価方法>
耐屈曲疲労試験(FS試験)で用いた試験片(疲労前)を5mm幅に裁断し、ベルトの簡易評価試験片として用いた。
(1)ベルト強力
上記試験片をインストロン引張試験機で、温度25℃、湿度40%の環境下、速度50mm/分で引張り、その最大荷重値を読みとった。10回の試験を行った平均値をベルト強力(kN/5mm)とした。
(2)ベルト伸び
上記試験片をインストロン引張試験機で、温度25℃、湿度40%の環境下、速度50mm/分で引張り、500Nのベルト張力をかけたときのベルトの伸びを読みとった。10回の試験を行った平均値をベルト伸び(%)とした。
<炭素繊維束の樹脂組成物付着処理>(表5コードC〜M)
コンピュートリーターシングルディッピングマシン(米リッツラー社製)を用いて、炭素繊維束を10m/分の速度で搬送し、表1に示す樹脂組成物(1st組成)の水溶液を付与し、200℃で240秒熱処理した。なおコードJはこの処理を行わなかった。続いて、リング撚糸機を用いてZ方向の下撚りを加えた。さらにコードH、K、Mでは下撚りしたコードをそれぞれ6本、2本、2本引き揃え、ストランダーを用いてS方向の上撚りを加えた。続いて、表2に示すRFL(2nd処理)を付与し、エアーワイパー圧0.1kg/cm2の条件で液きりを行い、200℃で100秒間熱処理した。なお、コードCではこの処理を行わなかった。さらに表3に示すゴム糊(3rd処理)を付与し、100℃で100秒間熱処理した。
【0068】
得られた炭素繊維コードの樹脂付着量、撚り数は表5に示した。
【0069】
各実施例、比較例で用いた原糸、樹脂組成物、基材のゴム組成及び測定結果を下表1〜6に纏めて示した。表6に示す評価結果から判るように、本発明による伝動ベルト用炭素繊維コードは高負荷伝達性に優れ、かつ耐屈曲疲労性に優れる。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】
【0075】
【表6】
【0076】
【発明の効果】
本発明によれば、伝動ベルトの補強用に好適に用いられる高強度、高弾性率で、かつ接着性、耐屈曲疲労性に優れる伝動ベルト補強用炭素繊維コード、及び伝動ベルトを提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、伝動ベルトの補強用に好適に用いられる高強度、高弾性率で、かつ接着性、耐屈曲疲労性に優れる伝動ベルト補強用炭素繊維コード、及びこれを用いた伝動ベルトに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、歯付きベルト、Vベルト、平ベルト等の各種伝動ベルトでは、高強力、高弾性率、高寸法安定性等の特性が要求されることから、ベルト本体(通常はゴム)には繊維からなる補強用コードや布状物等の抗張体が埋設されている。例えば自動車用タイミングベルト等の抗張体には、噛み合い等の問題から、弾性率の大きいガラス繊維コードやアラミドコードが用いられている。
【0003】
近年、自動車用タイミングベルトでは、内燃機関の高性能化により、ベルトはより狭小なスペースに配置されるようになってきた。このため、抗張体として、ベルトの細幅化に対応できる高負荷伝達可能な高強度繊維が求められている。また、一般産業用ベルトにおいても、高負荷をかけた場合の精密駆動、およびベルト伸びによる歯の異常摩耗低減が求められ、さらなる高弾性率繊維が求められている。
【0004】
これらの問題を解決するべく、高強度ガラス繊維をタイミングベルト用途に用いる手法が開示されている(特許文献1参照)。しかしかかる手法によるガラス繊維コードでも、要求されるベルトの高性能化は得られない。そこで、上記抗張体として炭素繊維からなる撚糸コードを使用することが提案されている(特許文献2、3参照)。しかし、これら文献における炭素繊維コードは、単にガラス繊維コードやアラミドコードの代わりに炭素繊維コードを使用したのみであって特に伝動ベルトとしての耐疲労性が悪く、伝動ベルト用の抗張体として実用に耐えるものではなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2000−9186号公報
【0006】
【特許文献2】特開昭61−192943号公報
【0007】
【特許文献3】特開平8−174708号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、伝動ベルトの細幅化に対応できる高負荷伝達性と、高い耐屈曲疲労性を発現する伝動ベルト補強用炭素繊維コードを提供せんとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の伝動ベルト補強用炭素繊維コードは炭素繊維束にエポキシ樹脂とゴムラテックスを含む樹脂組成物が付着した40〜80回/mの下撚り数を有する伝動ベルト用コードであって、該コードの強度が10〜16cN/dTexであり、強伸度SS曲線から求めた4cN/dTex荷重時の伸度が0.5〜1.2%であることを特徴とする。
【0010】
そして、本発明の伝動ベルト補強用炭素繊維コードに於いては、次の(1)〜(7)がそれぞれ好ましい態様として挙げられる。
(1)コード径が0.5〜2.5mmであること。
(2)切断伸度が1.2〜3.5%であること。
(3)単位重量あたりのコード長さが、200〜2500m/kgであること。
(4)前記エポキシ樹脂の含有量が樹脂組成物全重量に対して、20〜80重量%であること。
(5)前記樹脂組成物の付着量が炭素繊維全重量に対し10〜30重量%であること。
(6)前記コードの表層部が接着剤層で被覆形成されていること。
(7)ゴムと前記コードの接着剥離力が150N/20mm以上であること。
【0011】
また、本発明の伝動ベルトは前記記載の伝動ベルト用炭素繊維コードがベルト芯体として使用されてなることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の伝動ベルト補強用炭素繊維コード(以下、炭素繊維コードと呼ぶ)は、炭素繊維束にエポキシ樹脂とゴムラテックスを含む樹脂組成物を含浸した後、40〜80回/mの下撚りを施した炭素繊維コードであって、該コードの4cN/dTex荷重下の伸度が0.5〜1.2%であり、強度が10〜16cN/dTexである。上記の撚数、伸度および強度の炭素繊維コードとすることにより、伝動ベルト、特に歯付きの伝動ベルト補強用のコードとして優れた特性を示す。
【0013】
本発明に用いる炭素繊維束は、その製造方法が限定されるものではないが、紡糸工程により前駆体繊維を得て、その後、耐炎化(熱安定化、不融化)工程、炭化(炭素化)工程を経て炭素繊維束としたものを用いることができる。さらに熱処理を施した黒鉛繊維束も本発明でいうところの炭素繊維束に含むものである。なお、かかる炭素繊維束を得るに際しての各工程の処理温度、昇温速度、処理速度、延伸比、張力などの条件は、目的とする炭素繊維束の特性によって適宜選択することができる。例えば前駆体繊維束を300℃未満の空気中で耐炎化処理し、かかる耐炎化繊維を300℃以上2000℃未満の不活性雰囲気中で炭化処理して炭素繊維束としたものを用いることができる。更に2000〜3000℃の不活性雰囲気中で熱処理してなる黒鉛繊維を用いることができる。
【0014】
本発明に用いる炭素繊維束の前駆体繊維束としては、ポリアクリロニトリル、レーヨン、リグニン、ポリビニルアルコール、ポリアセチレン、ピッチなどを原料とする各種前駆体繊維束が挙げられるが、特にこれらに限定するものではない。高強度という点では、ポリアクリロニトリルを原料とした前駆体が好ましく用いられる。
【0015】
前駆体繊維束を得るための紡糸方法としては、原料に応じて湿式紡糸、乾式紡糸、乾湿式紡糸、溶融紡糸などが挙げられる。操業性の点からは、湿式紡糸、乾湿式紡糸が好ましく用いられ、乾湿式紡糸がより好ましい。
【0016】
さらに、製品目的によっては得られた炭素繊維束を仕上げ処理することが好ましい。かかる仕上げ処理には表面処理やサイジング剤の付与などが含まれる。かかる表面処理法としては、気相中での加熱、紫外線等による酸化、液相中で酸化剤を用いた化学的酸化又は水溶液中で電気化学的手法により酸化する方法などが挙げられる。かかる処理により本発明の樹脂組成物との親和性、例えば接着性、濡れ性、分散性等の表面特性を高められる。さらに、サイジング剤を付与することにより集束性を増し、繊維の取り扱いが容易となる。炭素繊維束の形態としては、前駆体繊維の単糸を2本以上合わせて撚りをかけて熱処理をする有撚糸、単糸を2本以上合わせて撚りをかけて熱処理し、その後撚りを解く解撚糸、実質的に撚りをかけずに熱処理を行う無撚糸などいずれにも適用できるが、炭素繊維コードの加工性と強度特性のバランスを考慮すると無撚り糸または解撚糸とするのが好ましく、さらに、ゴム製品の加工性の面からは無撚り糸とするのが好ましい。
【0017】
また、本発明に使用する炭素繊維束は、JIS−R7601に基づいて測定される引張強度が、好ましくは4000MPa以上であり、より好ましくは4400MPa以上、特に好ましくは4800MPa以上であるのがよい。4000Mpa未満であると、ゴム材料が過大な応力を受けた際に、コードが破断し易くなり、高度の耐疲労性が要求されるゴム材料用途に使用できないことがある。なお、引張強度は高いほど好ましいが、少なくとも4500MPaあれば、本発明に用いる炭素繊維束としては十分である。
【0018】
また、本発明に使用する炭素繊維束は、そのフィラメント数が4000〜14000本であることが好ましく、6000〜12000本がより好ましい。4000本未満であると、樹脂組成物を含浸処理する工程において、フィラメント切れがおこることがあり、工程通過性が悪くなることがある。14000本以上であると、樹脂組成物を炭素繊維束内部まで含浸させることが困難になることがあり、炭素繊維コードの耐疲労性が不足することがある。
【0019】
本発明において、炭素繊維束に、エポキシ樹脂とゴムラテックスを必須成分とする樹脂組成物が含浸されていることが必要である。エポキシ樹脂が存在しないと炭素繊維コードとゴムとの接着性が不足することがあり、ゴム中での炭素繊維コードの耐疲労性が不足することがある。ゴムラテックスが存在しないと、炭素繊維コードの柔軟性が不足し、耐疲労性が不足することがある。
【0020】
本発明で用いられるエポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば、いかなる化合物を用いても差し支えない。
【0021】
分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物は特に限定されないが、例えば、分子内に水酸基を有する化合物から得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、分子内にアミノ基を有する化合物から得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、分子内にカルボキシル基を有する化合物から得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、分子内に不飽和結合を有する化合物から得られる環式脂肪族エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアネートなどの複素環式エポキシ樹脂、あるいはこれらから選ばれる2種類以上のタイプが分子内に混在するエポキシ樹脂などを用いることができる。
【0022】
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンのようなハロゲン含有エポキシド類との反応により得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールFと前記ハロゲン含有エポキシド類との反応により得られるビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニルと前記ハロゲン含有エポキシド類との反応により得られるビフェニル型エポキシ樹脂、レゾルシノールと前記ハロゲン含有エポキシド類との反応により得られるレゾルシノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールSと前記ハロゲン含有エポキシド類との反応により得られるビスフェノールS型エポキシ樹脂、多価アルコール類と前記ハロゲン含有エポキシド類との反応生成物であるポリエチレングリコール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、ビス−(3,4−エポキシ−6−メチル−ジシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシシクロヘキセンエポキシドなどの不飽和結合部分を酸化して得られるエポキシ樹脂、その他ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、およびこれらのハロゲンあるいはアルキル置換体などを使用することができる。
【0023】
中でも、炭素繊維コードの柔軟性を発現するため、環状構造を有しない脂肪族系エポキシ樹脂が好ましく、グリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなど多価アルコール類とエピクロロヒドリンとの反応物が好ましく用いることができる。
【0024】
とりわけ、グリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテルは、耐屈曲疲労性の向上に特に効果的であり、好ましく用いられる。
【0025】
本発明における樹脂組成物に含まれるゴムラテックスは特に限定されるものではなく、ブタジエンゴムラテックス、イソプレンゴムラテックス、ウレタンゴムラテックス、天然ゴムラテックス、スチレン−ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス、水素化アクリロニトリルブタジエンゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックスおよびビニルピリジン−スチレン−ブタジエンゴムラテックスなどが使用できる。これらは単独でも使用できるし、混合して使用することもできる。
【0026】
ゴムラテックスの種類は、伝動ベルトに用いるゴム基材との相性により適宜選択することができる。例えば、ゴム基材として、天然ゴムを用いる場合には、処理液中の全ゴム成分100重量%中、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエンゴムラテックスに由来するゴム成分が50重量%以上を占めることが好ましい。また、ゴム基材として、アクリロニトリル−ブタジエンゴムを用いる場合には、処理液中の全ゴム成分100重量%中、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックスに由来するゴム成分が、50重量%以上を占めることが好ましい。
【0027】
また本発明の炭素繊維コードは、上記樹脂組成物が含浸された後に撚りを掛けられたものであることが必要である。その撚り数は40〜80回/m、好ましくは45〜75回/m、より好ましくは50〜70回/mである。80回/mを超えると、キンクが発生しやすくなり、強力低下、操業性悪化につながることがある。40回/m以下であると、撚り数が十分でないため、曲げの応力を受けた時に応力を分散できず、一点に集中することから、疲労が進行しやすくなり、結果として耐疲労性が不足することがある。また、コード径、強力を目的に応じて調整するため、前記下撚りした炭素繊維コードを数本引き揃えて上撚りを施しても良い。この時、上撚り数は好ましくは10回/m〜100回/m、より好ましくは15回/m〜75回/mが良い。100回/mを超えると、キンクが発生しやすくなり、強力低下、操業性悪化につながることがある。10回/m以下であると、撚り数が十分でないため、曲げの応力を受けた時に応力を分散できず、一点に集中することから、疲労が進行しやすくなり、結果として耐疲労性が不足することがある。撚りの付与は通常用いられる撚糸方法を用いることができ、例えばリング撚糸機を使用することができるが、下撚りしたコードを数本引き揃えて上撚りを施す場合は、撚糸工程の安定性を高める目的から、ロープの製造工程に用いられているストランダーも好ましく使用される。
【0028】
本発明の炭素繊維コードは、強度が10c〜16cN/dTexであり、かつ強伸度SS曲線から求めた4cN/dTex荷重時の伸度が0.5〜1.2%である特性を同時に満足して始めて伝動ベルト補強用コードとしての優れた性能を発揮する。4cN/dTex荷重時の伸度が1.2%以上であると、ベルト走行中の伸びが発生し、応力の均一な伝達が困難となるため、耐疲労性が不足することがある。0.5%以下であると、過大な応力変形を受けた際に炭素繊維コードが破砕しやすくなり、伝動ベルト用途に使用できないことがある。伝動ベルト補強用コードとしては、伸度はより好ましくは0.6〜1.0%である。一方、強度が16cN/dTex以上であると、ベルト走行中の強力低下の影響が大きく、実用性に欠けるベルトになる。10cN/dTex以下では、伝動ベルトの細幅化の目的を達成することが困難になる。伝動ベルト補強用コードとしては、強度は好ましくは11cN/dTex〜15cN/dTexである。
【0029】
本発明の炭素繊維コードの強度、伸度は、炭素繊維束種、樹脂組成物組成、処理条件に影響され、これらの組み合わせにより上記範囲に設計することが必要である。本発明の炭素繊維コードは例えば以下の方法で得られる。コンピュートリーターシングルディッピングマシン(米リッツラー社製)を用い、炭素繊維束(東レ製”トレカ”(登録商標)T700S−12K−50C)を、無撚りのまま10m/分の速度で、給糸張力100g/本にて搬送する。エポキシ樹脂(ソルビトールポリグリシジルエーテル)とゴムラテックスの固形分比が2/3であり、かつ固形分濃度25%の樹脂組成物の水分散体の貯留したタンクに炭素繊維束を通し、エアーワイパー圧10kPaのエアーを吹きつけて液きりを行い、樹脂組成物の水分散体を炭素繊維束に付着させる。続いて200℃で240秒の熱処理を行い、樹脂付着量20重量%(炭素繊維束100重量%に対する量)のコードを得た。続いて、リング撚糸機にて60t/mのZ方向の撚りを加えることで本発明の炭素繊維コードが得られる。
【0030】
樹脂組成物の炭素繊維束への含浸処理は、炭素繊維束を樹脂組成物の水分散体(以下、処理液と呼ぶ)に浸漬した後、熱処理することによって行うことが好ましい。この熱処理は、炭素繊維束に含浸ないしは付着させた樹脂組成物を定着させるに足る温度であればよく、好ましくは100〜270℃にて数分間処理すればよい。
【0031】
本発明に用いられる前記処理液は、適度な濃度に調整し、炭素繊維束の処理に用いることができる。該処理液は、炭素繊維束への含浸性を高めるために、水を添加して、濃度を調整することができる。ここで用いる水としては、イオン交換水を用いることが、処理液の安定性の向上から好ましい。また、かかる処理液の濃度は、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは20〜50重量%がよい。10重量%未満であると、炭素繊維束内部への樹脂組成物の含浸が不十分となり、耐屈曲疲労性が悪化することがある。60重量%を超えると、処理液の保存安定性が悪くなることがあり、固形分の凝集、沈降がおこるため樹脂組成物の含浸処理が不可能になることがある。該処理液は、その保存安定性を向上させるため、界面活性剤を混合したものも好ましく用いられる。ここで、処理液の濃度とは、処理液に含まれる乾燥後の固形分の重量を、乾燥前の処理液の重量で除した値である。
【0032】
界面活性剤を処理液中に混合する場合の調整手順は、水、エポキシ化合物、界面活性剤を混合し、エポキシ化合物の均一分散液とし、これをゴムラテックスに添加、あるいはゴムラテックスに該均一分散液を混合することが好ましい。さらに、濃度を調整するため、これら混合液(水、エポキシ化合物、界面活性剤、ゴムラテックス)に水を混合してもよい。
【0033】
上記のような処理を施すことにより、炭素繊維束内部まで樹脂組成物が含浸され、炭素繊維単糸同士の擦過が防止されることにより、伸張、圧縮等の動的な変形に対する耐屈曲疲労性が向上するものと考えられる。
【0034】
本発明の炭素繊維コードはそのコード径が0.5〜2.5mmであることが好ましく、0.7〜2.3mmであることがより好ましく、0.9〜2.1mmであることが更に好ましい。0.5mm以下であると、炭素繊維コードの解じょ性が悪く、操業安定性に問題が生じることがある。2.5mm以上であると、炭素繊維コードの伸張部と圧縮部の差が大きくなるため耐疲労性が不足することがある。
【0035】
また本発明の炭素繊維コードは切断伸度が好ましくは1.2〜3.5%、より好ましくは1.5%〜3%である。3.5%以上であると、ベルト走行中の伸びが発生し、応力の均一な伝達が困難となるため、耐疲労性が不足することがある。1.2%以下であると、過大な応力変形を受けた際に炭素繊維コードが破砕しやすくなり、伝動ベルト用途に使用できないことがある。
【0036】
また、前記炭素繊維コードは、単位重量あたりのコード長さが、200〜2500m/kgであることが好ましい。200m/kg以下であると、コードが太くなり、コードの柔軟性が悪くなることから耐疲労性が不足することがある。2500m/kg以上であると、ベルト作製時の解じょ性が悪化することがある。
【0037】
本発明の樹脂組成物中に含まれるエポキシ樹脂の含有量は、樹脂組成物100重量部に対して好ましくは20〜80重量%であり、より好ましくは30〜70重量%、特に好ましくは40〜60重量%であるのがよい。20重量%以上であると、炭素繊維コードとゴムとの界面の接着性が低下することがなく、80重量%以上であると、コードの柔軟性が低下して耐疲労性が低下することがない。
【0038】
また前記樹脂組成物は、炭素繊維束100重量%に対して10〜30重量%付着されていることが好ましく、より好ましくは15〜25重量%である。10重量%未満であると含浸不良部分が生じ、樹脂による炭素繊維単糸の擦過防止効果が不十分となり、結果として炭素繊維コードの耐疲労性が悪くなることがある。30重量部を超えると、炭素繊維コードが剛くなりすぎる傾向があり、屈曲変形による座屈が生じやすく、結果として耐疲労性が低下することがある。
【0039】
また、本発明の炭素繊維コードは、表層部に接着剤層が被覆形成されていることが好ましい。接着剤層は、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物・ニトリル基含有ブタジエンゴムラテックスを含むゴムラテックス混合物(RFL)、又はゴム糊が好ましく用いられる。また、RFL層で被覆した後、さらにゴム糊を被覆したものも、接着性を向上する観点からより好ましい。
【0040】
RFLの調整方法は特に限定されないが、レゾルシンとホルマリンを初期縮合させたものを使用して調製することができる。特にアルカリ触媒下で初期縮合して得たレゾルシン・ホルマリン初期縮合物を用いてRFLを好ましく調製することができる。例えば、水酸化ナトリウムなどのアルカリ性化合物を含むアルカリ性水溶液内に、レゾルシンとホルマリンを添加混合して、室温で数時間静置し、レゾルシンとホルムアルデヒドを初期縮合させた後、ゴムラテックスを加えて混合エマルジョンとする方法により調製される。
【0041】
レゾルシン・ホルマリン初期縮合物は、レゾルシンとホルマリンのモル比が好ましくは1:0.3〜1:5、さらに好ましくは1:0.75〜1:2.0の範囲のものを用いることができる。この範囲をはずれると、コード/ゴム基材界面の接着性が不十分になることがある。
【0042】
RFL調製に用いるゴムラテックスとしては、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス、イソプレンゴムラテックス、ウレタンゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス、スチレン−ブタジエンゴムラテックス、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエンゴムラテックス、水素化ニトリルゴムラテックス等の合成ゴムラテックスを挙げることができる。
【0043】
ゴムラテックスの種類は、用いるゴム基材との相性により適宜選択することができる。例えば、ゴム基材として、天然ゴムを用いる場合には、処理液中の全ゴム成分100重量%中、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエンゴムラテックスに由来するゴム成分が50重量%以上を占めることが好ましい。また、ゴム基材として、アクリロニトリル−ブタジエンゴムを用いる場合には、処理液中の全ゴム成分100重量%中、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックスに由来するゴム成分が、50重量%以上を占めることが好ましい。
【0044】
RFLにおけるレゾルシンホルマリン初期縮合物とゴムラテックスの配合比率は、固形分重量比で1:3〜1:8であることが好ましく、1:4〜1:6の範囲であることがさらに好ましい。この範囲を外れると接着性が不十分になることがある。
【0045】
RFL液の濃度は10〜40重量%が好ましく、さらには15〜30重量%が好ましい。10重量%未満であると、RFLの付着量が不十分となり、接着力が不十分となることがある。RFL液の濃度が40重量%を超えると、RFL液の保存安定性が悪くなることがあり、固形分が凝集してくるため濃度低下等がおこり均一にRFLを付着させることが困難となる。ここで、RFL液の濃度とは、RFL液に含まれる乾燥後の固形物質の重量を乾燥前のRFL液の重量で除した値である。
【0046】
RFLの付着量は、炭素繊維コード100重量部に対して、乾燥後に好ましくは1〜20重量部、より好ましくは2〜15重量部、特に好ましくは3〜10重量部であるのがよい。1重量部未満であると、接着性が低下することがあり、20重量部を超えると、炭素繊維コードの柔軟性が低下することやコード作製プロセスにおいてロールへの付着(ガムアップ)が生じ、品質安定性が損なわれることがある。
【0047】
なお、RFL付着工程において、付着量をコントロールする方法として、ローラーで絞る方法とノズルを通してエアーを吹き付ける方法があり、特に限定されるものではないが、接着剤組成物を均一に付着せしめる目的から、後者の方法が好ましい。
【0048】
接着剤層に用いられるゴム糊とは、ゴム配合物と、ポリイソシアネート化合物を必須とする組成物を有機溶剤に溶解させたものである。ゴム配合物とは、ゴム、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤などの添加剤を含んだものである。
【0049】
ゴム配合物は特に限定されるものではなく、用いるゴム基材にあわせて適宜選択することができる。ゴム配合物に含まれるゴムは、例えば天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレン酢ビゴム、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム等がある、アクリロニトリルブタジエンゴム、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム等があり、これらの中から単独あるいは混合して用いることができる。
【0050】
加硫剤としては、硫黄、硫黄化合物および有機過酸化物があるが、硫黄化合物としては塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド等があるが、一般的には硫黄が使用される。
【0051】
また、加硫剤の有機過酸化物としては、例えばジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキサイド)−ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン−3,1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、4,4−ジ−t−オキシパレリック酸−nブチル、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン等が挙げられる。
【0052】
加硫剤としては、架橋反応を引き起こすものであれば特に有機過酸化物と硫黄化合物に限定されるものではない。ただ、好ましくは加工時の温度で架橋反応が極度に進まない加硫剤がより好ましい。
【0053】
加硫剤の添加量(配合量)としてはゴム100重量部に対して0.5%以下であることが好ましい。特に好ましくは0.1%未満である。0.5%を越えるとゴム組成物の架橋が進み、接着剤で処理されたコードが硬くなり、ひいてはゴム中での耐屈曲疲労性が極度に低下するなどの問題が生じる。
【0054】
ゴム糊に含まれるポリイソシアネート化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、トリレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート等のポリイソシアネートが好ましく用いられる。また、かかるポリイソシアネートにトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のように分子内に活性水素を2以上有する化合物を反応させて得られる多過アルコール付加ポリイソシアネートや、前記ポリイソシアネートにフェノール類、第3級アルコール類、第2級アミン類等のブロック化剤を反応させて、ポリイソシアネートのイソシアネート基をブロック化したブロック化ポリイソシアネートも、ポリイソシアネート化合物として好適に用いられる。
【0055】
ゴム糊に使用される有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、通常、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、エーテル類、トリクロロエチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素、メチルエチルケトン等が好適に用いられる。
【0056】
上記ゴム糊の付着処理は、有機溶剤を乾燥させるに足る熱処理を行えばよく、通常、200℃以下の温度にて数分間加熱すればよい。
【0057】
また、本発明の炭素繊維コードは、ゴムとの接着力が150N/20mm以上であることが好ましい。150N/20mm以下であると、伝動ベルト走行中にコードとゴムが剥離し、応力伝達が不可能になることがある。ここで、ゴムとの接着力は以下のようにして求めた値である。20×150×6mmの未加硫ゴム上の長手方向(20/炭素繊維コードのコード径)で求められる本数の前記炭素繊維コードを平行に並べ、加熱、加圧下で加硫する。放冷後、50mm/minの速度でゴムからコードを剥離する時に要する応力を接着力とした。また、加熱、加圧条件は、使用するゴムによって条件を適宜選択することができ、通常150〜170℃、20〜30分、2〜5MPaにて処理すれば良い。
【0058】
本発明の伝動ベルトは、ゴムを含んでなる基材が、前記炭素繊維コードにより補強されてなるものである。
【0059】
ここで基材100重量%中、ゴムは50〜100重量%含まれていることが好ましい。
【0060】
基材に含まれるゴムの具体例としては、アクリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エピクロロヒドリンンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、多硫化ゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム等を使用することができる。
【0061】
なお、基材には、主成分であるゴム以外に、カーボンブラック、シリカ等の無機充填剤、クマロン樹脂、フェノール樹脂等の有機充填剤、ナフテン系オイル等の軟化剤、老化防止剤、加硫助剤、加工助剤等を必要に応じて含ませてもよい。
【0062】
本発明の伝動ベルトは、例えば、次の方法により製造することができる。すなわち、一方向に引き揃えたコードを、両面からゴムを主成分として含むシート状の基材で挟み込んだ後、かかるコード/ゴム複合体をプレス機内で加熱・加圧し、ゴムを加硫させ、成形する方法である。
【0063】
こうした基材に用いるゴムの種類に応じて、同種のゴム成分を前述の炭素繊維コードに用いる樹脂組成物中に含有させることが、伝動ベルトとして良好な接着性、耐屈曲疲労性を得るために好ましい。
【0064】
本発明の伝動ベルトは、コードとゴム基材が高い接着力を有しているため、炭素繊維コードの強力が伝動ベルトの高い強力を発現し、高負荷伝達性を有するとともに、高い耐屈曲疲労性を有するものである。また、同様に炭素繊維コードの弾性率がベルト伸びに反映され、従来のガラス繊維コードで補強されたベルトに対し、伸びが少なくなり、精密駆動、高負荷の確実な伝動に効果を発揮する。
【0065】
【実施例】
以下、実施例により本発明についてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0066】
なお、実施例における樹脂組成物、炭素繊維コードの作製に当たり、以下に示す原材料を用いた。
<原材料>
(ゴムラテックス)
・アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス:LX1571(日本ゼオン(株)製、固形分濃度40.0%の水分散体)
・アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス:LX1562(日本ゼオン(株)製、固形分濃度40.0%の水分散体)
・水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス:ZLX−B(日本ゼオン(株)製、固形分濃度40.0%の水分散体)
(エポキシ樹脂)
・ソルビトールポリグリシジルエーテル:”デナコール”EX−614B(ナガセ化成工業(株)製)
・ソルビトールポリグリシジルエーテル:”デナコール”EX−313(ナガセ化成工業(株)製)
(ガラス繊維コード)
下記のHNBR用の処理を施されたディップコード(旭ファイバーグラス(株)製”ラバーコーテッドヤーン”)を使用した。
・ECG150 3/13(旭ファイバーグラス(株)製):汎用ガラス繊維(表5のコードA)
・SCE150 3/13(旭ファイバーグラス(株)製):高強度ガラス繊維(表5のコードB)
(炭素繊維束)
・”トレカ”(登録商標)T700S−12K(東レ(株)製):引張強度4900MPa
・”トレカ”(登録商標)T700S−6K(東レ(株)製):引張強度4900MPa
・”トレカ”(登録商標)M60J−6K(東レ(株)製):引張強度3820MPa
・”トレカ”(登録商標)T1000G−12K(東レ(株)製):引張強度6370MPa
また、本発明において用いる炭素繊維束の評価方法は、以下に示すとおりである。
<炭素繊維コードの評価方法>
(1)接着剥離力(平剥離法)
20×150×6(mm)の未加硫ゴム配合物(表4)上の長手方向に、20/炭素繊維コードのコード径)本で求められる本数の炭素繊維コードを平行に敷き詰め、3MPaの加圧下で160℃、30分間プレス加硫を行い、放冷後、ゴムからコードを剥離することにより測定した。剥離スピードは50mm/minで行い、その時の剥離力をN/20mmで表示した。
(2)耐屈曲疲労性評価方法(FS法)
JIS L−1017の記載のファイヤストン法(FS法)に準じた方法で測定した。表4に記載の未加硫ゴムシートをドラムに捲回し、その上に炭素繊維コードを15本/20mmの打ち込み本数で等間隔に捲回し、さらにその上に同一のゴムシートを捲回し、ゴム/コード/ゴムの三層体を準備した。この三層体の上に厚み調整のためのゴムシートを重ね、20×370×5(mm)のベルト状試験片を作製した。これを3MPaの加圧下、160℃、30分間プレス加硫を行い、ベルト状試験片を得た。該試験片を1インチプーリーにかけ、190回/分の回転数で、室温下、48時間往復摩擦運動させた。疲労後の試験片からコードを取り出し、強力を測定した。疲労前と疲労後の強力の比(強力保持率、%で示す)を耐屈曲疲労性の指標とした。
(3)炭素繊維束の引張強度
JIS R7601に従って測定した。なお、引張試験片は、次の樹脂組成物を炭素繊維束に含浸し、130℃、35分の条件で加熱硬化させて作成した。
【0067】
樹脂組成:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−シクロヘキサン−カルボキシレート(100重量部)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(3重量部)/アセトン(4重量部)
(4)炭素繊維コードの強度、伸度
JIS L1017に準じて測定した。測定する炭素繊維コードの両端をチャックに挟み込んで固定する。ここで、チャック間のサンプル長は250mmとした。温度25℃、湿度40%の環境下、速度50mm/分で引張り、その最大荷重値、伸度を測定し、炭素繊維コードの強度を算出した。なお、強度算出時の繊度(dTex)は、付着した樹脂を含む総繊度を用いた。4cN/dTex時伸度は、強伸度SS曲線チャートから読みとった。
(5)コード径
JIS L1017に準じて測定した。測定する炭素繊維コードを4本一組とし、たるまないように平行に並べ、ダイヤルゲージで5ヶ所を測定し、その平均値をコード径とした。
(6)単位重量あたりのコード長さ
測定する炭素繊維コードを50m採取し、その重量を求め、この数値から1kgあたりのコード長さを算出した。
<伝動ベルトの評価方法>
耐屈曲疲労試験(FS試験)で用いた試験片(疲労前)を5mm幅に裁断し、ベルトの簡易評価試験片として用いた。
(1)ベルト強力
上記試験片をインストロン引張試験機で、温度25℃、湿度40%の環境下、速度50mm/分で引張り、その最大荷重値を読みとった。10回の試験を行った平均値をベルト強力(kN/5mm)とした。
(2)ベルト伸び
上記試験片をインストロン引張試験機で、温度25℃、湿度40%の環境下、速度50mm/分で引張り、500Nのベルト張力をかけたときのベルトの伸びを読みとった。10回の試験を行った平均値をベルト伸び(%)とした。
<炭素繊維束の樹脂組成物付着処理>(表5コードC〜M)
コンピュートリーターシングルディッピングマシン(米リッツラー社製)を用いて、炭素繊維束を10m/分の速度で搬送し、表1に示す樹脂組成物(1st組成)の水溶液を付与し、200℃で240秒熱処理した。なおコードJはこの処理を行わなかった。続いて、リング撚糸機を用いてZ方向の下撚りを加えた。さらにコードH、K、Mでは下撚りしたコードをそれぞれ6本、2本、2本引き揃え、ストランダーを用いてS方向の上撚りを加えた。続いて、表2に示すRFL(2nd処理)を付与し、エアーワイパー圧0.1kg/cm2の条件で液きりを行い、200℃で100秒間熱処理した。なお、コードCではこの処理を行わなかった。さらに表3に示すゴム糊(3rd処理)を付与し、100℃で100秒間熱処理した。
【0068】
得られた炭素繊維コードの樹脂付着量、撚り数は表5に示した。
【0069】
各実施例、比較例で用いた原糸、樹脂組成物、基材のゴム組成及び測定結果を下表1〜6に纏めて示した。表6に示す評価結果から判るように、本発明による伝動ベルト用炭素繊維コードは高負荷伝達性に優れ、かつ耐屈曲疲労性に優れる。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】
【0075】
【表6】
【0076】
【発明の効果】
本発明によれば、伝動ベルトの補強用に好適に用いられる高強度、高弾性率で、かつ接着性、耐屈曲疲労性に優れる伝動ベルト補強用炭素繊維コード、及び伝動ベルトを提供することができる。
Claims (9)
- 炭素繊維束にエポキシ樹脂とゴムラテックスを含む樹脂組成物が付着した、40〜80回/mの下撚り数を有するコードであって、該コードの強度が10〜16cN/dTexであり、強伸度SS曲線から求めた4cN/dTex荷重時の伸度が0.5〜1.2%であることを特徴とする伝動ベルト補強用炭素繊維コード。
- コード径が0.5〜2.5mmであることを特徴とする請求項1に記載の伝動ベルト補強用炭素繊維コード。
- 切断伸度が1.2〜3.5%であることを特徴とする請求項1または2に記載の伝動ベルト補強用炭素繊維コード。
- 単位重量あたりのコード長さが、200〜2500m/kgであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の伝動ベルト補強用炭素繊維コード。
- 前記エポキシ樹脂の含有量が樹脂組成物全重量に対して、20〜80重量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の伝動ベルト補強用炭素繊維コード。
- 前記樹脂組成物の付着量が炭素繊維全重量に対し10〜30重量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の伝動ベルト補強用炭素繊維コード。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の伝動ベルト補強用炭素繊維コードの表層部が接着剤層で被覆形成されていることを特徴とする伝動ベルト補強用炭素繊維コード。
- ゴムとの接着剥離力が150N/20mm以上であることを特徴とする請求項1〜7いずれか1項に記載の伝動ベルト補強用炭素繊維コード。
- 請求項1〜8いずれか1項に記載の伝動ベルト補強用炭素繊維コードがベルト芯体として使用されていることを特徴とする伝動ベルト。
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