JP2017176043A - 中空糸モジュールを用いる細胞培養方法 - Google Patents
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Description
1.複数の透過性膜中空糸を内挿し、前記透過性膜中空糸の内腔に連通する液出入口および前記透過性膜中空糸の外腔に連通する液出入口を有する中空糸モジュールを細胞培養容器として用いる細胞の培養方法であって、前記中空糸モジュールのプライミング処理乃至細胞培養終了までの間、前記中空糸モジュールに連続的または断続的に振動を与えることを特徴とする方法。
2.前記透過性膜中空糸の内径が100〜1000μmであることを特徴とする1に記載の方法。
3.前記透過性膜中空糸の長さが10〜40cmであることを特徴とする1または2に記載の方法。
4.前記振動が振動発生装置によるものであることを特徴とする1〜3のいずれかに記載の方法。
5.前記振動の大きさが10〜80m/s2であることを特徴とする1〜4のいずれかに記載の方法。
本発明において、透過性膜中空糸の素材については、細胞を中空糸表面に保持でき、溶液や低分子の物質を透過できる構造をとることができるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、再生セルロースなどのセルロース系材料、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のポリスルホン系材料、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、フッ素系樹脂、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の水不溶性担体が好適に利用できる。また、これらの誘導体が主成分であっても良い。また、透過性膜中空糸はこれらの素材に化学的に修飾を加えたものであっても良く、例えば、親水化処理されていてもよい。親水化処理することにより、培養細胞への培養液等の液体成分の供給が容易になる。中空糸膜を親水化処理する方法としては、例えば、中空糸膜をポリビニルピロリドンやエチレン−ビニルアルコール共重合体等の親水性高分子や、グリセリン、エタノールで処理する方法が挙げられる。また、使用する細胞に応じて、中空糸への接着性向上のため、コラーゲンやフィブロネクチン等をコーティングしたものでも良い。
本発明において、透過性膜中空糸モジュールは、例えば、筒状容器に数十本〜数万本の中空糸を格納することにより作製することができる。このような中空糸モジュールは、容積あたりの培養面積を大きくすることができるため細胞培養容器として適している。また、培養操作も簡便化することが出来、効率よく細胞培養を実施することが出来る。
本発明において、培養の対象となる細胞としては、特に限定されるものではないが、接着性の動物細胞が好適である。細胞の由来も特に限定されず、ヒト、ブタ、イヌ、マウス等のいずれの動物由来のものも使用できる。また、接着性の動物細胞は、初代培養細胞及び株化細胞の双方を対象とすることができる。また、表皮角化細胞、血管内皮細胞、繊維芽細胞、肝細胞などのプライマリー細胞や、さらに胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、間葉系幹細胞、脂肪前駆細胞、肝幹細胞などの幹細胞、前駆細胞でもよい。また、これらの細胞は、培養前に外来遺伝子を導入した細胞であってもよいし、抗体やリガンドなどの刺激因子などで予め刺激、加工されている細胞であっても良い。
本発明において、中空糸内腔において細胞を培養する場合には、前述の中空糸モジュールを用い、出入口の一方から細胞を懸濁した液を中空糸内腔に流入させることにより、細胞を播種することが出来る。一定時間静置し、細胞を中空糸表面に接着させた後に、インキュベーター内に設置した細胞培養容器(中空糸モジュール)に、連続的あるいは断続的に培養液を送液することにより細胞を培養、増殖させることが出来る。培養液は、細胞に必要な養分や酸素・二酸化炭素などのガスを供給する役割を有する。培養に用いられる培地は、培養細胞の種類に応じて決定され、当該細胞の培地として通常用いられるものであればよい。
本発明において、細胞培養における培養液、特に中空糸内腔を流れる培養液の流速については、流速を厳密に制御することが好ましい。流速が遅すぎると、細胞への栄養供給が十分になされず、細胞が増殖しにくくなる。逆に、流速が速すぎても、細胞周囲の環境変化が激しく、細胞が周りの環境に馴染めず、細胞が増殖しにくくなる。このように、培養液、特に中空糸内腔を流れる培養液の流速は、細胞増殖度合いや環境に応じて、調整することが好ましい。細胞増殖度合いを調べる方法は、特に限定されないが、培養液中のグルコースや乳酸塩の濃度等の測定結果をもとに行うことが出来る。細胞が播種された側に流す培養液の好ましい流速は、0.01〜1mm/minである。一方、細胞が播種されていない側に流す培養液の好ましい流速は、0.02〜5mm/minである。このように、細胞培養においては、中空糸内径が小さいことと培養液の流速が非常に遅いため、中空糸内腔の気泡が自然に系外に排出されることや移動することはほぼない。
本発明において、振動発生装置は、自ら振動を発生する装置であれば、特に限定されない。例えば、モーター軸に偏芯したおもりを付けて回転させることにより振動を発生させるタイプ、磁界中でコイルに電流を流すことにより起こる力を利用して振動を発生させるタイプ(スピーカータイプ)、ピストンを油圧や空気圧によって駆動して振動を発生させるタイプ等の振動発生装置を使用することが出来る。中でも、モーター軸に偏芯したおもりを付けて回転させることにより振動を発生させるタイプ(以降、振動モーターともいう)が、小型化や費用面を考慮すると好ましい。振動モーターは、携帯電話機、ゲーム機などに幅広く用いられている。内部の回転方式の違いから、円筒型(シリンダー型)、円盤型のものなどがあるが、本発明に使用するものは、何れの形態をとるものでも構わない。
透過性膜中空糸を用いて培養した細胞を回収するための手段を例を挙げて説明する。例えば、中空糸モジュールを用い中空糸内腔(内表面)において細胞を培養した場合には、培養液の灌流を停止した後、中空糸内側および外側に存在する培養液を除去するため、二価陽イオンフリーのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を一定時間灌流させ、培養液を充分PBSに置換する。次に、PBSを除去し、トリプシン等のプロテアーゼを中空糸内腔と外腔へ充填し、一定時間インキュベートする。また、このような処理の後、中空糸モジュールに接触させた振動モーターを駆動させ、中空糸モジュールに振動を与えることにより、培養細胞を中空糸膜面から剥離させる処理を併用してもよい。その後、培養液などを中空糸内腔へ流入することにより、中空糸内腔から流し出した細胞を回収することが出来る。
中空糸モジュールからの細胞を含む回収液は、遠心分離操作により最終的に1mlの培養液に懸濁した。この懸濁液とトリパンブルー染色液を1:1で混和した液を血球計算盤に添加し、顕微鏡下で細胞数の計測を行った。
1.血球計算盤およびカバーガラスの表面を70%イソプロパノールで洗浄し、余分なイソプロパノールをふき取り風乾する。
2.Reagent grade waterでカバーガラスの側面を濡らし、血球計算盤に貼りつける。
3.細胞懸濁液をパスツールピペット等でよく撹拌後、すぐに血球計算盤に流し込み、溝の上まで満たす。
4.1〜3の操作を別の血球計算盤を使用して行う(2回測定し平均をとる)。
5.顕微鏡に血球計算盤を置き、グリッドラインに焦点を合わせる(10×対物レンズ)。
6.カウンターを用いて1mm2エリアの細胞数を速やかに計測する。
※誤差が生じやすいので正確に数えるためには少なくとも100〜500細胞を計測する。
計算法:
C=N×104
C:1ml当たりの細胞数
N:計測した細胞数の平均
104:1mm2に対する容量の変換値
全体の数=C×V
V=細胞を懸濁した液体の容量
培養終了後の細胞培養容器(中空糸モジュール)より回収した生細胞数と初期の播種細胞数(1.05×105)を用いて以下の式により細胞増殖率を算出した。
細胞増殖率(%)=(回収した生細胞数−播種細胞数)/播種細胞数×100
(透過性膜中空糸の作製)
ポリエーテルスルホン(4800P、住友化学社製)20質量%、Nメチルピロリドン(三菱化学社製)36質量%、トリエチレングリコール(三井化学社製)44質量%を均一に溶解し、製膜原液を作製した。この原液を、70℃に加温した円筒2重管ノズルから、中空形成剤としてNメチルピロリドン13.5質量%、トリエチレングリコール16.5質量%、水70質量%の水溶液とともに同時に吐出し、300mmの乾式部を通過後、75℃の水中に浸漬し凝固させ、十分な水洗浄を実施した後に、束に巻き取った。糸束は切断後、50℃、50%グリセリン水溶液に浸漬した後、過剰なグリセリン液を除き、60℃にて通風乾燥させた。乾燥後の中空糸が、概ね内径200μm、外径300μm、膜厚50μmとなるように吐出量等を調整した。
試験用の中空糸モジュールを以下のように作製した。直径1cm、長さ10cmの円筒状のポリカーボネート製モジュールケース内に、得られた透過性膜中空糸を100本内挿し、ポリウレタン系ポッティング剤で中空糸両末端をモジュールケースに固定した後、ポッティング部の一部を切削し、中空糸中空部を開口させた。このようにして、図1に示すような形状の細胞培養容器(中空糸モジュール)を作製し、滅菌処理を行った。中空糸内径基準の膜面積は、およそ55cm2であった。
前記培養液貯留容器5内の培養液に、タカラバイオ株式会社より購入したプライマリーのヒト間葉系幹細胞を懸濁し、中空糸内腔に充填して1晩放置し、中空糸表面に細胞を接着させた。細胞播種密度が1900cells/cm2となるように調整した。培養液貯留容器5を培養液のみの容器に交換した後、中空糸内腔側の流速0.33mm/min、中空糸外腔側の流速3.46mm/minで送液を開始した。培養液の送液を開始して2日後、中空糸モジュールに接触させた円盤型振動モーター(東京パーツ工業製、FM34F)1台を振動量(加速度)17m/s2で15秒間駆動させ、中空糸モジュールに振動を与えた。即ち、図4および図5に示すように、振動モーターを含む支持体で中空糸モジュールを挟んで固定した後、振動モーターを駆動させ振動を与えた。前記操作を数時間おきに実施し、気泡除去を実施した。なお、本細胞培養実験は、CO2インキュベーター内で37℃、7日間行った。
7日間培養後、培養液灌流を停止し、中空糸モジュール内にて増殖した細胞を回収した。
即ち、培養液の灌流を停止した後、中空糸内腔側および外腔側に存在する培養液を除去するため、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を一定時間灌流させ、培養液を充分PBSに置換した。次に、PBSを除去し、0.25%トリプシン溶液(ライフテクノロジーズ社製)を中空糸内腔側と外腔側へ静かに充填し、室温で15分間インキュベートした。
この後、培養液を図1の1aより中空糸内側へ流し入れ、反対側(図1の1b)より流し出した細胞を回収した。回収した細胞について、生細胞数および細胞増殖率を計測した。
培養液の送液を開始して2日後より、振動モーターとして、円筒型の振動モーター(シーアイ化成製、A4A-05-WTB-3)1台を用いて数時間おきに振動量(加速度)7m/s2、5分間駆動させた以外は、実施例1と同様にして細胞の培養を行った後、細胞を回収した。
培養液の送液を開始して2日後より、実施例2と同様の振動モーター1台を用いて数時間おきに振動量(加速度)3m/s2、25分間駆動させた以外は、実施例1と同様にして細胞の培養を行った後、細胞を回収した。
培養液の送液を開始して2日後より、実施例3と同様の振動モーター1台を用いて培養全期間中、細胞培養容器に連続して振動量(加速度)3m/s2の振動を与えた以外は、実施例1と同様にして細胞の培養を行った後、細胞を回収した。
細胞培養中の振動処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして細胞の培養を行った後、細胞を回収した。
プライミング処理において、振動処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして細胞の培養を行った後、細胞を回収した。
2 出入口(外腔側)
3 モジュールケース
4 透過性膜中空糸
5、6 培養液貯留容器
7 細胞培養容器(中空糸モジュール)
8、9 送液ポンプ
10 廃液回収容器
11 振動モーターのおもり
12 振動モーター軸
13 振動モーター本体
14 振動モーターハウジング
15 支持体
16 接続バネ
Claims (5)
- 複数の透過性膜中空糸を内挿し、前記透過性膜中空糸の内腔に連通する液出入口および前記透過性膜中空糸の外腔に連通する液出入口を有する中空糸モジュールを細胞培養容器として用いる細胞の培養方法であって、前記中空糸モジュールのプライミング処理乃至細胞培養終了までの間、前記中空糸モジュールに連続的または断続的に振動を与えることを特徴とする方法。
- 前記透過性膜中空糸の内径が100〜1000μmであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 前記透過性膜中空糸の長さが10〜30cmであることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
- 前記振動が振動発生装置によるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 前記振動の大きさが10〜80m/s2であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
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