JP2017158488A - 細胞回収方法 - Google Patents
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Abstract
Description
1.透過性膜中空糸を用いた細胞培養用中空糸モジュール内から培養した細胞を回収する方法であって、
i)中空糸モジュール内の細胞に細胞剥離剤を接触させる工程、および
ii)中空糸モジュールに直接あるいはスペーサーを介して間接的に接触させた振動発生装置により振動を与える工程、
を含むことを特徴とする、方法。
2.前記細胞剥離剤が、その一部にタンパク分解酵素を含む、1に記載の細胞回収方法。
3.前記振動発生装置による振動の大きさが2〜80m/s2であることを特徴とする1または2に記載の方法。
4.前記振動発生装置により振動を与える時間が10秒〜30分であることを特徴とする1〜3のいずれかに記載の方法。
5.前記振動発生装置が振動モーターであることを特徴とする1〜4のいずれかに記載の方法。
本発明において、透過性膜中空糸は、細胞を中空糸表面に保持でき、溶液や低分子の物質を透過できるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、セルロースアセテート、再生セルロースなどのセルロース系素材、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、フッ素系樹脂、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の熱可塑性高分子による骨格構造を有する不溶性担体が好適に利用できる。また、これらの誘導体が主成分であっても良い。また、透過性膜中空糸はこれらの素材に化学的に修飾を加えたものであっても良く、例えば、親水化処理されたものでもよい。親水化処理することにより、培養細胞への培養液等の液体成分の供給が容易になる。中空糸膜を親水化処理する方法としては、例えば、中空糸膜をポリビニルピロリドンやエチレン−ビニルアルコール共重合体等の親水性高分子や、グリセリン、エタノールで処理する方法が挙げられる。また、使用する細胞に応じて、中空糸への接着向上のため、コラーゲンやフィブロネクチン等のコーティング剤を使用しても良い。
本発明の対象となる透過性膜中空糸モジュールは、例えば、筒状容器に数十本〜数万本の中空糸を格納することにより作製することができる。このような中空糸モジュールは、単位容積あたりの培養面積を非常に大きくすることができ、また培養操作も簡便化することができるため、効率よく細胞培養を実施することが出来る。
本発明に係る対象となる細胞としては、特に限定されるものではないが、接着性の動物細胞が好適である。細胞の由来も特に限定されず、ヒト、ブタ、イヌ、マウス等のいずれの動物由来のものも使用できる。また、接着性の動物細胞は、初代培養細胞及び株化細胞のいずれも対象とすることができる。また、表皮角化細胞、血管内皮細胞、繊維芽細胞、肝細胞などのプライマリー細胞や、さらに胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、間葉系幹細胞、脂肪前駆細胞、肝幹細胞などの幹細胞、前駆細胞でもよい。また、これらの細胞は、培養前に外来遺伝子を導入した細胞であってもよいし、抗体やリガンドなどの刺激因子などで予め刺激、加工されている細胞であっても良い。
透過性膜中空糸を用い、例えば中空糸内腔において細胞を培養する場合には、前述の中空糸モジュールを用い、端部導管の一方から細胞を懸濁した液を中空糸中空部に流入させることにより、細胞を播種することが出来る。一定時間静置し、細胞を中空糸膜表面に接着させた後に、インキュベーター内に設置した中空糸モジュールに、連続あるいは間欠的に培養液を送り込むことにより細胞を培養、増殖させることが出来る。培養液は細胞に必要な養分や酸素・二酸化炭素などのガスを供給する役割を有する。培養に用いられる培地は、培養細胞の種類に応じて決定され、当該細胞の培地として通常用いられるものであればよい。
透過性膜中空糸を用いて培養した細胞を回収するための手段を例を挙げて説明する。例えば、中空糸モジュールを用い中空糸内腔(内表面)において細胞を培養した場合には、培養液の灌流を停止した後、中空糸内側および外側に存在する培養液を除去するため、二価陽イオンフリーのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を一定時間灌流させ、培養液を充分PBSに置換する。次に、PBSを除去し、トリプシン等のプロテアーゼを中空糸内側と外側へ充填し、一定時間インキュベートする。プロテアーゼの濃度は、細胞数にもよるが、0.1〜0.5重量%が好ましい。また、プロテアーゼ処理の温度は34〜39℃が好ましく、処理時間は30秒〜30分が好ましい。
前記処理と同時または前記処理の後、中空糸モジュールに接触させた振動モーターを駆動させ中空糸モジュールに振動を与えることにより、培養細胞を中空糸膜面から充分剥離させる。その後、培養液などを中空糸内側へ流入することにより、中空糸から流し出した細胞を回収することが出来る。
本発明に用いる振動発生装置は、自ら振動を発生する装置であれば、特に限定はされない。例えば、モーター軸に偏芯したおもりを付けて回転させることにより振動を発生させるタイプ、磁界中でコイルに電流を流すことにより起こる力を利用して振動を発生させるタイプ(スピーカータイプ)、ピストンを油圧や空気圧によって駆動して振動を発生させるタイプ等の振動発生装置を使用することが出来る。中でも、モーター軸に偏芯したおもりを付けて回転させることにより振動を発生させるタイプ(以降、振動モーターともいう)が、小型化や費用面を考慮すると好ましい。振動モーターは、携帯電話機、ゲーム機などに幅広く用いられている。内部の回転方式の違いから、円筒型(シリンダー型)、円盤型のものなどがあるが、本発明に使用するものは、何れの形態をとるものでも構わない。使用する振動モーターの振動の大きさ(振動量)は、透過性膜中空糸モジュールに対し、細胞剥離に適した振動を伝えることが出来れば特に限定されないが、振動量(加速度)が2〜80m/s2のものが適している。また、振動モーターは、所望の振動量のものを一つだけ使用しても良いし、複数個を同時に使用することで振動量を確保しても良い。但し、複数個の振動モーターを同時に使用する場合は、互いに振動を打ち消し合わないよう、空間的配置やモーターの振動数などを考慮する必要がある。透過性膜中空糸モジュールに振動を与える時間は、10秒〜30分程度が好ましい。振動時間が短すぎると、膜表面から細胞が十分剥離せず、振動時間が長すぎると、細胞がダメージを受ける可能性がある。
中空糸モジュールからの細胞を含む回収液は、遠心分離操作により最終的に1mlの培養液に懸濁した。この懸濁液とトリパンブルー染色液を1:1で混和した液を血球計算盤に添加し、顕微鏡下で細胞数の計測を行った。
1.血球計算盤およびカバーガラスの表面を70%イソプロパノールで洗浄し、余分なイソプロパノールをふき取り風乾する。
2.Reagent grade waterでカバーガラスの側面を濡らし、血球計算盤に貼りつける。
3.細胞懸濁液をパスツールピペット等でよく撹拌後、すぐに血球計算盤に流し込み、溝の上まで満たす。
4.1〜3の操作を別の血球計算盤を使用して行う(2回測定用)。
5.顕微鏡に血球計算盤を置き、グリッドラインに焦点を合わせる(10×対物レンズ)。
6.カウンターを用いて1mm2エリアの細胞数を計測する。
※誤差が生じやすいので正確に数えるためには少なくとも100〜500細胞を計測する。
計算法:
C=N×104
C:1ml当たりの細胞数
N:計測した細胞数の平均
104:1mm2に対する容量の変換値
全体の数=C×V
V=細胞を懸濁した液体の容量
トリパンブルーで染色されない細胞を生細胞、染色される細胞を死細胞と判定し、細胞の生存率を測定した。
1.細胞懸濁液にトリパンブルーを1滴垂らし、1〜2分間放置する。
2.血球計算盤を準備し,“細胞数の測定”の操作例1〜5を行う。
3.1mm2エリアの全体の細胞数と染色された(暗色)細胞数を測定する。
生存率(%)=(計側した全体の細胞数−染色された細胞数)/計測した全体の細胞数×100
(中空糸モジュールの作製)
試験用の中空糸モジュールを以下のように作製した。内径1cm、長さ10cmの円筒状のポリカーボネート製モジュールケース内に、内径200μm、外径300μm、膜厚50μmのポリエーテルスルホン製透過性膜中空糸を100本充填した後、中空糸の中空部を閉塞しないようにポリウレタン系ポッティング剤で両末端をモジュールケースに固定し、図1に示すような形状の中空糸モジュールを作製した。
図2に、細胞培養実験に用いた培養装置の構成を簡略化して示す。細胞培養実験には、前述の中空糸モジュール用いた。細胞は、タカラバイオ株式会社より購入したプライマリーのヒト間葉系幹細胞を用い、細胞播種密度は、1900cells/cm2とした。培養液の流速は、中空糸内腔側は0.33mm/min、中空糸外腔側は3.46mm/minとした。また、培養液リザーバーには培養バッグ1L(ニプロ社製)(図2の5(内腔側)および6(外腔側))を用いた。培養液はウシ胎児血清を10%(v/v)添加したダルベッコ改変イーグル培地を用いた。培養液灌流用ポンプに、中空糸内腔側灌流用と外腔側灌流用に計2台のペリスタ・バイオミニポンプ(アトー社製)(図2の9(内腔側)および8(外腔側))を用い、CO2インキュベーター内で37℃、7日間培養した。
7日間培養後、培養液灌流を停止し、中空糸モジュール内にて増殖した細胞を回収した。
即ち、培養液の灌流を停止した後、中空糸内腔側および外腔側に存在する培養液を除去するため、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を一定時間灌流させ、培養液を充分PBSに置換した。次に、PBSを除去し、0.25%トリプシン溶液(ライフテクノロジーズ社製)を中空糸内腔側と外腔側へ静かに充填し、室温で15分間インキュベートした。
この後、中空糸モジュールに接触させた円盤型振動モーター(東京パーツ工業製、FM34F)1台を振動量(加速度)17m/s2で15秒間駆動させ、中空糸モジュールに振動を与えた。即ち、図4および図5に示すように、中空糸モジュールを振動モーターを含む支持体で挟んで固定した後、振動モーターを駆動させ、振動を与えた。振動を与えた後、培養液を中空糸内側へ流し入れ、反対方向から流し出した細胞を回収した。回収した細胞について、総細胞数および生存率を計測した。
振動モーターとして、円筒型の振動モーター(シーアイ化成製、A4A-05-WTB-3)1台を用いて振動量(加速度)7m/s2、5分間駆動させた以外は、実施例1と同様にして細胞の回収を行った。
実施例2と同様の振動モーターを1台用いて振動量3m/s2、25分間駆動させた以外は、実施例1と同様にして細胞の回収を行った。
実施例1と同様の振動モーターを1台用いて振動量17m/s2、25分間駆動させた以外は、実施例1と同様にして細胞の回収を行った。
実施例1と同様の振動モーターを2台用いて、1台あたりの振動量17m/s2、15秒間駆動させた以外は、実施例1と同様にして細胞の回収を行った。
実施例1と同様の振動モーターを4台用いて、1台あたりの振動量17m/s2、15秒間駆動させた以外は、実施例1と同様にして細胞の回収を行った。
実施例1と同様の中空糸モジュールを用い、実施例1と同様にして細胞培養実験を行った。7日間培養後、培養液灌流を停止し、中空糸モジュール内にて増殖した細胞を回収した。即ち、培養液の灌流を停止した後、中空糸内側および外側に存在する培養液を除去するため、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を一定時間灌流させ、培養液を充分PBSに置換した。次に、PBSを除去し、0.25%トリプシン溶液(ライフテクノロジーズ社製)を中空糸内側と外側へ静かに充填し、室温で15分間インキュベートした。この後、振動を与える処理を行わずに、培養液を中空糸内側へ流し入れ、反対方向から流し出した細胞を回収した。
実施例1と同様の中空糸モジュールを用い、実施例1と同様にして細胞培養実験を行った。7日間培養後、培養液灌流を停止し、中空糸モジュール内にて増殖した細胞を回収した。即ち、培養液の灌流を停止した後、中空糸内側および外側に存在する培養液を除去するため、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を一定時間灌流させ、培養液を充分PBSに置換した。次に、細胞剥離剤を接触させる処理を行わずに実施例1と同様の振動を与える処理を行った後、培養液を中空糸内側へ流し入れ、反対方向から流し出した細胞を回収した。
比較例1および2においては、実施例に比べ細胞回収数の低下が見られた。これらの結果から、振動モーターを使用することにより、簡単な操作で効率的に細胞を回収出来ることが示された。
2 側部導管
3 モジュールケース
4 透過性膜中空糸
5、6 液体培地貯留容器
7 細胞培養容器(実施例では中空糸モジュール)
8、9 送液ポンプ
10 廃液回収容器
11 振動モーターのおもり
12 振動モーター軸
13 振動モーター本体
14 振動モーターハウジング
15 支持体
16 接続バネ
Claims (5)
- 透過性膜中空糸を用いた細胞培養用中空糸モジュール内から培養した細胞を回収する方法であって、
i)前記中空糸モジュール内の細胞に細胞剥離剤を接触させる工程、および
ii)前記中空糸モジュールに直接あるいはスペーサーを介して間接的に接触させた振動発生装置により振動を与える工程、
を含むことを特徴とする、方法。 - 前記細胞剥離剤が、その一部にタンパク分解酵素を含む、請求項1に記載の細胞回収方法。
- 前記振動発生装置による振動の大きさが2〜80m/s2であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
- 前記振動発生装置により振動を与える時間が10秒〜30分であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 前記振動発生装置が振動モーターであることを特徴とする1〜4のいずれかに記載の方法。
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