JP2015223111A - 細胞の長期還流培養のための方法及び装置 - Google Patents

細胞の長期還流培養のための方法及び装置 Download PDF

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Abstract

【課題】高密度化した細胞を、機能を維持したまま、長期に維持培養するための技術の提供。
【解決手段】培地供給用及びガス供給用の中空糸膜と、該中空糸膜外表面上及び/又は該中空糸膜間に配設された繊維成形体からなる細胞培養足場材料とを培養空間内に備えた細胞培養用モジュールを用いる、細胞の長期還流培養方法であって、培地供給用中空糸膜により培地を下記式で算出される供給係数2〜10で前記培養空間内に循環供給し、ガス供給用中空糸膜によりガスを供給係数250〜17,000で前記培養空間内に供給することを特徴とする方法を提供する。
供給係数=培養空間容積(ml)/培地又はガスの供給速度(ml/min)
【選択図】なし

Description

本発明は、細胞の長期還流培養のための方法及び装置に関する。より詳しくは、細胞培養用モジュールの培養空間において中空糸膜によりガス及び培地を供給しながら細胞を維持培養する長期還流培養方法等に関する。
培養細胞を用いた薬効、毒性、安全性等の評価試験系は、動物実験に代替する試験方法として重要である。しかしながら、細胞、特に初代細胞を生体外で長期間培養することは必ずしも容易ではない。また、培養細胞を用いた評価試験系では、生体内と同様の機能を保持した細胞を用いる必要があるが、本来の機能を維持しつつ細胞を効率よく分化増殖させることも容易ではない。
生体外で細胞を効率的に培養するためには、培養細胞に栄養と空気(酸素)を補給する必要がある。そのための技術としては、従来から中空糸膜を用いて培養液を供給・排出する方法が知られている(特許文献1)。
一方、細胞本来の機能を維持しながら培養するためには、生体内に類似した環境で細胞を培養することが好ましい。そのための技術としては、従来からハイドロキシアパタイトやポリ乳酸等の多孔質材料を足場として、細胞を三次元的に培養する方法が知られている(特許文献2)。
近年では、生体内組織の繊維状の構造を高度に模倣できることから、ナノオーダーの繊維径を有するナノファイバーを、細胞培養や組織形成の足場材料として用いる技術が注目されている(非特許文献1、非特許文献2)。例えば、溶融紡糸によって作製されたナノファイバーを足場材料に用いる方法(特許文献2)や、有機系ナノファイバーを溶媒に分散した混合液を利用してナノファイバーのパターンを形成し、さらに細胞培養に有効な機能性薬剤をこのパターンに吸着させることにより、細胞の接着、増殖、分化を制御する方法が示されている(特許文献3)。
発明者らは、メッシュ状に配置した中空糸膜とナノファイバー層を足場材料として用いることにより、生体外で効率的に細胞を培養できる細胞培養用モジュールを開発している(特許文献4〜7)。このモジュールでは、ナノオーダーの繊維径を有するナノファイバーが、生体内類似の環境を創出し、ここに中空糸が培養液と空気(酸素)を補給するとともに、培養細胞からの代謝老廃物の除去を安定して行うことができる。しかしながら、このモジュールにおいても、細胞が増殖して一旦高密度化した後に高密度培養状態をさらに維持する機能は十分ではなかった。
特開2003−180334号公報 特開2006−254722号公報 特開2007−44149号公報 特開2009−100号公報 特開2010−148496号公報 特開2010−148497号公報 特開2011−239756号公報
高分子,55,3,142(2006) Tissue Eng.,11,101(2005)
ナノファイバー及び中空糸膜等を利用することで、生体外での細胞培養技術は一定の成果を挙げている。しかしながら、培養細胞を用いた試験系が、動物実験に代替する評価系として完成するためには、生体内と同様の機能を保持した状態で、高密度に細胞が培養され、生体組織に類似した系が再現されなければならない。また、再生医療の移植用の組織への応用においても、高密度化された細胞の維持は重要な課題である。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、脱分化等を抑制し、生体内と同様の機能を保持した状態で細胞を高密度化した後も長期間培養を可能として、動物試験に代替する培養細胞評価系および移植用細胞の製造技術を提供することを目的とする。
発明者らは、中空糸膜を培地とガスの供給手段とした細胞培養モジュールを用いて、培地とガスの供給量を検討した。その結果、培地とガスの供給量を所定の範囲に設定することで、培地の消費量や交換頻度を上げることなく、高密度化された細胞を、機能を維持したまま、長期に培養できることを見出した。
すなわち、本発明は、高密度化した細胞の機能を維持したまま長期維持培養するための技術として、以下の[1]〜[6]を提供する。
[1]培地供給用及びガス供給用の中空糸膜と、該中空糸膜外表面上及び/又は該中空糸膜間に配設された繊維成形体からなる細胞培養足場材料とを培養空間内に備えた細胞培養用モジュールを用いる、細胞の長期還流培養方法であって、
培地供給用中空糸膜により培地を下記式で算出される供給係数2〜10前記培養空間内に循環供給する、方法。
供給係数=培地又はガスの供給速度(ml/min)/培養空間容積(ml)
[2]ガス供給用中空糸膜によりガスを供給係数250〜17,000で前記培養空間内に供給する、[1]に記載の細胞の長期還流培養方法。
[3]培地供給用中空糸膜により培地を供給係数3〜8で前記培養空間内に循環供給する、[1]又は[2]に記載の細胞の長期還流培養方法。
[4]細胞を108cells/cm3以上の密度で維持する、[1]〜[3]のいずれかに記載の細胞の長期還流培養方法。
[5]培地供給用及びガス供給用の中空糸膜と、該中空糸膜外表面上及び/又は該中空糸膜間に配設された繊維成形体からなる細胞培養足場材料とを培養空間内に備えた細胞培養用モジュールと、
培地供給用中空糸膜に接続された培地供給ポンプと、
ガス供給用中空糸膜に接続されたガス供給ポンプと、を備え、
前記培地供給ポンプは、前記培地供給用中空糸膜を介して培地を下記式で算出される供給係数2〜10で前記培養空間内に循環供給する、細胞の長期還流培養装置。
供給係数=培地又はガスの供給速度(ml/min)/培養空間容積(ml)
[6]前記ガス供給ポンプは、前記ガス供給用中空糸膜を介してガスを供給係数250〜17,000で前記培養空間内に供給する、[5]に記載の細胞の長期還流培養装置。
本発明により、高密度化した細胞を、機能を維持したまま、長期に維持培養するための技術が提供される。
本発明に係る細胞の長期還流培養装置に含まれる細胞培養用モジュールの構成を説明する図である。Aは平面図、BはA中P−P線の断面図である。 本発明に係る細胞の長期還流培養装置の構成を説明する図である。 実施例試験1において、培地の供給係数を5、ガスの供給係数を13,500として還流培養を行った結果を説明する図である。 実施例比較試験1において、培地の供給係数を0.6、ガスの供給係数を220として還流培養を行った結果を説明する図である。
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
1.概略構成
まず、図1及び図2を参照して、本発明に係る細胞の長期還流培養装置及びこれに含まれる細胞培養用モジュールの概略構成を説明する。図1に示す細胞培養用モジュール1Aは、基板20,30と型枠40によって液密な(あるいは気密な)培養空間2が構成されている。培養空間2には、中空糸膜と繊維成形体(細胞培養足場材料)とからなる足場10が配設されている。足場10はポッティング樹脂で型枠40に固定されており、基板20,30はこれらを挟み込んで培養空間2を形成している。
基板20にはねじ穴21が穿設されている。ねじ穴21は、基板20を貫通し、細胞培養用モジュール1Aの外部と内部の培養空間2とを連絡している。ねじ穴21の一部にはねじが切られており、ポート(接続部材)22がねじ込まれて取り付けられている。基板30にはねじ穴31が穿設されており、ねじ穴31にはポート32が取り付けられている。ねじ穴31及びポート32の構成は、ねじ穴21及びポート22と同様である。ポート22及びポート32は、培養空間2内で培養される細胞に試験化合物を処理する際に試験化合物溶液を培養空間2内に導入するためなどに利用される。
図2に示す長期還流培養装置は、細胞培養用モジュール5と、酸素供給手段と、培地供給手段とを含む。長期還流培養装置は、必要に応じて、モニター手段、分析手段、サンプリング手段等をさらに含んでいてもよい。
酸素供給手段は、前記中空糸膜を通じて細胞に酸素を供給するための手段であって、例えば、酸素を含むガスを送りだすガス供給ポンプ6、モジュール5へのガス供給回路を構成するチューブ7、細かいゴミ(例えば、径0.22μm)が中空糸膜中に入り込まないようにするためのフィルター8、保湿用水の貯留槽9等を含むことができる。
培地供給手段は、例えば、供給する培地の貯液槽(培地ビン15)、前記中空糸膜を通じて細胞に培地を供給し、代謝老廃物を除去しつつ循環させるための培地供給(循環)ポンプ11、培地供給(循環)回路としてのチューブ12を含む。
サンプリング手段は、モジュール5から適宜培地を採取するための手段で、モジュール5に接続したサンプリングポート13、エア廃棄用空ビン14等を含む。
本発明において培養対象とする細胞には、特に限定されず、例えば以下の細胞が含まれる。接着性の動物細胞であって、例えばヒト胎児包皮線維芽細胞、チャイニーズハムスター肺線維芽細胞、ニワトリ胎児線維芽細胞、シリアンハムスター新生児腎臓細胞などの線維芽細胞;ヒト子宮頸部癌細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、マウス乳癌細胞、アフリカミドリザル腎細胞などの上皮細胞;血管内皮細胞などが含まれる。特に、細胞の機能を維持したまま培養することが困難な細胞、例えば肝実質細胞、冠状動脈内皮細胞、ゴールデンハムターランゲルハンス島細胞郡、ラット胸腺上皮細胞、ラット腎上皮細胞などの初代細胞が含まれる。凍結細胞や、iPS細胞を含む幹細胞由来の接着細胞も含まれる。
次に、細胞培養用モジュール及び長期還流培養装置の各構成について詳しく説明する。
2.細胞培養足場材料(繊維成形体)
2.1 繊維成形体の材質
本発明の繊維成形体の材質は、細胞培養に適したものである限り、特に限定されない。例えば、コラーゲン、セルロース、ポリ乳酸やポリグリコール酸、及びそれらの誘導体(例えば、PLLA(poly−l−lactic acid)とPDLA(poly−d−lactic acid)の重合体等)、ならびにこれらの複合体を用いることができる。さらに、繊維成形体をナノファイバーの形態で用いる場合には、次の「ナノファイバー繊維形成体層」の項で列挙したような材質を用いることができる。
繊維成形体の形態は、特に限定されず、スポンジ、メッシュ、不繊布状成形物、ディスク状、フィルム状、棒状、粒子状等、本発明の目的と効果を損なわない範囲で適宜選択することができる。本発明において、とくに好ましい形態としては、後述するナノファイバーからなる層あるいはナノファイバーの不繊布状成形物(ナノファイバー不繊布)が挙げられる。
繊維成形体には、生理活性物質を吸着又は固定させることにより、培養細胞の接着、増殖、分化、機能発現の制御を行うことができる。
生理活性物質としては、機能性ポリマー、アミノ酸、タンパク質、糖鎖、ビタミン類等が挙げられる。特に、細胞培養に有効な生理活性物質、例えば培養細胞の増殖、分化、機能発現に重要な役割を有する生理活性物質の総称であるサイトカインを用いると効果的である。サイトカインとしては、インターロイキン、増血因子、増殖因子等が挙げられる。また、細胞−細胞外マトリックス、細胞−細胞間の接着に関与するインテグリン、カドヘリン等の細胞接着基質を用いることも効果的である。また、薬剤や化学物質等の被験物質を繊維成形体に吸着又は固定することにより、細胞培養試験を行うことも可能である。
2.2 ナノファイバー繊維形成体層
本発明において、特に好ましい繊維成形体として、ナノオーダーの繊維径を有するナノファイバーからなるナノファイバー層を挙げることができる。
本実施形態のナノファイバー層は、基材上で、エレクトロスピニング(電界紡糸)により形成することができる。前記基材は、特に制限されず、エレクトロスピニングにより表面にナノファイバー層を形成できるものであればよく、例えば、アルミ箔等が挙げられる。
ナノファイバーの材質は、紡糸が容易である点から、溶剤可溶性のポリマーであることが好ましい。特にエレクトロスピニングが可能な溶剤可溶性のポリマーとしては、例えば、ナイロン4,6、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン12、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリスルフォン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、シルク、酢酸セルロース、セルロース、キトサン、コラーゲン等が挙げられる。しかし、これらに限定されるものではなく、これらのポリマーの混合物や、無機物や炭素材料を含有させたものであってもよい。その他、ポリグリコール酸、ヒアルロン酸、およびその誘導体、ならびにこれらの複合体等も用いることができる。
前記ポリマーの分子量は特に限定されないが、分子量が低すぎると曳糸性が低下するおそれがあり、分子量が高すぎると粘度が高くなって紡糸が困難になるおそれがある。
また、溶剤に不溶なポリマーであっても、レーザーエレクトロスピニング法を適用する場合は熱可塑性ポリマーを用いることができる。レーザーエレクトロスピニング法に適用できる熱可塑性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
細胞が機能発現適する不織布の糸径は250nm〜950nmであり、好ましくは300nm〜600nmであり、より好ましくは600nm程度である。これにより、不織布の表面の細孔径が十分な大きさとなり、播種された細胞が三次元的にとどまりやすくなり、細胞の生存・増殖とその機能発現が促される。
ナノファイバー層の厚みは、0.5〜500μmが好ましく、30〜300μmがより好ましい。厚みが0.5μm以上であれば、ナノファイバー層を、後述する中空糸膜間に配置するのが容易になる。厚みが300μm以下であれば、栄養やガスの供給や代謝老廃物の除去がナノファイバー層に接着した細胞全体に均一に行えるため、細胞培養の効率が向上する。さらに、細胞が不織布内にとどまるには30μm以上が好ましく、200μm程度までであれば栄養も行き渡る。
ナノファイバー層は、薄層状、紙状、不織布状又はスポンジ状の形状及び形態とすることができるが、とくに不織布状であることが好ましい。
上述した通り、ナノファイバー層には、生理活性物質を吸着又は固定させることにより、培養細胞の接着、増殖、分化、機能発現の制御を行うことができる。
2.3 繊維成形体の作製例
80℃恒温水槽にて加熱したジメチルアセトアミド(和光純薬工業)に重量比10%〜15%ポリアクリロニトリル粉体を添加し、良く攪拌して完全に溶解させて、室温に放置して安定なポリアクリロニトリルのドープを作製する。
ドープをディスポシリンジ(テルモ20ml、SS-20ESz)に充填し、ノズル(18G×11/2)を装着し、エレトクロスピニング装置(カテック社)に設置する。装置には、ターゲット(ロール)に銀紙を一周はりつけておく。電圧は12kVにて、シリンジのプランジャー押し出し速度0.03mm/min、ターゲット(ロール)との距離200mm、ターゲット回転速度1m/min、シリンジの左右反復移動(トラバース)速度10cm/minで、紡糸時間120minで紡糸し、ナノファイバー不織布を作製する。銀紙ごと不織布を剥がし、銀紙から必要なシートを採取して細胞培養足場材料とする。
2.4 繊維成形体の糸径分析法
ナノファイバー不織布の糸径は、SEMにより分析し、平均値をとる。ナノファイバーの単繊維の平均直径は、例えば、以下のようにして測定することができる。ナノファイバー又はその集合体(ナノファイバー層)の表面を電子顕微鏡により観察し、得られた電子顕微鏡写真中の任意の20本のナノファイバー表面の幅を計測し、その平均をナノファイバーの単繊維の直径とする。電子顕微鏡としては、走査型電子顕微鏡(SEM)が好ましい。観察倍率は5000倍〜5万倍が好ましい。観察倍率が5000倍以上であれば、ナノファイバーの直径の決定が容易になる。また、単繊維の直径を求める際には、画像解析ソフトを用いることが好ましい。画像解析ソフトによって得られるナノファイバーの単繊維の直径は、画像解析のための画質調整、画像解析ソフトの種類等によって若干変動があるが、その差は通常の実験誤差の範囲内である。
3.中空糸膜
3.1 中空糸膜の材質
中空糸膜を構成する基材ポリマーは、中空糸膜上に成形できるものであればよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスルフォン、ポリアリルスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリアクリロニトリル、セルロースアセテート、ポリフッ化ビニリデン、これらの2種類以上を混合した混合物等が挙げられる。
中空糸膜としては、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ガス分離膜等を用いることができる。これらは必要に応じて適宜選択することができる。
物質選択透過性を有する中空糸膜を用いることにより、特定の物質を培養細胞に供給したり、特定の代謝老廃物を培養細胞から除去したりすることができる。また、培養液中の特定成分、化学物質、薬物等の被験物質を培養細胞に効率的に供給することや、老廃物や代謝物を系外に排出させてこれらをモニタリングすることが可能となる。
物質選択透過性を有する中空糸膜としては、前記精密ろ過膜や限外ろ過膜を挙げることができ、さらに、膜素材そのものに物質選択透過性を有する中空糸膜や、中空部分に選択透過性を有する物質が充填された多孔質中空糸膜を挙げることができる。
中空糸膜としてガス分離膜を用いることにより、培養細胞に空気、酸素及びその他のガスを効率的かつ選択的に供給することができる。ガス供給は多孔質中空糸膜を用いて行ってもよく、この場合、ガス分離機能を有する非多孔性の膜基材を、多孔性の膜基材で支持した中空糸膜が好ましい。このようなガス分離機能を有する中空糸膜を用いることにより、培養液中にバブルレスでガスを供給できるので、培養細胞へのダメージを防止しやすい。また、培養液等の液体が中空糸膜の中空部分に入り込んで該中空部を閉塞することを防止しやすい。
中空糸膜は、親水化処理されていることが好ましい。中空糸膜を親水化処理することにより、培養細胞への培養液等の液体成分の供給が容易になり、また中空糸膜表面への細胞接着の抑制も容易になる。中空糸膜を親水化処理する方法としては、例えば、中空糸膜をエチレン−ビニルアルコール共重合体等の親水性高分子や、グリセリン、エタノールで処理する方法が挙げられる。
3.2 中空糸膜の形態
中空糸膜の外径は、50〜3000μmが好ましく、100〜200μmがより好ましい。外径が50μm以上であれば、中空糸膜において充分な大きさの中空部分を確保しやすいため、培養液を送液する際の差圧が大きくなったり、代謝老廃物の除去が不充分になったりすることを抑制しやすい。また、外径が3000μm以下であれば、単位体積あたりの中空糸膜の表面積をより大きくすることができるため、培養細胞に充分な栄養及びガスを供給することが容易になる。
中空糸膜の膜厚は、5〜500μmが好ましい。膜厚が5μm以上であれば、栄養供給やガス供給の際の加圧によって中空糸膜が破壊されることを防止しやすい。また、膜厚が500μm以下であれば、ろ過抵抗がより小さくなるため、培養細胞への栄養供給やガス供給や、培養細胞からの代謝老廃物の除去の効率が向上する。なお、中空糸膜が多層膜である場合の膜厚は、各層の膜厚の総和(全層の膜厚)である。中空糸膜の内径は、10μm以上2995μm以下が好ましい。
3.3 中空糸膜メッシュ
中空糸膜は、とくに複数の中空糸膜を網目が形成するようにメッシュ状に配置したもの(以下、「中空糸膜メッシュ」という)であることが好ましい。中空糸膜メッシュにおける中空糸膜シートの層数は特に制限されず、2〜10層が好ましい。中空糸膜間の間隔は、栄養やガスの供給や代謝老廃物の除去がナノファイバー層に接着した細胞全体に均一に行えるよう適宜設定される。
中空糸膜メッシュには、2種類以上の中空糸膜を用いることもできる。例えば、栄養の供給を行う精密ろ過膜、ガスの供給を行うガス分離膜、培養細胞への特定成分の供給あるいは培養細胞からの特定の代謝老廃物の排出を行う物質選択透過性を有する中空糸膜を、任意に組み合わせて用いることができる。2種類以上の中空糸膜で中空糸膜メッシュを形成する場合には、種類の異なる中空糸膜を同一シート内に混在させてもよく、シート毎に種類の異なる中空糸膜を用いるようにしてもよい。
前述した繊維成形体(特にはナノファイバー層)は、上記中空糸膜外表面上、及び/又は好ましくは中空糸膜間に配置され、積層体を形成するとが特に好ましい。ナノファイバー層を中空糸膜メッシュ間に配置することにより、ナノファイバー層を中空糸膜メッシュに強固に固定することができ、培養細胞への栄養やガスの供給や、細胞培養からの代謝老廃物の除去をより安定して行うことができる。また、ナノファイバー層に接着させた培養細胞と中空糸膜との距離が近くなるため、培養細胞への栄養やガスの供給や、細胞培養からの代謝老廃物の除去をより高い効率で行うことができ、培養細胞のネクローシスが減少して細胞培養の効率が向上する。
中空糸膜メッシュとナノファイバー層の積層数は特に限定されず、中空糸膜メッシュ、ナノファイバー層、中空糸膜メッシュ、ナノファイバー層、中空糸膜メッシュがこの順に積層された細胞培養足場材料であってもよく、これ以上の数が積層された細胞培養足場材料であってもよい。
中空糸膜は、ガス供給用中空糸膜と培地供給用中空糸膜とからなることが好ましい。ガス供給用中空糸膜は、モジュールの培養空間内に酸素を含むガスを供給して吸気を促進させる。培地供給用中空糸膜は、モジュールの培養空間内に培地を供給して、代謝(栄養添加・老廃物排出)を促進させる。
培地供給用中空糸膜は、培地中の溶解成分の透過が可能であれば、使用可能である。また、ガス供給用中空糸膜は、酸素を含むガスを透過すれば使用可能であるが、透過したガスが培地中で気泡を発生すると細胞の培養を阻害するので、ガスを透過するポアサイズが小さく気泡が発生しない中空糸膜が好ましい。三菱レイヨン株式会社製、三層複合中空糸膜(MHF膜)が、ガス透過性を持ちながら液を透過しないため、特にこの目的に好ましいものである。MHF膜は、特殊機能(ガス透過性)のある非多孔質の超薄膜を、多孔質層でサンドイッチ状に挟み込んだ支持層の3層構造を持つ。
4.細胞培養用モジュール
細胞培養用モジュールにおいては、中空糸膜メッシュの一部の中空糸膜の端部の開口を集結させて一つのポートに繋いでガス供給用中空糸膜とし、他の一部の中空糸膜の端部の開口を集結させて他のポートにつないで培地供給用中空糸膜とする。ガス供給用中空糸膜のポートは、ガス供給ポンプ6、チューブ7、フィルター8及び貯留槽9等からなる酸素供給手段に接続される(図2参照)。また、培地供給用中空糸膜のポートは、培地ビン15、培地供給(循環)ポンプ11及びチューブ12等からなる培地供給手段に接続される。
モジュールでは、栄養やガスの供給や、代謝老廃物の除去の行う経路として、ポート22及びポート32(図1参照)にチューブ等を接続することができる。これにより、より多くの条件でかつそれらの条件を独立に制御しながらの細胞培養を、より簡便に行うことができる。
モジュールには、中空糸膜メッシュの一部の中空糸膜の端部の開口を集結させて一つのポートに繋げ、中空糸膜から排出される老廃物や代謝物等を外部機器に導入することで、オンラインでの分析が可能になる。
また、モジュール中で培養した培養細胞に、中空糸膜の片端より被験物質を投与し、老廃物や代謝物を含む溶液を中空糸膜の他方の端部より排出させ、この溶液を分析しモニタリングすることによって、被験物質を投与した場合の培養細胞が受けるストレスや培養細胞の状態を経時的に評価することができる。この場合、被験物質の投与、及び老廃物や代謝物を含む溶液の排出を、ポート22及びポート32(図1参照)に接続したチューブ等によって行ってもよい。
モジュールは、2枚の基板の間に細胞培養足場材料を配置し、液密に封入することで、培養空間を一定の領域に分画しているため、培養条件の制御が容易である。また、細胞培養足場材料を容器中の培養液に浸漬させるような形態のモジュールに比べ、モジュールをコンパクト化することができるため、複数のモジュールを並べて多検体、多条件の同時培養を行う場合でも培養スペースをより小さくすることができる。
ディッシュやプレートを用いた通常の培養では、ディッシュやプレート上での平面的な細胞培養しか行えないのに対し、本発明の細胞培養用モジュールは、ナノファイバー層を有する細胞培養足場材料を備えているため、培養細胞が該ナノファイバー層の内部にまで入り込んで三次元的に付着増殖できる。そのため、培養された細胞形態が生体内の形態に近く、医薬品、化学物質、化粧品等の物質の薬効試験、毒性試験、安全性試験等において、より評価の信頼性の高い培養細胞が得られる。
本発明の細胞培養用モジュールの好ましい構成は、例えば、特開2009−100号公報、特開2010−148496号公報、特開2010−148497号公報、特開2011−239756号公報にも記載されている。
5.長期還流培養装置
本発明の長期還流培養装置は、上述の通り、細胞培養用モジュールと、酸素供給手段と、培地供給手段とを含む(図2参照)。
本発明においては、培地供給(循環)ポンプ11及びガス供給ポンプ6からモジュール5の培養空間(図1符号2)内への培地及びガスの供給量を以下の「供給係数」に従って設定する。
供給係数=培地又はガスの供給速度(ml/min)/培養空間容積(ml)
[培地供給ポンプによる培地供給]
培地供給ポンプは、培地供給用中空糸膜を介して培養空間内へ供給係数2〜10で培地を循環供給する。供給係数3〜8がより好ましく、供給係数4〜6が特に好ましい。この範囲内であると、培養した細胞が高密度化した後も細胞塊中まで栄養や酸素を供給し、その細胞機能を維持した状態で長期間培養することができる。
[ガス供給ポンプによる培地供給]
ガス供給ポンプは、ガス供給用中空糸膜を介して培養空間内へ供給係数250〜17,000でガスを供給することが好ましい。供給係数500〜15,000がより好ましく、1000〜14,000が特に好ましい。この範囲内であると、培養した細胞が高密度化した後も細胞塊中まで栄養や酸素を供給し、その細胞機能を維持した状態で長期間培養することができる。
実施例試験1で説明するように、高密度培養条件に至った後の細胞を維持するためには、高密度培養状態に至るまでの細胞の増殖のために必要な量以上の培地及びガスを供給する必要がある。培地及びガスの供給量を上記数値範囲に設定することで、高密度培養条件下で細胞を維持するために必要な量の培地及びガスを供給できる。なお、培地供給係数が大き過ぎると、培地に含まれる栄養物質がガス供給用中空糸膜内から培養空間内へ十分に移行できなくなるおそれや、培地がモジュールから漏えいするおそれがある。
上記供給量でガス及び培地を連続供給することで、培養した細胞が高密度化した後も細胞塊中まで栄養や酸素を供給し、その細胞機能を維持した状態で長期間培養することができる。ただし、高密度化する前もしくは、高密度でない密度での培養においても、本培養方法は細胞機能を維持した状態で長期間培養することが可能である。
ここで、「高密度」とは、細胞密度が108 cells/cm3以上の場合を示す。
また、「長期」とは、増殖培養の場合では、高密度化後、1週間以上培養することを意味し、好ましくは2週間以上、より好ましくは3週間以上、特に好ましくは4週間以上を意味する。増殖しない細胞の培養では、播種した後1週間以上培養することを意味し、好ましくは2週間以上、より好ましくは3週間以上、特に好ましくは4週間以上培養することを意味する。
「維持培養」とは、細胞が死滅して密度が減少することなく生きたまま培養する状態を示す。密度が減少するとは、培養時の最高密度に対し50%以上減少し続けることを示す。
「細胞機能」とは、生存する以外で、生体中で細胞が果たすべき働きを示す。例えば、肝細胞の場合、代謝性能により糖やグリコーゲンを生成して貯蔵したり放出したり、胆汁や血液凝固物質を生成する、さらに、毒素を解毒する働きがある。これらは、肝細胞中で酵素が発現することで可能となる。本研究では、薬物代謝で最も重要な機能の一つであるチトクロムP4503A4酵素の活性値を目安として評価する。
本発明の長期還流培養装置は、上記の手段のほか、サンプリングした培地や循環する培地の成分、被験物質、代謝産物の濃度等を経時的にモニターする手段(モニター手段)や、分析する手段(分析手段)を含んでいてもよい。
以下に示す条件で、細胞培養モジュール及び長期還流培養装置を用いて、細胞の培養試験を行った。
[使用機器]
(1)細胞培養モジュール
細胞培養モジュールは、国際公開公報第2014/034146号の記載に従って作製した。モジュール内の培養空間にはガス供給用中空糸膜及び培地供給用中空糸膜が配設され、中空糸膜の間にナノファイバー不織布が仕込まれて密封されている(図1参照)。培養空間の容積は、225μLである。
(2)長期還流培養装置
以下の構成からなる装置(図2参照)を用いた。
・培地供給ポンプ:CHIKARA Nα1500(NISSO社)
・ガス供給ポンプ:SJ-1211L型(TOTO社)
・瓶3本(培地ビン、エア廃棄用空ビン、保湿用水の貯留槽)
・ガス用ライン・培地循環用ライン(いずれもシリコンチューブ)
・サンプリングポート
・チューブのジョイント(樹脂製)
・装置を載せるプレート
・CO2インキュベーター:ダイレクトインキュベーター(サーモ社)
[培地]
Hc細胞用培地:D-MEM/F-12(GIBCO社)500mlにFetal Bovine Serumを10%添加し、炭酸水素ナトリウム(ナカライテスク社)、ペニシリンGカリウム(明治製菓社製)、硫酸ストレプトマイシン(明治製菓社)、Human-acidic FGF(コスモバイオ社)を添加した。
凍結保存用培地:正常細胞用凍結保存液R-055-50(クラボウ社)
[試薬・器具]
PBSバッファー(Invitrogen)
トリパンブルー:Trypan Blue solution(SIGMA)
トリプシン:Trypsin-EDTA(GIBCO BRL)
n−酪酸ナトリウム(SIGMA)
ジクマロール(和光純薬社)
βグルクロニダーゼ/アリールスルファターゼ(ROCHE)
ベンジルオキシレゾルフィン(Molecular Probes)
レゾルフィン(Molecular Probes)
リファンピシン(和光純薬工業)
グルコース測定キット:グルコースCII-テストワコーWAKO社)
[方法]
Hc細胞(正常ヒト胎児肝細胞、DSファーマバイオメディカル社)を還流培養した。また、培養中のHc細胞を肝芽細胞へ誘導して、細胞の機能を評価した。
1)細胞準備
Hc細胞を解凍し、シャーレに播種した。細胞に増殖能があることを確認した。
2)培養の準備
ジョイントが接続されたライン、ビン及びフィルターを銀紙で包装し、オートクレーブ滅菌処理した。クリーンベンチ中で、ライン、ビン及びフィルターを細胞培養モジール(図1参照)と接続して還流培養装置を組み立てた(図2参照)。
エタノール水を培地用のラインで循環運転してモジュール内を殺菌し、エタノール水を廃棄し、水で培地用のラインで循環運転して、エタノール水を完全に除去した。水を廃棄し、培地で培地用のラインで循環運転し、安定稼動を確認した。
3)環流細胞培養
CO2インキュベーター中に装置を設置し、培地で循環運転し、装置の安定稼動を確認した。培地ビンの培地量は40mLで開始した。
細胞分散培地を充填したディスポシリンジ1mLを、モジュールに設置されたポートに接続し注入した。ナノファイバー不織布に細胞を付着させて三次元培養にて細胞を増殖させた。その後、CO2インキュベーターで還流培養を開始した。培養開始時の細胞密度は6.8×104 cells/cm3となるようにした。
サンプリングポートから培地をサンプリングして、グルコース濃度を分析した。グルコースの消費速度からモジュール中の細胞数を推算して、培養空間の容積(225μL)に基づき細胞密度を算出し、継日変化を追跡した。また、細胞増殖の阻害因子であるアンモニアの濃度も分析し、濃度が2mMを超えないところで培地を交換するようにした。
細胞密度が1×108 cells/mLに達した段階で、培地に酪酸ナトリウム(終濃度1mM)を添加してHc細胞を肝芽細胞に誘導した。以後の培地には、酪酸ナトリウム1mM含有させて、培養を継続した。
グルコース消費速度からの細胞密度の算出は、次の方法に従った。
(1)使用試薬及び機器
グルコース濃度分析キット:グルコースCII−テストワコー
使用機器:分光光度計(Spectrophotometer U-2000、HITACHI)
恒温槽(EYELA BATH SB-24、EYELA)
(2)グルコース消費速度定数の算出
標準液から作製したグルコース溶液(濃度100mg/dL、200mg/dL、300mg/dL、400mg/dL、500mg/dL)を10μLずつ試験管に添加し、発色液1.5mLを添加した。37℃で5分間反応させた後、吸光度(波長:505nm)を測定した。吸光度をグラフにプロットして検量線を作成した。
シャーレに細胞を1×105cells/cm2播種し、培養を行った。培養開始時及び培養開始後所定日数経過後に、培地を10μL採取した。キットの添付文書に記載の手順に従って、グルコース濃度を測定した。具体的には、採取した培地10μLを発色液1.5mLに加え、よく攪拌した。恒温槽で37℃、5分間インキュベーションし、発色した溶液を分光光度計(波長:505nm)で測定した。培養開始時の培地中のグルコース濃度と培養開始後所定日数経過後の培地中のグルコース濃度との差を、培養日数で除し、さらに細胞数で除すことで、「グルコース消費速度定数」を算出した。細胞数はトリパンブルー色素排除法に基づき、血球計算盤と顕微鏡を用いて計測した。
Hc細胞の細胞当たりのグルコース消費速度(グルコース消費速度定数)は、0.85(mg/106 cells/day)であり、肝芽細胞のグルコース消費速度定数は、1.77(mg/106 cells/day)であった。
(3)細胞密度の算出
還流培養において、培地をサンプリングして吸光度(1)を測定する。翌日の培地の吸光度(2)も測定して、吸光度(1)と吸光度(2)の差分をとり、差分をグルコースの吸光度係数で除すると、細胞が1日で消費したグルコース濃度が得られる。この消費グルコース濃度にモジュールの培地容積(225μL)を掛け合わせて、前述のグルコース消費速度定数で除することで、還流培養モジュール中で培養されている総細胞数を算出した。最後に、総細胞数をモジュールの培養空間容積225μLで除すことで、サンプリングした日のモジュール中の細胞密度を算出した。
(4)肝機能の評価
胎児の肝細胞を108cells/cm3以上に培養してから、前記の酪酸ナトリウムを用いた方法にて、肝芽細胞に分化誘導した後、リファンプシンを用いて肝細胞のチトクロム3A4酵素を誘導し、基質との反応速度から定量的に活性値を評価した。具体的には、培地中に濃度が1mMとなるように酪酸ナトリウムを添加し、さらに酵素誘導剤であるリファンプシンを10μMとなるように添加して、細胞中にチトクロムP4503A4酵素を誘導した。チトクロムP4503A4酵素の基質であるベンジルオキシリゾルフィンを20μMになるように添加して37℃で30分反応させた。反応後の培地1.5mLに2,400 Roy unit β-グルクロニダーゼとアリールスルファターゼ溶解酢酸緩衝液0.5mLを加えて37℃2時間反応させ、沈殿物を除去するためにさらに、エタノールを4mL添加してから3000rpmで10分間の遠心分離にかけて、上澄み2mLを採取した。さらに上澄み中に溶解した生成物であるレゾルフィンを蛍光測定(励起550nm、蛍光600nm)で定量した。この数値を酵素活性と定義して、培養した細胞の機能を計測した。レゾルフィンの濃度の算出には、レゾルフィンを溶解させたエタノールにて作成した検量線を用いた。レゾルフィンの生成速度を算出して酵素活性値とするのは一般にBROD法と呼ばれる手法である。
[試験1]
培地供給ポンプによる培地の供給係数を5、ガス供給ポンプによるガスの供給係数を13,500として還流培養を行った。細胞密度の測定結果を図3に示す。また、培養41日目,61日目,81日目,106日目,131日目のチトクロムP4503A4酵素の活性値の測定結果も図中に示す。
培養開始後約30日で、細胞密度は108cells/cm3以上に達した。培養30日目にHc細胞を肝芽細胞に誘導した後も110日間以上高密度を維持できた。肝芽細胞を肝実質細胞に成熟させて培養41日目,61日目,81日目,106日目,131日目日目のチトクロムP4503A4酵素の活性値は、いずれも1.90pmol/106cells/min以上の高い値を維持していた。
[比較試験1]
培地供給ポンプによる培地の供給係数を0.6、ガス供給ポンプによるガスの供給係数を220として還流培養を行った。細胞密度の測定結果を図4に示す。培養開始後約30日で、細胞密度は108cells/cm3以上に達したが、その後は、急激に細胞密度が低下した。
細胞密度が108cells/cm3に至る培養開始後約30日までは、細胞が順調に増殖していたため、増殖のために必要かつ十分な培地とガスを細胞に供給できていたと考えられる。しかし、その後、本試験(培地の供給係数0.6)で急激に細胞密度が低下したことは、高密度培養条件に至った後の細胞を維持するためには、高密度培養状態に至るまでの細胞の増殖のために必要な量以上の培地及びガスを培養空間内に供給する必要(実施例試験1の培地の供給係数5参照)があることが明らかになった。
[比較試験2]
培地供給ポンプによる培地の供給係数を22、ガス供給ポンプによるガスの供給係数を18,000として還流培養を試みた。しかし、モジュールから培地が漏えいしたため実験は不可能であった。
本発明に係る細胞の長期還流培養方法等によれば、高密度化した細胞を、機能を維持したまま、長期に維持培養することが可能である。従って、本発明は、培養医薬品、化学物質及び化粧品等の薬効又は毒性に関し、安全動物実験に代替する細胞培養評価系を構築するために有用であり、また、再生医療の移植用の細胞を製造するためにも応用できる。特に、本発明は、細胞の機能を維持したまま、長期維持培養が可能であるので、亜急性毒性試験、慢性毒性試験や、再生医療において移植用の組織として必要とされる高密度の細胞の塊の作製に有用である。
1A,5:細胞培養用モジュール、10:足場、2:培養空間、20,30:基板、21,31:ねじ穴、22,32:ポート、40:型枠、6:ガス供給ポンプ、7:チューブ、8:フィルター、9:保湿用水貯留槽、11:培地供給(循環)ポンプ、12:チューブ、13:サンプリングポート、14:エア廃棄用空ビン、15:培地ビン

Claims (6)

  1. 培地供給用及びガス供給用の中空糸膜と、該中空糸膜外表面上及び/又は該中空糸膜間に配設された繊維成形体からなる細胞培養足場材料とを培養空間内に備えた細胞培養用モジュールを用いる、細胞の長期還流培養方法であって、
    培地供給用中空糸膜により培地を下記式で算出される供給係数2〜10で前記培養空間内に循環供給する、方法。
    供給係数=培地又はガスの供給速度(ml/min)/培養空間容積(ml)
  2. ガス供給用中空糸膜によりガスを供給係数250〜17,000で前記培養空間内に供給する、請求項1記載の細胞の長期還流培養方法。
  3. 培地供給用中空糸膜により培地を供給係数3〜8で前記培養空間内に循環供給する、請求項1又は2に記載の細胞の長期還流培養方法。
  4. 細胞を108cells/cm3以上の密度で維持する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の細胞の長期還流培養方法。
  5. 培地供給用及びガス供給用の中空糸膜と、該中空糸膜外表面上及び/又は該中空糸膜間に配設された繊維成形体からなる細胞培養足場材料とを培養空間内に備えた細胞培養用モジュールと、
    培地供給用中空糸膜に接続された培地供給ポンプと、
    ガス供給用中空糸膜に接続されたガス供給ポンプと、を備え、
    前記培地供給ポンプは、前記培地供給用中空糸膜を介して培地を下記式で算出される供給係数2〜10で前記培養空間内に循環供給する、細胞の長期還流培養装置。
    供給係数=培地又はガスの供給速度(ml/min)/培養空間容積(ml)
  6. 前記ガス供給ポンプは、前記ガス供給用中空糸膜を介してガスを供給係数250〜17,000で前記培養空間内に供給する、請求項5記載の細胞の長期還流培養装置。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2017176043A (ja) * 2016-03-30 2017-10-05 東洋紡株式会社 中空糸モジュールを用いる細胞培養方法
CN110475859A (zh) * 2017-03-23 2019-11-19 宇部兴产株式会社 抑制神经干细胞分化的方法、制备神经干细胞的方法、和诱导神经干细胞分化的方法
JP2021514203A (ja) * 2018-02-16 2021-06-10 ユニヴェルシテ ドュ モンペリエUniversite De Montpellier 生体適合性三次元ネットワークおよび細胞支持体としてのその使用
CN115707336A (zh) * 2021-06-11 2023-02-17 富有干细胞株式会社 外泌体回收方法

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