JP6422221B2 - 多能性幹細胞からなる細胞塊製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、多能性幹細胞、特にヒト多能性幹細胞からなる細胞塊の製造方法に関する。
ES細胞、iPS細胞等のヒト多能性幹細胞は再生医療実現の重要な細胞ソースと期待されている。しかし、移植可能な臓器・組織を人工的に構築するには第一に大量の細胞を準備することが必要である。心臓の左心室を例に挙げるならば109個オーダーの細胞数が必要であると試算される。このような大量の培養細胞を準備するには、現在の技術手段では大変な手間とコストが必要である。
よって、再生医療の本格的な実現のための課題の一つとして大量のヒト多能性幹細胞を効率的に培養する手段の開発が挙げられる。
ヒト多能性幹細胞を大量に得るための培養方法には、プラスチック製の皿に支持細胞と呼ばれる細胞を培養したうえまたは多能性幹細胞が接着しやすいようにタンパク質等をコートした皿の上で単層培養する方法と、多能性幹細胞の細胞塊を形成させこれを浮遊培養する手法が一般に用いられている。
これらを比較すると、一般的に培養できる細胞数と培養液量との比率が浮遊培養の方が効率が良いこと、支持細胞やコートタンパク質といった高価な物質が不要であるといった点から浮遊培養が好ましいと考えられる。しかし、ヒト多能性幹細胞は浮遊培養するために酵素処理等で細胞をひとつひとつばらばらの状態にするとすぐに細胞死を引き起こすこと、浮遊培養時のシェアストレスに弱い等の理由から一般的に実施されるようにはなっていない。
細胞死を引き起きしやすいという性質を克服するために近年ROCK(Rho-associated coiled-coil forming kinase/Rho結合キナーゼ)阻害剤を浮遊培養開始時に培養液に添加する方法が開発され、これを用いたヒト多能性幹細胞の浮遊培養の報告がある(例えば、非特許文献1、非特許文献2)。しかし、これらの技術を用いても細胞の増殖率は5日から1週間で最大5倍程度であり、さらなる効率的な培養方法が求められていた。
また、必要な細胞数が得られた後も臓器・組織を構築するには細胞を3次元構造に並べることが必要である。
3次元構造の構築のために、所望の形の足場を多孔質体等で形成し、そこに細胞を播種するという手法があるが、立体的な形状の内側から外側にわたって均一に細胞を播種することが困難であることは明らかである。
これに対し、直径数百μmの細胞塊は肉眼でも容易に確認でき、溶液中でも短時間で沈降するため取扱いも容易であり、ばらばらの細胞よりも人工的に所望の3次元構造を構築しやすいという利点がある。
また最近では細胞塊を串刺しにしながら3次元構造を構築するバイオ3Dプリンター装置「レジェノバ」(株式会社サイフューズ社)の開発等も進められている。今後このような技術の進展により、多能性幹細胞の細胞塊は組織・臓器構築の基本構造単位となる可能性もある。
しかし、ヒト多能性幹細胞の細胞塊は大きくなると形が崩れやすく、細胞塊は大きくなるほどその中心領域には酸素・栄養分が浸透しにくいため、これを大量に作製することが困難であった。
多能性幹細胞の細胞塊を作製する技術としては、凹曲面状の底部を有する複数のウェルを持ったプレートに細胞を播種し1ウェルに1個の細胞塊を形成させる技術(特許文献1)がすでに開示されているが、このような技術では製造できる細胞塊数はウェル数で規定されてしまい、また大量の細胞塊を製造するにはその数のウェルに細胞を個別に播種するという多大なる労力が必要であることから、少量の細胞塊を製造するには有効であるが、大量の細胞塊を一度に製造するには適さない。
また、細胞塊の平均直径が約200-約300μmとなるまで浮遊培養する工程と、得られた細胞塊を平均直径が約80-約120μmである均一な細胞塊に分割する工程を繰り返す工程とを繰り返す技術が開示されている(特許文献2)。しかしこの方法では短期間に培養と細胞塊分割を繰り返す必要があり、工程が煩雑になるという課題があった。
以上のように、多能性幹細胞を大量に培養すると同時に同細胞の均質な細胞塊を多量に効率的に製造できる技術が求められていた。
WO2013/183777号公報 WO2013/077423号公報
Tissue Engineering Part C Methods (2012) 18, 772-784 Stem Cell Research (2013) 11, 1103-1116
本発明は以上に述べた課題を解決するためのヒト多能性幹細胞からなる細胞塊製造方法を提供する。すなわち、ヒト多能性幹細胞を大量に培養すると同時に同細胞の均質な細胞塊を多量に効率的に製造できる技術を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ROCK阻害剤が培養液に有効濃度維持された状態を維持し、閉鎖培養系にて培養液の有効成分濃度をコントロールすることで、ヒト多能性幹細胞を大量に培養可能であると同時に同細胞の均質な細胞塊を多量に効率的に製造できることを見出した。
さらにROCK阻害剤添加が浮遊培養初期のアポトーシス阻害のみではなく、驚くべきことに細胞塊の形態維持および未分化状態の維持にも有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
また上記の方法で得られた細胞塊を構成する細胞は未分化性を維持しており、かつ多分化能を有していることも確認できた。
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
(1) 多能性幹細胞からなる細胞塊製造方法であって、
Rho結合キナーゼ(ROCK)阻害剤を含む培養液の存在下、
実質的に閉鎖系が維持された状態にて
培養液の構成成分の調整を行う培養工程を含むことを特徴とする
多能性幹細胞からなる細胞塊の製造方法。
(2) 前記培養工程は、半透膜を介して培養液の構成成分の調整を行う工程を少なくとも含むことを特徴とする(1)記載の多能性幹細胞からなる細胞塊の製造方法。
(3) 前記培養液を含む培養槽と、
該培養槽とは独立しかつ閉鎖系回路で接続された半透膜と、前記ROCK阻害剤を含む調整液の貯留手段とを有する調整手段1と、
該培養槽及び調整手段1とは独立しかつ閉鎖系回路で接続された調整手段2とを備える培養装置において、
調整手段1と調整液により培養液成分のうち半透膜を通過する物質の濃度を調整し、
さらに、調整手段2により少なくとも線維芽細胞成長因子(FGF)濃度を調整し、
培養する工程を少なくとも含むことを特徴とする、(1)または(2)に記載の多能性幹細胞からなる細胞塊の製造方法。
(4) 前記調整液は少なくともインスリンを含み、調整手段1の半透膜がインスリンを透過させることが可能な孔径を有することを特徴とする、(2)または(3)に記載の多能性幹細胞からなる細胞塊の製造方法。
(5) 調整手段1の半透膜がFGFは透過しない孔径を有することを特徴とする、(4)に記載の多能性幹細胞からなる細胞塊の製造方法。
(6) 調整手段2は前記FGFと硫酸基を有する化合物との混合物を含む貯留手段を有しており、該混合物は培養槽に添加されることで濃度が調整されることを特徴とする(3)~(5)のいずれかに記載の多能性幹細胞からなる細胞塊の製造方法。
(7) 培養期間中閉鎖系を維持して培養することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の多能性幹細胞からなる細胞塊の製造方法。
(8) 培養槽の培養液量を実質的に一定に保持可能であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の多能性幹細胞からなる細胞塊の製造方法。
本発明の方法によれば未分化状態を維持したヒト多能性幹細胞の細胞塊を多量に高密度で製造可能とする。
図1は、実施例1、2、比較例3の製造方法で用いた培養装置の模式図である。 図2は、比較例1、2、4で用いた製造方法で用いた培養装置の模式図である。 図3は、実施例1の方法により得られたヒト多能性幹細胞からなる細胞塊の顕微鏡写真である。 図4は、実施例2における方法により得られたヒト多能性幹細胞の顕微鏡写真である。 図5は、比較例1の方法により得られたヒト多能性幹細胞からなる細胞塊の顕微鏡写真である。 図6は、比較例2の方法により得られたヒト多能性幹細胞からなる細胞塊の顕微鏡写真である。 図7は、比較例3の方法により得られたヒト多能性幹細胞からなる細胞塊の顕微鏡写真である。 図8は、比較例4の方法により得られたヒト多能性幹細胞からなる細胞塊の顕微鏡写真である。 図9は、実施例1で得られたヒト多能性幹細胞の細胞塊を構成する細胞が多分化能を有することを確認するため、分化培養した後に得られた細胞の顕微鏡写真である。
以下に本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
本実施形態の方法が適用可能な多能性幹細胞は、自己複製能をもつ多能性細胞であり外胚葉(神経細胞など)、中胚葉(筋肉細胞など)、内胚葉(腸管上皮など)の細胞に分化可能な細胞である。胚性幹細胞(ES細胞)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、刺激惹起性多能性獲得(STAP)細胞等が例示できる。
細胞塊とは、多能性幹細胞が複数個会合した状態で一塊になった状態をいう。細胞間の会合は細胞同士が直接会合している状態でも、細胞外マトリックス等のタンパク質、ペプチド、抗体、合成ポリマー等を介して細胞同士が会合している状態でもよく、さらに細胞のみで塊を形成しても、核を構成するする細胞以外の物質がありその周辺に細胞が会合した状態も本発明では細胞塊という。
培養液は、多能性幹細胞を未分化状態を維持した状態で培養可能な成分を有する培養液が用いられる。多能性幹細胞を培養する目的の培養液はすでに市販されているものも多く、Essential-8(ライフテクノロジーズ社)、StemPro hESC SFM(ライフテクノロジーズ社)、mTeSR1(ベリタス社)、mTeSR2(ベリタス社)等が例示できる。本実施形態の方法を適用するにはFGFとインスリンを含んだ培養液であることが望ましい。
調整液は、細胞培養期間中に培養液中から失われていく成分のうち調整手段1に使用される半透膜を透過する分子量の成分を含んでいることが望ましい。また成分としてインスリンを含むものが望ましい。さらには以上の成分の濃度が培養期間中に枯渇しないように濃度設定されることが望ましい。
培養期間は、必要とする細胞塊の大きさ、使用する培養液や調整液の容量にもよるが3日以上20日以内、より好ましくは5日以上15日以内が好ましい。これよりも培養期間が短いと細胞塊を形成する時間としては短すぎることや細胞増殖の期間としても短すぎることから十分な細胞数を得ることが困難になる。またこれより培養期間が長くなると、培養液内の栄養成分が枯渇しやすいことや細胞から産生された代謝成分が培養系に蓄積されpH等の培養環境が悪くなる。
また、調整液の量は細胞代謝物の蓄積防止という観点からなるべく多く設定することが望ましい。望ましくは、培養液の5倍以上、より望ましくは10倍以上に設定される。しかし、調整液の量は培養コストに影響するため、培養期間と必要細胞数により決定されてもよい。また、調整液は培養液と同様に生理的なpHを維持しやすいように緩衝能を有するように設計されることや、pHの変化を色で判別しやすいようにpH指示色素を混合することなども可能である。
ROCK阻害剤は、血管拡張剤などとして循環器・脳外科領域での臨床で利用されている薬剤であり、Y-27632、塩酸ファスジル等が例示される。
FGF
線維芽細胞成長因子(FGF)は、線維芽細胞や内皮細胞の増殖を促進する分子量16,000〜20,000のタンパク質である。FGFには、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)、角質細胞成長因子(KGF)などが含まれ、ヒトおよびマウスにおいてはそれぞれ20種以上のFGFが知られている。このうち、多能性幹細胞の市販培養液には一般にbFGFが添加されている。
またFGFはその分解、変性、失活等を保護する目的で作用することで知られる硫酸化多糖類などの硫酸基を含む化合物と混合して用いることも可能である。硫酸基を含む化合物にはヘパリン、デキストラン硫酸、カラギナン等の硫酸化多糖類が例示できる。これらの化合物とFGFを混合で本発明の使用形態に用いることで冷蔵設備等の追加手段を用いることなくFGFを培養期間中維持することができる。
実質的に閉鎖系が維持された状態とは、系内に細菌等が実質的に入り込めない状態が維持されていることをいう。例えば、孔径0.2μm程度の実質的に最近を通過させないエアフィルターを通じて外部と連通されている状態、系内から外部に一方通行でガスや液が排出される状態は実質的に閉鎖系が維持された状態という。しかし、クリーンベンチ等の清浄な環境が維持された環境の中であっても、外部から実質的に細菌等が入り込める状態になったときは実質的に閉鎖系が維持された状態とはいわない。
培養液成分の調整を行うとは、培養開始時に設定した培養液中の各成分の初期濃度を維持または初期濃度により近くなるように調整することをいう。培養期間中は培養液中の栄養成分や未分化状態を維持するための成分は徐々にその濃度が低下していくし、反対に細胞が産生する成分は徐々にその濃度が高くなっていく。
このため、例えば調整手段2では培養槽内で低下する成分をあらかじめ培養槽とは独立した空間内で保持しておき、これを適時加えることで初期濃度またはそれにより近くなるように調整することができる。
また調整手段1では、培養液と調整液とを半透膜を介して接触させることで、調整液中の栄養成分または未分化状態を維持するための成分で濃度が低下した成分のうち半透膜を透過する分子量の成分については膜を介して調整液から培養液への補充が行わるし、濃度が高くなった成分は培養液から調整液への拡散がおきて、それぞれ初期濃度に近くなるように調整される。
半透膜とは、培養液成分の膜透過性がその分子量に依存する半透性の膜をいう。調整液は半透膜を介して培養液と接する。半透膜の孔径は培養槽に保持したい成分の分子量により設計される。すなわち、培養槽内に保持したい成分のうち最小分子量物質が膜を透過しないように選択される。本発明の目的では、半透膜の孔径はインスリンを透過させ得る大きさを有することが望ましい。より好ましくはインスリン(分子量:5807)は透過させるが、FGF(分子量:16,000〜20,000)は透過させない孔径が良い。インスリンは培養期間中に濃度が低下しやすいため、調整液にインスリンを含有させ、かつインスリンを透過させる半透膜を使用することにより培養期間を通じて調整液中のインスリンが培養槽に補充される。またFGFも培養期間中に濃度が低下しやすいため、FGFは透過させない孔径を選択することで、培養液中のFGFが調整液に拡散することを阻止できる。
培養液成分調整手段1の半透膜の形状は、平膜形状、中空糸形状が用いられうるが、培養液や調整液を灌流する目的では中空糸形状が好ましい。
半透膜の材質は、特に限定されないが、培養槽内に保持したい成分が吸着、分解等されない材質が好ましく用いられる。また、材質がそれらを吸着しやすい性質を有している場合には、それらを別の材料でコートしたり、表面改質剤を用いたりすることで吸着を抑制することも可能である。
本実施形態に係る送液回路とは、培養槽、調整手段1の間に設置され培養液又は調整液を無菌的に灌流することが可能な管腔構造を有するチューブをいう。材質としては、シリコン、ウレタン、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル等が用いられる。
本実施形態に係る培養液及び/又は調整液を灌流する手段とは、上記送液回路に接するように設置され、動力を用いて連続的に回路内の液を送液可能な手段をいう。一般的なポンプであれば使用可能であり、ペリスタポンプ、ダイヤフラムポンプ等が例示できる。
以下、実施例によって本実施形態をさらに詳細に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
(細胞培養システム)
培養装置としては、8連動動物培養装置BioJr.8(BJR−25NA1S−8C、エイブル株式会社)を使用した。本装置は、1台のコントローラーで8台の100mL容量の培養槽を制御可能で、測定/制御項目は攪拌速度、温度、pH、及び溶存酸素濃度(DO)で各培養槽は独立に制御できる。
(ヒトiPS細胞の準備)
培養細胞としてはヒトiPS細胞(253G1)を選択した。細胞はマトリゲル(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)をコートした培養ディッシュ(コーニング社)に播種し、培養液としてEssential-8を用いて培養した。培養液の交換は毎日実施し、3~4日に一度の頻度で継代を実施した。
(細胞塊の製造)
培養槽としてガラス製の専用槽(エイブル株式会社)使用し、培養液を100mLとした。
ヒトiPS細胞を密度2x105 個/mLとし、培養を開始した。この時点を培養0日目とした。
培養液としては、Essential-8培地(ライフテクノロジーズ社)に以下の成分を添加して使用した。
すなわち、ROCK阻害剤としてY-27632(和光純薬工業株式会社)を10μM、ヘパリン(シグマアルドリッチ社)を750ng/mLの濃度にて添加した。
培養槽には攪拌回転翼を設置し、回転数は60rpmとした。
培養槽には、温度、pH、溶存酸素濃度をそれぞれ計測可能なセンサー(エイブル株式会社)を設置した。
また、溶存酸素濃度は40%に制御される設定とし、そのために酸素、窒素、空気の混合ガスが培養槽内の培養液に対して上面通気となるようにガス導入ラインを設置した。さらにガスを槽から排出する導出ラインを設置した。温度は37℃に設定した。
実施例1においては、図1に示したような細胞培養システムを作製した。すなわち、培養槽は上記の培養槽の蓋部分に培養液の取り出しと返却が可能な口を設置した。
さらに、培養槽内で形成された細胞隗が培養液とともに培養槽の外側に導出しまうことを防止するための手段としてポリエチレンの焼結体からなる直径8mm、長さ37mm、平均孔径30μmの円筒型膜を設置した。
調整液槽は容量1Lのガラス製滅菌ビンを使用した。
槽の蓋の部分に通気ライン、培養液の入口、出口ラインを設置した。
調整手段内には、旭ポリスルホンダイアライザーAPS(旭化成メディカル株式会社)の中空糸を400本束ねて有効長20cmとなるように中空糸両端部の管腔構造が解放されるようにウレタン接着剤にて固定したものを設置した。
中空糸束は、調整液貯留手段の内部に配置し、中空糸束の両端部と培養液の入口、出口ラインを回路にて接続した。
調整液としては、Essential-8の成分のうちbFGFとTGF-βを含まないEssential-6(ライフテクノロジーズ社)を1L使用した。Essential-6にはインスリンがEssential-8と同濃度含まれる。
送液回路としては、シリコン製チューブ(内径1mmφ、外径4mmφ)を用いた。
培養液の送液手段としては、ペリスタポンプRP-23(エイブル株式会社)を2台使用した。2台のポンプはそれぞれ培養槽と調整手段1を接続する送液回路に接し送液可能な状態に設置した。
閉鎖系回路内に培養槽、調整手段1とは独立して10mLシリンジ(テルモ株式会社)にbFGF(ライフテクノロジーズ社)を10μg/mL、ヘパリン(シグマアルドリッチ社)を250μg/mLの濃度で培養液DMEM/F12(ライフテクノロジーズ社)に溶解し2mL設置した。
以上説明した方法により、図1に示したような細胞培養システムを作製した。本システムを用いて以下の方法でiPS細胞からなる細胞塊を製造した。
培養液の循環速度は、1日目から4日目は100mL/日、4日目から5日目までは400mL/日、5日目から10日目までは800mL/日とした。
培養槽の液容量が実質的に同じレベルを維持できるようにしながら2台のポンプ流速を微調整し、7日目まで連続的に培養液を灌流しながら培養を実施した。
bFGFとヘパリンの混合液は、培養2日目と4日目に1mL投与した。
7日目に細胞培養を終了し、細胞数の測定をおこなった。
(細胞数の測定)
培養7日目に細胞塊を培養槽から回収し、0.25%トリプシン/EDTA(インビトロジェン社)にて処理し単細胞の状態とした後、トリパンブルー法にて死細胞を染色し、生細胞のみを計算盤を用いてカウントした。
(細胞塊数と円相当径測定)
細胞塊数は光学顕微鏡ECLIPSE Ti−U(株式会社ニコン)を用いて観察しながら数を測定した。細胞塊の円相当直径は光学顕微鏡ECLIPSE Ti−U(株式会社ニコン)を用いて細胞塊の画像を撮影したのち、ソフトウェア(Nikon ElementsD、株式会社ニコン)を用いて細胞塊の外周長を測定し、その値から真円の場合の円相当直径算出した。各サンプルから100個の細胞塊の円相当直径を測定した。
(未分化率測定)
ヒトiPS細胞が未分化状態を維持していることを確認するために、未分化マーカーであるTra1-60の陽性率をフローサイトメトリー法にて測定した。抗体としては抗Tra1-60抗体560380(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)を用い、測定装置としてはCell Lab QuantaSC(ベックマン・コールター株式会社)を用いた。Tra-1-60の陽性率を未分化率とした。
(三胚葉細胞への分化培養)
本実施形態の方法により得られた細胞が多分化能を有していることを検証するために、以下の方法にて三胚葉への分化培養を行った。
培養液としては、 IMDM(Life Technologies社)にMEM(非必須アミノ酸)(Life Technologies社)を1%、2-Mercaptoethanol(Life Technologies社)を0.1mM、L-glutamine(Life Technologies社)を1mM、および牛胎児血清(FBS)(ニチレイバイオサイエンス)を20%となるように添加したものを用いた。
実施例1にて得られた細胞を、24日間培養液にて培養した。培地交換頻度は、3日に1回とした。
(免疫染色)
培養後外胚葉のマーカーとしてβ3 Tubulin、中胚葉マーカーとしてcTnT(Troponin T Cardiac Isoform)、内胚葉マーカーとしAFP(αfeto protein)を免疫染色法にて染色した。それぞれ抗体としては、抗β3 Tubulin抗体(メルクミリポア社、05-559)、抗cTnT抗体(thermo scientific社、MA5-12960)、抗AFP抗体(R&D Systems社、MAB1368)を用いた。2次抗体としては、抗マウスIgG抗体(Life Technologies社、A11031)を用いた。
染色した細胞は、共焦点顕微鏡(対物レンズ40倍)にてFLUOVIEW FV1200(オリンパス株式会社)にて写真を撮影した。ソフトウェアとしてFV10-ASW(オリンパス株式会社)を用いた。
図9に実施例1で得られた細胞を分化培養後染色した写真を示す。三胚葉何れにも分化する多分化能が確認された。
調整手段2にbFGFとヘパリンを4mL予め添加し、これを1日1mLずつ3、4、5、6日目に添加する以外は実施例1と同じ方法で7日間培養を行った。
[比較例1]
比較例1においては、図2に示したような細胞培養システムを作製した。培養槽には実施例1と同じものを用いた。調整手段1には培養液Essential-8培地を貯留(冷蔵状態で4℃を維持)し、送液手段にて送液回路を通じて100mL/日の速度で培養槽に添加すると同時に、別の送液手段にて同速度で培養液を抜き取り、送液回路を通じて別の貯留手段に廃棄する方法で7日間培養を行った。培養槽内および調整手段1の培養液には実施例1と同じ濃度のY-27632を添加した。その他の点については実施例1と同様の条件で培養を行った。
[比較例2]
図2のシステムを用い、培養液Essential-8培地を100mL/日の速度で培養槽に添加すると同時に、同速度で培養液を抜き取り、7日間培養を行った。培養液には実施例1と同じ濃度のY-27632とヘパリンを添加した。その他の点については実施例1と同様の条件で培養を行った。
[比較例3]
調整液にY-27632を添加しないこと以外は実施例1と同様に7日間の培養を行った。
[比較例4]
培養液にY-27632を添加しないこと以外は比較例1と同様に7日間の培養を行った。
上記実施例及び比較例を以下の表に要約する。
結果より、本実施形態の方法がヒト多能性幹細胞の細胞塊の製造方法として有効であることが示された。
本実施の形態に係る細胞培養方法は、均一なヒト多能性幹細胞塊を低コストで、手間が少なく、高密度で培養可能な方法を提供できることから、再生医療や薬剤スクリーニングおよび安全性評価等で多能性幹細胞を大量に利用する分野に利用可能である。
1 培養槽
2 培養液
3 撹拌翼
4 回転軸
5 フィルター
6 通気フィルター
7 調整手段1
8 調整液貯留槽
9 調整液
10 半透膜
11 撹拌回転子
12 送液手段
13 送液回路
14 液面検知手段
15 情報伝達回路
16 送液手段調整器
17 溶存酸素検知手段
18 調整手段2
19 FGF溶液

Claims (7)

  1. 多能性幹細胞からなる細胞塊製造方法であって、
    Rho結合キナーゼ(ROCK)阻害剤を含む培養液の存在下、
    実質的に閉鎖系が維持された状態にて
    培養液の構成成分の調整を行う培養工程を含み、
    前記培養液を含む培養槽と、
    該培養槽とは独立しかつ閉鎖系回路で接続された半透膜と、前記ROCK阻害剤を含む調整液の貯留手段とを有する調整手段1と、
    該培養槽及び調整手段1とは独立しかつ閉鎖系回路で接続された調整手段2とを備える培養装置において、
    調整手段1と調整液により培養液成分のうち半透膜を通過する物質の濃度を調整し、
    さらに、調整手段2により少なくとも前記培養槽内で低下する成分の濃度を調整し、
    培養する工程を少なくとも含むことを特徴とする、
    多能性幹細胞からなる細胞塊の製造方法。
  2. 前記培養槽内で低下する成分が、線維芽細胞成長因子(FGF)である、請求項1に記載の多能性幹細胞からなる細胞塊の製造方法。
  3. 前記調整液は少なくともインスリンを含み、調整手段1の半透膜がインスリンを透過させることが可能な孔径を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の多能性幹細胞からなる細胞塊の製造方法。
  4. 調整手段1の半透膜が前記培養槽内で低下する成分は透過しない孔径を有することを特徴とする、請求項3に記載の多能性幹細胞からなる細胞塊の製造方法。
  5. 調整手段2は前記FGFと硫酸基を有する化合物との混合物を含む貯留手段を有しており、該混合物は培養槽に添加されることで濃度が調整されることを特徴とする請求項に記載の多能性幹細胞からなる細胞塊の製造方法。
  6. 培養期間中閉鎖系を維持して培養することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の多能性幹細胞からなる細胞塊の製造方法。
  7. 培養槽の培養液量を実質的に一定に保持可能であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の多能性幹細胞からなる細胞塊の製造方法。
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