JPH06169755A - 細胞培養用多孔質中空糸膜 - Google Patents

細胞培養用多孔質中空糸膜

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JPH06169755A
JPH06169755A JP4324102A JP32410292A JPH06169755A JP H06169755 A JPH06169755 A JP H06169755A JP 4324102 A JP4324102 A JP 4324102A JP 32410292 A JP32410292 A JP 32410292A JP H06169755 A JPH06169755 A JP H06169755A
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JP
Japan
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membrane
hollow fiber
porous
polymer
porous hollow
Prior art date
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Pending
Application number
JP4324102A
Other languages
English (en)
Inventor
Norifumi Hirota
憲史 廣田
Takao Miyamori
隆雄 宮森
Jun Kamo
純 加茂
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Rayon Co Ltd
Original Assignee
Mitsubishi Rayon Co Ltd
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Publication date
Application filed by Mitsubishi Rayon Co Ltd filed Critical Mitsubishi Rayon Co Ltd
Priority to JP4324102A priority Critical patent/JPH06169755A/ja
Publication of JPH06169755A publication Critical patent/JPH06169755A/ja
Pending legal-status Critical Current

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    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12MAPPARATUS FOR ENZYMOLOGY OR MICROBIOLOGY; APPARATUS FOR CULTURING MICROORGANISMS FOR PRODUCING BIOMASS, FOR GROWING CELLS OR FOR OBTAINING FERMENTATION OR METABOLIC PRODUCTS, i.e. BIOREACTORS OR FERMENTERS
    • C12M25/00Means for supporting, enclosing or fixing the microorganisms, e.g. immunocoatings
    • C12M25/10Hollow fibers or tubes

Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 細胞を培養するために好適な多孔質中空糸膜
に関するものである。 【構成】 温度により相転移を起こす重合体を多孔質膜
の少くとも一部の表面上に保持させた細胞培養用多孔質
中空糸膜に関する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は細胞を培養するために好
適な多孔質中空糸膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年モノクロナール抗体、インターフェ
ロン、インターロイキン、TPA等の生体由来の生理活
性物質の医学、産業分野での有用性が明らかとなってき
ている。それに伴い、これらの有用物質を大量かつ安価
に生産するための高密度細胞培養方法の必要性が増加し
ている。
【0003】特にKNAZEKらによる中空糸膜面に細
胞を付着させ、中空糸の中空部に培地を循環させて、中
空糸膜面を介して細胞に栄養物を供給する方法(特開昭
49−41579号公報)は効率的に細胞を培養する方
法として注目されている。
【0004】この中空糸法の利点は、限られた空間内に
大きな表面積を確保することにより、付着性細胞に対し
広い付着面を供給することができ、また中空糸の膜方向
に開いた微小な孔を通して、細胞の生存、増殖に必要な
各種栄養物、酸素などの供給や細胞の代謝により生成し
た老廃物の除去を、拡散または中空糸内外に与えた圧力
差により生じる液体の流れに同伴して極めて容易に行な
わしめることにある。その結果細胞の高密度培養が可能
となり、生産物の濃度、生産性を高めることができる。
【0005】従来中空糸法細胞培養に、セルロースアセ
テート製中空糸(特公昭54−6634号公報)、ポリ
スルホン製中空糸(特開昭62−130678号公報)
などを使用した例がみられる。またポリエチレン、ポリ
プロピレンなどのポリオレフィンからなる多孔質膜を用
いる方法(特開昭63−17685号公報)が提案され
ている。また、細胞の付着増殖性を改良した多孔質膜
が、特開平2−16972号、特開平3−292884
号、特開平3−292885号各公報に提案されてい
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来の細胞培養に用い
られる多孔質膜は、細胞の付着増殖性には優れている。
しかしながら培養終了後、細胞を回収する際に、細胞、
特に付着性細胞は多孔質膜に強固に付着しており、トリ
プシン等の蛋白質分解酵素を含んだ溶液を用い、激しく
振動させて剥離することが必要であった。
【0007】従って細胞に著しくダメージを与えるた
め、中空糸膜モジュールを用いて、継代培養を行なうこ
とは、極めて困難であった。
【0008】本発明の目的は、細胞の付着性、増殖性、
伸展性等細胞培養に必要な特性を持ち且つ細胞を継代す
る際に細胞にダメージを与えないように剥離することが
可能な細胞培養用中空糸膜を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】即ち本発明の要旨は、温
度により相転移を起こす重合体を多孔質膜の少くとも一
部の表面上に保持させてなる多孔質中空糸膜にある。
【0010】本発明に用いる多孔質中空糸膜は、例えば
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテ
ン−1などのポリオレフィン系素材:ポリスルホン:ポ
リビニルアルコール:ポリメチルメタアクリレート:セ
ルロースアセテートなどからなる多孔質中空糸膜に上述
の重合体を保持させることにより得ることができる。
【0011】本発明で用いられる多孔質中空糸膜の孔径
は、例えば培地、酸素などの気体、生産物、排出物など
の移動させるべき物質の充分な移動量が確保でき、かつ
細胞が漏れない程度の大きさであればよく、培養形態に
応じて適宜選択される。また孔の形状は特に限定されな
い。
【0012】多孔質中空糸膜の孔径としては、例えば、
分画粒子径が0.01〜5μm程度であることが好まし
く、0.1〜2μm程度であることがより好ましい。多
孔質中空糸膜が延伸法により多孔質化されたものである
場合は、この分画粒子径は節部とミクロフィブリルとで
かこまれてなる細孔のフィブリル間のスリット径の平均
値で示される。
【0013】さらに空孔率は、同様に培地等の充分な流
れが得られ、実用上充分な強度が保てる範囲でよく、具
体的には10〜90%であればよく、40〜80%であ
ることが好ましい。膜厚は同様に実用上充分な強度が保
てる範囲でよいが、およそ20〜200μm程度である
ことが好ましい。
【0014】特に、延伸法により製造したポリオレフィ
ン系中空糸膜は、中空糸の膜面にミクロフィブリルと節
部とによって形成されるスリット状の微小空間(細孔)
が3次元的に相互に連通した細孔構造が形成されている
ため、空孔率が高く、これを用いて付着性細胞の培養を
行った場合においては、表面に付着した細胞に対し、連
通した細孔構造部を通して、実質的に充分に均一に栄養
物や酸素などを供給したり、細胞生産物、代謝産物など
を容易に除去でき、かつ、目詰まりによる性能低下が少
ないという点から好ましい。なおその製造は特公昭56
−52123号、特開昭57−42919号各公報など
に記載された方法に従って行なうことができる。
【0015】本発明において、温度により相転移を起こ
す重合体が保持される多孔質中空糸膜の少なくとも一部
の表面とは、中空糸膜の表面の一部あるいは全部を指
し、必ずしも細孔内表面の全部を該重合体が保持してい
る必要はない。
【0016】即ち、細胞培養時および培養細胞の回収に
十分な程度、表面に該重合体が保持されていればよい。
【0017】保持させてなるとは保存中や細胞培養中及
び脱着時に容易に脱離しない程度に該重合体が該表面に
強固に結合ないし密着されていることをいい、該重合体
が該表面に化学結合していてもよく、該重合体がアンカ
ー効果によって密着されていてもよく、またスリット状
の細孔を形成するミクロフィブリルや結節部等を包むよ
うにして該重合体が密着架橋されていてもよく、これら
の保持状態が混存していてもよい。
【0018】このように多孔質中空糸膜の表面への該重
合体の保持状態としては任意の状態をとりうるが、該重
合体を化学結合させることなくアンカー効果や密着架橋
等の如く物理的に該細孔表面上に保持させた多孔質中空
糸膜は、基材の多孔質中空糸膜と比較して機械的強度の
劣化や細孔構造の変化が殆んどないので特に好ましいも
のである。
【0019】本発明においては、多孔質中空糸膜の表面
上に温度により相転移を起こす重合体を保持させるが、
該重合体が温度により相転移を起こすとは、温度を変化
させることにより重合体の親水性−疎水性、膨潤度、密
度、体積等が変化することをいう。これらの中でも温度
の変化により親水性−疎水性の相転移を起こす重合体は
好ましく、細胞培養温度で疎水性、培養温度以下で親水
性に相転移する重合体は細胞培養時の細胞の接着性、細
胞回収時の細胞の脱着性に優れるため特に好ましい。
【0020】該重合体としては、例えばN−イソプロピ
ルアクリルアミドを含むモノマーからなる重合体、ヒド
ロキシプロピルセルロースおよびその誘導体等があげら
れる。
【0021】特にN−イソプロピルアクリルアミドから
なる重合体は32℃前後で親水性−疎水性の相転移を起
こすため、通常の細胞培養温度(37℃)で疎水性、低
温で親水性を示すため特に好ましい。
【0022】また、N−イソプロピルアクリルアミド単
独の重合体だけでなく相転移を妨たげない程度共重合し
ても差支えない。N−イソプロピルアクリルアミドと共
重合可能なモノマーとしては、N−イソプロピルアクリ
ルアミドと、共重合可能なモノマーならよく共重合モノ
マーとして架橋性モノマーを用い、架橋しているもので
も差支えない。
【0023】架橋性モノマーとしては、N−イソプロピ
ルアクリルアミドと共重合可能なビニル結合やアリル結
合等の重合性不飽和結合を2個以上有するモノマーある
いは前記重合性不飽和結合を1個有しかつ縮合反応等に
よって化学結合を生成可能な官能基を少なくとも1個有
するモノマーであってN−イソプロピルアクリルアミド
と共通の良溶媒を有するモノマーを挙げることができ、
その例として、N,N′−メチレンビスアクリルアミ
ド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロ
キシメチルメタクリルアミド、トリアリルシアヌレー
ト、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン、
2,2−ビス(4−メタクリロイロキシポリエトキシフ
ェニル)プロパン、エチレンジ(メタ)アクリレート、
ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリ
メチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタ
エリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチ
ロールエタントリ(メタ)アクリレート、ブタンジオー
ルジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メ
タ)アクリレート、ジアリルフタレート、1,3,5−
トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン等を挙
げることができる。
【0024】該重合体を生成するN−イソプロピルアク
リルアミドと共重合可能な他のモノマー、架橋性モノマ
ーの組成比としては、N−イソプロピルアクリルアミド
100重量部に対し、共重合可能な他のモノマーが0〜
100重量部、架橋性モノマーが0〜100重量部程度
であることが好ましい。
【0025】本発明の細胞培養用多孔質中空糸膜の少な
くとも一部の表面に保持されてなる重合体の量は、多孔
質中空糸膜の空孔率や細孔径にも依存するが、多孔質中
空糸膜の重量に対しておよそ0.5〜100重量%程度
であることが好ましい。
【0026】重合体の保持量がこの範囲より少ないと培
養した細胞の回収が困難になり、また、この範囲を越え
ると細胞培養時に培養液が充分に行きわたらなくなり、
細胞培養が困難になる場合がある。
【0027】重合体の保持量は0.5〜50重量%程度
であることがより好ましく、1〜30重量%程度である
ことが特に好ましい。
【0028】本発明の細胞培養用多孔質膜は、培養する
細胞の種類等、特に限定されないが、一般に付着性細胞
において、細胞の脱着が困難であり、本多孔質中空糸膜
を用いると、細胞の脱着が容易になることからより効果
を発揮できると思われる。
【0029】以下、本発明の細胞培養用多孔質中空糸膜
の製造方法について説明する。本発明において温度によ
り相転移を起こす重合体を多孔質中空糸膜に保持させる
方法としては種々の方法を採用することができる。
【0030】例えば、有機溶剤または水等の適当な溶媒
にN−イソプロピルアクリルアミド及び前述の共重合性
モノマー(以下これらを「モノマー類」という)や重合
開始剤を溶解させた溶液を調製し、多孔質中空糸膜をそ
の溶液中に浸漬する方法、あるいは多孔質中空糸膜で細
胞培養モジュールを製作した後この溶液を多孔質中空糸
膜内に圧入する方法等により該溶液を多孔質中空糸膜に
含浸させた後、溶媒を揮発除去させる方法が採用でき
る。
【0031】溶媒で希釈したモノマー類の溶液を用いる
ことによって多孔質膜の細孔を塞ぐことなく多孔質膜の
全体にわたってモノマー類をほぼ均一に付着させること
ができる。また該溶液のモノマー類の濃度や該溶液の含
浸時間を変化させることによりモノマー類の付着量が調
整できる。
【0032】このようにして該多孔質中空糸膜の少なく
とも一部の表面上にこれらのモノマー類を保持させた状
態で溶媒を除去し次いで重合させることにより多孔質中
空糸膜の少なくとも一部の表面上に温度により相転移を
起こす重合体を保持させることができる。
【0033】前記の溶液を調製する場合の溶媒として
は、モノマー類よりも沸点が低く、且つモノマー類を溶
解することが可能な水又は有機溶剤が用いられるが、重
合開始剤を添加する場合は重合開始剤をも溶解できる溶
媒を用いることが好ましい。
【0034】このような有機溶媒としてはメタノール、
エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアル
コール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソ
ブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオ
キサン等のエーテル類、酢酸エチル等を挙げることがで
きる。有機溶媒の沸点は特に限定されないが、重合工程
前の溶媒除去が容易であることを考慮するとおよそ10
0℃以下であることが好ましく、およそ80℃以下であ
ることがより好ましい。
【0035】重合開始剤の要否は重合方法に依存し、熱
重合法や光重合法の場合は重合開始剤が用いられるが、
放射線重合法の場合は重合開始剤を必要としない。
【0036】熱重合法の場合はラジカル重合開始剤とし
て知られている種々の過酸化物、アゾ系化合物、レドッ
クス系開始剤を用いることができる。その例として、
2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−ア
ゾビスシクロプロピルプロピオニトリル、2,2′−ア
ゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2′−
アゾビス−2,3,3−トリメチルブチロニトリル等の
アゾ系化合物、アセチルパーオキサイド、プロピオニル
パーオキサイド、ブチリルパーオキサイド、イソブチリ
ルパーオキサイド、サクシニルパーオキサイド、ベンゾ
イルパーオキサイド、ベンゾイルイソブチリルパーオキ
サイド、β−アリロキシプロピオニルパーオキサイド、
ヘキサノイルパーオキサイド、3−ブロモベンゾイルパ
ーオキサイド、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシ
ル)パーオキシジカーボネート等の過酸化物、過硫酸カ
リウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩等を挙げるこ
とが出来る。
【0037】溶媒に水を用いた場合には水溶性の重合開
始剤例えばアゾビスイソブチラミジン、4,4′−アゾ
ビス−4−シアノペンタノイックアシド、光重合法の場
合の重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイン
メチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、フルオレ
ノン、4−ブロモベンゾフェノン、4−クロロベンゾフ
ェノン、メチルo−ベンゾイルベンゾエート、ベンゾイ
ルパーオキサイド、アントラキノン、ビアセチル、硝酸
ウラニル等を挙げることができる。またこれらを適当に
組合わせて使用することも可能である。
【0038】溶液中におけるモノマー類と溶媒との組成
は溶媒の種類や目標とする重合体の保持量等を考慮して
適宜選択すればよく、モノマー類100重量部に対して
溶媒は50〜10000重量部程度であればよく200
〜5000重量部程度であることがより好ましい。
【0039】モノマー類中のN−イソプロピルアクリル
アミドと共重合性モノマーとの組成比は、共重合性モノ
マーの親水性の程度や目標とする共重合比や架橋密度等
を考慮して適宜選択すればよく、N−イソプロピルアク
リルアミド100重量部に対して共重合性モノマーは
0.5〜100重量部程度であればよく、1〜90重量
部程度であることがより好ましい。
【0040】重合開始剤はモノマー類100重量部に対
して0.001〜100重量部程度であればよく、0.
01〜30重量部程度であることがより好ましく、0.
1〜20重量部程度であることが特に好ましい。
【0041】モノマー類に対して溶媒の量が前記範囲を
越えると多孔質中空糸膜の細孔表面に保持されるモノマ
ー類の量が少なすぎて充分な量の重合体を保持させるこ
とができず、また前記範囲より少ないと、重合体の保持
量のコントロールが難しく、また細孔表面や細孔内部に
保持される重合体の量が多くなりすぎて細孔の閉塞を招
くことがあるので好ましくない。
【0042】これらの溶液を用いて多孔質中空糸膜に対
して浸漬処理または圧入処理する際の浸漬時間または圧
入時間はおよそ0.5秒〜30分間程度であり、多孔質
中空糸膜に対する濡れ特性が良好な溶液を用いた場合
程、より短時間で実施することができる。
【0043】このようにしてモノマー類または更に重合
開始剤を少なくとも一部の細孔表面上に保持された多孔
質中空糸膜は周囲の余分な液を除去され、更に必要に応
じて細孔内部の溶媒を蒸発除去された後、次の重合工程
に移される。
【0044】溶媒の蒸発除去時の温度が高すぎると溶媒
が残留している間に重合が部分的に進行し、多孔質膜の
細孔表面でない細孔内部で重合が起こり、その結果一部
の細孔が閉塞されることがあるので好ましくなく、これ
を考慮すると溶媒除去時の温度はおよそ10〜40℃程
度であることが好ましい。
【0045】本発明においては熱重合法、光重合法、放
射線重合法、プラズマ重合法等の重合方法を採用するこ
とができる。
【0046】熱重合法の場合、重合温度は前記重合触媒
の分解温度以上であり、また多孔質中空糸膜の膜構造を
変化させることなくかつ膜基質を損傷しない程度以下の
温度とすることが望ましく、通常は30〜100℃程度
の温度を採用することができる。
【0047】また加熱時間は重合開始剤の種類と加熱温
度に依存するがバッチ法では通常は1分間〜5時間程度
より好ましくは15分間〜3時間程度である。又、連続
法では熱伝達効率が高いためにより短時間で重合でき、
加熱時間は通常10秒間〜60分間程度より好ましくは
20秒間〜10分間程度である。
【0048】光重合法の場合、光照射の光源としては紫
外線や可視光線を用いることができ、紫外線源としては
低圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノン灯、アーク灯等を用
いることができる。
【0049】光照射条件は、例えば水銀灯を光源として
用いる場合は入力を10〜300W/cm程度とし10
〜50cm程度の距離から0.5〜300秒間程度照射
することによって0.001〜10 joule/cm
2 程度より好ましくは0.05〜1 joule/cm
2 程度のエネルギーを照射する条件が採用される。
【0050】低照射強度では十分な重合体を生成するこ
とが困難であり、また高照射強度では多孔質中空糸膜の
損傷が大きいので膜厚等を考慮して適当な光照射条件を
慎重に選定することが好ましい。
【0051】放射線重合の場合は例えば電子線照射装置
を用い、120℃以下より好ましくは100℃以下の温
度にて電子線を10〜50M rad程度照射すること
によって実施することができる。
【0052】尚これらの重合の際、雰囲気内に酸素が存
在すると重合反応が著しく阻害されるので窒素雰囲気等
の不活性ガス雰囲気、あるいは真空等の実質的に酸素が
存在しない状態にて重合させることが望ましい。
【0053】架橋性モノマーを用いて架橋重合体を生成
させる場合、架橋反応は重合反応と同時に行なわせても
よく、一旦共重合体を生成させた後に架橋させてもよ
い。また縮合による架橋反応は、重合反応熱を利用して
行なってもよく、加熱によって行なってもよい。
【0054】特に縮合による架橋反応を利用する場合
は、予じめ調製したN−イソプロピルアクリルアミドと
架橋性モノマーとの未架橋の共重合体を溶液に溶解し次
いで多孔質中空糸膜の細孔表面上に保持させ、その状態
で架橋反応させる方法を用いてもよい。
【0055】この場合未架橋の共重合体の分子量はおよ
そ1〜50万程度であることが好ましく分子量が大きす
ぎると該共重合体を多孔質中空糸膜の細孔内部に侵入さ
せることが困難であり膜表面を閉そくして好ましくな
い。分子量は5〜30万程度であることがより好まし
い。
【0056】本発明は上述のように種々の重合法を採用
できるが、熱エネルギーによる方法が最も好ましい。熱
エネルギーを利用する場合は多孔質膜の細孔部分まで均
一温度に加熱することができるのでモノマー類が保持さ
れている全ての細孔表面上において均一に重合すること
ができ、且つ重合温度を適度に設定することによって膜
の構造を変化させることなく且つ膜基質を劣化させるこ
となく重合することができる利点がある。
【0057】一方光エネルギーを利用する場合は、光の
散乱によって多孔質膜の細孔部分まで光が十分に到達し
にくいという問題及び光の照射強度を上げると膜基質の
劣化が進行しやすいという問題があり、また放射線エネ
ルギーを利用する場合も膜基質の劣化が進行しやすいと
いう問題がある。従ってこれらの重合方法を採用する場
合は膜基質を劣化させないような重合条件を慎重に選定
することが必要である。
【0058】多孔質中空糸膜の表面上に保持されたモノ
マー類や前記の未架橋の共重合体はこれらの重合手法に
よって多孔質膜表面上において重合、架橋するので、多
孔質膜の表面の少なくともその一部はこれらの重合体に
よって被覆される。
【0059】温度により相転移を起こす重合体が生成さ
れた後は、適当な溶媒を用い浸漬法や圧入法によって多
孔質膜細孔表面の周囲に存在する未反応モノマーや遊離
したポリマー等の不要成分を除去することが望ましい。
溶媒としては水、有機溶剤あるいはそれらの混合溶媒を
単独または併用して用いることができる。
【0060】本発明の細胞培養用多孔質中空糸膜はこの
ようにして製造することができるが、特に好ましい方法
としてN−イソプロピルアクリルアミドと水溶性の架橋
性モノマーを含むモノマー類及び重合開始剤を多孔質中
空糸膜の少なくとも一部の表面上に保持させた状態で加
熱重合させる方法を挙げることができる。
【0061】以上各工程について別々に説明してきた
が、本発明においては多孔質中空糸膜の表面上へのモノ
マー類等の保持、溶媒除去、重合、重合後の洗浄等をほ
ぼ連続的に行なうこともできる。
【0062】
【実施例】以下実施例により本発明を具体的に説明す
る。実施例においては、いずれも延伸法によって得られ
るミクロフィブリルと結節部とで形成されるスリット状
の空間(空孔)が3次元的に連通したポリオレフィン多
孔質中空糸膜を用い、該多孔質膜の孔径は該スリット状
空間の幅の平均値と長さの平均値とで表現した。
【0063】実施例1 スリット状細孔の幅0.4μm、長さ1.8μm、空孔
率63%、膜厚70μm、内径270μm、結節強度3
94g/fil、透水圧11kg/cm2 、アルコール
親水化法による水透過率が1.1リットル/m2 ・hr
・mmHgであるポリエチレン多孔質中空糸膜をN−イ
ソプロピルアクリルアミド100部、N−ヒドロキシメ
チルアクリルアミド5部、ベンゾイルパーオキサイド1
部及びアセトン1000部からなる処理溶液に10秒間
浸漬した後、窒素中にとり出し5分間風乾した。
【0064】続いてこの多孔質膜を窒素雰囲気中におい
て80℃で10分間加熱処理し、ついで水/エタノール
=50/50(部)混合溶媒に10分間浸漬し不要成分
を洗浄除去した。次に風乾により溶媒を除去し重合体が
保持された中空糸膜を得た。多孔質膜の重合体保持量は
18.2重量%であった。
【0065】該多孔質中空糸100本を集束して、ポリ
カーボネート製円筒容器(84×150mm)に充填
し、中空糸端部の開口状態を保持するようにウレタン樹
脂で両端を固定して、図1のような細胞培養器を作成し
た。
【0066】本細胞培養器を70%エタノール水溶液で
殺菌湿潤後、滅菌蒸留水で十分洗浄後、別に蒸気滅菌し
たシリコンチューブ5により、培養液貯槽7と連結し、
図2に示すような細胞培養装置を作成した。この培地貯
槽に10%の牛胎児血清を含むHam’s F−12培
地2リットルを入れ、フィルターを介して5%CO2
有空気を供給した。
【0067】次に細胞培養装置8の中空糸外空間にチャ
イニーズハムスター卵巣由来CHO−K1(ATCC
CCL−61)細胞(5×105 個)を、側部導管から
添加し、密閉後、培養を開始した。
【0068】培養は、培養器全体を回転させることによ
り、培養器内に、細胞を均一に分散させ37℃の恒温槽
中に設置し、ポンプにより培地を2.5ml/hrで循
環させながら行なった。
【0069】3日目に新しい培養液と交換後、流速を5
ml/hrに上げ培養を続けた。培養開始後、5日目
に、培養器の温度を15℃に下げ30分放置後トリプシ
ンを含まないダルベッコのPBS(−)で洗浄し細胞を
回収した。また回収した細胞をトリプシン0.25%を
含むPBS溶液で細胞を分散させトリパンブルー染色を
行ない生細胞数を測定したところ、9.7×106 個で
あった。
【0070】比較例1 実施例1と同様にして、但しイソプロピルアクリルアミ
ド共重合体を保持させてないポリエチレン製中空糸膜を
用いて100本を集束させて、実施例1と同様の装置に
てCHO−K1の細胞培養を行なった。その後、同様の
方法にて、細胞を回収しようとしたが、細胞塊が中空糸
膜に強固に付着しており、細胞培養器よりとり出すこと
ができなかった。その後、トリプシン0.25%を含む
溶液にて、激しく振動させ細胞を回収し生細胞数を測定
したところ、4.8×106 個であった。
【0071】実施例2 実施例1と同様にして、但し架橋性モノマーとしてエチ
レングリコールジアクリレート5部を使用し、多孔質膜
に重合体を保持させた。多孔質膜の重合体保持量は1
9.3重量%であった。以下実施例1と同様の装置に
て、同様の操作を行ないCHO−K1細胞を培養した。
5日間培養後同様の操作にて細胞を剥離し、生細胞数を
測定したところ9.1×106 個であった。
【0072】実施例3 実施例1と同様にして、但しN−イソプロピルアクリル
アミド100部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート
10部、エチレングリコールジメタクリレート5部、
2,2′−アゾビスイソブチロニトリル5部及びイソプ
ロピルアルコール1000部からなる処理用液を用い
て、多孔質膜に重合体を保持させた。多孔質膜の重合体
保持量は16.8重量%であった。以下、実施例1と同
様の装置にて、CHO−K1細胞を同様の方法で5日間
培養したところ生細胞数は9.3×106 個であった。
【0073】
【発明の効果】以上述べたように、本発明の細胞培養用
多孔質中空糸膜は、付着細胞を用いて培養した場合にお
いても、温度を変化させることにより、細胞付着面が相
変化をおこし容易に細胞を脱着させることができるた
め、従来蛋白質分解溶液を用いなければ困難であった中
空糸膜培養器内の細胞を容易に回収できる特徴を有す
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】細胞培養器の1例を示す模式断面図である。
【図2】細胞培養器を用いた細胞培養装置の1例を示す
図である。
【符号の説明】
1 容器本体 2 多孔質中空糸膜 3 端部導管 4 側部導管 5 シリコンチューブ 6 チューブポンプ 7 培養液貯槽 8 フィルター

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 温度により相転移を起こす重合体を多孔
    質膜の少くとも一部の表面上に保持させてなる細胞培養
    用多孔質中空糸膜。
  2. 【請求項2】 重合体がN−イソプロピルアクリルアミ
    ドを含むモノマーと架橋性モノマーからなる架橋重合体
    であることを特徴とする請求項1記載の中空糸膜。
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